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1.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
80年近く前のモノクロ作品でタイトルが『鴛鴦歌合戦』…。 本サイトの平均点が高くなかったら完全にスルーしていた作品でした。(仮にそうしていたら、どれだけ損をしていたか) みんなのシネマレビューのみんなに感謝です。  時代劇をベースにして台詞は現代語。童謡のメロディーをスウィングジャズでアレンジして歌いまくっています。 まさに設定はやりたい放題で、登場人物たちも丁稚小僧がお店のお嬢様を貶してみたり、その町民のお嬢様が侍にインチキ大名と罵ってみたりと言いたい放題です。  特にお春は壷や日傘を叩き壊したり終始プリプリと怒っていますし、演じている市川春代さんは滑舌も良くなく、演技も歌も上手とは言えません(台詞回しも歌も声が張りすぎてしまって抑揚が感じられず一本調子になっています)が、彼女自身の愛らしいキャラクターを前面に出す事によってそれらを相殺する以上に粗略とも言える態度や仕草も魅力として映っています。 そんな彼女自身の魅力が作品自体の魅力に昇華されている面は、演出の妙とも言えると思います。  また、ディック・ミネさんの歌唱力の高さがミュージカルである本作を安定させていると共に彼が演じる峰沢丹波守の役所をヒールにしていない為に、いい意味で気を緩めて鑑賞できましたし、後味の良いコメディー作品になっていたと思います。 彼は歌手という事なので演技については触れない事にしておきます…。 他作品では中々見られない志村喬さんの超軽い演技の意外性を含めて、3人のヒロインや丹波守御一同など役者さん達を上手に使い切っている印象の作品でした。  オペレッタと言われている様に文字どおり小さな喜歌劇である本作は現代の造り込まれた映画に比べるとボリュームや内容で物足りなさを感じるかも知れませんが、ここまで気持ちの高揚を伴った満足感と幸福感を見終わった時に与えてくれる作品は最近のそれは疎か、時代を超えてみてもそれ程あるとは言えないと思います。 価値の有無は分かりませんが本作自体が私にとっての掘り出し物です。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2016-06-14 01:12:01)(良:2票)
2.  カラスの親指 《ネタバレ》 
「出来過ぎてる…。」主人公の台詞の通りコンゲームやサスペンスとして鑑賞すれば、成り立たないほど出来過ぎていますし稚拙なところも多々あったと思います。  しかし、カラスのお父さんがカラスの娘達やカラスの仲間の過去の傷を精算し、その過去に縛られて日陰の中にいる現状から脱却させ、まっとうな未来を彼等に送って貰いたい為に仕組んだ筋書きを、神様が余命いくばくもなく過去の過ちを改心した彼に奇跡として叶えてあげたと見れば(あまあまだが…)、コメディ-タッチのヒューマンホームドラマとして大いに楽しめました。  もし隙のない計画で小狡く詐欺を成功させていたら、カラス達への好意はかなり低くなっていたと思います。詐欺の様なコンゲームとヒューマンドラマを相反するテーマと考えると、前者を稚拙でかなり都合の良い展開にして表現する事で、最後まで主人公達への感情移入もしやすくなったと思います。  入川と河合姉妹が親子だと分かってから物語を振り返ると、みんなで一つ屋根の下で家族のように過ごした日々、チンピラ事務所でまひろが咄嗟に機転を利かせた嘘をホテルで「だってテツさんは父親くらいの歳だから…」などは何とも切なくなってしまいます。  また、最後に人の信用を食い物にする詐欺は最低の行為だ、武沢とは詐欺をしていなかったなどの設定も安っぽいですが、それらを入川に言わせた事で物語としては納得いくものになったと思います。  阿部寛さんの演技力は本当に安定していて上手でしたが、その他のメインの役者さんは場がしらける程に下手ではないにせよ、皆一様に上手くは無いように感じました。  村上ショージさんの抑揚のない台詞回しや、ぎこちない所作は「アジがある」、「へたうま」等のレベルでもないと思いましたが、あの役を彼が演じる事によって作品の価値や物語の説得力が数段上がったと私は思います。お笑い芸人の彼の大ファンであることを差し引いても、彼自身が持っている物事に対する誠実さの様なものが、この映画自体の大きなプラスのウエイトになっていたと思います。  逆の意味で言うと出てきてすぐに「あっ、この人は絶対にいい人ではない!」と思わせるユースケ・サンタマリアさんの彼自身が絶対に持っているであろう不誠実さも分かり易すくて良かったです(ごめんなさい)。  「カラス」ではなく「親指」をテーマにして見ると色々許せてしまう映画でした。 
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-08 16:38:16)(良:2票)
3.  クヒオ大佐 《ネタバレ》 
