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1.  シビル・ウォー アメリカ最後の日 《ネタバレ》 
“Civil War”『内戦』。 じゃあ、逆から考えてみましょうか。最後に1枚の写真が出てきますが、恐らくあれが“アメリカの歴史を捉えた1枚”です。今後、この内戦を振り返る際、必ず目にする1枚にして、きっと歴史書に出る写真かもしれません。その前の数枚は、きっとネットで拡散されるでしょう。その前の1枚は、戦場カメラマンとしての彼女の人生を変える1枚となったことでしょう。 さて、この歴史的1枚は、どのようにして撮られたんでしょう?この物語は、ある女性に出会うところから始まります。…とまぁ、戦場カメラマンがあの1枚を撮るまでを描いた、記録モキュメンタリー映画だとしたら、戦況や状況の説明が薄いのも納得できるかも。  私も予備知識無しで観たから、大統領側と対抗勢力の1対1の衝突なのか、他にも幾つか組織があるのか、どっちがどう有利不利なのか、そもそも何で内戦してるのか、目の前のこの兵士はどっち側なのか、相手の方はどっち側なのか、サッパリ解らず観ていました。ただ、目的地だけはD.C,と決まっていて、そこで大統領にインタビューを行う、戦場を1400km駆け抜ける、無茶苦茶なロードムービーとなっています。クルーの4人は年齢的に、両親と子供、そして祖父という“拡大家族”の様相。恐らく今のアメリカの一般的な家族一世帯のユニットなんでしょう。映画は『疑似家族が目にする無政府状態のアメリカの人々』で、意図的にそうしたんでしょうね。  wiki見たら結構細かく(結末まで)書いてましたね。ふむふむ、なるほど~、19の州がねぇ…怖いねぇ。 アメリカは50の州(国)が集まった合衆国だから、政府が無茶するなら各州の独立もあり得るのかな?アメリカを別けるとしたら民主党の青い州と共和党の赤い州に別けるのがシンプルですが、テキサス(赤)とカリフォルニア(青)が連合を組んでるので、現実の大統領選を前に、内戦を助長するような組織図にはなっていないようです。 ただ影響されやすい国民性と、大統領の権限が絶大な国だから、映画の惨状がリアルなばっかりに、歯車が狂えば現実に…なんて、不安になりますね。
[映画館(字幕)] 7点(2024-10-21 22:56:33)
2.  少林寺木人拳 《ネタバレ》 
“Shaolin Wooden Men(少林木人巷)”『少林の木製人間(少林・木人の路)』。中国に(嵩山)少林寺がありますが、そこ発祥の拳法は少林拳。少林寺拳法は日本で創られた武術です。子供の頃は一緒だと思ってました。 ジャッキーのカンフー映画ブームの中で、拳精と並んで異彩を放つ本作。鎖に手足を繋がれた木人の存在がシュールでファンタスティックでした。本作が日本で最初に公開されたジャッキー主演映画だそうで、テレビで流れた回数は少なかったと思うんですが、無感情で怖可愛い木人と、勢いある日本版の主題歌のインパクトが強く、“ジャッキーを語る際に欠かせない名作”ポジションだったと思います。  久々の鑑賞。童顔一重のジャッキーが初期作品なのを感じさせます。功夫の源流とされる少林寺が舞台だけに、五獣拳、蛇拳、酔拳と、多彩な拳法の達人が出てきて賑やかです。オープニングの五獣拳の組手、真っ暗な舞台にロウソクと文字だけと、そんなにお金掛かってないのに良い雰囲気が出てます。当時のカメラとフィルムが成せる技ですね。続いて、ウルトラマンの切り絵オープニングを連想させるような、木人のシルエット…あぁ、可愛い。小刻みにプルプルしてる。真ん丸なお手々のアップ(右手?)に続き、おんなじカタチの逆の手のアップ(左手かなぁ?)、あぁ愛おしい。  そんな木人の可愛らしさから、ジャッキーらしいコミカルな映画だったと思っていたんですが、龍拳並みに真面目な復讐劇でした。少林寺で厳しい特訓をして、尼さんから善の拳を、罪人ファユーから邪の拳を学ぶ。相乗効果で強くなってる反面、急所攻撃に躊躇するなど師によって違う教えに葛藤が出てしまうのも面白い。更に管長から無敵の拳を学ぶという、少年ジャンプ黄金パターンですね。少林寺の癒しキャラ、酔拳の師匠からもちょっぴり学んでますが、真面目な復讐劇にコミカルな酔拳は合わないとの判断でしょうかね?  洞窟に幽閉されてるファユー。両腕が下ろせない位置で鎖に繋がれるという、かなり酷い扱いを受けていますが、饅頭を食べるときとか修行で竹を動かすときとか、けっこう自由に腕を動かしています。どういうカラクリか伸縮自在の鎖なんですね。このネビュラチェーンみたいな謎技術は、きっと木人を動かす鎖と同じ技術が使われてるんでしょう。恐るべし少林寺の鎖技術。まさにミラクル。ユーガッザ ミラクル。奇跡を起こーせー 今その腕ーでー♪
[地上波(吹替)] 6点(2024-10-13 10:13:39)
3.  ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 《ネタバレ》 
