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181.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
シリーズのマンネリ化を防ぐためだろう、度肝を抜く演出、鑑賞者を驚かせて新鮮味を出そうという演出が顕著にみられる。 冒頭、いきなり前回からの続き、オスプレイ航空機部隊によるアルカイダ号襲撃が、スロー逆回転で始まる。 海に転落して気を失っていたアリスが意識を取り戻すと、別の人間に入れ替わっており、ゾンビに襲撃されて逃げ惑う。 実はクローンで別人だが、編集で錯誤させる。クローンが捕殺され意識が途切れると、今度は本物のアリスの意識が回復する。そこはアンブレラ社の実験施設内で、半裸衣装を着て床に横たわっていた。尋問されている途中で、メインコンピュータが再起動、その隙をついて部屋を脱出すると、そこは東京で、ゾンビに追いかけられる。別の部屋に逃げると、そこは中央制御室だが、奇妙なことにオペレータは全員射殺されていた。そkへ見知らぬ女が入ってきて、「私はウェスカーの仲間であなたを助けにきた。ウェスカーはアンブレラ社を裏切り、あなたと力を合わせて戦いたいと希望している」といった。こちらの頭も逆回転しそうな、意表をつく展開の連続だ。ここまでは面白かったが、後がいけない。銃を中心にしたアクションの連続で、目新しさはなく、飽きてしまった。観終わってみれば、進展はわずかで、実験施設から脱出するだけの話。そもそも物語は破綻しかけている。アンブレラ社は、人類がほぼ滅亡している状況なのに、人体実験を繰り返して化学兵器の開発に余念がない。とおもったら、今度は人類絶滅を目指すとか言い出す。ゾンビ感染ものから、マッドマックス風の荒涼世界、マトリックス風の仮想現実世界を経て、ターミネーター風のコンピュータ反乱世界へと変貌を遂げつつ、プリズン・ブレイク、エイリアン2の風味も加わって、最早統一感なしの世界観に堕してしまっている。観客を喜ばせようという努力は買うが、何でもありの荒唐無稽設定と中味のない物語では、いくら大金をかけたアクション娯楽大作でも限界がある。半裸も危険なアクションも厭わない主演女優の役者根性と相変わらずのキレのあるアクションには頭が下がる。次回作でいよいよ最終回。ゾンビ+クリーチャー+コンピュータ軍団と人間との壮絶な戦いが繰り広げられ、人間は苦戦し追い詰められるが主人公の捨て身戦法により、中央制御装置が爆破され、最終的に人間が勝利、ワクチンでゾンビが人間に戻る、といった内容と予想する。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 19:30:29)(良:1票)
182.  老人と海(1958) 《ネタバレ》 
84日の不漁の後、漁に出た老人が数日間かけて獲得した大魚と、それを喪失する顛末を描いて、生きるとは何かを問いかける。戦争を描いた文豪らしい骨太な主題だ。 老人にとって巨大マカジキはどういう存在だろうか。魚を獲ることは、自分を生かすことだが、同時に自分をすり減らすことでもある。魚との戦いには勝たなければいけないが、魚が憎くてそうしているのではない。魚には深い同情を示す。だから巨大マカジキを義兄弟と呼んだ。老人と魚とで一種の共依存関係が成立しており、勝利のあとに得られるのは幸福感と虚無感だろう。人間は他の生物の命を奪い、自分を削って生きてゆくしかないという自然の摂理。それを受け入れるしかないのだ。獲物が鮫に食われた時、老人は我が身が食われたような苦痛を味わったに違いない。満身創痍の死闘の果てに得た獲物が、必死の抵抗にも関わらず、あらかた鮫に食われてしまう。敗北だろうか、ただ運が悪かったで済むことか。そうではないだろう。老人は魚との格闘の中で、生きる悦びの神秘的な迸りを体験した。神の恩寵、祝福ともいうべきものだ。自分の中に眠っていた若さを数刻ながらも取り戻したのだ。老人の勝利といってもよい。老人が時折夢に見るライオンは自身の若さの象徴だ。家に戻って見た夢のライオンはさぞ光り輝いていたに違いない。 旅行者は皮肉にもマカジキの骨をサメの骨と勘違いする。自然と対峙せずに生活する文明社会の人間にとってマカジキとサメの違いはない。だが文明生活からは、真の生きる悦びは得ることはできない。 もう一つの題目は老人と少年の深い絆。老人はマカジキとの死闘の最中、あまりの疲労に思う、あの子がいてくれれば。少年は老人の痛んだ手を見て涙した。コーヒーを取りに戻るときも泣き続けた。それほど二人は一心同体だった。少年にとって老人はあこがれ、尊敬の対象であり、老人にとって少年は救い、慰みそのものだ。老人はかつて少年だったし、少年はいつか老人になる。両者は裏表の関係だ。共に貧しく、命がけで漁に出る海の男だからこそ、世代を越えた絆で結ばれるのだ。二人は貧しいが、決して不幸ではない。相手を思いやる、豊かで暖かな心に包まれているのだから。少年は言う、「今度は連れてって」。希望と未来がそこにある。海はいつでも新しい。少年にとっても、老人にとっても。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-14 00:41:59)(良:1票)
183.  恋人までの距離(ディスタンス) 《ネタバレ》 