堺さん扮するクヒオ大佐はよくあるコントからライブ感を引いて鮮度の落ちた所に良くないリズム感を足したようなキャラクターで、笑えるかと聞かれれば正直笑えませんし笑ってくれと頼まれても笑えません。 しかし新井浩文さんがそんなヌルい詐欺師の前に現れ鋭いツッコミを入れると僅かばかり可笑しくなります。 コメディとしてはその程度です。 ドラマとしても政治や湾岸戦争を絡めてこられてもそれ自体について訴えたかったのか、ラストのクヒオの妄想の前フリの為だったのかもはっきりとはしません。 本作でのクヒオ自身は恐らく幼少時のトラウマから来る解離性同一性傷害だったのではないかと思われ、作中では殆ど彼の交代人格の方が描かれています。 だとしたら捕まっても案外すぐ出てこれちゃうかもしれません。 この様にコメディとしてはほぼ笑えず、ドラマとしてもフォーカスがぼけてしまいながらクヒオの妄想でラストを迎えますが、怖いのはこのクヒオの脳内妄想が現実のしのぶにも見えてしまっている事です。 路上でしのぶは実際には飛んでいないクヒオの乗るヘリコプターに敬礼しています。 後ろで見ている弟はドン引きです。 クヒオの精神世界を共有する事が出来るしのぶって…。 これが「愛の力」なのでしょうか。 だとしたら、しのぶはクヒオと結ばれる以外幸せになる事は有りません。 まあ、可能性としてはハンバーグに入っていたのがニガクリタケでもクリタケでもなく、○藤英明さんが食べたヤツと同じキノコだったという方が高いと思いますが。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-06-20 03:34:56)(良:2票)
4.  思い出のマーニー 《ネタバレ》 
内向的で自己嫌悪の強いローティーンのあまり可愛くない主人公の女の子には好感が持てました。 自分に通ずる所が少なからずあったからだと思います。  彼女がどの様に、また、どの程度変わっていくのかという話なのは明白なのでその辺りに注目しながら観ていました。 杏奈の自己嫌悪による孤独、孤独を受け入れる事での対人否定、それによる苦悩等は痛みとして伝わってくる程の描写だったと思います。 マーニーが出てくる世界と現実の世界のあやふやな境界の表現などは良かったと思いますし、マーニーと会っているうちに少しずつですが杏奈に表情が戻り、他人と自然に言葉が交わせるようになっていく行程は丁寧に描かれていたと思います。  しかし、置いて行かれる事にトラウマとも言える程の拒絶感を持っている杏奈がサイロでマーニーに置いて行かれた事を何故許す事が出来たかという心理的描写や論理的理由が無かったように思えます。 『ふとっちょブタ』と罵られた相手が手打ちにすると言ってきた提案を許す事が出来なかった彼女が、それとは比にならないくらいの事柄と大事な相手に対して許したのなら『ふとっちょブタ』事件からのそれに見合った大きな成長がなくてはいけないと思いますが、そのような大きな成長過程は描かれていない為に、杏奈と作品自体にかなり重要なターニングポイントとなるこのシーンに全く説得力を感じる事が出来なくなってしまっています。  この辺りから不安定な10代の主人公を繊細な描写で描いていた前半の良い雰囲気は姿を隠して杏奈とマーニーのドラマティックな関係を紐解く事に軸足が移ってしまいます。 また、肉親関係にした為に2人が出会う事に運命的な必然性が生まれて遅かれ早かれ、なるようにしてなったという予定調和的な話になってしまい、物語としての不確定要素による緊張感が薄れて、閉じた世界の他人の家(ひとんち)の話になり最終的には客観視で捉えてしまう割合が大きい作品になってしまった印象で私としては残念でした。 個人的には杏奈とマーニーは似たような境遇を違う立場で経験した他人の方が良かったと思います。
[地上波(邦画)] 7点(2015-12-29 21:26:59)(良:2票)
5.  ソーシャル・ネットワーク 《ネタバレ》 
見始めて少し経ってから、「フェイスブックの映画だ」と気付きました。 フェイスブックそのものに興味は有りませんが、ジェシー・アイゼンバーグの演技に説得力を感じて作品に引き込まれていきました。  主役の彼が演じるマーク・ザッカーバーグがフェイスブックを立ち上げるきっかけや拡げて行く理由の殆どは負の感情から来ています。 物事の行動原理は主に欲望や感情に起因していますが、天才が世の中の新しい常識を創るような発明も凡人と何ら変わらない理由がきっかけとなっているのは面白い所です。 バーニングマンというアートイベントも彼女に振られた男の行動がきっかけで始まったという話も思い出しました。  そんな天才マークが作中唯一表情を緩める相手は友達のエドゥアルドでも彼女のエリカでもなく、ナップスターを立ち上げた山師のショーンです。 エドゥアルドがフェイスブックを単なるビジネスツールと考えていたのに対して、ショーンはフェイスブックを『クール』なものとして捉えています。 マークにとって彼のプライオリティの頂点に位置するフェイスブックを肯定し、その本質とも言える部分を見抜く事の出来るショーンは最高の理解者と言えたのではないでしょうか。 また、マークにとっての『クール』とは彼の最大のコンプレックスで、フェイスブックに『クール』を見出したショーンに無意識のうちに傾倒していくのは極めて自然な事だと思います。 ショーン・パーカーは欲しがっている相手に最も欲しがっている物を与える天才として描かれています。 彼の周りにいつも女の子が居るのも納得です。  