21. ウルトラヴァイオレット(2006)
《ネタバレ》 何か一箇所でも目新しいアクションやビジュアル面で驚かされたら良しとしようと思っていたが、そんな淡い期待すら叶えて貰えなかった。アクションさえカッコ良ければ、ストーリーの陳腐さについては目を瞑れるが、肝心のアクション演出にまったくセンスが無い。斬り合いの緊張感とか、心理的な駆け引きとか、限られた条件のみを利用してピンチを乗り切る知的な展開とか、日本の漫画なら今や当たり前にやっている工夫や演出が何も見られない。最近のこの手のアクション映画はワイヤーやCGにより見た目は派手になったが、やっている事は単純で底が浅い。 「リベリオン」の時も思ったけど、なんで要所を守る兵士が防弾チョッキも着用していないのか?しかもかなり科学の進んだ近未来社会でしょ?次元圧縮みたいな超技術があるなら、「空間歪曲スクリーン」とか、「超電磁バリアー」とか、もっと防御面でもハッタリを利かせて欲しい。いくら何でも簡単にやられ過ぎるから、相対的にヴァイオレットの強さや凄さも出せていない。ここが問題。 ヘリを破壊するシーンにしても、銃なんかじゃなくて、次元刀を長く伸ばして「ズバッ!」と一刀両断するくらいしろよ!レーザーや銃火器が通用しないから刀による近接戦闘が有効だとか、色々と言い訳が出来るじゃん。彼女の髪が紫に染まっているシーンも、「お、超サイヤ人みたいに、パワーアップする時は紫に染まるんだな!」と期待したのに、その後、髪の色に関しては何の言及も無く、色も黒いまま。何なんだ。 ストーリーにしても突っ込みどころ満載で、それがアクション面にも悪影響を及ぼしている。例えばヴァイオレット以外のファージたちが弱すぎて、敵にも味方にも魅力的なライバルがいない。ヴァイオレットが特別に強いとしてもその理由が分からないし、そもそもウィルスに感染した事による弱点やデメリットが作中で語られないから、アクションにもストーリーにも捻りが無い。おまけにボスにも魅力が無いし、鼻輪もカッコ悪すぎ。シックスが涙で生き返るのも意味不明。 ラストの闘いも、あの刀のデザインや炎をまとうシーンなど、完全に「るろうに剣心」の無限刃のパクり。監督にオマージュやリスペクトの気持ちがあるとしても、もっとセンス良くパクってくれ。 [DVD(字幕)] 3点(2007-05-22 17:57:59) |
22. バタリアン5
《ネタバレ》 ゾンビを単なる肉食獣のように表現していた、元祖「バタリアン」も個人的にはあまり好きではなかったが、それでも作品としてはまともに見れた。しかし同じタイトルを冠するシリーズ最新作は予想以上の駄作B級ホラーコメディだった。 学園内でのドタバタに終始しているばかりで、ここまでスケールが小さいと、とても「ゾンビ映画」とは言えまい。ただの学園モンスターパニックホラーの出来損ない。 展開もダラダラしている上に、脳を食うシーンも後頭部に噛み付くだけでワンパターンだし、ゾンビのメイクも明らかに手抜き。ラストも軍が介入して、学園にミサイルを撃ち込んで関係者を全滅させるという、超ありがちなオチ。 コメディ要素が強くなった分、恐怖感や終末観は無いし、その代わり笑えるかと言えば、たいした笑い所も無く、ホラーとしてもコメディとしても中途半端。組織の二人組みの緊張感の無いキャラクター性も同様。タールマンがヒッチハイクをしているラストシーンも、いかにも「面白いでしょ~」と言わんばかりで、押し付けがましい。ああいうシーンは、ラストにちょっとだけ映してエンドロールに行くのがセンスの良い見せ方というものだろう。 わざわざ続編として作っておきながら、従来のシリーズから何も進歩していないどころか、むしろ後退しているほどのショボさ。それなりに有名タイトルの続編を作らせてもらっていながら、今作特有の「売り」を作れない、作ろうと努力もしない監督の表現者としての怠惰さに腹が立つ。 こういうお気楽な事をやっている作品には容赦に無く最低点を献上する。 [DVD(字幕)] 0点(2007-05-20 18:41:54)(良:1票) |
23. X-MEN:ファイナル ディシジョン