変った観点からいうと、夫婦喧嘩も役に立つことがあるということ。一種のバタフライ・エフェクト。運命が動き出した瞬間が夫婦喧嘩とは面白い。これは内容にも関係します。二人の人生には苦しみや悩みがあり、その中で最大のものが愛情が続かないということ。ジェシーは恋人と別れたばかりで、親は離婚している。セリーヌも恋人と別れて殺意を抱くほど憎み、祖母は夫でない人をずっと愛していたという秘密があった。それが恋に対する恐れとなり、お互い惹かれながらも恋心に制限をかけていた。だが話をしてみると会話が弾む、弾む。恋の初期段階の男女のマシンガン・トークショー。共に知的で情より理性にまさるタイプ。内容は哲学的なものが多い。ここで重要なのは別れるまで14時間しかないということ。恋愛のタイムリミットもの。心に制限していても、夕暮れの観覧車の中でついキスを。女性のほうから誘いますね。「私とキスしたい?」男は断れませんよ。いい雰囲気になったところで電話ごっこ。女性の方から告白。つられて男も告白。お互い目を見ながらは、照れ屋の日本人には無理。セックスも女性から言い出す。恋愛がスムーズに運ぶには女性がさりげなくリードするのが一番。ここまでくればソウル・メイトと気づきます。行きずりの恋なんて論外。それでも理性にまさる二人は、もう会わないつもりで別れようとします。が、ここで「もう一度会いたい」と男が言い。「そう言って欲しかったの」と女がキラーワード。情が理性の壁を突き破った瞬間です。爽快でした。やっと気づいたんですね。二人は間違いなく再会しますよ。ところで「運命の出会い」のための演出過多なのが気になります。占い師が女の未来を語り、「人はみな星くずから生まれた」と言う。女と同い年だった13歳の少女の墓。ミルクセーキのような甘い詩をプレゼントする詩人。「ここに来て」という歌詞のレコード。結婚式をイメージさせる教会。赤ん坊をイメージする誕生の踊り。環境が人間より強いと感じさせる絵。虹の中で死んだ祖父を見た。別れた恋人を殺したい欲望。無心論者とホームレスの挿話。ちょっとやりすぎでは?と思いましたよ。それとも恋愛にはこれくらいのしつこさが必要でしょうか。とにかく、これほど知的な恋愛映画は他に知りません。限りある時間は貴重、人生でも恋愛でも、ということも学びました。ところで牛の芝居を観たかったのは私だけ?
[DVD(吹替)] 7点(2009-09-20 09:05:23)(良:1票)
184.  ガタカ 《ネタバレ》 
SFとサスペンスとヒューマンドラマと恋愛の見事に融合した作品。不適格者ヴィンセントにとって宇宙へ行くとはどういうことか?それは天上であり、神に近づくことであり、差別され続ける地上社会を逃れること。夢であり、自己実現であり、存在理由の根源なのだ。それが故にどのような手段、たとえ違法であろうとも宇宙に行こうとする。DNAの優劣で身分や職業が決められてしまう社会への挑戦でもある。彼の身分詐称、偽装工作は徐々に剥がれてゆくが、理解者も増えてゆく。DNA提供者のユージーン、恋人のアイリーン、弟の刑事、検査官。宇宙に行くことで、彼の夢は達成されたのだろうか?ユージーンの場合を考察してみよう。彼はDNAエリートだが、エリートの世界ほど競争の激しいものはない。銀メダルしかとれずに挫折し、車に飛び込んで自殺未遂。(エリートならもっと確実に死ぬ方法を選ぶはずだが…)下半身不随に。生活費を得るため、ヴィンセントにDNAを提供するが、次第に彼の夢に向かう生き方に共鳴してゆく。エリートが不適格者(生まれながらの敗者)に心を打たれたのだ。だがこれが悲劇の引き金となる。ヴィンセントがユージーンであるためには、入れ替わった自分が消滅しなければならない。彼はヴィンセントに自分を託し、自分を消滅させる。バッドエンドだ。そもそもこの物語は「偽装工作すれば夢が叶う」というメッセージに受け取られかねない危険性を孕んでいる。偽装にばかり焦点が当てられるからだ。ラストは正々堂々とジェロームとしてではなく、ヴィンセントとして宇宙旅行に行かなければ本当の自己実現にならないだろう。検査員が偽装に目をつぶったように、社会もそれを受け入れる素地がある。弟も競泳で負けて、兄の”努力の賜物としての体力・気力”を知ったのだ。「DNAよりも努力がまさる」がテーマ。「DNAよりも偽装工作」の印象が残るのはまずい。自殺は生命の軽視。努力の大切さを知ったユージーンこと再出発すべきだろう。別人として偽りの人生を続けることがどれほどの重荷になるか、容易に想像できる。誰もが6本指のピアニストのように成功できるはずだ。SFとしての欠点も目立つ。コンタクトや身長伸ばし手術や弱い心臓などは安易に見抜けるはず。殺人事件も監視カメラを見ればいい。また個人情報が保護されていないのは不自然。階段シーンや恋人が全てを悟るシーンなどとてもよかったです。
[DVD(字幕)] 8点(2009-09-06 17:26:37)(良:1票)
185.  ホテル・ルワンダ 《ネタバレ》 