“Jurassic World: Dominion”『~:(土地の)所有権』。『支配権』という意味もあるけど、人類と恐竜の棲み分けという意味でコッチかな?と…別に望んだわけじゃないけど、パークから数えて6作品目。シリーズも29年に渡り、いよいよ完結しますよとなると、何かこう、感慨深いですね。全くこんなシリーズ化なんて望んじゃいなかったんですが。でも1作目の3博士が集まるとなると、やっぱり観たくなってしまいます。  人間の暮らす街中に普通に恐竜が居る日常。この非日常感はなかなか興味深かったです。恐竜が映るショートムービーをパッパと続けざまに観るのは面白いですね。あの屋敷から逃げた恐竜たちにしては、短期間で随分と増えて、驚異的なスピードで生息地を世界中に広げてますが、こんなヤバい状況で人間が普通に生活しようとしてるのが、却って面白かったです。 あと、私の知ってた恐竜、ディメトロドン(あんな地下に住んでるの?背びれで日光浴するんじゃないの?)と、イグアノドン(どこよ?あぁ、アレがそうなの?昔の2足歩行の想像図とだいぶん違う…)が出てくれたことは、嬉しかったです。  困ったことに今回のメインはバッタです。ハイブリッド恐竜もどうかと思ってましたが、いきなりバッタ。太古の時代にあんなのも居たかも知れないけど、大きい昆虫は気持ち悪いですね。ジュラシックシリーズで気持ち悪い虫を観るなんて思ってませんでした。私も小さい頃は虫に触れたけど、体長5cmほどのトノサマバッタの脚力は凄まじかった記憶があります。劇中のバッタのサイズ(30cmくらい?)だと、人間の手なんてバッタのキックで粉々になると思います。それ素手で掴んじゃうんだもんな…  シナリオはちょっと酷くて、パークの3博士を集めてしまえ。で、ワールドの3人と御対面させよう。ホントこんなノリで、アベンジャーズなんかで最近流行ってる全員集合を、このシリーズでもやってみた。って印象でした。彼らが一か所に集められても、ご覧の通り挨拶して、あとは恐竜から逃げるだけ。もうこの段階では、彼らの経験やスキルが活かされるわけじゃないですし。 彼ら6人が一本の映画に出てさえいれば、別にパーク組&ワールド組それぞれが冒険して、最後の方でチラッと集合するだけでも、良かったんでないかい?あんなゾロゾロと…オマケに、たまたま6人が白人だから、ポリコレに配慮して、正義の側に黒人の男女と黄色人種(あんたかい!)も入れましたって感じ。ワールド以降、悪人しか死んでないので、生死の掛かった緊張感はほぼ無いです。  DNAの研究で蘇った太古の恐竜たちが、現代の地球で人間や動物と、勝手に共存していくって終わり方は、割と好きです。だけど『最後だから、許す』って部分もありました。それなのに、今後更に続編(リバース?)が創られるような感じになってるみたいで、随分と欲張りだなって思ってます。恐竜映画が続くのは歓迎だけど、ジュラシック・シリーズは、ここで終わりにしましょうよ。
[DVD(字幕)] 4点(2024-09-19 22:38:31)
4.  ジュラシック・ワールド/炎の王国 《ネタバレ》 
“Jurassic World: Fallen Kingdom”『没落した王国』。火山で滅びゆくイスラ・ヌブラルを表すのか、ミルズに実権を握られたロックウッド財閥を表すのか、はたまた映画の結末以降の人類を表すのか? 恐竜を逃がしたい主人公たちと、捕まえて金儲けしたい悪者たち。細部は違うけど2作目ロスト・ワールドのリブート作品ですね。もう創ってる側もマンネリズムを承知の上で創ってるというか、本作に至っては、過去作ではお約束だった“人間の手が加えられない自然の中で、悠然と生きていく恐竜たち”って描写も皆無になってしまいました。火山噴火という状況が状況だけに、仕方ない部分ではありますが、溶岩から逃げ惑う恐竜の画と、ロックウェル財閥に拘束された恐竜の画ばかりです。  オーウェンをべろべろ舐めるシノケラトプス、壁を壊す石頭スティギモロクと言った、マイナー恐竜の活躍は観ていてほっこりできました。でもそれ以外、シリーズ定番のブルーとティラノが活躍するくらいで、この作品ならではの恐竜の見どころが少ないんですね。 本作オリジナルのインドラプトルに至っては、前作のインドミナスのようなチート能力が無い代わりに、ずば抜けた魅力も、コイツならではって怖さもありません。観せ方で怖さを演出していますが、もうただの怪獣ですよ。こんな怪獣出すくらいなら、どれだけマンネリと言われても、かつて実在した恐竜の怖さを追求したほうが良かったのでは?と思います。 そして犠牲になるのが悪い側の人間ばかりというのもガッカリポイントです。恐竜たち、相手を選んで襲ってるのか?ってくらい、都合よく悪人ばかりが殺されます。  そしてついに、クローン技術を人間に使ってしまった。けど、劇中の効果の程はよく判りません。まだ小さい女の子だからというのもあるでしょうが、クローンとの違いを比較する人間の子供が出てこないからかも知れません。どうせならグレイ(前作の弟)辺りと同じ歳(前作から3年後だから14歳前後?)にして、比較共演させてこそ活きるクローン設定だったかも知れません。 ハイブリッド恐竜、飼い慣らされた恐竜(ブルー)、クローン人間。もう野生のまま生きている本物の恐竜が、単なる風景に成り下がってますね。かなりお腹いっぱいです。
[映画館(字幕)] 4点(2024-09-16 22:59:49)
5.  ジュラシック・ワールド 《ネタバレ》 
“Jurassic World”『ジュラ紀の世界』劇中のテーマパークの名前ですね。“World”には『神が創造した世界』の意味もあって、神の真似事で遺伝子組換え恐竜を創ることへの揶揄の意味もあるのかも? シリーズ3作、出せるものは出し切ったこのネタで、今さら何するの?と思ったら、リブートに近い続編でした。登場人物も舞台も状況も創り直し。でも今さら、恐竜が登場するだけでは観客は驚かない訳ですから、下地として過去3作の続きとしたんでしょう。 でも前シリーズも気がつけばもう14年(Ⅲが2001年)も前になるんですね。恐竜映画というジャンルの火を消さない意味でも、巨大生物のCG技術継承の意味でも、創られるべくして創られた続編でしょうか。  パーク→ワールドへ。アトラクションの一つ一つに22年の進化が観られます。レールを走るジープだったのがガラスの球体の乗り物に。グッズ類も細かいところまでよく出来てます。ふれあい動物園なんて良いですね。メインはインドミナスという新種で、姿が消せて、人間を騙せて、殺しを楽しむという、まぁ恐竜をベースとした怪獣です。