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Yuki2Invyさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1631
性別 男性
自己紹介 基本的に3~8点を付けます。それ以外は、個人的に特別な映画です。

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21.  菊とギロチン 《ネタバレ》 
程度の差こそあれ、人は誰しも望まぬ「枠」に嵌められ、何かに虐げられて生きている。この映画の登場人物は皆(「家」制度における女性としての主人公をはじめ、革命家、朝鮮人、労働者、農村出身の兵士、女相撲の面々は無論のこと)、激しく虐げられた境遇を生きている。だが彼らは、そんな枠から抜け出すため自分を虐げる全てに向かって「反逆」を始める。勝目の無い絶望的な戦いに身を投じ滅びゆく様には、だがしかし、極限的な人間の尊厳とその生命の偉大さを最大に感じ取ることができる。物分かりの良さ、否、理性など糞喰らえ。「反逆」こそが生命の本質、人間社会で人が生きている証なのだ。  前半、やや政治的・思想的なメッセージが含まれる類の映画なのかとも思ったのだが、全編に込められたテーマはもっと根源的で普遍的なものであると確信している。ヒトのヒトたる逞しさ・美しさを最大限に尊重し描き抜いた、私の最も好きな部類の映画。困難な人生に直面するあなたに是非勧めたい。
[映画館(邦画)] 9点(2020-01-10 00:52:50)(良:1票)
22.  映画 聲の形 《ネタバレ》 
主人公の再生と成長を、緻密なプロットと繊細な心理描写で丁寧に描く。リアルで深刻な内容ながら、真剣で前向きなメッセージを描き切っており、一つのヒューマンドラマとして文句無しに上等。映画観た後に原作も読んだが、必要な要素を取捨選択してコンパクトに纏めあげた映画版の仕上りは、決して原作に劣るものではないと思う。漫画でも映画でもよいので、是非。
[映画館(邦画)] 9点(2019-11-21 21:23:35)(良:2票)
23.  蜘蛛巣城 《ネタバレ》 
後で調べてみると、そもそものシェークスピアの『マクベス』の映像化としても史上トップクラスの評価…というコトなのですよね。私見ですがソレは、妖婆=原作に於ける魔女と、そして浅茅=マクベス夫人の表現方式にポイントがあった様に思えています。特に浅茅について、彼女を多面性を備えた「人間」として描くより、その邪悪な権力欲や冷酷さのみをより際立たせた一種の「人成らざる者」として描く方が要点が分り易く伝わり易い、その部分に所謂「能」の方法論を取入れて、不要なモノを極限まで削ぎ落した抽象的な表現・演技として纏め上げたコトが、本作に更に高度な幻想み・幽玄みや寒々しさを付与している様に思えたのですね。モノクロで、画質も特に好くはないのですが、何処も彼処も凄い迫力だな…と思ってしまいました(こないだのジョエル・コーエン版『マクベス』にも、少なからず影響はあったのではねーかと)。  他、ラストの弓矢のシーン(+ソコでの三船敏郎の狂態)も確かにスゴかったと思いましたが、あのお城のセットがまたスゴかったですね。引きで全景を映すトコなんか、たぶんもう一生忘れられないと思います(あの寒々しさ・禍々しさ…)。正直、尺的な観易さも含めて、黒澤明でも一番最初に観れば好い作品なのではないでしょーか(『用心棒』とかも短くて面白いと思いますが、ちょっと西部劇的なノリもあるので慣れないと微妙…かとも常々思ったりしてましてですね)。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-02-27 10:38:20)
24.  湯道 《ネタバレ》 
非常に優れた一つのアイデアだ、と思うのですね。こーいうのってこの国には他にも、ホントに&フツーにたっくさん在るのだと思うのですよ(⇒例えばそれこそ、こないだの『PERFECT DAYS』のアレとか、とて)。おそらくそれは、概して単なる技術・知識の体系には留まらず、或いは実践や修行の方法論や数限り無い(成功と失敗の)経験則を含めてもまだ足りない、もっと高次の文化や伝統、場所・人の集まり、価値観・思想・美学、そして更に上のナニか、までをも包含している、それに「道」と付け加えて「可視化」するというやり方は、実にしっくりと分り易く、且つ効果的だと思うのですね。もし失われるくらいなら、とりあえずも~ナンでも「道」って言い張っちゃえば好いじゃんか!な~んて(⇒ジャンルも問わず、集団だろーが個人だろーが、誰かが一生掛けて懸命に極めて・歩んでるモノだったら全部それで好いんじゃねーか…と)。  群像劇とも言える様な言えない様な、確かに少し雑多な印象が冒頭からも強いという作品には見えたのですが、この構成は結局、そーいう非常に多様な側面を持つ奥深きとある概念、を表現するための演出上の仕掛けだったのだ…と思えば、個人的にはソコにもかなりしっくり来たとは言っておきたいです。また実に、ホッコリと文字どおり「温まる」お話の集合であったコトも含めて、心置きなく一点プラスしておきます。
[DVD(字幕)] 8点(2024-02-19 23:57:37)
