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しってるねこのちさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  クライマーズ・ハイ(2008) 《ネタバレ》 
社会派ドラマとして見ると痛い目に会うというか肩透かしを食らいます。 「チェック、ダブルチェック」を旨とする主人公が大事故の全権デスクを任されたタイミングで同僚の入院や部下の死が重なり自分を見失いかけながらも奮闘する物語なのですが、中身はスッカスカです。 情況描写は非常に上手いのですが本来それを支える作品のテーマや主人公の信念といったものが見えて来ません。 スポーツの試合を一試合最後まで見届けて勝敗や内容を堪能すると言うより、同じ時間で好プレー珍プレー集を見せられた感じです。  特に作品のメインとなる圧力隔壁のスクープの掲載判断を迫られる場面等は醜悪です。 フィクションとはいえ毎日新聞が抜いたスクープを覆すような安い脚色にしないのは当然ですから話の落とし所は最初から決まっているので、判断結果ではなく判断理由を克明に表現すべきなのにほぼ出来ていません。 あれでは主人公が慎重というより次長の言う通り腰が引けたといった感じに見えてしまいます。 その後の辞表提出のタイミングにより主人公が「コネ入社のキレやすいビビリのダメ社員」という印象になってしまいました。 こうなってしまうと本作が何を表現したいかが全く解らなくなってしまいます。  しかし、役者さんの演技や個々の演出にはかなり魅せられます。 田口さんを除くほぼ全ての登場人物が肉食系といった感じです。 そんな彼等のバラバラの利害を絡めてカオス寸前の北関東新聞社を見ていると、こちら側にも緊張感が伝わってきます。 事故の遺族や関係者の方には不謹慎とも取られてしまうかもしれませんが大事故が起きて色めき出す新聞社内や配慮のない社員の言動等には説得力が有り作品としては好感が持てます。 記者の葬式の後に短く差し込まれた所以外は音楽や話の内容をオーバーラップさせながら見せる登山シーンもそれなりの効果を出せていたと思います。  右脳にとっては良い映画だったかもしれませんが、左脳にとっては退屈な145分になってしまったと思います。 作品を通して役者さん達の高い熱量の演技を維持させる演出は見事なので原田眞人さんは監督業に専念して脚本は外注した方が良いのではないかと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-06-29 02:36:25)
22.  雲霧仁左衛門 《ネタバレ》 
活劇という見せ方をしている本作ではやはり160分という時間は長いと思います。 名古屋城への殴り込みの前で潔く終わりを迎える脚本に仕上げて貰ったほうがすっきりした作品になっていたと思いますが、兄の蔵之助が仁左衛門の身代わりになった後の話の展開も面白いので捨て難いのは理解できます。 しかし、その場合は上記したように全編ガチャガチャした活劇だと疲れてしまうので幾分トーンダウンさせて落ち着いた時代劇にして貰わないと正直見ていて辛いです。 原作の印象を思い出してもどちらにでも出来ると思いますので、私的には落ち着いたものにして欲しかったです。  役者さん達は右を見ても左を見ても濃い人ばかりで濃すぎる演技を見せてくれます。 個性派と呼ばれている川谷拓三さんや成田三樹夫さんがひとつの画面に表れるだけで得した気分になります。 また、9代目松本幸四郎さん、加藤剛さん、高松英郎さんはどの作品を見ても清廉性のある大勢側に居る気がします。  池波正太郎さんの原作という事でしたら2~3つだけでも美味しそうな料理を食べるシーンがあっても良かったかと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2015-06-27 01:31:16)
23.  待ち伏せ 《ネタバレ》 
立ち込める霧の為に鈍い黄緑色になった暗い山道を、黒く潰れたシルエットの浪人がこちらに向かって歩いてくるオープニングカットはかなり良い感じですし、タイトルが出るまでの鎬刀三郎と頭巾を被った「からす」との密談は、これから2時間余は飽きさせないであろうと予感させてくれます。  脚本も説明不足の為に見ている側が想像しなければならない箇所も有りますが総じて良く出来ています。 そして何と言っても4大スター共演というのが本作最大の売りだと思いますが、同時に最悪の結果を齎しています。 主人公の鎬は勿論ですが玄哲は鎬の好敵手?(微妙な関係です)としてそれなりに描かれているのは良いと思いますが、伊吹と弥太郎の配役に主役級の2人を当てた事で物語の余計な比重が2人にいってしまい話全体が散漫なものになってしまっています。 本来脇役であるこの2人が中途半端に目立っている為に彼等自身が活かし切れていないのは勿論、鎬の印象も薄くなってしまっています。 その好敵手である玄哲も言わずもがなです。  本来ならば鎬に軸足をどっしりと置いて話を展開させていけば、かなり面白い作品になったと思います。 その場合は本作以上に三十郎シリーズの亜流と言われる事にはなりますが…。 作中の三船さんの戦っている相手は目の前の敵ではなく、過去の三十郎での自分の演技であるように見えてしまい、決して演技の幅が広いとは言えない彼を見ていると気の毒にも映ってしまいます。  4大スター共演という要素を本作の必須条項と考えると、この話にした事でもはや成功は無かったのではないでしょうか。 