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プロフィール
コメント数 173
性別 女性
ホームページ http://stern-sanchi2.cocolog-nifty.com/
自己紹介 レビュワーになって丸15年が経ちました。

14年目の去年のレビューは0件、コロナ禍とはいえ映画館にも行かなかった1年でした。

「もうここにレビュワーとして参加するのも卒業かな…」なんて思っていたところ、過去に投稿した拙レビューに「良」と投票してくださる方々がいまだにいらしたことを知り、無性にうれしく思ったものでした。
こんな想いを抱えたままではまだまだやめられないな、と…

そんなわけで相も変わらずのぼちぼち参加ですが、
今年もどうぞよろしくお願いします・・・

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1.  ブラス! 《ネタバレ》 
エルガーの「威風堂々」。 この手垢の付いたセレモニー音楽にこんなにも胸が揺すぶられる日が来るとは思ってもみませんでした。 「確かにコンクールに優勝した。でも炭鉱は閉山。結局何も解決はしていない」というお先真っ暗な状態にありながら、なぜここまで感動を我々観客にもたらすのでしょうか。それは「バンドこそ全てである」と言い切るピート・ポスルスウェイト、彼の言葉にその答えがあるような気がします。 人はパンが無くては生きてはいけないけどパンだけでも生きてはゆけないもの。 どんな人間であっても生きていくにはパンと同時に「人として生きてゆく誇り」が必要なのです。 だが今やパンである「炭鉱」は失われ、それと同時に仲間とともに炭鉱を守るという「誇り」すら失いかけた彼らに残された最後の「誇り」が音楽でありこのバンドだった。その最後の「誇り」を彼らが取り戻しかけた瞬間が、ラストのあの演奏だったのでしょう。 彼らの前途は正直暗いです。パンだけでは生きられないように「誇り」だけでも生きられないことも彼等も観客である私たちも十分知っている。そして、悲しいことにそれが現実というもの…… しかし、いやだからこそ、一層その「誇り」はパン以上に「生きていくには必要不可欠」なのだ、と、そう信じたい、信じ込ませて欲しいと思う心が私たちにはある。 その心に直接響く、夜風に吹かれながら彼らが奏でる「威風堂々」は、映画から現実に戻った私たちをも励ましてくれる素晴らしい応援歌となってくれたはずです。この曲がもはや単なるセレモニーを盛り上げる楽曲以上のものとして響くのは当然のことなのではないでしょうか?  
[DVD(字幕)] 9点(2008-11-11 18:16:10)(良:4票)
2.  スター・ウォーズ/最後のジェダイ 《ネタバレ》 
スターウォーズはね、そりゃ素晴らしいシリーズですよ。でもね、私はそんなライトセーバーが欲しくてたまらないほどのめり込んだクチじゃない。結局「ソロとレイアのツンデレ」こそが命と思っている、けしからん(しかし実は大多数の)観客なのです。 ですんで、フォースやジェダイの行く末にも心燃え立たない。ep4のレイアよりずっと美形のパドメにも心動かされなかった私が、なんでポッと出の新シリーズのカワイ子ちゃん主人公に肩入れできるでしょうか。また、ソロの1/10の魅力もない中二病のその息子に深く共鳴できるというのでしょう。前作のキャラたちを凌げるような魅力的キャラを生んでこその新シリーズであり続編なんじゃないんですか?(まあこのシリーズに限らず、このハードルを越えられる続編映画が極わずかであることも否めませんが。) 「それなのになんで観に行くんだよ!」と問われれば、やっぱり諦めきれない未練みたいなもんですかね。いわば、あんな楽しませてくれたんだから「夢よ、もう一度…!」って気分。ep7では新キャラたちは今一つだったが今度はよくなったかもしれないし…… でも、今回はっきりわかりました。ダメだよ、コレ。この新メンバーたちがどうなろうと、もう絶対ソロとレイアに代表されるep4から6までのドキドキワクワク感なんか生まれっこない。