Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さんの口コミ一覧。2ページ目
ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234
投稿日付順1234
変更日付順1234
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  スノーピアサー 《ネタバレ》 
ポン・ジュノが監督し、それをパク・チャヌクがプロデューサーとして援護するというものすごい体制で製作された作品だけあって、映画には終始ドえらい気合が満ち溢れていて、一瞬足りとも目を離させません。ハリウッド製SF映画の外面を持ちながらも、中身にあるのはバリバリの韓国製バイオレンス。銃ではなく斧やナイフを武器に殺し合いをするという点に本作の個性があります。また、アクションに入る前の「溜め」の演出も素晴らしく、さらには殺し合いの途中に新年を祝い始める等のパンチの効いたユーモアも楽しく、少なくとも前半部分は、1年間に数本出会えるか出会えないかレベルの面白いアクション映画として仕上がっています。。。 問題は後半部分。「あんたらが起こした革命は、我々が考え出したシステムの一部だったんだよ」と、創造主・エド・ハリスから『マトリックス/リローデッド』みたいな告白を受けた辺りから、映画は訳のわからん方向へと走り出します。今までバイオレンス映画としてやってきた映画が、ここからいきなり宗教的・SF的方向へと舵を切り始めるのですが、SFをやるに足る素地がこの映画にはなかったので、これを眺める観客はポカーンとさせられてしまいます。。。 この映画の基本設定はボロボロです。スノーピアサーが永久機関を持つにしても、休みなく走っていれば車輪や車体は摩耗するし、何年も野ざらし状態の線路だって走れる状態にはないはず。そもそも、スノーピアサーが地球一周旅行を続けてることの理由もよくわからないし(どこかに停車している方が安全なのでは?)、疑問は尽きることがありません。それでも前半部分では、この映画において設定とはあってないようなもので、出てくる画を楽しめばそれでいいのだと納得しながら見ることができたのですが、エド・ハリスが分かったような分からんようなことを言い始める後半部分になると、設定の弱さが一気に気になり始めます。だいたい、あのカースト社会自体が意味不明。最後尾の人間は過酷な労働をさせられているわけでもなく、ただマズイ飯をもらって生かされているだけ。スノーピアサーという世界において、彼らの生にはどんな意味があるのかがよく分からないので、エド・ハリスが世界を語り始めると、途端に設定の抱える弱さが露呈してしまうのです。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-06-09 01:31:47)
22.  スリーデイズ
『ミリオンダラー・ベイビー』で映画界に進出後、『007/カジノロワイヤル』までは飛ぶ鳥を落とす勢いだったポール・ハギス作品ということで過剰な期待があったことの裏返しか、公開当時、本作は批評面でも興行面でも苦戦を強いられたのですが、これが十分に面白い出来でした。。。 小品だからこそ、本作ではハギスによる鮮やかなストーリーテリングを楽しむことができます。妻の逮捕により幸せな家庭生活が破壊された。しかも、物的証拠はすべて妻の有罪を示しており、合法的な手段で妻を取り戻すことは困難な状況となっている。観客に主人公家族に対する愛着を抱かせると同時に、常識人である主人公が脱獄という異常な手段を選ばざるをえなくなるまでの過程をわずか30分で描ききるという手際の良さ。また、リーアム・ニーソン演じる脱獄のプロを登場させ、これからやろうとしていることがいかに困難で無謀なことであるかを懇切丁寧に説明させるという見事な煽り。さらには、クワイ・ガン・ジンばりの渋いマスターに見えたニーソンが、去り際に「で、今日の手間賃は持って来たの?」と言って、主人公の財布から無理やり札を掴み取って行くという下品さも見せることで、これから向かおうとしているのは甘いヒロイズムの世界ではなく、野蛮なアウトローの世界であるということもきちんと理解させる。本作の情報整理は神がかり的なレベルに達しています。。。 脱獄計画が始まってからは、終始イヤ~な汗をかかされます。小市民丸出しの主人公が、明らかに不慣れな言動や仕草でヤクザの世界に足を踏み入れたり、公安施設に細工をしたりするのだから、見ている側はハラハラさせられっぱなしなのです。『プルーフ・オブ・ライフ』ではプロの傭兵を演じていたラッセル・クロウが、本作では見事に小市民になりきっています。この人の演技が顧みられることは少ないのですが、そこは腐ってもオスカー経験者、このカメレオンぶりは驚異的ではないかと思います。。。 3日というタイムリミットが唐突に設定されて以降の素早い展開も素晴らしいと感じました。主人公の脱獄準備の過程を詳細に描きながらも、具体的な脱獄計画については意図的に触れてこなかったという脚本上の仕掛けがここで有効に活かされ、最後の最後までどう転ぶか分からないというスリルを味わわされるのです。熟練した職人の仕事は素晴らしい、そんなことを再認識させられる映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2014-03-01 02:06:08)(良:4票)
23.  スプリング・ブレイカーズ 《ネタバレ》 
