1. デリシュ!
《ネタバレ》 美術やセットの時代考証が行き届いている(ような気がする)、フランスの時代劇。 18世紀後半のフランスの風景、特に人々の生活の様子が垣間見られて興味深かったです。厨房での火の扱い方や、庶民の履いている革製の履物。時計がすでにマンスロンの厨房にあることにも驚いたり。やはり一流の料理人は調理にかかる時間を正確に知る必要があったのでしょうね。高価な物だったろうから、召し抱えられていた領主から特別に賜ったものかな、とか想像がふくらみました。 そして大事なのが当時の貴族と庶民が抱いていた互いへの見方。貴族らの下々への蔑視がこうもあからさまに酷いもんだったとは。 教科書を読むだけでは見えてこない実相、革命前夜の社会に流れるピリついた空気感も伝わってきます。勉強になりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-09-05 23:13:02) |
2. 私は確信する
《ネタバレ》 実際に起きた「ヴィギエ事件」を下敷きにしているんだそうな。監督の言いたいことや観客の抱く思いって、ラストの弁護士の熱弁にすべて込められてます。推定無罪が適用されないってどういうこと。フランスの司法や捜査機関に対する監督の憤懣やるかたない気持ちがこの映画を作らせたということがひしひしと伝わります。 もっとも、後付けでドラマをこしらえたため人物像がわりと適当です。ノラは監督の写し鏡なだけなので「なぜ赤の他人のために自身の生活まで犠牲にするのだろう」というあたりの描きこみはほぼされません。冤罪を生み出すシステムに怒りを覚える人物が一人必要だったというだけですね。だから映画としての出来は高いとは言えないです。「警察も裁判所もいいかげんにせえよ」で終わっちゃう。意外な展開やサスペンスフルな要素はありません。 ところでフランスに呆れる資格が我が国にあるかと問われれば、最近でも「袴田事件」がようやく再審開始が決定したばかりなのでした・・。警察による証拠捏造が疑われるなど、こっちの方がよっぽどたちが悪いかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-23 22:01:12) |
3. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 ドン・キホーテは児童書で読んで以来。子どもの頃抱いた「?」という不可思議な感想をまんま映像作品にしてくれたテリー・ギリアム。そう、元々のお話も整合性なんかなくてオチもどっか行っちゃってる「夢」そのものだもんね。 振り回される気の毒なサンチョことアダム・ドライバーとドン・キホーテその人なジョナサン・プライス二人の軽快な芝居っぷりが楽しく、この二人に引っ張られての鑑賞でした。 スペインのロケーションも素晴らしく、乾いた土と風、強い陽射し、これらの風土はドン・キホーテの世界には不可欠だと感じ入ります。むきだしの土色と岩の中にギリアムがこしらえた赤と金の濃い色彩の迷宮。この色彩のメリハリは強烈でちょっとぼうっとなりました。 そう、役者のお芝居、美麗な画。退屈しなかったのは間違いないんだけど、面白かったかと聞かれると微妙ではあります。そこはそもそもドン・キホーテですから、ということで。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-02 23:38:18) |
4. スターリンの葬送狂騒曲
《ネタバレ》 旧ソ連の指導体制を笑おう、という演出にキレはあると思います。冒頭、スターリンの無茶指示に慌てふためくモスクワ放送局長には心から同情しつつ笑ってしまいますし、政権中枢幹部らのスターリンへの媚びへつらいぶりったら、もう。ウケたネタ、ウケなかったネタを表にしておさらいしているなんざ、高潔さを失った人間とはかくも滑稽である、の見本です。 だけど、人間の扱いのあまりの軽さ描写には肝が冷えて笑うどころではありませんでした。 笑い飛ばすことができないのは、血なまぐさい政争も市民への弾圧も極めてノンフィクションであるからで、あのおっかないソ連時代からさほど時が経っていないことをつくづくと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-28 23:39:05)(良:1票) |
5. わたしは、ダニエル・ブレイク
