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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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301.  ナポレオン・ダイナマイト
いるいる、こんな人(笑)。普通の青春ドラマでは間違ってもスポットライトの当たることがないオタクくん。でもあえてスポットライトを当ててみたら、意外と面白かったというのがこの映画。口を開きっぱなし、分厚いメガネに天パ、いつも変なTシャツを着用し(やはり裾はジーパンに入りっぱなし)、ここぞというときの服をファッションセンターしまむら(みたいな店)で購入する。いちいち言動がずれている感じが、非常にリアルだ。おそらく身の回りを捜してみれば主人公を髣髴とさせる人物が必ずいるはず。ゆるーい話なのに、ナポレオンの挙動不審ぶりが面白くてついつい夢中になってしまう。どうみても冴えないのに、いつのまにか愛すべきキャラクターとしか思えなくなっているのである。例のダンスシーンは超クール!! 文句なしに最高だった(ある意味本気)。オタクの人生にもそれなりのドラマがあり、それなりの喜びがあるということを教えてくれた。秋葉原系の人たちをバカにするような人間こそ、観るべきかもしれない。 【おまけ】本作最大の欠点は、邦題だろう。流行作品に題名を似せるだけで大して売り上げが増加するのかがまず疑問であり、むしろ一部の映画好きによって語り継がれていくような良作を埋もれさせてしまう危険すらある。変な邦題をつけたり、作品の方向性を歪めて宣伝したりするのは、短期的な視点で見ればいくらかは利益があるのだろうが長期的にはけっして得にならない。何より詐欺まがいの方法を使ってでも小金を掠め取ろうとする姿勢が、あまりにもあさましい。客に対しても作品に対しても、敬意がない。いつから配給会社はけちな詐欺師に成り下がったのだろうか? いい加減にして欲しい。
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-03 03:48:54)(良:2票)
302.  ギャラクシー・クエスト
前半のマイナス要素が、後半になってすべてプラスに転じるというカタルシス。似たような話の流れを繰り返して主人公の成長を示すというテクニックはしばしばみられるが、これほどきれいな形で着地させている脚本は珍しい。巧みに張り巡らされた伏線が収斂していくさまは、ほとんど推理小説のように秀逸だ。基本的には笑えて楽しく、それでいて何度も目頭が熱くなる。夢中になってのめり込んで、待っているのは爽快なハッピーエンド。娯楽作品としての一つの理想形ではないだろうか。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-12-02 20:15:40)
303.  父、帰る
シャープで洗練された映像感覚が素晴らしく、個人的につぼにはまった作品。それだけで妙に高評価になってしまったが、冷静に考えるとそんなにたいした話ではないような気もしてくる。リアルで迫力があるし、宗教や政治についての象徴性はよく考えられているが、その実こころから感動できるほどのめり込める物語ではなかった。無骨で愛情表現の下手な父親との間の絆が、悲劇を通して回復する。子供たちに欠けていた父性が、わずか一週間で受け継がれるまでを描く。父親が自分の親の姿と重なり、少し切なかった。(ところで、説明不足な点はそんなに気にならなかった。大体見当はつくし、謎解きは主眼ではないので説明しなくてもほとんど差し障りはないと思う。)
[DVD(字幕)] 9点(2005-12-02 07:26:05)(良:2票)
304.  西部戦線異状なし(1930)
75年前の作品なのに、すごい迫力だ。これがあるなら別に『プライベート・ライアン』作んなくてもよかったんじゃないかというくらいリアルで、スケールが大きい。最近PTSD(心的外傷後ストレス障害)についての本を読んだばかりだったのだが、この作品なら兵士の神経がどのように削り取られ、精神が破壊されているのかを等身大の視点で理解できる。食料もなくひたすら塹壕にこもるという極限状況。虱を潰し、ねずみと戦い、砲弾の音で眠ることも出来ない苦しさ。突然叫びだして外に飛び出しては撃たれる兵士の姿が痛ましくてならない。兵士たちを英雄に仕立て上げる銃後と、汚らしい場所で惨めに死んでいく現実の兵士たちのギャップは激しい。戦場の汚さをこれでもかと見せつけられる。とくに戦場でガトリングガンの目線でなぎ倒されていく敵兵たちの様子をスクロールする場面は圧巻で、あらゆる戦争映画の中でも最も恐ろしいシーンの一つだ。  『火垂るの墓』などは嫌いだけど、これはなぜか素直に鑑賞することが出来た。映画の最初に宣言されている通り、この映画は思想を前面に押し出すよりもまず、兵士たちの姿を克明に描くのを目標としている。だから反戦というテーマを上手く消化できなかった作品、左翼の論文のようなごつごつした手触りの駄作にはなっていない。自らの思想を表現するための道具として戦死者を利用しているのではなく、何よりも先に犠牲者たちへの敬意と誠実さがあるのだ。  いかにもベタな悲劇のシーンですら、泣いてしまった。最後の十分間の切なさはとくに忘れがたく、いつまでも記憶に残ることだろう。