ルワンダの虐殺は根の深い問題だ。虐殺の背景として、長年に渡る民族対立、政治対立(フツ+フランスVSツチ+ウガンダ)があるが、ラジオでの憎悪を掻き立てる民族主義プロパガンダの影響が非情に大きかったと言われている。貧困で、教育水準、民度が低ければ、偏狭なプロパガンダにも洗脳されやすく、安易に暴力に荷担してしまう。教育がいかに重要かが実感させられる。ルワンダにとって悲劇だったのは先にソマリア紛争があったこと。内戦が勃発すると、邪魔な国連軍が最初に狙われる。十人も殺せば撤退することを知っているからだ。国連はソマリアの轍を踏み、内政不干渉、軍の撤退を早々に決定した。実際にベルギー兵十人が殺された。国連軍の指令官は最低限の兵のみ治安を維持すべく駐留するが、精神を病んで辞任、帰国する。後にPTSDにより自殺未遂を起こしている。それほど過酷な任務であったということだ。死者80万人と大量の難民が発生し、一時は人口の3/4が女性だったという。その所為で女性の社会進出が実現されたとルワンダ人から聞いた。ちなみに戦後最大の紛争は、1971年のバングラデシュ独立紛争で死者300万人。どの紛争も複雑で、真実は立場によって変わる。被害者意識、家族愛、隣人愛、勇気で綴るこの映画や原作も鵜呑みにはできない。一度全てを疑ってみる必要があるだろう。何が真実かを見極める目を持ちたいと願う。映画から恐怖は伝わってこなかった。所詮は作り物だからだ。実際の虐殺場面を描いたら観客を失うことになっただろう。昨日までの隣人同士が殺しあったり、家族を殺されたりする恐怖は、経験した人にしかわからない。わからないことが幸運だ。その幸運を噛みしめながら、中断したディナーを続けるしかない。虐殺は現実だが、それを遠くから傍観視するのも又現実。立場が違えば、受け止め方が違う。対岸の火事をみて、きれいだと感じてしまうこともあるだろう。当初司令官が具申した通り、国連軍がツチ民兵の武器庫制圧を行っていれば悲劇は防げたかも知れないが、それが更なる悲劇を産むこともありえただろう。運命は気まぐれで、人間一人の力はいかにも弱い。主人公は彼にできる限りの精一杯のことをした。そして多くの人命を救うことができた。そのことに対して、いまは素直に、惜しみない賞賛を送りたい。 
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-07 06:31:32)(良:1票)
186.  アスファルト・ジャングル 《ネタバレ》 
荒涼とした都会の犯罪多発地域が舞台。不況のせいで庶民の生活は苦しく、心は荒んでいる。そこへ出所した知能犯ドックが、周到に練られた宝石商強奪計画を持って現れたところから物語が動き出す。宝石略奪という大博打にかける六人男たちの行動と心理が鮮やかに描かれる。表情を常に正確に捉えるライティングや端正に構図を決めるカメラワークは好印象。緻密な計画だが、弁護士があらかじめ裏切りを決め込んでいるなど、不確定要素を含んでいてサスペンスが持続する。うまい脚本だ。舌を巻くのは各人の掘り下げがきちんとできていること。個性豊かなのが嬉しい。全員根っからの悪党ではなく、善人の部分と精神の弱みを併せ持つところが味噌。実に人間らしいのだ。ドックは頭脳明晰で大胆かつ紳士だが、若い女性に弱く、失敗は偶然のせいにして反省しない傾向が強い。そのため自滅する。用心棒のディックスは競馬狂いで強盗常習犯だが、子供時代に育った農場を買い戻す夢を捨てていない。そっけないが、約束は守り、女性にも親切だ。資金提供者のエマリックは悪徳弁護士で高利貸しだが、若い娘を囲うなどの散財で破産の憂き目にある。それでも病気の妻への愛情は持ち続けていて、最後は自責の念から自殺する。金庫破りのルイは風邪をひいた自分の赤子を気遣う、良き父でもある。運転手のガスは食堂経営者だが、せむしで小男のため世間からは冷たい目で見られている。金に困っているディックスに金を融通するなど、友情に篤い面がある。賭博業者コビーは大金を見るだけで汗をかくという気弱な性格。これに賭博業者と結託する悪徳刑事とディックスに思いを寄せる女が絡むのだから、面白くないわけがない。犯罪撲滅に苦慮する警察側の様子も描かれるという丁寧さ。まだ無名のマリリン・モンローが花を添えるという贅沢さもある。監督が描きたかったのは、犯罪そのものではなく、犯罪を生む風土だ。死人の出る犯罪映画だが、過激で扇情的な演出や痛快なアクション、美男美女の織り成す恋愛などの現代映画的な要素はなく、むしろあっさりしている。これは時代の制限であり、監督の良心でもあるのだろう。古い映画だが、今でも映画作りの手本になる映画だ。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-10 15:48:17)(良:1票)
187.  トランスフォーマー/リベンジ 《ネタバレ》 
単純な戦闘ロボット映画。ドンパチシーンは最初は迫力があるが、すぐに飽きる。ロボットのどっちが勝とうが、すぐに興味がなくなる。破壊シーンも空母が轟沈されるシーンを除いては、見るべきものがない。肝心なのは人間ドラマの部分だろう。地球滅亡の危機のはずなのに、おちゃらけやエロシーンの連続では、感情移入しろというのが無理というもの。観終わって「ああ、地球の危機が救われてよかった」とホットした人がいるだろうか?そもそもロボット型生命体が主人公という点を除いて、オリジナリティがない。全てが予想調和的な内容。いまさらピラミッドが舞台なんて噴飯もの。前半部のくだらないジョークは能天気ぶりを見せられたのでは、後半の戦闘シーンで手に汗を握れるわけがない。お笑い部分ははぶいて、「ターミネーター」のようなシリアスものにすべきだ。単なるおバカ映画で終わっている。 ■敵ロボットが強敵すぎる。宇宙衛星に寄生できたり、電波ジャックができ、空も飛べるし、海にも潜れる、虫型偵察ロボットもあるし、合体して巨大になるし、人間にも化けれる。これだけできれば米軍の軍事情報網を破壊するのは簡単だろうし、大統領を暗殺するのも容易だ。何でもかんでもできるというのはダメなのだ。秀でた部分があり、弱点があることで魅力が出る。ロボットのここが弱点というところがないので、戦闘が単調になっている。 ■ロボットの歴史が判明するシーンはよかった。物語に厚みを増している。古参兵ロボットはキャラが立っていた。自らを犠牲にするシーンでは感情が動いた。この路線で作ってもらいたかった。
