1. ファミリービジネス
《ネタバレ》 よく、男女の「三角関係」、なんて言われますが、いやそれ、“三角形”ではないでしょ、と。その関係に、三角形と言えるような対称性は無いので、むしろ「Ⅴ字関係」なり「T字関係」なり、この非対称性をうまく表す言い方って、無いもんだろうか? そこにくると、この作品。親子三代、泥棒一家のオハナシ。爺さん、父、息子、こちらの方が余程、「三角関係」なんじゃなかろうか? それぞれがそれぞれに対し、微妙な関係を保ち、三角形を形成。瞬時瞬時を見れば対称ではなくとも、総じてみれば、どこか似たり寄ったり、この親にしてこの子あり、この孫あり。 で、この3人を演じるのが、80年代後半から役の幅を広げ活き活きし始めたショーン・コネリー、2度目のオスカーを受賞したダスティン・ホフマン、当時の若手の中で目立っているという程でもないけどまあそれなりに注目株のマシュー・ブロデリック(彼ぐらいの範囲までブラット・パックの一人に数えてちゃってよいものなんだろうか?)。なかなかに贅沢な布陣で、人気俳優をただ集めりゃいいってもんじゃないでしょ、とは、誰しも思うところ。お互い全然似てないしなあ、とも、誰しも思うところ。 しかし、お互い似てない、ってのは、この作品ではOK、というよりむしろ、狙い通り、なのかも知れませぬ。似てない3人の自己主張ゆえ、浮かび上がる三角形の関係性。爺さんのS・コネリーばかりがやたら背が高いのも一見奇妙だけど、M・ブロデリックとD・ホフマンが向かい合い、その向こうに正面向いてS・コネリーが立っていると、ちゃんと3人の顔の位置が三角形をなしている。 実際、この映画、この3人の配置をどうカメラに収めるか、ということに、やたら拘っているような。あるいは、それを楽しんで撮っているような。 前半、3人がバーで揃って会話するシーン。ここは、言い合うS・コネリーとD・ホフマンの姿が一人ずつ横から撮影されたものが繋ぎ合わされ、映像的にはその会話はブチブチと切られています。しかしこの場面、実際にどのように撮影されたのかは知りませんが、雰囲気的にははまるで、一気に演じられた二人の会話を複数カメラで実況風にとらえたような、勢いがあります。この段階ではまだ、二人は「線」の関係。それが、映画が進むに従い、時に対立を交えつつも何だか3人それぞれが互いに補完するような、「三角形」の関係が浮かび上がってきます。 いったん完成したような3角形が、後半、事件をきっかけにまたイビツになっていくのですが、この転機となる事件におけるM・ブロデリックの無能ぶりたるや、もう一体何やってんだか、ため息を通り越して笑っちゃうほど。笑いごとでは済まないけど。でも、爺さんから見た孫、父から見た息子、の姿ってのは、やっぱり、こんなもんでしょ。どうしてあそこまでドン臭いのか信じられぬ、と思っちゃうけど、その事実は受け入れねばならぬ。父もまた若い頃には爺さんの目にそう映ったのかもしれないし、爺さんだって若い頃には。 親子3人、困ったヒトたちではありますが、一方で、彼らを取り巻く移民社会みたいなものも描かれていて、血の濃さ、というものを感じさせます。泥棒稼業ってのは極端にしても、受け継がれていく何かが、そこにはある。自分自身は消えていっても、何かがそこに残っていく。 オープニングでニューヨークの高層建築を遠方に捉えたカメラが、視線を下に向けていくとそこには古びた街並みがあり、さらに視線が手元に迫るとそこには、何やら粉のようなものが撒かれていて。映画のラストでその正体が明らかになり、やがてカメラは視線を遠くへ移して映画冒頭のアングルに戻って、幕を閉じます。この大きな街の片隅では、こういう無数の物語が紡がれているんですよ、とでも言うような。 この作品、あまり評判がよろしくないようで、でも私は好きですねえ。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-10-13 07:25:57) |
2. プリティ・リーグ
《ネタバレ》 かつて存在した女性選手によるプロ野球リーグのオハナシ。ですが、登場人物のモデルとなった実在の人物が映画の中で紹介される訳でもなく、基本はフィクション、ということなんでしょう。そういう割り切りは、それはそれで潔く、ヘンな「実話縛り」も無くって、悪くないと思います。 ただ、コメディタッチとは言え、何とかギャグを盛り込もうと、ちょっと悪ノリが過ぎるような気もしつつ。 野球の腕前よりも、「女性らしさ」みたいなものが優先されてしまう理不尽、しかし最後のワールドシリーズでは息詰まるような熱戦でもって観客を魅了してみせる。無論、彼女たちは大きな制約の中でこの女性リーグをやっているんですが、映画は、その矛盾をこそ描けど、野球自体の描き方としては、充分だったかどうか。観客を熱狂させるにはそれだけの「陰の努力」もあったはず、だけど、必死のトレーニングが描かれるでもなし、これじゃ本人たちもまるでお遊びでやってるみたいで、イマイチ重みが無い。 