1. 潜水艦クルスクの生存者たち
《ネタバレ》 2000年にロシアで起こった、未曽有の原子力潜水艦沈没事故――。一つ間違えばチェルノブイリ級の大惨事になりかねなかった、そんな潜水艦クルスクの沈没事故をモデルに、艦内に閉じ込められた23名の生存者たちの運命を冷徹に見つめたノンフィクション・ドラマ。監督は、『偽りなき者』や『アナザーラウンド』で数々の賞に輝く実力派、トマス・ヴィンターベア。この監督らしい、手持ちカメラを多用した映像とナレーションやテロップを一切使わないというハリウッドの同ジャンルの映画とは一線を画するその演出はリアルで、まるでドキュメンタリーを観ているかのような臨場感は凄かった。そのせいで多少分かりづらい部分もあったが、後半からはこの乗組員たちがどうなるのかという先行きが気になり、いつの間にか見入っている自分がいた。潜水艦映画の醍醐味である、息がつまるほどの閉塞感も凄まじく、特に酸素発生装置のバッテリーを取りに行くために水没地区のロッカーまで冷たい水の中を泳いでいくシーンは、こちらまで窒息しそうで思わず手に汗握ってしまう。「もう諦めていったん空気のある所まで戻れーー!!」と何度思ったことか。監督のこの演出力の高さは称賛に値する。そして、後半。この事件のことをほとんど知らなかったこともあり(ただ、あの息子の救済を訴える母親が公衆の面前で注射を打たれて失神するシーンはテレビで見たことがあった。詳しく知らないながらも恐怖した思い出がある)、その邦題からきっと彼らは助かるのだろうと思いながら観ていたので、最後の展開には驚かされるとともにどうしようもないやり切れなさに包まれてしまった。自らのメンツにこだわるあまり、兵士たちの命をここまで軽視するロシア上層部の非人間性には怒りを通り越して、もはや恐怖さえ感じてしまう。そしてそれは今もかの国の大統領に脈々と受け継がれているのだろう。観終わった後、色々と考えさせる社会派ドラマの秀作であった。ただ、ロシア人たちが皆英語を喋っているのはさすがに違和感が拭えなかった。ここまでリアルに拘った演出をしたのなら、そこまで徹底してほしかった。 [DVD(字幕)] 7点(2023-12-27 08:25:11) |
2. 西部戦線異状なし(2022)
《ネタバレ》 凄惨を極めた第一次大戦下のヨーロッパを舞台に、愛国心から志願した若き一兵士の目を通して戦争の真実を見つめた反戦ドラマ。過去に何度も映画化されたドイツの作家レマルクの古典的反戦小説『西部戦線異状なし』を再び映像化したという本作、今年のアカデミー作品賞はじめ数々の部門でノミネートを果たしたということで今回鑑賞。いやはや、予想していたこととは言え、凄まじい内容でした。汚泥と硝煙に塗れた塹壕戦はこちらにまで血の臭いが漂ってきそうなほどリアルで、観ているだけで胃のあたりが重くなります。さっきまで和気藹々と話していた同僚の兵士が上官の命令とともに出撃し、呆気なく命を落とすシーンは戦争の不条理を否が応でも分からせてくれますね。そんなこと気にもしない国の上層部は、きれいな広い部屋で豪華な食事にありついている……。戦争の実態をこれ以上ないくらい皮肉たっぷりに描いている。そして最後。あと15分で停戦が成立するというのに、将軍の意地とプライドのために再び出撃させられる一兵士たち。まさに無駄死にとしか言いようのない絶望感漂うラストは、戦争の虚しさをこれでもかというほど訴えかけてきます。自分や自分の大事な人がもしこの場に居たらと思うと堪えられない……。今も同じようなことがウクライナで起こっているのだろう。ますます混迷の度を深めてゆく現代社会に於いて、真に観るべき映画の一つと言っていい。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-02-13 07:05:32) |
3. 聖なる犯罪者
《ネタバレ》 様々な犯罪に手を染め、少年院へと投獄された青年ダニエル。そこは更生とは名ばかりの理不尽な暴力が支配する無法地帯だった。そんな過酷な獄中生活の中での唯一の慰めは、週に一度やってくる牧師の存在だけ。彼の説教に感銘を受けたダニエルはいつしか神の教えに目覚め、出所後はその道に進みたいと決意するのだった。だが、当然前科のある人間は聖職に就くことは出来ない。煩悶を抱えながらも少年院を出所したダニエル。偶然立ち寄った田舎町で彼は、たまたま視察に来る予定の司祭と勘違いされ、そのまま日曜礼拝に参加することに。そしてアルコール依存症に苦しむ町の司祭に頼まれ、彼はしばらく代理としてミサを執り行うことになってしまう。信者たちを前に神の教えを説くうちにダニエルは高揚し生きる実感を得てゆくのだった――。そんなある日、飲酒運転で町の若者6人を巻き添えに事故死した男がまだ葬儀も埋葬も行われていないと知ったダニエルは、社会の分断を取り除くために奔走する。それぞれの心の葛藤に寄り添った彼の言葉は、喪失感に苦しむ事故の遺族たちからも賛同を得てゆくのだった。そんな折、同じく少年院を出所した彼の過去を知るチンピラが現れ……。実話を元に、身分を偽り聖職者として人々の信頼を勝ち取っていった男の運命を描いたヒューマンドラマ。アカデミー外国語映画賞ノミネートということで今回鑑賞。確かに全編に横溢する異様な熱量には圧倒されるものがあります。