色も白くて愛嬌がなくて不気味です。  やっぱりこういう方向かぁ…って、公開当時は想像の範囲内って思っていましたが、今回改めて観ると、人間+恐竜vsハイブリッド怪獣の構図がけっこう楽しめました。ラプトルと人間のチームでインドミナスを追跡なんてインパクトある画だったし、ラプトル4匹がオーウェンを見るシーンはゾッとしました。 そして今までチラッとしか出ていなかったティラノが、溜めに溜めてここで出るのかって場面で出てくるのはアツい。やっぱりハイブリッドなんかじゃなく生の恐竜だよ、これが観たくてこの映画観てるんだよ。  よく出来たリブートだったと思いますが、本作で初めて女性の死者(画面上初)が出ました。まぁそれは仕方ないとして、初めて人に殺される恐竜(ヘリの傭兵が翼竜を撃つ)がショックでした。何かこう、直接人の手で恐竜は殺さないっていうルールのもとに映画を創ってると思っていたものだから、あんなにアッサリ撃ってしまって、こっから先は何でもアリなんだなって思ってしまいました。
[映画館(字幕)] 6点(2024-09-06 15:25:34)
6.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 
所有するDVD(未レビュー)の中で、一番上映時間の長いのが本作でした。原作もかなりの長編小説で、大きく3編に分かれているとのことで、最初は戸惑った各時代を行ったり来たりする映画の構成の理由が、何か納得できました。ただクライマーズ・ハイも時代が行ったり来たりしたっけ。  私は、アフリカ編の前段に当たる、労働組合と会社の闘いが一番興味深かったです。ストをタテに賃上げ要求(年末4.2?まじか…)に、時代と労働者側のエネルギーを感じ取れました。また会社側の陰湿な報復人事も巨大企業らしく、特に八木の扱いがあまりに酷くて怖くなりました。会社と労働者の闘いから、会社からの個人攻撃になるんだよな、恐ろしい。会社側の御用組合を創るところも、その経緯が裏側から観られて、とても興味深かったです。  御巣鷹山編がこの映画のメインだと思いますが、主人公の恩地は遺族係なので、会社や他の労働者のための大きな活躍をしません。あの労使交渉で、労働者の正当な賃金と空の安全を確保出来た。その報復として、恩地は海外の僻地に左遷された。にも関わらず『やっぱり事故は起きました。』では、どうにもスッキリ出来ないところ。遺族会の分断を図る行天の卑劣さが増していき、じっとりとした巨大企業の闇は感じられました。 会長室編でスカッとしたいところですが、行天という人物が、この時のために悪い方に育てられた人身御供でしたね。スタートは一緒だった恩地と行天。2人は国民航空の表と裏の関係なのでしょう。 3時間超えの超大作で、飽きずに楽しめましたが、3編それぞれが違うテイストのため、一本の映画としては平坦な印象でした。
[地上波(邦画)] 5点(2024-09-06 12:01:33)
7.  ジュラシック・パークIII 《ネタバレ》 
これ3D映画だったっけ?ブラキオサウルスの顔アップや、最後のプテラノドンの飛行カットに3D映画らしさが感じられたんだけど…だとしたらこの映画のウリは“本物そのままの恐竜が、臨場感満点の3D映像で迫ってくる”だったのかも知れません。覚えてないけど。 完全にアトラクション映画になってしまったシリーズ第3弾。恐竜人気上位ランカーは前作まででほぼ出尽くした感じで、洗濯板アンキロサウルスと、見掛け倒しのケラトサウルスが登場しています。そして活躍不足だったプテラノドンを前面に出してきました。  映画としてまだまだウリが弱いと思ったのか、なんとティラノより強い恐竜を出してきました。あのスピノサウルスです!…知らねー。 私たち世代にとって、ティラノ=最強は揺るぎない事実です。「恐竜の王さま・ティラノサウルス」兄が持っていた恐竜大百科にもそう書いてました。そのティラノがタイマン勝負で負けるなんて…こんな後乗せサクサク感満点の、陸戦用百式改みたいな、ボクが考えた最強恐竜みたいなの(実在はするみたいです)出されても、どう反応して良いのか困ります。  ラプトルの発声器、プテラノドンの鳥カゴと観ごたえのあるシーンも幾つか。前作からヒロイン(かな?)がウザいのを継承。 やっとの思いで海岸に出たら米軍がズラリと並んでるのは、映画というよりアトラクションの終わり方だよなぁ。上映時間は前作のサイトB編とほぼ同じで、適度に疲れない長さでした。
[映画館(字幕)] 5点(2024-08-31 17:22:50)
8.  ジュラシック・パーク 《ネタバレ》 
“Jurassic Park”『ジュラ紀遊園地』。 この当時、私たちの身近なCGといえば、ようやくバーチャファイターが誕生し、ポリゴンのカクカクしたキャラに驚いていた時代、映画はさらに革新的な映像を生み出していました。ターミネーター2の液体金属描写には驚きましたが、まさかCGとアニマトリクスで、まるで生きているような恐竜そのものが創れるなんて、思いもしませんでした。懐中電灯に照らされたTレックスの瞳孔が収縮した瞬間、人類はどんな映像でも創り出せる領域に達しました。  私が子供の頃の恐竜は、トカゲやワニの祖先として、ゴジラのように直立して、二本の足で尻尾を引きずって歩くものと思われていました。この映画の時代、鳥の祖先として頭を前に突き出し、尻尾を立てた、鳥のような姿勢で、軽快に走る姿はとても美しく、恐竜の研究も、10年そこらで大幅に進んだことを感じさせくれました。また琥珀に飲まれた蚊の血液から…というのも凄くリアリティを感じました。デジカメで撮った膨大な画像や映像データが、爪の先くらいのマイクロSDカードに入ってしまう不思議さと同じくらいのリアリティ。