2141. ボーイフレンド
《ネタバレ》 ツイッギー、ツイッギー、ツイッギー! 本作で当時スーパー・モデルだった彼女が映画界にデビューしたのですが、目を付けたケン・ラッセルはやはり天才です。永年観たいと思っていたのですが、このたびようやく願いかなって鑑賞出来ました。ジュリー・アンドリュースが主役を演じて世に出るきっかけとなった元ネタミュージカルを、ケン・ラッセルお得意の劇中劇にしたアイデアはナイスです。そして、ツイッギーがとにかく可愛いんですよ、これが。バスビー・バークレーへのオマージュも完璧で、レコードの上でツイッギーとクリストファー・ゲーブルが踊るシーンにはほんとうっとりさせられました。劇場に現れたセシル・B・デミルをもじった大監督に良いとこ見せようとコーラス・ガール達が張り切るところなぞ、まるで吉本新喜劇を観ている様な可笑しさです。その中でもアントニア・エリスが一段と強烈な役柄で、なんと言いますか片桐ハイリみたいなご面相でまいりましたよ。DVD化、熱望です。 [ビデオ(字幕)] 8点(2010-03-18 23:22:44) |
2142. レマゲン鉄橋
《ネタバレ》 名手スタンリー・コルテスのカメラが存分に堪能できます。特に冒頭、疾走するM24戦車とドイツ軍守備隊がライン河を挟んで撃ち合い、通りがかった列車を戦車が吹き飛ばすオープニングは屈指の名シーンです。チェコにあった廃棄予定の街を丸ごとつぶしちゃったという破壊シーンは、さすがに息をのむ迫力です。避難民が渡っている橋を爆撃したり、傷病兵を運ぶ列車を攻撃したりと米軍が結構ダーティなところをきっちり見せてくれるところは好感が持てます。ドイツ人が英語を喋るのには困ったものですが、R・ヴォーン始めドイツ側の役者はみな良い演技しています。反面米軍のJ・シーガルはどうも演技がわざとらしく大袈裟で白けてしまいます。B・ギャザラは存在感ある演技で盛り上げているのにね。戦争というものは、末端の兵士たちにとっては勝ってもくたびれるものだと言うことでしょう。 [映画館(字幕)] 7点(2010-03-17 21:31:19) |
2143. パフューム/ある人殺しの物語
《ネタバレ》 「香り」を映像として表現するのにはまあ成功しているのではないでしょうか。でも「香り」と言うよりも「臭い」の方が強烈な印象として残ります。いかにもヨーロッパという雰囲気の汚らしいパリが良く再現されています。主人公がいかにも風呂に入ってなくて垢まみれという感じでとてもリアルですし、パリの街中に漂う臭いを表現した映像には思わず「おえっ」としてしまいそうでした。主人公の行動など突っ込みどころはいろいろありますが、あのラストも含めてダークファンタジーとして観れば結構楽しめました。 [DVD(字幕)] 7点(2010-03-17 01:42:13) |
2144. クロスボー作戦
《ネタバレ》 第二次世界大戦でドイツが実戦に投入した秘密兵器V1号(飛行爆弾)V2号(弾道ミサイル)をめぐって繰り広げられる攻防戦を描いたアクション映画。物語は史実を巧みに取り入れて、前半三十分はドイツ側の視点で秘密兵器開発の過程を詳細に描いています。新兵器に勘付いた英国はジョージ・ペパードら三人のスパイをV2号開発工場に潜入させます。この辺りから創作されたスパイストーリーになるのですが、その工作員たちや周辺の人物が無慈悲な運命に陥るところは、いかに英国製アクションものらしさが出ています。製作はイタリアの大プロデューサーのカルロ・ポンティなのですが、こいつが実はとんでもないはったりをこの映画でかましてくれるのです。タイトル・ロールは彼の奥さんであるソフィア・ローレンなのですが、本編が始まってもなかなか登場しません。40分たってやっと画面に現れるのですが、わずか15分であの世に召されてしまい、ハイ、お疲れ様でした。この映画のS・ローレンは、映画史上で出演時間が最も短いタイトル・ロール俳優としてギネス・ブックに申請したいぐらいです。J・ペパードはいまいち影の薄い俳優ですが、S・ローレンの後にタイトルされてはさすがの彼も怒ったのでは。というわけで、この映画は下手な脚本のせいか登場人物やエピソードのつながりが悪くて、なんか奇妙な印象が残ります。ラストは『ナバロンの要塞』を彷彿させる秘密基地大爆破シーンで、ミニチュア・ワークを駆使した特撮は結構迫力ありますが、なぜか合成シーンがお粗末なのが残念でした。 [ビデオ(字幕)] 4点(2010-03-16 00:30:42) |