ハーモニー・コリン作品ということで当然普通の映画ではないわけで、それなりの心構えをして鑑賞したのですが、それでもかなり退屈させられました。。。 素晴らしい場面はいくつかあります。今やすっかりダサくなったブリトニー・スピアーズをバックに感傷的な場面を撮るというセンスには唸らされたし、会話の場面をモノローグのように見せるという工夫も素晴らしいと感じました。表面的には仲間だ何だと言ってるが、結局は自分をどう表現するかが重要で、他人は眼中にないという若い人達の心理(真理)をうまく突いた映像的表現だなと。全体的な映像美も素晴らしく、光を用いた表現は芸術的なレベルに達しているのですが、マイケル・ベイ作品のようなウザさがあるのもまた事実。全編をトリッキーな映像で固めすぎていて、目も頭も疲れてしまうのです。同じ場面を何度も何度も繰り返す編集にしても、たまにやればこれはこれで効果的だと思うのですが、全編でやってしまうので見ていてイライラしてきます。早く話を進めなさいよと。。。 この映画を見ていて感じたのは、ハーモニー・コリンは青春を楽しめなかった一人なんだろうなということです。乱痴気騒ぎでハメを外しすぎると、警察やヤクザの世界のお世話になるよという、心配性のおばあちゃんみたいな主張が核にあるのですから。作風はド派手でインモラルだけど、中身は意外と古風なのねと、少し微笑ましく感じてしまいました。
[DVD(吹替)] 4点(2014-02-27 01:28:59)
24.  スピード・レーサー
1967年のオリジナル版シリーズも、1997年のリメイク版シリーズもどちらも未見。ということで特に思い入れも先入観もなく本作を鑑賞したのですが、メジャースタジオが1億ドルもの予算を投入した作品とは到底思えないブっ飛んだ内容には驚かされました。。。 コミックの実写化企画は数あれど、アニメの実写化企画と言えば他に『トランスフォーマー』と『G.I.ジョー』くらいしか見当たらず、しかもその2作は、着想こそアニメに求めていても内容は通常のSFアクションとして組み立てられていたことを考えると、アニメの完全再現にこだわった本作は非常にユニークな存在であったと言えます。その再現の度合は常軌を逸したレベルに達しており、人間とチンパンジー以外はほぼすべてが作り物、しかも60年代特有のケバケバしい色調が画面を席巻していてカッコよさとも無縁という、「一体、誰がこの映画を楽しむんだ?」と頭を抱えたくなるような壮絶な出来となっています。主人公が乗るマッハ号はオフロードもオンロードもOKで、しかもプライベートでの乗用車としても使用されていたり、車がゴムまりのようにポンポン飛び跳ねたりと、どう考えてもおかしな点まで一切の修正を加えず丸ごと実写化。「現代風にリメイク」という甘っちょろい言葉に逃げず、ストイックなまでに映画を作り込んだ監督達の執念には圧倒されました。。。 本作の1週間前には『アイアンマン』が公開されたという不運もあって興行成績は惨敗でしたが、そりゃ、ここまでやれば当然でしょう。監督の意図を理解しながら見なければヘンな映画としか映らないのですから、普通の観客ではちょっと付いて来られなかったと思います。ただし、特異なビジュアルで思考停止せず冷静に内容を評価すれば、その出来は決して悪くなかったと思います。レース場面と回想のカットバックによりアクションとドラマを融合させた序盤、『デス・レース2000年』のようなチープな展開で観客を和ませた中盤、そして、主人公一人で敵の総本山へ殴り込むクライマックスと、本編は綺麗に色分けされており、しかも、そのいずれもが高いレベルでまとめられています。定番とはいえ、クライマックスのゴール場面では大興奮させられましたとも。バカバカしいビジュアルの一方で、M&Aや株価操作といった子供向けとは思えない用語が出て来たり、やたら上映時間が長いといった歪さも含めて、私は愛すべき映画だと感じました。
[映画館(字幕)] 8点(2014-01-20 01:18:23)
25.  スターダスト(2007)
『ロード・オブ・ザ・リング』と『ハリー・ポッター』の大ヒットに触発され、ファンタジー映画が乱発されていた時期に製作された一本。大したヒットにならず終わったので今の今まで鑑賞してこなかったのですが、これが見てビックリ。結構な完成度だったので驚かされました。『ロード・オブ・ザ・リング』のような重厚長大な大作ではないためジャンルの代表作にはなりえないものの、中規模作品としては、実に理想的なレベルでまとめられています。。。 ファンタジー小説では、読者は世界観を一から理解する必要があるし、登場人物の数も多くなりがちです。読み返しの利く書籍ならともかく、観客の側が能動的に情報量をコントロールできない映画という媒体においては、そのような雑多な要素をどうまとめあげるのかが大きな問題となります。『ロード・オブ・ザ・リング』のように、当初より3部作構成で製作されることが決定しており、シリーズを合計すればタップリとした上映時間を稼げる作品であれば、そうした問題への対処も容易にはなるのですが、大半の映画はそれほど恵まれた環境では製作されません。まず1本撮り、ヒットすれば続編を製作。第1作については、単品で成立する程度に話をまとめておく必要があります。そして、多くのファンタジー映画はここで躓きます。物語をコンパクトにまとめるという過程において、原作が持っていた魅力的な要素を多く切り捨ててしまい、焦点の定まらない凡作が出来上がってしまうのです。。。 本作についても、3つのパーティが同時に動き、さらには冒険に絡んでくるサブキャラの数も多く、かつ、舞台の移動も盛んであり、一本の映画の枠に収めるにはなかなか厄介な素材だったと言えます。しかし、マシュー・ヴォーンはこの複雑な物語を、奇跡的な手腕でまとめてみせています。各キャラクターの背景や行動原理を的確に伝えており、また、端正なビジュアルによって世界観の特徴も表現できており、観客に情報を与えるという作業を非常にスムーズにこなしているのです。特に感心したのは、感動の高ぶりとともにイヴェインが光を発するという処理であり、この設定を挟むことで、ドラマが非常にわかりやすくなっています。また、この原作には性や暴力が少なからず含まれているのですが、ヴォーンはそうした毒を描くという点でも躊躇しておらず、その結果、血の通った真っ当な物語として仕上がっています。