時代が進めば本当に実現出来るんじゃないかな。  本作は一番最初のCG恐竜映画にして、観たい恐竜映像のほぼ全てが詰め込まれていたと思います。まるで生きている恐竜を観る驚き。あれから30年以上経っていますが、その後どんなに進んだ技術で創られた恐竜映像でも、本作のインパクトを超えるものは、今のところ創る事が出来てませんよね。敢えて足りない部分を言えば、本作に登場していない、ステゴサウルスとかプテラノドンなんかを観てみたいかな?くらいでしょうか?他には…あまり思いつきません。 当初は、超有名なティラノサウルスより、聞いたことない小型のヴェロキラプトルの方が目立ってた事に疑問を感じてましたが、今思うと、ティラノがずっとメインだと、ストーリーも大味になってたかなって思います。建物に入ったラプトルが足の爪でカンカンとリズムを取る(?)のが妙に生々しく感じました。 それでも最後はキング・オブ・恐竜・ティラノで〆る所がニクイです。そう、観客は小さい頃に夢中になった恐竜を観に来てるんだから。やっぱ最後はティラノでなくちゃ。  体感型映画だけに、ストーリーはオマケに感じていましたが、子ども嫌いのグラント博士の心境の変化に注目です。最初化石の発掘をつじて、会うことのない恐竜に思いを馳せ、ラプトルの爪の化石を大事に持っています。その後パークに来て、自然に逆らって人間が創り出した恐竜を目にし、ラプトルの爪に価値を感じなくなり、捨ててしまいます。冒険が終わり、グラントは満面の笑みをエリーに向けます。神によって人間が創ることを許された生命こそ、いまグラントが両手に抱えている“子供”なんですね。見事です。
[地上波(吹替)] 9点(2024-08-21 23:41:41)(良:1票)
9.  史上最大の作戦 《ネタバレ》 
“The Longest Day( Must Have An End.)”ロンメル元帥が上陸作戦が行われる日を称して『一番長い日になるだろう』といった言葉から。また『(どんなに)長い一日(にも、必ず終わりは来る。)』って、ことわざの一部でもあるようです。連合国軍の大規模反攻作戦で、第二次世界大戦のターニングポイントになった、ノルマンディ上陸作戦の映画化です。  この時代、第二次大戦を扱った映画が多数創られていますが、米英独仏の各国豪華俳優陣の共演、米英独それぞれのパートをそれぞれの国の監督が撮影、軍の協力で予算以上の大規模な撮影を可能にしたなど、上映時間の長さもあって、まさに当時の戦争映画の集大成のような作品です。  落下傘が教会に引っ掛かって死んだふりしてやり過ごした兵隊、味方識別のクリケットの悲劇、塀を挟んですれ違う敵味方、たった2機の戦闘機で出撃、自宅を艦砲射撃されて歓喜するフランス人などなど、史実・創作入り混じって、当時の戦争映画らしい大小の珍エピソードがいっぱい出てきます。 圧巻は自由フランス軍のスウォード・ビーチ攻略戦の長回し空撮。行軍に合わせた着弾と爆発のタイミングが絶妙。カメラが180°回転し、橋を渡った兵士を追う機銃掃射。丘の上からも降りてくる兵士。独軍の要塞と化したカジノビルの屋上までを収める。今の目で観てもかなりの臨場感が感じられます。  当時の戦争映画は反戦色がほとんど無く、西部劇同様の娯楽色のほうが強かったんでしょう。殺し合いをしているのに痛みは感じにくいです。また題材も“軍隊同士が戦場で戦闘する”のがメインで、そこに住む武器を持たない市民が犠牲になる様子はほぼ描かれません。 昔はたくさん創られていた、戦闘シーンの格好良さがウリの戦争映画。映画界にも軍(スポンサー)にも、お互いにWIN-WINの関係だったんでしょうね。
[ビデオ(字幕)] 6点(2024-08-18 20:59:57)
10.  13日の金曜日(1980) 《ネタバレ》 
“FRIDAY THE 13TH”邦題ままでいいけど『金曜日・13番目』っぽい。 キリストが磔刑されたのが金曜日で、裏切り者のユダは13番目の弟子。それらの組み合わせで、西洋では古くから“不吉な日”とされているそう。この日以外で『〇〇日の◯曜日』って特定日は思いつかないものね。 13金シリーズは、子供の頃しょっちゅうテレビで流れていた印象があります。お陰さまで13日(金)となると、怖いことが起きそうで1日中ドキドキしていたし、ホッケーマスクは殺人鬼が被るものだし、ジェイソンって名前の人は=殺人鬼だし… シリーズのどれも“湖でキャンプする若者が殺人鬼に次々殺される”って同じような内容でしたね。観た順番とか記憶は曖昧ですが、この1作目は、シリーズ何作品か観た後に観てます。そのため『殺人鬼=ジェイソンじゃない!?』事が新鮮だったのと、最後のシーンは、見事にビックリしたものです。  本作と本シリーズは'80年代を代表するスプラッター・ホラー映画です。でも次々と人が殺されるけど、怖いか?目を背けたくなるか?というと、案外耐えられます。私にホラー耐性がついたのと、本作の殺す瞬間が、サクッと一瞬で終わるからかもしれません。当時から『悪魔のいけにえ』のように、もっと長時間、生々しく息苦しい殺人描写の映画もありましたから、それに比べると、そんなに恐くはありません。むしろ当時の特撮技術(創意工夫)に感心しながら、楽しく観られました。 過去の有名ホラー作品からのリスペクトが強く出ているため、元ネタが解ると“まんまやん”ってちょっとガッカリしてしまいますが、後のマンネリ長期シリーズの原点と思うと、「最初は色々工夫していたんだな」って、むしろ好意的に受け止められます。  そして本作はもともと『シリーズ化を想定していない単体作品』でした。単体作品として考えた場合、ジェイソン・ボーヒーズは23年前に溺れ死んだ可哀想な少年で、今もクリスタルレイクの底に沈んだままだそうです。 1の主なスタッフは、2以降のシリーズには参加してないんですね。