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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  ブラックアダム 《ネタバレ》 
こーゆーヒーローごった煮映画ってマーベルで懲りたはずなのに、監督がわりかし好きなジャウマ・コレット=セラだったので今回鑑賞。やっぱりヒーローがごった煮で、なんか牛肉と豚肉と鶏肉しか入ってない水炊きを延々食べさせられた気分。白菜やえのきやマロニーみたいな心温まるエピソードやハラハラドキドキするサスペンスフルな展開も入れてほしいよー!まぁ映像はけっこうスタイリッシュで見応えあったんですけどねー。
[DVD(字幕)] 5点(2024-04-20 10:11:38)
2.  コーダ あいのうた 《ネタバレ》 
彼女の名は、ルビー・ロッシ。寂れた港町で漁業を営む家族とともに暮らす平凡な女の子だ。勉強やスポーツが特に出来るわけでもなく、人が羨むような特技もない。見た目だって普通、交友関係もいたって人並。だけど、彼女には他の人とは違う特徴が一つだけ。それは、彼女以外の家族全員が耳の聞こえない、いわゆる聾者だということ――。そう、両親はもちろん彼女の兄も一切耳が聞こえず、言葉を話すことも出来ない。家族との会話は全て手話、食事のときも食器の音以外何も聞こえない。どうしても他の人とコミュニケーションを取りたいときは、唯一の健常者であるルビーの力を借りなければならなかった。彼女はいわゆる〝コーダ(聾者の両親に育てられた子供)〟。それでも家族とともに充実した日々を送っていたルビーは、ある日、ふと思いついて高校の合唱クラブへと入部することに。緊張しながら初めて人前で披露した歌声。顧問の先生は、指導を続けてゆく中で粗削りながらも彼女の歌声に秘められた可能性を感じるようになる。ボストンの音楽大学への進学を薦められるルビー。でも、私がいなくなれば家族の生活はますます大変なものに。思い悩んだ末にルビーが出した結論とは?耳の聞こえない家族の元で育った17歳の女の子の青春を瑞々しく綴ったヒューマンドラマ。アカデミー作品賞受賞ということで今回鑑賞。感想は、良くも悪くもとにかくオーソドックス。全編通じて、何処かで見たような映像と何処かで聞いたようなお話のてんこ盛り。主人公カップルが崖の上からキレイな森の湖に飛び込むシーンなんて、この手の青春ドラマでもう何回見てきたことか。誰もいない湖面で2人泳ぎながらキスするとか、トム・クルーズの『カクテル』ぐらいから受け継がれてきたもはや青春映画のテンプレなんでしょうね。クライマックスの両親が見守る中での発表会なんかも、まぁ~~既視感満載。でも……、このベタさ、自分はけっこう嫌いじゃない。それはやはり、主人公をはじめとする登場人物誰もがみな魅力的だからでしょうね。この家族、障碍を持っていても誰も自分を憐れんだりしていない。自分たちだけで健常者と普通に渡りあおうとするし、頼るべきところはちゃんと頼るしたたかさも持ち合わせている。そんな両親を愛していながらも世間に引け目を感じてしまう主人公も気持ちが分かるぶん切ない。何かと言うと家族の責任を前面に出し娘に依存しようとする両親も最初はちょっとウザかったですけど、最終的には娘を清々しく送り出すところは素直に感動しました。妹にちゃんと自立した道を歩んでいって欲しいと願う兄も凄くいい奴。妙に下ネタが多いところも、障碍者を必要以上に美化しないという決意が感じられて好感持てますね。自分は最後まで清々しい気持ちで観ることが出来ました。ルビー、これからもっと幸せになれよーー!
[DVD(字幕)] 7点(2023-06-12 07:40:39)
3.  パラレル 多次元世界 《ネタバレ》 
最近立ち上げたITベンチャー企業の経営に奮闘する4人の若者。ところがかつての従業員の裏切りに遭い、経営の危機に直面してしまう。1週間以内にソフトを完成させ取引先に納入しなければ倒産するのは明らか。そんな絶体絶命の状況を救ったのは、とある小さな鏡だった――。オフィスとして借りていた古い一軒家の屋根裏部屋にあったその鏡には、驚くべき力が宿っていたのだ。なんとその鏡の向こうには、こことは違う別の世界が拡がっていた。自分たちが住む現実とは微妙にずれた世界、しかも入るたびにその世界は刻々と変ってゆく。そこでは今とは違う職業に就いた自分がいたり、見ず知らずの他人と結婚していたり、さらには死んだ人間が生きていたりする……。そう、この鏡は幾つもの時空を越えた別世界へと繋がる、いわゆる多元宇宙への扉だったのだ。鏡の力を使い経営の危機を脱した彼ら。やがて彼らはそのパラレルワールドへと頻繁に出入りし、自分たちの世界にはない発明品や芸術品を持ち帰ると、あたかも自分たちが作り出したかのように世間に発表する。鏡の力で充実した日々を送る彼らだったが、次第に自らの欲望を止められなくなって……。さまざまなパラレルワールドへと繋がる鏡を偶然見つけた今どきの若者たちの驚愕の体験をノンストップで描いたSFスリラー。監督は、『ダークレイン』や『パラドクス』でスマッシュヒットを飛ばしたイサーク・エスバン。確かにこの監督らしい独自の世界観は構築出来ていたと思います。突っ込みどころは満載ながら、スピード感あふれる演出とぶっ飛んだユーモアセンスで最後まで突っ走るところはこの監督ならでは。どうせ別の世界だからと金を盗んだり嫌な奴をボコボコにしたり、さらには他人の絵画や発明品を盗んだりと主人公たちがやりたい放題するシーンはけっこう楽しい。ただ、そーゆーワンアイデアを勢いとノリだけで一本の映画に仕上げてしまったのはどーなんでしょうね。過去作では、そういう荒唐無稽な設定も「これは映画ですよ」という寓話的な枠組みがバッチリ嵌まっていたからこそ観ていられたと思うんです。本作のように、現実と地続きの世界でこれをやられるとさすがに違和感が凄い。この多元宇宙という設定をもう少し詰めるべきだったのでは。例えば、この鏡がどのようにして出来上がったのかとか、別の世界からものを持ち帰るとその元の世界ではどうなるのかとか、別世界でもう一人の自分と出会うとどうなるのか等々。ここら辺のルール設定をもう少ししっかり描いて欲しかった。これでは物語としてあまりにふわふわしすぎていて、後半のサスペンスがいまいち盛り上がらない。監督の過去2作はそこそこ気に入っていただけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 5点(2023-06-05 06:35:29)