[DVD(吹替)] 8点(2013-11-18 00:46:39)(良:2票)
26.  スター・トレック/イントゥ・ダークネス 《ネタバレ》 
IMAX-3Dにて鑑賞。舞台の奥行きや高さを用いたアクションが多く、3D効果を実感しやすいアトラクション映画として仕上がっていました。IMAX料金を払うだけの価値のある作品だったと思います。。。 前作で世界観やキャラクターの紹介が終わり、新シリーズもいよいよ本格始動となった本作。序盤から見せ場はフルスロットルであり、宇宙のインディ・ジョーンズとも言える状態となっています。「対話による平和が真髄のスタートレックにおいて、このバカ騒ぎは何だ?」と見る向きもあるようですが、ここまでサービスしてもらえればお腹いっぱい。娯楽作としては十分すぎる程の出来だと言えます。。。 もちろん、本作にも真面目なテーマはあります。本作はリーダーシップ論を描いた作品であり、多くのクルーの命を預かった艦長として、どう意思決定するのかという命題がカークに突きつけられます。規則に縛られ過ぎても良くない、かといって場当たり的でも良くない。こういうサジ加減の難しさは現実社会で多くの方が味わうものであり、ドラマ部分もなかなか侮れない内容となっています。さらには、本作の敵をカーンとしたことも、このドラマの意義をより深める要因のひとつとなっています。本シリーズはリメイクでもリブートでもなく、旧シリーズのパラレルワールドという位置づけにあります。そこにきて、旧シリーズでもお馴染みのカーンが姿を現し、我々が知っているカーンとはまるで違う行動をとりはじめることで、観客の我々にとっても、映画がどの方向に転がるのかが読めなくなるのです。この手の娯楽作の難しさは、主人公が勝つという結末が見え見えであるために観客を騙すことができないという点にあるのですが、本作ではカーンというキャラクターを効果的に用いることで観客に先読みをさせず、ひとつひとつの意思決定がどんな結果をもたらすのかを固唾を飲んで見守るという構図を作り上げています。この発想は見事と言う他ありませんでした。。。 さらに、連邦とカーンの関係は米国とウサマ・ビン・ラディンを想起させるものであり、現実社会の出来事を内容に反映させたことで、映画には奥行きが出来ています。宇宙船が都市を破壊するクライマックスは、まんま911だったし。娯楽作であってもきちんとテーマを掲げるという点において、やはりハリウッドは突出していると思います。
[映画館(字幕)] 8点(2013-08-26 00:51:38)(良:2票)
27.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 
旧シリーズの劇場版には一通り目を通しているものの、テレビシリーズは未見。ファンではないものの、主要キャラクターや物語の背景についての知識はある程度持っているという状況での鑑賞です。。。 21世紀に入り、スタートレックシリーズは危機的状況に陥っていました。劇場版の興行成績は回を重ねる毎にワースト記録を更新し続け、テレビの新シリーズの視聴率も初回から低迷。長年、固定客のみを相手に商売を続けた結果、一般の観客・視聴者には理解不能な程に世界観が複雑化したことがその要因であり、大幅なリニューアルによって新規のファンを取り込むことしか、シリーズの維持を図ることはできないという状況にまで追い込まれていたのです。しかし、これが難題でした。少しでも気に食わない点があれば大騒ぎをする旧来のファンを納得させつつも、一般の観客をも取り込まなければならない。このリニューアル企画に最初に挑んだのはテレビシリーズのクリエイター達でしたが、話をまとめきれずに企画は頓挫。結局、スターウォーズ派を公言するJJエイブラムスにシリーズの命運を委ねることとなったのです。。。 エイブラムスは奇想天外なアイデアで、この難題を片付けてみせました。エピソード0でもリメイクでもない、タイムスリップにより時間軸が歪められたパラレルワールドでの物語としたのです。このアイデアには唸らされました。オリジナルの時系列を引き継ぎながらも、設定などについては全面リニューアルをする。これなら旧来のファンは納得するし、新規のファンは設定を一から覚えられる。このアイデアを思いついた時点で、この企画は勝ちだったのです。。。 さらに、リニューアルのメリットはこれだけではありません。旧劇場版にはテレビシリーズの俳優陣がそのまま出演し続けたため、主要キャストは中年や初老ばかり。これが娯楽作としての大きな制約条件となっていたのですが、リニューアルによって出演者全体が若返ったことから、見せ場はダイナミックなものとなりました。エイブラムスの小慣れた演出とも相俟って、スリル溢れる連続活劇に仕上がっています。ロミュラン人の逆恨みはさすがに度を越していないか?とか、ラスト、身動きがとれなくなったロミュラン船を攻撃するカークは容赦なさすぎないか?とか、細かい部分には疑問符も付きますが、そんなことはどうでもいいと思わせる程の勢いのあるアクション大作でした。
[映画館(字幕)] 8点(2013-08-26 00:50:46)(良:1票)
28.  スター・トレック2/カーンの逆襲 《ネタバレ》 