《ネタバレ》 基本的なストーリーやキャラ造形は大雑把な部分が多い。結局、三作も続けた割りに、「人類とミュータントの対立や共存の模索」という肝心のテーマがあまり深く追求されず仕舞いだったように思う。「迫害を受けるマイノリティ」と言っても、作中ではそれほど深刻な迫害を受けているようには見えないし、どの程度の割合でミュータントがいて、それが既存の人類にとってどれほど不利益や不安を与えているのかも作中からはよく分からなかった。 ミュータントの力を象徴するジーンと、その力を消去する少年の対立構造も作中で上手く活かされていない。本来は強大な「力」を持つ事の意味や、それを制御する心や「力」を失う苦悩などを、この二人を通して描くべきだった。 特にポイントとなるべきジーンの人物描写がいい加減。ラスト以外、それほど暴走しているようにも見えないし、かと言って元の人格が必死に抑えて葛藤しているような描写も無し。マグニートも自分ですら抑えられない彼女を連れて来て何をやらせたかったのか、イマイチ不明。 ラストも研究施設を潰しただけで何も進展してないし、まして相互理解にも至っていないのに、何故か問題解決したような強引な結末。 また他の人も書いているように、アクション面を見ても、ミュータントたちの「能力」の使い方(演出)が下手すぎる。外見は人間と変わらないんだから、やろうと思えば旅客機や原子力発電所の占拠、要人の暗殺といったテロ活動だって簡単に出来るはずなのに、そういう能力描写が無い。 研究施設の襲撃にしても気づかれちゃダメなのに、「吊り橋を破壊して橋を架ける」なんてハデな事をやるから、当然のように迎撃準備を取られるし、市民の生活にとって重要な橋を壊すから、「やっぱりミュータントは迷惑だ」とか「怖い」という偏見を助長するだけで何もメリットが無い。 やはり色々な能力を適材適所として狡猾に活かすような「頭脳戦」や「心理戦」がほとんど無いのが物足りない。漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンド戦の奥深さを見習って欲しい。 [DVD(吹替)] 6点(2007-04-28 23:39:59)(良:3票) |
24. 真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章
《ネタバレ》 これだけ有名な作品なのに、かつて劇場版が一作しか作られていないとは意外。もっとも連載当初からの原作ファンで、期待していたアニメ版の「ユーアーショック!!!」にショックを受けて以降、アニメ版はギャグとして認識→黙殺しているので、変なモノがあまり世に出回らなかっただけ良かったとは言えるのかも。 ---閑話休題。 と言うわけで、今回、初めて「北斗の拳」の劇場版を見てみたけど、内容的には「サウザー編」のダイジェスト版って感じで、そこにオリジナルのエピソードを適当に混ぜてみましたって程度の出来。 何よりオリジナルキャラのレイナとソウガにまったく魅力が無い上に、ラオウとの絡みもあって無いようなもの。あのラオウと対等の口を利くというのも違和感ありまくり。何のエピソードも無いのに、そこまでのキャラとして出すのは無理がある。だいたい「修羅の国出身」という設定も何も生かされていないし、そもそもこのオリキャラがこの作品にとって必要な存在とは思えなかった。まして中盤以降、ラオウすら傍観者になってしまう始末。どこが「ラオウ伝」なのかと。 ケンとシュウの関係やサウザーとの闘いも原作の簡略版だから、原作を知っている者にとっては今さら何の新鮮味も意外性も無いし、原作を未読の人にとっては(そんな人が見に来るとは思えないけど)、展開が早過ぎてストーリーやキャラの関係を理解できないと思う。そのくせ肝心のサウザーの過去話は完全省略。 既にキャラ的にもストーリー的にも完結している作品だから、ストーリーの大きな変更や、旧キャラに影響を及ぼすような新キャラなどを追加する事は難しいとしても、ここまで原作のダイジェストだと、わざわざ劇場版として作る意味が薄いと思う。 さらに、ある意味で「期待通り」と言うか、「予想通り」と言うか、ケンシロウとラオウの声を担当する例の御二人が低レベル。まだ阿部寛はマシだが、ラオウの宇梶剛士がヒドい。技術的にも声質的にもミスキャストであるのは明白。もともと芸能人をメインキャラに起用する事自体が間違っている。 この辺の作品に対する愛着や拘りの無さが、いかにもブームの再燃に乗っかって作っただけである事を物語っている。丁寧な作画に対する敬意と、今後の期待を込めて、おまけで+1点。 [地上波(邦画)] 3点(2007-04-22 16:29:29) |
25. パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
《ネタバレ》 前作もそうだったけど、このシリーズの最大の問題点は、「海賊」という設定を使っている意味がほとんど無いこと。 相変わらずジャックは呪いやら契約やらに振り回され、自分の身を守ることに精一杯。同じく他の登場人物たちも自分たちの身の回りの問題解決に必死で、いつまで経っても「まだ見ぬ大海原へ財宝を探しに出発だ!」みたいな冒険ロマン溢れる展開にならず、スケールの小さいみみっちい話が続く。海賊映画にあるべき世界の広がりやワクワク感がまったく感じられない。 導入、申し訳程度に前作との繋がりの説明があった後、何故かジャックがいつの間にか変な人食い人種(?)に捕まっているという展開も唐突過ぎて意味不明。 長々とドリフのような緊迫感の無いコメディアクションが続いた後、結局、島から逃げ出すだけで、その後のストーリー展開にとって何か必要なイベントだったのだろうか? もともと今回はデイヴィ・ジョーンズとデッドマンズ・チェストが話の中核なのに、そもそも彼が何者で、チェストを探す動機や目的、ジャックとの関係など、説明不足な部分が多すぎる(ネットで色々と情報を仕入れて、ようやく今作の基本設定を理解できたけど、最初はジャックの手に浮かぶ黒い模様も何か分からなかったくらい)。 また、自分の欲しいものを指すとか言う、「北を指さないコンパス」なんてのも、随分とご都合主義的アイテムだよね~。せっかく出てきたクラーケンとの戦いもダラダラしていて間延びしてしまっている。 あの占い師の場所もどこか分からないし、最後に生き残った連中がどうやって辿り着いたかの説明も無し。ラストも前作を見ていたのに「お前、誰やねん」と思ってた(笑)。いかにも前作がヒットしたから作ったような後付設定のオンパレード。 前作を見ていても分かりにくいのに、今作から見ている人はもっと意味不明なんじゃない?少なくとも今作だけを独立して見ても完結しているように作るべきだと思う。 [DVD(吹替)] 4点(2007-04-21 20:38:51)(良:1票) |
26. 名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌
《ネタバレ》 「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」同様、良くも悪くも長期連載のおかげでキャラが確立した作品だからこそ見ていられる内容。もはやジャンル的にはミステリーでもアクションでもなく、「コナン」というジャンルと言った方が適切(笑)。 相変わらず純粋な推理要素は少なく、謎解きの醍醐味は薄い。オールキャストという売りも、ちょっと顔を出しました、という程度の扱いがほとんどで、本編に絡むキャラはごく一部。 犯人にしても、最初の探偵の爆破シーンがヤラセなら、なんで蘭たちには本物の爆弾を使う必要があるのか意味不明。犯人の最大の目的は「事件の真相を知ること」であって、蘭たちを殺す必要は無いはず。コナンたちを本気にさせたいだけならフェイクで十分ではないか?また、探偵の能力を見るためとは言え、あんな遠回しな情報の小出しも時間の無駄。さっさと知っている情報をすべて開示するのが真相を知るには一番手っ取り早いはず。この辺の矛盾や突っ込みどころが多いのが難点。 まあいつものシリーズのように、蘭と新一のウジウジしたメロドラマにせず、テンポの良いサスペンスドラマとして割り切った作り方には好感が持てる。PS.声優に久しぶりに平野文さんが出てたのが嬉しかったw。 [地上波(邦画)] 5点(2007-04-07 05:05:26) |
