221. 歌行燈(1960)
お袖と喜多八の裏山での稽古の幻想的な美しさに美術の方々の気迫を感じます。能に何の造詣もないので解り辛いのですが、結末に見るように芸道の厳しさよりメロドラマに重きをおいた作品に感慨も今一つ。山本富士子の固い演技にも引いてしまいました。 [DVD(邦画)] 6点(2018-03-19 09:37:59) |
222. ひとり狼
《ネタバレ》 渡世の掟のみを心の拠り所に生きる伊佐蔵を演じる市川雷蔵に高倉健とは違う重みを感じる。父子の関わりがひとり狼にそぐわないのだが、決闘後に去って行く後ろ姿はさすがに切ないものがあった。美味しい役どころの長門勇の好演も印象的。 [DVD(邦画)] 7点(2018-03-07 15:45:49) |
223. ぼんち
暖簾を守る事が何よりも優先される船場の狭い世界の「しきたり」は考えられないものばかりで、祖母の一言一句に呆れ返る。喜久治は結婚はこりごりと何人も妾を作って放蕩するが、大店の主として商いも抜かりない。「気根性のあるぼんちになれ」という亡父の遺言は守ったと言える。男性はこういう人物に憧れるのだろうか。現代劇出演は初という市川雷蔵は絢爛豪華な女優達を従えての見事な演技であり、早逝が惜しいと改めて思う。 [DVD(邦画)] 8点(2018-02-28 00:49:42) |
224. 何がジェーンに起ったか?
幼少時から憎しみ合った二人の密室劇で、山姥のようなジェーンがブランチの思惑を一つ一つ潰してゆく様は丹念なカメラワークもあいまってホラーであり心底恐ろしい。踏み躙られてもジェーンを思うブランチの心境が理解し難かったのが、「何がジェーンに起こったか?」が告白するラストで明らかになり、胸が塞がる。隣人とピアニストがもっと話に絡んでくれれば。ジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスは犬猿の仲だそうで、本作で二人を制御できるのはアルドリッチ監督ならではか。撮影現場の緊張感も半端なかったと想像できる。全編が異様なオーラに包まれる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-02-21 16:51:39)(良:2票) |
225. ひとりぼっちの青春
「他人の窮状を見て楽しむ為に観客はお金を払っている」主催者の台詞とダービーシーンの皆の藁にも縋る思いの姿の大恐慌時代の弱肉強食模様に胸が潰れそうに。「廃馬は射殺するんでしょう」に打ちのめされる。救いの無さ加減では3本の指に入る作品。 [DVD(字幕)] 7点(2018-02-19 10:52:41) |
226. 剣鬼
特異な出生に対する世間の蔑みに晒されて生きる斑平の突飛過ぎるキャラクターに唖然とするも、世間に対する妖気とお咲に対する爽やかさを併せ持つ姿に市川雷蔵ならではの味わいを感じる。手塩にかけた花を愛でて穏やかに暮らす事が叶わない決闘模様が切なかった。 [DVD(邦画)] 7点(2018-02-16 13:27:11)(良:1票) |
227. 太陽が知っている
4人の思わせぶりなだけの姿をダラダラ垂れ流すだけのつまらなさでイライラし通し。ポカーンとするのみの結末に詐欺に遭ったような脱力感で一杯。企画・配役・脚本・演出・邦題(まで)全てが安易な愚作。 [DVD(字幕)] 3点(2018-02-04 00:55:50) |
228. 甘い抱擁
《ネタバレ》 傍若無人且つ下品な初老のジョージと幼児性が抜けない若いアリスの主従関係に辟易する。二人に割って入る中年のクロフトが絶妙の存在感。絵に描いた堅物クロフトのアリスを見る眼差しに抱いた予感が的中する終盤のアリスとの長回しのキスシーンの溢れる官能美に痺れる。まさに圧巻。硬派アルドリッチ監督が描くレズビアンに仰天。ジョージは二人を惨殺しないものの、アリスの過去を晒す残忍さを見せる。職を奪われ愛人アリスを寝取られたジョージの断末魔の「モ~」が自業自得の憐れを誘う。ベリル・リード、スザンナ・ヨーク、 コーラル・ブラウンに喝采。 [DVD(字幕)] 8点(2018-01-21 12:33:54) |