映画版はすべて鑑賞しているものの、テレビシリーズは1話も見たことがありません。よって、主要キャラクターが誰であるか、どんな世界観の元で動いている物語なのかという最低限度の情報は持っているものの、それ以上の知識はないという状況での鑑賞です。。。 シリーズ最高傑作との呼び声も高い本作ですが、映画としてはそれほどだなぁという印象です。ヘタな演技に臭いセリフ、宇宙を舞台にしている割には箱庭的なスケールの小ささも感じさせられ、テレビシリーズに起源を持つ作品ならではの弱さがドバっと出てしまっています。また、スピード感溢れるドッグファイトが魅力だった『スターウォーズ』と比較すると、2隻の戦艦がもっちゃりと動いているだけの本作は見せ場の迫力にも欠けています。。。 テレビシリーズにおける人気キャラクター・カーンをフィーチャーしたことが本作の人気の要因だと思いますが、カーンに係る説明があまりに端折られ過ぎているため、テレビシリーズを見ていない観客が完全に蚊帳の外に置かれる点もマズかったと思います。セリフでのフォローくらいは入れた方が良かったのではないでしょうか。また、カーンが悪のカリスマに見えないという点も大きなマイナスでした。彼は知力にも体力にも秀でた優生人類にして、リーダーとしての魅力と統率力にも恵まれた王の中の王という設定のはずなのですが、この映画版ではカーク憎しの感情のみで暴走する小物にしか見えません。部下の制止を聞き入れず、いとも簡単にカークの罠にかかるに至っては、並みの雑魚キャラ以下。設定を脳内補完できるファンならともかく、本作でカーンに初対面する一般客にとっては、なかなか厳しいキャラだったと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2013-08-25 01:41:55)(良:1票)
29.  スカイ・ハイ(2005) 《ネタバレ》 
みなさんご指摘の通り、『ハリー・ポッター』と『X-MEN』を『Mr.インクレディブル』風に料理した映画なのですが、ディズニーらしい丁寧な脚本が光っており、90分間充分に楽しめる娯楽作となっています。適度に笑わせ、適度に感動させ、適度に燃えさせる。合間に挿入される「ヒーローあるある」も楽しくて、誰もが見入ってしまうほど面白い映画ではないでしょうか。。。 と、娯楽作としては文句なしに面白いのですが、構成には首を傾げざるをえない部分が多々ありました。【目隠シスト】さんがご指摘の通り、主人公が能力を発現させるタイミングがあまりに早すぎるのです。この映画はヒーローもののパロディという体裁をとりながらも、その内容は現実の高校生の実態を描いたものです。優秀な両親の息子として周囲からの期待を集めながらも、それに見合った器に成長できない主人公の葛藤がドラマの骨子であったはずなのに、中盤で早々と学園最強クラスの能力を開花させてしまったのでは、この映画がやろうとしたことが見えなくなってしまいます。また、本作はスクールカーストを描いた映画でもあります。子供達は大人によって「ヒーロークラス」と「サイドキッククラス」に分けられ、そうした大人による選別がスクールカーストという形となって子供達の人間関係にも深刻な影響を与えています。少なくとも前半では、その問題をかなり真面目に扱った映画だったように見受けたのですが、やはり主人公が強くなりすぎたことで、この点も中途半端になってしまいます。このテーマであれば、「ヒーローかサイドキックかという選別に何の意味があるのか?落ちこぼれが役に立つ時だってあるのだ」という展開とすべきだったのに、主人公がスーパーサイヤ人化してしまったことで、物語に意味付けができなくなってしまいます。主人公は最初から最後までダメな奴だが、苦しんだ挙句に両親とは違うヒーロー像を確立するという物語にすべきだったのです。また、かつてヒーローになる道を断念したバス運転手が、最終的にヒーロー化するというオチなどは最悪で、結局は「みんなヒーローになりましょう」という、作品全体の方向性とは正反対の結論を導き出すに至っています。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-06-17 01:34:42)(良:1票)
30.  スタンドアップ 《ネタバレ》 
私は男性です。そして、現在のフェミニズムは「男女共生」を越えて「男性蔑視」の領域にまで足を踏み入れているので賛同し難いと感じているし、男女間には厳然とした差異があるのだから、社会においてある程度の棲み分けが発生するのは仕方がないというのが私の持論です。そういった点において、私は本作の主人公と敵対する側にいる人間なのですが、そんな私でも本作には素直に感動できました。とにかく脚本が良すぎるのです。サジ加減を間違えればお節介な啓蒙映画になりかねなかったこの題材を、ここまで見事にまとめてみせた手腕は賞賛に値します。。。 やむにやまれぬ事情でシングルマザーになってしまった、しかも家のローンもある。主人公が高収入の仕事に拘らねばならなかった背景をコンパクトにまとめた序盤から、その仕事ぶりは絶好調です。同様に、主人公以外の登場人物についても各々の背景や行動原理が的確に伝えられており、そのことによってドラマが非常にわかりやすくなっています。全体の構造も戦略的によく練られていて、社会問題を扱いながらも中心はあくまで家族の物語としたことで共感の接点が広がっているし、小難しい法律論を最小限に留めることで混乱が避けられています。「仲間を二人集めることができれば勝てる」という単純な図式にまで裁判を落とし込んでいるのです。さらには、仲間二人を集めることがいかに困難であるかという点も十分に描き込まれていて、最後までハラハラさせられます。閉塞的な田舎を連想させる原題が示す通り、舞台はNYやLAではありません。ひとつの炭鉱が消費し、納税し、職を生んでいる。街全体が炭鉱によって生かされているという状況において、これに戦いを挑むという行為は街全体を敵に回すことと同義なのです。その他、主人公に対するセクハラ行為や悪意あるウワサなどでは心底不快な思いをさせられるし、後半になって意外な人物が味方に加わるという展開には燃えさせられました。娯楽的なツボもよく心得ているのです。。。 唯一の不満は、ラストのまとめ方が安易過ぎたこと。悪意ある証言者を弁護士が汚い言葉で挑発し、証言者はその挑発に乗ってしまうという展開は、さすがに非現実的すぎるでしょう。一連のやりとりに感銘を受けて傍聴者全員が主人公に賛同のパフォーマンスをとるクライマックスも作り物的過ぎて、ここで一気に冷めてしまいました。
[DVD(吹替)] 7点(2013-03-20 02:52:08)(良:1票)