13金と言えばホッケーマスクの殺人鬼ジェイソンで有名。だけど記念すべき1作目を生み出したスタッフは、殺人鬼ジェイソンとは無関係という、ちょっと不思議な関係になります。  劇中の独特な効果音。私が子供の頃は『チッチッチッ!ハッハッハ!』って言ってました。DVDの特典の、スタッフ(マンフレディーニ)の話によると『キッキッキ!マッマッマ!=Kill Mom(ママ殺して)』だそうです。う~んでも、ジェイソンの乗り移ったパメラは「Kill Her Mommy Kill Her!」って言ってるから『キッキッキ!ハッハッハ!=Kill Her(あの女を殺して)』が正しいんじゃないかな?って思ったりします。思春期真っ盛り、11歳のジェイソン少年の、美人指導員への片想い。イケメン指導員との見てはいけない関係を目撃してからの逆恨みがモトで、それでイチャイチャしてる男女から率先して殺すようになったのかなぁ?って。妄想ですが。
[地上波(吹替)] 5点(2024-08-03 00:37:14)
11.  白い巨塔 《ネタバレ》 
今から20年前の年末に人生初の入院を経験。その時、唐沢寿明の白い巨塔が一挙放送されていて、38度超えの高熱にうなされながらもイッキ観してしまいました。内容はうろ覚えですが、先の展開が気になって、ベッドに横になったまま、テレビにかじり付いてました。入院中ず~っとアメイジング・グレイスが頭の中で鳴り響いてました。  いきなり実際の手術シーンから始まるのはかなりショッキングでした。モノクロだったから耐えられたけど、あんなにスパッと人の体にメスを入れるって、凄い度胸だなって感心させられました。外科医って凄い職業だな… 話は逸れるけど、'62年の椿三十郎の、あの大量の血しぶきから、以降の映画の残酷描写が映画の話題作りの一つに、大きな影響を与えたそうです。そう考えると、本作のこの生々しい手術シーンも、恐らくは当時の観客に大きなインパクトを与えたことと思います。 もちろんそれが売りの映画ではなく、教授の座を賭けた醜い争いのドラマ自体も、充分に面白かったです。  大学病院の裏側、財前も東教授も教授というポジションに対し執拗な執着を見せる。不健全な票の奪い合いが生々しい。温厚な菊川を追い込む脅迫手段も、「全員で非協力」というドロドロした内側を垣間見せる粘っこさ。あぁ、会社内の派閥の気持ち悪さはどこも一緒だわ。 裁判では里見と大河内の正論にスカッとした気持ちで観てたけど、鑑定結果と偽証でズブズブと飲み込まれていく、この後味の悪さ。一握りの勇気と真っ当な正義感では変えられない、世の中という仕組みが恐ろしい。  入院中、唐沢財前の後半のセリフ「無念だ」を覚えていたけど、本作は150分。映画としては長編ですが、私が観たドラマの、だいたい半分までの物語でした。でも、観ごたえのある映画でした。この時代の空気、このキャスト、このスケールで、この続きを観て、最後スカッとしたいところ。…いや結末も財前に感情移入してしまって、そんなにスカッとはしなかったっけ?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2024-07-06 19:07:09)
12.  12人の優しい日本人 《ネタバレ》 
数年前に先にコッチ観て、先日ルメットのホンモノを観て、またコッチ観てみました。どっちも面白かったです。 12人がそれぞれ意見を出して、有罪・無罪が二転三転する。もう2~3作品バリエーションが作れそうな気がするくらい、シチュエーション自体が面白いんですね。コレもし、タイトルがここまで思いっきりでなかったら、私なんて鬼の首取ったかのごとくパクり認定レビューしてたかもしれません。  日本は裁判員制度が導入されていますが、公開当時は映画のような制度はなく、“もしも日本に陪審員制度が導入されていたら?”といった、いわゆるSFシミュレーション作品だったとも言えます。タイトルの『男』の部分を『日本人』にしているのは、女性も参加しているのはもちろん、『日本は人種問題を考えなくていい、一億総中流(貧富の差が少ない)の、単一民族国家だから。』というタイトルジョークだったんでしょう。今だとちょっと問題に思われる可能性がありますが、'91年の洒落たタイトルだと思います。  真相の解明はないので、彼らの議論に突っ込んでも仕方ない作品ですので、12人の話し合いを静かに見守ります。陪審員13号の私としては、目撃者のおばさんが「死んじゃえー!」って聞いていたことに違和感を感じました。彼女の耳が信用できず、クラクションの信憑性が疑わしいのに、どうして「死んじゃえー!」はキッチリ覚えていたのか?『死ねー!とか殺してやるー!とかナントカ言ってました。』ならともかく、ハッキリと「死んじゃえー!」は、ネタ振りとして出来すぎじゃないでしょーか?※いや作品へのツッコミではなくこんなセリフで映画に参加したいなって思っただけです。  この当時日本が陪審員制度導入に動いていたかは知りませんが、このSF作品は、タイトルの『優しい』が示す通り、一般の日本人には、心を鬼にした判決は出せないのでは?という答えを出していたように思えます。陪審員8号の「だけど、ホンネ言うと彼女、殺してるんですよね~?」なんてとてもリアルです。そして陪審員長の過去の経験談は、有罪に一票を入れるその先を想像させます。 ルメットの作品では純粋に少年が有罪か無罪かを考え、本作では自分が、有罪と思えた時に有罪と言えるかどうか?を考えさせられました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2024-06-17 20:09:03)
13.  JFK 《ネタバレ》 