2145. ウェス・クレイヴン’s カースド
《ネタバレ》 ウェス・クレイヴン版の狼人間もの。舞台はハリウッドのTV業界で、楽屋落ち風のネタも盛り込んでいます。「正々堂々と勝負しようだって? ここはハリウッドよ!」なんてセリフには笑わせていただきました。結構グロ描写もありますが、『スクリーム』系のプロットでいかにも安っぽい仕上がりになってしまいました。それにしても、あの変身シーンはひどかった。そして狼人間がちっとも迫力がないのが致命傷。C・リッチの熱演にプラス2点としておきましょう。 [DVD(字幕)] 5点(2010-03-14 02:26:03) |
2146. 未来惑星ザルドス
《ネタバレ》 この映画、相当低予算で製作されたみたいで、ショーン・コネリーのギャラに至ってはジョン・ブアマンが自腹を切ったと自ら語っています。その分ブアマンがやりたい様に撮ったわけで、まさにカルトSFの極致にふさわしい怪作です。有名な浮かぶ石像や、不老不死となった未来の人類像など、ブアマンのイマジネーションが低予算故の独特な味わいがある奇妙な映像を見せてくれます。語られる世界観は、暴力の肯定と死の賛美が根底にあるので抵抗を感じさせられますが、私はわりと好きです。シャーロット・ランプリングは全作品中で随一の美しさではないでしょうか。ベートーヴェンが流れる素晴らしいラストシーンは、その後いろんな映画でパクられました。 [DVD(字幕)] 6点(2010-03-13 19:59:39) |
2147. エレファント・マン
《ネタバレ》 確か本作は初めて観たデヴィッド・リンチ作品だったのですが、その後しばらくはてっきり英国人の監督だと思っていました。それほどヴィクトリア朝時代の雰囲気が巧みに再現されていて、おそらくこれからもコスプレドラマはリンチが撮ることはないでしょうね。煙モクモク吐き出す煙突など、リンチらしさは色々なシーンで観られますが、やはり見世物一座のフリークスたちがエレファントマンを逃がすシークエンスは最もリンチ色が濃厚でした。しかしジョン・メリックを無垢で純真な人間として描いているのは気に入りません。無知で残酷な庶民階級と、偽善的な上流階級を際立たせるための脚本テクニックかもしれませんが、物語の本質を薄っぺらにしています。それにしても、『イレイザーヘッド』を観て無名のリンチを起用したメル・ブルックスの目利きぶりには感服いたします。 [映画館(字幕)] 7点(2010-03-12 20:25:12) |
2148. パニック・フライト
《ネタバレ》 ハイジャックものかなと思って観始めますと、途中から機内での犯人とヒロインが心理戦を始めて、この駆け引きがなかなか面白い。低予算のB級映画ですが、脚本がしっかりしているので安心して観れます。遅まきながら、ウェス・クレイブンの力量を見直しました。犯人役のキリアン・マーフィが不気味な雰囲気の割には結構弱くて、ヒロインにさんざんんな目にあわされるのが可笑しいですよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-03-11 01:57:04) |
2149. ブラッド・ダイヤモンド
社会性を持ったアクション映画を撮るなら、現在のアフリカ情勢はうってつけなのでしょうね。最近は、なんかアフリカ映画にハズレなしといった感じですね(全部観ているわけじゃないので、あくまで私のイメージですが)。本作もアクション・社会性・役者の演技のバランスが良くてぐいぐい引き込まれてしまいました。しかし、アフリカって人の命が本当に安いですね、悲惨なことです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-03-11 01:36:54) |
2150. 楽園をください
《ネタバレ》 名匠アン・リーらしい叙情あふれる作品でした。面白いのは脚本で、普通だったら、さあ盛り上がるぞというところが何も起きずに通り過ぎてしまうところで(ジェイクとスー・リーの結婚、ピットと出会う場面、ラストの別れのシーンなど)、下手な監督だと多分相当な駄作になってしまうのでは。脚本を書いたJ・シェイマスはさすがアン・リーとは数々の作品でコンビを組んでいるだけあって、血なまぐさい戦争ものとは思えない味わい映画になっています。ジュエルという人は有名なシンガーだそうですが、結構良い演技していました。女優としてもっとたくさん映画に出て欲しいな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-03-07 21:35:38)(良:1票) |
