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プロフィール
コメント数 2387
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  第七の封印 《ネタバレ》 
世評高いこの映画を恥ずかしながらこの歳になって初めて観ましたが、何と言っても衝撃を受けたのが冒頭の死神の登場シーンでした。黒ずくめの装束に能面のように白い異相、そして空には雲が渦巻き背景は海で波が打ち寄せている。これほど完璧に硬質なショットは滅多に拝めるものじゃありません、もう身震いしちゃいました。観るまではこの映画は死神と騎士がチェスをしながら神学論争をするお話しだと勝手に想像してましたが、予想外にも2・3手指すたびにチェスは中断してしまい、その間は騎士と従者が旅芸人たちと居城を目指すロード・ムービーのような展開で有ります。この旅芸人夫婦たちのエピソードがけっこう面白くて、中でも座長はウディ・アレンに演じさせたらピッタリだろうなという可笑しさでした。そう言えばアレンは、『愛と死』で本作のラストの“死の舞踏”をきっちりパロって再現していますが、オリジナルの方だってシュールではあるがなんか笑いを誘うところもあり、改めてアレンのベルイマン解釈の深さに感心しました。 難解で暗い映画だという評判もありますが、私には思った以上にユーモアと生への希望が感じられました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-10-22 21:18:54)(良:1票)
2.  大脱走 《ネタバレ》 
120年を数える映画の歴史でもっとも有名なバイク・アクションを見せてくれるスティーブ・マックイーン、そして彼の短かった映画人生でも最高のヒーローはこのヒルツであることは間違いないでしょう。今まで映画の中で色んなヒーローを見てきたけど、本作のマックイーンを超えるカッコいい男にはいまだ出会えず、です。 荒唐無稽な大冒険スペクタルの様に見えますけど、これが実話をベースにしているというところがまた凄い(もっともマックイーンのキャラはフィクションですが)。収容されている捕虜たちの国籍もバラエティに富んでいて、米・英・豪・ポーランドと言うわけですが、各国の軍服の微妙な違いにもきちんと考証が行き届いているところは高得点です。それはドイツ側にも及んでいて、所長ルーガー大佐が首に下げている勲章がプール・ル・メリットであることに注目。これは帝政時代の最高勲章で、部屋に飾られた写真からも彼が第一次大戦で活躍した戦闘機パイロットであったことが判ります。ナチス政権では廃止されたこの勲章をいまだに佩用している設定からも、この人物がナチス信奉者ではないことをさりげなく暗示していますね(ロンメル将軍も生涯この勲章を佩用していました)。こういう細部に対するこだわりの積み重ねが、戦争や歴史もの映画の出来を左右するものなのです。 「脱走は捕虜となった兵士の義務である」と言う欧米の文化(?)はなかなか日本人には理解しがたいところがあります。私なら戦争が終わるまでのんびり収容所生活を楽しみますがね(笑)。
[映画館(字幕)] 9点(2013-09-11 22:02:28)(笑:1票)
3.  ダイ・ハード 《ネタバレ》 
こけおどしのアクション映画が量産されていた80年代に、突如出現した“頭のいい脚本”で初めて撮られたコップアクション・ジャンルの金字塔です。 派手な画も多いのでカネかかっている様に見えますが、基本はこの映画良い意味でB級テイストなんです。B・ウィリスのランニングシャツが、シーンが替わった途端に下地がまったく見えないこげ茶色にまで汚れちゃうなんて、ふつう超大作映画ではあり得ないけど、そんなこともちろん誰も気にしない。今でこそ中年アクションスターの座を守り続けているB・ウィリスですが、そもそもこの作品に抜擢されるまではコメディ・ジャンルの人だったこともお忘れなく。つまりキャスティングには全然おカネをかけていないわけですが、その“安い”俳優たちがウソみたいにその演じるキャラにはまりまくっているのはもう奇跡としか言いようがありません。 中でもA・リックマンのH・グル―バーは、その悪役ぶりがあまりにリアルだったので、その後の映画に登場するテロリストのキャラに多大な影響を与えています。私もこの人はてっきりドイツ人だと永いこと誤解してました。実は素のリアクションだったというH・グル―バーの最期の表情も、“悪役の死にざまベスト10”というランキングがあれば上位に入るのは間違いないでしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2013-06-01 00:34:07)(良:1票)