また演技の面では上手いと言える役者さんは一人も居らずメインの4人のうち唯一、勝さんが存在感を出していましたが自分一人の中で完結してしまっている印象の演技でしたし、伊太八を演じた土屋さんに関しては残念の一言です。  そして冒頭の一部のシーンを除くと演出が作品全体を通して酷い事になっていたと思います。 メインの舞台をみの屋という狭い空間にして登場人物の出入りと時間軸に幅を持たせた脚本にしているのですから、話の繋ぎ方や細かい場面の見せ方等に工夫を持たせてテンポ良く見せて貰いたかったです。 殺陣のシーンでも何故此処で歌舞伎の舞台を意識した様な演出にしたのかという誇張されたものになっていますし、それとは趣きを変えたラストのからす一味との殺陣も取ってつけた様で三船敏郎特典殺陣シーンみたいになってしまっている印象です。  こういう脚本を掘り起こして中堅の役者さんを沢山使って、大胆に脚色してでも良いですから今の時代に丁寧にリメイクして欲しいと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2015-06-24 20:43:05)
24.  はやぶさ/HAYABUSA 《ネタバレ》 
お年寄りからお子様まで楽しめる映画という印象でした。 その為かデフォルメの仕方が偏り過ぎたキャラクターがいたのが気になりましたし、その割には上手く使い切れていない感じがしました。 「こういう人物はこんな感じでいいだろ。」みたいに上から目線でカテゴライズしている様で快く思えませんでした。(更にその上から私はレビューを書いているのですが…) 水沢が綺麗過ぎるのは主役なので仕方無いとしても、坂上を奇抜に描いてもそれに繋がるものが何も描かれていないので完全に空振りしています。 はやぶさ君の絵日記などは非常に解りやすくて助かりました。 竹内さんのアテレコも本編の水沢役より良かった気がします。 その様な効果もあって、大気圏で燃え尽きてしまうはやぶさには目が潤んでしまいました。 トラブル続きの満身創痍で帰ってきて最後に大気圏での機体焼却は計画通りなんて…。 何年も放浪していた放蕩息子が帰ってきた時に親の言いつけを思い出して、困っているおばあさんの荷物を持ってあげたら荷物の中から出てきたマムシに噛まれて玄関先で死んじゃったみたいです。 2時間位の付き合いで感情移入してしまうのですから、何年も参加していたプロジェクトスタッフの気持ちを想像すると更に切なくなってしまいます。   最後に前々から思っている事ですが、やはり宇宙開発の国家予算が少なすぎると思います。 今日まで技術大国と自負して、その恩恵を受けてきたのですから、それに見合った額の予算を割いてもらいたいです。 献身的な技術者に支えられていても限度があると思いますし、それでは未来は有りません。 声を大にして言いたいのは、私は税金を今以上取られたく有りません! なので、無駄に使われている予算や、役人や議員の懐に入るお金をきちんと調べ上げて適切に配分して貰いたいです。 映画とは関係なくなっちゃいました。ごめんなさい。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-06-21 05:34:57)
25.  クヒオ大佐 《ネタバレ》 
堺さん扮するクヒオ大佐はよくあるコントからライブ感を引いて鮮度の落ちた所に良くないリズム感を足したようなキャラクターで、笑えるかと聞かれれば正直笑えませんし笑ってくれと頼まれても笑えません。 しかし新井浩文さんがそんなヌルい詐欺師の前に現れ鋭いツッコミを入れると僅かばかり可笑しくなります。 コメディとしてはその程度です。 ドラマとしても政治や湾岸戦争を絡めてこられてもそれ自体について訴えたかったのか、ラストのクヒオの妄想の前フリの為だったのかもはっきりとはしません。 本作でのクヒオ自身は恐らく幼少時のトラウマから来る解離性同一性傷害だったのではないかと思われ、作中では殆ど彼の交代人格の方が描かれています。 だとしたら捕まっても案外すぐ出てこれちゃうかもしれません。 この様にコメディとしてはほぼ笑えず、ドラマとしてもフォーカスがぼけてしまいながらクヒオの妄想でラストを迎えますが、怖いのはこのクヒオの脳内妄想が現実のしのぶにも見えてしまっている事です。 路上でしのぶは実際には飛んでいないクヒオの乗るヘリコプターに敬礼しています。 後ろで見ている弟はドン引きです。 クヒオの精神世界を共有する事が出来るしのぶって…。 これが「愛の力」なのでしょうか。 だとしたら、しのぶはクヒオと結ばれる以外幸せになる事は有りません。 まあ、可能性としてはハンバーグに入っていたのがニガクリタケでもクリタケでもなく、○藤英明さんが食べたヤツと同じキノコだったという方が高いと思いますが。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-06-20 03:34:56)(良:2票)
26.  歩いても 歩いても 《ネタバレ》 