229. いぬ
登場人物の関係が解り辛く、見せない演出がさらに解らないものにしていて、モヤモヤが募るばかりで折角の雰囲気を味わえなかった。 [映画館(字幕)] 5点(2017-12-25 00:20:46) |
230. アルフィー(1966)
都合の良い女性と都合の良い関係のみを求めるアルフィー。シニカルで飄々とした言動の彼が時折見せる寂しさに胸が疼きます。シェリー・ウィンタースの妖艶さは女性陣の中では別格で流石の貫録。作品に溶け込んでいる音楽も素敵でした。 [DVD(字幕)] 7点(2017-12-23 23:16:55) |
231. 欲望(1966)
起承転はとりとめなく結は無い。人間や物事の本質を見抜く力は人生経験の積み重ねによるものですが、本作からは芸術臭が鼻につくくだらなさしか感じません。恥とも解ろうとも思いません。スタジオ撮影でのモデルさんの見惚れる肉体美に加点。あまりに酷い邦題は特筆もの。 [インターネット(字幕)] 2点(2017-12-17 17:05:21) |
232. ドクトル・ジバゴ(1965)
雄大な風景と澄んだ音楽の効果をもってしても何一つとして響いてこない。身持ちが悪い女と優柔不断な男の単なるよろめきドラマであり、トーニャの視点がすっぽり抜け落ちているのが身勝手な男にとっての都合の良い女を表していて胸糞悪い。動乱の時代背景は何の言い訳にもならず。唯一興味深かったストレルニコフの最期を言葉だけで済ます演出に駄作確定。製作陣のやる気が尽きたかのような尻切れトンボの結末に鑑賞リタイアを思いとどまった事を後悔。原作ありきのせいなのか、ロバート・ボルトやデビット・リーンをもってしてもこんなものしか出来上がらなかったのが残念。3時間以上の駄作にぐったりとなった。 [DVD(字幕)] 3点(2017-11-26 13:18:18)(良:1票) |
233. 将軍たちの夜
《ネタバレ》 クリストファー・プラマー目当ての鑑賞。「待ってました~、オトコマエ~」と座り直した途端に・・・流れ星のような存在でした。 1942年ナチスドイツ占領下のワルシャワで起きた娼婦猟奇惨殺事件。目撃者の証言をもとに絞られた容疑者はガプラー大将、タンツ中将、カーレンベルク少将。上官であっても犯罪は許さないという執念で捜査にあたる情報部少佐グラウ。1944年ヴィシー政権下のパリに舞台は移り異動してきた容疑者たちとグラウが顔を揃え第二の事件が起きる。1964年ハンブルグに舞台は移り第三の事件が起きる。 ワルシャワロケにおける実際の火炎放射器、戦車の砲弾を使用したど迫力の戦闘シーン、ハルトマン伍長とガプラー大将の娘の純愛、グラウとモラン警部の友情、ワルキューレ作戦。詰め込み過ぎのエピソードのせいで冗長になったのは惜しい。 謎解きの面白味は皆無でありながら、大量殺人が行われている戦時下に於いては一人の娼婦殺人の罪を問うグラウは変わり者だと錯覚する事を考えさせられる。 本作を支配するタンツ中将の空前絶後の怪異なキャラクターは特筆もので演ずるピーター・オトゥールに拍手喝采。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-03 21:48:25) |
234. 日曜日には鼠を殺せ
《ネタバレ》 憎しみ合うマヌエルと署長の物語に割って入るフランシスコ神父の存在が本作を奥深いものにしています。 「神の法と署長の法、どちらに従うのか」 他作品でも見られた問いかけは監督の強い思いなのでしょう。 また、スペイン内乱で神父(当時10歳)の父を殺害したのは人民側じゃないと言うマヌエルに対する「何の違いが? 命を奪う権利があるとでも?」が返す言葉がないマヌエル同様胸に突き刺さる。 マヌエルの覚悟に、無聊をかこって生き続けるより曾ての闘士として母と一緒に眠りたい思いを見ました。 「ジャッカルの日」が思い浮かんだ敵地の対決模様で迷った末署長よりカルロスを狙撃したのは意外であり、裏切者は許さないという監督の強い思いがここにも表れており圧倒されます。 マヌエルの最期に浮かんだのが母でなくパコであったのは、復讐を託すのではなく、憎しみに縛られず生きて欲しいという願いなのでしょう。 感慨深い作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-28 10:20:59) |
235. わが命つきるとも
《ネタバレ》 初見。邦題が結末を端的に著しています。500年前から現在に至るまでこの世に溢れる「ご都合主義の」正義。誰が何と言おうとそれを否定し堂々と信念を貫き通した生き様にひれ伏すばかりです。夫と永久の別れを交わすウェンディ・ヒラー演ずる妻の姿に悔し涙が滲みました。重厚な傑作です。 2017.10.18 DVD購入して再見 妻子との別れのシーンを何度も見る。 娘に「一度誓ったら両手でしっかり支えるのだ。指を開けば自分を失ってしまうのだ」と尚毅然とするも 妻に「この思いをお前に解ってもらえず死ぬのがなお辛い」「実に美味しい、良い妻だ」と作中唯一苦しさを滲ませる。 王の離婚問題で何故こんな事になるのか、悔し涙が止まらない。 刑場での首切り人への言葉「お前を許そう、神の元に送ってくれるのだから」に只々ひれ伏すばかり。 私の棺に納めて欲しいリスト入りの作品。 [DVD(字幕)] 10点(2017-10-20 16:49:45) |
236. 大列車作戦
《ネタバレ》 操車場の爆撃、単機による列車掃射、機関車の衝突、全てのシーンが臨場感に溢れる息を呑む迫力で撮影の困難さが想像出来ます。 「わが命つきるとも」で信念を貫き通したポール・スコフィールドが演じる悪役は、絵画に対する異常な執着心を持ち、やはり偏執的な信念を貫き通しておりました。一言の抗弁も許さぬ無言の目力に見惚れてしまいナチス式の敬礼までかっこいい。バート・ランカスターとの最後の対決は圧巻。盗人猛々しく価値観をまくしたてる威風堂々とした大佐に無言で引き金を引くラビッシュ。転がる多数の木箱と多数の射殺体が戦いの虚しさを漂わせます。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2017-10-17 15:33:06) |
237. 素晴らしき戦争
第一次世界大戦が描かれた本作。監督の意欲的な試みは退屈さしか覚えず、絢爛豪華な俳優陣の印象も薄い。ラストショットに目が覚める。その峻烈さはダラダラとした物語を要約した見事なメッセージであり点数の全てを。 [DVD(字幕)] 4点(2017-10-04 15:02:24) |
238. 遥かなる戦場
《ネタバレ》 挿入される風刺の効いたアニメーションが秀逸。自殺行為の突撃においてカスとクズが生き残り、当然のように痛痒を感じない姿に血圧上昇。更にラグラン卿の「私の字ではない」に血圧計が振り切れそうに。責任の擦り付け合いのラストシーンに、力尽きた人々が報われない虚しさに脱力感で一杯。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-04 14:56:50) |
239. 夜の大捜査線
《ネタバレ》 初見。ロッド・スタイガーが絶品。曲折を経た末に見せた別れの際の笑顔と「元気でな」の一言はこの先も忘れることはないでしょう。1967年に本作を世に送り出した製作者の気概に脱帽。 [DVD(字幕)] 10点(2017-09-17 00:20:29) |
240. 奇跡の人(1962)
初見。食卓での長回しシーン。共にオスカー受賞も納得のアン・バンクロフトとパティ・デュークが体現する究極の「迫真の演技」が圧巻。獣の調教ではなく、世界を知り自身で考えて行動出来る為の教育を施すというサリバンの尋常ならざる信念が、自身の悲惨な境遇に起因しているところが感慨深い。 [DVD(字幕)] 9点(2017-09-16 23:57:27) |