4.  ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 
グレース・ケリーはヒッチコックが思い描いた理想の女優、女優としてだけなく女性としても良からぬ感情を持っていたとさえ噂された存在、もっとも彼女には一顧だにされなかったけどね(笑)。そんなミューズがヒッチコック映画に出演したのは54年から55年にかけてのたった三本しかないけど、本作ではヒッチが彼女に密かに抱いていた妄想(?)をさらけ出した感がありますね。そんな風に言いたくなるほど本作での彼女の所作は優雅でセクシー、シミューズ姿でスワンに絞殺されかけるシーンは官能的でさえある。女性を絞殺するというのはヒッチの拘りが最も感じられるプロットでその集大成が『フレンジー』となるわけですが、ほんとはグレース・ケリーの絞殺シーンを撮ってみたかったんじゃないかな、実はヒッチコックは変態だったんですよ。 舞台劇が基のストーリーだけにミニマムな登場人物で、ヒッチ映画でも屈指のスピードのストーリーテリングです。また英国が舞台だけに登場キャラがみな上品で優雅、男性陣のスーツ姿も決まってます。グレース・ケリーも優雅で気弱そうなキャラだけど、しっかり不倫はしているというところは官能的ですね。そしてまるで連立方程式のように組み立てられている殺人計画・その破綻・鍵を巡るトリック、この複雑なプロットをこのスピードで観せられたらご都合主義的なところも気にならなくなります。スワンは庭から窓を通って侵入したと警察に思わせるはずでしたが、仮に殺害が成功しても室内に足跡が残っていないことから侵入経路を怪しまれることになったはずで、計画が失敗したからこそレイ・ミランドがケリーに罪を被せることに方向転換したのは咄嗟の反応だったわけですね。いわばプランBですらなかったわけで、これこそご都合主義と言えるでしょう。当時の英国の住宅事情は知るべくもないけど、全然別の家の鍵の見分けがつかないってあるんでしょうかね? 不倫をネタに脅迫してきた男を殺したという容疑でマーゴは死刑判決が下されるわけですが、これは死刑制度がある日本の眼から見てもあまりに厳しい司法判断ですね。けっきょく彼女は執行前日に真相が解明して助かります。これはちょうどこの頃冤罪で死刑執行されたティモシー・エヴァンス事件が英国では大問題化していたので、この悲惨な現実からのガス抜きのような効果があったのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-02-14 22:46:44)
5.  大殺陣 雄呂血 《ネタバレ》 
伝説の坂東妻三郎版のオリジナルは未見ですが(何でも現在視聴できるのはオリジナルの30%程度らしい)、調べるとこのリメイク版は登場人物たちの設定自体はけっこう変更されているみたいです。いわば『切腹』のような武家社会の不条理が主人公の背景に織り込まれており、一介の武士である小布施拓馬=市川雷蔵が謹厳なサムライから武家社会の掟に翻弄されて剣鬼に堕ちてゆく壮絶なストーリーです。本作の雷蔵は同時期の『眠狂四郎』シリーズと被ってしまいがちですが、狂四郎よりもはるかに深みのあるキャラだったと思います。密かに思いを寄せられていた志乃=藤村志保が自分の追手に手籠めにされそうになって自害するのを見過ごしてしまうところなんて、わが身を守るためとは言っても狂四郎なら絶対にほっとかないだろうな。もちろん激しく後悔はするけど、そうやってどんどん自暴自棄になった挙句の無残な境遇になっている波江=八千草薫との再会、そしてラスト20分の壮絶極まりない闘いになだれ込むわけです。 オリジナル版ではどれくらいの人数だったのかは不明ですが(ジョセフ・フォン・スタンバーグはオリジナル公開当時に上映館に通い詰めて何人斬られたか数えたそうです)、どう考えても本作で雷蔵が相手にした人数は邦画史上空前絶後、ギネス記録に認定してほしいぐらいです。梯子や大八車もよく捕物帳ものなんかで見かけますが、なるほどこうやって使うのか、と納得した次第です。雷蔵は本来殺陣が上手くなかったそうですが、その息を切らして必死に太刀を振りまわすところにはかえってリアルが感じられました。終いには地面に横たわって刀を振り回す、なるほど多人数に囲まれた場合はこうやって足を薙ぎ払うというのは理にかなっているかもしれません、でもこんな殺陣は今まで観たことないです。 一応は敵を全滅させて八千草薫と向き合いストップモーションで終わるというオリジナルとは異なるエンディングですが、勝ったという高揚感にはほど遠いカタルシスなき無常観に満ちた幕の閉め方でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-11-30 23:50:55)