神の教えに目覚めた元犯罪者がどんどんと村人たちを魅了し洗脳してゆく過程は、新興宗教誕生の瞬間に立ち会った感さえある。それらしい言葉とカリスマ性のみで、身元不詳の怪しげな男に村人たちがここまで翻弄されてしまうのかと思うと空恐ろしい。宗教とは人を救い社会を安定させる側面を持つ一方、指導者次第では危険な道へと突き進む場合もあることを改めて実感させられました。彼の過去を知る少年院仲間や本物の司祭が現れてからは、この先どうなるのかと目が離せません。ただ残念だったのは、後半息切れしたのか、ラストがかなり尻切れトンボに終わってしまったような印象が拭えない点。これら興味深いテーマが最後まで一つに収斂されることなく、何とも散漫なまま終わってしまいました。事実を元にしたとは言え、もう少し脚本を練るべきだったのでは。題材は良かっただけに、何とも惜しい。 [DVD(字幕)] 5点(2022-07-01 08:10:21) |
4. 世界の涯ての鼓動
《ネタバレ》 続発する爆弾テロを阻止するため、中東のテロリストの巣窟へと潜入する英国諜報部員の男。生命の起源を追って深海への命がけの調査に身を投じる海洋生物学者の女。ひと時のバカンスで訪れたリゾート地で偶然出会った彼らは、のしかかってくる重圧から逃れるかのように惹かれ合い、そのまま一線を越えてしまうのだった。お互い行きずりの愛だと割り切っていたはずだった。だが、数日間共に濃密な時間を過ごした彼らは、やがて運命的なものを感じ始める――。のちの再会を誓い合い、その地を後にする二人。だが運命は何処までも二人に残酷だった。男はテロリストたちに捕まり長い監禁生活を余儀なくされ、何も知らない女はそんな彼からの連絡を待ちながらも暗い海の底へと身を投じてゆく。果たして、二人は世界の涯てで無事に巡り会うことが出来るのか?ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督の最新作は、そんな過酷な運命に翻弄される男女の愛を切実に綴ったラブストーリーでした。雄大な大自然を背景に描かれる、この詩的で深甚なる世界観はなかなか見応えありました。いつまで経っても変わらない人間の愚かさと、神秘的な生物の起源をシンクロさせるところもセンスの良さを感じさせます。そんな世界の涯てに追い詰められた男女の愛を濃密に描いたラブシーンも官能的で大変良かったです。特に、アリシア・ヴィキャンデルちゃんの美しさは特筆に値しますね。ただ、良くも悪くも最後まで淡々と進むため、途中で幾分か退屈に感じたのも確か。もう少しドラマティックな展開があっても良かったような気がしなくもないけど、それは好みの問題なんだろうね。僕は少し物足りなく感じてしまいました。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-10 04:00:12) |
5. セレニティー 平穏の海
《ネタバレ》 その島の名は、プリマス。一年中熱い太陽の光が降り注ぐこの島で、観光客相手に小さなヨットで海釣りサービスをしているディルはその日、久しぶりに奴と再会する。もう何年も前から追い求めている巨大なマグロが再び、海の底からその姿を現したのだ。釣竿を手にぎりぎりまで奴を追い詰めるディル。だが、今回も奴はヨットに引き上げる寸前に逃げ、またしても海へと帰ってゆくのだった――。その次の日、ディルは陸の上で意外な人物と出会う。何年も前に別れたきりずっと音信不通だった元妻が、大金持ちの夫とともに島へとやって来たのだ。密かにディルの元を訪れた彼女は彼にある提案をする。今の旦那はどうしようもないクズ野郎で日々自分に暴力を振るうばかりか、ディルの実の息子にまでその手を挙げているらしい。「お願い、彼を海の上で事故に見せかけて殺してちょうだい」。一千万ドルの報酬と引き換えにそう依頼してくる元妻。それまで巨大マグロを釣り上げることだけを目標に生きてきた男は、新しい〝任務〟に心掻き乱されてゆくのだった……。大海原に浮かぶ風光明媚な小さな島を舞台に、元妻の依頼でそんな犯罪へと手を染めようとする男の葛藤を描いた心理サスペンス。主演を務めるのは、マシュー・マコノヒーとアン・ハサウェイと言う人気コンビ。誰も目撃者がいない大海原の船の上で大富豪を殺そうと悪戦苦闘するという現代版『太陽がいっぱい』みたいな内容だと思わせといて、中盤から謎の釣り具セールスマンを登場させたり、引きこもりの天才数学少年が意外な形で物語に関わったりと謎の展開を見せはじめ、終盤で驚愕のどんでん返しを見せるそんな本作。とにかくこの衝撃のオチに尽きると思います。ネット上でも軽い失笑とともに酷評されるこのオチなんですが、さすがに僕もあかんと思いますわ~。いやいや夢オチ以上の反則でしょ、これ。だって主人公はじめ島の住民が全員、〝あれ〟なんですもん(笑)。例えるなら、「自分が毎週日曜の夜にやってるアニメのキャラだって気づいちゃったサザエさん」みたいな感じ?うん、やっぱり反則(笑)。まあ監督の本職が脚本家ということもあってか、お話の見せ方自体は流れも良くて最後まで普通に観ていられたんで、そこらへんは良かったんですけどね。要はこの陳腐なオチを普通ならすぐボツにするだろうに、何故か大真面目に脚本にしちゃったところでしょう。監督、どうしてこれを真剣に映画化しようと思ったのかしら?試しに人に読ませたら思いっきりバカにされて思わず意固地になっちゃったとか?まあいろいろと謎な映画でありました。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-07-06 14:12:06) |