4.  ゴーストバスターズ/アフターライフ 《ネタバレ》 
あのゴーストバスターズが帰ってきた!1980年代に大ヒットを飛ばしたエンタメ・コメディの約30年ぶりとなる続編(と思ったら2、3年前にも続編が制作されてたみたいですけど、そちらは未見)。しかも監督は、初代監督のアイバン・ライトマンの息子ジェイソン・ライトマン。親父の映画の続編を作るってどういう気持ちなんでしょうね。とは言え、軽いタッチのコメディ映画で一世を風靡した親父と違い、息子はデビュー以来一貫してヒューマン・ドラマでならした監督さん。確かに悪くはないんですけど、肝心の幽霊退治のシーンよりもなんだか人間ドラマの方が分厚くなり過ぎな印象を受けてしまいました。金銭的にも精神的にも追い詰められて田舎のボロ屋へと越してきたシングルマザー、それでも前向きに頑張ろうとする2人の子供たち、彼らと偶然出会う人付き合いの苦手な中学教師……。もうこれだけで別のお話になりそうな(笑)。しかもそこに現在落ちぶれてしまったバスターズたちの過去の仲違いや主人公の母親と祖父との確執なんかも絡んできて、けっこう深刻。この主人公たちの幾分か重いドラマと軽いノリのアクションシーンが巧く噛み合っておらず、全体的に纏まりに欠けているような感想を抱いてしまう。ゴーストバスターズはもっと軽~いノリで楽しみたかったです。全体的な完成度は高いとは思うんですけど、自分が求めていたものとはちょっと違う内容でございました。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-10 09:39:52)
5.  デモニック 《ネタバレ》 
地方の寂れた田舎町で独り暮らしをしている中年女性チャーリー。ある日、彼女に医師を名乗る人物から電話がかかってくる。「あなたのお母さんが今昏睡状態で大変危険な状況に陥っている。今すぐ来てくれませんか」。急なその知らせは彼女を酷く動揺させるのだった。何故なら、看護師だったカーリーの母親は十数年前に精神を病み、老人ホームへと放火して21人も殺害した罪で服役中だからだ。以来母親とは関係を絶ち、連絡すら取っていなかった。それでも何年も抱え込んだ心の傷に決着を図るため、カーリーは指定された都会の病院へと向かう。そこで彼女はにわかには信じられない提案を受けるのだった。先端技術で再現された、あなたの母親の深層意識へと潜入し問題の原因を探り出してほしい――。半信半疑ながらも提案を受け入れたカーリーはさっそく、母親の脳波を元に作り出されたという仮想現実へと踏み込んでゆくのだが……。過去に大量殺人を犯した母親の深層意識へと入り込んだある女性が経験する驚愕の体験を濃厚に描いたサイコ・サスペンス。『第9地区』や『エリジウム』を撮ったニール・ブロムカンプ監督の最新作ということで今回鑑賞。この人って、デビュー作である『第9地区』がすこぶる良かったもののその後は正直右肩下がりな印象だったのですが(個人の感想)、本作でだいぶ底辺までいっちゃったような感じですかね。ぶっちゃけさっぱり面白くなかったです。まあ内容の方は『インセプション』以来大量に制作された人の夢の中に入り込む系のお話。この仮想現実空間の描写が敢えて映像の質を落とした、今発展途上のメタバースみたいなチープな質感にしているところはちょっと新しく感じました。でも、本作の観るべき部分はそこくらい。後は、同ジャンルの先行作で散々見てきたような映像がずっと続き、しかもお話のテンポが悪いことも相俟って最後まで退屈で仕方なかったです。しかも後半からはタイトルで盛大にネタバレしてる、現代の悪魔祓いというオカルト要素をぶっこんでくるのも支離滅裂感が半端ない。とにかく登場人物の誰も彼もが何がしたいのかよく分からないのが致命傷。特に主人公。母親を救いたいのか決別したいのか最後まで意味不明で感情移入出来ませんでした。ブロムカンプ監督、『第9地区』が自分はけっこう好きだっただけに、この先華々しく復活してくれることを祈るばかりですね。
[DVD(字幕)] 4点(2023-03-10 09:48:11)
6.  クライシス(2021) 《ネタバレ》 
近年アメリカで社会問題となっている、極めて依存性の強い鎮痛剤オピオイドをテーマにした社会派サスペンス。ゲイリー・オールドマンとアーミー・ハマー共演ということで今回鑑賞してみました。物語は、製薬会社からの依頼で臨床試験に臨みつつも新薬の致命的な欠陥を見つけてしまう大学教授と麻薬組織の壊滅を目論む囮捜査官、そして薬によって大切な一人息子を失くしてしまった母親を相互に描いてゆきます。つまりは、群像劇。利益優先の製薬会社から事実を隠蔽するように求められた大学教授の葛藤や、麻薬組織に潜り込んだ捜査官のいつばれるか分からない緊迫感などはそれぞれよく描けていたと思います。ただ、この三つの物語が有機的に絡み合っておらず、最後まで何ともちぐはぐな印象になってしまうのが本作の弱点。麻薬捜査官と息子を失くした母親の物語は一応最後の方でリンクしますが、大学教授の話は最後まで残りの二つと完全に切り離されています。それに大学教授のエピソード以外は、オピオイド関係ないような気がするんですけど……。きっと元はこのインサイダー告発者となる大学教授のお話だけがあって、でもそれだけじゃ地味だということで後になってこの二つのエピソードを足したんでしょうね。それならそれでもっと脚本を練るべきだったのでは。群像劇としても社会派サスペンスとしても何とも中途半端なお話でございました。
