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ミスター・グレイさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 565
性別 男性
自己紹介 三度の飯より映画好きです。どうぞよろしく。
※匿名性ゆえの傲慢さに気を付けながらも、思った事、感じた事を率直に書いていますので、レビューによって矛盾が生じていたり、無知による残念な勘違いや独善的で訳分らん事を書いているかもしれませんが、大きな心でお許し下され。
※管理人様、お世話になっております。
※レビュワーの皆様、楽しく読ませて頂いております。

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1.  血煙高田の馬場(1937) 《ネタバレ》 
特に手紙を読む辺りから最後に至るまでが圧巻で、〝馳せ参じる〟ということが、いかにダイナミックでいかに感動的であるかを、この映画は教えてくれます。安兵衛が走るカットの連続(斬新だ!)の間に挿入される長屋の人々の「わっしょい!わっしょい!」が興奮を起こすミソで、間に合わぬと承知の上で「安さん、急げ急げ~」と思わされてしまいます。私の映画史上(極めて脆弱で未見の傑作も数多存在するが)、最高の〝走り〟はこれです。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2012-04-17 18:48:24)(良:2票)
2.  菊次郎の夏 《ネタバレ》 
北野作品の中で最高傑作は何かと問われれば本作を選びませんが、最も気に入っている作品は何かと問われれば躊躇なしに本作を挙げます。それはひとえに菊次郎と少年の二人旅が、特に帰る前の浜辺のキャンプが、そんなに楽しい遊びをしていないにもかかわらず、終わらないでほしいと思っていた子供の頃の夏休みのような、とてつもなく幸福な空間に見えるからです。 筋書きとしては母親に会いに行くということだけしかありませんが、それでいて母親と会うこと自体は問題ではなく旅をするために設けられた理由付けに過ぎず(つまり目的は何でも良い)、旅の過程こそが重要な物語になっているのが素晴らしいところです。  井手らっきょとグレート義太夫という映画史上最も美しくない?天使を登場させる妙(背中にはしっかり羽がある)、少年役に可愛らしい子を配役し泣き顔をアップで撮ったりしないあたりにも品性の高さがうかがえます。
[DVD(邦画)] 10点(2011-08-19 18:46:07)(良:2票)
3.  丹下左膳餘話 百萬兩の壺 《ネタバレ》 
この完璧な映画の中でも一番ウナってしまったのは〝間〟の使い方です。  一つにはそのリズムの〝間〟で、例えば笑いをとるシーンにしても、そのテンポは数十年たった今でも決して時代遅れではなく、カット変わりには発言していた事と逆になってしまうというシーンを重ね重ねで見せるのですが、そこにはついつい「そらきたっ!」と言いたくなってしまう絶妙な可笑しさがあります。  もう一つには空間の〝間〟で、例えば壷を売りたい人が押し寄せているシーンで、カメラが横移動すると長蛇の列が映し出され、さらに豆粒のような左膳がちょび安を止めようと観客側に向かって必死に走ってやって来て、またもや「そらきたっ!」と思わず拍手したくなってしまうような楽しさは実にサスペンスフルです(ここは特にスクリーンで見たい)。さらに家の横通路や裏路地の長さ等々、奥行きのある距離感も素晴らしいです。  ちなみに私の最も好きな〝間〟は源三郎が自分の屋敷で金魚釣りをする、まるで眠った亀を観察しているような退屈極まりな~いあの天国の如き空間です。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2010-01-08 18:36:13)
4.  晩春 《ネタバレ》 
この娘の父に対する強烈すぎる気持ちを理解しかねる私が言っても説得力に欠けますが、父と娘を題材とした映画の中で本作は最高傑作の一つだと思います。能を見物するシーンであるとか、旅館での娘の告白シーンであるとか、父親が再婚すると一世一代の嘘をついたと告白するシーンから寂しげなラストカットであるとか…父と娘の別れの寂寥が胸にジーンと響きます。 〝そうかね、そうかね〟等々、確認するかのように繰り返し繰り返し言う台詞が何とも奇妙でもあるのですが、そのリズムがどこか心地良く、さらに登場人物の簡単な説明さえしておけばサイレントでも十分に伝わってしまうであろうほど一場面一場面も完璧です。  しかし何と言っても圧巻なのは原節子さんの表情から笑顔が消える瞬間であり、それはそれは震えるほどに素晴らしいです。 