だって、今回の映画で「画面に出てきて一番うれしくなったキャラクター」がチューバッカなんだもん。着ぐるみってホント便利なもんだわ(苦笑)。  時系列における前3作のコアなファンの懐古主義的支持によりそれなりの興行成績は修めるだろうが、そういうものにすがるより全く別の新しいワクワクドキドキを生み出すほうがよっぽど映画業界のためになることは、製作者の側だってもう分かりきっているはずだ。それについてはここ10年以上ずっと言われ続けているのに、全く変わる気配がない。その絶望感を私は今回改めて強く感じてしまった。 ハリウッドは、人種別にまんべんなく配役を苦心するのもいいが、それより先にやることがあることに早く気づいて欲しいですワ、ホント。
[映画館(字幕)] 3点(2017-12-21 12:32:37)(良:4票)
3.  シンドラーのリスト 《ネタバレ》 
私はこの映画を戦時における美談モノとしては価値を見出していない。それよりも「非常時において普通の人間はどのように変貌し得るか」というテーマを描いたものとしてみるときにこそこの映画は輝いて見えるような気がするのだ。 実業家オスカー・シンドラーと収容所長アモン・ゲート。二人はこのような非常時でなければ多分極普通の人間としてその生を全うしたのかもしれない。むしろ怪しげな山師的性格のシンドラーよりもゲートのほうがきっと真面目で世間により認められる人間になったとしてもそれは別におかしくもなんともないことだったろう。 だが、この狂気の時代にゲートはその気分で人間をあやめても平気な悪魔になり、山師シンドラーはその財(もともとユダヤ人を助ける羽目になったそもそもの目的)すらも投げ打ってユダヤ人を助けるのに奔走するようになる。この展開は本人すら思ってもみなかったことであったろうに。 悪魔のようなゲートにすら良心の呵責がまるでなかったわけでもなかろう。確かゲートがシンドラーにこんなふうに尋ねるシーンがあった。 「どうして君はそんなに満ち足りていられるのか?」 「それは赦しているからだよ、君にも出来るだろう?」 ・・・君にも出来るだろう?だがそれを実行しようとゲートは試みるも、挫折し、またも些細な失敗をした囚人を虫けらのように殺してしまう。結局はその「赦している自分」に「今更そんなことをしたところで遅い」という悪魔の声がささやいたのかもしれない。今更!オレはもうとりかえしのつかないところまできてしまっているというのに!そんなことをしてどうなるというのだ?!と・・・ 狂気の時代は、平凡な人生を送るはずだった人々を悪魔のような大悪人にもし、その反対に信じられないような善行を積むきっかけを与えたりする。もしも、もしも私がそのような時代に不運にも生きなければならないことになったら、そしてもしも普通の凡人の道を踏み外さねばならない事態になったとしたら、どうか悪のほうではなく善のほうに足を踏み出せるように・・・その勇気がひとかけらでも私の中にありますように・・・と、そんなことを考えさせてくれたのがこの映画。偽善的・あからさまな賞狙いなどいろいろな批判もある中、確かに私にとってはそれ以上のものがあったと、私自身は確信している作品である。 
[映画館(字幕)] 7点(2007-10-15 17:23:05)(良:4票)
4.  恋におちたシェイクスピア 《ネタバレ》 
オヨヨ、結構評価低いですね、皆さん。わたしゃ好きですけどねこの作品。全くの嘘っぱち、フィクションでコテコテなんだけれど、その出鱈目さのシェイクスピアの作品への絡みが実に絶妙。そもそもは口から出まかせの「海賊の冒険活劇」がいつの間にか悲恋モノの王道「ロミジュリ」へと、無理矢理をぎりぎりのところで押さえた斬新な展開が続いていく。小気味いいじゃありませんか。いやーだウソぉと思いながらも「ほー、そんでどーなんのかね」と惹きつけられるのは多分脚本が上手いからなんでしょうな。そして最後「十二夜」に繋がるラストも爽やか。「十二夜」がハッピーエンドなところもいい余韻を残してくれます。 観終わって「絶対あり得ないけどこんな裏話があったらなんだか嬉しいな」とそんなこと思わせてくれる映画。そこまで思わせるなんて、なかなかない佳作ってことじゃないですか? 