阿部寛さんの演技は最近では褒めるのが当たり前になって来ました。 信夫を演じた高橋和也さんが役どころも良く作中では光って見えます。 特筆すべきは、孫達を演じた子役と言ってしまったら失礼に値する3人の役者さんです。 作品を通して大人達が作っている淡々と安定した世界観を壊すことなく、それどころか作中での夏という季節にシンクロするように作品に瑞々しさを与えてくれています。 3人の演技は勿論ですが『そして父になる』での子供達も同様の印象だったので是枝監督の演出や撮影現場の雰囲気作りが卓越していると考えるのが自然だと思います。 百日紅の紅い花を手に取って遊んでいるシーンは本当に素晴らしかったです。  家族だから言えない事、言ってしまう事、家族なのに伝わらない事、伝わってしまう事、家族の中で比較してしまう者、比較される事を否定する者、比較の対象として受け入れて貰いたい者等を親族の死を絡め、何気ない伏線を自然に回収させながら絶妙の距離感や台詞と丁寧な脚本、映像で厳しさや優しさとして小さくすれ違いながら表現されています。  長男の墓に水を掛けながら語りかけるとし子を死んだ兎に手紙を書こうと言った友達を笑ったあつしがじっと見ていますが、何年後かの墓参りで良多も同じ事をしています。 あつしの中に良多がじわじわと入ってくるというシーンを基に考えると、そんなあつしにも彼等の行動を理解する日が来るのかもしれません。 また、助けられた男性を長男の仏前に呼ぶ本当の理由を吐露するとし子の後ろで低く一定に鳴る換気扇の機械音は彼女の消える事のない怨念のような不気味さを増幅させる効果となっています。  登場人物が画の中にわさわさと居ても各人が的確な演技を見せてくれています。 しかし自然ではあるものの演技や演出に無駄や隙がなさすぎるので作品全体が無機質になってしまう箇所もあり、話の抑揚がかなり抑えられて各シークエンスもそれぞれに完結してまっている所が多く、そこからの発展が少ない為に見ているこちら側が委ねられるような大きな流れのようなものを感じられません。 この様な演出は監督の狙いだと思いますし私自身も劇的な展開やあざとい心理描写等を本作からは望んではいませんし程度の問題だと思いますが、話の本筋というものが掴みづらいと単なるサイドストーリーの集合体で成り立っている俳優や雰囲気で見せる作品という印象になってしまいます。 そこに少し上手過ぎる演出の弊害のようなものを感じてしまいました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-19 18:58:41)
27.  座頭市(2003) 《ネタバレ》 
殺陣のシーンにCGを多用したり、時代劇でボリウッド的ラストのタップダンスを挿入したりとアイデア自体は面白いのですが個々のクオリティーを見るとそのアイデアに全く追い付いていない印象です。 殺陣に限らずアクションシーン等でもCGに頼る事は肯定しますし必然な時代だと思いますが、作中での血の飛び散り方等は何時何処で誰をどの様に斬っても一様な表現で、テレビアニメの使い回しのカットを見せられている様で、『暴力』に拘りのある北野監督作品としては残念に感じますし、刀が体を貫いているカット等は前世紀のCG技術で今世紀のそれとは言えない程に見ているこちらが恥ずかしくなってしまうレベルです。 また、タップダンスからは本来見せたかったであろうダイナミックさは感じられません。 理由としてダンサーの数と技量、カメラアングル、編集、そしてナイトシーンにした事で画に拡がりがなくなってしまっていることです。 ストーリーとは切り離した割り切っているシーンだと思うので、途中からデイシーンに瞬間的に転換させて青空の下で撮っても良かったのではないかと思いましたし、欲を言えば作中にあった狐の嫁入りの様な中での殺陣シーン宛ら晴天の雨降りという中で踊るくらいの極端な振り切り方をして、スケール感を出して貰いたかったです。 幾つかの場面で作業をパフォーマンスにしたり、それらの生活音をミクスチャーさせて遊んでいるシーンがある為にラストのタップダンスにそれ程違和感なく繋がっていたので残念です。  役者としてのたけしさんは相変わらず存在感が有りカッコ良かったです。 台詞回しにはムラが有り良い時もあればそうでない時もありますが、体の左右のバランスが崩れた姿勢の悪い佇まいから来る危険な雰囲気は未だ損なわれていませんし、居合の達人座頭市としての凄みは十分感じられます。 殺陣シーンでの決して美しいとは言えませんが地に足をしっかりと付けた低い重心からの直線的な斬り込みや、目を閉じているので歯を噛み締めた力んだ表情で見せる演技の付け方等は、強さと同時に市の不器用な性格と人を斬るのに力が要らない訳がないという勝手な想像から来る説得力を感じてしまいますし、掛け値なしで痺れます。  最後に一映画ファンでしかない私ですが生意気な事を書かせて貰えれば、良いアイデアを具現化出来ないのは『コメディアン上がり』という生粋の映画業界出身でない為にスタッフに遠慮してしまっているのかなぁとか、自分自身に言い訳してしまっているのかなぁ等と考えてしまいます。 役者にしても監督にしても『コメディアン上がり』等という低いレベルで評価されるような映画人でないのは周知の事実なのですから、もっとストイック且つ丁寧に拘りを持って作品を仕上げていって貰いたいと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-06-17 18:57:14)
28.  家族(1970) 《ネタバレ》 