6. Z Inc. ゼット・インク
《ネタバレ》 世界的な超一流企業の本社ビルである日、謎のウィルスが大発生!感染した社員たちは突如として狂暴化し、荒れ狂う暴徒と化すのだった!そんなパニックへと陥った社員たちに、今度は社内モニターを通じて役員から驚愕の事実が告げられる。「感染拡大阻止のために、このビルは今から8時間、完全封鎖されます」。外部との接触を遮断されたビル内では、ハサミやカッターナイフ、ボールペンを手にした社員たちによって、そこら中で血みどろの惨劇が繰り広げられるのだった――。上司のミスをなすり付けられ、役員からリストラを宣告されたばかりのエリート・サラリーマン、デレクはこの機に乗じて上層部に直談判することを決意。だが社長室がある最上階へと向かうためには、課長や部長だけが持つカード・キーを手に入れなければならない。途中、同じく会社に恨みのあるブロンド美女と仲間になったデレクは、ともに協力し合いながら阿鼻叫喚の地獄絵図と化したオフィスをゆく。果たして彼らは無事にこの危機を乗り切え、サラリーマン生活を続けることは出来るのか?と言うアイデア一発勝負のいかにもB級なそんな本作、この翌年に公開された同じような設定のB級作『ゼット・ブル』が意外にも面白かったので元ネタであるこちらも今回鑑賞してみました。なんですけど、うーん、僕としては二番煎じの『ゼット・ブル』の方が遥かに面白かったかな~。あくまでコミカルで馬鹿々々しかったあちらとは違い、こちらは妙にシリアスな展開をブッこんでくるところがいまいちノレまれませんでした。サブプライム・ローンやリーマン・ショックという、かつて社会を大混乱に陥れた資本主義の暴走と崩壊の暗喩としてこのウィルスを設定しているんだろうけど、この手の映画にそんなんいりませんって!もっと会社あるあるで楽しみたかったのに、いちいちそれが鼻について仕方ありませんでしたわ。社長が死んだ平社員の死体におしっこかけるシーンなんて、きっと経営者に対する皮肉が込められているんだろうけど、さすがにやり過ぎでみていて不愉快!あくまで今の地位にしがみつこうともがく主人公にもいまいち共感できず…。期待してたものと違い過ぎて、僕はいまいち楽しめませんでした。すんません、4点で。 [DVD(字幕)] 4点(2020-03-20 23:41:22) |
7. Z Bull ゼット・ブル
《ネタバレ》 ストレス社会をぶっ飛ばせ!――。世界に冠たる一流兵器メーカー、アモテック社。そこは高性能銃器や小型地雷、破壊力抜群の重火器や最新型の戦闘ロボ、さらには清涼飲料水まで幅広く手掛けるグローバル企業だ。ある日、闘争心を高める兵士用エナジードリンク「ゾルト」を開発した社長は、全社員を集め、強制的に試飲させることに。だが、誰も知らなかった。そのエナジードリンクには致命的な〝欠陥〟があることを――。突如として狂暴化し、手近の武器を手に取るとお互いを殺し始める社員たち。一瞬にしてオフィスは血みどろの大パニックへと陥ってしまうのだった。遅刻してきた落ちこぼれ社員であるデズモンドは、目の前の信じられない光景に途方に暮れるばかり。同じくドリンクを飲まなかった落ちこぼれ社員たちと合流したデズモンドは、ほのかに好意を寄せている女子社員を救うため、そんな阿鼻叫喚の地獄絵図と化したオフィスへと乗り込んでゆく。果たしてデズモンドと仲間たちはこの絶体絶命の危機を脱することが出来るのか?アイデア一発勝負で撮られた、完全にB級であるそんな本作、まったく期待せずに今回鑑賞してみたのですが、これが意外や意外、なかなか面白いじゃないですか!まあゾンビものの単なる亜流と言ってしまえばそれまでだけど、全編に散りばめられた会社あるあるがけっこう笑える。経理部と営業部が無茶苦茶仲悪かったり、女社会である人事部がかなりドロドロだったり、典型的なパワハラ&モラハラな上司がブイブイ言わせていたりと、「あー、これ分かる分かる!」と終始ニヤニヤしっぱなし。日々のストレスを発散するかのように暴れまわる、ダメ社員主人公に思いっきり感情移入しながら見入っちゃいました。ドリンクを半分飲んだせいで我慢できないことがあると急に暴れ出すヒロインの女子社員もけっこう可愛くて、そんな彼女が前半ガムテープでぐるぐる巻きのまま移動させられるとこなんてすんごくキュート。そして、この会社が兵器メーカーであるとこも舞台として最高です。なんせクライマックスは、倉庫に保管されていた様々な武器爆弾に火炎放射器、果てはミサイルやバトルロボットまで持ち出して、もはやぶっ飛びまくり(笑)。うん、なかなか面白かった!!日々、会社のストレスにウンザリしているサラリーマン諸君にお薦めの一本です。 [DVD(字幕)] 7点(2020-02-24 00:42:25) |
8. 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