[DVD(字幕)] 8点(2007-11-06 17:04:37)(良:3票)
5.  ヒトラー 最期の12日間 《ネタバレ》 
この映画のラストのユンゲの告白、これを蛇足と見る方もいらっしゃるようですね。もしこれが無かったら多分この映画は冷徹な目によるナチの崩壊の姿のドキュメンタリーといった様相を色濃くみせた作品となったことでしょうし、この映画にそういった役割を求めた方々にとっては、確かに最後の彼女の告白は白けさせるものだっただろうと思います。 だけど私にはこの映画には、淡々と客観的に最後の日々を描くドキュメントとしての性格以外に大きなメッセージがあったのではないかという気がしてならないのです。 というのは、この映画で私が最も印象的に感じたのが、ヒトラーの「国民が死ぬのは自業自得」という言葉とユンゲの「知らなかった(では済まされなかった)」という言葉だったから。 そうです。確かにユンゲは「(数々の犯罪行為を)知らなかった」し、実際無罪となった。それにもかかわらず「だがそれでは済まないことだった」と反省している (多分彼女も多少なりとも良心の痛みのようなものを感じていたのでしょう)。だがむしろ私はこの告白の中に、「反省している私」を正当化して欲しいという彼女の狡さをも感じてしまうのです。この告白を入れたことに批判的な方々も多分そのあたりが気になるっているのではと思うのですが・・・ でもおそらくその狡さっていうのは彼女だけの狡さではなく、当時のドイツ国民全てに、さらには同じく敗戦国である日本国民全てに、そして「数々の不正に薄々感づいていながらも保身のためにあえて鈍感にやりすごしたことが一度でもある」世界中の多くの善男善女にも当てはまるものなのではないでしょうか?だからこそラストにこのモノローグを入れることで作品中幾度か出て来るヒトラーの「自業自得」発言が生きてくる。ここでユンゲの狡さを垣間見させることで、それがヒトラーの一方的決めつけではなないということを再度確認させるのです。 私たち国民は主権者です。だがその一方で「どうせ自分は無力」と感じている人がほとんどなのが現状でしょう。こうした矛盾した「大多数の主権者」の「無力さ」とその「無力を言い訳にする狡さ」または「間違いを犯してもそれを素直に認めたのだから勘弁してという狡猾さ」といった一般人の弱さや狡さをもまた「ヒトラーの人と也」や「実際の第三帝国の崩壊の様子」に加えて、この映画は描きたかったのでは?・・・私にはそんな気がしてなりません。 
[DVD(字幕)] 7点(2007-11-21 17:10:44)(良:3票)
6.  阪急電車 片道15分の奇跡 《ネタバレ》 
ぜんぜんなってないというか…ダメでしたね。最初の宮本信子さん扮するおばあさんのちょっと気取ったセリフ回しに拒絶感を感じた時点で私にはこの映画「アウト」でした。 そもそも、こういう「日常ほっこり系」映画を製作側の皆さんは安易に作りすぎなんじゃないですか?本当の意味でこの手の作品を秀作として世に送り出すには、気の利いたセリフやその間の取り合いなどに練りに練られた完成度がないと…「微かだけとじんわりくる感動」って思っているよりもずっとハードル高いモンなんですよ。 その覚悟も無く、話題の本と売れてる役者使って無難に稼ごうとしただけの情けない作品。こういうモノ作るんだったら、「不治の病」とか「出生の秘密」などでもっとB級テイストな分かりやすいストーリーでやってくれたほうが何ぼかマシです。 というわけでDVD100円レンタルですら不快感のみが残る鑑賞になりましたが、唯一役名の無い少女の「聞いてないのに教えてくれて」というセリフに3点献上。(予告で知ってた「生」以外に「おっ」と思わせてくれたのはコレだけだったので。) 
[DVD(邦画)] 3点(2012-02-22 18:25:01)(良:3票)
7.  グリーンブック 《ネタバレ》 
よかったです。正直観終わったときは「うーん、作品賞っていってもそれほどでもないかな。普通に良いってくらい…?」だったんですよ。けど、鑑賞後72時間過ぎた今、じわじわ感じるものがあることにちょっとうれしい気分なのです。  多分ね、こういう社会問題をテーマにしたロードムービー、加えてちょいちょいニヤリとさせながらも最後は感動にもっていくって映画は今までにもいっぱいあったように気がします。だから既視感は、前のほうでもおっしゃっているように、結構あります。 それでもこの映画、野卑な運転手のトニーが、鑑賞後どんどん魅力的に思い出されてくるのですよね。あんな何処にでもいるおっさんが、ですよ。 なんてったって腕っぷしは強いし肝も据わっている。知性や教養はてんでお粗末ながら、それを持っている人へのコンプレックスや僻みに心が歪んだりなんてしていない。まさにパンのように素朴で単純なこの俗っぽいイタリア男がすごくいいんです。 