6.  誰が私を殺したか? 《ネタバレ》 
邦題は明らかに『何がジェーンに起こったか?』のもじりで、60年代にベティ・デイビスをフューチャーして一世を風靡した『何が…』の亜流映画の一つと位置づけられるが、これが単なる亜流と片付けるには惜しい一編です。デイビスは『何が…』と似たような姉妹ものという設定ですけど、こっちはデイビスが双子の姉妹で一人二役というところがミソ。映画のタッチからしててっきりロバート・オルドリッチが監督かと思ったけど、メガホンを取ったのは俳優としてのイメージが強いポール・ヘンリード、オルドリッチも候補だったことは確からしい。 なんと言ってもデイビスの二役演技が素晴らしい。ファースト・シーンの葬儀の場面では妹マーガレットの方が顔を完全に隠すヴェールを被っていたりカット割りで二役演技をさせる撮り方なのかと思いきや、両端で姉妹が向き合って演技するカットもあって、これが実に違和感がない素晴らしい撮影技術なんです。現代ではデジタル技術でこんなこと簡単に撮れるわけですが、60年代で成し遂げたのは素晴らしい。と、感心してよく調べると、撮影監督は名手アーネスト・ホーラーじゃないですか、納得です。双子で大富豪の未亡人である妹を殺して成りすますのが基本プロットですが、このサスペンスを盛り上げる脚本がとても秀逸です。妹を殺して大豪邸に入り込んだデイビス、来客が待っていると執事に告げられても、デカいお屋敷なのでどこが客間なのか判らない。そこで執事に呼んでくるように先に行かせて、彼の動きでどこが客間なのか判ると「やっぱ私が会いに行くわ」と取り繕う。相続関係の書類にサインしなければならないけど、何度練習しても妹の筆跡に似せられない。そこで暖炉の鉄杭を握って火傷させて、左手でしかサインできないようにして切り抜ける。いくらそっくりだと言っても妹と生活していたわけじゃないから、たしかに細かいことが判るわけがない。こういうリアルなサスペンスを丁寧に盛り上げる巧みなストーリーテリングです。ここに貧乏暮らしだった姉のイーディスに惚れていた警部のカール・マルデンが絡むわけですが、この人がまた良い味出してるんだよなあ。けっきょく妹マーガレットも愛人と共謀して夫を毒殺していたわけですが、その結果死刑が宣告されてもマルデンを悲しませないようにマーガレットとして刑を受けるラストのデイビスには、ジンと来るものがありました。 やっぱベティ・デイビスは凄い女優だったな、と再認識させられた次第でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-08-18 22:29:02)
7.  タンポポ 《ネタバレ》 
『お葬式』に続く伊丹十三の監督第二作目ですけど、この初期二作はサブカル寄りの視点が濃厚で次作『マルサの女』からは社会派的な作風に変化します。でもこの『タンポポ』こそが伊丹の作家性がもっとも色濃く出ているんじゃないかと私は感じます、海外でも評価が高いというのは納得です。 世はあの『美味しんぼ』の連載が始まったころ、膨らみ続けるバブル景気の熱気の中で日本人の関心が食に向き始めてきます。その中であえて伊丹が今でいうB級グルメ的な位置づけだったラーメンをテーマに選んだところは秀逸な観点で、これこそまさに食のサブカルと言えるでしょう。設定やディティールは“ラーメン・ウェスタン”と称するだけあって西部劇のカリカチュアと捉えることができ、登場人物たちを漫画チックなキャラにマッチした撮り方だと思います。ストーリーと並行して挿入される食にまつわるエピソードというか小話がこれまた絶妙。駆け出しの頃だった役所広司を始め、豪華な大物たちがショートコントみたいな寸劇を見せてくれるとはなんと豪華なことでしょう!でもまだ無名だった役所の白服の男の存在感は大したもので、とくに洞口依子との牡蠣のエピソードはヤバいですね。初期の伊丹作品では劇中に一か所はフェティッシュなエロをぶち込んでくるのがお約束ですけど、その中でも直接的な脱ぎや表現はないこのエピソードがエロ度最高峰じゃないかと自分は思います。