2年後に制作される『故郷』のプロトタイプ的な作品で、『故郷』に比べるとカメラワークや編集は若干雑な印象が有ります。 ドキュメントタッチで描かれているという事もあり、内容や演出等に統一性が余り感じられず、特に前半の西日本では万博でのチンケのシーン等、作品のトーンや内容からズレている箇所があり見難くなってしまっていました。 それでも富士山を過ぎた辺りからは見せ方や内容に纏まりが出始めて見易くなります。 しかし、作品のテーマである家族とそれを構成している個々の命の在り方についての描写は余り錬られている印象はなく、早苗や源三の死は少々強引且つ安直な表現である気がしますし、仔牛の誕生や民子の妊娠も取って付けた感じがします。 家族の生死に焦点を合わせるより、家族の繋がりをもっと丁寧に描いて貰いたかったです。  そんな中でも山田監督らしい叙情的に優れたシーンも有ります。 青函連絡船の中での精一の家族に対する怒りの態度は、処理しきれない彼が抱えた苦悩の裏返しであり、一人甲板に出て泣く姿は一家の主として切なく映ります。 そして源三の死の直後、民子に「俺はアホやった」と泣きながら弱音を吐く精一には男であるが故の悲しさを感じますし、そんな精一に寄り添い慰める民子の姿は印象的です。  前述した様に演出や話の内容がテーマに対して散漫になってしまってますが、俳優陣のレベルの高い演技によって作品自体はしっかりと纏まってみえます。 特に笠智衆さんの源三は、本当は気弱であろう精一や民子の理解者となる懐の深さを感じさせる役どころを朴訥とした演技で見事に演じきっています。 ビールを飲み「うまい」と言った時の表情や、隆と遊んでいる姿やお饅頭の説教等、彼の演技というか笠智衆さん自身を見ているだけで心地良い時間を過ごせます。 倍賞千恵子さんや井川比佐志さんの演技を柳の様に受け流しながら、決して主張はしませんが独特の個性と存在感を感じさせて作品の要となっています。 また、倍賞千恵子さんの誠実で安定した演技は既に完成されています。 日本で一番華のない天才女優だと言っても過言ではないと思います。  俳優さん達の演技は特筆すべき作品ですが、内容的には何も起こらない『故郷』は胸に染み入る様なドラマを感じるのに対して、色々な事が起こる本作からはそこ迄印象に残るものは感じられませんでした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-06-13 02:02:29)
29.  マイ・バック・ページ 《ネタバレ》 
話自体はまあまあ面白いのですが、作品の核となるテーマが掴みづらいので長尺で抑揚の余り無い本作は、話が展開していっても客観的にしか見られないので少々ダレ気味になってしまう箇所も有ります。  作品を俯瞰的に見ている観客には梅山も前園も『本物』でない事は簡単に看破できます。 目的は自己顕示で、思想は空っぽで、行動はノリです。 過激な思想家というより打算的な夢想家という感じに描かれています。 その時代を代表する様な連合赤軍の実録本等を読み彼等の内情を理解すると、革マル派等とうそぶいていた左翼を平均化した人間が、梅山という中身の無い無駄に言論武装したキャラクターの様に感じます。 東都出版の先輩記者達が梅山を『偽物』と見抜くのに対して、CCRの曲を一緒に歌う事で共通のアイデンティティを見出し、その程度で沢田が梅山にシンパシーを感じてしまう表現等は大人と子供の間にある壁や、沢田の幼さを上手く描いていると思います。 しかし、沢田も徐々に梅山の人間性に疑問を抱く様になり「君は誰なんだ」と問い詰めます。 結局、梅山にとって沢田は都合の良い道具でしか無く、騙され、利用され、裏切られ、それが原因で沢田の青春の1ページであったマスコミでの仕事も辞める羽目になれば、沢田の悔しさは計り知れないものだったと思います。  月日が流れて沢田は居酒屋のカウンターを挟んで偶然タモツと再開し、彼と過ごした日々を思い出しながら語り合い、そして気付いたのではないでしょうか。 潜入取材という利己的な目的で自分の素性を偽りタモツに近づき彼を利用して、罪悪感を感じつつも記事を書いた事を。 ウサギを真剣に売っているタモツの横で彼のしている事とその状況を笑いながら傍観していた事や、ウサギを死なせてしまった事をお金で解決しようとした事を。 結果こそ違うが自分がタモツに対してとっていた行動は、マスコミという世界と真剣に向き合っていた青春の1ページの中で、梅山という身勝手な人間が青臭い自分に対してとった侮辱にも値する行動と同じだったのではないか、という事を。 そして今までその事に気付かなかった自分の浅はかさを。 勿論そんな事を当時も今も知らないタモツが、キリストにあげたスーツを本当は沢田にあげようと思っていたと言われれば彼が泣いてしまうのは当然だと思います。 大人の男が泣く事の伏線をもう少しぼかして気付くか気付かないか、このシーンを見て思い出す程度に上手く張って貰えれば私も一緒に泣く事が出来たであろうし、泣きたかったので残念です。 重要なシーンへの伏線を明確にさせ過ぎると逆に冷めてしまいます。  私自身も今まで気付かぬままに、『青春』や『若さ』という未熟な思い込みの特権で、『我武者羅だったから』とか『周りが見えていなかったから』等の言い訳にもならない様な理由で、他人の世界を踏み荒らしたり、その人自身を傷つけたりして来たのではないかと、鋭く問い質される様なラストのシークエンスは泣き崩れる主人公に自分を重ねずにはいられませんでしたし、作品的にも瞬間的に引き締まったものにして切ない余韻を残しつつ上手に纏め上げられていると思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-12 19:06:38)
30.  八つ墓村(1977) 《ネタバレ》 