[DVD(字幕)] 5点(2022-08-09 04:59:06)
7.  THE INFORMER 三秒間の死角 《ネタバレ》 
自由と引き換えにFBIの潜入捜査官となった元犯罪者の男が、様々な組織の思惑と陰謀により再び刑務所へと舞い戻ってしまうというお話。全編を覆うひりひりするような緊張感はなかなかのものだったし、ロザムンド・パイクやクライヴ・オーウェンといったベテラン勢の熱演は見応えありました。特に、犯罪組織とFBI双方に嵌められ、刑務所で孤立無援となってしまう主人公の焦燥感は息が詰まるほど。ただ、それに対して脚本がいまいち。話が無駄にややこしいうえに、後半になるにつれどんどんとサスペンスが盛り下がってゆくというのが映画として致命的。主人公が最後にどうしてそんな行動を取ったかもよく分かんないし、なぜ、最後の最後でクライヴ・オーウェンが捕まったのかも意味不明。ストーリーの見せ方をもっと考えてほしかった。残念!
[DVD(字幕)] 4点(2022-08-09 04:55:21)(良:1票)
8.  カオス・ウォーキング 《ネタバレ》 
西暦2257年、ここは地球から遥か遠くに浮かぶ、未開の植民地惑星。この地を人が住めるように開拓しようとやって来た先遣隊は、この星の原生生物の反撃に遭い、壊滅的な打撃を受けてしまう。そればかりか、男たちは自らの考えた思考が映像となって見えてしまう謎の現象「ノイズ」に悩まされていた。原生生物によって女がすべて皆殺しにされてしまったこの星で生まれ育った青年トッドは、そんな男社会の中で鬱屈した日々を過ごしていた。そんなある日、なんと地球からやって来たと思しき宇宙船が近くに不時着するのだった。そしてその宇宙船の生き残りの中には、彼が生まれてから一度も見たことのない〝女〟がいたのだった――。ヴァイオラと名乗る彼女は、トッドをはじめとする男たちの思考が丸わかりになるノイズに戸惑いながらも、地球に帰る道を探り始める。そんな彼女を執拗に捕らえようとする村の首長。トッドは彼女のために二人で村を逃げ出そうとするのだが……。男の考えていることがすべて映像となって見えてしまう謎の星を舞台に、未来を求めて走り出した男女をダイナミックに描いたSFアクション。今もっとも勢いのある若手俳優トム・ホランドとデイジー・リドリーが初共演ということで今回鑑賞。いやー、久しぶりにきましたね、こーゆー設定勝負の出オチSF。『ハンガー・ゲーム』が大ヒットして以来、一時期大流行りしていたこのタイプの映画って、とにかく荒唐無稽な設定を勢いとお金だけを大量に掛けたCG映像とで強引に見せ切るのが常。ただ、本作はそんな勢いもないし、お金もそんなにかかってなさそうだしで、正直イマイチな出来でした。本作の最大のウリは、男の考えてることが女に丸わかりになっちゃうという日本のライトノベルなんかにアリがちな設定。童貞男子が大喜びしそうな、「僕のこの好きという気持ちをあの娘に伝えたい!でも、そんな勇気もないし、フラれるのも嫌だし、なんか僕の想いがあの娘にいつの間にか勝手に伝わったら良いな。ついでに僕の日々考えてるエッチな妄想も伝わっちゃって頬が赤くなったりしたら、なんかもう……ヒャハ!」というこの設定も、イマイチうまく使いこなせていないような。ここら辺、やはり日本のラノベの方が上ですね。またここまで大風呂敷を拡げといて、最後は二つの村同士の小競り合いみたいなんで終わっちゃったのも肩透かし感が半端ない。それに、あの途中で出てくる原生生物も何のために出したのか分からないくらい中途半端に退場してしまったのも残念。まあ簡単に言うと、さして面白くなかったです。
[DVD(字幕)] 4点(2022-04-07 07:00:48)
9.  モンタナの目撃者 《ネタバレ》 
山岳地帯で発生した火事を担当するベテラン消防隊員、ハンナ。だが、彼女は最近発生した山火事の消火活動中、風の方向を見誤り、目の前で幼い少年たちを死なせてしまうのだった。過失はなかったとされたものの、それでもハンナは事件の生々しい記憶に苦しめられていた。忌まわしき出来事から逃れるかのように、森の監視塔で業務に没頭するハンナはある日、森の中を彷徨うある少年を発見する。全身が泥で覆われ服には血の跡が生々しく残り、何かから逃れるようにひたすら森の中へと向かう少年。明らかな異常事態にハンナは持ち場を離れ彼の後を追うのだった――。少年を無事保護したハンナは、とにかく彼から事情を聴いてみる。すると、彼の口から驚きの事実を聞かされるのだった。なんと、公認会計士だった彼の父親は、大物政治家や大企業が絡む大規模な不正を追及していたのがばれ、暗殺者に殺されてしまったというのだ。警察も誰も信用できない。父が託したという不正の事実を記したメモを手にテレビ局へと向かう少年をとてもほっておくことが出来ず、ハンナは独自に彼と行動を共にする。だが、そんな二人を執拗に追う暗殺者は彼らを追い詰めるため山へと火を放つのだった……。人気女優アンジェリーナ・ジョリーがそんなトラウマに苦しむ消防隊員を熱演しているということで今回鑑賞してみました。監督は、社会に潜む闇を背景にした硬派なサスペンスを幾つも手掛けてきたテイラー・シェリダン。孤立無援となった消防隊員と無力な少年、そんな彼らを追い詰める殺し屋たちの冷酷っぷりが凄まじく、ただ顔を見られただけの通行人を無慈悲にも殺すばかりか、なんと捜査の手を遅らせるためだけに山へと火を放つのです。なんという地球環境に優しくない奴ら(笑)。