《ネタバレ》 ケン・ローチが引退を撤回してまで撮りあげた、渾身の作品と思います。 かつて「ゆりかごから墓場まで」と言われた英国の福祉が機能不全となって久しいと聞いてましたが、もはや人間の尊厳をも削り取るシステムになってしまっているとは。 ダニエルが振り回される所定手続きの複雑怪奇なことったら、喜劇さながら。見ているこちらも電話が先なのか書類提出が先なのか、どっちなんだよ、と思います。60過ぎて受ける「履歴書の書き方講座」や形だけの求職活動といった茶番。40年も大工一筋だった男にウェブで手続きしろと言い放つ。煩雑な手続きに疲弊しているのは職員も同じで、彼らも余裕が無くて辛そう。ちょっとでも温情をかけて処理したら上司に「前例を作らないで」と叱責されます。この女性職員はダニエルに手続きをあきらめないよう励ましてくれてたんですけどね。ラストには葬儀に出席している姿も見えました。 ダニエル・ブレイクは本当に良い奴なのです。他者を労わる心を持ち合わせ、まっとうな権利を行使するために他人のために声を上げることのできる隣人なのですよ。 そして、こんな苦境にあってもキレの良いユーモアを忘れないのが英国人の偉いところで、私が傑作と思うのは「保留音のBGMをマシなものに変えろ」でした。 格差とか移民問題とか、山ほどの問題を抱える現状はかの国の政治家だって百も承知なのでしょうが、一市民として思うことはダニエルのような善良な市民がこんな目に遭う社会は嫌だ、この一点に尽きます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2019-10-09 18:52:06)(良:2票) |
6. セブン・シスターズ
《ネタバレ》 設定の斬新なこと、展開の速さと意外性、全てにハイスコアがつく見事な脚本です。人口増(あるいは減)に悩む近未来SFという発想は出尽くした感があるのですが、題材を巧く生かしています。降りかかる危機をさばくのは、一人のような七人のようなヒロイン。まるで分身の術を使っているかのようにも見えるこの設定が、観る者に月~日までの彼女らを等しく応援する気持ちにさせ、だからこそ月曜の行動の意外なことに驚かされるのでした。 ノオミ・ラバスの卓越した演技力が無くては成立しない話でもあります。七人分の人格をきっちり演じ分け、○曜と○曜がかぶるじゃん、と一切思わせなかったのはほんとにあっぱれです。厚化粧なメイクも現実離れした未来感がありました。 これといった伏線を張っていないのもポイント。思わせぶりが無いのですんなりと話に入れるし、瞬く間に疾走しだすストーリーに乗るのは快感です。伏線を回収せずとも(そもそも張ってないので)、深まる謎を明かしてゆく筋立ての妙味。脚本家はかなりのスキルとみました。脇を固める大ベテラン、W・デフォーとG・クローズのハンパない安定感も作品をきりっと締めています。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-09-24 00:04:17) |
7. エル ELLE
《ネタバレ》 ヒロイン選出にあたって、声をかけたハリウッド女優に軒並み断られたんだって。え、イザベル以外の候補がいたの?嘘でしょう?とまず思った。だってこれ、この脚本この主人公、イザベル・ユペール一択じゃないですか。他にハマる女優なんかいないよ。イザベルのために書いたようなホンじゃないか。 イザベル・ユペール、彼女の過去作品はどれもアクの強い役で強烈に印象に残るものばかり。美人だけど屈折しててある時は病んでいたり、または暴力的だったり。今作ってそんなイザベルが演ってきた”まんま”のキャラなので、ミシェルを見てても今さら驚くこともなく、その突飛さや冷たさが「なるほど」と腑に落ちちゃったりしましたよ。レイプ犯を手玉に取るあたりなんざ、おおさすが、とすら思ったり。ミシェル、まあ並みの役者ではとうていこなせないキャラクターです。大量殺人者である父親の側杖を食った形で安寧な人生は学童期に崩壊。社会から偏見と敵意にさらされ続けてきた結果性格はキツイし嫉妬深い。あと意地も悪いしモラルも無い。 面識のない人間からゴミを浴びせられる人生を送ってきた凄絶なキャリアの持ち主であるから、レイプごときでこっぱみじんになるメンタルではないのだ。 そしてここがポイントなんだけどイザベル・ユペールに代表されるフランス女は年をとってもすんごく女度が高いのだ。細身のスーツを着こなし、黒のストッキングにハイヒール。フェロモンが尽きることが無いみたい。想いを寄せる男を覗き見しながら自慰行為。この場面が、どういう現象なのかそこはかとなく文学的な香りなのがスゴイ。うん、たしかにアメリカ女優では無理かも。そして日本人のワタシはほぼ共感度ゼロの話でありました。面白かったけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-08-06 21:57:27)(良:1票) |
8. フィフス・エステート/世界から狙われた男