村に伝わる落ち武者の祟りに見せかけた営利目的の殺人事件ですが、人間関係や過去の事件、主人公や犯人の出生等も全てその怨念によって導かれているという設定は俊逸ですし、事件と怨念のバランスの取り方が素晴らしく話自体が非常に怖くて面白かったです。 タイトルからして原作者のセンスを感じます。 舞台となっていた村や東屋、洞窟等のロケーションも素晴らしく作品自体に深みを与えるものになっていたと思います。 特筆すべきは何と言っても多治見要蔵の大量虐殺のトップカットでしょう。 ふんどし姿にガンベルトをたすき掛けにして、右手に日本刀、左手に猟銃、そして有ると無いとではインパクト的には全く違うDIYのヘッドライト。 そんな狂気の彼が青白い薄暮の桜舞い散る中を真っ直ぐこちらに走ってくるハイスピードの映像は芥川也寸志さんの迫力ある音楽と相俟って極めてかっこ良く、そして美しいものになっています。 パロディでは何度と無く見た事が有りましたが、オリジナルを初めて見て痺れました。  個人的にはオカルト的なミステリーにベクトルを向けて欲しい内容でしたので、村祭りでの落ち武者惨殺シーンの見せ方は時代を差し引いて見てもクオリティーを含めて少し残念でした。 もっと心情に訴える様なおどろおどろしい表現に欲しかったです。 恐らく監督はスプラッター気味のホラー作品にしたかったのだろうと感じましたが、その為に粗さの目立つ脚本になってしまう箇所がありました。 前述した様に話自体が面白いので、脚本の整合性や細部を詰めていっても小さく纏まることは無かったと思うので勿体無い印象が残ります。  ゲゲゲの鬼太郎がリミットだった子供の頃の私にはこの様な作品は怖くて見れませんでしたけど、今回初めて見て子供の頃の自分の判断に感謝しました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-06-08 16:36:06)
31.  新選組(1969) 《ネタバレ》 
馬上から切りつける殺陣のシーンや、伊東甲子太郎暗殺場面での一連の剣捌き等は流石に見ていて迫力を感じますが、動きが無くなり台詞メインになると三船敏郎さん演じる近藤勇は途端に硬くなります。 近藤勇の持っている素朴で愚直というイメージや、芹沢鴨が死んで新選組のトップになり、逆にその立場に縛られて苦悩している様な硬さではなく役者としての幅の無さを見せられている様でした。 三船敏郎さんの演技は体の動きと連動した時にその良さが発揮される様な気がします。  局長になった事をゴールと考えた芹沢とそれをスタートと考えた近藤の相反する様相を写した前半が私にとっては見所でした。 ガチガチな三船敏郎さんに対して、やりたい放題の芹沢を演じた三国連太郎さんのアウトローっぷりは見応えが有ります。 芹沢が暗殺されてからは個人的には可もなく不可もなくといった印象でした。 しかし、全体的には脚色を混じえながらも幕末日本の内戦と新選組の内ゲバをバランス良く描いていて見易い作品になっていたと思います。 埃まみれの着物で京の街に居を構えた時の結束力のあった新選組が、隊を纏めるために厳しい局中法度を設けて、着る物も良くなっていくのに隊内が最後までバラバラだったのは皮肉な事です。  最後に他のレビュアーの方も書いていた様に三船敏郎さんを近藤勇に据えた事で配役全体の年齢層が高くなってしまい、幕末という時代を駆け抜けたというよりも、時代とがっぷり四つを組んでしまっている位に風格を感じてしまう新選組には感情移入するのが難かったです。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-06-07 21:08:38)
32.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
冒頭の如何にも顔見せ的な受刑者が順番に言う一言コメントや、風呂に入る前の一発芸大会や台詞等に違和感を覚えるシーンは多少有りましたが、本作を見ながらタイガーマスクや巨人の星を子供の頃に見た時にも「昔のアニメは言葉遣いや見せ方がヘンテコだなぁ」と感じた事を思い出しました。 制作されたのが共に昭和40年代前半という事なので、私が感じた違和感とは演出的な問題ではなく時代的要因から来る古さなのでしょう。  脚本自体のプロットは上手く出来ています。 回想シーンが唐突に入る等の印象は有りますが全体的にテンポは良く、如何にも弱々しい年老いた阿久田が鬼寅だったという一連の展開は俊逸です。 作品が始まる前の解説で鬼寅の正体を自称映画好きという元アナウンサーがしれっとネタバレさせていたのには本当にガッカリしました。作中の登場人物を軽く凌駕する一番の極悪人です。  俳優達も受刑者を活き活きと演じています。 田中邦衛さんはやっぱり田中邦衛ですし、嵐寛寿郎さんの前述のシーンには重厚な迫力を感じます。 権田の不愉快で気味の悪い人間性は見ていて本当に不快でしたが、逆に南原さんの演技力の高さという事だと思います。  モノクロというのも予想外でしたが、雪と対象物のはっきりとした強めのコントラストが美しく、ジム・ジャームッシュ作品の様なすっきりとした映像になっています。(勿論、本作の方が早く作られています) また、迫力溢れるシーンでの映像はこの作品を質の高いものにしている特筆すべき要素だったと思います。 トロッコでの追跡劇や汽車で鎖を切る一連の編集やカメラワークはスピード感や臨場感が有りましたし、食い入る様に見てしまうシーンは他にも多々有りました。 真っ白な雪の中でお互いに鎖で繋がれた、ある意味自由の効かない橘と権田が殴りあうシーンに、無限に広がる大空の中を自由に飛んでいるカラスが争っている様なカットが何度も差し込まれますが、まるで争う事は状況が原因ではなく闘争本能という逃れられない生き物の性が原因であると言っている様で虚しさすら感じてしまいます。  ラストでは大怪我をした権田を病院に連れて行ってくれるなら何でもすると人間的な良心を示す橘の要求に監察官の妻木が了承し、それに加え脱獄犯の2人に対して銃すらも携帯せずに同伴する妻木の行動に嬉しさが込み上げて来る橘が病院に行く為に馬を走らせる姿で終わります。 恐らく家族以外から信用を得た事のない橘が初めて他人から信用して貰えたであろう人間の根源的な喜びを、高倉健さんが子供の様な表情で見せているこのラストシーンはとても印象深いものになっています。 古くても時代を感じさせない優れた作品は有りますが、本作は時代の古さを感じつつも優れた作品になっています。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-04 20:00:56)