そして食の映画でもっとも大事なのは、その料理がいかに美味しく見せるかということです。その点では本作でのラーメンは、たとえ深夜に鑑賞していても食べたくてしょうがなくなるまさに“飯テロ”と言ってもいいんじゃないでしょうか。今や定番のネギラーメンは、本作がきっかけで全国に広まったという説があるそうです。あとあまり認識されていないようですけど伊丹十三は音楽のセンスが絶妙で、役所広司のエピソードでのマーラーの使い方は『ベニスに死す』に匹敵するんじゃないでしょうか。 製作から35年経ちましたが、いまだ本作を超える食がテーマの映画は日本映画界では撮られていないのが現実です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-12-18 22:14:38)
8.  第三の男 《ネタバレ》 
アントン・カラスの『ハリー・ライムのテーマ』や長回しのラスト・シーンであまりにも有名な映画。あのラスト・シーンは、個人的には映画史上最高のラスト・シーンだと思っています。グレアム・グリーンが書き下ろした脚本は、ジャンルとしてはフィルムノワールに分類されるかと思いますが、本家ハリウッドのノワールとは趣を異にする英国風味が特徴。舞台が占領下のウィーン(まだオーストリア国家の主権が回復されていないころ)で、登場人物の国籍も米・英・ソ・墺・ルーマニア・チェコスロバキアと国際色豊かで、まだ瓦礫が方々に残っているウィーンでロケしているのも貴重です。オスカー受賞した映像は大戦後にドイツ表現主義を復興させたような完璧な構図の数々、とくに夜間撮影の素晴らしさも映画史上最高かもしれません。最近の下手クソな撮影監督による何が映っているのかさっぱり判らない夜間撮影に比すと、モノクロ撮影ながら闇は闇、淡いながらも光が当たる部分はくっきりと見せる匠の技、とくに闇の中からオーソン・ウェルズの異相が突然にスクリーンに映し出される瞬間は鳥肌ものです。あとハリー・ライムの共犯者たちやアパートの管理人などの脇のキャラに、癖の強い顔の役者を揃えてそのアップショットが多いのも特徴でしょう。いちおう主人公と言えるのはジョセフ・コットンが演じる三流作家なんですけど、こいつが事件解決の糸口を作るけどハードボイルドとはほど遠いグダグダな男で、ライムを警察に売ってしまうのはなんか後味が悪い。ラストでまだ未練たっぷりのアリダ・ヴァリに強烈なしっぺ返しを喰らったのは、当然と言えば当然の結末だと思いますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-12 22:25:22)
9.  ダイナマイトどんどん 《ネタバレ》 
野球映画というジャンルが不毛の地である邦画界ではありますが、この映画はチャーリー・シーンの『メジャーリーグ』に匹敵する快作じゃないでしょうか。とは言っても、これは野球映画と呼んでいいのかはちょっと首を傾げるところですがね(笑)。中谷一郎や岸田森といった岡本喜八組の常連が再集結しているだけでなく『独立愚連隊西へ』以来のフランキー堺まで顔を見せてくれるのは嬉しいところです。「チッキショー」でおなじみの佐藤允が出ていなかったのはちょっと残念でしたけど。おまけに菅原文太と北大路欣也という東映実録シリーズの巨星が主演とくれば、ますます野球というよりもヤクザ映画って感じです。文太はお馴染みの広島弁ではなく小倉弁でセリフを捲し立てるわけですがこれが実に様になっていまして、彼ほど西国訛りが似合う俳優はいないんじゃないでしょうか(本人は東北出身ですけどね)。気になったのが岡源組の留吉役の俳優で、巨人の左投手で現コーチの宮本和知にそっくりで最初は本人かと思いましたよ。実はこの人は松竹新喜劇がホームの小島秀哉という方だということを後に知りましたが、今回再見してもやはり似てますよ、賛同してくれる人いますかね? というわけで野球+ヤクザ映画なのかは確かですが、任侠映画の強烈なパロディであることは間違いないです。クライマックスの決勝戦にまで持ち込んでゆくエネルギッシュな撮り方は痛快そのもの、とくにラストの大乱闘のカオスぶりはまさに岡本喜八の本領発揮としか言いようがない痛快さでした。ストーリーテリングとしてもふつうは嘉助と銀次は途中で何らかの和解が成立して友情を育むというのが定番ですが、ほぼ最後の一球までずっといがみ合い続けるという展開が面白かったです。北大路欣也のキャラも三振とる以外は打者にぶつけるだけ(それも頭!)、一つ間違えば殺人マシーンになりかねないシャレにならない男です。でももちろんカット割りしますけど欣也の投球フォームはなかなかのカッコよさで、この人野球選手経験があるんじゃないかと思いました。 まあ一つ言えることは、頭をカラッポにして愉しめる映画だということですね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-04 23:08:53)