普通なら、この困難なツアー実施を英断したドクターのほうをより魅力的に描くんじゃないかなって思いがちだけど、そうではない。ドクターは天才だけど、孤独で傷つきやすくいっぱいいっぱいで生きている人。この旅でより恵みを受けたのはむしろ彼のほうでしょう。  映画終盤、演奏旅行は終わり2人はそれぞれの元の生活に戻っていきます。トニーは愛する家族に囲まれながらもまた金の工面に四苦八苦する生活に、ドクターは著名なピアニストとして豊かで優雅で安全な、だけど孤独な生活に… だから彼が勇気を出して自分の殻を破り、二人の友情がその後末永く続いたというエンドクレジットに、ほっとした観客も多かったのではないかと思います。(エンドロールになってもほとんど席を立つ人がいませんでした。)  地味ながらなかなかの佳作。 今は、作品賞をとってくれてありがとうと言いたいですね。とらなかったら多分観過ごしてしまったことでしょうから。  追記(2019.3.6) さきほどこの映画の受賞は本国で賛否両論だという記事を偶然目にしました。それによると「『白人が黒人を救う姿を描く“white savior(白人の救世主)”』の映画だ」という批判的な意見はそもそも受賞前からあったのだとか… うーん、そうなのかなぁ…「白人が黒人を救う」っていうよりは「凡人が天才を救う」っていう映画に私には見えたんですけどね… しかしそういう意見も出るということに、アメリカという国の人種差別問題の根深さを感じます。 確かに「サレタほうはシタほうにずっとずっと厳しい目を向ける」もんなのです。それもいつまでもね…(まあこれは人種問題に限らず世界中どこでもいっしょなんですが)
[映画館(字幕)] 8点(2019-03-05 17:38:21)(良:2票)
8.  大脱走 《ネタバレ》 
これ、マックイーンじゃなくて、アッテンボローの映画でしょ?悪いけど全然らしくないよ。「ゲッタウェイ」の彼のほうがずっとずっとカッコイイと思う、もっと緊迫して追い詰められた野生動物のような荒々しさがあって…… あんなユルユルの収容所から逃げ出してアホなドイツ兵のバイクかっぱらってのとってつけたようなアクションシーンなんか全然胸に響かなかった。独房王とかトンネル王とか偽造屋なんていうニックネームもこっぱずかしいだけで失笑もんだったし。  と、悪いけど平均点下げてさせていただきます…… だってドイツびいきのワタシにとっては、あんなコケにされているドイツ軍なんて、ああやっぱ見るに耐えられないもの!!
[DVD(字幕)] 4点(2010-01-06 16:56:43)(良:2票)
9.  メン・イン・ブラック3 《ネタバレ》 
1のみ鑑賞経験有り。そして1はかなり気に入っていた。2についてはついつい見逃していたところ評判イマイチという噂なので未見のまま。 そんな状況で本作3の鑑賞となったのだが、見終わってなんだかため息が出てしまった。  1と3ってさ、長さが11分しか違わないんだよね。 なのになんだろう、この冗長感は…  そもそもKが冷徹な人間になってしまった原因なんて、1のイメージからそのキャラこそ愛すべきKのチャームポイントと思っていた私にとってはどーでもいいことなのだ。また、あのグリフィン(?)とかいう万能感あふれるエイリアンの存在もどこかご都合っぽい。加えてこのポッと出のニューキャラクターにはとても我らのJ・Kと同列に出来るほど感情移入は出来ないので、「なんだか面倒くさいヤツ出てきちゃったな」ぐらいの印象しかもてなかったんだよね。 というわけでまあ要は全くと言っていいほどワクワクできなかった。 ラストも(本当はすっごく苦労したんだけど終わってしまえば)「軽いノリで地球、救ってやったよ」的な小気味のいいものを期待していたけど、なんだかありきたりな親子OR師弟感動モノの風味に仕上げられていたし…  ダメだなぁ。テンポの良いコメディーが続編になるほどウェット化して失敗する例なんていっぱいあると思うのだが、どうしてこんな風にしてしまったのか…ああ1のファンであるだけに返す返す口惜しいものである。
[映画館(字幕)] 4点(2012-06-05 17:15:44)(笑:1票) (良:1票)
10.  スパイダーマン2
ひゃー!MJちゃん評判悪いんですねー。やっぱブスだから?なのにそのくせ男に不自由していないから?いや、ワタシは結構彼女のキャラ好きなんですけどねー。岩ヅラながら愛嬌ある子じゃないですか!「すごい美人で天使のよう」ってのは、ピーターの「あばたもえくぼ」ってくちじゃないかとは思いますが。降板されることもなく「3」まで演じきったのはやっぱ絶叫シーンのゆえかしら・・・美人のカワイコちゃんには出せんでしょ、あの迫力は。そんなわけで「3」でも密かに応援しているよ!MJちゃん!!がんばって!!