27. ファイナル・プロジェクト
《ネタバレ》 大仰なだけで陳腐な「核兵器」絡みのストーリー、国家規模の重大な事件なのに、コメディっぽいお茶らけたノリのおかげで、ご都合主義ばかりが目に付く下手な演出と緊張感に欠けたダラダラとした展開、そしてキレの無いアクションと、ジャッキー映画なのに褒める部分が見当たらない。 序盤の雪山をスノーボードで逃げるシーンはスピード感が無いし、人殺しとの「誤解」を受けたまま長々と見せられるカンフーアクションにも爽快感など感じられるはずがない。特に後半の水中でのスローな殴り合いには呆れ果てた。まさにドリフのコントレベル。スピード感が売りのカンフーアクションの良さを殺すだけで何のプラス効果も無い、まさに無意味な演出(いや、やってもいいけど、このシーンもダラダラと長すぎる)。 ラストも逃げるクルーザーに車で突っ込んで終わりと言う、これまたどこかで何度も見ているご都合主義的でありがちなオチ。 [地上波(吹替)] 3点(2007-04-07 04:41:41)(良:1票) |
28. タキシード(2002)
駄作と言うほどつまらない訳じゃないけど、コメディとしてもアクションとしてもハジけておらず、中途半端な作品であることは間違い無い。 まず「何かを身に着けると超人になる」という設定がありがちだし、特にタキシードに拘る必然性も無い。またジャッキー演じる主人公・ジミーの掴み所の無い微妙なキャラ設定のせいで、何も分かっていない素人がプロを引っ掻き回す痛快さも、逆に陰謀に巻き込まれて行くハラハラ感も出ていない。相棒の女のとぼけたキャラクターも露骨にウケを狙い過ぎで鼻につく時がある。 肝心のカンフーアクションも暴れっぷりが中途半端でリアリティとコメディのバランスが取れていないし、下ネタで笑わせようとするシーンも寒い。個人的にはCGを使おうがワイヤーアクションに頼ろうが面白ければ何をやってもらっても構わないのだが、それで面白くなってないのが問題。 結局、まったく同じタキシードが二着しか出てこないからアクション面でも娯楽面でも広がりが出ないのだと思う。例えばタキシード以外に「戦闘用ドレス」とか「戦闘用メイド服」なんかを出して、それを相棒の女が着てしまって、「ちょっ、ちょっと、何よコレ~!キャ~!」とか言いながら見事なカンフーアクションを披露したらもっと面白くなったと思う。 基本的に「娯楽アクション映画」なんだから、「タキシードの開発費用とか機密があるから何着も無い」、といったストーリー設定上のリアリティに縛られてつまらなくなるよりも、コメディとして優先すべきものがあるはずなんじゃないかな。 [地上波(吹替)] 4点(2007-03-23 17:01:36) |
29. 101
《ネタバレ》 <アニメ版未見> アニメ版はちゃんと見た事が無かったので、今回初めて内容を知ったが、原作がディズニーアニメの古典で、もともと低年齢層向けとは言え、ここまで幼稚な内容とは思わなかった。はっきり言って、これは「子供向け」ではなく、「子供騙し」というもの。好きな人には申し訳ないけど、個人的には、こんな作品こそ子供に見せたくないと思ってしまう。 当たり前のように犬が人間と同じレベルで喜怒哀楽や人語を解する世界で、やたら「地球上に生きる生命は皆兄弟だ」という共生の友愛精神を強調してくれるけど、こういう動物にまで簡単に適用される、不自然で一面的な博愛・人道主義の押し付けが、本当に低年齢の子供の情操教育にとってプラスになるのだろうか。 ファンタジーだからという言葉で片付けるのは簡単だけど、人間側の勝手な「解釈」で動物を「擬人化」するというのは、ある意味、飼い犬に服を着せて喜んでいるバカ飼い主のような、人間の自己満足や驕慢を見ているようで気色悪い。 また「ホームアローン」もそうだったが、悪人(=大人)はとことん愚かで、犬や馬ごときに手玉に取られてしまうというシーンなどは、いくら子供向けとは言え、あまりにもバカらしく、これを見た子供が大人を見下すようになるんじゃないかとすら思ってしまう。 主人公のふたりが同じ犬を飼っているというだけの理由で、出会ったその日に結婚してしまったりするのも、まるで「動物を飼う人間に悪人はいません」と言わんばかり。