25.  正欲 《ネタバレ》 
何となく、劇場予告編とかをチラ見する限りでは、新垣結衣ちゃんが人に言えない変わった「癖」を持っていて…みたいなヤツに見えてて⇒そーすると畢竟その「癖」ってどんなんやねん?てのがどーしたって(イのイチバンに)気になっちゃうじゃあねーですか。だから、観終わって第一に思ったのが、その「癖」ってのが実はどーでも好かった(=何でも好かった)という今作の根本的な構造自体が、そもそも非常に「斬新」だよな…と思えたってコトなのですね⇒私にとってはもはや一種の「トリック」だったな、と。  そしてまた、このトリックの効果とゆーのが中々どーして絶大だった…とも感じてまして、正直昨今、今作とテーマを同じくする様な作品とゆーのは数多く存在する…ケドも、比較的個別の議論に落ち込んでゆきがちなその手の諸作品に比しても、中で今作はその「問題」を少し抽象化して⇒ソレに依って「普遍化」することが出来ていた…とも思うのですね(ココの感覚は直近だと、実は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』に最も近いモノですね)。ゆーて、社会の中で疎外感を感じるコトって、ある面では絶対に「普遍的」なコトだとも思うのですよ。とは言え、その「程度」は各個人に依って激しく異なるから⇒だからむしろ私なんかはあまり泣き言も言ってられる立場でもない…と何となく感じてたトコロに、この作品のこの感じとゆーのはソレ自体がどこか「嬉しい」という様なごく個人的な感覚もありましてですね。  本題に戻りますと、大まかにはコレも「多様性」をテーマに据えた(キョウビごく共感もし易い)作品だと思いますし、その意味でも「否定しないコト」という(恐らく)このテーマにおける現時点の「共通解」をシンプルに示して終わってゆくラストにだって、またしっかり深く共感してゆける(ゆけた)と思うのですよね。その上で、言うかどーか迷いますが二点言っておくとしたら、まず一点はガッキー&磯村クンのカップルに代表される「その指向」の人達が、何故そこまで高度に社会からの疎外感を感じているのか…というトコロの「オリジナルの理屈」とゆーのは、原作未読で観てるコッチからするとやや難解だったかも知れない、とは思いますかね(⇒ソコにもう一つ「工夫」が在ったら尚好かったかもな…という程度の指摘ですケド⇒とりあえずなる早で原作も読もうとは思いますが)。  もう一つ、否定しない=するべきでない、とは言いつつ、今そーやって「否定している人達」にも大なり小なり「理由」は在る…とも(私は)思ってるのですね(理由とゆーか事情はある、と)。ソレを=作中におけるその役割を、こと稲垣吾郎さんに(こ~んなコテコテな感じで)演らせちゃうとゆーのは、私も最初はワリと適役?かとも思ったのですが⇒最後まで観るとちょっと多少「シンプルに為り過ぎた」かな…と思いもしたのが正直なトコロです(最終的には少~ししっくり来ない感じの方が強かったかな…とも)。稲垣さんの演技自体は、今作も結構好かったとは思うのですケドね(⇒ここ数年、こーいう少し「空気の読めない」役にハマりまくってるという印象自体は、私も確実に抱いているトコロではあります)。
[映画館(邦画)] 8点(2023-11-27 14:24:28)
26.  MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 《ネタバレ》 
最初は正直、軽めのコメディかと思ったのですが、後半はかなりマジメに深く共感できるというお話でしたね。ちょっと『100万回生きたねこ』とかも思い起こされてしまいました(感動しましたです)。  前述どおり、間違い無くコメディ with タイムループというオーソドックスなヤツだとは思うのですが、同時にかなり高度で真剣なお仕事映画だとも思うのですよね。私だって確かに、ちょっと前までは月曜が来るのが死ぬホド憂鬱な時期がありましたし、或いはも~「現時点から一週間(一か月)キング・クリムゾンで吹っ飛ばないかな…(⇒その私自身の未熟さ故の結果は甘んじて享受するが、その過程には金輪際関わりたくない!)」なんてコトもよ~在ったな~とも思うのです。時間操作系のヤツって、実は仕事系のお話とは根本的に相性好いんだろ~な…なんて思ったりも。  んで、そんな今作はまず、前半はしっかりそのコメディ部分がかなり好く出来ていたと思いますし、かつ後半はお話の方がまたしっかりしてる=テーマとゆーか信念とゆーか(その「仕事」や「人生」における)価値観がハッキリと語られる、という意味で二回チャンと美味しい映画だったのが非常に好きなタイプ+意外性から生じるお得感もあってとても好かったと思いました。テーマの部分もまた、押し付けがましくないとゆーか(流行りの)ダイバーシティ的なとゆーか、ソレこそ仕事における価値観・流儀になんて絶対的・単一的な答えなんて無い!とは私もつくづく思ってるトコロではありますし(「(最後に)頼りになるのは自分だけ」も「大きな仕事こそ仲間と協力して成し遂げるモノ」もどっちも真理だと思うのですよね)。小品ですが、誰にでも臆するコトなくオススメできる良作である様に思います。短尺でサックリ観れますし、是非。
[DVD(邦画)] 8点(2023-09-23 21:24:04)(良:1票)