[ビデオ(吹替)] 7点(2007-05-02 13:15:17)(笑:2票)
11.  許されざる者(2013) 《ネタバレ》 
うーん、かなり辛口です。残念ながら私にはダメだった。  「許されざる者―全ての者は許されざる者である」…… この極めて重くかつ普遍のテーマを映画という「娯楽」として、観客を気の利いたセリフでクスッとさせたり登場人物の渋さや凄みに魅了させたりしながらズシンと突き付ける、これがオリジナルが名作である所以じゃないのですか? なのにこのリメイク版では「(誰もが)許されざる者」というテーマはあいまいにされ、その娯楽性も辛気臭くあらかた潰してくれている。 佐藤浩市の署長はジーン・ハックマンの保安官の茶目っけをほとんど持たない悪党以外の何者でもないし、アイヌや女郎のシーンなんてまさに「許されざる者」ではなく「虐げられし者」。 もしオリジナルのような人間の多面性を描きたいのであれば、最下層の人々だからこそむしろしたたかな強さも描くべきでなないのでしょうか。 それが歴史の事実にそぐわないのだとしたら、もっと自由に描ける時代や舞台を探してもいいわけだし。  一見「オリジナルに敬意を表しながら丁寧に作りました」という格好なんだけど、全く別物を撮りたかったってことですよね、この製作者たちは。 その姿勢はクリエイターとしてアッパレです。「たとえいびつでもオリジナルを一点でも突き抜けよう!」そんな気概もなく製作されている、まず話題性(興業性)ありきのリメイク映画たちよりずっといい。 …… 結局のところ、出来上がった作品が今回はただ自分のツボにははまらなかっただけってことなんだろうけど、  それでも私はやっぱり言いたい… 重いテーマを重く描いたところで何の芸があるというのでしょう?と。  このリメイクは上質なエンターテイメントを、美しく情感に溢れているけどありきたりな悲劇にしてしまったと、 やはりそう思わずにはいられません。
[映画館(邦画)] 4点(2013-09-17 17:11:19)(良:2票)
12.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 
ごめんなさーい!私にはこの映画、「微妙……」でした。 イーストウッドはこの映画で何を描きたかったのでしょう?腐敗した公権力へ抵抗することの勇気でしょうか。ただひたすら子を愛する母の心でしょうか。不運にも犯罪者に成り下がった救いのない魂でしょうか。  実話なんだからしょうがないとも思うのですが、あの農場で「起こっていたこと」のほうがあまりに衝撃が大きすぎて、多分イーストウッドがメインに据えようとしたLAPDの非道さとかいい加減さとかそれにも負けない母の愛の偉大さとかが全部吹っ飛んじゃった感じで、なんだがスッキリしなかったのです。 だって、もしも自分の子供があんな目にあっていたとしたら、それこそたとえ助かったとしても私だったらものすごいダメージを受けちゃうと思うのだけど、その辺もなんかサラッと流されちゃっているし。これホントにホントの話なんでしょう?本当にあの母親はあんなに強くありつづけられたのでしょうか?  ちなみにWikiによると犯人の誘拐目的は少年に性的虐待をすることだったようですが、その辺にもふれずただの精神異常者っぽく描いているあたり不気味さを余計に掻き立てられてしまいました。そのスルーの仕方も「ミスティックリバー」を撮った監督とは思えない。いっそ実話ってのをやめて農場の事件を省くか、またはそれを入れるなら少なくともchangeling(取り替え子)を中心とする内容としないほうがよかったのではと思います。  全然にブレずにすっきりストレートに響く作品も、小奇麗でいまひとつ面白みに欠けるものなのかもしれません。また事実は小説より奇なるものだから、それを忠実に描くことが新たなる別の感動を生むものなのかもという考えがこの作品に繋がったのかもしれません。 が、少なくとも私にはこの映画のブレは感動を生むに必要不可欠なブレとは思えませんでした。 
[映画館(字幕)] 5点(2009-03-02 15:58:04)(良:2票)
13.  硫黄島からの手紙