[DVD(吹替)] 5点(2010-02-28 13:01:28)(良:1票)
188.  三大怪獣地球最大の決戦 《ネタバレ》 
謎と怪異を前面に押し出して趣向を凝らす前半部分が秀抜だ。 地球規模で異変が起こっている。日本は記録的な暖冬で、宇宙からの怪電波が入り乱れ、夜には流星雨が甚だしい。ある日巨大隕石が黒部渓谷に落下する。隕石は時折磁性味を帯び、徐々に大きくなる。他国の王女が極秘来日のため飛行機に乗っていると、内なる声が聞こえ、飛び降りろという。飛び降りた直後、飛行機は爆発する。王女は日本に現れ、自ら金星人と名乗り、ゴジラ、ラドン、キングギドラの襲来を予言する。来日していたモスラの友人の謎の小美人は、王女の予言を信じ、ゴジラ奇襲による船の撃沈事故から免れることができた。 これらの大風呂敷を広げた謎の解明部分だけでも咀嚼玩味の妙趣がある。実は金星は五千年前にギドラによって滅ぼされ、一部の金星人は地球に逃れ、人類と同化したのだった。王女は先祖の金星人の記憶と能力を継受している。王女は国内の政治紛争の巻き添えになり、暗殺団に追われている。その暗殺団は怪獣によって撃退される。このように物語を交錯させているのが上手い。 加えて、女王と彼女を警固する刑事の恋物語の要素もある。刑事の妹の記者はお転婆でかわいい。脚本に無駄がない。最大の見世物は、最兇の宇宙怪獣キングギドラだろう。ビルを融通無碍になぎ倒す破壊光線の暴威は凄烈で、観る者を震駭させる。形態の美しさには誰も瞠目するところだろう。 さて言うまでもなく、最も括目すべきは三大怪獣とギドラの決戦場面だ。その為の映画といって過言ではない。しかし、期待ははかなくも裏切られた。怪獣を擬人化して、モスラが説得するのでは怖さが失われる。理屈ではなく、有無を言わさず巻き込まれればよいのだ。戦闘特撮は何とか及第点の水準には達しているものの、プロレスごっこの域を出ず、胸がすくような大激突、快哉を叫ぶような破壊活動が見られない。ビル街での決戦であればぐっと迫力が増したはずだ。ビルが破壊されることによって観客は怪獣の破壊力の激烈さを実感できる。自衛隊が参戦しないのは理解に苦しむ。たとえ咬ませ犬であっても、爆撃機の編隊飛行やミサイルの火力で、視覚的聴覚的に大いに盛り上がったはずだ。また人間と怪獣が協力して宇宙怪獣を追い払うところに意義があるのではないか。 脚本はゴジラ映画の中では最上級。キングギドラが初登場した歴史的作品。キングギドラの単品作品が見たい。
[ビデオ(邦画)] 8点(2010-10-15 23:24:49)(良:1票)
189.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 
サスペンス映画の傑作。2つのサスペンスが同時に進行し、意表外なことから思わぬ展開となり、複数の犯罪が一気に白日の下にさらされるラストは見事である。中年の愛と若者の愛も描けている。硬質なモノクロ映像、心理描写に卓越したカメラワーク、主演女優の艶麗な美しさ、クールで洗練された音楽、頗るゴージャスだ。完全犯罪を目論んだが僅かの偶然から破綻していく過程を見せる映画のように見えるが、そうではないだろう。主題は「倦怠(アンニュイ)からの開放」。登場人物のほぼ全員が倦怠を感じている。倦怠とは、退屈な生活、本来の自分でない自分に対する嫌悪感といったところ。社長夫人は、夫との愛のない生活に疲れ果てている。ジュリアン(大尉)は戦争で死線をさまよったが、戦争で儲けている男の下で働いている。花屋の娘は、退屈な仕事と貧しさに甘んじながら一人暮らし。青年はやりたいことが見つからず、仕事もせず、バイク窃盗で指名手配され自暴自棄になっている。その他、秘書、警備員、各飲食店の従業員、酔っ払いの大尉の友人、警察の受付まで、誰一人明るい顔をしていない。人生に倦む現代人の無表情がそこにある。倦怠を暗喩するのが雨模様の夜の都会であり、その中を夜を徹して恋人を探して徘徊する社長夫人の姿は、自由を渇望してもがく現代人の姿そのものだ。恋人通しがお互いに惹かれ合うのは、倦怠から脱出したいという共通の素懐があったからだろう。彼らは犯罪を起こす前から 倦怠という名のエレベーターの狭い空間に、息も絶え絶えに閉じ込められていた。だからこそ中年の恋人達は自分たちの邪魔になる男の殺害するという決死の決断をし、若い恋人達は自分たちの犯罪が明るみになりかけたとき、躊躇なく自殺を決行したのだ。殺人を犯したことでエレベーターは死刑台へとつながる。展開上、若者の恋人達は、中年の恋人達をかき乱しているだけの存在にみえるが、実は両者は対等だ。アンニュイを感じている人ほど、この作品に惹かれるのではないか。残念な点もある。鉤爪付きロープが地上に落下しているが、もし雨などのせいで勝手に滑り落ちたとしても、ベランダに落ちるはず。ロープは回収するつもりだったが、警備員が部屋に入ってきて、あとで回収するしかなかったという筋にすべき。殺される観光客はおちゃらけすぎ。最後の抱擁写真だが、あれは一枚で良い。風景写真の中にたった一枚あった方が印象が強い。
[DVD(字幕)] 9点(2012-10-06 04:20:24)(良:1票)
190.  タワーリング・インフェルノ 《ネタバレ》 