2151. アメリカン・サイコ
《ネタバレ》 ストーリーほぼ原作小説通りですが、原作にある様な凄まじい殺人描写が映像化されているわけではありません。昨今ではイーライ・ロスの様な監督も出てきましたので、そういう方々がリメイクしたらもっと凄惨な映画になるでしょう。ラストはこの映画では夢落ちの様な終わり方ですが、原作ではベイトマンが陥る不条理な狂気の世界として表現されていて、そこら辺が上手く映像化されたとは言えません。その分ユーモアと言うかギャグの要素が加えられていて、名刺バトルのエピソードやベイトマンが鏡にポーズをとりながらSEXするところなど、思わず笑ってしまいました。まあ映画化するには難しい題材だと思いますよ、この小説は。 [DVD(字幕)] 5点(2010-03-07 01:57:51) |
2152. クリスティーナの好きなコト
わたくし、シモネタやおバカな映画は決して嫌いじゃないですが、この映画はちょっと趣味ではない。いくらなんでも、くだらないにしても限度があるってもんです。キャメロン・ディアスは下品でおバカな女を演じたら天下一品ですが、『メリーに首ったけ』の方がそりゃ良かったのではないかな。本作自体が『メリー』の二番煎じ企画ですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-03-04 21:19:30) |
2153. ゴッドファーザー
今は無き新宿プラザ劇場で封切時に観ましたが、その時受けた衝撃は未だに忘れなれない思い出です。40年近くたって観直しても、その悪魔の様な映像美にはただため息が出るばかりです。そして再確認させられたのは、アル・パチーノの緊張感に満ちた凄まじい演技です。私を映画の虜にしてくれた不朽の一本です。 [映画館(字幕)] 10点(2010-03-03 23:54:46) |
2154. ドレッサー
《ネタバレ》 さすがに舞台劇の映画化だけあって、脚本と台詞が凝ってますねえ。座長、付き人、三人の女性(座長の妻・舞台監督・若い女優)が、劇中演じられる『リア王』の登場人物にシンクロする重層的な構造になっています。出来れば『リア王』の芝居をもっと見せてくれたら嬉しいのですが、なんせアルバート・フィニーがリアを演じているのですから。トム・コートネイがまた絶妙なオカマ演技で、完全にフィニーを喰った名演です。「座長が探しているのは、若いコーディーリアじゃなくて軽いコーディーリアなのよ」、この名セリフには爆笑でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-03-03 23:25:45)(良:1票) |
2155. モンティ・パイソン/人生狂騒曲
《ネタバレ》 モンティ・パイソン作品中屈指のネタのヤバさですが、「趣味悪い」と言われても私はこの映画大好きです。『クリムゾン、老人は荒野を目指す』というギリアムが監督した短編が最初に上映されるのですが、これが本編よりカネがかかったというコテコテのファンタジーものでギリアムファンはにんまりです。そして本編、冒頭登場するのがあの『シーマン』です。一時期はやったゲームソフト『シーマン』のルーツはこんなところにあったのですね。そして極めつけは『出産の神秘 第三世界編』で、「すべての精子は神聖なり!」と『オリバー!』をパクったミュージカル仕立てでカトリック教会を愚弄するパワーは、さすがモンティ・パイソン! はっきり申し上げて、中には出来の悪いエピソードもありますが、本作を観て「人生とは何ぞや」という究極の命題に思いをはせるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2010-03-01 22:14:41) |
2156. connie & carla コニー&カーラ