そのくせ飼い主は作中で犬を助け出す努力をほとんど何もしていない。 そして「可哀想だから」という理由だけで101匹もの犬を飼うという、およそ現実離れしているラストに至っては、もはや偽善とかを通り越して「動物愛護教」のような宗教的な狂気すら感じる。 もちろんディズニー映画にはハッピーエンドが似合うし、非情な現実やらを描く必要も無いけど、こんなにも現実から乖離した動物愛護精神と勧善懲悪の押し付けは、子供の精神的成長のバランスにとって良い影響を与えるとは思えない。 [地上波(吹替)] 1点(2007-03-20 23:35:09) |
30. 60セカンズ
《ネタバレ》 中途半端。 望まない車泥棒をやらされる主人公の苦悩も、かつての仲間たちとのドラマも希薄。見所であるべき盗みのシーンもあっさりし過ぎているので緊迫感に欠け、面白味が無い。コメディや恋愛要素も中途半端だし、カーチェイスもとってつけた感じで迫力不足。 また事情はどうあれ、あれだけの派手な盗みをした事は事実だからどうやって纏めるのかと思いきや、案の定、何のお咎めも無いご都合主義的なラスト(ハッピーエンドは好きだけどね)。 序盤はテンポも良いし、ニコラス・ケイジのキャラクターもハマっているから、本来はもっと面白くなっても良さそうなのになあ…。 [地上波(吹替)] 3点(2007-03-19 22:58:36) |
31. THE 有頂天ホテル
《ネタバレ》 確かにストーリーはあって無いようなものだけど、この手の「群像劇」や「コメディ」が苦手な自分ですら最後まで飽きずに見られるテンポの良さや、多くの個性的な出演者たちを上手く動かしつつ、各登場人物に満遍なく見せ場を設ける手馴れた作りはさすがといった感じ。 時間軸が前後するので、若干間延びしている印象はあるが、そこは少しづつ出来事の関連性が分かるようになっていく過程を見せることで、観客の興味を持続させる。この辺の脚本構成は簡単そうで非常に難しいと思う。 ホテル内で繰り広げられる数々の人間ドラマは、一見あり得なさそうでいて、しかし決して映画特有の非現実的なものではなく、誰もがどこかで感情移入出来るような普遍性を根底に備えている。年末の31日から新年に至る数時間という時間経過の中で、多くの登場人物たちが自分自身の生き方と向き合い、悩み、時には考えをリセットし、そして新たな気持ちで人生を歩み出す。この気持ちとシンクロ出来ない人はいないだろう。諦めない事や前向きである事の大切さを主張しながら、決して押し付けがましくならないところが好感。 YOUさんの少しかすれたハスキーボイスが意外と魅力的だった。 [DVD(邦画)] 8点(2007-02-28 02:34:58) |
32. ユナイテッド93
《ネタバレ》 書籍でもインターネットでもテレビニュースでも、いくらでも情報を得る事が出来る、あの前代未聞の歴史的テロ事件に関して、今さら中途半端に脚色された「ドキュメンタリー風味」の映画を見させられなければならないほど、我々はあの事件から何も学んでいないのだろうか?国家と民族のあり方やテロついて何も考えたりしていないのだろうか? 英雄的側面を強調する事で反論を封殺しつつ、何気に政治的プロパガンダに利用する事の方が、亡くなった被害者や遺族の方たちに対して失礼だと思う。 [DVD(字幕)] 3点(2007-02-27 22:31:31)(良:3票) |
33. 隠された記憶
《ネタバレ》 DVDのインタビューで監督さん本人が解説しているように、基本的に「解釈お任せサスペンス」であり、そういう意味で評価が難しい作品。 ビデオを送ってきた人物が誰かという「謎解き」は本質ではなく、それは見る人にとって誰もが共感しやすい「自分の過去や罪にどう向き合うか」というテーマの表象なのだろう。 そのため、より見ている者が自分自身と対話しやすくするため、意図的に抑えた演出やカメラの長回しなどが多用されている。事実、見ている間、「こんな風景ってどこかで見たな」とか、「こんな状況なら自分ならこう言うのに」などと、登場人物と自分をダブらせながら見てしまった。