31.  S.W.A.T.
「特別狙撃隊S.W.A.T.」のリメイク企画は80年代から存在していましたが(一時はアーノルド・シュワルツェネッガー主演で話が進んでいた)、本作はそんな長い期間を経てようやく映画化まで漕ぎ着けたという期待の一作。映画会社はこれをシリーズ化する気満々だったようで、やたらめったら見せ場を詰め込む通常のアクション大作とは明らかに異なる造りとなっています。前半部分ではチーム結成までの経緯が丁寧に描かれ、訓練の場面では見た目の派手さよりもリアルに見えることが優先されています。俳優たちの銃さばきも様になっており、アクション大作としては珍しく地に足のついた内容となっているのです。「傑作ではないが、程よくまとめられた佳作かな」なんて思いながら見ていたのですが、映画は後半で一気に崩壊します。麻薬王による「俺を逃がせば1億ドル」発言をきっかけにL.A.全体が戦場と化すという展開があまりに突飛すぎて、映画についていけなくなるのです。こんな荒唐無稽な話は『ダイ・ハード』や『バッド・ボーイズ』でやればいいのであって、リアリティへの目配せをしてきた本作でやるべきではありませんでした。また、中盤までほぼ姿を消していたジェレミー・レナーが、クライマックスになって突如ラスボス化するという構成も不自然。彼をラスボスの位置に据えるのであれば、コリン・ファレルや警察組織との相克をより明確に描いておく必要がありました。
[映画館(字幕)] 4点(2012-09-29 23:49:26)
32.  スネーク・アイズ(1998) 《ネタバレ》 
『ミッション:インポッシブル』の大成功によってやりたい放題を許されていた当時のデ・パルマが、本当にやりたい放題をやってしまった怪作。6,900万ドルという巨額の予算を投じて大舞台を準備しながら、その実5~6名の登場人物がうろうろするだけの内容に終始するというムダさ加減。その顔を一目見ただけで犯人だとわかってしまうシニーズ。まったく合理性のない暗殺計画(国防長官に接触する前の時点で女を殺していれば済んだ話では?)。暗殺直前に国防長官と接触し、本来ならば超重要参考人であるはずの女が、なぜか中盤まで捜査線上に上がってこないといういい加減な捜査。そしてラスト、絶体絶命の主人公の前に”偶然”突っ込んできて、都合よく事態を収拾してしまう警察車両。サスペンス映画としては完全に破綻しています。これはデ・パルマの技見せ映画だと納得して観るべきなのでしょうが、視覚的なサプライズも思ったほどではありません。壁をすり抜けるカメラやスプリットスクリーン、延々と続く長回しなどは20年以上も前からデ・パルマが使い古してきたテクニックであり、今さらそれを大々的に披露されても感動は薄いのです。。。 以上のように映画全体としては不満だった一方で、主人公リック・サントーロのキャラは非常に素晴らしいと感じました。彼は、ヤクザみたいな派手なシャツを着て街のチンピラから金をむしり取り、妻子持ちであるにも関わらず堂々と愛人を囲っているバリバリの汚職警官。エリート軍人に出世した親友ダンからはその差を見せつけられるものの、「俺はこの街じゃ顔が利くんだぜ!」と虚勢を張り続けます。それは、スピルバーグやルーカスら昔の仲間たちが各々独自の帝国を築いていく中で、いまだ雇われ仕事に甘んじているデ・パルマが、自身の境遇を重ね合わせたキャラクターであるように感じました。そんなサントーロですが、国防長官暗殺事件にあたっては人が変わったかのように真剣に捜査に取り組みます。それは正義や真実のためではなく、手の届かない存在となっていた親友ダンを助けてやれる(=自分がプライドを取り戻す)チャンスが来たことを素直に喜んでいるためです。事件の真相を聞かされた際に「そんな話は聞きたくなかった。親友を救って、自分もヒーローになって、それで終わりたかった」と嘆く様には切実なものがありました。ニコラス・ケイジの演技も良く、この主人公で映画は救われています。
[DVD(吹替)] 6点(2012-09-07 22:08:41)
33.  スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい
『NARC/ナーク』で注目を集めたジョー・カーナハンの初メジャー作品。カーナハンは『NARC/ナーク』を気に入ったトム・クルーズ直々の指名を受けて『ミッション・インポッシブル3』の監督に抜擢されるも、作品を完璧にコントロールしたがるトム・クルーズと馬が合わずに途中で降板。その時に受けたストレスをぶつけるかの如く「俺はこんな映画が撮りたかったんだぁ!」と暴走したのが本作なのですが、訳の分からん登場人物が入り乱れる内容を器用にまとめており、相変わらず抜群の構成力を披露しています。また、コメディを基調としながらも湿っぽいドラマが同時進行しており、引くほどのグロテスクな暴力描写も含まれるというおかしな味わいの内容なのですが、そんな無茶な内容を不思議な統一感でまとめてみせた手腕も見事なものです。同時期にトニー・スコットが『ドミノ』で同様の試みをして失敗しており、カーナハンが本作で披露した技って実はかなり高度な芸当だと思います。こんな映画を撮れる監督は世界に10人もいないのではないでしょうか。。。 とまぁ監督の技見せとしては素晴らしい作品なのですが、観客が楽しめる作品かと聞かれれば、正直微妙なところです。後の『特攻野郎Aチーム』もそうだったのですが、この監督は娯楽的な盛り上�げというものを不得意としています。見せ場の作り込みは良いもののそれを見せるタイミングが今一つで、本質的には娯楽映画に向かない監督さんだと思います。カーナハンを切って、後にヒットメーカーとなるJJエイブラムス(当時はテレビドラマのプロデューサーという印象が強かった)を『ミッション・インポッシブル3』の後任に据えたトム・クルーズの判断は正解だったようです