[ビデオ(邦画)] 10点(2009-03-09 18:30:19)
5.  東京物語 《ネタバレ》 
最初にこれを見た時は、正直に言いまして度肝ぬかれてしまいました。カメラは移動することなく固定され、話す人物をほぼ正面でとらえているのですが、こんなんで映画が成り立ってしまうのかと思っていましたら、成り立つどころか凄まじい出来栄えなのですから。例えば、バカみたいに細かい性格描写などしなくとも家族関係を明確に見せてしまったり、あるいは老夫婦が並んでウチワをあおいだりと度々シンクロするような姿を映し出す事によって、母親が亡くなってしまった瞬間から父親が一人になってしまったことが強調され、年老い、死に、孤独になってゆく寂寥感をより一層感じさせたりするのです。そして特筆すべきは原節子さんでしょう。杉村春子さん演じる長女などはキャラクターこそ強烈なれど、後々〝段々あんなふうになっていく〟と会話にあるようにあまり不自然には見えないのです。ところがどっこい原節子さんの演じる未亡人の義理の娘は優しい笑顔を常に浮かべているのですが、これがある種、亡霊のような怖さを感じさせるのです。しかしだからこそ最後の最後で〝ずるいんです〟と告白するシーンが圧巻なのであって、血の繋がりがない義理の親子が実に理想的な親子像だったりするあの場面に寂しくも温かい気持ちになるのです。
[ビデオ(邦画)] 10点(2008-10-17 18:25:39)(良:4票)
6.  用心棒 《ネタバレ》 
これぞ娯楽時代劇の傑作!あまりの凄さに幾度も見返してしまいました。駆け引きしつつ困っている弱者を助け、宿場に巣食う悪人どもを一掃してしまうストーリーもさる事ながら、やはり何と言っても三船敏郎でしょう!かっこ良過ぎです。あの物腰、剣さばき、ぶっきらぼうの中にある優しさ、そして後姿!私も似合わないとわかっていながら、何度と肩をいからせてみたことか。もう彼のような俳優は出てこないでしょうね。時代だといえば仕方のない事なのですが、時代劇ファンとしては残念です。・・・ところでもう一人の用心棒、本間先生も良い味出していますね。これは私の想像の域なのですが、本間先生は別にただビビッたりインチキだったから〝昼逃げ〟をしたのではないと思うのです。ちょっと悪党から小遣いをくすねてやろうという気持ちだけで、もともとこんなヤクザの出入りに加勢する気もなけりゃ、まして命を張る気なんて毛頭なかったからなんじゃないでしょうか。だから去り際に振り向いてニンマリと笑顔を見せる。そんな本間先生に一瞬手を上げ挨拶しそのまま御髪を直す三十郎。無言ながらの二人のやりとりが心憎いです。   
[ビデオ(邦画)] 10点(2005-11-11 17:41:11)(良:2票)
7.  スモーク(1995) 《ネタバレ》 
とにかく好きです。ヘビースモーカーがタバコを吸うように何度も何度も観返してしまいます。ラシードはポールという偽名を使い父親と再開を果たし、ルビーはオーギーの娘だと真実とは分らないことを言い、娘を救う。オーギーも孫だと嘘をつき、おばあさんに最後のクリスマスを楽しませた。そしてたとえオーギーのクリスマス・ストーリーが作り話だったとしても書けない作家ポールを助ける事になる。皆が嘘をつき、それがうまい具合に運んで行くというおかしさ。クリスマス・ストーリーはもちろん、氷漬けになり息子より若くなった父親の話、タバコの煙の重さの話、4000枚の写真の話など一つ一つの小話も素敵です。ゆっくりした時間の流れ中で、じっくり味わうように観たい作品です。オーギーみたいなタバコ屋さんが近所にいたらいいのになぁ。・・・オレは吸わないけど・・・。
[ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-02 17:40:55)(良:3票)
8.  河内山宗俊 《ネタバレ》 
もとのフィルム状態が悪いのと私の録画したビデオ状態が最悪なことで、台詞が聞き取れない部分が多かったのですが(〝河内山の女房だ〟〝初めて人間になれた〟などなど良い台詞があるのに!)、画面を見ているだけでほとんど分かってしまうぐらい作りが完璧です。原節子さんが身売りを決意する場面は言わずもがな、狭い通路を使ったチャンバラシーンも、走り去って行くシーンも、いずれをとっても素晴らしく列挙していたらキリが無いほどで、アッと言う間の凄まじい82分間でした。これが山中貞雄監督の初体験だったのですが、てっきり残念ながら夭折してしまったことや、作品が三本しか現存していないことが手伝って神格化されているのだと思っていました。が、実際に見てみて度肝抜かれるとはこのこと。しかも後に、これを撮ったのが二十代半ばと知り再び肝を抜かれました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2010-06-16 18:33:13)(良:1票)