超高層ビルで火災が発生し、逃げ場の無い最上階の人達をどう救助するかというパニック映画。パニック映画ということを忘れさせてくれるほど濃厚な人間劇が展開される。特撮よりこちらの方が白眉だ。死を覚悟し、自分は詐欺師であると告白する老詐欺師。それを聞いて「知っていたわ」と許す未亡人。鎮火後、老詐欺師は未亡人を探すが、彼女は転落死しており、助かった猫を渡される。これだけで一本の映画になる。密かな恋愛関係にあった上司と秘書。気付いたときは煙が充満していた。「昔は短距離選手だった」と、助けを呼びに駈け出した上司は火達磨になり、秘書も炎上転落する。二人の恋愛は誰にも知れることなく終わった。バーテンダーは非常時でも平常心で仕事をこなし、子供の面倒もみる。地味だが忘れがたい存在だ。火災の原因は、ビルのオーナーの娘婿が施工した手抜き工事と電線を規格以下に変更した所為だ。だがこれには、オーナーから経費節減を迫られ、実際、オーナーはビル建設で娘婿以上の上前をはねているという背景があり複雑だ。設計者ダグは、設計責任者でありながら数週間も旅行に出ていた。火災が発生してからスプリンクラーが動作しないとか、廃棄セメントで非常扉が開かないことを発見しても遅いのである。それでも彼は八面六臂の活躍で、人々の救助にあたる。その中には彼の恋人もいる。消防隊長は給水塔の爆破を命じられるが、戻る手段のない危険な任務だ。男らしく唯々諾々と従うが、胸底では自分の運命を呪ったことだろう。火災が次々と延焼拡大し、それに従って救出手段が変るところが事新しい。内部エレベーター、展望エレベーター、屋上に救助ヘリ、隣のビルへワイヤーで吊るす救命籠、ヘリでエレベーターを吊り下げる。極めつけは給水塔の爆破による鎮火だ。よく思い付いたものと思う。この奇抜な着想がこの作品に命を吹き込んでいる。数分間に渡る爆発散水場面は圧巻である。火災原因が手抜き工事という人災という点が怖ろしい。対岸の火事ではなく、身近な問題として感じられるのだ。この点が、今日でもこの作品が新鮮さを失わない要因だろう。「今日は二百人の死者で幸運だった。いつか一万人以上の死者が出るだろう」の言葉には現実味がある。色褪せることのない傑作だ。文化の違いを感じたのは、事務所に寝台があり、情事を楽しんでいる点。違和感があるのは、女性が椅子で窓硝子を叩き割るところ。
[映画館(字幕)] 10点(2015-01-13 23:01:21)(良:1票)
191.  惑星ソラリス 《ネタバレ》 
主人公クリスに魅力がないのが残念だ。中年太り、生気のない眼、もじゃもじゃ髪、心理学者らしいところがなく、現象の解析や心理分析も一切行わない。亡妻ハリーの出現に驚愕し、短慮にもロケットで抛棄したり、わけなく愛の幻影に溺れたりと、全くの素人状態。地球基地に報告も行わない。そもそも単独で調査に乗り込む設定に問題がある。バートン証言が真実ならば、行方不明のフェルネラはソラリスの島の庭園に赤ん坊と暮らしている。海を泳ぐ4mの赤ん坊は、フェルネラの未だ見ぬ新生児で、実体化されている途中。クリスも同じ運命を辿る。彼と父との関わりは不明確だが、出発前に「今生の別れ」めいた会話があったので、父は不治の病なのだろう。亡妻、亡母へのトラウマは癒されたので、父との生活を選んだのである。想像だが、ソラリスの知能の海と交信して、心が癒された者だけが島に留まり、海と共生(意識の交流)するのだろう。海が欲しているのは健やかな精神だ。他の船員は精神の傷が癒せないため、海と正常な関係が結べず、望まない者が出現したり、鬱病になったりするのだろう。海に知性があるという設定が蠱惑的だ。更に人間の潜在意識を実体化する能力があり、コピー人間は元の人間と同じ記憶、感情を持ち、人間と同様愛し、悩み、苦しむ。それなら元の人間とどう違うのか?生命の価値観、愛の価値観の見直しを迫り、意識とは何か、進化とは何か、幸福とは何か、問いかけてくる哲学的な内容。より身近に言えば「故郷地球を捨てて、復元された理想郷ソラリスに住むのは幸福か」という問題になる。 実体化した妻のあわれさ、美しさが感じられれば感情移入できる。心理学では水は無意識の象徴だ。冒頭クリスは美しく流れる川を眺め、池で手を洗い、雨に打たれて濡れる。宇宙船では母に腕を水で洗ってもらい、島の家では天井から水が瀝る。浸透する水は意識の変容を表わす。鏡も同様な意味で使われている。監督は水、鏡、カラーとモノクロの切り替え、テンポの遅さで意識と現実の境界を曖昧にし、観客の無意識に働きかける。「海」が人間にとって「魔物」なのか「救世主」なのか不明だが、自殺者を出すのだから、ローレライの魔女のようなものなのだろう。ただ癒しの力、再生力は不老不死に似ていて「神」に近い。人類がみな虜になってしまう可能性もある。尚、林檎は知恵、馬は恐れ、火は再生の象徴で、それぞれ適確に挿入されている。
[DVD(字幕)] 8点(2013-09-16 06:53:25)(良:1票)
192.  ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記 《ネタバレ》 