33.  息子(1991) 《ネタバレ》 
年老いた照男や聾唖の征子は周りの人達から腫れ物のように扱われます。 一応福祉制度が確立されているこの国の社会では要介護老人や障害者は等級を付けられて区分されます。 制度運営の効率上、必要な事だと思います。 しかし、システム化が進む程、対象の人達も人格を持った一個人としてではなくシステムの一部として扱われがちになってしまいます。 本作はそのような社会へのアンチテーゼを訴えている様に感じました。 しかし、作中ではそんな社会に対する不満はタキさんや寺尾に怒鳴らせておいて、当事者たちの問題は身近な人間関係の中で展開されます。  田舎で一人暮らしをしている老いた父親を引き取ろうとする忠司の行いは立派ですが、長男の責任や世間への体裁以上の感情は感じられませんし、征子の周りの人達も彼女を気の毒な女性としか見ていません。 そのように扱われる彼等には、同じ目線で接してくる哲夫の存在は生きる喜びの本質を感じさせてくれているように思えたのではないでしょうか。 哲夫が照男に征子を紹介する時に「この人には俺が必要で、俺にはこの人が必要なんだ。」という台詞や、照男が哲夫に「お前いつまで俺に心配させるんだ。」という台詞で表されているように思います。 他人から頼りにされる事は自分の存在意義と、それだけで生き甲斐にも通じます。 そのような彼等を特別に清らかな存在とはせずに、頑固者の爺さんであったり、彼氏と別れる時に自分からキスをする積極的な面のある女性であったりと、監督も普通の人間と同じ目線で描いています。 また、この様なテーマを東京で苦労しながら暮らす息子の哲夫を通して極めて自然に溶け込ませ、且つ丁寧な情景描写として描く演出は、見ている側の感情に深く染み込んできます。 東京で頑張って自分の人生を切り開こうとしている息子に対して、不器用な父親が夜中にビールを煽って歌い出すプリミティブな感情表現は至極とも言えます。 特にこのシーンの黙々と歌う三国さんと、初めは少し驚きますが俯き加減で口元を緩める長瀬さんの表情と演技には引き込まれます。  ラストの出稼ぎから戻った時の家族が揃った回想シーンは、作中で一番色が鮮やかでありながら柔らかいトーンの画で描かれ、家に戻った一人ぼっちの照男の心境的対比となっているのと同時に、私には汲み取り切れないであろう彼の人生の重さや量の様なものを想像して感傷的になってしまいました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-05-26 21:53:32)(良:1票)
34.  幕末 《ネタバレ》 
カチッ………カチッ…、と壊れたメトロノームの様に悪いテンポで話は進んでいきます。 「幕末」というタイトルからスケールの大きな群像劇かと思いきや「竜馬がゆく」を原作にした坂本竜馬主人公の物語でした。 それにしても作品からは混沌とした幕末という時代にあったであろう勢いやパワー、竜馬に対して抱いているイメージの人間的な魅力や不屈の行動力等は殆ど感じることはできませんでした。 イベントが掃いて捨てる程ある時代に全てを詳しく描けないのは当然ですが、竜馬を主人公にしているのでしたら勝海舟との会談で彼に傾倒する過程や、薩長同盟締結の理由と推移等はもう少し丁寧に描いて欲しかったですが、出来事の表面だけをあっさりと流した感じは残念でした。 それに加えて役者さん達の演技はかなり大袈裟で悪い意味での迫力任せに見えました。 クローズアップが少なかったのでそれ程暑苦しくはなりませんでしたけど、作品の為というより役者さんが個人プレーに走ってしまった様な印象でした。 また、カメラワークやカット割り、編集のタイミング等もマイナスの要因だったと思います。  関ヶ原の戦い以降に長宗我部に代わり山内が治めた事により他藩に比べ上士と郷士に大きな隔たりがあったというよりも、差別的とも言える対立が存在した土佐藩で、商人の饅頭屋近藤長次郎が仲間である筈の亀山社中の郷士から切腹を強要されるのは、それなりの理由があったとしても興味深い出来事でした。 かつての南アフリカでの英国白人とアフリカーナーと原住民の関係を彷彿とさせられる様な苦々しさを感じました。 差別から逃れる為に別の差別を生む構図は、四民制度の中でヒエラルキーの頂点の武士でも上士に差別されている郷士が持っているであろう人間の弱い本質を見せられている様でした。 その為、近江屋の二階で中岡慎太郎が四民の中で武士だけは特別だというのに対して、武士を含めた四民制度を壊す事を強く主張する竜馬の台詞は救いになりました。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-05-19 00:19:35)
35.  幸福の黄色いハンカチ 《ネタバレ》 