トレーニングの描写の代わりなのか何なのか、主人公の顔はいつも、土ぼこりで汚れている。野球の場面だけではなく、牛の世話をしている時も。こうも汚れてばかりだと、演出として工夫が無い気もしてきます。 トム・ハンクス「以外の」男性の脇役陣は、なかなかいい味出してますね。あのちょっとヤな感じのスカウトマンとか。主人公たちが汽車に飛び乗るシーン、なんてのが結構、印象的な見せ場になってます。かつてどうしようもなかったクソガキが、面影を残しつつも立派なオジサンになってて、過ぎ去った年月を感じさせる、などというのもちょっと心憎い。 悪ノリが過ぎるような、とは言っても、その全部がハズしてる訳では、ないんです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-09-08 07:53:31) |
3. プロゴルファー織部金次郎5 愛しのロストボール
《ネタバレ》 いきなりネガティブな話をして申し訳ないのですが、このシリーズ、いつが止め時だったんですかね。もはや手遅れ感。 勝てない主人公がそれでもゴルフを続ける理由、みたいなのがこのシリーズのキモだったはずなんですが、気が付いたら主人公は「世界レベルのバンカーの達人」みたいなスゴい人になっちゃってて、ついでに武田鉄矢もだんだん自信満々の顔つきになってきてて、なんだかゴルフも映画シリーズも惰性で続けているみたいな。 前作が「ロッキー3」路線だったので、今回は「ロッキー4」のごとく、いよいよ世界に目を向ける、ってことなのか、個人的には「ロッキーVI(86年フィンランド)」版の織部金次郎を見てみたい気もするけどそれはともかく、舞台は海外へ。 ロケのついでにゴルフ三昧してるんじゃなかろうか、いや、ゴルフ三昧のついでにロケ撮影をちょこっとやってるんじゃないか、という疑いを持ちつつ、しかし、海外を舞台にするとなった時に、安直にハワイロケとかにしないで、東南アジアを舞台に選んでいるあたりは、ユニークな作品であろうとする矜持を感じさせます。バブルが崩壊した日本とは裏腹に存在感を伸ばしつつある90年代の東南アジア。 で、主人公と、財前直美演じる桜子との関係においても、この東南アジアをキーワードにした大事件が発生するのですが、これがもう、大事件過ぎて、唖然としてしまう。なんと彼女は、某国のお偉いさんに求婚され、彼の第四夫人として海を渡ってしまうというんだから、穏やかじゃない。というか、このシリーズにおいて、そんなのアリなんでしょうか。。。 で、最初の疑問「シリーズの止め時」についてですが、妊婦姿の財前直美がラストで、お腹から偽装の枕を取り出して「もうこんなの、や~めた」みたいになるのが、「もうこのシリーズ、や~めた」という風にも聞こえて、まあ、この作品でシリーズ打ち止め、ということで良かった気もしてきます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-07-20 09:03:56) |
4. プロゴルファー織部金次郎4 シャンク シャンク シャンク
さて、前作あたりでだいぶバカっぽい風味が出てきていい感じになってきたのですが、この第4作でとうとう、本物のバカ映画になってしまい、そろそろシリーズも終わりが近そうな。これはこれでいいんですけどね、ただやっぱり、マンネリの良さと、マンネリを打ち破ろうとする意気込みとの、バランスの難しさ。 これまで冴えなかった主人公が、ついにトッププロにまで上り詰めて自分を見失う、という『ロッキー3』、とは違って成績が相変わらずの主人公ではありますが、こちらはCMに担ぎ出されて自分を見失う、という、いわば同工異曲。チャンピオンなら負けて落ち込むところだけど、常勝ならぬ常敗オリキンは負けたくらいでは落ち込み度合いが足りないもんで、彼には、もっとヒドく、もっとアホらしい設定が待ち受けている。いやはや、あまりにもあんまりな、欠陥ゴルフクラブ。いくらなんでもあんまりです。「バカバカしい」から「バカ」への垣根を、一歩越えてしまった・・・。 前作まで設定上ほぼ活かせていなかった主人公の娘2人にも、急にスポットを当ててみたりして、色々と工夫はしてるんですけどねー。工夫というのも、悪くするとネタ切れ感を感じさせたりもして。 「川」が出てくると、そこにはタイミングを見計らったかのように(いや当然見計らってるんでしょうが)船が現れる。そういった辺りは、こだわりも感じさせつつ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-07-14 05:41:08) |
5. プロゴルファー織部金次郎3 飛べバーディー
