241. ストレンジャー・ザン・パラダイス
《ネタバレ》 独特の空気が漂った映画でした。まったく弾まない会話や登場人物の行動、雰囲気など作品の至る所から感じる脱力感。競馬に出かける二人に置いていかれたエヴァの側をうつし続ける事で観ている側にも怠惰感と退屈さを共有させ、場所が変わっただけでやってる事が変わらず全く魅力を感じない二人の男。毛嫌いしていた祖国に望んでいない形で帰るウィリー、二人がブダペストに向けて旅立ったと思っているエディー、モーテルに戻ったエヴァとその後に流れるエンドロール。その全てのかみ合わなさ加減とゆるさ、リアル感がとても心地よかったです。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-24 19:05:43) |
242. バリー・リンドン
《ネタバレ》 音楽と映像の美しさは素晴らしいものがあり、それが美しくなればなるほど対照的に浮き出る人間ドラマの醜さや汚さ。定期的に映す遠目からの宮殿の姿で観客に自分はこの世界に住む人間ではないと思わせ、客観的な視点を保たせる。しかし、ラストに「美しい者も醜い者も今は同じ全てあの世」と出す事で結局はみんな同じ穴のムジナなんだよと突きつける。一見残酷のようにも見えますが、人間の醜悪さを形上は美しい映像や音楽で映しているあたりに、人間の酸いも甘いも知っているキューブリックだからこそ撮れる他者とは違う捻じ曲がった形の人類愛を感じとることも出来ました。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-23 09:07:04) |
243. 何がジェーンに起ったか?
《ネタバレ》 姉の事故の真実を知りやっと素直になれ野次馬という名の観衆に囲まれ今までの念願だった注目を浴びながら、踊る事ができたのにあんな結果になってしまったのには皮肉を感じました。思えばジェーンは姉の事故を自分のせいだと思い悔やんで、その出来事から逃げるために幼児回帰をしていたのかもとも思いました。ずっと事故の真実を言えず悔やんでいた姉も然り、お互いのほんの少しのすれ違いが起こした悲劇であったのかもしれませんね。ずっと一緒にいて距離感が近すぎた為に異常なまで憎しみ合い、愛し合い、妬み合ってこの結果に至ったのかもしれないと思うと、何ともやるせない気持ちになりました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-21 19:36:37)(良:3票) |
244. まわり道
《ネタバレ》 自分探しの旅に出る主人公。その旅の中で会う人はどの人もどこか変わった人ばかりで話をするにしても各々が己の考えや経験、昨日の夢の話をし自分の世界を作り込み現実を見ようとしていない。それは傍から観れば凄く不自然で奇妙な会話に見え、始めの内にはそれはそれで成り立ってるように見えましたが、少しずつ少しずつ自分の主張や価値観をぶつける事によってそんな関係にひびが入っていき、結局最後にウィルヘルムは再び一人で旅立つ。形だけ見れば始めと一緒の形になり彼自身も「自分は無意味なまわり道ばかりをしている」と言っていました。しかし、誰かと関わりあった上で一人は寂しいと言いながらも気ままでいいと言い放ったラストは自分探しの旅というまわり道の上で出た、彼にとっての一つの答えであったようにも思えました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-21 10:20:02) |
245. フルメタル・ジャケット
《ネタバレ》 微笑みデブは銃を女性のように愛しすぎてしまったため、恍惚の表情を浮かべながら肌身離さず寝ることさえ惜しんでみんなから離れて銃を守っていた。そこに軍曹が現れそれを奪おうとしたので軍曹を殺した。しかし軍曹は銃を女性の名前で呼べと日頃から命令していたので、結果的にはそれを一番忠実に体現していた微笑みデブに殺されるという皮肉とその異常性を感じました。殺しを頭に乗せ胸には平和をつけるジョーカーは中途半端な存在でどちらにもなりきれなかった。しかし最後に安楽死という自分を正当化できやすい状況でベトナム兵を殺すことでやっと、はっきりとした存在=殺人機械になれた。他にも、民間人を虐殺する兵士や死体で遊ぶ兵士。誰も彼もが戦争の中で徐々に精神に異常をきたしていてそれは特別な事ではなく必然的ともいえるような気もしました。最後にみんで歌っていたミッキーマウスもアメリカで生まれて多くの人に愛されているネズミ、そんなネズミ=ベトナム兵を殺す兵士達。結局、アメリカは戦争によって自分自身で首を絞め殺して、そんな象徴を自ら汚しているという事なのでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-20 09:59:26) |
246. カプリコン・1
《ネタバレ》 荒野に現れる鳥の幻が実はヘリコプターだったり、崖の頂上に到達したらすでに追っ手が待ち構えていたりする描写からはどこまで行っても絶対に逃れることが出来ない巨大な権力を感じ絶望感を覚えました。アポロ計画陰謀論を匂わしたり、権力による事実のもみ消しなど政治的な要素が大きい作品でしたが、ラストの空中追いかけっこのアクションやコールフィールド目線での事件の真相の謎解きサスペンスはそれだけで見ごたえがあり自分にとってはそっちの方がこの作品を楽しむための重要な要素でした。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-19 13:39:15) |