そんな彼らといかにも熱そうな山火事の炎にダブルで追い詰められる主人公たちの逃避行は、常にハラハラドキドキの連続で目が離せません。特に、燃え盛る炎がすぐそこまで迫ってくるシーンは、こちらも思わず汗ばんでしまいそうなほどリアルでした。ただ、惜しいのは脚本に突っ込みどころが多い点。特に目につくのは、主人公を追い詰める殺し屋たちがあまりにも無計画すぎるところでしょう。遠く離れた地に住む標的を順番に殺そうという冒頭のシーンからしてまず不自然。依頼主が予算をケチったからだと言い訳がましく言ってましたが、何とも腑に落ちない。極めつけは、監視塔の上にいる少年たちを確認させるために、人質だけで昇らせるシーン。自分らは地面で見てるだけって、そりゃ逃げられて当然ですわ。と、そこら辺をもう少し考えてほしかった。これまで完成度の高い脚本を幾つも手掛けてきた監督だけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-02-11 14:30:35)(良:1票)
10.  ストックホルム・ケース 《ネタバレ》 
1970年代、ストックホルムの大手銀行で起きた人質立てこもり事件。銃と爆弾で武装した二人組の犯人は、銀行員の女性二人を人質にすると警察に無理難題を要求する。その様子は全国にテレビ中継され、当時の首相を巻き込んだ一大事件へと発展するのだった――。だが、時間の経過とともに双方のやり取りが膠着状態に陥ると、事件はおかしな展開を見せ始める。なんと本来は人質であったはずの女性行員二人が犯人に協力姿勢を見せ始め、さらには愛情に近い感情を吐露するようになったのだ。果たして彼らの間には何があったのか――。これはのちにストックホルム・シンドロームとして有名になる、そんな実際の事件を基に描かれた犯罪劇。荒くれ者で粗野な言動を繰り返す犯人を演じるのはまさに嵌まり役のイーサン・ホーク、そんな犯人に何故か心惹かれてゆく人質役には実力派女優のノオミ・ラパス。他にも主人公の相棒役でマーク・ストロングらも出ております。とにかく彼らの真に迫った熱演には圧倒されました。何をするかわからない危険な匂いをビンビン感じさせながら時に繊細で優しい一面を見せるイーサン・ホーク、子供のことを第一に考えながらもそんな彼に何故か惹かれてゆく人質ノオミ・ラパス。どちらも熟練の技を感じさせる素晴らしいもの。ただ、肝心のお話に関しては、僕は若干踏み込みが甘いような印象を持ってしまいました。ストックホルム症候群の語源となった、被害者と加害者の間に生じる不可解な連帯感。自分を殺すかもしれない犯人に人質であるこの平凡な女性がどうして協力姿勢を示し、さらには犯人が捕まると涙さえ見せたのか。その過程にいまいち説得力が感じられない。そこにはもっと観る者の魂を深く揺さぶるような真実があったはずなのでは。事実をただ忠実に再現しただけではやはり、上っ面をなぞっただけという批判をまぬかれないではないだろうか。題材や役者陣の熱演は良かっただけに、僕はどうしてもそこのところに物足りないものを感じてしまいました。惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-01-27 06:01:38)
11.  パワー・オブ・ザ・ドッグ 《ネタバレ》 
1920年代のアメリカ南部を舞台に、牧場主の兄弟とこの家に嫁ぐことになったとある未亡人、そして彼女の息子のそれぞれ複雑に絡み合う思惑を濃密に描いた心理サスペンス。主演を務めるのは、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチとベテラン女優キルスティン・ダンスト。監督は、カンヌでパルムドールを受賞した名匠ジェーン・カンピオン。というわけで、観ながら思い出されるのはやはり同監督の名作『ピアノ・レッスン』でしょう。許されぬ愛に身を焦がす男女をこってり濃厚に演じたホリー・ハンター&ハーベイ・カイテルに負けず劣らずの熱演を見せてくれます。特に、ほとんど風呂にも入らず悪臭を放つ荒くれ者でありながら実は繊細な心の持ち主である牧場主を演じたB・ガンバ―バッチは見事でした。愛のない結婚生活から次第に酒に溺れてゆくK・ダンストの切なげな表情もなかなか良かったです。そして、最初は頼りない若者に過ぎなかった彼女の息子が次第に何考えているのか分からない得体のしれない存在へと変貌してゆくのも不気味でいい。ただ、『ピアノ・レッスン』と比べるとどうしても地味な印象を持ってしまったのも事実。何が足りないのかと考えてみると、それはやはり音楽なんじゃないでしょうか。あちらでは世界的なピアノ奏者マイケル・ナイマンの繊細で美しい旋律を持ったピアノ曲が全編に流れていて、非常に気品溢れる芸術作品へと昇華されておりました。対して本作、最後までほとんど音楽が使われず、終盤まで何とも地味な展開で気持ちが離れてしまうこともしばしば。最後に各々の思惑が明らかにされ、人間の底知れぬ怖さが浮き彫りになるというのは良かったのですが、いかんせんそこまでが長すぎます。いろいろと興味深い部分も多かったのですが、それと同じくらい欠点も目につく作品でありました。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-12-14 02:42:12)
12.  ブレッドウィナー 《ネタバレ》 
