1. 岬の兄妹
《ネタバレ》 こーれーは、すさまじい映画だ。問題形式に感想。 妹が行方不明になるとき、兄はブランコの公園に寄っている。その心境は何か。 窓を塞いだダンボールを剥がしたのは食事中であった。なぜか。 妹は首から提げたぬいぐるみをはずすことを強く拒んだ。なぜか。 兄は行政や福祉に頼らなかった。理由があるに違いない。なんだろう。 腕の短い青年は、結局拒んだ。理由は何か。 ラストシーンの妹の振り返りには、すさまじいものがあった。それは何か。 なかなか難しいこともあるけど、映画自体はとても誠実で、人間を大事に扱っている。何よりそこが一番好感。 [DVD(邦画)] 9点(2020-03-23 15:49:43) |
2. ミッドサマー
《ネタバレ》 (170分ディレクターズカット版を見ました) 僕が知ってるこれまでの映画で比較検討したいのは、今村昌平『楢山節考』、そして『ホステル』である。まずは楢山節考から。 楢山節考は、姥捨て山の話。姥捨ての目的は“口減らし”のため。とにかく貧しい集落で、食うや食わずの日々を生きていかなければならない。そうすると、老人には去ってもらいたい。ある年齢になると、長男に背負われて山奥の指定の場所に放置される。 これはこれで残酷な話だが、老人への最低限の敬いは感じられた。 一方、ミッドサマーの棄老は穏やかではない。なんなら、老人へ最大限の恐怖と激痛を味わわせて絶命を促している。 けれどどうやら“口減らし”の必要はなさそう。白夜とはいえ、食糧や風雨に困っている感じはない。ではなぜ棄老するかというと、信仰のため。72歳に達すると、自らのいのちは終わり、赤ちゃんとして復活するという信仰。それゆえ赤ちゃんには老人の名前が付けられる。なので絶命を促される側の老人たちは望むところらしい。 北欧の神話や風習に基づいた信仰について、僕がコメントできることは無い。だけど、棄老の必然性という点では、楢山節考のほうが理解できるし、自然だし、最低限の敬いがある。とすると、ミッドサマーの棄老からは、信仰の達成というきれいごとよりも、合法的に人をぶっ殺してえ!という、制度化された狂気のように感じた。だから、狂気といえば楢山節考も狂気だけど、ミッドサマーのほうが数百倍も狂ってて、映画としての幸福感に満ちている。 制度化された狂気といえば、タランティーノ製作総指揮『ホステル』である。あれもヨーロッパの話、ただし東欧。グレートハンティングという、拷問や殺害を楽しむために作ったサークル。ただしめっちゃ会費は高額で、限られた富裕層しか参加できないようだ。そこに迷い込んだ何も知らない若者たち。で、若者たちは不条理にも暴力と殺意に飲み込まれすり潰されていく。 しかし、ホステルの違うところは、ラスト、若者側が形勢逆転して、ある意味勝利を勝ち取り、カタルシスで映画が終わる。 ミッドサマーは、こうした明瞭な勝利がないまま、胸糞悪く終わっていく。(それがたまらないんだけど。)けれどももし、ミッドサマーでもアメリカンな若者たちが、銃器とウィットを駆使して、長老たちをボッコボコにしてホルガを焼き払うことができたら(マヤの腕を引いて一緒に逃げ切れたら)胸がスカッとする映画になるだろう。それはそれで観てみたい。だから映画ラスト、メイクイーンにさせられたダニーが後日、我に返り、復讐と脱出の大活躍!っていう続編を期待してしまった。そんなアリアスターを見たくないけど、見てみたい。 [映画館(字幕)] 9点(2020-03-23 15:27:33) |
3. 水の中のナイフ
《ネタバレ》 登場人物3人とは、夫と妻と青年。特に夫と青年の、意地っ張りや図星やをえぐりあうやり取りが面白い。最初のうちはヨットの操縦を取り仕切る夫へひねくれる青年だが、青年がナイフを持っていることに気付いた夫は、青年との距離感を取りにくくなっていく。ヨットもヨットで、雨が降ったり座礁したりしてガンガン彼らをゆさぶっていく。面白かった。 密室サスペンスというほど事件が起こることはないので、アガサクリスティ的なものを期待するとガッカリする。僕は多少サスペンスを期待していたのでややガッカリしたのだが、もしかしたらしばらく忘れられない映画になるかもしれない。上に貼った画像を見ていただければわかるが、抱き合っているのは、なんと妻と夫じゃない。そう、夫じゃないんだな。これはすべての男のロマンだ。おかげで昨夜、ちょっとそういう夢をみてときめいた。 [DVD(字幕)] 7点(2014-04-06 22:34:08) |