謎解きをメインにしてもっと丁寧に描いていればよい映画になったと思う。リンカーン暗殺者の日記の発見→日記の暗号コードを発見→キーワードDEATH発見→パリの自由の女神→双子の机→バッキンガム宮殿侵入→ホワイトハウス大統領執務室侵入→大統領誘拐→大統領の本の発見→ラシュモア山→黄金郷発見、と並べてみるとなかなかのものだ。だが、それらがぞんざいに扱われすぎている。バッキンガム宮殿のセキュリティをハッキングとか、大統領執務室にすぐに入れるとか、大統領を誘拐するとか、これらは不可能に近いことなので見せ場になるはず。観客はこういうところでアイデアに感嘆したり、手に汗を握ったりするのだ。簡単にいきすぎである。脚本家はこういうところに頭をひねるべきだろう。黄金の隠し場所が見つかってから、別映画のように冒険映画っぽくなるが、同じような映画がたくさんあるのですぐに飽きてしまう。ハラハラドキドキはぜんぜんしなかったですね。カーチェイスなどのアクションシーンも不要。敵役のミッチ(エド・ハリス)は、木片をベンたちから奪うために銃を乱射していた、人の命をなんとも思わない人物だったはずである。ところが、黄金の隠し場所に入った途端に人格が変わり、シーソーの場面では二人に手を貸した。最後はナイフを女に突きつけて、また悪者になったかと思いきや自己犠牲精神を発揮してベンを助けた。お金がすべてのタイプだった悪人が、急に名誉を重んじる人間になる。説明不足ですね。そういえば、アビーがバッキンガム宮殿に現れるのも唐突でしたね。一方で、ベン夫婦とベンの両親夫婦は仲が悪いのが元の鞘に戻るというサブ・ストーリーはよくできていて、十分楽しめました。キャラクターがよく描けていました。大統領は日記の47ページを気にしていたが、自分の日記なので自分で見れるはずである。あるいは、ベンに読んでただ共感してもらいたかったのか?次回作への伏線か?また、どうしてあんなところに日記があるのか不思議である。最後にあの木片は誰が作ったのかわからなかった。先住民が作ったのをリンカーン暗殺者たちが発見して二つに分割して、双子の机に隠したのだろうか?燃えてしまったページに暗号がかかれたいたということは、すでに黄金の隠し場所が分かっていたということではないだろうか?このあたりは、もう一度鑑賞してみないと分からないところです。
[DVD(字幕)] 6点(2009-04-02 19:41:55)(良:1票)
193.  隠し砦の三悪人 《ネタバレ》 
戦に敗れた領主の世継ぎの姫と侍大将と奇縁の百姓がお家再興をめざし、軍資金を運びながら、敵国突破を試みる。次々と襲いかかる危機、困難をいかに乗り越えるかが見どころ。冒険あり、宝探しあり、痛快アクションあり、美女あり、ユーモアあり、娯楽性に富む内容で観客を飽きさせない。この作品は黒澤明の”インディ・ジョーンズ”だ。◆脚本上の問題は、相手武将の「裏切り御免」に尽きる。本人達が知恵と勇気と能力を駆使して危機を脱出するところに妙味があるのに、ここの部分だけが”他力”になって しまっている。物語の流れに逆らってしまっている。この場面がクライマックスなので尚更その印象が強い。また裏切りの理由が「家来の面前で、主君に面罵され、面相が変わるほど打擲されたため」では、重すぎる。ここだけ痛快時代劇の枠をはみ出している。鑑賞後、爽快感が薄いのはこのためだ。◆冗長な面もある。物語の発端となる2国間の合戦と落ち延びる姫の様子は描かれていない。その代わり二人の百姓が捕らわれ、強制労働させられ、暴動に乗じて脱出する様子が描かれる。どちらが重要かは論を待たない。後者はカット可能だ。百姓はあくまでサブ扱いすべき。百姓二人は黄金を持つと貪欲になり喧嘩をし、危機になると途端に仲直りする。そこに人間臭さがあり、ユーモアがあり、ラストのオチの伏線になっているが、何度も繰り返せばクドくなる。いくつかを削って尺を短縮すればより躍動感が出た。◆副物語は、姫の心の成長。これは良く描けていると思う。人身売買される娘を買って助ける場面は泣かせる。これは自分の身代わりになり打ち首になった娘の伏線があるからこそ効果が倍増するのだ。わがままから出た行為ではなく、他人を思いやる心が芽生えてきたからだ。娘を加えたことが敵の目をくらます原因に連なっており、このあたり絶妙である。又民と共に踊る火祭りのシーンは印象的。「人の命は 火と燃やせ 虫の命は 火に捨てよ思い思えば 闇の夜や浮世は夢よ ただ狂え」監督が観客に送るメッセージだ。◆山で大勢に囲まれ捕縛される場面。弾丸が倒木に当たり幹が跳ね、次の瞬間人物が飛び出てくる。これの繰り返しだが、フィルムが繋がっていないのが丸わかりというチープさ。明らかに手抜きである。上手の手から水が漏る。
[DVD(字幕)] 8点(2011-07-24 09:20:33)(良:1票)
194.  美女と野獣/ベルの素敵なプレゼント<OVA> 《ネタバレ》 
宮廷音楽家のフォルテは魔法にかけられてオルガンの姿になってしまったが、そのことに満足している。音楽を自由に作曲、演奏できるし、野獣になった王子の心を癒せるのは自分だけだと信じており、王子との心の絆が強められるからだ。これは人間だった頃には皆から疎まれていたことが影響している。だからベルの存在が邪魔で、二人の仲を裂こうとする。王子にはベルの悪口を言い、ベルを黒い森へ誘い出す。自分の望みが絶望的だと悟ると邪悪な音楽を奏で、城を破壊し、二人を殺そうとする。最後は野獣に破壊されて死ぬ。元来、心が邪悪なのだ。みんなと利害関係が一致しないのは、心がねじけているから。■二人の間に強い愛が生まれるには、決定的な破局の後に劇的な出来事があればいい。本作の場合は、ベルが氷の湖に溺れているのを野獣が助ける。ベルは野獣の優しさを知るが、野獣はベルが約束を破って逃げ出したと考え、ベルを幽閉してしまう。この氷った心を溶いたのは、ベルのクリスマス・プレゼント。それはベルの書いた物語で、王子の孤独な心理が描かれていた。野獣は、最大の理解者を得たのだ。ベルは「本好きで賢い娘」という設定がよく活かされている。■ベルはフォルテの心を癒すことができなかった。フォルテは死んだが、誰も彼のことなど忘れてしまっているようだ。ハッピーエンドに見えて、そうではない部分もある。クリスマスの悲喜劇の物語。