ここは、まだイスラム原理主義政権タリバンが支配するアフガニスタン。女性は常に全身を覆うブルカを着用することが義務付けられ、教育や仕事も禁止、しかも親族の男性が付き添わなければ外出もできないような不自由な生活を強いられていた。そんな中、戦争で片足を失った父と露天商を営む少女パヴァーナは、貧しいながらも慎ましく暮らしていた。だが、ある日突然、父親が些細な理由によりタリバンに逮捕され、そのまま遠く離れた強制収容所へと連行されてしまうのだった。幼い弟や病弱な母のためになんとか生活を立て直そうとするパヴァーナだったが、自分一人では買い物に行くことすらままならない。仕方なく彼女がとった方法。それは、過去に突然居なくなってしまった兄の服を着て、〝男の子〟として外出することだった――。当初は恐る恐る出歩いていたパヴァーナだったが、変装は予想以上にうまくいき、彼女と同じく男装して出歩いていた幼馴染の少女とも出会い、次第に大胆な行動を取ってゆく。だが、そうして手に入れたパヴァーナの自由な日々も戦乱の予感に搔き消されていく……。2000年代、アメリカ侵攻直前の政情不安に揺れるアフガニスタンを舞台に、過酷な運命に翻弄される少女をファンタスティックな映像とともに描くアニメーション。アカデミー賞ノミネートということで何の予備知識もないままに今回鑑賞してみました。まるでディズニーの『アラジン』のようなタッチで描かれるのは、非常に重い過酷な現実。長年続いた内戦により荒廃してしまったこの地で、理不尽な現実に押しつぶされそうになっているのは常に社会の中で弱い立場にいる人々。それでも必死に自分らしく生きる主人公がすこぶる魅力的で、そんな彼女が男の子となって手に入れた自由に胸躍らせる姿には思わず切なくなってしまいます。僕たちはこの国で普通に外出して普通にコンビニで食べ物を買い、普通に暖かい布団で眠ることが出来ているのに、どうして何の罪もない彼女がこんな過酷な日々を過ごさねばならないのか。理不尽な現実に悲しくなるばかりなのですが、彼女の語る空想の世界の物語と世界観が非常に魅力的でそれに救われます。これこそアニメという表現を最大限に活かした素晴らしい演出でしょう。主人公以外にも、同じく男装していた少女や字の読めないおじさんなど脇を固めるキャラもみな魅力的で素晴らしい。最後が幾分か腰砕けちゃったのが残念だったけど、男たちの暴力に立ち向かうにはいつの世も優れた物語が必要なのだということを改めて思い起こさせてくれる良作でありました。と、これを観ている現在、アフガニスタンではまたタリバンが実権を握ってしまいました。この先、また彼女たちのようなかわいそうな少女が沢山うまれるのかと思うと胸が締め付けられます。この現実を変えるためには、やはり本作のような優れた物語が必要なのだと僕は信じたい。彼女たちのためにも。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-11-23 04:09:57)
13.  私というパズル 《ネタバレ》 
赤ん坊を自宅出産した女性が、助産師のミスからか、産まれたばかりのその子供を死なせてしまい、以来激しい喪失感と罪悪感に苛まれる日々を淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。見どころとなるのは、やはりなんといっても冒頭30分にも及ぶワンカットで撮られたリアルな出産シーンでしょう。不安や痛みがダイレクトに伝わってきて、まるで自分もその場で立ち会っているかのような緊張感が感じられました。このシーンは率直に見事というしかない。ただ、それ以降、映画はずっとこの子供を亡くした夫婦の苦悩の日々をひたすら淡々と描いてゆきます。アカデミー賞にノミネートされただけあって、主役を演じたヴァネッサ・カービーの熱演も真に迫っております。ただ、とにかく暗い!!正直自分はこういう後ろ向きな人々の激しい口論がひたすら続くような内容がかなり苦手です。いや、彼女たちの気持ちは分かるんですけどもう少し明るい内容というか、もっと希望を持てるような展開がないとちょっときついですね。もう気が滅入って仕方ありませんでした。病んだ妻に嫌気がさして浮気しちゃう夫も、余計なお世話を焼いてますます事態を拗らせちゃう身内も、誰も彼も全く好きになれませんし。きっと完成度は高いんでしょうけれど、自分はこういう内容は好きじゃないです。すんません。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-11-08 07:01:04)
14.  七つの大罪クラブ 生贄になった少女たち 《ネタバレ》 
スクールカーストの上位に位置する、いわゆるイケてる女子高生集団。彼女たち7人に、クラスメートたちは嫉妬と羨望を込めてこう呼び始めるのだった。「七つの大罪クラブ」――。暴食、傲慢、色欲、怠惰、強欲、嫉妬、憤怒。それぞれの個性を持った彼女たちは、常に様々なトラブルを巻き起こしていた。そんなある日、彼女たちの一人が行方不明となってしまう。いつも仲良しでずっと一緒にいるはずの彼女たちにいったい何があったのか。お互いに疑心悪鬼と不安が拡がる中、やがて第二の犠牲者が出てしまうのだった……。聖書に登場する原罪、いわゆる七つの大罪をモチーフにそれぞれに問題を抱えた7人の女子高生たちの犯した罪を描いた青春サスペンス。正直、さっぱり面白くなかったです、これ。とにかくストーリーの見せ方が恐ろしく稚拙。最後まで何が何だか全然分かんなかったんですけど!ヒット曲のPVみたいな映像が延々続くだけで、お話のほうは全く成立してないんじゃないでしょうか。そもそも七つの大罪を名付けられた女子高生という割には、誰も彼も皆おんなじでさっぱりキャラ立ちしてません。怠惰という割にはそんなナマケモノでもないし、傲慢という割にはそんなタカピーでもないし、色欲という割にはそんなビッチでもない。せめて暴食の子にはもっとぽっちゃりさんを使ってくださいよー。こんな分かりやすいキャラ設定を使っておきながら、ここまでキャラを立てられないって、え、この脚本書いた人ってアホなんじゃないですか。んで、最後までよー分からんままだらだらと終わっちゃいましたわ。映像と音楽にはほんのちょっぴりセンスを感じたので、+1点!