10.  台風クラブ 《ネタバレ》 
製作当時の80年代にはなかった言葉だけど、この映画は中二病を患った中三が集団発作を起こすお話しだと思います。その中で彼ら彼女たちは性の目ざめや人間の根源的な生死の問題に苦しみ、そしてその中の一人はその問題に決着をつけたってわけです。この物語は徹底的に中学生たちの世界を描いていて、大人は実質的に三浦友和が演じる数学教師とその関連人物しか登場しませんでした。この三浦友和の演じる教師がいかにもいそうないい加減な俗物で、実にリアルです。山口百恵との共演でアイドル俳優というイメージが定着していた彼がよくこんな役を引き受けたと思いますが、本人の回想にもあるようにこの役が現在まで続く俳優人生の大転機となったことは言うまでもありません(当初は糸井重里にオファーしていて断られたそうです)。半面、工藤夕貴ら生徒たちの親は家庭内のシーンがあっても全くといっていいほど登場せず(寺田農だけが暗がりで誰だか判らないようになってワンカットだけ映る)、これが本作の独特のテイストを形成しています。またこの映画には有名な『犬神家の一族』のパロディとしか思えないカットやオカリナを吹く白装束の男女など理解に苦しむところが多々ありますが、相米慎二は脚本にはほとんど異議を唱えない監督だったそうなので、これは脚本家にそういうクセがあったってことでしょう。まあ、土砂降りの中で下着姿になって『もしも明日が』を踊り狂うところをワンカットで見せるという相米らしいシーンもあるので、これは良しとしましょう。とにもかくにも、本作は日本の80年代青春映画の最高傑作だと思います。 この映画は、長野県佐久市の中学校で夏休みに集中してロケしたそうで、在校生もエキストラ出演しています。完成後に体育館に生徒を集めて披露試写会を学校は企画していたそうですが、中身やストーリーを知らずに協力していた先生たちが怖気づいてけっきょく企画は立ち消えになったそうです。これはぜひ実現して欲しかったですね、きっと家族団らんで観ているTVに突然濃厚なラブシーンが流れて気まずくなるような雰囲気だろうなと、想像しただけで笑えてきます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-09-12 18:43:46)(良:2票)
11.  007/ロシアより愛をこめて 《ネタバレ》 
『ゴールドフィンガー』と初期007シリーズのトップ評価を競っていますが、個人的には本作がコネリー・007の最高傑作だと思っています。主題歌“ロシアより愛をこめて”も、シリーズ中もっとも有名な歌曲なんじゃないでしょうか。そういえばエンドクレジットに“次は『ゴールドフィンガー』でお会いしましょう”みたいな文言があるのに気が付きました。このころにはもう007シリーズの世界的なブレイクが確定していたんですね。 本作から007お得意のガジェットが登場してきますが、まだ仕掛けスーツケース程度で可愛いものです。それよりも男と男は肉体勝負、男と女は色気で勝負、のハード路線で撮られているのがポイントです。ダニエラ・ビアンキはこの映画の撮影時はまだ22歳(!)、その美貌は歴代ボンドガールの中でも文句なしのNO,1でしょう。彼女はこの後ロクに映画に出演せず60年代終わりには引退しちゃったんですから、実にもったいないことでした。ボンドに対するロバート・ショウがこれまた“記憶に残る悪役ベスト・ランキング”の上位にランク・インすることは必定です。ボンドとの列車内での格闘はまさにヘビー級戦で、迫力満点です。アクション・シーン全般もVFXをほとんど使わない肉弾戦が中心なので、引き込まれてしまいます。当時としては濃厚だったと思われるお色気路線もふんだんで、これぞ“大人のアクション映画”と呼ぶにふさわしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-06-28 22:16:40)(良:1票)
12.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