[DVD(吹替)] 6点(2012-08-03 01:06:18)(良:1票)
34.  スカーフェイス
「名作に泥を塗る下品極まりないリメイク」これが公開直後の本作の評価でした。では、このリメイクは失敗だったのか?遡ると「暗黒街の顔役(「アビエーター」でおなじみハワード・ヒューズによる製作)」も公開当時には低俗だ、下品だと大いに罵られていたわけで、お上品な方々を激怒させるほどの過激さという点において、本作はオリジナルの精神を正しく受け継いでいます。主人公の設定をイタリアンマフィアからキューバ人ギャングに変更した点も単なる思いつきの改変ではなく、「新参者の移民がアメリカの裏社会でのし上がる」という物語の骨子を30年代から80年代に置き換えた時、アメリカ社会で独自の立ち位置を確保したイタリア系ではもはや主人公になりえないという背景があったわけで、これは必然的な変更であったと言えます。表面をなぞるだけの空虚なリメイクではなく、オリジナルの骨子を正確に理解した上で、表面を必要な形に加工していく。これは理想的なリメイクのあり方だと思います。3時間という上映時間(なんとオリジナルの倍)にも、良い意味での長さが感じられました。とにかく密度が濃く、パンパンに膨れ上がった映画を観たという満足感が味わえるのです。長くはあるが無駄は一切なく、最後までまったくダレない。脂が乗り切っていた当時のオリバー・ストーンのパワーは尋常ではありません。 そして、この脚本を引き受けたブライアン・デ・パルマの演出にも目を見張ります。この映画、クレジットを見なければ監督がデ・パルマであることに気付く人はいないでしょう。普段はテクニックを重視し、機械的な印象を与えるデ・パルマが、若きオリバー・ストーンによる脚本のテンションに合わせて非常に感情的な演出をしているのです。デ・パルマといえば似たようなサスペンスばかり撮ってる人というイメージでしたが、案外、演出の引き出しは多いようです。それでいて、電ノコシーンでは壁をすり抜けるカメラなどおなじみのテクニックをさりげなく入れてきているわけで、どこで自己主張すべきか、主張を抑えるべきかという客観的な判断力を持った優秀な監督であると言えます。と思ったら、ラジー賞監督賞ノミネート?本作の価値を見抜けなかった当時の人々は末代まで恥じてください。
[DVD(吹替)] 8点(2012-05-01 01:16:23)
35.  スリザー 《ネタバレ》 
50年代のモンスター映画を観て育った世代が80年代にそれらの作品のリメイクを続々と発表し、そして80年代のモンスター映画を愛するジェームズ・ガンが、21世紀のテクノロジーとねじれた笑いのセンスでモンスター映画を再度蘇生させたのが本作です。この映画は「懐かしさ」や「お約束」の塊なので、過去のモンスター映画を観ていない人にとっては苦しい作品です。元ネタを知らないモノマネを見ているようなものですから。ただしその手の映画が好きだった人にとっては、本作はなかなかイケると思います。隕石に乗って地球に飛来する冒頭にはじまり、田舎町という舞台設定、「うちの夫がヘン」という導入部、ブレインスナッチに、ニュルニュルの触手に、ゾンビ状態の感染者にと、B級モンスター映画としてはほぼフルスペック状態となっています。警官達が装備を整える場面で、一瞬「プレデター」の音楽が流れた時には感動いたしました。本作には二人のヒロインがいるのですが、片や入浴中に襲われ、片や下着姿でラストバトルを迎え、おっぱいへのこだわりも十分なのです。「胸の谷間を撮りたいだけじゃん」という場面がいくつかある点など、実によくわかってらっしゃる。そんなこんなで80年代モンスター映画の総決算をやる一方で、21世紀ならではの捻りもちゃんと加わっています。笑っちゃいけないところで笑う、さすがに殺しちゃマズイ対象(子供、犬、お年寄り)を殺す、街が全滅して終わりという残酷すぎるラスト(80年代であれば、ボスを倒したことで寄生体が死滅し、意識を乗っ取られていた住民たちは正気に戻るというオチにしたはず)などです。この手の映画に免疫のない方が見ると「ちょっとやりすぎではないか」と思うかもしれませんが、このくらいネジの飛んだ映画というものも、たまには良いものです。
[DVD(吹替)] 7点(2012-02-04 14:47:32)(良:1票)
36.  スーパー! 《ネタバレ》 
ダメ人間が現実世界でヒーローごっこをする物語といえば「キック・アス」が代表格となりますが、本作は基本コンセプトこそ共通していても、中身はまったく異なる内容に仕上がっています。「キック・アス」は既存のヒーローものをバラバラに分解した上で再構築した作品であり、クライマックスでは新たな形でのファンタジーを提示しましたが、本作は分解したものを組み立て直すことなく、身も蓋もない形で観客の前に晒しています。「正義に目覚めて他人に暴力を振るう人間とは、一体どんな人格なのか?」「凡人が悪党に勝つためには、どんな手段をとることとなるのか?」「武装した者が他人に暴力をふるうと、相手はどうなるのか?」こういった疑問を煮詰めに煮詰め、出てきた答えをぶちまけているのです。描写はスプラッタホラー並にドぎつく、主人公は完全にキ○ガイ。前半こそコメディ映画として成立していましたが、後半では一切笑えません。とにかく衝撃作で、「もっとも似ている作品は?」