4. ミスター・ノーバディ
《ネタバレ》 僕も時々思うことがある。信号待ちをしているとき、もう1メートル前に立つだけで、僕は車にはねられ、大けがをする。全く別の人生に分岐していく。もっと軽い分岐だってある。朝食をパンにするか、ごはんにするか、それでもその日一日の人生は異なるものになるだろう。 しかし我々は、時間が不可逆なわけだから、必ずどこかひとつのルートしか進めない。 でも、今の自分とは違う別ルートをすすんだ自分ってのも、存在しているのだ(多世界解釈)。この映画では、それら別ルートの人生を一通り旅していくことで、最初の分岐点(駅のホーム)へと収斂していく様は圧巻だ。 それぞれの人生ルートを回覧してみて気付いたが、この無数の多世界すべてをひっくるめて“自分”なんだなと。 [DVD(字幕)] 9点(2013-03-14 23:46:35) |
5. ミミズバーガー
《ネタバレ》 死霊の盆踊りとは比較にならないほど脚本はちゃんと作られているように感じた。なによりも、映画後半になるとジジイに感情移入してしまう。悲哀、孤独がしっかりと描けている。そう、『アバター』と同じ効果がきちんと発揮されている。そういう意味では映画になっている。 音楽がいい。70年代のアメリカの街並みに良く合うカントリーな音楽、ミミズを食べる時のなんだかワクワクする音楽なんか秀逸。 ミミズを食べる時、画面いっぱいに口を映してよーくみえるようにしてくれている。この描写は、のちのヤンシュワンクマイエル監督『ルナシー』に受け継がれている。唇=性器という命題を引き合いに出せば、そしてそこにミミズが群がっているのであるから、エロスだ。 ただ残念なのが、ミミズを本当に口に入れてはいるのだが、きちんと噛み切っていない。奥歯ですりつぶしていない。つまり本当に食していない。ここが惜しい。せっかく30年以上も時を越えて語り継がれることになった映画なのだから、ひとつ覚悟をきめて、生ミミズをきちんと食って欲しかった。 [DVD(字幕)] 2点(2012-06-14 21:41:54)(良:1票) |
6. ミスト
《ネタバレ》 『リーピング』と『es』を思い出します。 蟲もおっかないですが、神に救いを求めるために、人間が豹変していく様がやはりおっかない。自分もあのスーパーにいたら、おそらく主人公と一緒に行動するだろう。 教祖が撃たれ、撃った連中が店を離れたあと、スーパーではどうなっていたのだろう。そこが見てみたい。カトリックとプロテスタントみたく2つに分かれて、殺戮が始まるのかもしれない。とても恐怖であるが、映画としてははなはだ滑稽で楽しめそうだ。 [映画館(字幕)] 9点(2008-05-31 00:58:41)(良:1票) |
7. M:i:III
《ネタバレ》 1作目2作目ともにまだ見ていないのですが、これは見てしまいました。 スパイのはらはらどきどきを見たかったのですが、ラビットフッドを盗むまでの上海でのミッションの省略は、僕には手抜きに見えた。そこの過程がみたかったのだ。 なのでバチカンあたりはとても面白かった。 [映画館(字幕)] 8点(2006-07-20 00:44:14) |
8. ミリオンダラー・ベイビー
《ネタバレ》 どうだろうか。絶望的な怪我をしてもう動けなくなったときに、それで尊厳死は成立するのだろうけど、どうも積極的に同情できなかった。 ベッドで目が覚めたヒラリースワンクは、見違えるように生命力がなくなる。そして死にたがる。自殺行為までする。そうではなく、もっともっと生きたがってほしかった、俺たちに向かって生きたい!と叫んでほしかった。さんざんのたうちまわってから、クリントに死を依頼してほしかった。それが生への肯定ではないか。 最後の一筋の涙、あれはなんだろう。後悔?苦しみ?でもないかな。最高の幕引きを愛する人にやってもらうことのありがたさかな。あの枕元の白い明かりが神を感じさせるね [DVD(字幕)] 8点(2006-05-02 01:00:26) |
9. Mr.インクレディブル