赤いファミリアで旅をする三人組の微妙な関係が非常に魅力的でした。 刑務所から出て来たばかりで色々な意味で人の温もりが一番必要なおじさんに若い男女が色恋トラブルで喚き散らしていれば健さんじゃなくてもバドミントンのラケットを持って説教したくなる気持ちは分かります。 武田さんと桃井さんの濃すぎるキャラは食傷気味な所も有りましたが、作品を引っ張って行くには十分ですし、この2人でなければ違うものになっていたと思います。  夕張の街を走り回り、大量の黄色いハンカチに気付き、その下での勇作と光枝が再開した一連のシーケンスは見せ方も素晴らしく、高揚感と感動を同時に味わうことが出来ました。 衝動的に殺人まで犯してしまった勇作を受け入れる光枝の姿は、罪を犯したどんな人間でも再起の機会はあるのではないかという監督の人間愛の様なものを感じました。  脚本や俳優さん達は非常に面白く俊逸な作品でしたが、映像等が気になってしまいました。 寅さんと違うタッチで描きたかったのかもしれませんが、粗いカメラワークやアングルは勇作と光枝が再開したシーンの2人のロングショットをアオリで撮っているカットなど良い所もあったので残念でした。 画的に動きや勢いを出したかったのだとすれば、失敗の部類に入ると思います。 必要無いカットや稚拙ともとれるカット割り等も目立ちましたし、音楽は時代を差し引いたとしても決して良くは無かったと思います。  キャラの濃い3人を乗っけて、脱輪して抜け出した次の瞬間に干し草に突っ込んだり、たこ八郎さんの頭とボンネットで勝負させられたり、最後にはラブホの代わりになっていたフロントグリルに穴の空いた赤いファミリアが愛おしくも感じてしまいましたし、名前がファミリア(家族)って何だかほのぼのしてしまいます。 邦画のロードムービーは余り見ていませんが、その中でも心に残る気持ちの良い作品でした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-05-12 19:32:39)
36.  ボクたちの交換日記 《ネタバレ》 
「夢を諦める時は、その夢を諦めてでも幸せにしたい人が出来た時で、それは父にとって母と私と田中さんです。」 田中の才能を伸ばす為ではあるが、それ以上に自分が彼の足を引っ張っているのを認める事は、彼をお笑いの世界に誘った本人としては諦めろと言われても諦めきれない様な決断だったと思います。 島田紳助さんがM-1グランプリは売れない漫才コンビの解散のきっかけを与える為に作ったと言っていましたが、内村さんも同じ事を大好きな映画で表現したかったのではないでしょうか。 残酷な様で必要な優しさだと思います。  監督が業界内の人間だけあって、悪戯に大袈裟にはならずにいきいきと主役の2人とその周辺が描けていたと思います。 伊藤さんと小出さんの演技もよくいるお笑い芸人以上のキャラクターを登場人物へ与えていたと思います。 また監督の人間性がそのまま作品に表れ、売れない芸人さんへの慈愛に満ちたメッセージと共に利他的な登場人物で溢れた心温かいものになっていた印象です。 本作の様な心の綺麗な登場人物になりたいといつも思いますが、残念ながらまだまだです。無理っぽいです。  上手く纏まっていましたが、スケールの小さな話を小さく纏めている印象が強かったです。 交換日記という手法は面白かったですが、話もスタンダードで内容も濃くはないのでTVドラマで十分な気もしました。(決してTVドラマを悪く言っているのでは有りません) また、音楽の使い方やそれ自体が終始軽くて安っぽく感じましたが、鑑賞後に思い返しても作品とそれ程かけ離れてはいなかった様に感じたので、作品自体がやはりそのようなものだったんだと再認識してしまいました。 毒にも薬にもならないと言ったら言い過ぎかも知れませんが、見終わった時に一番感じたものは少々の「物足りなさ」でした。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-05-11 21:58:26)
37.  おとうと(2009) 《ネタバレ》 
山田洋次とは社会や人間に対する大きなテーマを、市井の人々に溶け込ませてユーモアや哀愁を織り混ぜながら、それらをイキイキとした役者さんに語らせて作品を撮るハズレのない監督だと思っていたので、本作を見終わった時には正直残念でした。  とんでもなく下手な役者さんはいませんでしたが、上手な役者さんもいませんでしたし、彼等が演じている世界からは生気が全く感じられませんでした。 そんな世界観の中でステレオタイプの登場人物が次から次へと出て来れば薄っぺらい作品になるのは当然だと思います。  テーマは誰にでも訪れる死と如何に向き合うかという事と、生きている時には誰にでも居場所が必要で、それは一人では築けないという事でしょうか。 生きる事が下手な人間には尚更難しい事だと思います。 そんなテーマを物語に上手く落し込めておらず、無理矢理に話にくっつけた様に見えましたし、テーマに対する社会状況の説明になってしまっているプロットが多すぎて物語自体に魅力を感じられませんでした。 それぞれの登場人物の話も描き切れていないので中途半端にストーリーが進み、全体的に底の浅い作品になってしまい、深みや広がりではなくただ単に散らかっただけに感じてしまいました。  渥美さんや倍賞さんが出ていない山田監督の現代劇を初めて見ましたが、本作がこの様な印象だったので、もしかして今まで私が評価していた山田監督の作品とは、彼等役者さんへの評価だけだったのかと思ってしまう程でした。 ボーカルが代わったバンドの久々に出たアルバムを聴いて「やっぱり違うな…。」という感覚です。  また、薬局の中から外の道が見えるカメラアングルは、寅屋からの仲見世通りのそれを踏襲したものだと思いますが、殆ど活かし切れていませんでした。(活かそうとしていたカットは有りましたが…)  山田監督には映画の可能性を語っていた「キネマの天地」を見て頂きたいと思ってしまいました。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2015-05-04 03:02:21)