[DVD(字幕)] 8点(2005-12-01 17:22:42)
305.  mute ミュート(2001) 《ネタバレ》 
ほとんど台詞なし、しかも老人の生活をたんたんと映しているだけ。なのに、不思議と飽きない。沈黙の場面が長いと聞いて素人くさい自己満足映画ではないかと疑ったのだが、案外形になっているように思えた。うら寂しい風景や、何気ない生活音が印象的で、静けさが上手く不気味さに昇華されている。そして話が半ばを過ぎて、劇中初めて口に出される言葉が"murder"(殺人)。これはちょっとかっこいいと思った。少女の亡霊の映し方も気持ち悪く、個人的にはオチも嫌いじゃない。地味だけど、妙に生々しい陰惨さがよい。
[DVD(字幕)] 6点(2005-11-30 22:07:58)
306.  未来世紀ブラジル
鑑賞後、悪い夢を見ていたかのような気持ちになった。政府の特殊部隊が大勢で押し寄せてきて逃げ場がなくなるあの切迫感、たまに悪夢で経験する。実際こんな世界観、普通は睡眠中に脳細胞がショートしないと体現しない。ギリアムという人は目覚めながらにして夢を見ることのできる人なんだろう。  管理社会に材をとる作品は多々あれど、ここまで独創的かつコミカルな描写は珍しい。主人公にゴミを捨てるなと注意するおばさんの連れた犬のお尻に、テープがばってんに貼られているのに笑った。公共の場ではうんちも禁止というわけだ。お馬鹿なシーンだが、少し考えさせられる。路上に放置された犬の糞は確かに不愉快ではあるが、多少の不愉快も絶対に見逃されない社会は果たして居心地のいい場所か? 管理社会のおぞましさ、不自然さを端的に表す巧みな描写だったと思う。主人公が大量のチューブに手足を絡みとられてもがく場面も上手い。人間が機械を支配していたはずなのに、いつのまにか機械中心に生活が回っているという現代の皮肉を映像的にわかりやすく示している。  ただし、映像などは上手いと思ったものの、テーマにはほとんど関心がないので大きく心を動かされることはなかった。デ・ニーロ以外の登場人物の魅力ゼロだし。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-30 16:16:37)
307.  ブルーベルベット
デビッド・リンチの映画ってちらっと映像を観ただけで誰が作ったかすぐにわかってしまう。なんともいえない暗鬱さと、艶っぽさ。それこそブルーベルベットの色彩に似ているかもしれない。悪趣味と高級さの中間にある、光沢のある紫色。昼間の映像でもどこか夜の暗闇を孕んでいるかのような不穏さがある。  幕開けの庭で水撒きをしている男が倒れる場面から、上手いなあと唸らさせられた。飼い主の異常な状態に気づかずにホースから水を飲み続ける犬、とてとてと歩いてくる何もわからない赤ん坊、突然どアップになる虫たちと、その蠢く音。嫌な感じだ。ただ人が倒れるだけの場面で、ここまで嫌な気持ちにさせることができるのはリンチくらいだ。  脚本はわかりやすいという声も多いが、それは監督がリンチである割には、という意味であって、これが普通の監督だったら「なにあれ?」という場面がいくつもある。題材とされる犯罪はたいして複雑なものではなく、ミステリー的な驚きはほとんどない。にもかかわらず、裏で行われている犯罪が示唆されるだけで普通に画面上で進行せず、観客には隠されている。麻薬関係のいざこざは現場がちらりと映るだけ、フランクという男の不可解な言動には一切の説明なし。車を走らせた先には傷だらけの裸の女が唐突に立っているし、アパートのドアを開けると立ったまま死んでいる男がいる。何が起きたか、は想像するしかない。事情はなんとなく想像がつかないわけでもないが、かといってわかりやすく見せてくれるわけでもない。このじらし方、触るか触らないかの微妙な手つきで肌を撫ぜられているような気持ちの悪さ。嫌な感じがするのは確かなのに、半端に隠されているために観客もつい「なになに?」と覗きたくなってしまうのだ。好奇心で危険に顔を突っ込んでしまう主人公のように。  地味な話だが、観る者を引き込む異様な空気の作り方にはやっぱりすごいものがある。ごく普通の風景ですら、リンチの手にかかればかすかに死の香りが漂っている。