[DVD(吹替)] 5点(2010-03-05 14:31:23)(良:1票)
195.  ガフールの伝説 《ネタバレ》 
ふくろうが高度な文明を営むという世界観だが、鉄器文化を持つことに大いに違和感があった。飛躍しすぎていないか。 鉄剣、鉄兜、鉄面蓋などで武装していては、人間の古代戦士と変わりなく、ふくろうである必然性がなくなる。各種ふくろうの特性を生かした肉体同士での戦闘場面が見たかった。 悪の王国の最終兵器である、砂嚢をしびれさせて動けなくするという「特殊金属」は説明不足の誹りを免れないだろう。何のことやらわからない。砂嚢は鳥類の胃の一部で、食物を砂で細かく砕くものであるので、「砂嚢を麻痺させる」とか「頭ではなく砂嚢で感じろ」といわれてもぴんとこない。心眼のようなものと察しはつくが、すっきりしない。極め付けは「月光麻痺」。月の光を真正面で受けると麻痺してマインド・コントロールされるという安直な設定にはげんなりさせられる。 物語は善悪の王国の対立を軸に、「ガフールの勇者たち」という伝説を盛り込んだ冒険戦記もので、これといった目新しい要素は見当たらない。何より不満なのは、前の戦争の契機と経緯、勇者伝説の詳細が語られないことだ。なので最終決戦場面でも感情移入できない。唯一意表を突くのが、兄がダークサイドに堕ちるという展開だが、どうしてそうなるのかが描写不足だ。弟とそりが合わないだけで、両親の愛情を得られており、心に傷を持つわけではない。妹を攫い、弟を殺そうとする心の闇が見えないので説得力がない。補助的登場人物の扱いもぞんさい。両親は途中で居なくなるし、弟と行動を共にする家政婦の蛇は大した活躍を見せない。旅の仲間はかろうじて合格点。ジルフィーは小さすぎて恋人役には不足。大臣ふくろうのみえみえの裏切りと、時を移さぬ退場は、急ぎ過ぎ。主人の成長物語としても不満が残る。危機はそこそこ描かれているが、幸運に助けられている面が大きい。兄殺しの葛藤が薄い。もっと子供らしい知恵を発揮しての活躍をみたかった。美点はCGの華麗さとアクションの優雅さに尽きる。感動することはないが、CG技術の発展には唸らされる。美術を見るような鑑賞法が最適だろう。
[DVD(吹替)] 7点(2013-05-13 13:06:10)(良:1票)
196.  モンスターVSエイリアン 《ネタバレ》 
地球の危機とか、町が壊されるとか、イカ型宇宙人とか、安直すぎる。キャラの造形もシナリオもギャグも、決定的にオリジナリティに欠けるのだ。お笑いは、ゼリーモンスターがおいしいとこ取りだったが、他のキャラは笑えなかった。ただムシザウルスが蝶に変身して皆を助けにきた場面だけは感動しました。このアイデアは新鮮でした。■他の映画のパロディはもう飽きましたよ。スーザンが自己犠牲で再び巨大化するところが感動どころでしょうが、予定調和に惰してます。危機が危機には感じられない。どこかで見たような場面ばかり。■婚約者とのやりとりも感心しない。この手のものは、やはり恋のハッピーエンドにした方が後味がよい。
[DVD(字幕)] 5点(2010-03-04 11:19:26)(良:1票)
197.  ウルヴァリン:X-MEN ZERO 《ネタバレ》 
スピンオフ作品としては十分合格点。ローガンの能力の謎と来歴がよくわかる。父を殺された怒りで能力に目覚めるのだが、復讐に殺した相手が実父だったという悲しい宿命。その後も仲間割れや裏切りの闘いばかり。憂鬱な話だ。ウルヴァリンの名の由来の童話も悲しい。それでも残虐場面を最小限に抑えて、楽しめるようにできている。超能力を持つミュータントの物語だが、この手のものでは、能力が度を過ぎるとリアリティがなくなり、緊迫感が薄れる。途端にマンガっぽくなり、感情移入できないのだ。本作品ではアイビームがそれ。ビルを真っ二つはやりすぎ。眼鏡かけてないと勝手にビームが出るという設定には笑ってしまった。先生に怒られて罰として黒板に百回書くが、あれはギャグだろうか?不死身というのも如何なものか。どうせ助かると思うと楽観視していまう。不死身でもいいが、そこをやられると死ぬというような弱点が欲しい。ウルトラマンが盛り上がるのは3分間しか戦えないから。弱点があるからこそ応援したくなるのだ。恋人ケイラの他人を自分の意のままに操る能力だが、それができるのなら自分の妹を助け出すのは簡単なことだろうに。現に大佐を自由に操ったではないか。またローガンを操っていたとしたら、その能力でいつでも大佐のところに連れていけたではないか。わざわざ死んだ芝居をする必要はあるまい。チームでダイヤ密輸ギャングに殴り込みをかける場面があるが、緊迫感があり、印象に残った。あの程度の戦いでちょうどいいのだ。最後の何でもありのXIとの闘いと比較してほしい。どっちが手に汗をにぎり見るだろうか。それから、エンドロールの後にサプライズ映像があるので、席を立ってはいけません。
[DVD(吹替)] 7点(2009-10-05 19:31:49)(良:1票)
198.  トレインスポッティング 《ネタバレ》 