物語はフェイスブックの成功の過程と並行して、この3人にウィンクルボス兄弟を加えての醜い人間ドラマを描いています。 フェイスブックを立ち上げた理由がもっと社会的に意義の有るものだったらここまで酷い事にならなかったのではないか等と甘い理想論の様な考えを抱かせる程に彼等の争いは虚しく映ってしまいます。  ジェシー・アイゼンバーグの演技や編集、音楽、タイムリーな話題性等の優れた要素を軸にテンポ良く色々なイベントを矢継ぎ早に見せてくれますが、正直内容的には見終わってからも印象に残るものは余り有りませんでした。 脚色はされているものの実話という事で話に惹きつけられますが、もしフィクションだと仮定してしまうと物語自体はそれ程魅力のあるものではないように感じます。  作中では上記の登場人物の中でもエドゥアルドが最も好意的且つ良心的に描かれていると思います。(マヌケな部分はありますが) マークと彼の間の示談条項は非公開で彼は本作の監修に携わっているとの事です。 条項内容に映画製作等があった場合、他の関係者を除外しての単独検閲権限も含まれていたのではないかと勘繰ってしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-06-15 19:06:26)(良:2票)
6.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 
学生の頃に夜中なんとなくテレビを見ていたら本作がやっていました。 フランキー堺さんは名前が格好悪かったり、彼の四角い顔が生理的にダメだったのでかなり嫌いな俳優でした。 見終わった後にテレビの前で「ヤバい、これマジでヤバい…」と声を出して1人で呟いた事を覚えています。 映画好きになら解って貰えると信じて書きますと、とんでも無い作品を見終わった時に、リミッターを超えた満足度から来る高揚感で脳みそがゾワゾワして体全体が吹っ飛ばされそうになって叫びたくなるアノ感覚です。(私だけだったらかなり恥ずかしいです…) その頃からおっさんの様に落語と時代劇が大好きだった自分には、ど真ん中でした。 生理的に受け付けない役者さんの作品を見て180度見方が変わって最高評価になった人は私の中で3人いますが、フランキー堺さんはその中の1人です。 侍、女郎、客、使用人、楼主、居残り等のそれぞれの欲や思惑が乱れ舞う品川遊郭相模屋で、立川談志さんが言っていた様に人間の業を肯定しながら話は軽妙に進みます。 その中でも、堺さんがとんでもなくカッコ良いです。 台詞回しからは粋で破天荒な人間を感じ、所作は軽快で無駄は無くそれでいて不思議と品や優雅さの様なものが漂うシーンもあります。 相模屋の1・2階を動き回る姿はまさにバレエのプリンシパルです。 死に向き合いつつ抗い、全力かつ狡猾に生きているメメント・モリ佐平次は相模屋では無双です。 他の連中とでは素養と覚悟が違います。 堺さん自身もまた然りです。 左幸子さんや南田洋子さん等も好演していますが、堺さんと周りの役者さんとではレベルというか正直演じている次元が違う様に感じました。 バカみたいですが毎回見る度に、堺さんが前に見た時と違うことを言ったり、違う演技をするのではないかと本気で思ってしまう程、作中では活き活きと自由で自然に見えます。 ラストシーンは自分の意を汲んで貰えなかった川島監督が会社に対しての当て付けでわざと質を落したのではないかと思う程、テンポも編集もよく有りません。 加えて、作中にもカット割りや音声、編集の稚拙な所は有るのでマイナス3~4点になると思いますが余裕で10点です。 それらのマイナス要因は、この評価が揺らぐ様な事では有りません。
[DVD(邦画)] 10点(2015-05-02 22:32:23)(良:2票)
7.  アーティスト 《ネタバレ》 
 HDの中に録画されていたので取り敢えず予備知識などは全くなしで見ました。  モノクロサイレントは映画の導入部で、いつ色が付いて音が出るのかと思っていたのですが、そうではないと気がついた時には作品にかなり入り込んでいました。   とても可愛らしい作品でした。フランス映画とのことですがハリウッド映画の様に脚本、映像に高い整合性が感じられ、時間も約100分という事も有り、手の中にすっぽりと収まる良く出来た工芸品のようでした。   サイレントという事で、主人公の少し大袈裟な演技も作品に合っていましたし、脇を固める犬とヒロインも良かったです。出演者全員の演技やストーリーに、ほぼ重たい所がないので軽妙に進みます。   また、音がないという事で映像は丁寧に作っている印象でした。当時の町並み(ヒロインが車を運転して主人公の所まで行くシーンの派手ではないカーアクションや、カット割りも含めて俊逸でした)や、〇〇町のみなさんと言ったエキストラではなく、演技の出来ているエキストラは見ていてストレスがなかったです。   音も色も無く、加えてシンプルですが、良質のラブストーリーでした。 
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-13 15:27:39)(良:1票)
8.  横道世之介 《ネタバレ》 
