1. アイリッシュマン
《ネタバレ》 東京国際映画祭にて鑑賞。3つのエピソードが並行して描かれる。主人公フランク・シーランがマフィアに気に入られ、仕事を次々とこなしてのし上がる半生。年老いて、施設で過去を振り返る晩年。そして、ボスであるラッセル・ブファリーノらと知人の結婚式に向かう旅。この旅がどの時点なのかは、映画の終盤に明かされる。映画が始まってからは、フランクがラッセルに気に入られて、裏仕事を請け負う様子が描かれる。テンポはいいが、予定調和でもあり、この時点では全部で3時間半という上映時間に気後れした。しかし、ジミー・ホッファが登場してからは、一気に緊張が走り、物語に惹き込まれる。デ・ニーロ、パチーノ、ペシの三角関係が動き出すのだ。友人となったパチーノの“動”と、ボスであるペシの“静”の間で挟まれる複雑な心境を演じるデ・ニーロはさすが。家族との関係は、末娘との関係にだけ絞って描かれており、この関係が晩年シーンの締めくくりに重要な意味を持つ。全体として、満足のいく作品だった。「スコセッシ、デ・ニーロ、パチーノ、ペシの映画だ」と聞いて少しでも心が躍った人は、劇場で楽しめる作品だと思う。それにハーヴェイ・カイテルも出ていると知って手を叩いた人は尚更だ。難をいえば、俳優陣の年齢もあったと思うが、体の動きが少なく、会話劇になっている。そのため、笑いを散りばめるなど脚本に工夫されているものの、なんとなく観た人にとっては退屈な映画で終わってしまう可能性があるだろう。ネット配信前に、限定での劇場公開が決まったばかり。公開拡大は、昨年の「ROMA ローマ」の例を考慮すると、賞レースの行方次第だろうか。 [映画館(字幕)] 8点(2019-11-09 22:16:14) |
2. アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
《ネタバレ》 戦場と離れた場所で生死を決める現代の戦争。その葛藤と現状が描かれている。サスペンスとしても申し分なく、問題提起に値する作品でもある。遺作となるA・リックマンの存在感は会議室の中で必然であり、最後に放たれるセリフはこの映画の核心をなす。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-11-28 23:56:48) |
3. アリスのままで
《ネタバレ》 ジュリアン・ムーア大好きです。自然な演技の中に、人間的な愛らしさが訴えかけてくるのはどの映画でも共通しています。「クッキー・フォーチュン」なんて最高! 本作でも、若年性アルツハイマー病を患うシリアスな役柄ながら、感傷的になりすぎないのがとても自然です。悲痛な感情を吐露するのは、夫に打ち明ける夜中のシーンくらい。 その後、急速に病気の進行していくアリスですが、とても自然で淡々としています。ところが、病気の進行したアリスが初期のアリスが残したメッセージを見るシーン。メッセージ内容の重さも伴って、高揚感の高まるシーンなのですが、昔のアリスの表情や言葉遣い、行動との違いが鮮明に。J・ムーアの巧さが光るとともに、映画的にもとてもグッとくる場面でした。 オスカー受賞、おめでとう!「ビッグ・リボウスキ」のような弾けた演技もまだまだ期待してます。 [映画館(字幕)] 8点(2015-07-19 20:49:51)(良:1票) |
4. アルゴ
《ネタバレ》 当時のイラン-アメリカの関係を簡潔に説明する冒頭から映画に惹き込まれる。偽の映画作りに協力するハリウッド関係者にアラン・アーキン、ジョン・グッドマンという存在感のある役者を配し、一方イランで孤立化した大使館職員たちはあまり知られていない役者が演じているのも、物語の現実味を高めている。ベン・アフレックの家庭環境など、本筋以外のドラマ部分が弱いのが少し物足りない。 [映画館(字幕)] 8点(2012-10-30 09:09:44) |
5. アンストッパブル(2010)
余計な部分を極力そぎ落とし、娯楽に徹した映画。人物描写も最低限しっかり描かれているので感情移入できるし、迫力ある映像は文句なし。ストーリーを複雑にしたからといって映画がおもしろくなるわけではないのだと、見終わった後に感じさせてくれました。 [映画館(字幕)] 8点(2011-01-20 09:37:32) |
6. アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
《ネタバレ》 トーニャ・ハーディングの描き方がうまい。主要登場人物への模倣インタビューや観客への語り掛けを絡ませながらの演出は、フィクションと伝記ものの微妙な立ち位置を示す。そして、この曖昧かつ大胆な語り口が、この映画のおもしろさとその裏に潜む社会的背景の闇深さを増大している。その一方、フィギュアシーンはどうやって撮影しているのかわからない程になめらかで関心させられるほど見事だった。 [映画館(字幕)] 7点(2020-02-20 22:03:52) |
7. アド・アストラ
《ネタバレ》 テレンス・マリック風の哲学的展開に、「ブレードランナー2049」的な重厚で冷たいSF要素が混じるものの、全体としてはB級感が漂う。不思議で独特の雰囲気があった。CGに頼らない画作りもいい。その一方で、娯楽要素を加えようとした中途半端さが足かせになり、映画の雰囲気に陶酔できない部分もある。この要素を排除できれば、「惑星ソラリス」や「ストーカー」のようなタルコフスキーの名作にも近づけた……かもしれない。 [映画館(字幕)] 7点(2019-10-04 08:47:28)(良:1票) |
8. アウトロー(2012)
《ネタバレ》 「誘拐犯」で監督デビューしたクリストファー・マックァリーですが、それ以来監督作がなく心配してました。「誘拐犯」はかなり楽しめるクライム・アクション映画でしたから。久しぶりの監督作もやはり同じ路線。ストーリーもしっかりして、良かったです。ただ、トム・クルーズはこの映画の主役としては少し合わなかったかな。不死身のヒーローすぎて、はみだし者感ゼロですから。 [映画館(字幕)] 7点(2013-02-17 13:35:23) |
9. アーティスト
映画の世界にどっぷり浸かれる映画ですね。最初はサイレントが物足りなかったけど、ペピーと逢って物語が進み始めてからはとても楽しめました。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-16 14:35:19) |
10. 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
《ネタバレ》 事故で突然に妻を失った男が、自分の感情と向き合うドラマ。いろいろな物を「解体」する行為と、自分を見つ直すことをリンクさせているような展開。淡々とした語り口だが、J・ギレンホールが主人公を丁寧に演じているので飽きない。自販機の故障を通じて出会った女性と少年との触れ合いが、どう主人公の解体に影響したのかは、分かりづらかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-01-22 12:50:38) |
11. アリー/スター誕生
《ネタバレ》 景色やライブ風景のワイドなカメラワークがほとんどなく、ずっとガガとクーパーのアップばかり。2人の歌唱パフォーマンスはすばらしいけれども、映画としてのメリハリや奥行きがなくて疲れる。弟に「崇めていたのは兄貴だ」と言われた後の表情が印象的なサム・エリオットが映画のキーになっていただけに、彼のエピソードをもう少し広げても良かったかもしれない。3人の抑制した演技はとてもよいだけに、映画のスクリーンで舞台劇を見たようなもったいなさを感じる。 [映画館(字幕)] 6点(2019-01-05 14:29:04) |
12. アンロック 陰謀のコード
《ネタバレ》 豪華な俳優が揃っている割には凡庸な仕上がり。ストーリーを複雑にしすぎて、説明が不十分なまま進むので置いてけぼりをくう。ノオミ・ラパスも頑張ってはいるが、もっと華のある女優さんの方が適役だったのでは。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2019-09-16 10:12:51) |