[DVD(字幕)] 6点(2005-11-29 03:24:38)
308.  歌え!フィッシャーマン
非常に退屈だった。この合唱のどこがいいのか、よくわからない。ほんのときどき美しく感じることもあるけど、全体的にごく平凡な歌声では? 私に音楽的な感性が不足していたのだろうか、だいたい似たような曲に聴こえてしまった。それでいて合唱シーンはすごく多いからたまらない。インタビューや自然の光景にも良い点がないわけではないのだが、やっぱり退屈だった。これだったら高校の吹奏楽部に密着する所ジョージの番組の方がずうっと面白い。テンポは非常に悪く、心に余裕のない自分には眠くて仕方なかった。大して洗練されているわけでもない映像をだらだらと流さないで欲しい。何度も寒々とした場所で歌わせるのも、狙いすぎ。鼻水を凍らせて歌っている団員の姿には笑ってしまった。
[DVD(字幕)] 3点(2005-11-27 23:43:35)
309.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
セオデン王とファラミアのエピソードのように、壮大な物語でありながら家族の確執のような小さなドラマを入れているのが上手いと思う。心理描写をおろそかにせず、むしろ各登場人物の小さな物語を積み重ね、織り上げるようにして巨大な世界を創造している。世界の物語とは同時に個人の物語でもある。細やかな描写があってはじめて、合戦シーンでの歴史のダイナミズムを感じることができるのだ。この映画がちっぽけな虫から始まり、平和な家庭に終わるのは象徴的。最初は10点だと思ったけど、SEE版には劣るので9点。やっぱりサルマンの死をカットしたりとか、まずいでしょ。
[映画館(字幕)] 9点(2005-11-27 04:31:02)
310.  ベティ・ブルー/インテグラル<完全版>
桃の薄皮のようにやわらかい感受性で包まれた、ゴムまりのように跳ね回る激しい感情。平和な日々が続いているうちはいいとしても、破裂するのは時間の問題だったろう。半ば結末がわかっているだろうに、なんとか転げ落ちないようにバランスをとろうとするゾルグの姿が痛ましく、苦しい。  ベティの激しさには不思議と崇高さのようなものがある。フランス映画というのは無闇にベッドシーンが多いものというイメージがあるけど、今作でのそれはどうしても必要なものだったと感じた。セックスというといかがわしいイメージがつきまとうのは避けられないが、ある意味ではもっとも「純粋」に愛情を通わせる行為でもある。理性からは遠く、野生動物のように本能的にに愛し合う彼らを表すためには、性描写がどうしても必要だった。逆説的だが、過激な描写でなければ二人の「純愛」は描けなかったと思うのだ。  中心となる物語はシビアなのだが、意外とコミカルなシーンも多く、たびたび噴き出してしまった。コートみたいに壁にかけられてしまう子供とか、バカすぎる新人警備員とか。深刻すぎるとかえって不幸に酔っている空気を感じていやになるが、この映画はユーモアというスパイスを効果的に使っていた。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-27 04:04:55)
311.  シビル・アクション 《ネタバレ》 
かなり硬派で、渋いストーリー。つまりは地味なのだが、退屈はしなかったし、個人的にはスリリングだとすら感じた。財政的に追い詰められ、仲間の信頼も失い、老獪な弁護士(この一癖も二癖もあるキャラクターが素晴らしい!)にこてんぱんにやっつけられる主人公。しかし多くの苦難の果てに、巨大な火柱がまるで罪を告発するかのように燃え上がる。公害という立証も難しい隠れた罪の大きさを、目に見えるように効果的に表現したあの場面は、終始鬱屈していたこの映画の空気を吹き飛ばすハイライトである。正義を達成した結果として残ったのは、たった14ドルとラジオのみ。それなのに満足げな笑みを見せるあのラストシーンは、いい。地味だけど、かっこ良すぎる。弁護士を頼むなら彼のような人に頼みたいと思う。一緒に働くのはごめんだが。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-26 00:12:29)
312.  案山子男(OV)