《ネタバレ》 優秀な心臓外科医として忙しい毎日を過ごすスティーブンは、美しい妻と育ちざかりの二人の子供とともに充実した日々を送っていた。そんなある日、彼はマーティンという名の謎めいた少年と出会う。かつて自分が担当したものの救えなかった患者の息子だというマーティンに、罪悪感から彼は何かと目をかけてやるのだった。高価な時計をプレゼントしたり、一緒にランチを食べたり、家族との夕食の席に招待したり…。だが、その頃からスティーブンの家族に不可解な出来事が起こり始める。突然息子の下半身が動かなくなり、しかも一切ものを食べなくなったのだ。何度検査しても原因は皆目摑めず、スティーブンは途方に暮れるばかり。しばらくすると、長女も同じような症状を発症するのだった。突如として巻き起こった家族の危機になすすべのないスティーブン。そんな彼に、マーティンは衝撃の事実を告げる――。謎めいた少年によって崩壊の危機へと追い込まれてしまったとある家族の葛藤を、独特の映像と不穏な世界観の中に描き出すサスペンス・ドラマ。追い詰められる夫婦役に、人気俳優コリン・ファレルとニコール・キッドマン。監督は最近独自の作風で注目を集めるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス。最後まで不快指数マックスのいや~~~なお話でしたね、これ。少年のかけた呪い?によって家族がいろいろと理不尽な目に遭うんですけど、この少年がとにかく不気味で気持ち悪いんですよ。スパゲッティを食べてるだけなのに、どうしてあんなに気持ち悪くなれるんでしょーか(笑)。独特のカメラワークや不穏な音楽もいちいち観客の神経を逆なでするし、細かいエピソードにいたるまでいちいち気持ち悪い。あの酔っ払った父親の性器をしごいて射精させた話を自分の息子にするシーンっていります?やたら娘に初潮が来たことを自慢げに話す父親もどーなんですかね?前作でも思ったことだけど、この監督って、やぱかなりの変人で変態ですよね。好きか嫌いかで訊かれたら、正直僕は嫌いです。でも、才能は充分ある。最後の家族ロシアンルーレットなんて、かなりブラックで悪趣味全開!でも、悲惨なのになんか滑稽で、こんなシーンを撮れる監督なんて世界に彼一人なんじゃないですかね。とまあ個人的には嫌いですけど、一度は触れてみて各々で判断しちゃってください。 [DVD(字幕)] 6点(2019-05-25 01:41:24) |
9. 聖杯たちの騎士
《ネタバレ》 成功を手にした脚本家と彼を取り巻く6人の女性たちとの愛と葛藤の日々を詩的な映像の中に描いたアーティスティックな群像劇。僕の大っっっ嫌いなテレンス・マリック監督の作品だったので特に観るつもりもなかったのですが、主演俳優陣の豪華さに惹かれて「今回こそはもしかして…」とこの度鑑賞してみました。なのですが…、やっぱりあかんかったですね(笑)。いやー、この監督は裏切りまへんわ~。ストーリーなんてあってなきが如し、ただただ意味があるのかないのかさっぱり分からない独り善がりなモノローグが延々と続き、もう眠いったらありゃしない。映像は美しいのかも知れませんが、はっきり言ってそれだけです。時々出てくるおっぱいで「おお」となるものの、あとはずーっと眠気との戦いを強いられます。最後まで寝ずに観れた自分を誉めてあげたいくらい(笑)。なんでこの人の映画に、クリスチャン・ベール&ケイト・ブランシェット&ナタリー・ポートマンなどと言った有名実力派俳優が毎回こぞって出演したがるのか、ほんとに謎。極度の不眠症に悩まされている方にお勧めの作品です。 [DVD(字幕)] 2点(2019-02-24 21:49:41)(良:1票) |
10. セリーナ 炎の女
《ネタバレ》 1929年、アメリカ北部の荒涼とした山岳地帯。父親から譲り受けた広大な土地で材木業を営むジョージ・ペンバートンは、次々に巻き起こるトラブルとうまくいかない資金繰りに奔走していた。そんな折、ボストンまでの出張に出かけた彼は、そこで若く美しい女性と恋に落ちる。相手の名は、セリーナ。幼いころに火事で家族を失い、以来天涯孤独の人生を送ってきたという。そのミステリアスな美しさと力強い眼差しに心惹かれたジョージはその日のうちに求婚し、彼女を妻として地元へと連れ帰ってくるのだった。以来二人は熱情と愛欲に満ちた、幸せな毎日を謳歌する。だが、そんな満ち足りた日々も長くは続かなかった――。土地が国立公園の予定地と重なったことで伐採所の買収話が持ち上がり、その過程で彼の地方議員への贈賄疑惑が持ち上がったのだ。このままでは土地を奪われるばかりか、刑務所にぶち込まれセリーナとの幸せな日々さえも失ってしまう。悩んだ末に、ジョージはとある決断を下すのだが…。アメリカの雄大な山岳地帯を舞台に、ただ幸せになりたいと願った一組の情熱的な夫婦の愛と葛藤の日々を美しい映像で綴ったラブ・ロマンス。ジェニファー・ローレンスとブラットリー・クーパーという今ノリにノッている人気者二人が夫婦役を演じたということで今回鑑賞してみました。なかなか丁寧に作り込まれた脚本の力と円熟味を増した主演俳優たちの魅力とで最後まで興味深く観ることが出来ました。彼ら以外にも、個性豊かな脇役たち――ジョージの子供を身籠っていると思しき貧しい女性や得体の知れない凄みを感じさせる元犯罪者の作業員、粘着質な目で二人を追う土地買収業者等、誰もがきらりと光る達者な仕事を披露してくれています。なかなか見応えのあるメロドラマの秀作に仕上がっていたと言っていいでしょう。ただ、残念だったのは後半の展開。それまで土地買収を巡るやり取りで充分緊迫感を煽っていたのに、前半でそれをいったん終わらてしまったせいで、そこからお話の密度が若干薄まってしまったように感じてしまいました。前半の緊張感を最後まで保っていればもっと完成度の高い傑作になっていたかも知れませんね。 [DVD(字幕)] 6点(2018-12-29 22:57:01) |