オリキンシリーズ第3作。ナンセンス指数がいい感じに上がってきていて、いわゆる「ツッコミどころの多い作品」ってことになるんだと思いますが、それこそが作品の大胆さでもあり、楽しさでもある訳で。 仲間の下町連中がただオリキンを応援するばかりではなくって、例のゴルフ練習場がブラック企業と化し(金の無心ばかりするオリキンもブラック社員だけど)、アホらしくも危険極まりない仕事に追い込まれたオリキン、トーナメント前の大事な体であるにも関わらず転落事故を起こし、持病の腰痛を再発してしまう。メチャクチャな展開ですが、この腰痛エピソードはさらに複数のエピソードへの導入として最大限に活用されている(あと、ベーヤンの特別出演への導入にも)ので、文句を言ってはいけません。いや、文句は言ってもいいけど怒っちゃいけません。 転戦を繰り返すプロゴルファー映画らしく、冒頭から旅の情緒を感じさせます。通りかかった花嫁行列に笑顔を送る主人公、「結婚」という作品のサブテーマをここで暗示しているのかどうか。主人公が飛び乗ったバスの中で、若い女性プロゴルファーとの出会いがある。けれどこの二人はさすがに年が離れ過ぎで、恋愛には発展せず、父と娘みたいな関係ですかね。何となく武田鉄矢がエロそうに見えてしまい、何となく彼女を狙っているように見えてしまうのは、これはもうしょうがない。そういや1作目以来、「主人公の娘」というのが約2名、ストーリー上ほぼ活用されないまま登場し続けているけれど、あれ、何とかしてあげられないものなんでしょうか。 で、主人公が知り合ったこの女性プロゴルファー、の物語が、初勝利を目指す主人公の物語に絡めて描かれる。彼女の役を演じるのが新人の女優さん。この演技が正直、イタイ。きっと初々しさみたいなものを監督が求めすぎた結果、こんなコトになっちゃったんじゃないか、と想像しまてしまう。いったい監督は誰なんだよ、出てこい!と思ったら、そういや2作目からは武田鉄矢本人が監督してたんでしたっけ。とにかく、せっかく彼女もしっかり映画の中でゴルフの腕前を披露してくれたりしてるのに、演技指導にかなり難あり。。。 それを除けば、結構、楽しめます。財前直見は髪切りましたかね、性格も変わりましたかね。だいぶ暴走モード。オカマ枠は平田満からコロッケにバトンタッチし、オカマ演技をしていると時々、トシちゃんのモノマネをしているように見えてきたりもしつつ。というわけで、バカバカしい笑いあり、旅先の情緒あり。ラストのローカル線の駅なんかもいいですね、できればもうちょっと周囲の光景をカメラに入れてもらえたら、なお良し。 あと、同年の某作品と同じく、気になった点としては・・・まさか加山雄三、この程度の出演の仕方で、ギャラ受け取ったりしてないだろうな!ということですかね(友情出演、ってんだから、ノーギャラかな) [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-07-13 09:53:19) |
6. プロゴルファー織部金次郎2 パーでいいんだ
主人公のオリキンこと織部金次郎、前作でプロゴルファーとしての生き様を取り戻すも、年齢からくる肉体の衰えに加え、腰痛を発症して思うように体が動かせず、また引退を考えるようになる。そこに、川谷拓三演じる初老のゴルファーが、長年の夢である初勝利を目指し、オリキンに弟子入りするサイドストーリーが絡みます。 って、いや、これは大変な事態ではないでしょうか。なにしろ、日清「どん兵衛」が、マルちゃん「赤いきつねと緑のたぬき」に弟子入りして軍門に下る訳ですから。いや、カップうどんについては東洋水産の方が歴史が長いので、これでいいんだっけ。 とかいうCMの話はどうでもよくって。 今作のオリキンは、劇中で何度か声を荒げるシーンもあり、感情の起伏が表に現れるようになってきました。1作目はやっぱり、異様だったと思います。狙いとしては「スポーツ人情喜劇」とでもいったところなんだろうけれど、ようやくコメディらしくなってきたな、と。喜怒哀楽があってこそ、喜劇も活きるというもの。 浅草が舞台ということで、1作目でも浅草近辺の光景を取り入れて下町風情のようなものを出していましたが、2作目でもそれは健在。さらに種子島にも舞台を移して、「ゴルフ」と「海」なんて一見関係無さそうだけど、しっかり融合させてみせる。 タイトルでは「パーでいいんだ」とか言ってますけど、パーでは勝てない訳で、人生ときには冒険が必要、攻めの姿勢が必要。好きならば、それができるし、やらなきゃいけないし、やってダメだったらそれもまた良し。ってなところですかね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-07-07 09:09:05) |
7. プロゴルファー織部金次郎