《ネタバレ》 トニ・コレットと言う女優は顔の造りがケバケバしいなと前から思ってましたが、オカマに化けるにはピッタリだったのですね(笑)。主演のお二人さん、ほんと歌が上手いのに関心、ハリウッドの女優は芸達者が多いです。ストーリーは明らかに『お熱いのがお好き』をアレンジしたものですが、「完璧な人間はいない」という有名なオリジナルのオチには到底及ばなかったのは残念です。メイキングのインタビューを観ると、誰もが『お熱いのがお好き』について一言も触れないのが可笑しかったです。きっと著作権の問題があるからでしょうね。 [DVD(字幕)] 6点(2010-02-28 10:40:54)(良:1票) |
2157. スリーピー・ホロウ
《ネタバレ》 ティム・バートン作品の中でも屈指のグロさ、心ゆくまで堪能させていただきました。科学と理性を信望するデップが幽霊騎士と死闘を繰り広げるわけですが、観終わって100分程度の上映時間とは思えない密度の高い展開でした。でもその分謎解き部分が駆け足で、オランダ名前の村人たちは誰が誰やら良く判らん。まあオカルト・アクションとして楽しむのが正解でしょうね。それにしても、C・ウォーケンさん劇中台詞一言もなし、ただ『ウガァー』とうなるだけ、まるでフランケンシュタインの怪物みたいでご苦労様でした。 [DVD(字幕)] 8点(2010-02-23 21:31:51) |
2158. 聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ
《ネタバレ》 “早い、安い、美味い”をモットーとするB級映画の帝王ロジャー・コーマンが監督しています。アル・カポネが敵対勢力を粛清した、史上名高い『聖ヴァレンタインデーの虐殺』を再現したドラマです。コーマンが監督と言うとどこかイメージが悪いですが、実は彼は監督としての力量もなかなかのものです。本作も意外にセットなど結構丁寧に作られていて、そこそこ予算は使っている様です(とは言え、そりゃメジャーの大作に比べれば屁みたいなものでしょうが)。カポネが敵対するモラン一家と小競り合いを繰り返し、ついに7人を血祭りにあげるまでを、実録タッチのスピーディーな展開で見せてくれます。カポネ役がジェイソン・ロバーツで、ちょっと実在のカポネとはイメージが違いますが、本作のカポネ像は小心で冷酷な人間として描かれており、ロバーツの演技も存在感がありました。 面白いのは本作では人物紹介や心象風景の描写にナレーションを多用していることで、手抜きしているようにも見えますが、これが本作を乾いたタッチに仕上げるのに貢献しています。実はこの事件では肝心の標的であるボス・モランは難を逃れて無傷だったのですが、そこは史実通りに描かれていて、カポネにとってこの事件が凋落の始まりとなったと結論づけて終わります。ギャング映画としては奇をてらったところがなく、正統的で割と味わいがある作品かなと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-02-22 23:05:15) |
2159. ステルス
《ネタバレ》 おバカ映画と判っていても、ここまでひどいと清々しいくらいです。プロットは『ファイヤーフォックス』や『ランボー』系の過去作の寄せ集めで新鮮味ゼロ。S・シェパードも訳が判らないキャラ設定で、こんなアホな映画に何で出演したのか、仕事を選べよS・シェパード! そして何と言っても、ミャンマー・タジキスタン・北朝鮮、この三国はまるで国家として認められていない如き扱いで、いくらなんでもひどすぎる(別に北朝鮮を擁護してるわけではないが)。映像が凄いと言っても、それは単なるカネの無駄使いにすぎません。 [地上波(吹替)] 2点(2010-02-22 01:16:09) |
2160. カンバセーション・・・盗聴・・・
《ネタバレ》 コッポラの映画としては、もっともクールなタッチの作品ではないでしょうか。ハックマンの抑えた演技が光りますが、彼がサックスを吹くシーンは似合っていませんでしたね。落ちは結構インパクトがあるのですが、最後まで熱くなることなくじわじわと恐怖が盛り上げる演出は見事です。ただコッポラの脚本は結構粗いところがあり、テリー・ガーやジョン・カザールはあまりストーリーに絡まないで終ってしまいがっかりです。ちょっと説明不足な点が目立つストーリーでした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-02-21 01:40:56) |