11. セブン・シスターズ
《ネタバレ》 環境破壊と極端な人口増加によって深刻な食糧不足へと陥ってしまった未来社会。政府は人口抑制策の一環として、強硬な児童分配法を施行。一家庭が持てる子供の数を一人とし、二人目以降が生まれるとその子は強制的にコールドスリープで眠りにつかされることになるのだった。そんななか、ある一人の女性が七つ子を産んで亡くなってしまう。このままいくと一人を除く六人の赤ん坊が強制的に当局に収容されることは明らか。「そんな勝手なことは誰にもさせない!」。残された女性の父親は、そう七人姉妹を秘密裡に育てることを決意する。それぞれに月曜から日曜までの名前を付け、それぞれの曜日にしか外出できないルールを設け、彼女たちを〝一人の女性〟として育ててゆく――。30年後、順調に成長した〝彼女〟は、大銀行の行員として順調に出世コースを歩んでいた。それぞれに悩みを抱えながらも自らの個性を殺し、日々、七人一役をこなしていた姉妹たち。だが、そんな平和な日々は突如として終わりを迎えるのだった。月曜が仕事が終わっても帰ってこず、連絡も取れないまま行方不明となってしまった!果たして月曜は何処に消えてしまったのか?残された六人の姉妹は、それぞれの長所を活かしながら消えた月曜を捜しはじめるのだが…。一人の女性として育てられた、そんな七人姉妹の闘いをノンストップで描いた近未来SF・アクション。という荒唐無稽な設定ながら、勢いとキレのあるアクションの数々で最後まで見せきったところは素直に素晴らしかったですね。いや、これ、ほとんど期待せずに観たんですけど、なかなかの掘り出しもんでしたよ。特に、一人七役を演じたノオミ・ラパスがまさに嵌まり役でした。ちゃんと誰もが別人に見えたですもん。イケイケのねーちゃんからオタク女子、普段は強がってるけど男には奥手の女性だとか、難しい演じ分けを見事にこなしておりました。そして、そんな七人姉妹が次第に追い詰められ次々と命を落としていくという演出もだいぶエッジが効いていて大変満足。ことの真相は途中で予想できたものの、コールドスリープの正体とかは普通に「おお!」となりました。いやー、なかなか面白かったです!8点! [DVD(字幕)] 8点(2018-11-24 23:48:27) |
12. セル
《ネタバレ》 それは平凡なある日の午後の出来事だった――。その瞬間に携帯電話を使っていた全ての人々が突然狂い始め、白い泡を吹きながら周りの人間たちを襲い始めたのだ。友達との会話にいそしんでいたティーンエイジャー、トイレに腰掛けながら仕事の話をしていた中年サラリーマン、ネットのゲームに夢中になる子供たち…。手にしていた携帯電話をナイフや銃に持ち替え、手近の人間を次々と血祭りにしながら暴走を続けるそれまで普通だった人々。彼らによって空港や地下鉄構内が瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化す中、偶然にも生き残ることが出来たコミック作家クレイと地下鉄運転手トムは、この絶望的な状況を何としても乗り越えようとするのだったが…。現代人なら誰もが持つ携帯電話が突如としてもたらした、そんな世界の崩壊をノンストップで描いた定番のパニック・スリラー。原作はモダン・ホラーの帝王スティーブン・キング。いかにも彼らしいそんなB級感満載の本作、何気にジョン・キューザックとサミュエル・L・ジャクソンも主演していたので、気軽な気分で今回観始めました。タイトルにもなっている携帯電話というアイテムは単なる添え物程度で中身は超ベタベタなゾンビものでしたけど(笑)、ツボを押さえた演出のおかげでそこそこ楽しめました。廃墟と化した街の中をゾンビたちが全力疾走してくるとこなんて既視感満載とは言えやっぱり怖い。それに中盤のゾンビ大量虐殺はお約束の展開で大変グッド。まあ後半のグダグダな展開もある意味お約束なのかな?てか、あのラスボスっぽい赤いフードのゾンビは結局なんやってん(怒)。ジョン・キューザックのアホ面で終わるラストなんて、やっつけ感半端なさすぎ!!とまあ、なんだかんだ突っ込みを入れながら、だらだら観る分にはぼちぼち楽しめるという定番のB級ゾンビ・ムービーでございました。 [DVD(字幕)] 5点(2018-03-25 23:08:58) |
13. セルフレス/覚醒した記憶