《ネタバレ》 あの素晴らしかった刑事物語シリーズがなぜ、たった5作で終了し、なぜこんなよくわからないゴルファー映画のシリーズを始めてしまったのか。 と世の中の誰もが思っていたのなら、そもそも刑事物語が打ち切りになることも無い訳で、ま、そうは思われてなかった、ってことですね。 新シリーズ開始ということで(最初からシリーズ化が決定していたのかどうかは知らんけど)、この織部金次郎なる人物像を紐解きつつ、彼と周囲の人々との関係を描いていけば、これといって大きな事件など無くとも充分に映画になるんじゃないかと思うのですが(そもそも、人と人との出会い、というものが映画における「事件」なのだろうけれど)、意外に物語が「伸びない」という印象。 これは、この主人公が、縮こまった人物、として描かれていることとも関係しているのかも知れませぬ。あるいは武田鉄矢自身が縮こまってしまっているのか? そういう、縮こまってしまったヒトの、再生の物語。プロゴルファーって言っても、それはあくまでプロ資格を持ってるというだけで、トーナメント出場だけでメシを食っていけるのはそのごく一部だけ、とはよく聞きますが、なるほど、大会に出るだけでは金は稼げないし、稼げない中では大会に出るだけでも負担が大きく大変、ってことですね。そんな生活してりゃ、家庭もギクシャクしてしまい。 その彼の、再生の過程、というのがもう一つピンと来ません。アマチュアにバカにされつつも勝っちゃったりするのは、実はスゴイ実力の持ち主、スーパーショットの持ち主、ということなんでしょうけれど、そうなるとなぜこれまで一勝もできなかったのかが、よくわからなくなってくる。あるいは、そんなヒトでも勝てないくらい厳しい世界と言うのなら、その中でどうやって彼の再生を、描くのか。 彼の娘、ってのも登場しますが、一瞬だけ。エピソードとしては弱いし。周囲に後押しされての再チャレンジ、ではますます弱い。 結局のところこれは、「この中で一番、笑顔がステキな大人って、だ~れ?」ってヤツなんですかね。チコちゃんじゃないけど(いや、チコちゃんだな)。ヒロインたる財前直見の笑顔よりも何よりも、あの大滝秀治の笑顔が、主人公を導く。この笑顔こそが、主人公のパワーの源泉。主人公の再生ってヤツ、きっかけは何でもよくって、要は、再生を成し遂げるためには大滝秀治の笑顔が必要である、ということ。 これは、説得力ある! なにせこの無類の笑顔。もはや妖怪(笑)。 プラス、武田鉄矢のあの(阿部寛が並ぶことによりさらに強調される)短躯から発せられる、あの少しはにかんだような、少し寂しそうな、笑顔。 このシリーズやってた頃だったか、武田鉄矢が何かのテレビ番組で、プロゴルファーの打つ球は気迫が違う、みたいな事を言ってた記憶がありますが、この作品でも、その「球の気迫」を伝えんとばかり、カメラが飛球の行方を追いかけます。武田鉄矢自身も、プロゴルファーの名を映画で汚さぬよう、見事なフォーム(かどうか、すみません私にはよくわからんのですが、多分)を披露し、カップインを決めてみせる。 その辺りは、さすが、妥協ナシ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-07-07 05:54:29) |
8. ブレージングサドル
《ネタバレ》 メル・ブルックス作品な訳でして、だからパロディ映画な訳でして、西部劇のパロディ。 どういう訳か、メル・ブルックスの作品からは、こういう作品を楽しめないヤツはダメだ、こういう作品で笑えないヤツはセンスが無い、という無言の圧力を感じてしまうのですが、、、、、そんな事ないですか? いずれにせよ、笑えませんでしたと正直に告白するしか、無いんです。いや、『ヤング・フランケンシュタイン』は確かに楽しめたはずなのだけど、、、妙に不安になってきたり。 いや、笑えることだけが映画の魅力ではないはず、まずは西部劇としての世界がちゃんと作られていて、人種差別を笑い飛ばす心意気があって、悪くはないはず、なんですが、どうももう一つ、ついていけませぬ。 「ここで笑わないと、笑うところないよ」と開き直ったのは、孤高の芸人テントか、はたまた東北訛りの関西弁漫才、酒井くにお・とおるか。この作品ではメル・ブルックスご本人が澄ました顔で登場するも、どこでどのくらい笑ったらいいのか迷っている私のような人間の悩みなど知る由もなし、といった感じで、自信満々の表情。さらには別の役でも登場して二人一役、まさにノリノリ。そういえば、私はなぜ、メル・ブルックスの顔を知っているのだろう? と、またこれが私の不安を誘ったり。 終盤、ベニヤか何かででっち上げた街のセットで敵の目を欺くところから、映画の舞台はさらにカメラの外へ、「映画を見る者の目を欺く」映画スタジオの現場へと移り、もうこれ以上ないと言っていい程のハチャメチャな展開。ついていけない、というより、そうかこれは「どうだついてこれるか」という映画だったんですね。しかしこのギャグ、実は、「ウソを本当に見せる」という映画作りというものに対する、自己懐疑の無意識の表れ、なのかも知れませぬ。そう思えばなかなか深い・・・かどうかは知らんけど、まあ、貴重。 [インターネット(字幕)] 3点(2024-06-30 17:52:34) |
9. 風来坊探偵 岬を渡る黒い風