247. 2010年
《ネタバレ》 「2001年宇宙の旅」の続編とはいえ監督が違うこともあって雰囲気が全然違っていました。政治的な要素や人間ドラマが前作より色濃く出ていて説明セリフも増えていたので話の筋が分かりやすくなってはいました。逆にセリフが増えたのが理由からか無音での宇宙空間の映像や船外活動の時間が短くなっていて、宇宙の神秘的な部分が薄れてしまっていました。BGMの選曲の差も大きく出ていました。簡単に言えば前作では宇宙旅行を体験する事が出来たけど、今回はそれが出来なく結局はそれが全てという感じです。ただこれはこれで一本の映画として観れば結構好きです。HALの見方もだいぶ変わりましたし。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-18 22:32:21) |
248. ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生
《ネタバレ》 人類の破滅への始まりが描かれているロメロのゾンビ映画の一作目。ゾンビという認識も対処法も発生の仕方も分からない所から始まる話は、これから起こり来る恐怖への幕開けを感じました。ゾンビと一緒に焼かれるベンの姿の救いのなさがとても印象的でした。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-16 23:45:32) |
249. サイコ(1960)
《ネタバレ》 マリオンの横領から始まり幽霊屋敷の真相に至るまでの話の広がり具合や展開、構成は素晴らしいとしか言えません。前半は観客の意識をマリオンの視点に持っていき彼女の気持ちになって4万ドルを持って逃走するスリルを味あわせ、彼女の突然の死後からはその事件の謎解きや幽霊屋敷の真相に意識を集中させる。モノクロの画面や音楽の効果で恐怖感を増大させ、楽しみを種明かしのみにとどめずノーマン・ベイツの異常性を見せることによって彼の今までの人生や行動を観る人に想像させ、さらにそこで怖さやおどろおどろしさを感じさせる。全てが計算し尽くされているような映画で、その凄さに愕然としました。この作品を予備知識一切なしで観ることができた自分の無知さと運の良さに感謝します。 [ビデオ(字幕)] 9点(2008-02-16 10:44:02) |
250. 眺めのいい部屋
《ネタバレ》 上手くまとまってはいるものの、登場人物の容貌や景色のおかげもあってか作品全体が上品であっさりしすぎていてパンチ不足で物足りないと感じてしまいました。なので自分はセシルにルーシーに対しての彼自身の階級を顧みない醜さやねちっこさを期待していました。彼がそうであれば、もっと作品やセシルという人物に愛着がわいていたような気がします。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-02-16 10:15:10) |
251. 橋の上の娘
《ネタバレ》 「お札は半分だけじゃ価値がない」とアデルが言っていた様に、ナイフ投げも投げ手だけでは意味がなく、的になる人が必要。彼女は二人が揃わないとお互いが価値をなさない存在、今まで行きずりの恋をしてきた自分が初めて出会えた「なくてはならない存在」なんだとガボールに言いたくそのあまりにも遠回しで不器用な伝え方に、彼女の奥ゆかしさとそれを言ってしまったら今までの男達のようにどこかへ言ってしまうのではないか?という不安な気持ちが表れていると感じました。ルコント作品を観るのは今作で四作目ですが、どの作品にも話の主軸に世間から見放されたもしくは外れた二人の究極なまでの強い友情や愛情がありました。ルコント自身がそんな関係にあこがれていたからなのか何か強いコンプレックスがあったのかは分かりませんが、彼自身が人との強いつながりを求めていたのは確かだと感じました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-02-16 09:51:14) |
252. 風の惑星/スリップストリーム
あの結末には驚きました。まったくの予想外だったので。風の川に乗って空を旅するって所からロマンを感じました。みなさん高評価の中で自分だけ点数低くてごめんなさい。 [ビデオ(字幕)] 4点(2008-02-14 10:25:39) |
253. 甘い生活
《ネタバレ》 どうでもいい人達のどうでもいい内容の話で全ての言動は、最後のポニーテールの少女の美しさや尊さを引き立たせるためだけの役目でしかありませんでした。入り江を隔てた隙間がマルチェロ達と少女の住んでいる世界の差。向こう側に行こうと思えば行けた距離と水位であったにもかかわらずマルチェロは行こうとしなかった。それによって、彼が友人の死や日頃の退廃的な生活によって人と向き合い会話をしようという、記者にとって大切なものを失ってしまったという事が表れていた気がします。また、死してもなお何かを見続けようとする魚と友の死から目をそらしドンチャン騒ぎをして現実を見ようとしなかったマルチェロの対比。悲惨な描写ばかりでしたが、ラストの少女の満面の笑みからはそれらの憂鬱さを全て吹き飛ばすほどの力強い美しさ、希望を感じ、それが唯一無二の救いになっていました。今作が初めて観たフェリーニの作品でしたが彼が「映像の魔術師」と呼ばれている理由が少し分かりました。 [DVD(字幕)] 5点(2008-02-12 11:03:16) |