鑑賞後、レビューを書く前にここの評価を見て自分のそれとかなり差があるので驚きました。 自信が無くなりもう1度見ました。 気負わず見られたという事も有りましたが、評価は上方修正されました。 日和った形になりましたが、2度見た事は結果的には良かったです。 話の展開や構成は俊逸でしたし、登場人物が皆、役者さんの演技を含めて魅力的でした。 高良さんと吉高さんは単体でも良かったですが、彼等2人の関係性は見ていてとても心地良かったです。 空気を読めない世之介と彼に輪をかけてマイペースな祥子は、ボケ役の芸人の前にもっと強烈なボケ芸人が現れ、最初の芸人が突っ込まざるを得なくなっているようで面白かったです。 登場人物の台詞や所作の間(ま)や、演出は独特の雰囲気で非常に好感が持てました。   一方でノスタルジーという要素に少し頼りすぎている感じがしました。 現在のシーンではそれぞれの登場人物が世之介に対するノスタルジーを、過去のシーンでは観客に向けてのそれを表していましたが、前者はストーリー上の事ですし悪くもないと思いましたが、後者のそれはあざとく映りました。 ステレオタイプに80年代を表現した映像は、それらの要素を詰め込みすぎて説明的になり過ぎていましたし、広い画で記号的に配置された演技の出来ないアルバイトであろうエキストラがそれらに絡むと、作品からの集中力を欠いてしまう程でした。 製作者側のこだわりだとは思いますが、本来、話の背景でしかない筈のそれらに焦点を当てすぎると、見ている側は映画ではなく単なる製作者の自己主張を見せられている様で一気にしらけてしまいます。 そんなシーンが複数あったのは残念でしたし、それが1度目に見た時の評価が低くなった要因です。 ある程度年齢を重ねた人に対しては、ノスタルジーは感傷的にさせる道具としては極めて有効だと思いますが、安直に使いすぎると逆効果だと思います。 話が良いだけに勿体無く感じました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-20 17:32:22)(良:1票)
9.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
タイトルの原題は主役のモンコの為に有りますが邦題はダグラスの為に、そして内容的にはダグラス中心と言っても良いくらいです。 冒頭のメインキャストの登場シーンの順番や各人への時間配分等をみても作品に対してのダグラスの重要性は明らかだと思います。 イーストウッドに思い入れを持っている人には面白く無いかもしれませんが、別段そうでない私にはこの構図は非常に面白かったです。  イーストウッドをメインにしてリー・ヴァン・クリーフを完全な脇役にしても成り立つくらいイーストウッドの存在感と渋さは確立されていた印象でしたが、敢えて2人を立たせる事によりお互いに対する新たな緊張感が加わるのと同時に若干の人間味のようなものを感じて作品に厚みが出来たと思います。 容姿もキャラクターもそれ程違わない2人がお互いの存在を潰し合わずに擁立出来た理由は調度良い演出と脚本だと思います。 勝手にポーターに荷造りさせたり、足踏んだり、帽子を撃ったり、作戦から逸脱したりと先に仕掛けてくるのはいつもモンコですがダグラスがそれをしれっと往なしつつ力を見せつける様は見ていて心地良かったです。  また、この演出と脚本の調度良さは勿論作品全体にも及んでいて2人が渋すぎるのに重くなり過ぎずに、ガンファイトが多くても軽くなり過ぎない等と話自体が結構丁寧に作られている事を認識させられます。 2人の賞金稼ぎが存在するだけで不安定で破綻確定な設定ですがインディオを仕留める彼等の目的を別のものにしたお陰で収まりの良い纏まり方になっていますし、それに付随して出てくる途中の話や小物等もかなり効果的だったと思います。  出演者のカッコ良さ、的確な演出と脚本、そして音楽の使い方と楽曲自体も素晴らしかったです。 100年以上前のアメリカが舞台の話を50年以上前にイタリア人が映画にして日本人の私が今見て喜んでいます。 単純に『良いものは良い』という事だと思いますし、色々な壁を超えて楽しませて貰えて何となく嬉しくなってしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-09-13 18:58:00)(良:1票)
10.  アウトレイジ ビヨンド 《ネタバレ》 
面白かったですが前作に比べると、少し張り切ってしまいガチャガチャした普通のヤクザ映画という印象でした。 元気に水中を泳ぐ魚より、水底で蠢いているドジョウやウナギの様な前作の雰囲気が良かったので少々残念です。 花菱会と、水原と、木村の下に着いていた若い2人がその要因だと思います。 花菱会の3人組は、もろステレオタイプの関西ヤクザと言った印象ですが、配役、演技は良かったです。特に塩見さんは引くほど怖かったです。 彼等をトーンダウンさせる必要はないと思うので、寡黙で不気味な第4の人物を花菱会の中に立てて、バランスを取って欲しかったです。(勿論、喋る時は関西弁) 水原は前作での雰囲気が良かった為にがっかりしました。 小物感を出す為だと思いますが、中尾さんを始めとする周りの組員の演技に対して、加瀬さんのあのヒステリックな演技は上手いとは思えませんでしたし、小物感に対する演出、演技の程度や方向が違っていたように思います。 重要な役どころだったので、1人だけビー・バップ・ハイスクールになってしまったのは残念です。 それに対して、清廉性はあるが口と態度が悪いマル暴の繁田は説得力が有り、演じている松重さんも役にハマっていました。   脚本は前作同様、設定や話の筋におかしな所が無かったのでストレス無く見る事が出来ました。 音楽が唯一前作を超えていたという印象でした。 