という問いには「タクシードライバー」と答えるのが適切でしょう。トラビス並か、それ以上の狂気がこの映画を支配しているのです。「タクシードライバー」がそうであったように、本作も表面上はハッピーエンドを迎えます。しかし、あれはバッドエンドと解釈すべきでしょう。主人公は暴力の惨たらしさは認識しましたが、多くの人命を失ってまで自分が守ったものが無意味だったことは受け入れられませんでした。そこで、妻は自分のおかげで更生して幸せな人生を送っているのだ、自分は価値あるものを守ったのだという妄想にとりつかれたと考えるのがもっとも自然だと思います。 あれだけの惨事を引き起こした主人公が警察の捜査やマフィアの復讐から逃れて平穏な生活を送っているとは考えづらいし、あの結末を額面通りに受け取ると、作品全体に込められた監督の意図(現実世界で正義に目覚める奴がいるとしたら、それは迷惑この上ないキ○ガイだろう)にも反してしまいます。
[DVD(吹替)] 9点(2012-01-14 22:58:20)
37.  ストーリーテリング 《ネタバレ》 
トッド・ソロンズという監督は過激な題材を扱いつつも直接的な暴力や性描写は徹底して避ける人なのですが、「フィクション」編ではかなり露骨な性描写がなされています。また、主題について登場人物がセリフではっきりと喋ることも例外的であり、「フィクション」編はソロンズ作品としてはかなり異色な仕上がりなのですが、ここにソロンズの意図があります。恐らくこのパートは過激な描写があれば立派な社会派作品として扱われる風潮への反乱であり、外面的なショックのみに反応する観客達を挑発するためだけに作られたパートなのです。こんな底意地の悪い前振りを作り、そしてそんな前振りのためだけに当時人気が出始めていたセルマ・ブレアを裸にしてあんなことやこんなことをやらせたソロンズ、恐るべしです。 そうして「フィクション」編によるウォーミングアップを終えて後半の「ノンフィクション」編に入ると、映画のイタさはフルスロットル状態となります。殺人者やレイプ魔がひしめき合っていた「ハピネス」をも超える漆黒の闇が広がるのですが、そのあまりのイタさにすっかり魅了されました。本作にヘンタイは登場しないのですが、無気力人間スクービーを除く登場人物全員が無神経であり、本人の自覚のないうちに他人を傷つけまくります。「ハピネス」のような極端さがないだけこちらの方がリアルだし、身近に感じる分見応えがありました。さらに本作が凄いのは映画史上最大のタブーにまで踏み込んだことで、ユダヤ人の被害者ナショリズムや拝金主義にまで鋭く言及しています。「うちのおじいさんはホロコーストの被害者だ(おじいさんは戦前にアメリカに移民しているため、実際にはホロコースト経験者ではない)」と言い張るリビングストン家の人々が南米からの移民である家政婦をボロ雑巾のようにコキ使い、その献身に一切の感謝もせず使い捨てにしてしまうという展開が準備されています。その家政婦が善意の被害者であるかと言えばそうでもなく、レイプ殺人を犯した孫のために涙し(孫の無実を信じているわけではなく、孫は確かにレイプ殺人を犯したが、それは悪いことではないという無茶な論理で泣くのです)、ラストでは一家虐殺までを行います。とにかく登場人物全員がどうしようもなく、観客に何の拠り所も残さない徹底したダークぶりには恐れ入りました。 
[DVD(吹替)] 8点(2011-10-24 23:47:55)(良:1票)
38.  スターシップ・トゥルーパーズ
本作の企画は83年頃から存在していたものの予算や技術面での問題から一度頓挫し、技術の進んだ97年になってようやく製作が実現したようです。VFXに注ぎ込まれた予算は「タイタニック」をも上回る史上最高額の7000万ドル、総製作費は1億ドルという凄まじい超大作なのですが、これがお馴染みバーホーベン節炸裂の神経逆撫でムービーに仕上がっているのですから二度驚きます。ハリウッドの偉い人たちは脚本に目を通してから意思決定しているのだろうかと実に不思議になりました。。。完成した作品には素晴らしい部分もあればそうでもない部分もあって、個人的には好きなタイプの映画なのですが、傑作の部類には入らないと思います。バーホーベンの狙いは、戦争というものの本質を描き出すことにありました。このテーマを扱うにあたって歴史上の戦争を題材としてしまうと、どうしても当事者である国や国民が存在してしまって満足な描写ができない可能性がある。観客の側でフィルターがかかってしまう場合もある。だったら誰も文句を言ってこないSFでやってしまえという発想は大胆で面白いし、的を射ていると思います。本作の4年後、映画で描かれたことをアメリカ合衆国が現実世界でまんま後追いしたことからも、その狙いは当たっていたと評価できます。ただし、本作には不十分な面もあります。舞台となる未来の地球連邦の作り込みが甘く、また敵となるエイリアンと人類が歴史上どのように関わってきたのかが明示されないため、軍事政権が大衆を煽動して戦争へと雪崩れ込んでいく様について、観客がその良し悪しを十分に判断できません。主人公達が軍事に携わる前の学園ドラマの出来も良くないのですが、戦争と対比させるためならここも面白く作っておく必要があったでしょう。軍事政権や薄っぺらな学園ドラマなどバーホーベンが不得意としたり嫌っていたりするものについては、とりあえずブラックジョークでバカにするというスタンスで作られているのですが、この姿勢のためにテーマが一部死んでしまっています。映画の前半部分が猛烈に退屈する原因ともなっています。ここはある程度マジメにやっておくべきでした。。。一転していよいよ戦争に突入するとこれがめっぽう面白く、バーホーベンはスペクタクルの巨匠であることを再認識させらます。「好きなことやれてうれしいなぁ」というフィル・ティペットの満足げな表情まで見えてきました。