254. 華氏451
《ネタバレ》 消防士の仕事が火を消すことではなく、本を燃やすこと。人や家が燃えていても消火活動はなし。そんなゆがんだ世界で、人はテレビでの情報のみを受け取りそれが正しい事だと思い込んで行動している。家にアンテナがなければ変人扱いをされ、読書は反社会的行動とされ自らで想像することすら許されない画一的で弾圧的な世界は、個人の自由や権利が無視された、全体主義社会への批判のように感じました。想像することの尊さや、自分自身の考えをもって行動することの大切さも伝わってきました。絵的にも家の中の数々の道具や消防車の出動シーン、一枚一枚燃えていく本には見事に魅せらました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-02-10 10:02:03) |
255. Ray/レイ
《ネタバレ》 母親は偉大ですね。今までレイチャールズの事は名前ぐらいでしか知らない状態だったので、映画を観て彼の事や黒人差別問題の勉強になりました。内容の方は上映時間の問題もあるせいか、彼の内面の変化というより、曲やエピソードをみせることに重きが置かれているように感じました。ただその事によって美化されていない客観的に描かれた彼の姿を観ることもでき、そういった意味では長所と短所を兼ね備えていた作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-02-09 23:36:16) |
256. スケアクロウ
《ネタバレ》 精神的に追い詰められたときにこそ本性が表れるのだとしたら、喧嘩で強制労働を余儀なくさせられライオンとの接触を一切拒んだマックス、子供は死んていてそれは自分のせいだと責められ精神を病んだライオン。相手の本性を見た後だからこその最後に、二人はやっと互いのことを理解し認め合えたのかと思いました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-02-08 23:13:56) |
257. フライド・グリーン・トマト
《ネタバレ》 冷め切った夫との関係を何とか良くしようとあの手この手で努力するも中々うまくいかないエヴリン。暴力を振るう夫に悩まされるルース。男性社会に真っ向から立ち向かうイジー。エヴリンとイジーやルースの時代は違えども、三者三様にたくましく生きた三人の女性の姿は見ごたえがありました。いつの時代のどんな人間でもそれぞれの悩みや問題と戦っているんですね。その中で生まれる人間同士の絆を大切に、忘れずに生きていこうというメッセージを自分はこの映画から受け取りました。お袋の味ってわけじゃないですけど年をとっても忘れない懐かしい味“フライドグリーントマトが結ぶ人の絆”って何かいいですね。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-02-08 00:48:33) |
258. SF/ボディ・スナッチャー
《ネタバレ》 眠ってしまったら占領されてしまうというのは、結局どれだけ耐えても時間の問題なんですよね。何か具体的な解決策が見つからない限り、地球が支配されてしまうというのは必然的。そう考えるとマシュー達の行動がただの悪あがきに見えてしまい、どれだけ逃げても決して逃れることの出来ない絶望感を感じました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-02-07 13:57:49) |
259. パラダイム
相手の正体がよく分からない方が恐怖感が増しますね。ただ怖い事は確かなのですが、危機感や世界の終わりを感じるほどではなく、こじんまりとしているような印象を受けました。 [ビデオ(字幕)] 5点(2008-02-06 18:04:25) |
260. 死霊のえじき
《ネタバレ》 ゾンビとの戦いというより人間同士の争いがメインに置かれているような内容でした。閉鎖された空間の中で、恐怖感から発狂するミゲル、ゾンビに人間愛に近い物すらを抱く博士、自尊心は強いが部下を大切に想うローズ大尉、ただ一人の女性で精神的に限界に近い状態で戦い続けるサラ。それぞれの人間が己の中の正義や欲望を主張することによって、少しずつ少しずつ関係に亀裂が生じていき、ついにその均衡が崩れる。それは誰が悪い、間違っているとかではなく、ゾンビを飼いならすことによって生き残ることを考える博士も部下をあんな姿にされて激昂する大尉の気持ちも理解できるだけに余計にやるせなさや絶望感が増し、それがよりリアルになったゾンビメイク、殺人描写と相まって異常に強い恐怖感を抱きました。生き残った三人にしてもいつまたゾンビが忍び寄ってきても不思議でない状態、世の中的にはただ終末に向かっていくだけの状況を考えてもまた然り。今までたくさんの映画で語られている事ですが、人間同士の争いを見る度に本当に怖いのは人間の心なのかと痛感させられます。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-02-04 19:51:55) |