《ネタバレ》 癌と診断され、余命幾ばくもない大富豪ダミアン。生への未練が断ち切れない彼は、謎の組織からある提案を受ける。大金を払えば、DNA操作で造られた若い肉体に生まれ変わることが出来るというのだ。自らの死を偽装し、誰も知らない地で無名の若者として生まれ変わった彼は、歳とともに出来なくなったことをそれこそ貪るように謳歌する。激しいスポーツに挑戦し、夜の街で浴びるほど酒を飲み、そして無数の女たちとの情熱的なセックス…。だが、しばらくすると彼の脳裏に見たこともないような幻覚が見え始めるのだった――。そう、彼が新たに手に入れたこの若い身体は実は秘密裡に調達されたもので、ダミアンとして生まれ変わる前は家族とともに平凡に生きていた普通の男だったのだ。次第に甦ってくる記憶を頼りに若者の家族を捜しはじめるダミアン、するとなんとしても秘密を守りたい謎の組織の魔の手が迫ってくるのだった…。若い身体に生まれ変わった男が真実を求めて奔走するエンタメ・アクション。監督は、独自の映像表現に定評のあるターセム・シン。余命幾ばくもない大富豪役にベテランのベン・キングズレー、そして主役として身体を張ったアクションを見せるのは今最も勢いのある若手俳優ライアン・レイノルズ。まあぼちぼち面白かったかな。純粋にエンタメとして制作されたので、この監督らしい癖のある映像表現もいい意味で薄められていて最後まで気軽に楽しめました。アクションシーンもスタイリッシュで格好良いし、じじいが若者に生まれ変わるというテーマもいい感じで活かされていたし(ベン・キングズレー、そりゃセックスしまくるよね。いかにも性欲強そうな濃い顔だもの笑)。ただ難点を言えば、途中でオチが読めてしまうところと後半の展開が若干ごちゃごちゃしているところですかね。まあでも普通に面白かったと思います。6点! [DVD(字幕)] 6点(2017-11-15 14:30:02) |
14. セブンス・サン ~魔使いの弟子~
《ネタバレ》 血染めの赤い月が昇り、私の力はよみがえった。またこの世に地獄を目覚めさせてやる――。剣と魔法が秩序の全て、ここはそこかしこに恐ろしい魔物が跋扈する危険な世界。かりそめの平和が続くこの地に赤い月が昇るとき、再び動乱の気配が立ち込めはじめる。魔物退治を生業とする魔使いたちの偉大な師匠グレゴリーは、敏感にその予兆を察知するのだった。かつて自らの手で封印した恐ろしい魔女マルキンが復活し、世界を恐怖に陥れるためにかつての仲間たちを召集し始めたのだ。魔女の策略により唯一の弟子を失ったグレゴリーは、新たに七番目の息子のさらに七番目の息子を強引に弟子へと迎え入れると、再び彼女を封印するための危険な旅へと出発する…。魔法の腕は天下一品ながら酒浸りで飲んだくれの師匠と彼とは正反対の真面目なその弟子との大冒険を迫力満点の映像で描いたヒロイック・ファンタジー。自在にドラゴンへと変化する恐ろしい魔女を演じたのはジュリアン・ムーア、人間的にはダメダメ感満載の個性的な師匠を演じたのはジェフ・ブリッジス、この二大オスカー俳優が豪華共演ということで今回鑑賞してみました。率直な感想を述べると、まあなんというか、演出がしっちゃかめっちゃかな作品でしたね、これ。さまざまなキャラが次々登場し観客そっちのけでどんどんとストーリーが進行してゆくので、全体的にごちゃごちゃした印象が拭えません。原作となった小説があるみたいだけど、なんかそのお話をダイジェストで追ったのかな?って感じです。オーソドックスではあるもののお話自体はけっこう面白いだけに、もうちょっと緩急をつけた丁寧な演出が欲しかったところ。まあ二大オスカー俳優の熟練の演技のたまものか最後までそこそこ観ていられるのは確かなんですけどね。それにふんだんにお金をかけたCG映像は迫力満点!様々な魔物に変化する魔女の手下たちもそれぞれに個性が際立っていたし、暇潰しに観る分にはぼちぼち楽しめるんじゃないでしょうか。まあ世界を危機に陥れたことの発端が、じじいの不倫の後始末のせいだったのはどうかと思いますけど(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2017-06-28 20:52:20) |
15. セッション
《ネタバレ》 映像と音楽のセンスが抜群!!単純な話だけど、面白かった!!ただ、この2人とは絶対に関わりたくない(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-15 20:22:01) |
16. ゼロの未来
《ネタバレ》 ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは現在93.789%です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。次の解析済みデータを1時間後にアップロードしてください。不可能ならば超過時間を分単位で入力してください。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%で――。コンピューターが異常な発達を遂げた近未来。仕事一筋で生きてきた真面目な男、コーエン・レスは人生の意味を教えてもらうための電話を待ち続けて孤独に生きてきた。より思索に耽りたいと願うあまり、彼は会社に在宅勤務を要請する。当初は難色を示していた上司だったが、マネージメントと呼ばれる経営トップの判断により、彼はとある極秘プロジェクトを任されるのだった。そのプロジェクトとは、「ゼロの定理の証明」。家に閉じこもり、来る日も来る日もデータ解析に打ち込んでいた彼だったが、作業は遅々として進まない。会社からは次々と催促の連絡が入るものの、肝心の電話は一向に掛かってこず、次第に追い詰められていくコーエン。そんな彼の元に、怪しげな売春婦ベインズリーやマネージメントの息子ボブを名乗る青年がやってきて……。