“JFK”ケネディ元大統領と呼んでいた当時、少なくとも日本国内で、このイニシャルで誰を意味するのかを根付かせたタイトルでした。暗殺の映像は、テレビの『カメラが捉えた決定的瞬間』とかで何度か観ていました。確か初の衛星生中継で、日本でも暗殺事件が放送されたって言うから、ザプルーダー・フィルムがお茶の間でババーンと流れたものだと思ってましたよ、私は。  ネットの普及する前の時代、自ら劇場に足を運んで観に行く映画は、小さな子供も観る規制だらけのテレビより、より突っ込んだ真実に触れられる貴重な媒体でもありました。映画に先駆け『ケネディ大統領は政府に暗殺された…らしい』なんて陰謀論は聞いていたと思いますが、具体的に何がどう行われたのか?は、この映画で知りました。  3時間にも及ぶ映画は、暗殺が行われた当時から再現していきます。まず型通りの捜査をして、その3年後から暗殺事件としてドラマが動き出します。そして最後の約1時間を使った、クレイ・ショー裁判の迫力たるや、圧巻の一言です。公開当時はこの裁判シーンの模型の精密さに驚いていました。記録映像と綿密な証言から再現されたであろうジオラマ模型は、どこにどんな人物がいたのか、服の色から立ち位置まで、ここまで再現するのかという、捜査に対する執念に似たものを感じさせました。 そして“魔法の銃弾”のデタラメさ。実行がほぼ不可能なオズワルドのその日の足取り。テレビで観た暗殺の瞬間を、何度も何度も繰り返し流すことで、映画を観ている私も一緒に検証する感覚。数秒のフィルムの裏で1963年11月22日12時30分に何が起きたのか。それを3時間掛けて考えるというのは、とても貴重な体験でした。  先日、『13デイズ』を観てCGの再現度と可能性に驚いたばかりですが、改めてCG導入前の本作を観ると'60年代の“再現”も凄かったです。当時の車を配置するのは解りやすい記号ですが、服装、髪型、建造物と何処にもスキがありません。オズワルドの犯行再現で、教科書倉庫ビルからライフルを構えるギャリソン。ディーリー・プラザの俯瞰図の'60年代っぽさは、どれだけお金掛かってるんだろう?と心配になるほどです。この俯瞰図がしっかり再現されているから、裁判でのジオラマ模型の再現度がより引き立ってるんでしょうね。
[映画館(字幕)] 8点(2024-06-16 15:47:33)
14.  死霊のはらわたII 《ネタバレ》 
“EVIL DEAD 2-DEAD BY DAWN”『夜明けまでに死んでた』。前作より面白いです。でもそういう意味じゃねぇ。 どうしよう?監督は笑わせる気マンマンよ?死者の書の謎とか悪霊の正体とか残ってるから、考古学者ファミリーを登場させたのは良かったと思います。13金みたく同じような若者のパーティだとマンネリに感じてしまうからね。前作のエンディングの続きが観られると思ったら、微妙に別な話なのね。なんかどうしてあの5人で山荘に来たのかが気になってたのに、そこは語られず終い。でも本作の意図はブルース・キャンベルの顔芸を堪能する作品だろうから、あんまり深堀りしても仕方ないんだろうな…  スプラッターホラー映画真っ盛りの'80年代。私は13金とエルム街、ハロウィンくらいしか観たこと無かったんです。本作はタイトルもパッケージも怖そうじゃないですか。ネットとかのない時代、本作に笑い要素が入ってるなんて思わなかったんですよ。どうせならバタリアンくらい解りやすくしてほしかったなぁ。意思を持った右手とアッシュの戦いは、本作がホラーだってことを忘れさせます。 サイコガンよろしく右腕チェーンソー(人体+機械式の武器)は、後の遊び好きな映画監督に多大なる影響を与えたと思います。  こういう映画は家で一人で深夜に電気消してみる作品ですねぇ。これリアルタイムに劇場で、特にデートとかで観てたら、どう反応したら良いか、困ったんじゃないかな。盛り上げ目的で怖い映画観ようとしたのに、監督の意図が解っちゃって、笑いそうになったら。女なら血を観て怖がらないと悪いかな?って。映画のあとの喫茶店で「映画どうだった?」なんて投げっぱなしで感想振られたら、なんて答えたらいい?「怖かったぁ~」ってタテマエ?「笑えたんだけど」ってホンネ?答え次第では、終わるよ? 予想の斜め上を行ったラストは、某有名シリーズを連想させました。展開が唐突で「…え?」って、なっちゃいますよね。でも思い入れのあるだろう自分の作品を、こんな風にまとめられるライミ監督は、素敵です。
[DVD(字幕)] 6点(2024-06-16 12:10:41)
15.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
“12 Angry Men”邦題まま。ホントにもう、よく出来ています。低予算で場面展開も少ないのに、ここまで引き込ませるのは、やっぱり脚本の上手さかな。アメリカの裁判映画でも、陪審の合議が注目される作品はあまり思い当たらず、“弁護人と検察官が熱弁を交わした結果≒裁判の結果。”陪審員の仕事は裁判の総まとめであり確認作業のように思える。裁判を終わりまで観て、少年は有罪だと思う11人。合理的な疑いがあるという陪審員8番が取り出したナイフで、あれほど自信を持っていた有罪の確信がガタガタと崩れていく。  私がもし参加していたなら、おそらく、一番声の大きい人(有罪に固執する3番かな)と結論がほぼ一緒なら、わざわざ声は上げないかもしれません。本作でも8番が無罪を主張したことがキッカケで、それぞれの陪審員が思っていたこと(有罪と決めつけるには疑問に思う点)を口に出し、議論が練られていきました。多数の意見に流されない、8番の勇気は見習いたいですね。 またあの空間では社会的地位は関係なく、先入観と差別意識から声高に自己主張する10番が、全員から総スカンを食らうところ。陪審員それぞれが自分の意志で起こしたアクションとして、とても印象深かったです。  ほぼ全編密室の作品ですが、時間経過の表現が上手いです。評決のあと7番がナイターを観に行くことが、無意識にこの審議のタイムリミット(=終わったらみんな開放される)を意識させます。議論が長引き、夕食の出前を取るかなんて話題も、予想に反して長引いた審議の白熱具合が伝わります。天候の変化も意図的なものでしょう。蒸し暑い午後は評決をまとめる鬱陶しさを感じさせ、議論に熱が入るとともに激しい夕立。そして最後、雨は上がる。議論がどれだけ白熱しようとも、エンディングにもあった通り、ここを出れば陪審員の12人は、ただの他人同士なんですよね。