[DVD(字幕)] 3点(2021-09-10 01:31:46)
15.  カポネ 《ネタバレ》 
暗黒街の顔役として史上最も恐れられたギャングスター、アル・カポネ。だが、その晩年は長かった刑務所生活と梅毒による記憶障害、そして肉体的な衰えとで非常に寂しいものだった。本作は、そんな彼の知られざる最晩年を描いたもの。かつて残虐非道なギャングたちのボスとして恐れらたもの、今や下の世話も自分でできずおしめが手放せなくなるほど衰えた彼を演じるのは、人気俳優トム・ハーディ。という訳で今回鑑賞してみたのですが、正直微妙な出来でしたね、これ。ストーリーなんてほとんどあってなきが如し、ただひたすらボケ老人の妄想に付き合わされただけの二時間弱でした。こういうのって普通、全盛期のかっこいい主人公の姿を回想シーンで描くなりすれば、より衰えた現在の悲哀が浮き彫りになるものだけど、予算の都合か本作はずっと落ちぶれてしまった主人公の今を描くのみ。それもことあるごとに漏らしちゃったり、妄想から暴言を吐きまくったりでまったくもって不愉快というしかありません。クライマックスで主人公がいきなりマシンガンをぶっ放すのもやはり妄想で、「結局だからなんやねん!」と思わず突っ込んじゃいましたわ。ありきたりの伝記映画にはしたくなかったのか知れませんが、どうにも退屈と言わざるを得ない内容でありました。悪夢のような妄想シーンに若干センスを感じたのと、トム・ハーディの熱演に+1点。
[DVD(字幕)] 5点(2021-08-16 23:38:05)
16.  ジョン・F・ドノヴァンの死と生 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョン・F・ドノヴァン。数々のテレビドラマや映画に出演し、多くのファンを得ていた人気俳優だ。だが、順風満帆だった彼の人生はある日、一つのスキャンダルから転落の道を歩み始める。出演予定だった映画は全て降板、酒に溺れた挙句暴行事件を引き起こし、やがて自宅の浴室で死体となって発見されるという最悪な結末を迎えてしまうのだった――。そんな彼は生前、英国に住むある無名の11歳の少年と文通をしていた。シングルマザーの母とともに貧しい生活を送る少年ルパートが何気なく書いたファンレターに、ドノヴァンが返事を書いたのが始まりだった。以来彼とルパートとの文通は100通以上に及び、お互いの何気ない日常や鬱屈した想いを赤裸々に書き綴っていた。それも彼の死で終わりを告げたはずだった――。時は流れ、彼と同じ新進俳優となったルパートはそんな彼とのやり取りを綴った本を出版する。それは各方面で話題となり、幾つものインタビューの依頼が舞い込むことに。取材の場となったプラハで、彼は語り始める。ジョン・F・ドノヴァンとの濃密な交流といじめられていた幼き日々、そして衝撃的な彼の死の真相を……。カナダの俊英グサヴィエ・ドラン監督が、少年時代に憧れの存在だったレオナルド・ディカプリオに手紙を書いたという思い出を基に描くミステリー・ドラマ。物語は、主人公であるルパートが彼と手紙のやり取りをしていた少年時代と、大人になり彼と同じ俳優となった現代、そして虚飾に塗れたハリウッド・スターの内幕を相互に行き交いながら進んでゆきます。そういう複雑な構成のお話なのに、分かりやすく整理された脚本と全編に散りばめられた幾つもの謎によって、最後までぐいぐい引き込ませるのは監督の高度な演出力によるもの。率直にこの監督の才能は確かなものだと思います。張られた伏線を最後に全て回収する鮮やかな手腕も知的でアイロニカルに満ちた会話も、そして気品のある美しい映像も…。でも、僕は個人的にいまいち嵌まれませんでした。なんだかこの監督って、自分の才能に凄く自信があるんでしょうね。例えば、少年時代の主人公が雨の降るロンドンで母親と再会を果たすシーン。急にスローモーションとなって抱き合う親子に流れる、女性ボーカルの「スタンド・バイ・ミー」。確かに凄くセンス溢れる美しいシーンだとは思うんですよ。でも、僕は素直に感動するより先になんだかこの監督の、「どうだい?俺の感性ってお洒落で新しいだろ」とでも言いたげなドヤ顔が透けて見える気がします。いわゆる、鼻につくってやつです。全編こんな感じで、僕は素直に楽しめませんでした。僕にとって、「その才能は充分に認めるけれど、いまいち好きになれない監督」がまた一人増えたようです。
[DVD(字幕)] 6点(2021-06-03 05:30:18)(良:1票)
17.  ハミングバード・プロジェクト/0.001秒の男たち 《ネタバレ》 