こういう感覚は久々。 ただ、全編に亘って「ビデオの送り主は誰で、その目的は?」というミステリアスな謎掛けで引っ張っているだけに、その解釈を観客に丸投げしてしまうオチは、はっきり言って手抜き一歩手前と言わざるを得ない部分もある。そういう意味では本格ミステリーなどと比べれば、お手軽な作りと言える。 あえて解釈すれば、主人公の生家を知っている事やニワトリの首の絵などから、明らかに少年時代の出来事を知っている人物であるのは間違い無いはず。とすれば、あんな大昔の、しかも二人しか知らないはずのエピソードを知っていて、かつ、それを恨みに思っている可能性がある人物は、あの養子にしていた少年以外にいない訳で、さらに二人の「室内」でのやり取りまで隠し撮りされている以上、まったくの「第三者」が忍び込んでやっていたという可能性は、現実問題としてまずあり得ないだろう。それに加え、ラストシーンを見るに、父親に聞かされた過去の愚痴などから、彼(自殺した男)の息子が今回の行動を起こしたと解釈するのが一番妥当に思える。 まあ「解釈お任せ」という逃げ道を用意して、始めから伏線の回収を放棄している作品である以上、どうしても傑作とは言い難いが、見ている間は退屈しなかったし、それなりに考えさせられる作品として一度くらいは見ても損は無いと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2007-02-26 22:52:29) |
34. 着信アリ2
《ネタバレ》 前作以上のカスホラー。続編としての必然性皆無の意味不明なストーリーのおかげで、少し前に見たのにほとんど内容を忘却しているw。嫌な記憶は消去したいという本能なのか…。 原作者を始めとして、ホラーに対する興味も、矜持も、センスも無い人間が、金儲け主義から流行りに乗っかって、適当に他作品から演出や設定やらをパクって作ると、こういう見事なまでの駄作が出来上がる。 台湾という舞台も意味ないし、相変わらず出演者の演技も「キャーキャー」うるさいだけ。 [DVD(邦画)] 0点(2007-02-25 19:38:10) |
35. ポセイドン(2006)
《ネタバレ》 実はオリジナルを見たことが無いので比較は出来ないけど、パニックものとして無駄も少なくシンプルにまとまっている佳作だと思う。 人間描写が浅いのは確かだけど、濃密な人間ドラマはオリジナルに任せておいて、娯楽作品としてCG技術を活用しつつビジュアル面を強化し、「どうやって生き延び、どうやって逃げ出すか」という部分を前面に持ってきた割り切った作り方は、リメイクの方向性として正しいと思う。個人的にはあまりクドクドしく人間ドラマをやられるよりも、脱出の過程において最低限の人間性を描くに止めておく方が、むしろこういう緊急状況では自然に思える。 どちらにしろ二時間程度の短時間で複数の登場人物の背景を中途半端に語るよりは、スッパリと切るところは切って、見る者の想像に任せた方が良い場合もあるはず。黒人船長と女性シンガーが良い例。あの状況だからこそ、何も語らせない最期の抱擁にはグッと来る。あそこでダラダラと最期の語らいを始められたら一気にシラけただろう。 展開にはかなりのご都合主義が見えるものの、船の構造や備品を利用して脱出する過程はよく考えられていて、それなりに楽しめた。 [DVD(吹替)] 6点(2007-02-25 04:59:47)(良:1票) |
36. 着信アリ Final
《ネタバレ》 回を追うごとにレビュー数が激減していくのが、このシリーズに対する評価を明確に代弁しているだろう。 原作者を始めとして、ホラーに対する興味も、矜持も無い人間が、金儲け主義から流行りに乗っかって、適当に他作品から演出や設定やらをツギハギして作ると、こういう見事なまでの駄作が出来上がる。 ダラダラと同級生が殺されていくだけで、もはや続編として携帯を使っている意味すら失っている。恐怖演出にもエッセンスが無いのでまったく怖くない。 相変わらず女性の叫び声は決まって「イヤーーーッ!」。携帯に着信があれば「イヤーーーッ!」。人が死ねば「イヤーーーッ!」。 その他のセリフも、「海に行かない?」