友人が「すごい面白い!!」と超絶賛していたので手に取った。今となっては、その友人との関係を考え直したい気持ちでいっぱいだ。ホラーとして怖くないのはもちろん、B級を楽しむノリで鑑賞して大して笑えない中途半端な出来。コメディを狙ったとしてもはずしている。ついでにメイキングも観た。殺人鬼役の条件として「体操選手であること」をあげる理由がさっぱりわからない。そういえば、少年隊みたいな動きして自動車に追いついてたっけ? 監督の言動には正直引いた。「人生は女と同じ。穴を見つけて(*´Д`*)ハァハァハァ 」……こいつはだめだと思った。本当に、だめだと思った。
[DVD(字幕)] 2点(2005-11-21 22:56:39)(笑:2票)
313.  恋愛適齢期
ジャック・ニコルソンの演技に関しては文句なくよかった。ダイアン・キートンも非常に魅力的。高齢の彼女がもてもての脚本は女性にとって都合が良すぎるという声も多いけど、男性の自分から見てもとくに違和感を覚えなかった。年をとってもあれだけ可愛らしければもてるだろう。  ただ途中までは俳優の魅力でとても楽しく観られたのだが、二人がケンカするシーン以降は冷めてしまった。無理やりドラマチックな展開にしようとして、無駄に長くなってしまっている。  それに主要登場人物の感覚が、あまりにも幼稚。精神年齢が低いので情緒も中学生レベル、思春期レベルである。恋愛適齢期はまだ来ていないんじゃないか? キアヌが可哀そう過ぎるぞ。コメディとしては楽しめるが、ラブストーリーとしてはバカバカしい点が目立つ。
[DVD(字幕)] 6点(2005-11-21 22:35:50)
314.  素晴らしき哉、人生!(1946)
あらすじを読んだ時点で「なんだこの『クリスマス・キャロル』じみた教訓くさい話は」と甘ったるさを鼻で笑い、「はっ、どんな都合のいい展開が待っているんだか」とかなり斜に構えて鑑賞。……それなのに、ラストでは自然と目頭が熱くなってティッシュを手に取っていた。自分のようなひねくれ者は、きれいごとを軽々しく語る連中をすぐ疑わしげな目で見てしまう。でもそれはきれいなものが嫌いだからじゃなくて、本当に、真にきれいなものを心の底では求めているからなのだと思う。この映画がまさにそれだ。人間の善意に対する無条件の信頼、人生の絶対的な肯定。こんなに上手く行くものかと思いつつも、泣いてしまう。希望を信じたくなる。あまりにも真っ直ぐなメッセージは、ひねくれ者の心にもずしんと響いた。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-21 01:17:52)(良:1票)
315.  グッドフェローズ
強力な伝染病の話を思い出した。致死率が五割を超えるエボラ出血熱の一種は、宿主たる人間が減りすぎて、病が広まる前に死に絶えてしまったのだ。並外れた攻撃性は諸刃の刃となる。  ちょっとした気に食わないといっては人を殺し、分け前が惜しいからといってはまた殺す。ここまでくると凄みがあるとかいう以前に、バカである。いくら非合法組織といえど、信頼関係もなく裏切りを当然のものとすればいずれ組織が立ち行かなくなるのは目に見えている。「道から外れたものはすぐに殺し、恐怖で統制を取る」という台詞があったが、逆効果だ。恐怖がもたらしたのは疑心暗鬼と混乱、そして破滅。頭の悪いチンピラの物語は『ゴッドファーザー』のようにかっこよくはないものの、徹底したリアリズムには惹きつけられる。  ただ実話だから仕方ないが、終盤が退屈。麻薬が絡み始めてから失速し、尻すぼみに終わってしまう。つかみは素晴らしいし、趣味のいい音楽にのせて流れるストーリーはなかなか楽しめたのに、終わり悪ければ全て悪し。結末で一気に評価が下がった。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-20 23:11:01)(良:1票)
316.  イージー・ライダー 《ネタバレ》 
案外楽しかった。車に揺られて窓に流れる風景を眺めているのは嫌いじゃないので。広い道路と真っ青な空、障害物のない開けた風景がすがすがしく、バイクは乗らないがその快感の一端ぐらいは感じ取ることが出来た。無限に色彩を変える空を眺めていると、自分がゼロになっていくような爽快感がある。その快感に二人のライダーは求めていた自由を見た気がしたのだろう。  しかしワイアットはどんなに走っても満たされない自分に気づく。「大金があって、しかも自由だ」と無邪気にはしゃぐビリーに、「それでも、ダメなんだ」とつぶやくワイアット。保守的な田舎者連中が正しいとは思っていない。かといって、麻薬に溺れて放浪する自分たちが正しいとも思えない。  人が進化して一段上の社会が訪れるという、あまりにもちゃちなヒッピー思想。理想社会に憧れた連中は虚ろな目つきで砂地に種を蒔き、誰もが平等に暮らす「金星人」は地球人の前に姿をあらわそうとしない。現代社会に失望して輝かしい理想を掲げるが、けっしてそこに行き着くことはない。  二人は外見は怖いが、ある意味では純粋すぎるくらい純粋だ。最後に吹き飛ぶバイクの無残な姿は、現実に押し潰される理想と重なって見えた。