0.001秒――。それは生き馬の目を抜くようなNYの厳しい金融取引の世界で、ライバルを蹴落とすために必要な時間。光ファイバーやAIを駆使し、ライバル企業よりもコンマ1秒の差で優良株を買いそれを高値で売り抜けることで巨額の利益を上げるエリート・サラリーマンたち。そんな特殊な世界に身を置き、日々神経を擦り減らしていた落ちこぼれ金融マンであるヴィンセントは、ある日とっておきの方法を思いつく。それは、データセンターのあるカンザス州からNY証券取引所のサーバーまで、直線で1600キロにも及ぶ地下にトンネルを掘り、光ファイバーケーブルを通そうというものだった。そこに山があろうが川があろうが、まして人が住む民家があろうが買収し、ひたすらまっすぐ掘り進む。完成すれば、ライバル企業よりも0.001秒早く商取引を成立させることが出来るのだ。もはや無謀とも言えるそんな彼の計画だったが、幸運にもそのプロジェクトに出資したいという投資会社が現れる。自分の人生に一発逆転を図るため、彼は従弟である天才肌のコンピューター専門家を誘い、意を決して辞表を提出するのだった。もはや後戻りはできない。ハミングバードが一回羽ばたくような一瞬の時間に人生をかけた彼の計画は、果たして成功するのか?実話を基に、そんな無謀とも言えるプロジェクトに心血を注ぐ男たちの奮闘を描いた社会派ドラマ。野心に燃える主人公を演じるのは、まさに嵌まり役と言ってもいいジェシー・アイゼンバーグ(そう言えば、彼は過去にもフェイスブックの創始者マーク・ザッカーバーグの役をやってましたね)。監督は、独自の目線で社会問題を見つめるカナダの俊英、キム・グエン。最初こそ、「ここまでするか」と驚くほどの執念でもって長大なトンネルを掘ろうとする主人公たちの情熱に圧倒されながら観ていたのですが、彼らが相次ぐトラブルによりどんどんと追い詰められてゆくのを見ていると、なんだか呆れて笑えてきちゃいますね。だって、彼らが人生を懸けてやってることって他人より0.001秒早く株を売り抜けるってだけの話。それだけで巨額の利益を上げられるってのがそもそもおかしな話で、そんなことに人生を懸けて挑む彼らって一周廻ってこの人たちって実はバカなんじゃないかと思っちゃいますね。でも、それに世界の経済が振り回されているのかと思うともはや笑えない。相変わらずこの監督の目線は鋭い。途中に出てくるレモン農場の例えなんて見事に本質を突いている。物語の最後の顛末はまさに自業自得としか言いようがなく、そんな無駄なことに時間を使う彼らに比べたら、地道に働いてるレモン農場の農家の方が圧倒的に偉いって一庶民の自分なんかは思っちゃいますわ。行き過ぎた資本主義の矛盾をシニカルに見つめた、社会派ドラマの秀作と言っていいんじゃないでしょうか。お薦めです。
[DVD(字幕)] 7点(2021-05-31 23:30:29)
18.  FREAKS フリークス 能力者たち 《ネタバレ》 
彼女の名は、クロエ・リード。今年で7歳になるちょっと変わった女の子だ。なんと彼女は、唯一の肉親である父親から家に閉じ込められ、生まれてから一度も外の世界に出たことがないのだ。父が言う、「外の世界には恐ろしい者どもがたくさんいて、見つかろうものならすぐに食べられてしまうぞ」という言葉を素直に信じ、完全に外界から遮断された一軒家の中でずっと生きてきたクロエ。友達もおらず、ただ目張りされた窓から路上でアイスクリームを売るワゴン車を覗き見ることだけを楽しみに生きる毎日。「でも、やっぱり外の世界をこの目で見てみたい」――。いつしかそんな欲求を抑えられなくなった彼女は、ある日我慢できずに家のドアを開け、外の世界へと飛び出すのだった。果たしてそこには何があったのか?世界は本当に恐ろしいものへと変貌してしまったのか?そして、彼女に秘められた恐るべき〝能力〟とは?父親によって生まれた時から家に閉じ込められてきた少女の驚愕の真実を独自の手法で描いたSFドラマ。何の予備知識もなく、ただスピルバーグに見いだされた新たな才能といううたい文句に惹かれ、今回鑑賞してみました。最初こそ低予算感が漂っているし、奇を衒ったような演出が散見されるしで、ちょっとこれはどうなんだろうって思わせるものの、後半からの怒涛の展開には完全にやられちゃいましたね。いや、なかなかの掘り出し物ですよ、これ。とにかくこの考え抜かれた脚本の構成力!前半に散りばめられた数々の謎が全て、後半への伏線になっていたとは!いやー、これは是非ともネタバレせずに観て欲しい一本。それに映像的にもけっこうセンスを感じました。人の感情を操ったり時間を止めたりといった特殊能力を使うシーンやクライマックスでの軍人を遠隔操作するシーン(屈強なおっさんがママって言うとこなんて思わず笑っちゃいました)など、どれもすんごくカッコよかったです。特に、姿を消したお爺ちゃんが銃で撃たれ、その血が空中に滲み始めるシーンなんて、センス抜群で最高でした!スピルバーグに見いだされた才能というのも納得。この監督、すぐにマーブルあたりの大作映画に大抜擢されるんじゃないですかね。前半、状況説明をほとんどしてくれないところや父親があまりに横柄なところにちょっぴりイライラしちゃいましたが、僕は充分満足。将来が楽しみな新たな才能との出会いを素直に喜びたいと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2021-05-08 00:32:59)