《ネタバレ》 ついに我々のまえからヒーローが姿を消してしまったことを決定つけた映画です。 ヒーローとは、事件解決や人命救助のプロというだけではなく、全ての人にとっての正義のシンボルであるという社会的地位があるはずです。インクレディボーイ少年にとっても同様です。しかしインクレディブルは、彼にとってのヒーローであるにも関わらず、その責任を放棄してしまいました。インクレディボーイ少年と目線を合わせて向き合い、彼の前ではヒーローであり続けるべきです。(それが危険ならばそう説明して後日折り返すなどして対応)、それをしなかったインクレディブルは怠慢というか、業務上過失とも言えます。(そのあげくに家族を仕事に巻き込むんだからひどすぎる) 確かにインクレディボーイ少年はちょっとイタい子どもでした。けれども、ヒーローとはそういったクラスの隅にいるような子どもにも平等に光を照らす絶対的正義の存在でなければいけません。 自分の少しの挙動が少年の人生に大きく影響を与えるという責任を自覚してこれからもヒーロー業頑張って欲しいです。そして二度とインクレディボーイ少年のようなかわいそうな思いをさせないで下さい。 この映画は、ある孤独なオタク少年が、憧れのヒーローに裏切られ、あげく何もかも破壊されるという、悲しい話です。 ヒーローが少年を殺すなんて、教師が生徒を殺すよりも酷い。 [DVD(字幕)] 3点(2006-02-14 22:51:35)(良:2票) |
10. ミミ
アレックスのところでも書いた通り、僕はギャスパーノエ被害者。なのに彼関連はこれで見終えてしまいました。この作品は『優しいギャスパーノエ入門Ⅰ』と言った感じか。大人の顔が画面の上のほうにあって、ミミの視点から撮られたアングルがミミの怪訝な心情にフィットする。脚本はこれといって面白くないが、病んだ『地下鉄のザジ』と言う感じですな。 7点(2004-12-09 02:09:01) |
11. ミクロコスモス
虫なんてものを本当に近くで見ることなんてない。アニメのミツバチハッチとかそんなもんだろう。こんなにもじっくり見せられると、あいつらの姿はなんとグロテスクで完璧で機能的なんだろう。この造形美をモチーフに壮大なアリアで盛上げていく不思議な映画。ストーリーはないが瞬間瞬間を生きる様々な虫達の残酷さ優雅さ可笑しさが映画を進めていく。カタツムリ2匹の濃厚なラブシーンはとても官能的で印象にのこっている。 8点(2004-11-22 01:53:24)(良:1票) |
12. ミクロの決死圏
SF映画はかくあるべき 9点(2004-09-24 23:34:48) |
13. 未来世紀ブラジル
ロストインラマンチャを観てテリーギリアムの映画を観たくなったので観てみました。なんというか、テリー監督はやはりすごい男だったです。こんな映画創れるなんて人のなせる業ではありません。次から次へ現れるテリーの妄想とイメージにただ圧倒されます。やりたいことやったもん勝ちというのを信じて突き進んでいます。それでいてストーリーは破綻することなく安定しています。 時計じかけのオレンジをやりたかったのでしょうか?気がつくとキューブリック調のシンメトリーな廊下だったり、スタンリーを意識しているようでした。ラストシーンは正に時計じかけのアレックスを彷彿としました。どっちにしろ、管理社会は程ほどにってことです。 9点(2004-08-07 00:15:00) |
14. ミトン
ステキな10分間を本当にありがとう。 10点(2004-08-01 01:14:01) |
15. 水の女
UAがいいんだろう。UAの透明な存在感が銭湯の大衆的なイメージからちょっと浮いて、それがこの作品を個性的にしている。DVDくらいの画質で見ると良い。ドラマ展開も結構面白い。平均的に不幸な映画。浅野もこれくらいの規模の邦画をやらせたら右に出るものはいないです。でも煙突でああやって死ぬのはちょっと「水の女」らしくなかった。 7点(2004-05-18 13:07:43) |
16. 道(1954)
オープニングのばあさんの全部説明ゼリフの泣き叫びはあるいみ斬新です。エンディングのザンパノの涙。巨漢の涙。観ててこっちまで胸が痛くなります。ジェルソの笑顔が忘れられない。 9点(2004-01-30 11:59:44) |
17. ミッション・クレオパトラ
モニカベルッチがあまり出てこなくて残念。ノリが少林サッカーみたいで好きです。 7点(2004-01-05 17:57:10) |