おととい遅ればせながら観てきました。 …観る前、実はちょっと心配でした。 「よく終戦の日あたりにテレビでやっている特別ドラマと大して違っていなかったらどうしよう」とか、「『アメリカ人が撮ったわりにはよくできているじゃないか』なんていうのが主な感想になる程度の出来だったらどうしよう」とか。…でもそんな心配は杞憂なものでした。この作品がアメリカ映画であるということとかイーストウッド作品だということ、そういうのを抜きにしても私にとっては十分楽しめる作品、そして心に残る作品だったのですから(実際映画が始まるとイーストウッドのことはほとんど思い出すに鑑賞できたくらいです)。 …私は今楽しめる作品と書きましたよね。 このような戦争における部隊の全滅を描いた作品、いわば生と死の極限状態を描いた作品でありながら「楽しめる」という言葉に抵抗をもつ人もいるかもしれません。でも正直「戦争の悲惨さを考えさせる」とか「命の尊さを考えさせる」とか「日米のあらゆる違いを考えさせる」という啓蒙的要素よりも、あんなにも悲惨を極めた「硫黄島の戦い」を映画という娯楽として多くの人々に観せることができたことが、この映画の特筆すべきことではないでしょうか(イーストウッドという色眼鏡なしにこの作品を鑑賞したつもりの私ですが、今思ってみるとそういう点では「許されざる者」にも通じたものがあるのかもしれません)。およそ目を背けたくなるような悲惨なシーンも色のトーンの工夫などで上手く美しく表現しているところなど、心憎いようです。2時間半にも及ぶ時間を、ときおり回想を含ませているとはいえほとんど地味な戦場ドキュメンタリーのような様相を見せながら最後まで観客を引っ張っていく力は一体何によるものなのか?シナリオなのか役者なのか監督の手腕なのか、そんなことすら私にはわかりませんでしたが、とにかくあっというまの2時間半だったことは確かでした。 本来ならば10点を献上したいところですが、2部作の片割れ「父親たちの星条旗」を未見であること、あと鑑賞直後の一過性の陶酔である可能性、そしてやはり外国作品であるがゆえのほんの些細な「言葉の不自然さ」(とくに雑音として入ってくるセリフの端々に見られました)のため1点マイナスさせてもらいます。今度は「父親たち・・・」を鑑賞後すこし時間を置いたうえでまたこのレビューを書かせてもらいたいものです。
[映画館(字幕)] 9点(2007-02-19 17:41:18)(良:2票)
14.  ホリデイ 《ネタバレ》 
・・・普通じゃないですか?ここでの高評価が仇になったのか、私には期待倒れ。おとぎばなしに出てくるような可愛いイギリスの田舎の家も、ゴージャスなロスの業界人邸宅も悪くはないですが、気の利いたセリフ一つ出てくるわけでなく「旅先での未知の男性との恋」なんてミエミエのストーリーが展開されるのでは135分が泣けてきます。 こういう陳腐な話でも強引に観客を引っ張っていきたいんだったらもっとラブコメとして唸らせてくれるようなエスプリの利いたセリフを散りばめてやらないと(いくら昔の古き善き名作映画へのオマージュを散りばめたところでそれが万人に受けるってわけじゃないし)。 結局二大女優にジュード・ロウという華やかな視覚に訴えたってやっぱりつまらないものはつまらないってことですね。がっかりしました。 この映画を見て唯一よかったと思ったのはアーサー役で出ていたイーライ・ウォラックの健在振りを知ることができたくらいですかね。ウェスタンのラテン系悪党のイメージが強かったけどこんな役もこなす役者さんだったなんて、恥ずかしながら初めて知りました。キャ!ちょっと嬉しかったです。
[DVD(字幕)] 5点(2008-04-15 17:07:46)(良:2票)
15.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
なんですか、この高評価、そしてこの熱く語る長文レビューのオンパレードは!……いいねぇ、あふれるゴジラ映画愛がなんかものすごく伝わってきます。  それに対し、いやね、申し訳ない……自分としては全然期待していなかったんですよ。ツレアイが「ゴジラ観よう」って言ったとき正直まいったなぁと思ったぐらいにまったくね。 でもまあ文句なく面白かった、今年一番の映画じゃないかと思うぐらいです。特に前半のグダグダ、ダメダメの政府対応なんてサイコーでしたね。逆に後半の解決に向かっていくくだりは予定調和的で「まあこんなもんかな」ってテンションはややさがりましたけど。でもゴジラ映画なんだしそうするよりほかないしね。 それにしても首都圏の城南地区に住んでいる人にはえらいサービス満点の映画でしたな。川崎の109シネマズで鑑賞したんですが、観客のほとんどがゴジラがぶっ壊す町並をにやにやしながら観てるんじゃないかと思うと、こっちも頬が緩んでしまいました。無人電車攻撃に至ってはもうサービスてんこ盛りで、いい意味の失笑感が湧き起こっていたと思うし。 原発のメタファーだの危機管理問題の提起だとかいろいろあるんでしょうか、ぶっちゃけこの映画のツボってそういうサービス感にあるような気がします。我々の知っている街並、お馴染みの極めて日本的な事なかれ体質、そういうものを目の当たりに繰り広げられて感じる、「知ってる知ってる感」……(微妙な石原さとみちゃんの起用もそういう意味での狙った感じが漂ってきたのでワタシ的にはギリギリOKでした。)  しかし、今後世界にも配信されるそうだけど、そういうところって海外の人にも伝わるんだろうか? と、若干の危惧を抱きつつ……8点の献上です。