27.  ハケンアニメ! 《ネタバレ》 
ふたつのアニメ作品の「覇権」争いという構造の中にも、描かれるのは更に多様なる「価値観の衝突」なのであります。新人(のフレッシュさ)なのか・熟達のベテラン(の更なる熟成)なのか、大衆性か・作家性か、或いは芸術的であるべきか・商業的であるべきか、とか、まずはそーいった種々の「対立」だらけの序盤~中盤がかなり高度にストレスフルだったのですし、また(作中表現を借りると)私なんかにもソレが非常に「刺さる」辛さでもあったのですよね⇒当然、棲める業界は違えど。  ただ結局のトコロ、その意味では今作自体はごく「大衆的」なグッド・エンドを迎えて(片方が滅びる…という様な決定的な勝敗も付けずに)晴れやかに終わってゆく、でもその中でも私には例えばひとつ、根源的でシンプルかつ純粋な「製作意欲=情熱」の大切さだとか、とは言えソレが認められるかどーかはかなりの部分で「才能」の有り無しに掛かっている…という残酷な事実だとか(+かつある種「(社会的に)適切な」製作意欲、というモノだって当然存在する=範囲が決まってる、のだろーとも)、結論的にはごく「当たり前」の内容を語ってるって映画だな…とは確かにそう思われたのですよね⇒そーすると「(私も含めて)俺たち無能はどーしたらエ~ねんな!」となってしまうだろう…という意味でも、この令和のダイバーシティな世界においてはモ~ちょっと古臭いな…とすら(⇒部分的には昭和のスポコンだ、と)。  でも一方でまたひとつ、コレが日本の商業アニメ業界を舞台にした作品だ…という点では、モノづくりの普遍的な面も垣間見せつつ所ドコロはやはり特殊で複雑で、だから「ユニークさ」てのは第一にも十分に感じられましたし、そもそもアニメって(娯楽コンテンツとしても・芸術としても)やっぱしちょっと「ユニーク」だな(⇒少なくとも、実写的な映画とはだいぶん異なるな)とかってコトも(個人的には)感じ取れた・再認識するコトが出来ましたですね。そして、更にそもそも、私はこーいう唯々「熱い」ハナシってのは完全に大好物!なのでありまして、だから結構随所でボロ泣きしながら観てしまってました。ヒジョーにシンプルに面白い作品だったと思います(⇒週末の映画としては大成功!)。オススメ。
[DVD(邦画)] 8点(2023-06-25 17:39:53)
28.  波紋 《ネタバレ》 
好きな映画ですね。ネガティブな様でそーでもない…とゆーか、結局、ナニかにのめり込むその「ナニか」って唯々「個人の嗜好」でしかないから、そののめり込みが妥当なのか=諸々の費やし方が正しいのか、なんてその人にしか分からない=判断付かないのでしょーね、と。種々の側面にごくタイムリーな要素を含む映画で、だから冒頭から居心地自体はかなり悪く在り続けるのですが、その辺には終始けっこう共感しながら観てゆけましたです。ただ、一つダケ言っておきたいのは、その「のめり込まざるを得ない人々」がナニにドレだけのめり込むかはある種の自由・自己責任なのかも知れませんが、一方でそーいう人々を喰い物にせんとする悪意ある個人・組織とゆーのは(その「需要」の如何に関わらず)唯その「悪意」故に滅ぶべきだと信じては居ますケドね。  ソレに比べれば、やはり自分ではない他人=家族・友人・あるいは社会的弱者とか、との関係性の中に生き甲斐を見出す、という方が好さそうだ・健全だという様にも見えるのですが、コレとてある種の「依存」であるコトには変わりはないのかも知れませんし、また他人てのは(例え家族であっても)どーしたって時には裏切りますからね⇒否、裏切るとゆーよりは少なくとも自分の意のままにはならないし、何なら彼らが何を考えているのかも究極的には共有できませんからね(そのコト自体は、今作でも実に痛烈に描かれていると思いました)。でも、最初に述べたとおり、特に中盤以降はごく非常にネガティブなのかポジティブなのかが判然としない(モヤモヤした)空気感で進行しつつも、最後まで観終わると(やっぱり)ごくポジティブな方の映画だったな…と思えたのです=そーいう諸々と「侭ならない」人間の有様を肯定している映画だな…と。筒井真理子さん、全編通しても素晴らしかったと思いましたが、ラストのフラメンコは(私の中では)彼女のベストアクトだったと思います。脱帽。
[映画館(邦画)] 8点(2023-06-09 15:27:00)
29.  AKIRA(1988) 《ネタバレ》 
最近、観てなかったと思ったら観てた、というコトが発生する様になってしまったのですが、今作は、観たと思ってたのですが観てみたら明らかに(少なくともチャンとは)観てなかった…というヤツでした。。  ソレはさておき、何より内容の方が(30年以上前の作品としては)かなりブッ飛んでますよね。作画の方も、同様にごく素晴らしいとは思うのですケド、コッチは部分的には年代相応…かとも思いました(ガンダムだと『逆襲のシャア』と同じ年、ジブリだと『ラピュタ』の少し後、くらいなので、超クオリティ!とは言え個人的にはソコまでの驚きでもなかったかな~と)。でも、中盤のアキラの保管庫?が地上に引っ張り出されるシーンなんかは(今なお)相当にスゲーなコレ…と思いましたです(完全に観入って呆けてました)。