唯一無二の独創的な映像や超現実的なストーリー等々、もはや生ける伝説と言っても過言ではないカルト映画界の巨匠テリー・ギリアムの最新作は、いかにも彼らしいそんな超シュールな作品でございました。いやー、やっぱりいいですね、このギリアムにしか描き出せない摩訶不思議な世界観。『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』『フィッシャー・キング』といった彼の往年の名作を髣髴とさせる唯一無二の独創的な映像に僕は久し振りに痺れてしまいました。そこに今回はベインズリーというそれまでのギリアム作品にはなかった(?)エロティシズム要素も加わって、いやはやどうして一筋縄ではいかない作品に仕上がっていて嬉しい限り。相変わらず訳の分からないストーリーなのですが、きっとそこには〝愛〟がテーマとして埋め込まれていたような気がする?!頭髪や眉毛まで剃り落としたクリストフ・ヴァルツの怪演振りもバッチリ嵌まっていてナイス!胸元ざっくりのセクシー・コスチュームで惜しげもなく色気を振りまいていたベインズリーちゃんも超キュートで大変よかったです!うん、相変わらず観る人を選ぶかなりぶっ飛んだ作品でしたけれど、僕は充分楽しめました!7点! [DVD(字幕)] 7点(2016-05-07 19:42:51) |
17. セブン・サイコパス
《ネタバレ》 「サイコパス(キ〇ガイ野郎)たち、大募集!!最近、なんだか錯乱気味?ひょっとして危ない理由で入院しちゃった?でも、大丈夫!世間に理解がないだけさ。実は俺、友達と一緒に只今『セブン・サイコパス』って映画の脚本を執筆中だ。だが、今ちょっぴりネタ切れ中で困ってる。面白いネタを提供してくれたら映画の中で使うかもよ。自分の正義感が世間に比べてちょっぴり歪んでる、なんだか最近無性に犬猫を虐めたくてしょうがない、そんなナイスな野郎どもはこの番号まで大至急電話してくれー!!」――。エージェントからの依頼で、サイコ・サスペンス映画の脚本を執筆中の酒浸りの脚本家、マーティ。タイトルだけは考え付いたものの肝心の中身の方は遅々として進まない。そんな彼を見かねて友人である売れない俳優のビリーは、彼に内緒で新聞広告を出すのだった。「サイコパスなんて募集してどうする!」と、当然のように怒り狂うマーティ。その日から、彼の元に危ないサイコパスたちが続々とやって来るのだった。果たしてマーティは無事に映画の脚本を書き上げることが出来るのか?という、なんだかよく分からない(笑)設定の奇抜なバイオレンス・コメディ。コリン・ファレルを初めとする何気に豪華な役者陣競演に惹かれて今回鑑賞してみたのだけど、うーん、僕にはよく分かんなかったです、これ。主人公マーティの元に集まったイカレ野郎たちの過激なバイオレンス描写が暴走しまくっちゃう前半から一転、後半での荒野に集まったそんなサイコパスたちの微妙に噛み合わない禅問答のような遣り取りが延々と繰り返される展開に、「あぁ、きっとこれは過去にジョン某さんが主演した、秀逸な設定のサイコ・サスペンスの某傑作と同じオチなんやろねんな~」と思っていたら、なんだか分かりにくいモヤモヤとしたラストを迎えちゃいました。きっとこれって、調子に乗って拡げすぎた大風呂敷をきちんと畳むことが出来なくなって、無理やりこのオチに持っていったんじゃないの?なんだかスッキリしないですよ、これじゃ。ギャング2人がいきなり射殺される冒頭シーンとか、なかなかキレのあるバイオレンス描写にけっこうセンスを感じただけに惜しい!この監督の次回作に期待ってことで。 [DVD(字幕)] 5点(2015-04-09 13:36:28) |
18. セッションズ
《ネタバレ》 僕が裸になるとき、たとえば着替えや入浴の介助を受けるとき、周りの人はいつも服を着ていた。それがいま、裸の君と一緒にベッドにいるのが僕は本当に不思議なんだ――。マーク・オブライエン、38歳、子供のころに患ったポリオが原因で全身に麻痺という障害が残ったものの、電動ストレッチャーで大学に通い、今では詩人兼ジャーナリストとして立派に生計を立てている。とはいえ、彼は一日の大半をベッドの上で過ごし、ヘルパーの介助なしでは外出することも出来ず、一人では食べることはおろか排泄の処理をすることも出来ない、そしてもちろん「童貞」。そんな彼がヘルパーの若い女の子に失恋したことをきっかけに、とある決心をするのだった。それは「死ぬまでに、人間として一度でいいから誰かとセックスしたい!」。障害者仲間のつてを伝って、セックス・セラピストをしている人妻シェリルとコンタクトを取るマーク。彼女との計6回のセッションを通じて、彼は初めて人間としての喜びを全身で味わうのだった…。重度の障害を抱える実在の詩人が著した体験記を基に、障害者と性という極めて重いテーマを終始ほのぼのとした軽妙なタッチで描いたヒューマン・ドラマ。こういう主題を扱うのって、結局「障害者だって一人の人間なんだ」という誰も反論しづらい説教じみたお話になるか変に露悪的になりがちで極めてリスクの高い選択だと思うのだけど、本作ではそんなリスクを監督の絶妙のユーモア感覚で飄々と取り払い、素直に笑って泣けて主人公マークの「童貞卒業」を心から応援したくなる人間ドラマの佳品へと仕上がっておりました。「神も君なら許してくれるだろう」と仕方なく応援してくれる神父さんや、無表情に淡々と手助けしてくれる中国人の女性ヘルパー、そして何より深い愛情でもってマークとセックスしようとするセラピスト…、そんな個性豊かな魅力に満ちた登場人物たちも物語を優しく彩っています。そして本作が何より優れているのは、〝障害者と性〟という問題から出発しながら、次第に〝性欲と恋愛〟という人間本来の普遍的なテーマへと見事に昇華させたところでしょう。セックスから始まる恋愛、恋愛の過程で交わるセックス、いずれにせよ互いの身体を必要とし合うことで自分の価値を確認したいと願う男と女…。軽妙でありながら、人間のコミュニケーションのあり様を優しい目線でもって見つめた良品。お薦め。 [DVD(字幕)] 7点(2015-02-03 18:55:13)(良:2票) |