スパイというか対テロ活動がテーマなのに劇中で銃の発砲は一回もない、登場人物が誰も死なないし殺されないというある意味変わった作品です。それでいて緊張感が溢れるストーリーテリングは、監督は無名ながらけっこういい腕してるとお見受けいたします。最近ジョン・ル・カレ原作小説の映画化で秀作が続いていますが、あの超地味なル・カレのスパイ小説が欧米では再評価されてきているのでしょうか、いまやすっかり忘れられた存在となったハッタリ屋フレデリック・フォーサイスとは好対照です。とくに映画の前半はこの先どういう展開になるんだろうとハラハラさせられどおしで、これもフィリップ・シーモア・ホフマンの好演のなせる業でしょう。これが彼の遺作とは、ハリウッド映画界にとっても実に痛い損失です。ラストの彼がタクシーの運ちゃんに化けるシークエンスでは、彼の見せる怒りと憔悴が入り交じった表情は70年代のマーロン・ブランドを思い起こさせてくれました。もし長生きしていたら、きっとマーロン・ブランドを超える名優にまで進化していたんじゃないかと思うと、残念でなりません。 最後まで判らなかったのは、“誰よりも狙われた男”とは誰のことだったのかということで、シーモア・ホフマンが演じるギュンターのことなんでしょうか?なんか違う気がしますけど。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-02 21:29:54)
13.  タクシードライバー(1976) 《ネタバレ》 
この映画は自分にとっては観たときの精神状態を測定するリトマス試験紙の様なものです。もちろん引き込まれるのは鬱々としているときで、そういう状態ではほんとは観ない方が賢明かもしれません。もういろんなシチュエーションで10回は観てるけど、毎回初めて観たような感覚になるし、感情移入する登場人物も観るたびに違うんです。ちなみに今回は心優しい(?)ポン引きのハーヴェイ・カイテルで、せっかくジョディ・フォスターと仲良くしてたのに可哀想じゃないですか。 トラヴィスという男はけっきょくなんだったんだろうか、これは永久に解けない疑問かもしれません。この映画でのデ・ニーロは前半・中盤・クライマックスと別人のように形相が変わってしまうのがまた凄い。始めはちょっとコミュニケーション障害気味な表情に幼さの残る青年という感じが、目つきがテンパった凄味のある殺し屋風キャラに変貌してしまいます。それは、身なりは良いが不気味さを漂わせたマーティン・スコセッシを客として乗せてからなんです。スコセッシは悪魔だったのでしょうか、そう言えば『エンゼル・ハート』のルシファーの化身であるデ・ニーロは、本作のスコセッシの風貌と瓜二つでしたね。
[ビデオ(字幕)] 8点(2015-07-03 00:37:24)
14.  戦うパンチョ・ビラ 《ネタバレ》 
メキシコ革命って複雑な経緯のうえに指導者たちの裏切りの連続でちょっとかじっただけでは理解不能なんですが、それでも何をしたかは知らなくてもパンチョ・ビラの名前だけは有名ですよね。まあぶっちゃけて言えば山賊の親分なんですけど、メキシコでは正義のヒーローという位置づけされているみたいです。 メキシコ大好きのサム・ペキンパーが脚本書いた映画なんで、全篇に“パンチョ・ビラ愛”が満ち溢れていますね。ビラを演じるのはユル・ブリンナーですが、髪の毛ふさふさで髭まで生やしてるという彼としては珍しい役作りです。自分の存在感を示す為に政府軍に身内の村が荒らされるのを傍観したり11回も結婚(それも重婚)するなどと、ビラの人間像をあけすけに描いています。でも自分で飛行機の操縦に挑戦して失敗するなど抜けたところも見せるコミカルな一面もある人物なんです。彼にヤミ武器商人のロバート・ミッチャムとビラの側近チャールズ・ブロンソンが絡むのですが、この三人がそれぞれみごとにキャラが立っていて愉しめます。善人だか悪人だか掴みどころがないミッチャム、冷酷残忍で捕虜を殺しまくるけどとぼけたところもあるブロンソンというのが役どころです。戦闘シーンもなかなか迫力がありまして、大規模な空撮を使った攻城戦のシークエンスなどはかなり見応えがありました。 本作はテンポも良いしアクションもキレているという絵に書いた様な隠れた秀作なんですが、DVD化もされていません。TSUTAYAの“発掘良品”あたりでソフト化するには相応しい作品じゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-17 21:44:14)
15.  ターミネーター2 《ネタバレ》 