シンプルな画・構図の出来やアイデアについては、やはり時代を超えてゆくというクオリティを備えていると思いますかね。  結論、映像もお話もかなり興味深く・面白く最初から最後まで一気に観切れたので、文句の付け様は特にありませんです。蛇足で2つ言わせて頂くなら、まずオーラスは流石にナニが起こってるのか(具体的なコトは)ちょっと伝わらないかな…という点と(ソレでも十二分に「感じ取れる」とは思いますケドも)、もう一つ、キャラの人物造形あるいは「魅力」の描き出しは多少甘めかな…とも思いました⇒コレについても、だったらよりボリューム有るであろう漫画版を読めば好いんじゃね?と自己解決はしてるトコロですケドも。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-04-11 22:16:44)
30.  ロストケア 《ネタバレ》 
少なくとも、この現代を生きる人間というのは、生きているコト・長く生きてゆけるコトが必ずしも「幸せ」と同義ではないから、そして残念ながら我々は未だ「幸せとは何か=人間が必ず幸せになれる方法は何か」というのを見い出せていないから、その「人の生き死に」を絶対的な尺度として社会を裁くのに用いるというのが次第に困難な時代になりつつある…というお話(=社会問題)だと思って観ていました。今作は、その部分に係る結論を導き出すというよりは、社会に対するいったんの問題提起を主眼としてつくられた作品だとも思います。全体としてもサスペンスというよりはドラマであって、特に後半は主張を違えるふたりの主人公の議論・対話と、そして彼らが一応の相互理解に至るまでを比較的穏やかに描く、という作品だったと思っています。  まず感じたのは、その問題提起としてはごく非常に分り易い・明解な映画だ、というコトでした。台詞回しやその発声からして、また登場人物のキャラクターやその背景に至るまでも実に分り易くシンプルだった、と。ある種「捻りが無い」という感覚にも繋がるモノかとも思われるのですが、私としてはそれは製作者の明確な意図・狙いだった様に思われました(=誰にこの内容をいちばん伝えたいのか、という意味での「選択」だと)。重ねて、その効果は大いに的確に発揮されていたと思いますし、キャストの方々の真摯で真剣な演技というのも、総じてそれを描き出す・表現するのに十二分に上質なモノだったと思います。見応えがありました。  個人的に、ひとつダケ少しダケ残念なコトが在るとしたら、前述どおりこの映画は「結論を出す」というモノでは(おそらく)なくて、だから主人公ふたりの議論にも明確な決着は付かない=どちらの意見にも「共感」或いは「非共感」の何れもを抱き得る、という形式で進んでゆくのですね。だからと言うか、中盤その議論がいっとき白熱するシーンというのは、それが議論であるコトは明白なのですが実のトコロふたりの主張というのは全く嚙み合っていないのです。私には、むしろ不自然なマデにふたりともに感情的で、そして何よりも言葉に「説得力が無い」とも感じられました(特に長澤まさみの方)。私としてはココだけは多少(分り易くはあるが)ワザとらしいかな…と思ったと同時に、それ以上にこのふたりであれば(結論には辿り着かないまでも)もう少し「進んだ=深い」議論ができたのではないか…というコトが少しダケ残念にも感じられましたね。  重ね重ね、作中で何らかの答えというのは提示されないのですが、あくまで私個人の考え・「答え」として、私自身は、少なくとも私と私の家族が(表向きにでも)幸せに過ごしてゆくのに求められる「強さ」を、これからも人として追い求めてゆきたい、と思います。それは、結局それがいちばん手っ取り早くて(シンプルに)「安易」だからです。勿論、真に強い人間というのは、社会そのものの弱さ=作中で言うトコロの「穴」を、あくまで自分事と捉えてそれを変えてゆく+変えてゆける人間だと思いますし、そーいう人間こそが人々の先頭に立つべきだ、とも思っています。しかし、私はおそらくそこまで強い人間には為れない(というコトが、今まで生きてきて判ってしまった)のですよね。私は、今作の松山ケンイチや長澤まさみの様な「強い」人間にはもう為れないでしょう、がそれでも、散々に挫折と絶望を繰り返しても未だ、人の為に自分が強く在りたい、という意識を(いま再び)持てて居るコト自体には、どちらかと言えば(手前味噌ながらも)ごくポジティブな感情を抱けて居るのです。    今日の映画館でも、泣きながら観ている人がワリと目立っていた作品に思いました。私も、柄本明のシーンはまだ耐えたのですケド、しかし終盤のまさみちゃんと藤田弓子さんのシーンは完全に号泣してしまいましたよね。映画を観ながら泣く、というコト自体は(個人的には)決して珍しいコトではないのですケド、それでもそれで「目が開けられない」とゆーのは、ちょっとあまり記憶に無いコトではありましたですね(だから、実はあのシーンはチャンと観れてないのです…)。
[映画館(邦画)] 8点(2023-03-28 14:21:18)
31.  シン・仮面ライダー 《ネタバレ》 