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-04-16 16:06:41)(良:1票)
11.  北の零年 《ネタバレ》 
 演出、脚本、配役、演技、映像、音楽、CGなど映画における殆どの要素が良くなかったです。これらの良くない要素を一つ一つ積み重ね、繋ぎ合わせれば駄作になるのは火を見るよりも明らかです。   業界を代表するような大物の役者さんなども出演しています。  制作は主に全国紙の新聞社です。系列の全国ネットのキー局なども勿論含まれています。役者の方々は脚本を確認したとしても大手マスメディア制作のオファーを断るのは、後々の事を考えると難しかったと思います。  しかし、映画のテーマは新政府の横暴な権力には屈せず厳しい北海道の大地に自分たちの国をゼロから作っていこうと言うものでしょうか。  全く以て笑ってしまう程に皮肉です。   この駄作(勿論、個人的な見解)のラストシーンは、徴兵や馬の徴用の問題が解決していないのに、取り敢えず現実から目を逸らし、みんなでニコニコしながら荒野を適当に耕してハッピーエンドです。  役者というプライドを捨て、長いものには巻かれても、取り敢えず目先の日銭は稼げたので「まあ、いいか」という彼ら自身を見せられているようでした。   こんなことをしていると本作の中では馬(命を懸けて守ろうとした大切なもの)は帰ってきましたが、制作スタッフや役者に取っての本当に大切なものは、何時か何処かに行ってしまうように感じました。  
[CS・衛星(邦画)] 1点(2015-04-12 13:16:39)(良:1票)
12.  学校Ⅱ 《ネタバレ》 
前作は田中邦衛さんが本作では吉岡秀隆さんが素晴らしい演技を見せてくれました。 「北の国から」の親子、恐るべしです。 がっかりするような演技をする役者さんが1人もいなかった為に作品に集中出来ましたし、映画としてその事が如何に大事かを改めて感じさせて貰いました。  竜先生が「与えるとか教えるとかではなく、自分達の仕事は子供達から学んだ事を返してやる事だ」いう趣旨の台詞を言っています。 一見すると謙虚で子供達の目線に立った言葉のように感じますが子供達に責任を負わせながら生産性のない内容の台詞になっているように感じました。 現実的には学校教育は理屈だけで何とかなるものではない事は理解しているつもりですが、持論を書かせて貰えればこれとは全く逆で「教える事によって子供達から何かを返して貰う」事が教師の仕事だと思います。 何かとは教えた事を覚えて(理解して)貰う事は勿論、学ぶ事への知識欲だったり、物事への探究心だったり、単純に教えて貰った事への感謝や嬉しさだったりと、それらの中でどれでもいいと思います。 ギブアンドテイクの最初のギブを教師からではなく子供達から求めていてはそれこそ高い給料を貰って楽をする行為だと思いますし、子供達の何倍もの歳や経験を重ねて来た人間が教える気概を放棄してしまったらそこは養護学校ではなく養護施設になってしまうと思います。 あくまで子供達から学ぶ事は教育現場での付加価値であり、それを教育理念としてしまうと教師達の教える事に対しての責任放棄にも見えてしまいます。 養護学校と一般的な学校とではやはり違いは有るのでしょうが、竜先生の彼等を特別扱いするなという言葉を受けるとそこにも落とし所は無いように思います。  批判的な事を書かせて貰いましたが本作には自分でもびっくりするくらい泣かされたのも事実です。 正直に言えば納得出来なかったのは上記した理屈ぐらいであとは堪能させて貰いました。  はじめの方で竜先生の財布を自分の机の上に置かれただけで潔癖症の女の子が滅茶苦茶嫌がっていたのに、卒業式の日の教室で彼女が竜先生に普通にリボン徽章を付けてあげている所などは山田監督のシレッとしたさり気ない演出の上手さを感じてしまいます。  音楽が全体的に感傷的になり過ぎずに情景をしっかりと支えている質の良い楽曲が多かった印象でしたし、スタッフロールの後ろで流れていた曲などはオカリナの包み込むような温もりのある音色が作品のイメージに非常に合っていたと思います。  また、高志や佑矢の笑顔が殆ど校外での出来事でしたので、校長の「学校の出来る事はしれてるんだよ」という台詞が何気に印象的でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-07-13 00:33:22)(良:1票)
13.  ワルキューレ 《ネタバレ》 