[映画館(邦画)] 8点(2016-08-10 12:10:04)(良:2票)
16.  インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 《ネタバレ》 
私は別にインディー・ジョーンズシリーズのファンってわけではないので、思い入れなんかも特にないので結構冷静に観られたと思うのですが、それでも「今作はなんか安易すぎるぞ?」との感想は否めませんね。 例えば最初の核実験のエピソード。多分これは米ソ冷戦時代っていうのを印象付けるつもりで入れたモンなんでしょうが、その後のスパルコの様子からみてこれがソ連軍人の敵だっていう必然性をストーリー上あまり感じないんですよね。たまに出てくる「同志」って言葉がなきゃ、あ、そっかーこの人ソ連の悪役なんだなっていうこと忘れちゃいそうになる。それくらい「ソ連」って存在が薄い。薄いにもかかわらずしょっぱなにあんなエピソードをもってくるから「???」って感じになる。 そのほかにも行方不明の探検家たちの墓を守っていた原住民とか、スカルの神殿を守っていた部族とか、この辺で格闘をちょっくら入れとこうという目的だけで投入されたショッカーのヒラ戦闘員並みの登場キャラたち、大した謎解きもなく開かれる神殿の扉(骸骨をただあてるなんて考古学者のジョーンズ博士でなくたって客席でポップコーンほおばってる私たちにも思いつきそうな安易さだ)、そしてマックとかいう裏切り者なんだか二重スパイなんだかワケのわからん中途半端なキャラ、(何故コイツがインディに信用されうる役として描かれてるのか全く説明不足!ただの金の亡者ならそれなりの扱いをしておかないとインディがだたの間抜けになってしまうのがわからないのだろうか?)などなど、数え上げればきりがない。 こういう気持ちの悪さがいっぱい詰まった映画なんですよね、この映画。 実はこの映画を観ようかなと思った理由の一つが、ヒロイン(?)が第1作目のカレン・アレンだったからってのもあったのですが、ちょっとその体型の変化にショックを受けました。ダイエットしている時間はなかったのかしらね……好きな女優さんだっただけに少し悲しかったです。 
[映画館(字幕)] 5点(2008-07-08 17:14:24)(良:2票)
17.  あんなに愛しあったのに 《ネタバレ》 
今を去ること20年近く昔に友達と映画館で観ました。 友達は「ニューシネマパラダイス」が観たいと言ってたんだけど結局彼と観ちゃったから、最初私が観たがっていたこっちに急遽行くことになったっていう、あまり最初から期待度の薄い観賞。・・・・ しかし、いやー観て良かった!!オープニングからしばらくモノクロで話を進み、「ヤバっ!!これハズしたかな」って隣の友達の様子が妙に気になったのも事実ですが(だって観たがったの私だったし・・・)、でも進んでいくうちにだんだん引き込まれていく力にこのスコラ監督の凄さを感じましたよー!!・・・ ストーリーはレジスタンスで友達になった3人の男たちのその後の戦後の人生を淡々と描いている、ただそれだけの映画です。多分彼らの人生のクライマックスはそのレジスタンスが勝利した終戦、まさにそれであってその後の人生はまさにオマケみたいなもの。特に映画として描くようなものではない。 でもクライマックスが過ぎたからといってそこで人生が終わるわけではない、つまらなくともカッコ悪くとも生きていかねばならないのです。それが切ないほど伝わってくるんですよね・・・(くー!!あたしゃこういう話が大好きなんだワ)。・・・ DVDになってるかわかんないんですが、多分なってないんだろなー。レビュワーも私の前に一人しかいないし・・・残念! で、このレビューを目にしてくれたアナタ!もしその後BSなんかで地味に放映の宣伝をしているのを見掛けたら、騙されたと思って是非観賞してみてくださいね。「あんなに愛しあったのに」なんて邦題名覚えやすいでしょ! ただし万人にウケルとはなかなか断言できませんのであしからず。アナタがこの映画の感性に共鳴できるひとであることを望みつつ・・・というわけの「7点」献上です。
[映画館(字幕)] 7点(2007-01-12 17:06:33)(良:2票)
18.  暗い日曜日 《ネタバレ》 