風来坊探偵シリーズ2作目にして最終作。こんなに面白いのに、どうしてたった2作で終わってしまったのか? まあ、内容、メチャクチャですからね。あと、60分ほどの小品にしては、コダワリ過ぎ、金かけ過ぎ、だったのでしょうか。冒頭からミニチュア特殊効果で嵐に揉まれる船の描写が、なかなかの迫力です。 で、その船の沈没事件の謎の解明依頼が、千葉真一演じる探偵・西園寺五郎のもとに持ち込まれる。よりによってこんないい加減なヤツに依頼しないでも、と思うのですが、この難事件を60分ほどに終わらせるには、彼の軽薄さと強引さが必要不可欠。軽妙な会話のやりとりが、物語をグイグイ引っ張っていきます。 現地に急行する彼の前に立ちふさがる、堀越海運なる悪辣グループ。そこには案の定、用心棒のような男がいて、これが案の定、曽根晴美。千葉真一演じる主人公もインパクトある眉毛でなかなか濃い顔立ちですが、ライバル格の方も顔の濃さでは全く負けていません。この男、一作目に出てたのと同一人物なのか、それともここは一作目とは別次元のパラレルワールドなのか、イマイチ不明。 敵対グループと戦うだけなら、主人公が軽薄なだけの「任侠指数ゼロの任侠モノ」になってしまいますが、そこは「探偵」を名乗るこのシリーズ。何やら怪しいヒゲ画家の存在など、謎が謎を呼ぶ展開、さらにはアクションも散りばめられて、この短い尺には到底収まり切れない高密度設計になっていますが、それをしっかりちゃっかりさばいてしまう、手際の良さ。 何かにつけゲラゲラ笑い、まるで危機に陥るのが楽しくてしょうがないような、若き日の千葉真一。まさに、この時この瞬間にしか、作れないような映画で、2作ぐらいで終わっておいて正解だったのかも。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-05-06 08:38:56)(良:1票) |
10. 復讐の荒野(1950)
《ネタバレ》 なんだかマカロニチックな邦題ですが(そういや『荒野の復讐』ってのは確かにありましたねえ・・・)、1950年、アンソニー・マン監督作品。西部劇と言いつつ、中身は父娘の愛憎劇。一種のホームドラマでもあります。 頑固ジジイの父親が父親なら、娘も娘。なんというか、リア王の悲劇は娘が3人いたことではなくって、一人でも充分だったんだなあ、と。 娘を演じる主演のバーバラ・スタンウィックが、素晴らしくハマリ役。髪型見てるだけでもイライラしてくる(笑)。いや、彼女だけでなく、登場人物みなそれぞれ、クセあり、インパクトあり。 ストーリー展開は、最初はじっくり、映画の3分の1くらいから、波乱が起こり始めます。なかなかにエゲツない展開。たしかに邦題の「復讐」ってのは、ひとつのキーワードになってます。 終盤、起死回生の父親が張り切るシーンが、印象的。その先には破滅が待ち構えていることを、見ている我々は予感しているだけに、余計に印象を強くします。 ラストは、大団円とは言えないまでも、せめて小団円か、と思わせて、それすらも否定する徹底ぶり。そこまでやるか、と。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-03-16 05:49:44) |
11. プリズナーズ・オブ・ゴーストランド
園子温監督とニコラス・ケイジ、禁断のコラボ。いわゆる「まぜるな危険」ってヤツですか。トイレ洗剤とかによく書いてますね。ははは。しかしアレ、そんなネガティブな書き方しなくても、「まぜなきゃ安全」とかでいいのでは、とか思っちゃうんですけどね。 とは言え、過去には事故もありましたから、PL法のもと、消費者の安全配慮、ということで。 では園子温とニコラス・ケイジを混ぜると果たして大変なことが起こるのかどうか、有害ガスでも発生するのかどうか、PL法にひっかかるのかどうか、ということなんですが、、、意外や意外、事前に想像したほどには、メチャクチャなことにはなっておらず。 いや、この内容で「事前に想像したほどではない」って、一体どこまでブッ飛んだなものを想像してたんだ、という話ではあるのですが、でも多分、皆さん同じ意見ではないでしょうか。 支配者側と被支配者側、2つの町を舞台に、アウトロー風のヒーロー(←役名もそのまんま)が活躍する近未来SFのノリ。その舞台となる街が、遊郭風の佇まい、未来と過去が入り混じったデタラメ世界。まさにこれ、「間違ったニッポン」そのもの、ではあるけれど、どうせ架空の町なんだし、何でもアリと言えば何でもアリ。せっかく日本人の監督がハリウッド映画を撮るんだから、他の監督では撮れないものを撮ってやろう、っちゅう事なんですかね。それなりにデタラメでありつつ、それなりにちゃんと風情もあって。この風情というのが遊郭のソレなのか、キャバクラのソレなのかはさておき。 アメリカ側で準備されたのであろう脚本を、監督がどの程度変更したのかあるいはしなかったのか、わかりませんが、この映画の物語にも「共同体」というものへの関心、みたいなものが感じられて、らしいと言えば、らしい。