9.  その男、凶暴につき 《ネタバレ》 
ホームレスをリンチした少年の帰宅シーンにおいて、少年の帰宅からタケシがやって来るまでのショットが固定されていて何やら不穏な空気が満ち満ちており、頭っからもうこの映画はただ事ではすまされないぞという予感をさせます。事実、ただ事ではすまされず、例えば我妻と岩城が最後に会っているシーンでは会話を完全に省略してしまっていますし、妹についても全く説明がありません。しかしそんなこと説明せずとも物語はちゃんと成立していますし、映画としては素晴らしい出来栄えなのです。 例えば歩くシーンが頻繁にありますが、タケシさんの歩き方というのは別して格好良いものではないですし、カッポカッポいう靴の音にしたって響きが素晴らしいわけではありませんが、ここでは凄まじく魅力的です。・・・ただ、ラストに悪人を殺しても何も変わらないというオチをもってくるは良いのですが、菊地刑事がまるで我妻のように歩くショットを挿んでしまっているので、彼が我妻ではなく岩城の代わりになるのは妙な気もします。
[ビデオ(邦画)] 9点(2010-02-03 18:14:44)(良:1票)
10.  探偵事務所23 くたばれ悪党ども 《ネタバレ》 
鈴木清順監督の作品の中では特に宍戸錠さんが出演しているものが好きで、その中でも本作が一番のお気に入りなのですが、いつだって独特な感覚が冴え渡り唸らされてしまう清順作品としては極めてオーソドックスな色合いです。 しかしながら凡人の筆者としては本作ぐらいの調子の方が単純に楽しめますし、それぞれの場面も木目細かく、冒頭のヤクザの抗争シーンからしてもう面白くて仕方ありません。どこかの物置のCMのごとく車に過剰に溢れるヤクザたちの喧騒が良いですし、錠さんとサリーが歌い踊る場面なんてホントご機嫌で最高です。もちろんそんなダサいところも見せながら一人巧みに立ち回る錠さんがとにかく格好良いですし、どこか寂しげに凛としたヒロインの笹森さんの美しさも光っております。それに脱出方法としてマシンガンで地面に穴を開けてしまうってのは凄いじゃないですか!
[DVD(邦画)] 9点(2009-10-23 18:39:54)
11.  あの夏、いちばん静かな海。 《ネタバレ》 
主人公は耳が聞こえないですが、これは耳の聞こえない者の物語ではないようです。つまり言葉なんてのは、さして重要ではなく排除しても差し支えないものであるから、主人公から台詞を奪うために、あえて耳を聞こえなくしたのではないかと思います。実際、ほとんどの台詞が無意味でしょうもないもので、例えば、バスで距離がひらいた恋人二人が歩いて再会するシーンだけで台詞など無くとも充分に物語っているのです。  さらに、ラストの楽しい思い出のようなシーンの数々は作中では省かれてしまっています。強面の河原さぶさんがトロフィーを手にし嬉しそうに酒を飲む姿などは感動的で、普通なら本編に挿し込んで簡単にお涙頂戴モンにしそうなものですが、そんなことはせず、ただただ黙々と歩き移動する姿を映し続けていて、それでも胸に響いてしまうところが凄いです。 ・・・と言っておきながら、私のお気に入りのシーンは思い出の方に近い、彼女がサーフボードの後ろを持ってあげるところだったりします。サーフボードが持ち上がり二人が顔を合わせニッコリと笑うのが微笑ましいですし、それを後で男のコンビで笑いとして使ってしまうのも良いですね。  それから、これは海の映画なんですが海そのものよりもビーチの方が魅力的に見えます。
[DVD(邦画)] 9点(2009-08-28 18:36:26)(良:1票)
12.  Kids Return キッズ・リターン 《ネタバレ》 
この痛いまでに青春を感じずにはいられない映画は、どうしたって前半の反復部分が好きですね。学校の屋上とか喫茶店とか中華屋とかカツアゲとか…繰り返しというのは青春の一つの要素だと思います。毎日毎日、同じ時刻に同じ仲間と同じ場所で同じことをする。後半、社会に飛び出し、それぞれが挫折していく姿も哀しいのですが、ほとんど反復しなくなっていくことが、より一層に青春の終り告げているようであり寂しさを感じさせます。だからこそラストの校庭がもの凄く効いていて胸にグッサリと突き刺さります。あの自転車に二人乗りなんぞはまさに青春であって、(交通法の問題とか別にして私道にしたって)大の男になってしまったらチャリンコ二人乗りはもう出来ないのです。