、「約束だよ、明日香」、「もう終わりにしよう」、「君に会えて良かった」、「君は強くなった」etc.etc。なんて陳腐で記号的なセリフの数々…。ここまで陳腐で恥ずかしいセリフを平気で使える監督や脚本家のセンスがどんなものかは推して知るべしだ。 とにかく何から何まで「記号」の羅列。 わざわざ韓国を舞台にしている意味も分からんが、やたら韓国人が親切で勇敢で優しく、日本人が陰湿で卑怯に描かれているのは、どう考えても韓国マンセーな「媚び」としか思えない。 またラストでも、あんな怪しげなネット上のメールに何万人も送るわけないだろ。「がんばって!」とか「力を合わせて悪霊を退治しましょう」とか、あり得ないだろ。アホらしい…。ネット回線に潜む悪霊がパソコンをフリーズさせたからって何で退治できるんだ。まあ実際、退治出来てなかったみたいだけど。でも、それならあの爆発シーンは何だったんだ。ぜんぜん問題は解決してないじゃん。なんで二人は無事なんだよ。他のいじめてた連中は?ファイナルとして何も進展も完結もしてないじゃん。 こんなスタッフには二度と映画など作ってもらいたくない。猛省を促したい。 [DVD(邦画)] 0点(2007-02-25 03:42:33)(良:1票) |
37. コンスタンティン
《ネタバレ》 「悪魔と天使の対立」とか、「悪魔や妖怪を退治する闇の始末人」と言う陳腐な設定を、何の工夫も無く、そのまま使っている地点でセンスが無い。タバコと酒で身を持ち崩している、やさぐれたダークヒーローというのも、ハードボイルドの私立探偵などによくあるキャラだし、特に新鮮味は無い。むしろ完全無欠のヒーローよりも「何らかの欠点を持っている」というのはキャラ作りのお約束。 また、神や悪魔絡みのストーリーの大仰さに比べ、見せ方のスケールが小さく、結局、主人公の周囲でゴタゴタしているだけで、こじんまりとしてしまっている。時間的な制約もあるから仕方ないが、敵にも味方にも魅力的なキャラが出てこないので、相対的に主人公のキャラにも深みが出ていない。 敵対する悪魔(悪霊?)も人間の作った武器であっさり倒されたりするので、「此の世ならざる者」の迫力や恐ろしさが感じられない。相変わらず「悪魔祓い」と言えば「聖水」というのもワンパターン。 まして大天使ガブリエルや悪魔王サタンまで出しておきながらあの扱い。見た目に威厳や迫力が無いし、言う事、やる事もショボすぎ。本来あのレベルの大天使や大悪魔に人間風情が、戦闘力でも知性でも駆け引きでも、太刀打ち出来るわけないがな。あまりの霊圧で見た途端、金縛りで動けなくなるとか、反吐を吐くとか、時間を止められるとか、一睨みで武器を消滅させられるとか、色々と「格の違い」を表現する事って出来るじゃんよ~。 まあ何にしても、悪魔や魔物と戦うダークヒーローと言えば、やはり日本の漫画で「デビルマン」や「ベルセルク」などの傑作を見てしまっているから、どうしてもこの程度の作品では物足りない。戦闘シーンの迫力やセンスで言えば「バスタード」なども凄い。 [DVD(字幕)] 3点(2007-02-20 16:14:28) |
38. イーオン・フラックス(2005)
《ネタバレ》 「人類が滅亡しそうな近未来」、「閉鎖空間での管理社会」、「クローン再生」、「レジスタンス」と超ありがちな設定が目白押し。そのせいで見始めの前半は、こりゃどうしようもないと思ったけど、CGや小道具を始め、全体的に丁寧な作りが功を奏してか、小粒なB級作品ながら、それなりに見れるものにはなっている。 思考停止していた仲間が最後に自分の意思で行動するとか、一度きりの命だから人生には意味があるといったオチなど、ストーリー展開的に「こうあって欲しい」と思うような、守るべきお約束も踏襲されているので安心して見ていられる。 ただ、アクションが地味で、敵味方含めて登場人物に魅力が乏しく、近未来らしい武器もほとんど出てこない。肝心のモニカンという反政府組織(?)の実態や、精神世界にいたオバはんも何者なのかはっきりしないまま終わってしまった。 