[DVD(字幕)] 9点(2024-06-10 22:59:34)(良:1票)
16.  死霊のはらわた(1981) 《ネタバレ》 
“The Evil Dead”『邪悪な死者』。若干21歳のサム・ライミくんが、映画好きな仲間たちとワイワイ…というか結構真剣に創った自主制作ホラー映画です。ストーリーはあってないようなものだし、お金も掛かってないのもご覧の通り。知恵を絞った特殊メイクとグロ表現。美女の裸体に絡む木の枝の動きや、霧深い森の奥で地を這うような滑らかなカメラワークを堪能しましょう。  画面外から急に飛び出してきたりはビックリするし、足首に鉛筆を刺す特撮は痛そうでした。子供の頃にリアルタイムに観ていたらきっと怖かったでしょうけど、怖がるよりも、特殊メイクの労力を想像し、手作りの温かさを感じてしまいます。この時代のホラーには、本気の怖さを求めるものじゃないんですよね。ガチで怖い映画が総合格闘技だとすると、このタイプのホラーはプロレスでしょうか。 プロレスだけに、本棚に挟まれて動けないアッシュにハラハラするとか、地下室からちょくちょく顔を出してるシェリルを怖がったりとか、観る側も正しい楽しみ方で臨みましょう。  人間関係の殆ど語られないこの映画、なんでアッシュはお姉ちゃん連れてきたんでしょうね?2組のカップルなら解るんですが…謎。 この死霊とやら、ゾンビではなく憑依した悪霊なんでしょう。リンダが一瞬マトモになったことから、あの場所から逃げることができれば、みんな元に戻った可能性があります。 死霊に取り憑かれて地下室に閉じ込められるシェリル。ずっと扉をバタバタしてるのは、きっと仲間(死霊)を助けようとしてたんでしょうね。悪霊シェリーをバラバラにしたスコット。普通なら警察を呼ぶ事態ですが、アッシュは埋めるのを手伝います。兄弟揃って仲間思いですね。小屋から引きずり出したリンダの、めくれ上がったスカートを直してやるアッシュの紳士っぷりも見逃せないポイントです。小屋の前にお墓を作るの、小屋のオーナーはいい迷惑だわ。 しかし死霊に取り憑かれた彼女ら、爪の攻撃力はちょっと上がってるっぽいけど、知能が下がってるから、相対的に人間の時と戦闘力が大して変わらないのは如何なものか。 恐怖の夜が明けたら無事生還のサイン…というお約束をブチ破るバッドエンド(というお約束)。殺されたのか?取り憑かれたのか…?でもみんな死んだあとに取り憑かれても、手持ち無沙汰感ハンパない。
[DVD(字幕)] 6点(2024-06-01 17:51:05)
17.  ジェイコブス・ラダー(1990) 《ネタバレ》 
“Jacob's Ladder”『ヤコブの梯子』。旧約聖書の天国に伸びる梯子。キリスト教に明るい人にはタイトルでネタバレしてるけど、欧米の人はこの映画をどう観てたのかなぁ?そんなタイトルの意味なんか知らない私は、普通に戦争後遺症に苦しむベトナム帰還兵のお話だと思って観ていました。  出口が塞がれた地下鉄。揺れる電球の音。地下鉄なのに窓の外を見てる人々。極め付きは高速首振りヘッド。まるで悪夢を見ているような、“こんなのを見てしまったら絶対怖いよな”って表現がとても上手いです。この当時は、血みどろのスプラッターや、急に画面に出てくるサプライズ系のホラー映画がやや下火となり、新しい怖さの表現が求められていたように思います。本作のゾッとする怖さは、恐らくドラッグ接種による幻覚作用を映像化したものだと思いますが、それがどこか、日本のリングなどのような“呪い”っぽい怖さをイメージさせます。  結末から逆算すると、当時の米軍の化学兵器による副作用の恐ろしさがじわじわ感じられました。しかし、あんな恐ろしい体験を延々と味わった結末が…なんて、あまりに救いが無さ過ぎる。救いが無いからこそ、最後の最後にジェイコブの脳内が“有り得ない存在=生きているゲイブ”を作り出したんでしょうか。ジェイコブが見続けた幻覚の中でさえ、既に死んだと認識していたゲイブ。おかしな話ですが、未知の化学兵器に対する人間の防衛本能が、死の間際に生み出したものだとしたら、とても切なく神秘的ですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-05-08 22:43:47)
18.  静かな生活 《ネタバレ》 