私は正直なコトをゆーと「え、何でこんなに評判悪いの?」というレベルでメチャクチャ楽しめてしまったのですが、帰って来てこちらのレビューも全部読みましたがソッチにも完全に納得はしました。今サラ私が言うコトでもないでしょーが、重ねて、完っ全に「監督の趣味」でしかない映画であって、だから極めて人を選ぶ・ニッチな作品だというコトではあるのでしょう。しかし同時に、こんな奇天烈な質感を映画として楽しめるとゆーのはソレこそ、この地球上でもごく限られた領域&限られた時代に生まれたからこその「特権」だとも思いました(個人的には、特に今作のチープなCGによるアクションをアクションとして受容可能なのは、実はオリジナルの直撃世代よりはもう少し我々の世代寄り=平成・2000年代のテレビ特撮に少しでも親しんだ世代…なのではねーかと思いましたね)。私は素直に、この映画を存分に楽しめたという自分の境遇を神に感謝したいと思います。面白い映画でした。  とは言え、一言だけ言っておきたいとしたら、この映画って(立派な原作が別に在るにも関わらず)本質的な中身ってまたほぼほぼ旧『エヴァンゲリオン』と同じじゃなかったですか?(+細かい演出のコンセプトとかだってそーだし)でも、演出手法とかの「外観・見て呉れ」或いは「好きな=またやりたい」展開の運び方とかに関しては、私も別にセルフオマージュだって全然好いじゃんか、とも思うのです。ただ、例えソレが自身の最大の信念・価値観であったにせよ(そしてソレばっかり描く=貫くとゆーコトにも確かに大きな価値が在るモノだとは思えども)も~アレから30年にもなるのですよね?個人的には、ならばソレ=その「中身」は多少は変化している・してゆくべきではねーのか、とも(少しダケ)思ったりはしましたですかね(⇒ある意味、シンプルに「人」として)。  ※コレはいよいよ、私もエヴァの新劇場版を観ないといけないのでしょーかね。。事前情報を入れる位なら、直接全部観た方が好いと思うので。。  ※プラス、以下余談: 今作の採点に関しては、個人的に少し外的な要因とゆーのがあって、第一に件の『シン・ウルトラマン』よりはコッチの方を上にしたいと思ったのですね。全体的にはごく似通った質感+諸々のクオリティだとも思ったのですケド、まず(先ほど少し腐したとは言え)テーマ的な部分で今作の方がより共感可能だったコト、あと全体的なテンポも今作の方が好みに近かったコト、が理由です。しかし、実は『シン・ウルトラマン』はその直前に観た『ULTRAMAN』に(本来は5点相当なのに)心情的に6点を付けるしかなくて、だから『シン・ウルトラマン』は(本来は6点相当なのに)7点になってしまって居て、んで今作はそれ故に(前述どおり)8点とするしかなかった…のですよね。従っての結論、今作は「7点寄りの」8点という評価としてご理解頂ければ…と思います(ソレでも、個人的にも良作の範疇であるコトには変わりはねーです)。宜しくお願い致します。
[映画館(邦画)] 8点(2023-03-26 15:00:39)
32.  君は永遠にそいつらより若い 《ネタバレ》 
第一に、シンプルな作品だな…と思いましたが(以下、私の感想も実にシンプルなコトを言ってるダケに為ってしまいました)同時に(素直に)好い映画だな…と思いましたし、個人的には主役の佐久間由衣さんにも(比較的高度に)共感してゆけたのですね。ゆーて、どーしたって(女優さんなんだから)フツーにカワイイ娘だよな…(=コレで彼氏出来ない~とか言われても…)とも思いはしましたが、それでも、オマエに児童福祉士なんて無理だ!と言われて落ち込む辺りとか(⇒残念ながら私もソコは「確かに…」と思いましたし)あとは決してキャラにそぐわない「攻めた」髪色をしているトコロのワケとか、必ずしも悪い意味ではなくて「分り易くて」好かったな…と思いました(ソコは)。  でもまあ、そーいう「外見的」なコトとも(=コトとすら)あまり関係も無く、その「自己肯定感」の確立ってのは誰しもにとってやはり中々に困難なコトだ…とは思うのですよね(そもそも、ソレが自分には簡単「すぎた」てのもソレはソレで…と思いますし)。で結局、ソレって(=自分の「価値」って)やっぱどーしたって自分では決められない=ひたすら他人がソレを決める、とも思ってるのですね。だからその意味でも、いずれは必ず誰もが社会=人の海=友人関係だの恋愛関係だの仕事関係だの、の中に出ていくしかないのだと思うのですケド、その時にも多少の自己肯定感を予め装備しておかないとその泳ぎ出し自体が実に苦しい…てのが一種の「悪循環」だとも感じられるのですよね。今作でもテーマとして少し触れられてはいましたが、その「初期装備」ってのは基本は親・家族との関係性の中で育まれるモノだとゆーのも、作中からは十分に汲み取れた⇒より深い共感に繋がる「分り易い」物語の構成だった、と思います(⇒だから、またその意味でも子どもの虐待とゆーのはとても罪深いのだ、と)。   ※あと、コレは『まともじゃないのは君も一緒』を観た時にも(大いに)感じたコトですが、自分の周りの「普通の人々」と自分を比べて一喜一憂する…なんてのも決して全くオススメできるコトじゃあないと(個人的には)思ってますよ。ごく真っ当な人で在れば在るホド隣の芝なんてのは青く見えるモノなのですから、どーしたって「分が悪い」ですよね。そーいう「普通の人々」が普通に備える(と言われる)個々のアビリティを全項目完備してる人間なぞハッキリ「超人」だと、寧ろその他人が皆偉く見える自分自身の劣等感こそが(⇒他人の「善い」トコロを全力で評価する)貴方の「優しさ」と「謙虚さ」の顕れだ、とでも思っておく方が余程健全だと思いますね(「思い上がれ」と言いたいワケではねーですケドも)。   個人的な理由となって恐縮ですが、点数は(また実は)かなり迷いました。直前に観た『ひらいて』との前後関係で言えば、個人的にはアッチの方が好きだとゆーのは(私としては)「固い」トコロなのですよね⇒ソレはいったん、文芸映画としての「文学性」の観点が主たる要因だ…というコトにしておきます。ただ一方で、じゃあ今作を1点(マデ)下げてしまうのが正しいか…という点にもかなり違和感が在った(⇒前述どおり非常に高度に共感して観てゆけた身からすれば)のを重く見て、ココは高めに寄せて置きました。以上です。