19.  ナイチンゲール 《ネタバレ》 
イギリスによる植民地支配が本格化した時代のオーストラリア、タスマニア地方。些細な罪を犯し、この地に流刑となったアイルランド人クレアは、生まれたばかりの赤ん坊と優しい夫だけを頼りに懸命に生きていた。だが彼女の身元引受人でこの地を管轄するイギリス軍中尉によって、クレアはどん底へと追い詰められてゆく。中尉に夜毎何度もレイプされ、あろうことか酷い暴力まで受けていたのだ。そのことを知った夫は逆上し、中尉へと抗議するも逆に返り討ちに遭い、クレアは夫の目の前でレイプされてしまう。さらには夫ばかりか生まれたばかりの赤ん坊まで自らの目の前で殺されてしまうのだった――。「絶対に許さない!地の果てまで追い詰めてやる!」。絶望のどん底で、そう固く復讐を誓ったクレア。だが、中尉とその仲間たちは急用で森を抜けた街へと旅立ってしまった後だった。自分一人ではすぐに道に迷い、野垂れ死んでしまうのは明らか。仕方なく彼女は、現地のアボリジニを案内役として雇い、深く険しい森の奥へと分け入ってゆくのだが……。苦難に満ちた時代に、男たちの暴力によって人生を無茶苦茶にされたある一人の女性の復讐の旅路を描いたバイオレンス・スリラー。ナイチンゲールというタイトルとは似ても似つかぬ、非常にエグいシーン満載のなかなかハードな映画でありました。とにかく男たちの暴力シーンのえげつなさは群を抜いてます。女とみればとにかくレイプ、用が済むと無残にも殺しそこらに放置、家族が狂乱してやってきたらそれも殺し、泣いてる赤ん坊はうるさいからと壁に叩きつけて殺します。いや、さすがにやり過ぎやろ……(笑)。でも、なんだか妙に説得力があるのはこの監督の演出力の高さなのでしょうね。ストーリーはその後、極めてシンプルに進みます。家族を殺されたこの主人公が、同じく白人に家族を皆殺しにされたアボリジニの青年とともに森の中をただひたすら復讐のために歩き続ける。たったこれだけのお話なのに、最後まで緊張感をもって描き切ったところは素直に評価されるべきでしょう。何も悪いことしていないのに侵略され弾圧された、アボリジニの怒りや悲しみにも静かに目を向けるこの監督の目線の鋭さにも感嘆させられます。ただ、さすがに二時間越えは長い。もう少しコンパクトに出来たのでは。あと、最後の復讐劇も意外にあっさりしていて、そこまでカタルシスが得られなかったのもちょっと残念でした。まあそれがリアルだと言ってしまえばそうなんでしょうけど、さすがにこの中尉のやってることが鬼畜過ぎてもっと悶え苦しんで死んでほしかったですな。とは言え、この全編に漲る圧倒的な緊張感には素直にやられました。主人公を演じた女優の鬼気迫るような表情も素晴らしい。ちょっと甘めの8点!
[DVD(字幕)] 8点(2021-03-16 02:08:46)(良:1票)
20.  スキャンダル(2019) 《ネタバレ》 
全米最大の巨大メディアFOXニュースを根底から揺るがせたセクハラ事件――。長年経営を一手に担ってきたカリスマ経営者によって、多くの女性ニュースキャスターがその被害に遭ってきたというのだ。仕事欲しさから泣き寝入りを余儀なくされてきた女性たちだったが、ある一人の女性キャスターが声をあげたことによりその実態が明らかとなる。そしてそれは全米を揺るがす巨大スキャンダルへと発展するのだった……。本作は、この実際にあった事件を基に描いた社会派サスペンスだ。シャーリーズ・セロンやニコール・キッドマン、そして最近めきめきと頭角を表している若手女優マーゴット・ロビーという新旧トップ女優の豪華共演ということで今回鑑賞してみました。確かに、この三人の共演はとんでもなく華があって見応え充分。特に、エレベーターに偶然乗り合わせたこの三人の間に漂う微妙な緊張感は観ているこちらまでピリピリしちゃうほど。いやー、これって実際にこの三人が揃うとこうなるんじゃないのなんて思ったり(笑)。ただ、内容の方は正直微妙。最近流行りの実話を基にした系にありがちな、登場人物たちがカメラ目線で観客に直接語りかけるという演出が個人的にあんまり好みじゃないんですよね~。それにトランプ大統領の実際の映像が流れるんですけど、それがこのセクハラ案件と関係するのかというと特にそんなこともない。これならトランプの名前は出さずにとある共和党大統領候補にセクハラまがいの発言を受けたくらいの演出にとどめた方がよかったのでは。なんだかトランプを出したことによってドラマの焦点が若干ブレてしまったような印象を僕は持ってしまいました。という訳で好みの問題もあり、僕はそこまで嵌まらなかったです。いつまでもお美しい美熟女お二人の豪華共演に+1点!ってこの発言も訴えられそうですけど(笑)。
[DVD(字幕)] 5点(2021-03-04 01:00:11)
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