伊丹監督らしくない伊丹映画でした。監督が今まで積み重ねてきた方程式を壊した作品かもしれません。 主役が佐伯日菜子に渡部篤郎と、まだ俳優経験の浅い若い2人で、今までの伊丹作品の常連だったベテラン山崎努も宮本信子も、一歩引いた立ち位置で作品に参加しています。 同級生であり義弟である大江健三郎の小説を映画化したものなので、もしかしたら、原作の良さを引き出せるように、監督自身の持ち味を出さないように配慮して映画化したのかもしれません。それくらい伊丹作品っぽくなく、大江作品の映画化って感じです。  とはいえ私は大江さんの本は読んだことないので、イメージも何もありませんが。どこまでが創作か解りませんが、マーちゃんとイーヨーが大江さんの実の子供たちだと思うと、扱っているテーマが障害者の性だったり、性暴力だったりと、中々赤裸々な内容だったと思います。 最初は、障害者への差別を交えつつ、両親不在の兄妹の周りで起こる、ちょっと不思議な事件を、ゆるーく解決していくほのぼの系ミステリーだと思いました。家の門に置かれる水の瓶と、それを捨てずに貯めてるマーちゃんのシュールさ。少女を襲う渡辺哲はショックだったけど、ちょっと新感覚な謎解きで面白かったです。そう、後の『アメリ』のような期待感がありました。  悪い男とフェードアウトするお天気お姉さん。「どうしてもボランティアになっちゃう」は、残酷だけど飾らない本音ですね。このお姉さんがイーヨーを「世界で一番魂の綺麗な人」と表現しますが…友人がよく『野良猫って目付き悪いけど、飼い猫にすると徐々にフニャンって目付きになるんだよ』と言います。餌の心配が無くなると、猫も穏やかな顔になるんですね。 イーヨーはお金持ちの両親と面倒見の良い優しい妹に囲まれ、時間に縛られることなく、作曲とか水泳とか自由に好きなことをして生きていけます。 時たま他人から残酷な言葉を掛けられるにしても、一般家庭で暮らす障害者は、イーヨーのように手厚いフォローをしてくれる人がいません。これだけ恵まれた環境であれば、世界一魂が綺麗になっても不思議では無いのかもしれません。  さて、中盤から新井君の小説による風評被害と彼の本性の話になり、序盤とは作品の色がガラッと変わります。小説の襲われる女性があまりに残酷。アメリ風作品は普通の生々しいサスペンスになります。 マーちゃんも可哀想だけど、そこに至る経緯が、アレ?って感じ。団藤さんに暴力ふるった後、何事もなかったかのようにプールに来てる新井は変だし、それ知ってて水泳習いに行く兄妹も変。そしてマーちゃんなぜ新井の部屋に入ってしまう?どうしてその事件、絵に描いて残す?というか、話をこっちの方向に持っていくなら、序盤のイーヨーの性問題とか必要だったのかな… う~ん…あ、あとポーランド大使館員への執拗なビラ配りに結構な時間を割くとか、色んな意味で私とは住む世界が違うなぁって、思いました。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2024-04-24 01:27:58)
19.  志乃ちゃんは自分の名前が言えない 《ネタバレ》 
人と話すのは問題ないけど、大勢の人の前で話すのが大の苦手です。呼吸が詰まって言葉が出なくなり、何を言おうとしたのか忘れてしまいます。少し前まで全然話せてたのになぁ。出来たことが出来なくなって、結構辛いです。 なので、もし私のクラスに志乃のような子がいたら、きっと見ている私も辛くなってしまう。下手したら『私の方がまだマシ』なんて、彼女を下に見ていたかもしれません。  加代役の子の撮り方が上手かったと思いました。志乃と話すとき、まるでお姉さんのように引っ張っていくと言いますか、加代が志乃をリードしていきます。生活するうえで歌が下手なのは隠せるけど、人前で話すのは誤魔化しようがありません。そんな志乃に対する自信が、加代の表情にも出ていました。それがカラオケで昔の同級生にバッタリ出会ったときの顔。あの、弱みを握られた不安気な顔。自分を守るので精一杯な顔がとても良かったです。  音痴を隠して生きてきた加代を、吃音を誤魔化せずに生きてきた志乃が助ける。2人で目標に向かって動き出す。気持ちの良い二人三脚でした。 それをなぁ、菊池がなぁ… 加代ほど友達作りの上手くない志乃が、しのかよを辞めたくなる気持ちが痛いくらいわかります。マイナスにマイナスを掛けるとプラスになるけど、そこにまたマイナスを掛けるとマイナスになってしまう。それでも、2人が出会う以前よりはちょっぴり前進して終わる。 押見修造作品らしい、決してサクセスストーリーとは言えない、見終わった後スカッとするでもない、リアルな青春の切り抜き方でした。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2024-04-04 23:11:41)
20.  新・明日に向って撃て! 《ネタバレ》 
“Butch and Sundance: The Early Days”『ブッチとサンダンス:若かりし日々』。前作のタイトルが2人のフルネームだったのに対し、名前だけになってます。 公開から10年後の続編、しかも前日譚だから役者さんも変わってます。トム・ベレンジャーがポール・ニューマンに似てるか?なんて考えたことなかったけど、まぁ案外違和感は感じません。  ブッチもキッドも実在した人物だけど、前作で作り上げられた陽気な義賊といったイメージが強く、その創られたキャラクターをモトに、さらに軽い性格にしたように観える。 若いだけに軽くても良いんだけど、ストーリーは行き当たりばったり。出所したらO.Cに仲間を売ったと勘違いされ、ひょんな事からサンダンスと組んで、雪道をスキー履いて血清を届け、ブッチの家に寝泊まりして…このツギハギの集合体のようなお話は、どこに向かってるんだろう?って、あの有名な『明日に向かって撃て!』に向かってるから観ていられる内容。最後が列車強盗だから何となく納得して終わる。  この当時、相当下火になっていたであろう西部劇映画。誰もが知る名作のキャラを出して、今風の軽いノリの青春映画にしたら、こんな風になりました。って感じ。…ネガティブな書き方になってしまっているかもだけど、前作に特段の思い入れがなければ、また気持ちをリセットして観ることができれば、案外普通に楽しめる作品でした。暇な深夜にボ~~~ッと観るのに最適。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-01-03 23:06:17)
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