序盤、ハエを睫毛で捕らえたり、口から出した花粉で情報伝達したり、足が手になってる人が出てきたりと、違う意味で個性的な演出は目立つが、そんな変な所にB級らしさを出さずに、もっとアクション面で奇抜な演出を見せて欲しかった。 またそもそもクローン再生による永遠の命に拘った弟が、人類の不妊治癒の研究を阻止しなければならない理由がイマイチ分からない。クローン再生の技術は技術として有効なんだから、何が問題なのか?人類が自然懐妊するようになったからと言って、人間のクローン再生が出来なくなる訳ではないんだし。 あ、それと肝心な突っ込みとして、完全なクローン再生が出来たとしても、後天的な「記憶」までは受け継がれないのは常識。テーマとして感動させるポイントだったのに、なんとなく言葉の雰囲気に流されてるだけで、この辺の設定が甘いのが残念。 駄作とまでは言わないけど、やはり点数的には4~5点辺りが限界かな~。 [DVD(字幕)] 4点(2007-02-18 23:03:16) |
39. オーメン(2006)
《ネタバレ》 リメイクとしての出来は悪くないが、肝心のリメイクする必然性が感じられない作品。 ストーリーの大枠や人物設定がオリジナルのままで、ほとんどアレンジされていないし、多少変えられた惨殺シーンの演出もインパクトという点では負けている。 もともとオリジナルもモロにキリスト教の宗教観ありきの作品で、ヨハネの黙示録とか獣の数字666とか神に敵対するアンチ・キリストなんて言われても、基本的に仏教徒の日本人には恐怖の対象にはなりにくいし、むしろ漫画やアニメなどによく使われるギミックとして認知されている程度だろう。 そのためダミアンの母親が山犬ってのもピンと来ない。山犬が悪魔の化身ってことだろうけど、悪魔の割には計画がやたら回りくどい。しかも悪魔はいるのに、全知全能の神は何も手助けしてくれないのねw。悪魔の手先の乳母も中途半端なキャラ。もっと鬼気迫る執念のようなものが欲しい。 まあ全体的に漂う不気味な雰囲気はオリジナル同様よく出ているし、ストーリー展開のテンポも良いから、どちらも未見なら一度くらい見ても損は無いと思うけど、すでにオリジナルを見ているなら見る必要は無し。 [DVD(字幕)] 5点(2007-02-16 19:51:12) |
40. マスク(1994)
《ネタバレ》 CGのレベルが低いのは、時代を考えればある程度は仕方ないとは言え、その使い方や表現センスまでが古臭い。CGによるコミカルでオーバーな表現を売りにしているのだろうけど、今どき目玉が飛び出したり、アゴが落ちたり、地面に落ちてペラペラになったりと、「トムとジェリー」のようなあまりにも古典的な欧米型のギャグの数々を素直に笑うのはちょっと難しい。逆説的な意図、もしくは温故知新としてあえて古臭い事をやっているのか、未だに欧米では「ギャグ」と言えばこんなのしか思いつかないのか。 そもそも「マスクを被る事で超人的な力を得る」というのは分かるけど、あまりにもその能力が現実離れし過ぎているのが問題だと思う。そうなる「根拠」が語られないまま、悪い意味で「何でもアリ」になってしまっているので、マスクを被っている間のアクションやストーリー展開にまったく緊張感や説得力が無い。 警官に囲まれてるのに踊ったりするミュージカルっぽいシーンなども、それこそ「何でもアリ」で、個人的にはバカバカしくて呆れてしまうだけ。操作系能力も持ってるのかよって話でしょw。 また、そんなコミカルな表現を強調しているとは言え、あまりにも合成である事があからさま過ぎ。もちろんこれがアニメならそんな事に文句は言わないが、やはり作中では本物(現実)という前提で話を進めている以上、合成の「齟齬」をコミカルな表現で誤魔化しているようにしか見えない。 ラスト間際でも、マスクを被るのが犬だけじゃなく、他の登場人物にもどんどん乗り移って、敵味方関係なく大騒動になるようなハチャメチャな展開にして欲しかった。肉体や表情の変化は突飛なのに、肝心のストーリー展開やアクション演出が地味。 中途半端にシリアスにしたり恋愛要素を絡めてないで、もっとコメディとしてハジけないと、こんな「何でもアリ」のマスクを出す意味無いでしょ。 [地上波(吹替)] 3点(2007-02-14 22:52:00) |