しかしそこにダークヒーローが一匹、紛れ込むもんだから、それなりに妙なオハナシにはなるのですが、かつて銀行強盗の際に遭遇した少年のことが心に引っかかり続けている、という優しさも、そこには盛り込まれて。 もうひとつの町「ゴーストタウン」が、大がかりなオープンセットを組んでいるとは言え、いかにもその辺の空き地で撮影しました、っぽい感じがしてしまって安っぽく見えるのが残念でしたが(撮り方、見せ方で、何とかならんかったもんか・・・)、にもかかわらずラストのカタストロフは、意外に見応えがあったり。 さて。園カントクの次のハリウッドは、あるのでしょうか。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-02-12 17:46:25) |
12. フローズン・グラウンド
ニコラス・ケイジ&ジョン・キューザックのお馴染みゴールデンコンビで贈る、サイコサスペンス。一方が変質者の犯人役で、もう一方がそれを追う捜査官役、ってんだから、どっちがどっちの役をやるのがよいか、迷ってしまいます。できればお二人とも、変質者役をやってもらいたいところ。 とか言ってふざけてる場合じゃないですね、なにせ、現実に起きた悲惨な事件をもとに作られた映画。なんだそうですから。 こういうのも、難しいですね。事件からどのくらい経てば、「映画化」が倫理的に許容されるのか。ふざけたことを書くヤツの言うことじゃなかろう、と言われたら、おっしゃる通りなんですが。 さて、作品ですが、やたらと画面手前の人物をナメるように撮影するカメラが、ちょっとやり過ぎ感があって、正直、これは見にくいだけなんじゃないかと。そういうシーンが繰り返されるにつけ、いささか気を削がれます。 しかし、あくまで硬派なサスペンスとして仕上げているのには、好感が持てます。中には、破綻寸前だから面白い、という映画もありますが、この作品は手堅くまとめた印象で、題材がセンセーショナルなだけに、バランス感覚としては好印象。 とは言え、映画であって、ルポルタージュではない以上、そこには脚色、演出が盛り込まれるのですが、ニコラス刑事の捜査と並行し、事件発覚の発端となった女性(シンディ)の危難を物語のもう一つの軸として取り上げることで、事件を「進行中のもの」として描いています。すでに殺害された被害者の姿を描く場面があり、ではこれもシンディの過去の回想シーンかと思いきや、実は現在を描いたシーンであった、という、まるで過去のシーンに現在のシーンが混ざるような仕掛け、時間の行き来が、ちょっと意表を突きます。 アラスカが事件の舞台、ということで、映画の景色にも寒さがしみわたり、一種の地の利とでもいいますか、雰囲気が出ています。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-09-30 06:52:46) |
13. 不死身の保安官
不死身の保安官、というと、いわゆる「マニアック・コップ」ですかね。別名、地獄のマッドコップ。違うか。 何がどう不死身かというと、こういう作品を見てると地球上最強の生物は「イギリス紳士」なんじゃないか、と思えてくる。世界のどこへ行こうが、誰が相手だろうが、我が道を行くのみ。 我らが主人公がポンコツなら、ヒロインは輪をかけてポンコツ。まさに、割れ鍋に綴じ蓋。 と、まあ、ハチャメチャなコメディ調の作品ではあるのですが、内容はというと、町が二つの勢力に二分されていて、そこに主人公がやってくる、という、意外にも『用心棒』の先駆けのような作品でもあります。さらには何と、『タクシードライバー』のトラヴィスもびくりの仕込み銃(?)まで登場。何と言う先見性。先見性はあるけど、ハチャメチャ。 いや、楽しかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-04-15 12:11:09)(良:1票) |
14. Fukushima 50
原作は門田隆将の『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』。当時の経緯を詳しく知りたいのであれば原作を読んだ方がいいだろうし(読みやすく書かれてるしね)、より冷静かつ俯瞰的に知りたければ、船橋洋一の『カウントダウン・メルトダウン』を読むのもよいでしょうし、NHKスペシャル『メルトダウン』取材班の『福島第一原発1号機冷却「失敗の本質」』などは、誰が良いの悪いのというのとは別として、事故の経緯に対する印象を一変させるかもしれません。あるいは別角度の視点として、高嶋哲夫の『福島第二原発の奇蹟』とか。 とは言っても、この『Fukushima 50』という映画は、原作本の内容をただ映像に置き換えて再現してみました、という訳ではなく、やはり、映画ならではの訴えるパワーをもった新たな作品として、しかしあくまで実話に沿ったノンフィクションとして、作られたものなんでしょう。 