[DVD(字幕)] 7点(2010-09-05 00:41:06)(良:1票)
39.  スペース・カウボーイ 《ネタバレ》 
前半部分はかなり面白く、マジメなドラマばかりのイーストウッドが軽いコメディを撮って、狙い通りに笑わせている器用さには感心しました。しかし、宇宙に飛び出して以降は話のテンションが一気に落ちてしまいます。これについては脚本と演出の両方に難があって、通信衛星アイコンが実は核ミサイルの発射ポッドだったとが判明し、当初計画していた修理が難しいということになるのですが、何がどう難しいのか、修理を失敗するとどんな危険があるのかの説明が不足しており、このために劇中の登場人物達は「大変だ、大変だ」と騒いでいるものの、観客にはその温度感がイマイチ伝わらないという現象が発生しています。後半は万事こんな調子、一体何が問題で、それはどう危険で、対策は何なのかという説明がすべてにおいて不足しています。このため、ラストの自己犠牲もまったく活きてきません。そもそも、事態を致命的に悪化させた原因が功を焦った若造による勝手な行動だったという設定が良くないのでは?地上では対立していたおじいちゃんチームと若者チームが一致団結してこそ、直面している事態の深刻さが観客にも伝わってくるというもの。若造のうちのひとりは事態を悪化させ、もうひとりは気絶して寝ているだけ、おじいちゃんチームのうちサザーランドとガーナーは事態を眺めて「こりゃ大変だ」とコメントしているだけ、危機と戦っているのが実質的にイーストウッドとジョーンズだけでは、せっかく揃えたチームがムダになっています。危機に対して各自が特技を発揮し、その中で若造チームがおじいちゃんチームの腕前を認める場面があり、それでも処理しきれない危機については「後先短い俺達が何とかする」とおじいちゃんチームが自己犠牲を買って出るという展開でよかったのではないかと思います。なお、ILMによるVFXは非常に秀逸で、宇宙映画においてここまで描写の充実した作品は、2010年現在に至るまで他に存在していません。NASA全面監修はダテじゃなく、トラブルの際に宇宙空間に散らばる塵や破片の表現や、宇宙から見た地球や月の描写の美しさや正確さには驚かされます。巨大ロボットの如くガシャンガシャンと変形する通信衛星アイコンもかっこよく、こちらでもイーストウッドの意外な器用さを楽しむことができます。
[映画館(字幕)] 6点(2010-09-05 00:39:03)(良:1票)
40.  スター・ウォーズ/ジェダイの復讐
「帝国の逆襲」はスピード感があってかっこいい、スター・ウォーズに求められるものがすべて詰まった傑作でした。中間作でこの出来なら最終作はどんな凄いことになるのか、EPⅥへの期待も俄然高まるというものです。しかし、これが見事にズッこける最終作となっています。もちろん全部がダメなわけではありません。VFXは前作から輪をかけて良くなっていて、大空中戦の物量・密度・スピード感には圧倒されました。スピーダーバイクによるチェイスでは、宇宙空間における空中戦がメインだった本シリーズにおいて新しい見せ場を作ることに成功しており、こちらの仕事にも感心させられます。また、ドラマも部分的には悪くありません。ダースベイダーがアナキン・スカイウォーカーに戻る場面は感動的であり、それが息子を救うためという理由が泣かせます。ようやくマスクが外されてベイダーの素顔が明かされるのですが、それがオビワンのような立派な男かと思いきやみすぼらしいハゲおやじだったという肩すかしにも、個人的にはぐっときました。理由はうまく説明できないのですが、たまに会う父親がどんどんみすぼらしくなっていって妙に寂しくなるような感覚を思い出したからでしょうか。この辺りの人選は効果的だったと思います。ただし本作には凄まじい地雷が。そう、あの訳の分からんクマ達です。圧倒的な力を誇っていた帝国軍がシルバニア・ファミリーみたいな連中に滅ぼされる様は、見ていて辛くなりました。帝国に虐殺されたジェダイ達、戦いで命を落とした同盟軍の戦士達も、帝国の最後がこれでは浮かばれないでしょう。。。脚本の方向性はわからんでもありません。同盟軍を罠にはめて勝利を目前にした皇帝が唯一見逃していたもの、それは一般の住民達の力だった。危機に瀕した同盟軍は住民達の協力を得て最後の逆転を掴むという物語にしたかったのでしょう。しかし、それがなぜクマなのか?帝国によって虐げられていたエンドアの住民達が、ルークやレイアの姿に感動して蜂起するという物語とすればよかったのではないか?そこがどうしても悔やまれます。本作からEPⅡまで、スター・ウォーズはかわいいキャラや面白キャラを投入したり、要りもしない恋愛要素を強調してコケ続けることとなります。そのままで十分おいしいラーメンに、「サービスです」と言ってプリンやらアイスクリームやらをのっけられるような感じでしょうか。
[DVD(吹替)] 5点(2010-09-05 00:37:37)(笑:2票) (良:1票)
070.55%
1171.33%
2272.12%
3564.40%
417513.74%
517713.89%
619715.46%
730924.25%
822217.43%
9685.34%
10191.49%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS