221. キッスで殺せ!
《ネタバレ》 フィルム・ノワールのきわめて切れ味鋭いタイプと言おうか、暗く淀んではいない。核爆発で終わる映画の「The End」のマークは、まさに「一巻の終わり」。私は映画館の中で「被曝」して、この恐怖をしっかり味わった。公開当時「原爆で殺すな、キッスで殺せ」という標語も生まれたそうだが、いまや、「原爆」のかわりに「原発」で、「原発で殺すな、キッスで殺せ」。 [映画館(字幕)] 10点(2011-03-31 09:32:35) |
222. 8 1/2
《ネタバレ》 映画館で数回観た。なんという美しい黒白映画。なんという豊饒さ。映画監督役マストロヤンニにもはや映画は作れないとなり、セットが壊され始めて地面に落ちる鉄パイプの無粋な音、それさえも映画の夢の側に加担する。風が強いなか、マストロヤンニが記者会見の席でテーブルの下に逃げるのがなぜか無性にいい。そして「人生は祭りだ」は万感胸に迫る。この映画は「映画の映画」の社会学的なスタイルをとっておりその分だけフェリーニ・ワールド噴出に程よく歯止めが掛かっていて、最高の味となっている。 [映画館(字幕)] 10点(2011-03-29 20:35:36)(良:1票) |
223. フラガール
《ネタバレ》 蒼井優の踊りだけでも値打ちがある。しかし、「受けなかったら(入りが悪ければ)どうしよう」恐怖症の作品である。すこし恐がりすぎ、ベタにやりすぎで、そういう映画が多すぎる。 [映画館(邦画)] 5点(2011-03-29 07:42:11) |
224. ダイ・ハード
《ネタバレ》 たしかにドンパチ・スペクタクルをぼーっと眺めていたいときはあるが、それはごくたまにである。当時、これこそが映画の醍醐味であって日本映画は小粒すぎる、みたいな言い方までされた(謬見である)ことを思い出すが、今はどうだろう。ところで、日本タタキのネタが入っているのはサブリミナル効果のような反則かも。 [映画館(字幕)] 4点(2011-03-29 07:41:07) |
225. 東京日和
《ネタバレ》 旅先で行方不明になった奥さんは小舟の中にいた。そのとき主人公のカメラマンがそれにカメラを向けたというショットはないのに、のちに死んだ奥さんを回顧するシーンで、小舟の中に横たわる彼女の写真が出てくる。これがうまいが、それだけ。竹中の映画はスタティックすぎる。 [映画館(邦画)] 5点(2011-03-28 23:45:12) |
226. 花様年華
《ネタバレ》 寄り映像が観客の見晴らしを奪う。これがいい。それとパラレルなのは、お互いの妻と夫同士の不倫関係を特にきちんと見据えようとはしない男と女の姿勢。階段で出逢うこの二人とせつない音楽。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-28 14:46:39) |
227. リンダ リンダ リンダ
《ネタバレ》 際立ちを抑制したタッチが成功した映画である(こういうタッチで二匹目のドジョウを狙うとうまくいかないのかもしれない)。ドアのフレームの中に練習中のメンバーたちを収めたショットが良い。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-28 14:44:19) |
228. 人のセックスを笑うな
この欄の低評価には驚く。映画館ではかなり充実感があった。こういう何気ない感じつまり「存在」が大切な映画は、事柄に対する「知識」でしかないDVDではたいしたことがないだろう。DVDは矮小化する。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-28 14:43:09) |
229. それから(1985)
《ネタバレ》 冷房が効き過ぎの空席だらけの映画館(京都ロキシー、この映画館も今はない)で、森田芳光健在を確かめた。松田優作が着せ替え人形のようにお洒落な服に身を包み、その暗さの演技もいい。が、漱石の原作はとくに前半は明るさや笑いもあるものなので、原作との差異も非常に興味深い。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-28 14:34:07) |
230. アバター(2009)
《ネタバレ》 3Dの値打ちは、怪物に実際に襲われたとおもえたことくらいかな。人間の代表が白人で、人間は自然破壊の権化なのだが、悪い人間(白人)ばかりというわけではない(良い白人もいる)という話。これで人間=白人の罪滅ぼしとなるかなのだが、なるのだなこれが、なんと便利な白人中心主義。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-27 13:31:09) |
231. 息もできない
いい映画だと思いますが、大島渚が60年代前半にやっていたことという感じもします。「暴力表現のかつてない必然性」というやつです。しかしこういう映画を観ると暴力表現は「感染する」ということも自覚しますし、けっきょく観客の知的エネルギーを消耗するものという感じもします。暴力の直接的な表現は極力控えて(かつてのフィルム・ノワールのように)隠然たる暴力についてはきちんと暗示するという方法の方が貴重であると私は思いますが、そうなると映画の質がまったく変わってしまいますね。 [映画館(邦画)] 5点(2011-03-27 13:19:17) |
232. おくりびと
《ネタバレ》 いい映画だが、映画館で観ているときから違和感のあった箇所を二つ挙げる。一つ目、「死」に触れて帰宅したモックンが広末に抱きつく場面がポルノ映画的になっている、つまり「死」に対する「生」の対置が窃視的な「性」に流れすぎ(省略技法が大切だ!)。二つ目、ラストのクライマックスにはモックンの一筋の涙だけで崇高なのに、広末がらみでなんだかんだ喋らせてぶち壊している。だから省略という方法がこの作品にもっとも欠けているものであって、それは作品の気品にかかわるのである。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-27 13:09:30) |
233. 歩いても 歩いても
《ネタバレ》 限られた場面で面白みを繋いでいく演出が立派である。この人がなんで『空気人形』なんかを撮るのかわけがわからない。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-27 11:23:14) |
234. 座頭市(2003)
北野映画は『あの夏・・・・』が「いちばん」であると思う。北野映画がどうも途中でとまってしまうのはもちろん意図的な仕掛けなのだが、そんな余裕こいている場合ではないと、ほんとうに思う。もう私は、映画館に北野映画の封切りを観に行かなくなっているし。 [映画館(邦画)] 4点(2011-03-25 22:16:47) |
235. 犬神家の一族(1976)
当時ものすごい宣伝で、ついそれに負けて観たが、まったく駄目だった。それ以来、宣伝には警戒心を抱くクセがついた。市川崑(いい作品もあるのだが)の内容空疎な唯美主義にも警戒するようになった。 [映画館(邦画)] 2点(2011-03-24 21:35:17) |
236. 人生のお荷物
『マダムと女房』は「モダン」という時代の話題と頑張って取り組んでいたが、この作品は気楽に、飄々とした五所平之助の持ち味を出している。余談だが、五所監督は松竹時代に映画界から去ろうとしていた成瀬巳喜男を引き止めた人である(いわば映画界の恩人)。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-24 13:11:43) |
237. 転校生(1982)
《ネタバレ》 『転校生』は性別役割をコミカルに強調し過ぎである。あんなになさけない「女性」はいない。女性の役割ももっと毅然としていいのだ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」画のマリアのように。大林は『廃市』が最高。 [映画館(邦画)] 4点(2011-03-23 21:16:07) |
238. インデペンデンス・デイ
《ネタバレ》 アメリカは戦争が仕事の国で、ハリウッドはその宣伝省であることを実に明確に見せる。異星人は醜く描かれ、対話の可能性は一切無く、異星人からの「地球の独立」をアメリカ大統領が宣言するという、猛烈に政治的な映画である。 [映画館(字幕)] 2点(2011-03-23 19:51:55)(笑:1票) (良:2票) |
239. 櫻の園(1990)
《ネタバレ》 髪型変えたのねで、ずーっと話題を引っ張り、アイスクリームが配られて、溶け始める。観終わってよくできていると思ったし、この良さを長く記憶しているつもりでいた、が、いまでは忘れている。だからといって、私はDVDで「内容」を確かめようとも思わないので、忘れたままである。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-22 21:48:23) |
240. 海辺のポーリーヌ
《ネタバレ》 バカンスの海をバックにカメラの前に横一列の人物たち、というのがまず良い。背後にウィンド・サーフィンのボードの帆が風に吹かれている。まったく内的繋がりのない人物たちをまずはウィンド・サーフィンが繋いでいる。じつに浅い関係、恋も?キャンディー売りの女(恋多き女)があの「海辺」を移動して(唯一のトラベリング移動撮影)、恋の相関図にちょっかい…嘘だらけなのだが、べつに嘘でもいいじゃん、しあわせならば、というラストの「名言」がシビレル味。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-22 20:27:56) |