この話は脚色は出来ても史実の根幹を違う表現には出来ないと思うのでやはり見せ方を工夫するしか無いと思います。 前半を淡々と見せて2時間で収めるのでしたら作戦決行後はやはりもっと盛り上げた見せ方にしないと見ている側も不完全燃焼で終わってしまいます。 クーデター勢力がベルリンを制圧していく見せ方は良かったのでその後の正規軍が鎮圧していく様子をオセロの最後の一手でパタパタとひっくり返して一気に形勢逆転してしまうように作中でももっと大胆に畳み掛けて見せるか、逆に後半をあの程度で見せるのでしたら前半部の人間関係や登場人物の見せ方に厚みを持たせて2時間以上の深みのある作品に仕上げるかにしないと淡々とした話が少しテンポアップして終わっただけの作品という印象しか残りません。 作品全体を通して見ても次の展開に急いで進もうとしているだけで、緊張感というより質の良くない焦燥感のようなものを感じるだけでした。 史実に基づいた作品は脚本に限界があるので映像や演出に特出する所が無いと魅力を感じられないものになってしまいます。  アメリカ側の製作者はシュタウフェンベルクをハリウッドが大好きなファミリーマンとして、またドイツ側の製作者は彼を英雄として描きたかったのではないでしょうか。 勿論これは推測ですが確かな事は前者の描き方が中途半端な為に後者のイメージを損ねてしまっているという事です。 家族を大事にする男というよりも大事の前で私事に目を向ける残念な人物に映ってしまった印象があります。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2015-07-13 00:20:53)(良:1票)
14.  ピンポン 《ネタバレ》 
見始めた時の感想は窪塚さんの演技が鼻につき集中出来ませんでした。 昔のNHKのアナウンサーが聞いたら発狂しそうな台詞回しの日本語も体が痒くなってしまいましたが、こういうものだと自分に言い聞かせ、それらが慣れてくると徐々に面白くなっていきました。  話は恋愛や誰かの死という様な安直な感傷装置を使わないで『敗北・挫折・努力・勝利』を友情で包んだスポ根の王道の真ん中を行っていますが、原作がマンガという事もあり登場人物のキャラクターがおかしな方向に立ち過ぎていたり、奇抜な演出等も話とギャップがあってかなり楽しめました。 特にドラゴンのバックハンドリターンは金剛力士像みたいで笑ってしまいますし、「24勝……94敗」正直なアクマには好感が持てます。 音楽も良い意味で作品を軽いものにしてくれて見易くなっていました。 それでも青春映画という事で何箇所かは青臭い所は有りましたが、それは私が順調に歳を取れた裏返しという解釈をさせて貰いました。 また、表現方法としては映画と同じビジュアルで見せるマンガが原作なので強調させたいであろうシーンや台詞が主張してしまって作品のリズムが失われている所があったと思います。  見始めた時の感想は前述した通りですが見終わった時のそれは結局窪塚さんで作品が成立していた感じでした。 個性的な登場人物達を彼の極端な演技でバランスを取っていた印象です。 彼の演技を頭ひとつ抜け出た奇抜さにしたおかげで他の役者さん達も伸び伸びと演技が出来て、それぞれのキャラクターにも違和感は生まれず逆にそれぞれが目立つ事が出来て作品全体も纏まったと思います。 窪塚さんは正直好きでは有りません(大嫌いでも有りません)が、本作では役にハマっていて最終的には魅力的に映りました。  この手の作品は内容云々というより、高揚感や爽快感だと思うのでそういう意味ではそれらを感じられた本作は良かったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-06-30 02:24:41)(良:1票)
15.  HANA-BI 《ネタバレ》 
台詞とストーリーを出来るだけ削ぎ落として、暴力と、小ネタのギャグと、監督自身の絵をモンタージュ的に重ねていき仕上げている作品で、それらから何かを感じ取れている人が高評価を付けているのだろうが、ほぼ何も感じられず、理解も出来ない残念な私にとっては魅力的な作品にはならなかったです。 リズムをわざと外し間延びさせるような編集も心地良くないし、映像的に印象に残るシーンも特に有りませんでした。 悪い意味でギミックや手法にばかり意識がいってしまい作品に入り込む事が出来ませんでした。   正直、嫌味ではなく本作を理解できる人を羨ましく思ますが、その反面、その理解は監督の意図しているものだと自信を持って答えられる人(特に映画評論家)はどのくらい居るのかと思ってしまいました。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2015-04-20 04:25:58)(良:1票)
16.  ストリート・オブ・ファイヤー 《ネタバレ》 