《ネタバレ》 ジュリアン・アサンジと初期スタッフとの、創設から諍い別れまでの一連のドラマがまるでロック・バンドのメンバー入れ替え劇みたいだ。考えが合わなくなってくるんですなあ 人間同士ってのは。 当初はウィキリークスの意義を大いに感じながらの観賞だったけれども、だんだんダニエルの言い分とアサンジとどちらにジャッジを下すべきなのかわからなくなった。そこが本作の狙いだろうけど。 アサンジの虚言癖などは大義の前には目をつぶるくらいのものではあろうけど・・、でもやっぱりあの「苦労」白髪は毛染めだったエピソードはかなりアサンジの深い所を突いているのじゃないかと思った。個人的に信頼する気が失せるな、私も。 情報の加速する流れは止められない。”フィフス・エステート”(=第五の権力)としてアサンジを是とするのか否とするのか、今生きている我々全員に突きつけられた課題でありましょう。 変人顔を生かしたベネさんの怪演も印象的。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-08 00:38:29) |
9. ブルックリン
《ネタバレ》 これから社会に巣立ってゆく女の子たちにぜひ観て欲しい一本。ヒロインと笑い涙し、勇気を共に振り絞る経験ができるでしょう。 美少女だったS・ローナンはすっかり大人になりました。アイルランド出の野暮ったさをすっぴん顔で上手く表現できている前半と、垢抜けてゆく中盤以降の変身ぶりも印象的です。 都会に出たての心細さや、虚勢張りやホームシック、それをサポートする周囲との関わりといった彼女の生活が丁寧に描かれ、エピソードの一つ一つが胸に溜まります。船で出会った赤い服のアドバイザーや寮の先輩達、職場の主任、皆気の良い性質なのだった。初めはコワイけれど。 そして、場が急転換する第二部帰郷編。これがもう、胸がざわつく大変なことになるんだ。ええー、どうする?とワタシが苦悩しちゃったよ。なにしろ旅立つ前と状況が違いすぎる。一会社の事務を任せてもらえるし、以前は相手にもされなかった上層ランクの男子と親密になるにつれ、周囲まで期待を寄せてくる。なんと運命はズルイのか。故郷ってこんな風に絡め取ってくるものなのか。 彼女は決断します。エイリシュ、ああ、もちろんそれしかないよね。だってNYのそこは貴女が自ら切り開いた居場所なのだから。姉の後釜となって故郷に残るより、ずっとローズも喜んでくれると思う。 [DVD(字幕)] 8点(2018-01-22 00:11:20)(良:1票) |
10. ハイネケン誘拐の代償
《ネタバレ》 見慣れないぶん、一般人のようにも見えちゃう俳優さんたち。そのぶんドラマがリアルに感じられます。犯罪の代償として、仲間らが疑心の末バラバラになっちゃうくだりとかは特に。 だけど良いのはそこらへんだけかな。ハイネケン会長が老獪さを発揮して、もっと連中に影響を与える筋書きかと思っていました。中華料理に細かく注文をつける、会社に手紙を書かせる、・・で、そこ止まりなんですよね。 結局どこかからタレコミがあって、警察による事件解決という事実ならではのつまらないオチ。出来事を並べただけでは映画にならないのだなあ、とつくづく思うよ。創作でもいいから、犯人側の切羽詰った人生等もっとつっこんでもらいたい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-10-29 00:16:22) |
11. ボーグマン
《ネタバレ》 じわーと粘着質な気色悪い作品。観終わってももやっと不快感が残るジャンルものは大抵そうだが、これも”ボーグマン”なる連中が何物で最終的に何を企んでいるのかははっきりさせずじまい。冒頭に宇宙人を臭わせる一文が入ったけど、あれ要らなくない? 人の夢を操作できるとか、超人間ぽい技もあるけど庭師夫婦殺害のくだりはやたらと手間がかかってアナログ。あのペースでは地球侵略などは時間がいくらあったとしても難しい。 死体がベッドにうつぶせで並べられ、バケツセメントで頭部を固められて湖底に沈められる場面をはじめ”えげつない”シーンが多い。少女が石盤で重症人を撲殺、とか。 乗っ取られる家の主婦が美人でなく、ごく一般人な容姿なのも妙にリアルでえげつな感アップ。この奥さん、悪夢を見たからといってとび起きてすぐ隣の夫を攻撃するって・・、無くないですか?二回もあったんだけど。自分の夢だし自分にビビるとこではと思うんだが。 さらにアイツらなんで森に帰るんだろ。せっかく豪邸を乗っ取ったのに。 と、いろいろと気が合わなかったんだけども、このねとーっとした雰囲気はそれなりにオリジナルのジャンルを確立してはいると思いました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-02-03 00:06:32) |
12. イル・ポスティーノ