であれば、ウソを織り交ぜろとは言わないけれども、何かもう少し、「事実の再現」以外に、映画らしい演出があってもバチは当たらない気がするんですけどね。悲惨で絶望的な光景ばかりではなく、そういった光景に囲まれる中でふと目を上げれば、そこにはかつての美しい空があったり、自由に宙を舞う鳥がいたり。ってのはさすがにベタかもしれませんけれど、要は、対比、ですよね。 主人公の描き方も実にストレート。原作通りっちゃあ、原作通り。確かに、本店なり首相なりの(やや誇張された)愚かしい姿との対比はあるかもしれないけれど、ここには想定内の、我々の期待に完全に応えてくれるヒーローらしいヒーロー像しかない。同じ渡辺謙がかつて『硫黄島からの手紙』で演じた栗林中将が、我々の期待をはぐらかすようにいまいちヒーローらしからぬ人物、しかし(あるいは、だからこそ)印象的な人物として描かれていたことを、ふと思い出します。 この題材を、このタイミングで映画化して、それだけでも何かと難しい面が多々あるだろうけれど、その結果、こういう作品として仕上がって、ご苦労様なのですが、つい、「無難な冒険」、と呼びたくなってしまうのです。 [地上波(邦画)] 4点(2022-10-23 18:08:29)(良:2票) |
15. 風来坊探偵 赤い谷の惨劇
冒頭にニュー東映のマーク。ギザ付き10円玉を見つけた時のような微妙な嬉しさがありますね。 深作欣二の初監督作品、ということですが、後の実録路線などで見られるような手持ちカメラによる暴力描写はまだ見られません。まあ、サブタイトルが多少おどろおどろしいとは言え、基本はコミカル路線の作品ですしね。その代わり、俳優の細かい所作でもって、カットをどう繋ぐか、あれこれと工夫を凝らしたりして、才気はしっかり感じさせます。実際に雪山でロケしてるのも作品の雰囲気をしっかり出してるし、墜落したセスナ機を実物大で山の斜面に再現しているのには、ちょっと驚かされます。本物らしきセスナ機が登場するシーンもありますが、まさかこんな場所に着陸させて撮影したの?と、これもビックリ。 主演は千葉真一、こちらも初主演ですが、いやはや若い。もともと声にはそんなに貫録が無い人ではありますが、この頃はさらに甲高くて頼りないですね。しかし動きはさすがに機敏、殴り合いのアクションをキビキビと展開します。 一見風来坊の彼の正体は、セスナ機墜落事故の真相を追う私立探偵、だそうですが、そんな簡単に自分が探偵だと身分を明かしたり、依頼主についてしゃべっちゃったりして、よかったんでしょうか。よくは無いでしょうが、要はそういう、軽いノリ。ライバルとのやり取りのセリフも実にクサくって、まさにこれぞ、千葉真一。 これでもかと展開される銃撃戦、さらにはダイナマイトまで使用して、ド派手にブチかましてくれます。1時間ほどのいわゆる「B級」な映画ならではの、痛快かつデタラメな作品に仕上がってます。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-10-23 12:28:47)(良:1票) |
16. ファイナル・プラン
《ネタバレ》 どうしても最初、気になってしまうのが、ちょっとセリフが多すぎるかな、と。 女性と知り合って泥棒稼業から足を洗おうと自首を決意した主人公、しかし彼の元を訪れた警官が彼の盗んだ金に目がくらみ、彼を陥れようとする。というこのオハナシ、主人公が強引に巻き込まれてナンボのところを、警官二人が悪に手を染めるかどうか、やりとりをグダグダ続けるもんで、どうも失速してしまう。 というのが、この作品にアクションやサスペンスを求めた時に湧き上がってくる感想なのですが、この作品、むしろ「ドラマ」の部分に重きを置いているようで。確かに主人公が追い詰められる物語ではあるのですが、彼を追い詰める悪徳警官もまた、背水の陣、いわば追い詰められる存在でもあるわけで。 登場人物それぞれが、それぞれの立場で、それぞれの想いを持っている。悪徳警官の上司は、誰の味方なのか立場が揺らいでいる存在だけど、「ワンちゃん連れのオジサン」という特徴によって、何だか気になる存在、たり得てます。 もしかしたら主人公が一番つまらんキャラかもね。 という、ドラマの多重性みたいなもの。この作品、物足りない部分は確かにあるけれど、これはこれで魅力的でもあります。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-08-07 22:06:05) |
17. ファイナル・デッドブリッジ