話の内容は薄っぺらで安直です。 しかし、本作はロックンロールのお伽話です。 「カボチャは馬車にならないだろ~。」と、ツッコまないようにお伽話に余計なツッコミは野暮です。    他のレビュアーの方も書いていますが、この映画は「カッコ良い」です。 どーしよーもなく安っぽい言葉ですが、私が映画を見る上では、結構重要な要素です。 高揚感のある挿入曲は勿論ですが、それぞれの登場人物が自分達の美学に従って行動していて、それが結構みんな筋が通っている所が見ていて気持ち良いです。 敵役のレイヴェンでさえも魅力的に描かれていますし、普通なら単にコメディーリリーフ的なキャラクターのビリーの外見と、台詞と態度のギャップには最初は笑ってしまいますが、話が進むに連れて「漢」すら感じさせてくれます。 あの根拠の無い自信から来るいちいちカッコイイ台詞や態度は最高です。 劇中では一番好きなキャラクターです。   エレンが唯一、恋と夢の狭間で揺れていますが、それが作品の叙情的な部分と成って物語に起伏を与えています。 お伽話にぴったりの綺麗なお姉さん的なヒロインですが、肝心のステージで歌い始めると途端に貧弱に見えてしまいました。(勿論、歌は吹き替えです) ジム・スタインマンの曲とホーリー・シャーウッドのボーカルに負けてしまっている印象です。ミリ・ヴァニリを見習って欲しいです。   また、今回久しぶりに見たのですが映像が結構良った事に気付かされました。 デヴィッド・ボウイのジギー・スターダストのアルバムジャケットの様な雰囲気の夜の街や、トムとレイヴェンの決闘でのボンバーズと市民の大集団の対峙シーンなどは迫力とカッコ良さが有りました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-19 18:17:24)(良:1票)
17.  南極料理人 《ネタバレ》 
 冒頭の逃走シーンで吹雪の中にも係らず、カメラが寄った画で風は全く吹いてなく、とってつけたような眼鏡の雪などを見て、「ディテールも何もあったもんじゃない…ヌルいなあ」とか思いながらも見続けていると「なるほど作品全体がヌルいというか緩いんだ、しかもかなり」という事が分かってきます。どちらかというと、良い意味で。  舞台が南極となれば屋外は極寒。閉鎖空間での話となるのは必然ですが、同じ閉鎖空間の酸素と気圧のない宇宙でのそれとは全然違い、天気の良い日は外で野球をしたり、夜中にパンイチでほっぽり出されたり、みんなで記念撮影等々、我慢しようと思えば我慢できちゃうレベルで、閉塞感も緊張感も殆ど無いです。良い意味で。  このユルユルで緊張感も殆どなくエピソードの羅列とも言える、ほぼ起伏のないドラマから逆に監督の気概が見えてきます。 引き算の演出を全編通してしている結果、余白の多い作品になっていますが、詰め込み過ぎのD難度の技を狙って骨折する様な事は無く、こじんまりと纏まって掴み所は無いのですが分かり易いコメディーに仕上がっている印象に思えました。  屋内では必然的にカメラとの距離が短くなる役者さん達の信頼できる抑えた演技に頼り、屋外では逆に失笑を誘うかの様にロングショットを多用して状況を傍観させています。  俳優陣は全員、間延びした隙だらけの、俳優同士のコンビネーションに重きを置いた演技が心地良く、特に主演の堺さんは勿論ですが、オールラウンダー的に演技の出来る豊原さんが本作でも特出していた様に思えました。  物語は男子校の昼休み的なかなりくだらない男8人の群像劇。 作品の構成上、飲み食いのシーンが多いのですが、そうなると西村くん以外の7人は必然的にオフショットになるので結構なダメ人間に見えてしまいますが、好きで来た人は元よりそうでない人もなんだかんだ言いながら仕事は皆さんちゃんとやっていたと思われます。 そうでなければ極寒の地で必要最低限の人数で構成された隊は生き延びる事は出来ないでしょう。 料理人の仕事は食材に付加価値を付けて食べる人に提供する事です。 そう考えれば西村くんはかなり頑張っていたと思います。 ですが、上手に観測が出来ても褒めてもらえない様に、おいしいゴハンを作っても褒めては貰えません。 「うまい」の一言はラストカットへの伏線として使って無いのですが、その為に作中では少し不自然に映るきらいもありました。   手作りラーメンエピソードでは、やはりタイチョーが1番幸せそうに見えますが、結構頑張って料理を作り、それを食べるみんなのリアクションに目を配っていたそれまでの西村くんを見せられていると、みんなの為にラーメンを作る事が出来るという事自体がタイチョーと同じか、それ以上に幸せだったのではないかと思ってしまいます。 そう思ってあげなければ、ピーナッツの使い方でしか褒めてもらえないのでは少し気の毒です。  観測期間が終了して誰もいなくなった厨房に『ドアの閉め忘れに注意』と書かれた張り紙が、手を離せば勝手に閉まるスウィングドアに最後まで貼られているカットを見てなんとなく本作を象徴していた緩さに感じました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-04-03 17:02:44)(良:1票)
18.  ブラックホーク・ダウン 《ネタバレ》 
ソマリア内戦への米国の軍事介入を総体的な視点ではなく、モガディシュでの局地戦をあれだけの映像で米兵同士の絆の人間ドラマと共に描けば、米国万歳とまでは行きませんが明らかに戦争も米国も肯定している昨品だと感じてしまいます。 それは、冒頭のプラトンの『死者だけが戦争の終わりを見た』という言葉でも解ります。 拡大解釈すれば生きている者は誰も戦争から逃れられないという意味です。歴史年表を見れば明らかです。 戦う事は善悪の範疇ではなく世の常だという様な偉大な過去の哲学者の言葉は、戦争を生業の一部にしている米国からすればこれ以上ない後押しになりますし、本作は完全に米国からの立場で米国中心に描かれていますが、逆に潔ささえ感じます。 