38.  昭和残侠伝 死んで貰います 《ネタバレ》 
この手の任侠映画をちゃんと丸々一本見たのは初めてでしたが、かなり良かったです。 役者さん達の着物の着こなしや台詞の日本語が自然で美しく、見ていて気持ちが良かったです。 任侠映画の必須項目である義理や人情をこれでもかというくらいに全編を通して表現されていますが、教訓としてではないので説教臭くなること無く見ることが出来ました。 女将さんが義理の息子と知りながら接していたことや、駒井から幾太郎を守るために秀治郎が叱責し、更に秀治郎を守るために重吉が飛んで来てぶん殴るシーン等は逆にストレート過ぎて妙な安心感と同時に心に響くものがありました。 駒井が勧進帳の富樫左衛門になる訳が無いのは解っていますが最後まで本当に嫌な奴でした。 諸角さん、良い意味で最悪です。 湿っぽい浪花節の中で長門さんのコメディリリーフ的なひょっとこの松は非常に効果的でした。 12年間位の話ですが急ぐ事無く調度良いテンポで、シンプルですが一つ一つの内容を丁寧に描いていたのでとても見易かったです。 秀治郎が幾太郎に初めて出会ったのも雨、刑期を終え再開したのも雨、警察に連行され離れ離れになるラストのシーンも雨、日本人には『雨』という情景だけで伝える事が出来るものがあると思いました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-05-03 20:12:39)(良:1票)
39.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 
学生の頃に夜中なんとなくテレビを見ていたら本作がやっていました。 フランキー堺さんは名前が格好悪かったり、彼の四角い顔が生理的にダメだったのでかなり嫌いな俳優でした。 見終わった後にテレビの前で「ヤバい、これマジでヤバい…」と声を出して1人で呟いた事を覚えています。 映画好きになら解って貰えると信じて書きますと、とんでも無い作品を見終わった時に、リミッターを超えた満足度から来る高揚感で脳みそがゾワゾワして体全体が吹っ飛ばされそうになって叫びたくなるアノ感覚です。(私だけだったらかなり恥ずかしいです…) その頃からおっさんの様に落語と時代劇が大好きだった自分には、ど真ん中でした。 生理的に受け付けない役者さんの作品を見て180度見方が変わって最高評価になった人は私の中で3人いますが、フランキー堺さんはその中の1人です。 侍、女郎、客、使用人、楼主、居残り等のそれぞれの欲や思惑が乱れ舞う品川遊郭相模屋で、立川談志さんが言っていた様に人間の業を肯定しながら話は軽妙に進みます。 その中でも、堺さんがとんでもなくカッコ良いです。 台詞回しからは粋で破天荒な人間を感じ、所作は軽快で無駄は無くそれでいて不思議と品や優雅さの様なものが漂うシーンもあります。 相模屋の1・2階を動き回る姿はまさにバレエのプリンシパルです。 死に向き合いつつ抗い、全力かつ狡猾に生きているメメント・モリ佐平次は相模屋では無双です。 他の連中とでは素養と覚悟が違います。 堺さん自身もまた然りです。 左幸子さんや南田洋子さん等も好演していますが、堺さんと周りの役者さんとではレベルというか正直演じている次元が違う様に感じました。 バカみたいですが毎回見る度に、堺さんが前に見た時と違うことを言ったり、違う演技をするのではないかと本気で思ってしまう程、作中では活き活きと自由で自然に見えます。 ラストシーンは自分の意を汲んで貰えなかった川島監督が会社に対しての当て付けでわざと質を落したのではないかと思う程、テンポも編集もよく有りません。 加えて、作中にもカット割りや音声、編集の稚拙な所は有るのでマイナス3~4点になると思いますが余裕で10点です。 それらのマイナス要因は、この評価が揺らぐ様な事では有りません。
[DVD(邦画)] 10点(2015-05-03 01:00:23)(良:2票)
40.  少年H 《ネタバレ》 
原作は瀬能河童さんの少年時代の回顧録で私は未読ですが、終戦の日に笑顔で「戦争が終わって本当に良かった。」と中学生の瀬能少年が言ったり、外国人のお客さんが居たとはいえ彼の父親が妙に時勢を達観していたりと、戦中・戦後を経験していない自分でも少々疑問に感じてしまいます。 毛の生えた大人が真剣に語ってはいけない様な作品に思えてしまいます。 大人である私ですが、精神年齢や前頭葉の中身の関係で子供向けの映画やゲーム等もビザ無しで受け入れ可能ですが、本作を見終わった時には残念ながら感想という様なものはほぼ無く、レビューを書く為に思い返すと体の内側が痒くなるような居心地の悪さを感じてしまいました。 無理矢理に結論付けるならば、主人公ほどの少年少女が見てもいいし、見なくてもいいし、どんな感想を持っても良いと思いますが、そこには余り長い間留まっては居ないほうが良いのかなぁ…、なんて勝手に思ってしまいました。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-05-01 20:13:36)
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