この映画は、ハンスというナチの悪役を抜きにしては考えられないものだと思う。もちろん主役であるイロナ、ラズロ、アンドラーシュの3人の男女の危うい恋愛関係と「暗い日曜」という呪われた歌の都市伝説がこの話の骨子であることは確かなのだが。でももしそれだけだったらヨーロッパ映画によくある甘くてアンニュイなストーリーが大戦前の暗い世相を背景につらつらと綴られる極当たり前の作品に終わったにちがいない。だけどこの映画には更に第3の男として(実際にはイロナには全く相手にされないのだが)ハンスが登場する。彼は征服者として当然傲慢であり職権を乱用してはどさくさに紛れて私腹を肥やすようなけしからん男。が同時にそれでいて女に相手にされなかったくらいで川に飛び込むようなナイーブな男でもあり、思い出の宝石を手放そうとするユダヤの夫人の涙にほだされてその宝石を受けとろうしないような甘いところ(これはひょっとしたら戦後の戦犯追及を逃れる手のひとつだったのかもしれないが)もある普通の男でもあるのだ。この彼のちぐはぐな描写がこの映画に奥行きを持たせる。人間って確かに権力をかさにきれば信じられないほど傲慢になるくせに、目の前の不幸にも無責任な同情心を見せたりする不可解なものだったりする・・・中でも一番不可解なのはあんなに酷いことしておきながら、80歳のバースデーを忌まわしい思い出のあの店で祝おうとしたこと。まさか彼だってイロナが今も生きていて彼に復讐を果たそうと虎視眈々と待っているのを知っていたわけではないのだろうけど・・・何故彼はやってきたのだろうか?もうろくして悪い記憶を全て忘れてしまっていたからか?それとも50年前の良心の呵責に耐え切れず謝罪のつもりだったのか?そういうサスペンス(?)的余韻も残してくれると同時に、表題「暗い日曜日」の暗く甘い旋律の恋愛ドラマのロマンティックな雰囲気も十分に楽しめる作品だということで、8点献上。
[DVD(吹替)] 8点(2007-10-15 17:20:12)(良:2票)
19.  炎のランナー 《ネタバレ》 
実はレビュワーになったらまず書こうと思っていたのが、この映画だったのです。だって大好きなんだもん!ユダヤ人としてのコンプレックスのあまり過剰なまでに攻撃的で尊大な彼も、走りながら「神の栄光」を感じちゃう彼も、お貴族サマのぼっちゃんでハードルにシャンペン載せて練習する彼も、大切に育てられてきたいかにもひとのいい世間知らずのおっとり彼もみーんな大好き。(ちなみに寮長のジイさまコンビの何が楽しいのか分からないような3時のお茶のシーンも好き!) ここに描かれているのは2人の青年の生き方。どちらも私たち大方の日本人がおよそ理解できない何かに、あるときは導かれあるときは縛られて喜び苦しみながら生きている。 まあ皆さんいろいろ批判(宗教クサすぎ、人間離れした品行方正さなどなど)もございましょうが、私としては「一本スジの通った生き方」ができる彼らの人生に素直に拍手を贈りたいです。前のほうでどなたかもおっしゃっていましたが、その「スジ」ってのは信仰云々とは別物で、そのひとそれぞれに存在していると思うんですよね。それに出会うことのできた幸せな若者たちのドラマ、これはそういう映画なんだと思います・・・
[DVD(字幕)] 10点(2006-12-18 16:00:21)(良:2票)
20.  ダイ・ハード4.0 《ネタバレ》 
最初こそCGに頼らない重力を感じるアクションに「お、ナカナカじゃん」と思いもしましたが・・・うーんなんだろう、このシリーズってさぁ、もう1を越えようなんて野心は皆目なく作ってんじゃないかな。 そもそも「ダイハード」とは、偶然にも不運に巡り合い裸足にランニング姿おまけに孤立無援で戦う中年男の痛快アクション。それをを3つも4つも作っては最早マクレーンはスーパーマンも真っ青の不死身の男であることは画面を観ている我々には周知の事実なのである。だからマクレーンという男の魅力だけでもっていくのはかなりムリがあるワケで、よっぽど工夫して練りに練った意外性のあるアッと言わせるようなストーリーでなければダメ。そうじゃないと作れば作るほど新鮮味が薄れクドくなり嘘くさくなっていってしまうのは分かりきったことなのだ。 ああ、それなのにどうしたことか、この4は「4.0」とするぐらい新しい犯罪「サイバーテロ」を前面に押し出しているが、犯人のやってることって、自分の能力を認めようとしなかった上部への復讐(ついでにお金もいただき!)だの、邪魔なマクレーンには人質とったり対抗したりとか、思いっきり昔ながらのパターンではないか!そんでもって「サイバーテロ」の内容はペカペカとキーボードを妙に速く叩いているとこや画面をチラチラ英数字が走っているぐらいしか、こちとらITの素人には分かんないわけ。だいたい悪役だらしなさ過ぎだよ。もっとあっといわせるくらい頭の良くって冷静はヤツつれてこなくっちゃ。最後のやられ方も間抜けだし(まあそれはこのシリーズの伝統か)。とにかくこんな悪役じゃ面白くなるわけない。というわけで鑑賞後私は初代悪役のハンスが懐かしくなり、また1を見たくなっちゃいました。とりあえずそんな郷愁を誘うぐらいの価値しかこの映画には私は見出せませんでしたな。 
[映画館(字幕)] 4点(2007-07-30 16:59:50)(良:2票)

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