《ネタバレ》 イタリア映画の、何者でもない人たちの人生を語る、その訥々とした語り口が好き。出てくる人たちは皆普通の、生活はちょっと苦しくて、でも基本善良で恋したり瑣末な人間関係に悩んだりして生きている。おんなじだ、私らと。 主人公もまた、一人の郵便配達人で何ということの無い人生を送るはずが 世界的に著名な詩人と出会って共産の思想や詩の世界に触れてちょっとだけベクトルが変わる。 人との出会い、その化学反応が彼の人生の終焉にまで影響したのだと観る側は衝撃を伴って知らされるけれど、ドラマチックに盛り上げる演出は一切無くて終始映像は穏やかなままだ。美しい地中海の寄せては返す波のように、繰り返し日々は過ぎてゆく。この穏やかさがラストのショックの緩和剤になっている。 何かをどーんと訴えてくる種の映画ではないけれど、人間を愛おしさでくるんだような大切な一品。思い出すと泣けてくる。 [DVD(字幕)] 8点(2016-09-06 00:24:54) |
13. グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
《ネタバレ》 グレース・ケリーという一国のプリンセスとなった伝説の美人女優を演じるとしたら、やはり当代ではN・キッドマンしかいないでしょう。クール・ビューティな顔立ちや品のある佇まいなど、良く似ていると思います個人的には。 公妃の美貌を強調すべく、大変麗しく撮られているニコールであります。この人を見るといつもとりあえず綺麗だなあと思うのですが、本作では主人公は美人女優であることが肝になってますからそれはもう美しいこと美しいこと。特に相対する仏軍に差し入れに向かった妃は、彼女ならではの戦闘服姿でありまして神々しいばかりの華麗さ。その場の全員が息を呑む、まさに「The 女優」の圧巻の存在感でありました。 私人グレースの公国における迷い、悩みを織り交ぜて彼女の人生を描こうとしたのでしょうが、政治謀略話の筋書きが関わり過ぎてしまって、焦点がぼやけてしまいました。まさかドゴールがパーティでの女優の演説に心動かされて政治方針を変えたわけではありますまい。国の情勢に公妃が深く関与したかのような描写にはやや違和感を覚えます。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-09-01 00:31:18)(良:1票) |
14. アデル、ブルーは熱い色
《ネタバレ》 主演の二人が大熱演、アデルは全裸も鼻水顔も厭わないし、レアはこれまでの役柄とは180度違うレズビアンの男役をひるむことなく演じきり、実力のほどを思い知らしめた。ボンドガールにしとくのは勿体ない。ものすごく熱量の高い本作、恋情がぐいぐいと迫ってくるので心に火傷をする人もいるかもしれない。 ただ、現代フランスにおけるセクシュアルマイノリティの二人を取り巻く環境はかつてほど厳しいものではないみたい。ゲイカップルであることは極力秘密にしなくちゃ、といった社会の制約のようなものはあまり感じなかった。だから個人的には、この話を男女間のそれに置き換えても全然いけるし、むしろそっちの方がキャストによってはぐっとくるかもなあ、と思ったり。 みっちりと人物の心情に寄り添い、粘着質なまでに描きこんだ制作意欲には敬服するけれども、たとえば自宅パーティでのアデルとゲストとのやり取りや、アデルの職場の光景(それも多数)などあんなに必要だろうか。おかげでこの長尺、私はちょっとダレた。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-08-01 00:20:21)(良:1票) |
15. 天使の分け前
《ネタバレ》 スコットランドの世相は、いろんな映画を観てきたがいつも不景気で大変だ。若者の失業率の高さ、はびこるドラッグ、天気まで悪い。実際、階級社会であるところのかの国で、社会の底の方にいるとそれはそれは這い上がることがキビシイそうだ。わが国と比べて社会構造がずっとシビアなのだと聞いたことがある。 ケン・ローチという人は、そういう苦労している階層の人々に寄り添う作品を撮る監督だが、今作はまたかなりの力技に持ち込んでいて、一種のカタルシスみたいな感興もわきます。 ”自然と無くなる”2%のウイスキーを天使の分け前とは美しいネーミング。たかが酒樽に、とてつもない額を出せる人間がいる。そんな人たちにとっては ほんのわずかの”分け前”を頂いたところで、それこそ天使の采配のうちでありましょう。頂いた”ギフト”を元手に、それぞれが健全な道をゆくことを祈る気持ちでいっぱいだ。 世話になったハリーに一瓶進呈する律儀さ、半分を”うっかり”で失ってしまう奥ゆかしさ、ケン・ローチのこんな演出が好きだ。 ロビーがこの先醸造所で働いて、障害を負わせた相手に少しでも償おうとしてくれればなあ。してほしい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-07-07 00:11:53)(良:1票) |