勢いのある映像と音楽。これを見て脳内麻薬が噴き出す人もいるのでしょうね。「trainspotting」は、電車が好きでたむろする人達。転じて、行くあて無くさまよう人達。ヘロイン中毒の暗喩でしょう。主人公の部屋の壁紙が電車だったのが暗示しています。というか一種のユーモア。ディスコで出会った女の子の部屋の壁紙はアンティ・ウォーホール風。ただ顔はモンローじゃなくて、その女の子の顔。これも一種の遊び心。ミゲルのシュートネタとか笑える。こういった小ネタが沢山ある。コメディに分類してもよさそう。うまいと思ったのは、麻薬中毒患者の視点から見た映像で、便器に入り込む場面、床と一緒に沈んでゆく場面、死んだ赤ん坊が天井を這う場面など。日常世界から突如シュールな場面に切り替わるので、強く印象に残るのだ。麻薬を賛美するような表現もあれば、辛く厳しい現実も描いている。一人は脳をやられて死に、一人は強盗で指名手配、父親の不明な赤ん坊は死に、その母親は半狂乱。それなりにバランスが取れている。主人公達は社会から疎外されていると感じており、刹那的な生き方しか出来ない。快楽を得るためのセックスと麻薬。金が必要なのでかっぱらいや強盗もやる。所詮は現実逃避。社会のクズだが、クズなりの生き方もある。主人公は比較的恵まれている。両親がいて、愛されているし、麻薬をやめるとき(意外にも)友達は応援してくれた。かわいい恋人も出来た。麻薬をやめ、不動産会社に勤め、仕事はうまくいっていた。が、ほんのちょっとしたことからまた逆戻り。守るべきものがなかったんですね。部屋は友達に占有され、生活環境は最悪に。最後は、麻薬密売で得たお金を持ってトンズラするわけですが、それで終るはずがない。麻薬に溺れるか、仲間に見つかるか、警察に見つかるか。いずれにせよ、ノーフューチャー、行くあてのない旅。それを見越してのエンディング。さほど暗さを感じさせないのは、彼らが愛されるべき若者としての一面を持つから。怒り狂って部屋を破壊していたベグビーは、やってきた警察に捕まったのかも知れませんね。スパッドは分け前もらったけど、すぐ使ちゃうでしょうね。結論は言わず、観客に想像させる。観客は目の前を通りすぎる電車をただ眺めているような映画。新鮮ですが好みではありません。注射が苦手なんで。それにしてもあの赤ん坊、あの環境で育っていたらどんな若者に成長したことか。
[DVD(吹替)] 4点(2009-05-05 09:30:59)(良:1票)
199.  田園に死す 《ネタバレ》 
母を否定することが物語の原点。母は毎日小言を言い、狂った時間で拘束し、東京(外界への憧れの象徴)行きの汽車に乗ることを許さない。父は不在。イタコの口を借りて会話はできるが、母はそれも否定する。華やかな見世物小屋(理想的な世間の象徴)があるが、その実態は不健全で変態的なものだと知ってしまう。隣の人妻と駆け落ちをするが失敗。母がいる限り自由は無く、成長も無い。貧しくて、猥雑で、因襲に縛られた東北の寒村に縛られ続けるのだ。それから20年。男は大人になり、東京に出たが、依然として母親と暮らしていて、拘束は続いている。男は自分の惨めで汚れた過去を変えることが出来ないかと、理想的に脚色した自伝映画を作ってみた。それでも過去は変わらなかった。あるとき「3代前のおばあちゃんを殺したらどうなる」という知人の言葉から、母殺しを連想する。だが現実に母殺しはできない。母が存在しなかったら自分も存在しない。それならば昔の自分にやらせればよいではないかとう発想で、男は恐山で昔の自分と対面する。恐山は死者と生者、過去と未来が交差する賽の河原。「過去を改変するには二人の共同作業が必要だ」言葉巧みに母親しをけしかける。だが昔の自分は東京帰りの女に童貞を奪われ、汚れてしまい、女と東京へ駆け落ちしてしまう。変な風に過去が改変されてしまった。仕方なく男は母殺しを決意。実家にいくと、母は何の疑念も見せず、未来の息子を受け容れる。息子のことなら何でも受容してしまう圧倒的な存在感。男は母殺しは到底出来ないと悟る。母と自分は一如、血と呪縛は断ち切れない。次の瞬間、時代は現代に戻る。二人は現代も未来もこうして生活(食事)を続けるのだ。母を否定した男は田園(過去の故郷)に死す。【象徴】①3人の女は母の女性性の象徴でもある。共に不幸であることが特徴。隣の人妻は貧しくて、愛なき結婚をし、昔の男と再会して心中する。儚い女だ。間引き女は父無し子を産み、村の因襲に抗えず、子供を川流しにして失踪する。悲しい女だ。空気女は夫が浮気しても、嘲弄されても、誰かに殺されそうになっても許してしまう。愚かな女だ。間引き女と交わったことは、近親相姦を暗示する。②赤ん坊を流したとき、雛流しの発想から雛壇が流れてくる。雛壇は鎮魂の象徴。③白粉は恐山(時空の交差する超空間)の住人であることを表している。④原色=思い出は醜く、美しく、エロティック。
[DVD(邦画)] 7点(2011-09-18 23:59:11)(良:1票)
200.  ミス・マープル/スリーピング・マーダー(1987)<TVM> 《ネタバレ》 
子供時代に目撃した殺人事件らしきもの。大人になって偶然その家の所有者となる。自分探しのために過去に母親と関係のあった人物を探し出して、当時の真相を聞き出そうとする。だが新たに殺人事件が起る。過去の殺人事件と関係があるのか?マープルの活躍はあまりありませんが、興味深い展開で、十分楽しめました。ただ、あの犯人の動機のぶぶんがよく理解できません。愛しているがゆえに独占したくなる心理で、アガサ・クリスティの作品には時折見られる動機ですが。ミス・ディレクションのための設定として思えないのですが。主人公の女優さんは演技力ばつぐんで魅力的です。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-15 00:48:46)(良:1票)

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