[DVD(邦画)] 8点(2023-03-10 01:13:14)
33.  ちひろさん 《ネタバレ》 
ゆったりした間合いはまた監督の空気感ですが、印象は全体的にだいぶポップにも感じられました。で、とにかく非常に心地好いとゆーか、多少は在るホロ苦いシーンですらモ~心地好いとゆーか、でも「こんなにひたすら心地好い…のにタダ浸ってるダケで好いのかな?」と不安にすらなって来るとゆーか、ごく終盤までは描かれるのはストーリーと言うよりはちひろさんのキャラクターそのモノ(+ソレがもたらす単なる暖かさ)の方なのですよね⇒他にも色んな人の様子もふんだんに描かれてゆく…とは言え。結局、その終盤に少しダケちひろさんのお話の方が動き出す…あたりが個人的にはより面白く観れた、というコトを含めても、やはり私は2時間を一つのストーリーが一貫する映画の方が好みだというコトなのでしょーね。確かに、ある面で(どちらかと言うと)配信向きな作品なのかも知れません⇒重ねて、ごくゆったりと長尺なコトも含めて(内容のワリには)。  完全に楽しめた!とは言え、点数自体はかなり迷ったのですが、ココは逃げずに高めに寄せました。理由はやはり、そのちひろさんのキャラクターにごく共感できたコトです(結末部分も含めて)。生きていれば辛いコトもあるし、時にはソレを受け止め切れずに壊れてしまうコトもあるのが人間だと思うのです。そーして失った諸々のモノは、やはり完全に取り戻すコトは出来ない、とも(心身の健康とか、流れ去った時間など尚更に)。でも、ソレでも人は立ち直れるし、前向きに生きていけば(そーいう辛い出来事も)いつかは笑い話に、糧に、本当に本当の意味でごくポジティブなモノに変わる日だってきっと来るのだ、と最近は(個人的にも結構)実感していたりするのですよね。中々、好い時にこの作品に出会うコトが出来た、と心から思いました。
[映画館(邦画)] 8点(2023-03-02 23:47:37)
34.  サンダカン八番娼館 望郷 《ネタバレ》 
原作がノンフィクションとゆーコトなので、内容それ自体は(劇映画=創作とゆーよりは)確実にドキュメンタリの方に近い作品だ、とまずは思うのだし、ソコに対しては正直面白かった…とか私がどう感じた…とか、或いは(娯楽として)楽しめたかどーか…などという個人的な部分の評価もナニも無い、とも思う。私の評点はひたすらに「観る価値が有ったか」という一点のみを意味しています(⇒モチロン、ここに描かれているものは概ね真実である…という前提の下ではありますが)。否、出来るだけ多くの人に観て貰いたい映画だ、とゆーのが正直なトコロの感想でありますね(出来れば全国民とかに観て貰いたい)。  ただ一点だけ、ココだけは「映画として」大いに評価したいのが、何と言っても田中絹代さんですよね。今作の絹代さんもある種モ~「演技の域を超えている」とゆーか、正に本物・本人にしか見えない…というレベルの超絶技巧だったかと思います。実にお恥ずかしいコトですが正直『山椒大夫』『雨月物語』『西鶴一代女』位でしか観たコトが無かったのでして(でも、それら作品を観た時にはやっぱ心底「凄い女優さんだな…」ともチャンと思っては居たのですよ⇒特に『西鶴一代女』は)今後はもっと意識的に古い映画も観るようにします(反省)。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-02-15 18:18:03)
35.  ひらいて 《ネタバレ》 
いや~シビれましたね~コレぞ文芸映画ですね!(原作の方も間髪入れずにAmazonでポチってしまいました)  否、所々では(痺れたのではなくて)むしろゾッとした…と言った方が好いと思います。まずはモ~主演の山田杏奈ちゃんからしてとにかく最初っからナンだかミョ~に怖い…のですよ。ある面では確実にサイコパスとゆーか、分かり易く言うとひたすらに自己中心的とゆーか、でも最後まで観ると私にとってより一層の恐怖の対象だったのは残り二人の方だったのですね(=今作で恐れ戦かされるのは実は杏奈ちゃんの方…だという)。  芋生悠ちゃんはコレも冒頭から病気という「業」を背負っていて、ソレがある種の「納得いく理由」となっている…とも思うのです、が一方の作間龍斗にはソレが当初は見当たらない…が故に、彼の方は一体どんな「闇」を抱えているのか(=ナニがどーなったらこんな人間に為り得るのか)という点がごく終盤まで非常に心地悪い不安として在り続けたコト。