[DVD(邦画)] 9点(2009-08-14 18:40:20)(良:4票)
13.  ピストルオペラ
何だかよく分からないシーンもあるのですが、痛快なまでに単純な物語を見失うほどでもありませんので、それぞれの部分部分でも楽しいですし、何よりこの映画は露出度が低いにもかかわらず、とてもエロティックで官能的です。 D・W・グリフィス監督は「映画とは女と拳銃」と言ったそうですが、まさにこれは〝女と拳銃〟で出来た映画であります。とても気に入りました!・・・「具体的にどこが良いの?」と問われれば上手いこと説明できず「ちゅーちゅーたこかいな」と答えてしまいそうですが、とにもかくにも気に入ったのです。
[DVD(邦画)] 9点(2009-07-28 18:26:12)
14.  お早よう 《ネタバレ》 
住宅地の一画の何でもない日常生活風景なのですが奇妙な魅力を秘めており、それぞれの人物の登場させ方も絶妙で押し売りコンビまでもが完璧に出入りしています(押し売りを撃退するおばあちゃんが一番凄い!)。またオナラという下品なギャグも、返事と違えて奥さんが「何だい?」とやって来たり、干したパンツを旗のようにさわやかに見せたりと、品を損なわずにカマしてみせるところなども流石です。  それから「アイラブユー」と軽く言ってのける弟の存在がとっても効いており、本来ならもっと陰惨になる親子喧嘩などのシーンも弟の存在が柔らかい印象を与えてくれて、河原におひつを持って行ってご飯を食べるシーンなど、何とも気分が良いものです。ラストの駅で「良いお天気ですね」などと無意味な会話から恋愛が発展しそうなオチ?もくすりとしてしまいます。
[ビデオ(邦画)] 9点(2009-06-02 18:33:02)
15.  野獣の青春 《ネタバレ》 
時折、不自然に思えるようなショットのつながりがありますが、それが必然なのだと思えてしまうくらい一つ一つの画面に力があります。またジョーと竹下が内密な話しをするのは当然のごとく雨の埠頭のような場所であって、野本が女房を殴るのは当然のごとく砂埃が激しくまう荒野のような場所になっているのが面白いところです。  さらに男と女という生き物も巧く描かれていまして、例えば野本の女房の狡猾な振る舞いもそうですが、三波の治療をするシーンで全く目をそらさずに見る竹下の奥さんが怖い。これは刑事の妻だからではなくヤクザな女だったからなわけですが、表では編物教室なんかやっていて実は怖~いという二面性が凄いです。それに対して男はとことんバカなのです。竹下もバカだったしジョーもバカだったし、極めつけは三波であって、その行動原理は短絡的で言うに及ばずですが、そこには絶対的な決まりというものもちゃんとあって、たとえ親分を撃ち殺すことになっても男なら何であろうと貸しは返さなきゃならんのです。 
[DVD(邦画)] 9点(2009-01-30 18:53:27)
16.  山椒大夫 《ネタバレ》 
家族の別離による激しい苦しみ。安寿と厨子王、それに母親のほとばしる感情が画面から溢れ出ています。そして山椒大夫の根城の陰鬱な雰囲気。物語としては前半部の方が過酷であり劇的なんですけれど、この映画は厨子王の逃亡場面あたりからが特に際立っていると思います。もはや一瞬たりとも気が抜けたシーンがないどころか素晴らしいシーンの連続!まったく驚愕の完璧さです。
[ビデオ(邦画)] 9点(2007-09-19 18:31:51)(良:1票)
17.  赤ひげ 《ネタバレ》 
とにもかくにも、力強く傲慢にならずそして何より包み込むように優しい赤ひげの人物描写が素晴らしい。冒頭で酷い所だという津川の話しを聞かされ、いかつい風貌の赤ひげから偏屈な人物を連想し懐疑的になる。だが、駄々っ子のようにする保本を頭ごなしに叱ったりするのではなく気持ちをちゃんと察する赤ひげの姿を見せられ興味が湧いてくる。この展開により観客と保本の視点は同一化され赤ひげの人柄に保本と共に触れていくことになる。人物観察を始めると様々な面が描出され徐々に好感を持てるようになってくる。お偉いさんの診療シーンで医者として折り紙つきの腕であることが判明し、法外な治療費の請求で弱きを助け強きを挫く彼の人物像が決定付けられる。その上、己の力を過信せず医術の及ばなさを嘆き、行為を下劣だと認め恥じている姿に潔さを感じマイナス面の存在に親近感が湧く。でも決して赤ひげが絶対という事ではなく、嫌気が差した津川も悪い人物として描かれている訳ではない。それが赤ひげが極めて特異な人物であるという事を証明しているようである。だがやはり、貧しい者のために小石川養生所で日夜全力を尽くす、名誉や金に無縁な赤ひげこそ医者の、いや人間の鑑だっ!