CG映像の底力を見せつけてくれ、現在に続くCG全盛時代を切り開いてくれました。もちろんT-1000型のリキッド・メタルの質感などの映像は今の眼で見ても全然見劣りしないけど、ゲーセンにあるゲームマシンやコンピューター・ディスプレイなどを見るとさすがに20年前の映画なんだなと実感させられます(そりゃまだウィンドウズ95すら登場してなかった頃ですからね)。そう考えると、この映画が見せてくれた映像がどれだけ時代を先取りしていたかが判るというものです。ターミネーターというストーリーは、元はと言えばキャメロンが観た悪夢がネタなんで、本作で彼は自分の熱い思いをすべてぶつけて完結させたはずなんですが、まさかまだ続編が撮られるとは計算外だったでしょうね(そのせいか、もう製作には携わっていません)。 ジェームズ・キャメロンの力量がピークに達しようとしていた時期なのでもう勢いで観客を魅了しちゃいますが、タイムトラベルに関してはけっこうボロが出ていることは確かです。どうもキャメロンは、現在タイムトラベルを考えるにあたって常識になっているパラレル・ワールド理論を端から無視しちゃっているのが苦しいところです。この映画で描かれる世界がパラレル・ワールドでないならば、ラストでT-800型の残骸とチップが溶鉱炉の中で蒸発した瞬間に未来が変わってシュワちゃんは製造されなかった事になり、その場でパッと消えてなくなるはずなんですがね。まあそれじゃあの号泣のラストが台無しになっちゃうので、あの展開で正解なんです。 この映画でのシュワちゃんは一世一代の男泣き演技です。“I’ll be back”などシュワちゃんのセリフは決めゼリフだらけですが、まさか“Trust me!”がアメリカ大統領と会談したとき某国首相に使われるとは思いもしなかったでしょうね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-06-05 18:34:48)(良:1票)
16.  タッカー 《ネタバレ》 
『ワン・フロム・ハート』『コットン・クラブ』といった大コケ大作を連発して青息吐息の状態だったコッポラにプレストン・タッカーの伝記映画を撮らせるなんて、製作総指揮ジョージ・ルーカスの激励と友情をひしひしと感じました。まさに夢を追う男タッカーはコッポラの生きざまと重なるところが多く、彼自身も良く判っていたんじゃないでしょうか。もっともこの映画自体も興行的にはこけてしまったみたいですけどね。 でもわたくしはこの映画が好きですね。ジェフ・ブリッジスは山師みたいな要素もあるタッカーを好演しているし、何より脇を固める助演陣が素晴らしい。とくにマーティン・ランドー、オスカーノミネートも納得の名演です。彼の演じるエイブ・キャラッツがこう言います。「良く母に言われたよ、人に近づきすぎちゃダメ、夢がうつるから」、なんて含蓄のあるセリフでしょうか。タッカーを破滅させようとする上院議員はロイド・ブリッジスで、これがブリッジス父子の唯一の共演映画なんですね。終盤はお約束の法廷劇になるのですが、タッカーの最終弁論は格調高くてなかなか感動的でした。ジェフ・ブリッジスは演説するのが実に上手い役者です。 それにしてもタッカー・トーピードはほれぼれするほどカッコ良い車ですね。撮影当時にコッポラの所有する2台を含めて47台が残存していたそうですが、現在では何台が残っているでしょうかね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-05-21 23:23:35)
17.  脱出(1972) 《ネタバレ》 
冒頭の有名な“デュアリング・バンジョー”の迫力は時代を経てもまったく色あせない、もうここだけで観るのを終わりにしてもいいんじゃないの(おっと)。このギター弾きドリュー役はこれが映画デビューのロニー・コックス、『トータル・リコール』のコーヘイゲン長官なんです。それにしても20年足らずでえらく老けたもんですよね。本作で見せてくれた奇妙奇天烈なポーズの死体姿、たしかに財津一郎ですね(笑)。 ジョン・ブアマンが見せてくれるもう悪夢のようなストーリー、その中にも彼らしい観るものを惑わすフェイクが散りばめられています。まずドリューの実に奇妙な死に方、バート・レイノルズは崖の上から狙撃されるのを見たと主張して仲間を震え上がらせますが、どう見ても銃で撃たれた様な映像ではないですよね。そしてジョン・ボイトが殺したのは果たしてあの“歯無しの男”だったのか、劇中でもボイトは真っ先に死体の口を開けて歯を確認しますが、前歯が取り外し出来る指し歯になっていて良く判らない。もうこの描写なんかはブアマンの確信的なストーリー・テリングですが、どうも違う人間のように観客には観えます(IMDbで確認すると、俳優自体は同一人物みたいでしたが)。そういう風にこの映画を捉えると、マッチョに見えるレイノルズが実はいちばん臆病で、彼の幻視がジョン・ボイトの人生を狂わせていったと言えるでしょう。中盤からレイノルズが死んだも同然状態でストーリーに絡まなくなるのも象徴的です。と、言うわけで色々な観方が出来ますが、70年代としては強烈なホモチックな作品なのは確かです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-04-16 21:39:10)