やってきた事と撮っている事が違うという様な中途半端な客観視による反戦的な道徳観の押し付けより、やってきた事を主観で思いっ切り撮りましたという本作の方が正直好感を持って見る事が出来ます。 作品に関わった人達も(監督は英国人ですが)実際に戦った米兵も、彼等の主観から見れば米兵とソマリア民兵の命の重さは違うと考えるのは当然ですから、作中の様な敵か味方で差異のある描き方になるのは自然な事だと思います。 ある意味戦争とは命の価値の差別化が無ければ成り立ちません。 本作はそれすらも忠実に表現しているのかもしれません。 逆の立場から撮ればソマリアの解釈で撮るだけの事です。 どっしりと軸足を米軍に置いたことで、見方によっては純粋な戦争映画になったのではないでしょうか。 戦場映画といった方が良いかもしれません。  ヘリからの機銃掃射でM134の焼けた薬莢が雨のように降って来てエヴァーズマンの服の中に入ってしまうシーンや、オシックが落ちている誰かのちぎれた手を反射的に自分のポーチに入れてしまったり、サンダーソンが上官の話を上の空で聞いているシーン等、説明もなく一見意味もない様な演出にリアリティを感じてしまいます。 この様なシーンと迫力のある戦闘での映像が相まって作品に引き込まれていきます。 また、戦場真っ只中で命令に翻弄されながらもそれに従い命懸けで奔走するマクナイト、任務とはいえ上空で命令と状況を現場と司令部に伝える事しか出来ないマシューズ、泥沼化する状況を把握しながらも苛立ちと苦悩を募らせながら次々と命令を下すガリソン等を、対比させながら見せる演出は俊逸です。 敵と味方の間に埋める事の出来ない深い溝が有る様に軍内にも格差があり、それが直接生死の差に繋がる描き方には言葉を失います。  戦場で戦う事に淡い理想を見出そうとしたエヴァーズマンに対して、最後にフートは帰った方が良いといった様な趣旨の台詞を言います。 そんな彼の戦う意味とは仲間の為というもの迄に簡略化されています。 思考をそこ迄削ぎ落さなければ生き残れないのではないかと感じさせる程に、十分な戦場の描写に本作はなっていると思います。  米兵19人の犠牲に対してソマリア民兵ではなくソマリア人の犠牲者が1000人という所が気になります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-06-02 17:09:39)(良:1票)
19.  バンテージ・ポイント 《ネタバレ》 
これだけの作品でここまでブラッシュアップされていない脚本も珍しいと思います。 設定に説得力は無く、展開はストーリーが何時破綻してもおかしくない位に運や偶然に頼り切っている感じです。 この様な脆弱な脚本ですとあの様に同じシークエンスを違った視点から何度も見せて1つの話に擬似的な厚みと深みを付けていく方法は非常に効果的だったと思います。 また、その見せ方も気を持たせる所でカットをするなど少しあざとすぎる感じもしますが徐々に事件の真相に近づいていく作品のリズムは私には調度良かったです。 そして、各シークエンスの登場人物がそれぞれ繋がり、状況の全貌が明らかになった時点で激しいカーチェイスに突入して事件は収束します。 90分という短尺の中で結局監督はテンポという事に重点を置いていた様に感じますし、幾分強引とも言える展開でしたが、私自身も見終わった時には脚本の不出来さを嘆くよりもこの畳み込むような演出による高揚感の方が勝っていましたし、勢いで押し切られた結果になりましたが心地良い敗北感のような「まぁ、これはこれでいいんじゃないかなぁ…」というものが余韻として残りました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-07-16 17:42:47)(良:1票)
20.  昭和残侠伝 死んで貰います 《ネタバレ》 
この手の任侠映画をちゃんと丸々一本見たのは初めてでしたが、かなり良かったです。 役者さん達の着物の着こなしや台詞の日本語が自然で美しく、見ていて気持ちが良かったです。 任侠映画の必須項目である義理や人情をこれでもかというくらいに全編を通して表現されていますが、教訓としてではないので説教臭くなること無く見ることが出来ました。 女将さんが義理の息子と知りながら接していたことや、駒井から幾太郎を守るために秀治郎が叱責し、更に秀治郎を守るために重吉が飛んで来てぶん殴るシーン等は逆にストレート過ぎて妙な安心感と同時に心に響くものがありました。 駒井が勧進帳の富樫左衛門になる訳が無いのは解っていますが最後まで本当に嫌な奴でした。 諸角さん、良い意味で最悪です。 湿っぽい浪花節の中で長門さんのコメディリリーフ的なひょっとこの松は非常に効果的でした。 12年間位の話ですが急ぐ事無く調度良いテンポで、シンプルですが一つ一つの内容を丁寧に描いていたのでとても見易かったです。 秀治郎が幾太郎に初めて出会ったのも雨、刑期を終え再開したのも雨、警察に連行され離れ離れになるラストのシーンも雨、日本人には『雨』という情景だけで伝える事が出来るものがあると思いました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-05-03 19:23:43)(良:1票)

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