そして何より、そんな彼と彼女二人があまりにも人として「かけ離れた場所に居る」為に、杏奈ちゃんの方が(=杏奈ちゃんですらも)彼と彼女の世界には決して入り込めないのだ…という絶望的で絶対的な実感を共有してしまったコト、そのものの恐怖とでも言いますでしょーかね。  いや、杏奈ちゃんが(例えば端的に)ガキだから…とかいう単純なコトではないとだって確実にそー思われるのです。彼女は彼女で比較的ごく完成された人格を備えた方の、子どもとは決して言えない・見做せない様な女性だとも感じるのですね。だからその「差」とゆーのは(まず年月やそこらでは)埋まり得ないのではないか、ソレは恋愛においては正に死刑宣告の様なモンだとも思うのですよね(ソレこそ白鳥に恋する豚の様なコトであって)。コレもむしろ杏奈ちゃんの方こそが人間らしい(=人間臭い)人間だと見えていた私にとっては、彼と彼女二人とゆーのはむしろモ~「人間」に見えなかった…恐らくはソレこそが私の感じた「恐怖」の真なる源泉だったのではないか、と思います(思えば悠ちゃんの方だって、杏奈ちゃんと同じ様にやっぱ終始ナ~ンか怖いのですよね…少なくとも私にとっては)。  最初にも述べましたが、肝心な場面のキメ台詞の(決して気取らずも)実に文学的な趣きが超絶に心地好かったコトも含めて、少なくとも中盤以降はマジでシビれっ放し!でしたですね。大いにオススメしたい良作です。
[DVD(邦画)] 8点(2023-02-14 23:59:40)
36.  THE LEGEND & BUTTERFLY レジェンド&バタフライ 《ネタバレ》 
第六天魔王を名乗った信長は、それでも人として本能寺で死んでいった…その信長を、光秀は裏切ったのではなくて見限ったのだ、というアイデアも含めて、個人的には見たコトが無かったこのお話の解釈がまずは新鮮でもありましたし、展開運び+実際の演技・演出も含めてごく「しっくり来る」流れだったと思いました。個人的には相当面白く観終われたのですが、そもそも信長のその人間らしさや或いは「弱さ」の方の描き出しにコンセプトを置いた内容自体や、そんな信長と濃姫の色恋沙汰がほぼほぼ9割がたを占めてるというコト(⇒168分の映画にしては中身がもしかしたら普通かも…)+(⇒大河ドラマ的なのを期待して観に行ったら合戦シーンとかほぼ無かったんだケド…)とかには疑問を抱く方も居るのかな~て気もしました。一点、長大な歴史物語を映画で描くのにどーしてもダイジェスト的な(かいつまんだ)シナリオになるのは仕方が無いとしても、それでも信長くらいの超有名人だと(+濃姫は史料が殆ど無いので描くのに制約も少ないし)こーいう感じで映画化してもワリと違和感無く付いてゆけなくもねーな…とは感じましたかね(⇒でもまあ時間の流れはリアルとは感じられ得ない…て欠点は確かに在りますケドね)。  主演2人に関して、まず綾瀬はるかはとにかく超・美しかったですね~専任メイクの方の仕事が尋常じゃないのか、それとも何らかCG的なモノの助けを借りているのか、ま~アップのショットはどれも「生身のモノとは思えない」という肌の美しさでしたね(眼福)。そしてキムタクの信長ですが、ギラギラした「如何にもな」序盤の信長ぶりも(ある意味やっぱ当然に)かなりハマってたと思います、が印象的だったのは中盤の魔王になりかけて寧ろ魂が抜け落ちてゆく様な虚ろでやつれた様子の方でした(なんかも~キムタクに見えなかったです)。この部分の展開=信長が人でなくなってゆくハズの部分については(私としても)少し運び方自体も軽かったかな~とソレ自体はややイマイチにも思えたのですが、演技そのモノとしてはかなり好みな方のヤツでした。キムタクも、他の元SMAPの方々に倣って新境地開拓!でしょーかね。
[映画館(邦画)] 8点(2023-02-06 17:34:24)
37.  ぼくは明日、昨日のきみとデートする 《ネタバレ》 
私は、二人が出会って幸せな時間を共有し、そして悲しくも美しく別れてゆく…とゆーのが恋愛映画の本質だと思って居るのですが、今作はその「別れの理由」として、高度にSF的でごくテクニカルな設定を用いているのでして、ソレによってつくり出される状況とゆーのは率直にかなり特殊なモノだとも(やはり)思うのですよね。ともすれば、その状況自体は多少分かり難い・理解し難いというモノであるのはコレも確かかと思います。しかし、その状況によって作中に描き出される恋愛映画としてのエッセンスとゆーのはどれも、一般的な恋愛や或いは市井のとある人生においてもまた、却ってごく普遍的なモノである様にも思われました。即ち、決して逃れ得ぬ別れや、自分の為の「恋」が相手の為の「愛」に変わってゆくサマ、そして分かち合ったとある幸福な一瞬が永遠となって時空を、その生きる時間の総てを超えてゆくという奇跡。私には今作、恋愛の本質的な美しさが(むしろ)とても「分かり易い」映画だった、とも思われました。好く出来た作品だと思いますね。
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2023-01-24 21:50:04)
38.  ケイコ 目を澄ませて 《ネタバレ》 