18.  ダーティハリー
ダーティハリーと言えばそりゃあマグナム44でしょ、ガキの頃お小遣い貯めてモデルガンを買いましたよ、金属製で金色に塗りたくったヤツを。この銃は見た目以上にでっかくて、大人でも普通の日本人の体格ではとても振り回せない代物です。イーストウッドみたいな大男じゃないととても使いこなせないでしょう。映画の中でも発砲音は普通の拳銃とは全然違いますよね、「ズドゥーン」って感じでまるで大砲ぶっ放しているみたいです。 イーストウッドが今あるのもこの役をゲット出来たおかげの様なもので、D・シーゲルはまさに恩人ですよね。この記念すべき第一作では、H・キャラハンがカッコ良いのは判るけど、なぜ彼がダーティハリーと呼ばれるのかといったことを含めてキャラの掘り下げ自体は十分ではない。その分A・ロビンソンの鬼畜ぶりばかりが目立っちゃってちょっと損ですね。最後にバッジを投げ捨てるシーンからも判るように、製作陣としてはまさかこの映画が大当たりしてシリーズ化されるなんて夢にも思ってなかったんでしょうね。 言っちゃあ身も蓋もないけど、本質はしょせんB級映画なんですよ。でも今や誰もこの映画をB級だとは思わなくなっている、アクション映画を変えたもっとも偉大なB級映画じゃないでしょうか。
[映画館(字幕)] 8点(2013-07-02 21:09:56)(良:2票)
19.  タイタニック(1997) 《ネタバレ》 
現時点で、間違いなく世界で一番有名な映画。『初恋のきた道』で、中国の山奥にひとりで住む老母の部屋に、中国版『タイタニック』のポスターが貼ってあったぐらいですから。じっさい私の周囲の20歳以上で、この映画を一度も観たことがないという人に遭遇したことがありません。 阿鼻叫喚のタイタニック船上でディカプリオ、K・ウィンスレット、B・ゼインの三人が見せる愛憎ドラマは、まるでハーレイクイン・ロマンスを劣化させた様なお話しで、ここら辺がJ・キャメロンの限界なんでしょうね。でもタイタニック沈没を再現したいという彼の執念は実ってます。実際に潜水艇を使って実物を調査したうえで撮られたタイタニック沈没の壮絶さは、“船が沈むときはこうなるんだ”という説得力のかたまりの様なものです。船体が途中で折れる映像の凄まじさは、『十戒』の海割れシーンのように映画史に残ることでしょう。 貶しはしましたが、死者が見守る深海のタイタニックで、ディカプリオとウィンスレットの魂が再会を果たすラストには、観るたびに必ず泣かされる自分です。
[CS・衛星(吹替)] 8点(2013-01-04 21:08:14)
20.  ダントン 《ネタバレ》 
フランス革命史はナポレオンが執政になるまでがゴチャゴチャしていて面白い。フランス革命のこの時期に起こったことは、20世紀に発生した幾つもの革命でも予言された様に繰りかえされていることは注目に値します。 このアンジェイ・ワイダの映画はロベスピエールとダントンの確執とダントンの失脚と処刑までを重苦しくもピリピリとした緊張感で引っ張る映像に圧倒されます。まるでリゲティを使った様な不安感をあおる音楽は、あたかも政治の激動に苦しめられる民衆の呪詛の様にも聞こえます。製作当時のポーランド事情からして、ダントンが『連帯』のワレサ議長、ロベスピエールはヤルゼルスキ将軍を暗喩していることは想像できます。ただこの映画は題名にも関わらずダントンよりもロベスピエールの描写の方に比重が重い様な感じで、彼を従来よりも人間的に見せているところが興味深い。「革命はサトゥルヌスに似て次々と我が子を喰らう」、これはダントンが裁判で放った文句ですが、歴史に残る名言です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-11-25 00:43:12)
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