[ビデオ(邦画)] 9点(2006-04-03 17:49:10)
18.  椿三十郎(1962) 《ネタバレ》 
「用心棒」に引き続き化物級の働きで事件解決してしまう〝何ちゃら三十郎もうすぐ四十郎だがな〟。やはり三船敏郎が素晴らしいというか凄過ぎて圧倒されます。今回はその三十郎と、頭は足りないが真っ直ぐな若侍とのコントラストも室戸半兵衛との一騎討ちも見所ですが、私は奥方との関係が何とも好きですね。まるで正反対の人間である二人が、お互い一目置いていると言いますか認め合っている様子が随所に表われています。奥方は三十郎のような鋭い切れ味はなく抜き身の三十郎を〝よく切れる刀〟と称し鞘に収め最高の刀にし召抱えたいと考える。そして危ないほどにギラギラしている三十郎には奥方のような品格が備わっていず、立派過ぎる奥方の前では居心地が悪く借りてきた猫のようになる。このキャラクターの造形と対比はシンプルですが、対極にあるからこそ互いに持ち得ない魅力に惹かれ合うという普遍的な事を面白おかしくも美しく描いています。奥方たちが合図は赤い椿だ白い椿だと緊張感のかけらも無い呑気な議論をしている間、三十郎がイライラを隠せず仮名をなぞるシーンなど笑えます。しかし何と言っても奥方のため三十郎が踏み台になる場面が秀逸ですね。
[ビデオ(邦画)] 9点(2006-03-13 18:45:22)(良:1票)
19.  蜘蛛巣城 《ネタバレ》 
シェイクスピアの『マクベス』を翻案した本作ですが、見事に日本風にアレンジされています。野心や強欲から身を滅ぼしてしまう愚かな人間。物の怪に唆された訳でもない、ただ心の底にある願望が実現すると言われただけで足を踏み外してしまう様が恐いほど鮮明に描かれています。そんな人間の心理を演じる役者さんが素晴らしいですね。三船敏郎はもちろん、それほど乗り気でない武時に対して、山田五十鈴さん演じる浅茅が無表情で冷酷に指示する姿が不気味です。『マクベス』の「女から生まれた人間に殺されない」というのは省き、最後の壮絶な絶命シーンにしたのは、舞台では到底できない映画ならではの演出ですね。矢の雨の中、目をひん剥いて逃げ回る三船敏郎の強烈さは見物です。冒頭ではまるで昔話を始めるかのように、終りでは無常観が余韻となるように写る城跡も雰囲気を醸し出します。ただ惜しむらくは何を言っているのか聞きづらい事。やや人物関係が入り組んでいるので、誰と戦をしているのか一回観ただけでは良く分りませんでした。
[ビデオ(邦画)] 9点(2006-02-21 18:25:01)
20.  四川のうた 《ネタバレ》 
インタビュー形式のドキュメント風ですので虚実が気になるところですが、この映画の魅力はリアリティよりも面白さを重視しているところにあります。というのも登場するインタビューを受ける人々は誰もが話し振りを心得ていて、ニュースなどで流れるようなものでは全くなく、まるでタランティーノの映画に出てくる小話のように聞こえるからです。それどころか、話者の息遣いや抑揚、背景の構図や物の位置まで綿密に計算されているようであり、この出来過ぎさは一歩間違えれば不信感を招きリアリティを放棄しているかのようにすら見えます。つまり、白けない程度の真実味を保ちながら虚構で魅せる。これこそまさに映画ではないかと思い知らされます。最後の話者である新世代の若い娘が、新世代の街を背景に労働者である両親について語る場面では、もはや本当か嘘かなどは関係無く語る姿に感動してしまいました。
[DVD(字幕)] 8点(2012-02-17 18:37:15)
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