[DVD(字幕)] 8点(2005-11-18 15:42:21)(良:1票)
317.  王妃マルゴ
血なまぐさい宗教戦争と権謀術数飛び交う王宮のドラマを、カラヴァッジョの絵画を思わせる暗く陰惨な映像で雰囲気たっぷりに描いている。全編に渡って暗闇が多く、ラストシーンでようやく美しい日の光が差してほっとさせられた。それぞれの思惑が絡み、もつれた末に、思わぬ結末に至る運命的な物語が面白かった。  しかしマルゴを含めたすべての登場人物に距離を感じてしまい、入り込むことが出来なかった。マルゴの丁寧な心情描写がないので、彼女がどんな人物なのかをつかみにくい。アンリが一番共感しやすかったが、彼よりもマルゴとラ・モールに感情移入させる作りにしなくては話にならないのでは?   映像に凝っているようでいて、とりたてて美しいと思える場面が少ないのも残念。いちばん印象的なのは、暗闇に白く浮かび上がるカトリーヌ・ド・メディチの顔。どう見ても吸血鬼ノスフェラトゥ(笑)。歴史に残る悪女とはいえ、あんまりな扱いだ。
[DVD(字幕)] 6点(2005-11-15 16:57:27)
318.  天国と地獄 《ネタバレ》 
リアルな捜査の過程は、高村薫の『マークスの山』を思わせた。警察という組織が犯罪に対しどう動き、追い詰めていくのかが丹念に描写され、重厚な味わいがある。  とくに、権藤と面会したときの犯人の独白がよかった。犯人は財産を失った権藤をみてあざ笑いたかったのだろうが、権藤は冷静に将来への前向きな展望を語り、犯人を憎むどころか憐れんでいる。犯人はいわば自身の過酷な境遇への憎しみを、たまたま目に付いた人物へと転化していたに過ぎなかった。堂々とした目の前の男に、自分の不幸ばかり嘆いていた己の過ちに気づく。狡猾な犯人の完全な敗北。虚勢が一気に崩れ、叫びだす様子は真に迫り、すさまじい迫力があった。  ただ、私の集中力に問題があるのか、見終えて少し疲れてしまった。こんなに長くしなくても、情報量を減らさずにもっと短くまとめることができたのでは? 丁寧に描いている意味がよくわからない場面がいくつかあった。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-14 01:45:13)(良:1票)
319.  フロム・ダスク・ティル・ドーン
ものすっごい、バカ。これでタランティーノが好きになりました。映画って何やってもいいものだと思うんですけど、タランティーノほど無邪気に、ばかげたことを平気でやっちゃう人は存在しない。唯一無二、子供のような天才です。  絶対に読めない後半の展開。深い人間ドラマも何もなく、脚本は意図的に破綻させられている。まちがっても完成されている作品とは言い難い。それなのに、感動してしまった。この超がつくほどのバカぶりに。どこまでも自由な、あまりにも自由なタランティーノに。万人受けするものではないが、個人的には心から楽しむことが出来た。  常識的な考え方、大人ぶった良識にファック・ユーを突きつける爽快感。中学生の頃に初めてこの映画を見てから、自分の心を縛っていたある種のくだらない思い込みを振り払うことが出来たように思う。もっとバカになって、はちゃめちゃに生きてもいいんだ、むしろそうしなきゃ損なんだと思えた。常識を捨てて、バカをやることの素晴らしさというものを教えてもらった。こういう作品に出会わなかったら、自分は今よりずっとつまらない人間になっていただろう。そんな思い入れをこめて、大サービスの10点。
[ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-13 03:28:55)(良:1票)
320.  オペレッタ狸御殿
ああ、むちゃくちゃ。いい意味で、むちゃくちゃ。これは観るドラッグ、映画という名の幻覚剤だ。マジックマッシュルームを齧ってメリーゴーランドに乗ったかのような、サイケデリックなトリップ感。観ているだけで脳細胞がぷちぷち弾けていくような快感がある。点数としては7点をつけておいたけど、これはもう通常の映画のものさしで測れるような作品ではない。鈴木清順はもはや一つのジャンル、一つのまったく異なる世界であって、もう映画としてどうこういう気になれない。異次元を垣間見れて楽しかったね、って感じだ。とくにびるぜん婆の散り際が最高。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-09 18:14:46)
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