《ネタバレ》 相も変わらず、たいして代わり映えのしないことやってるような気もするのですが、妙にオモシロかったです。いい意味で、映画が短く感じられました。 単にこのシリーズを久しぶりに見たから新鮮さが感じられた、という、自分自身の事情によるものではないことを祈りますが、、、 冒頭の橋の崩壊シーンがまず見どころ。巨大な建造物をCGで破壊するスペクタクルシーン、ってのは昨今増えに増え、少々食傷気味ですが、そういうマクロな描写の中に、脱出劇のサバイバルを織り交ぜ、もちろん恒例の残酷描写も絡めたりして、ミクロな描写と両立させているから、スリルを感じさせます。CGオンリーではなかなか表現しきれない「制御不能っぽさ」とでもいいますか。 シリーズ共通して言えることかもしれないけれど、残酷シーンのエゲツなさ、ってのも、非人道性を感じさせるものではなく、あくまで荒唐無稽、派手さのみ重視。アッケラカンとしているので、陰湿な感じはしません。眼科のシーンは多少、生々しいところもありますが、それとて抑制が効いてます。やり過ぎで興を削がないのが、このシリーズの魅力と言えましょう。 包丁が落ちてヒヤリとさせるシーンなんかも気が利いてます。血を出さずに済む場面は、出さずに済ませた方がいい、と言うことですね。 あっぶねー、という感覚。どんなスペクタクルにも負けないインパクト。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-08-06 18:05:41) |
18. ブルーベルベット
コレ、最初に見たのはたしか、木曜洋画劇場。いつもいつも「どマイナー」な映画ばかり放送してる木曜洋画劇場が、満を持して放送したメジャー映画が、よりによってコレ、ですからねー。いや、こんな時間帯にこんなの放送したらアカンでしょ、と。それでも多分、あちこちカットしてたんだとは思うけど、細かい事は覚えてません。すみません。 野原に人間の耳が落ちてて、醜悪な事件が発生して、ラストは花が咲いて鳥が囀る、というオハナシ。と書くと何のこっちゃ、てすが、でもそんなオハナシです。冒頭からそこは、のどかな田舎町であって、ラストもやはりそのまんま。別に何も変わりゃしない。人間の耳に虫がたかり、その虫は綺麗な小鳥に喰われる、という食物連鎖。田舎町の閉塞感って、そんな感じですよね。 そういう閉塞感をそのまんまヤな感じに描いたら、こうなるよ、という映画です。「奇をてらっただけ」と言ってしまうと身も蓋もなくって、そういうあまり人が映画にしなさそうなモノを映画にしてみせる、斬新さ、みたいなものは、ありました。 初めて見た際にやたら印象に残ったのが、「やたら画面を横切る、材木を積んだトレーラー」だったんですけど、改めて見ると、そういうシーン、そんなに多くはなかったんですね。これは意外でした。 あと、カイル・マクラクラン、そこはやはり、トランクスではなく、白いブリーフだろう、と思うのですが、どうでしょうか。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-06-19 21:26:56) |
19. 不良少女 魔子
《ネタバレ》 小野寺昭が若いですねー。でもあまり変わりませんねー。特にあの独特の、張りのない声が。 さて本作、暴力・犯罪に明け暮れる破滅的で無軌道な若者たちの群像劇、といいたいところですが、もう一つ、不良指数が上がらない。まあ、結構ワルい事はしてて、お陰で敵対組織とのイザコサに発展するにはするのですが、結局のところ、主人公たる不良少女・魔子、ってのが、意外に古風な女性なんですね。だから、どちらかというと、湿っぽい方向に物語は進んでいきます。誰のせいかって? それはもちろん、小野寺昭。 魔子が兄の藤竜也を刺してしまうまでの一連のやりとりを描く場面は、なかなかでした。他はイマイチ。 [インターネット(邦画)] 5点(2022-06-14 22:26:44) |
20. ブンガワンソロ
戦時中の何処やら、南の国を舞台にしたホームドラマ。といった感じで映画は始まります。現地人の役を演じてるのは日本人の役者さんなんですが、セリフは全部、現地語(だと思うけど、全くのデタラメ語だったりして)。字幕が入ります。ところどころ、背景が明るすぎて文字が読みづらくなるのが残念。とは言え、昔の映画の字幕ではこういうこと、時々ありましたよね。 で、そこに、道に迷ったという三人の日本兵が現れます。最初は何となくギクシャクしたところもあったけど、やがて日本兵の一人と、現地人の娘とが、いい雰囲気になってくる。しかしその幸せも長くは続かず、三人がその家に隠れていることが、他の日本兵にバレてしまう、というオハナシ。 戦後まだ6年という段階で、早くもこういう形で(多少なりとも夢を滲ませた形で)映画が作られてる、ということに、ハッとさせられます。現地ロケ、と言うわけにもなかなかいかないと思うんですけど、南国っぽさはとてもよく出てます。南国っぽく無いシーンも、無いわけでは無いですが・・・。 それより、クライマックスの追跡劇。何でしょう、これは。逃げる馬車、それを馬で追いながら発砲する兵士。そのスピード感。このシーンだけ見せられたら、誰だって西部劇の一部だと勘違いするのでは。なかなか気合いの入ったシーンでした。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-05-31 22:33:00) |