19. セイフ ヘイヴン
《ネタバレ》 「久し振りです、あの時は助けてくれてありがとう。落ち着いたら連絡する約束だったわね。おかげで私は今、安全な場所に居るわ。心配掛けてごめんなさい。でも、ここは本当に良いところなの」――。第一級殺人事件の容疑者として、警察から追われる身となったケイティ。刑事の決死の追跡をなんとか逃れた彼女は、高速バスへと乗り込み、アメリカ南部の小さな港町へと辿り着く。身分を隠し何もかもを捨ててそんな小さな港町で新たな生活を営むことになったケイティは、そこで男手一つで幼い2人の子供を育てる雑貨店店主アレックスと出逢う。数年前に妻を癌で亡くしたという彼に次第に心惹かれていくケイティだったが、執念深い刑事の捜査網がそんな彼女の幸せな日々を次第に追い詰めてゆく……。これまで、市井の中に生きる様々な人々の人生の一瞬のきらめきを瑞々しく切り取ってきたラッセ・ハルストレム監督の最新作は、そんな恋愛小説の新たな名手と称される作家のベストセラーを原作とした大人のラブストーリーでした。小さなヨットが美しい波間に揺れる静かな港町を背景に、色んな困難を抱えながらも常に前向きに生きる純朴な田舎の人々や大人社会に翻弄される何も知らない無垢な子供たち、そして現れる女を暴力で支配しようという自己中心的な男…。もうまさにハルストレム節と言ってもいいようなそんな個性豊かな魅力に満ちた田舎の人々をセンス溢れる映像で描き出す手腕は今回も安定感抜群でした。さすがにちょっぴりマンネリ気味な感はなきにしもあらずだけど、主人公ケイティが殺人事件の容疑者というミステリアスな設定が良いアクセントとなっていて素直に面白かったです。スタイル抜群のそんな超美人な彼女が、胸元ざっくり開いたTシャツ&短パン姿でチャリンコこいでるとこなんか健康的なエロティシズムが炸裂してて劇中のアレックス同様、僕のハートもイチコロでした(笑)。ただ…、最後のあのまさかのオチは自分的にはちょっぴり蛇足感があったけど(あの唐突な夢のお告げはそういうことだったのですね!)。うーん、自分としては最後までリアル路線で貫き通して欲しかったかな~。それでも、理不尽な現実に翻弄される男と女の切ないラブストーリーとして充分魅力ある作品に仕上がっていたと思います。うん、7点! [DVD(字幕)] 7点(2014-12-17 23:56:06)(良:1票) |
20. ゼロ タウン 始まりの地
《ネタバレ》 1982年、レバノン。イスラエルとの国境に近いパレスチナ難民キャンプ。常に死と隣り合わせのそんな地で、鬱屈した思いを抱えながら必死に生きる少年ファヘッドは、いつか父親とともに生まれ故郷へと帰り、親子で大事に育てているオリーブの苗木を大地に根付かせることだけを夢見ていた。だがある日、イスラエル軍の空爆によって、そんな最愛の父親と親友の命が奪われてしまう。いつかきっとイスラエルに復讐してやる…。そう心に誓うファヘッドに、ゲリラ組織からある命令が下る。それは父親を殺したかもしれない、撃墜された飛行機から捕虜となったイスラエル軍パイロットの監視役だった。「故郷に帰りたいのか?だったら俺のことを逃がしてくれ、お前をイスラエルの生まれ故郷まで案内してやるよ」と提案する獄中の捕虜に、当然のように反発するファヘッド。しかし深い煩悶の末に、彼の逃走を手助けしたファヘッドは、二人で生まれ故郷である始まりの地を目指して戦時下の危険な世界を疾走してゆく。当然、彼の手にはオリーブの苗木が握られていた――。冒頭からとてもリアルに描かれる、乾いた砂漠の難民キャンプで懸命に生きる子供たちの無垢でエネルギッシュな描写にはなかなか惹き込まれました。ただ、その後にイスラエル人とパレスチナ人というもう永遠に仲良くなることは不可能なんじゃないかという主人公二人が、旅を通じて徐々に友情を育んでいくというあまりにもベタな展開にはちょっと「う~ん」って感じでしたね。それに、手堅い演出とかは及第点ではあるのだけど、もうちょっと魅力的なエピソードとかキャラクターとかも欲しかったですかね。あの偶然巻き込まれたタクシー運転手であるタコ親父がもっと活躍するのかと思いきや、残念ながら速攻でお金も貰えずに退場させられちゃうし。それでも、主人公の少年とスティーブン・ドーフ演じるイスラエル人とのとても自然な演技とかはなかなか良かったっす。極めてオーソドックスではあるけれど、シンプルなロード・ムービーとしてなかなかの佳品だったと思います、はい。 [DVD(字幕)] 6点(2014-03-17 23:10:42) |