もちろん、聴覚障害という一つの重大なテーマを擁する映画であって、且つその要素の実際の描き方に関しても非常に真摯な映画であったのは間違いないと思うのですね。ただ、ソレがもたらす「孤独」と、その孤独を如何にして乗り越えてゆくのか、というお話の流れをもう一本しっかりと備えるという点では、多くの一般の鑑賞者にとってもかなり普遍的な映画でもあったのではないか、と思いました。またそして、その孤独を克服する術としての人間の「強さ」と、更にはその「功罪」とゆーか、尚もう一つのボクシングという要素も相まって人が必要とする「強さ」とか或いは「弱さ」ってナンだろうか?(⇒本当に必要なモノって一体ナンだったろうか?)とかいうコトにまで悶々と思考が流れ至ってゆきましたね。ある面でユニークながら、同時にごくシンプルで、かつ本質的でもありながら(個人的には)まま深い映画だとも感じられました。面白かったです。  ひとつ一貫した演出として音楽が入る場面は極めて限定的な作品でもあるのですが、生活音その他のありふれた音は(当然)種々の場面で淡々と流れてゆきます。が、その音はケイコには全て届かない。前半、その冷徹な事実が醸し出す彼女の「孤独」とゆーのは、実にヴィヴィッドに辛いモノとして私ですらも心臓に突き刺さってくるかの様に感じられました。重ねて、彼女の弟が言う様に「強い」人間であるケイコは、最初は自身の「強さ」でソレに抗おうとしていた様に見えるのです。その強さ、そして後半はその彼女が少しずつ変化していくサマを、全て岸井ゆきのの「目」がコレを見事に表現し切っているのですよ(また当然、殆ど声も用いずに)。ココも率直に、非常に素晴らしい表現だったと思いますね。  個人的には、2022年の邦画ではナンバーワンでした。是非。
[映画館(邦画)] 8点(2023-01-04 23:13:06)
39.  サッドティー 《ネタバレ》 
なんか今作を観るの(ダケ)が随分後回しになってしまった感は否めませんが、テーマ的には監督の初期の短編とか、あるいは『愛がなんだ』とかにも非常に近いと言いましょーかね(きっと、ここら辺が監督のプリミティブな心象風景なのかなぁ…とは思われますよね)。しかし、今作は例えば『愛がなんだ』に比べればかなり正反対の側に在る…とでもゆーか、全体としてほぼ完全なるコメディではあるのですよね。何しろ「愛ってナンだろう?」というテーマ的なモノを語るべく最後の希望たる朝日クンですらも、結局はあのザマなのですから(このフリオチ、監督は実に気持ち好かったでしょーね)。この辺りにやはり好みってのはあるのかも知れませんが、私は結局ドッチも大好き!という感じでした。素直にオススメしたいですね。  特に好きなのはチャプター9・10あたりでしょーか。チャプター9はとにかくナニからナニまで意味の分からない二ノ宮隆太郎の挙動が、そしてチャプター10は岡部成司のドクズっぷりが(+永井ちひろの秘めたる感情の嵐が)コレも(あくまでコメディとして)大好物なヤツだったのですよね。あと、役者さんでゆーとまたやはり、ゲストでワザワザ呼んだらしい内田慈さんは終始「効いてたな~」と思いましたね。他の方々も全然好かったと思うのですケド、やっぱ一人はこーいう軸とか箍とかっていう役割を務められる人が居ると全体が引き締まる…と言いますか。お見事でした。
[DVD(邦画)] 8点(2022-11-04 14:38:19)
40.  バタアシ金魚 《ネタバレ》 
原作未読。ですが、個人的にはかなり気に入りました。ヒトの精神年齢は下がり続けている…とも言われますケド、ある面ではソレはそーでもないかな…ともまた思うのでして、ソコへ来てこーいった「青春の心象風景」とゆーのはどーしたって自身が実体験した質感(或いは自身が若いうちに仮想体験した種々のそーいった「創作物」の質感)を生涯保ち続けるものかな…とも思われるのでして、その意味では私なんか世代的にはソレこそあだち充とか(どっちかちゅーたら『タッチ』よりは『H2』の方すかね)後は今作ぽいので言ったらも~『スラムダンク』とか、だからこーいうバカで熱血でごく純粋なヤツ(=作中の永井とは対照的に性的な匂いをあまり感じさせない様な)てのには確実に非常に共感できるのですよね。もうね、最近の邦画の青春映画によ~く出て来るごくこまっしゃくれて女だとかに気遣いも欠かさない、ソレでいて立派に色気付きやがる一方で本質的にはやっぱバカでガキで…なんて若造連中ってのにはね、私は正直「虫唾が走る」と言っても過言ではねーのですよ(まあゆーて、そーいう映画も別に全然楽しく観れるコトは観れるのですケドね)。  地味に、出て来る若い役者さん達は今となっては大物も多いし、演技もごく爽やかで総じて好かったと思います。コレもやっぱね、高校生の青春映画なんてのはハタチ前の役者で撮った方が絶対イイですよね(演技も下手に「巧すぎない」方が確実に好い…と個人的には思います)。中でもやっぱ高岡早紀の魅力は際立ってましたね(諸々と)。夏、学校、プールサイド。雲一つない快晴。このシチュエーションにノスタルジィを感じられないっていう人間なぞ存在しているのでしょーか?(加えて、ソコに17歳の高岡早紀が居るってのなら、ソコはも~たぶん永遠のエデンだろうと)
[インターネット(邦画)] 8点(2022-07-17 21:33:46)
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