16. エリックを探して
《ネタバレ》 悩める中年男エリックの、抱えてる問題はそこそこ重たいけれど監督は随分彼を生暖かく処遇するのでした。エリック、大丈夫だよ。だって友達があんなにたくさんいるんだもん。別れた奥さんだって懐深く聞く耳持ってくれるし、息子二人もややグレているけれど更正の余地あり。あとはハッパで妄想のヒーローに力づけてもらえれば、一歩踏み出す勇気も出るぞ、と。シリアスに展開するのかと思ったら、逆にユルさは加速してギャングのボス家での騒ぎはほとんどコメディ。なんかなんでも上手くいくなあと思わないでもないけど、主人公が元気を取り戻す話は楽しいし、サッカーに詳しければ倍、詳しくなくてもほのぼのできます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-04-17 00:18:15) |
17. デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-
サダム・フセインの息子、イラクの悪魔王子ウダイの狼籍ぶりオンパレード。まあ肉親も手を焼くほどのバカ野郎だったらしく、あのフセインすら息子を苦々しく思う一人の苦悩する父親だ。ドミニク・クーパーの一人二役の演技は実に巧みで、言われるまで気づかなかった。物申したいのは脚本に対して。こんな悪魔に人生を破壊された影武者氏の苦悩や家族友人らの動揺とか怒りとかが、ドラマとして全く食い足りなく感じる。はっきり言うと、映画の中身が先だって見たTVバラエティの内容とほぼ同じなんである。余計な前知識を入れてしまったなあ、とも思うけど、映画もウダイの行状ばかり並べるのはちょっと能が無いのではないかね? [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-17 00:38:12) |
18. ブラックブック
まあなんと濃密で疲れる140分であることか。監督の描く“人間そのもの”が生々しいったら。狡さも善良さも愛も嘘も、人間を構成するこれらのものを内側からひっくり返してはらわたまで引きずり出してみせる、この悪趣味なこと!ナチにもレジスタンスにも一般市民にも残虐な者、狡猾な者、良き心を持つ者、判断を誤る愚かな者がそれぞれ一定数存在していて、ナチ=悪、レジスタンス=正という安易な筋立てとは一線を画す。そしてそれこそがリアルな人間社会のような気もする。 「あ、良かった、うまくいった」と安堵したのも束の間、次の瞬間には梯子を外され急落下の繰り返し。すごくたくさん嫌な汗をかく。個人的にはロニーが好き。彼女だって必死に生きていたに違いない。けれどそれを表に出さず、身体を張ってしたたかに生き抜いた軽やかさに惹かれた。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-18 00:49:11) |
19. ベルヴィル・ランデブー
音楽が素敵。活躍するのがお婆ちゃんと犬、というのがまた粋。引きこもり気味の孫を立派な自転車選手にするべく奮闘する物語かと思いきや、話は予想もつかない展開へ。ちょっと呆然とする。ストーリーの引力、摩訶不思議な三つ子婆ちゃんの生活風景、電車が通る度に吠える犬。なんというか、アニメを観る上で初めての経験。・・しかし、とにかく絵である。静物はすごく好き。風景も建物も、情感漂う佇まい。でも生き物はキツかった。汚物までリアルに描きつけなきゃならないもんなのか。とても“妖精”には見えなかったし・・。ダメだったなあ・・なじめなかったなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-05 01:16:17) |
20. ある子供
《ネタバレ》 タイトルの子供ってブリュノのことを指すのだろうか。およそ計画性とか堅実といった言葉から遠ーく離れてるコイツ。社会性が育ってなくてやってることといえば怪しい下請け的な見張りにこそ泥、子分は中学生かい!目先の金のために、なんと我が子を売っ払う、この心の欠落ぶりにはちょっと呆然とする。ただ困ったことに、こいつ性根が酷薄なわけじゃないんだよ。奥さんが倒れたら取り乱し、取り返したわが子を抱える腕の大事そうなこと。ほとんどがダメで構成されてるのに、時々垣間見える可愛げの部分に女はほだされる。ダメには目を瞑ってしまう。なんかわかるなあ(独り言)。この二人、また似たようなこと繰り返すんだろうな。奥さん、苦労やねえ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-11-19 01:36:55) |