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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1891
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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401.  ピアッシング 《ネタバレ》 
男は、生まれたばかりの自らの子供にアイスピックを突き刺したい衝動に駆られていた。女は、生きづらい世の中に絶望を感じると自らの太腿にハサミを突き刺すという自傷行為を止められずにいた。内に潜むそんな抑えきれない衝動に悩む彼らはある夜、場末のホテルで客と娼婦として出会うことに。殺人願望を抱えた男と自殺願望を抱えた女――。出会ってはならないそんな二人が顔を合わせたとき、身も凍るような惨劇の幕が切って落とされるのだった……。社会のルールからはみ出してしまった男女のそんな文字通り命を懸けた駆け引きをサスペンスフルに描くサイコ・スリラー。原作は、泣く子も黙る現代日本文学の重鎮、村上龍。私、原作本ははるか昔に読んだ記憶があります。この本が出た90年代の村上龍って、そのシャープで切れ味鋭い文体とエロとグロをふんだんに取り入れながらもあくまでスタイリッシュさを失わない世界観とを武器に、ひたすらワンアイデアで新作を量産していたころ。なんか金に困ってんのかなってくらい毎年大量の本を出していたので、もちろん傑作と呼べるものも幾つかあるのですが、中には駄作と断言できる酷いものまでさまざまでした。そしてこの『ピアッシング』は、ギリギリ駄作ではなかったかなという印象。で、そんな本を映画化したという本作。ま、こんなもんじゃろって感じでした。やはり彼の本を映像化するとグロさが勝っちゃうんですよね(最後の乳首に針を突き刺すシーンはあかん!)。映像や脚本にも何のセンスも感じられなかったし、最後まで観るのが結構しんどかったです。変な虫が出てくる幻想シーンにだけ、ほんの少しセンスを感じました。以下余談。本作を本サイトに登録したのは私なのですが、きっかけは近所のツタヤのツタヤ先行レンタルコーナーに並んでいるのを見かけたから。「あ、原作読んだことあるし僕のお気に入りのミア・ワシコウスカも出てるしいつか観よう」と思うもわざわざ新作料金で借りるのもなんだし、旧作になるまで待って先に登録だけしとこうって思ったんです。でも、いつの間にかそのツタヤからはなくなってしまいました。近くの店舗にもないし、わざわざ取り寄せてもらうほどでもないし、いったいなんでないんだって思いつつもずっとレビューできずにいました。今回ネットフリックスでようやく鑑賞できたわけですが、いったいなぜツタヤからなくなってしまったんでしょう。もしかして、あまりに酷い内容だったからかな(笑)。
[インターネット(字幕)] 4点(2021-12-14 17:10:10)
402.  ELI イーライ 《ネタバレ》 
彼の名は、イーライ。数年前に発症した極度の免疫疾患により、少しでも外気に接すると瞬く間に皮膚が爛れてしまうという難病に侵された11歳の少年だ。なので、普段の生活は完全に外部と遮断されたテント内のみ、外出する時も完璧に防備された防護服を着なければならなかった。悲嘆に暮れた彼の両親は、様々な専門家を当たってみるものの有効な治療法を見出せぬまま時間だけが過ぎていった。そんな中、両親はこれこそ本物かもしれないと思しき専門医に行き当たる――。アメリカ郊外にひっそりと佇むその医師の治療施設は、外部との接触を一切絶った一軒の洋館だった。しかもそこは最新鋭の設備によって外気から完全に隔離され、この中であればイーライも普通の少年のように自由に生活することが出来るという。久しぶりの普通の生活に嬉しくなったイーライは、治療に専念するため、その洋館に両親とともに泊まり込むことに。だが、一日二日と過ぎてゆくごとに、彼はこの洋館に言い知れぬ違和感を感じ始める。何処からか自分を見つめる視線、いつに間にか壁に書かれていた謎のメッセージ、そして屋敷の外をうろつく怪しげな少女……。果たしてこの施設に隠された秘密とは?という極めてオーソドックスな設定のゴシック・ホラーなのですが、本作のミソは主人公の少年が外部との接触が一切無理という難病に侵されているという点。おかげでこの洋館から逃げ出せないという密室設定を無理なく作り出せている。そこで次々と巻き起こる怪異現象もまぁかなりベタではありましたけれど、それなりに怖くて一定の水準には達していたと思います。知らない洋館で夜を過ごすというのはやはり本能的な怖さを搔き立てるものがありますね。そこで繰り広げられる主人公の治療も禍々しくて大変グッド。特に、イーライの頭に電動ドリルを突っ込むシーンは思わず目を逸らせちゃいましたわ。このシーンを含め、何だか全体的に楳図かずおテイストを感じたのは自分だけでしょうか。そして、最後に明かされる驚愕の真相にもまんまと騙されてしまいました。なるほど、このどんでん返しは予想できませんでしたわ。監督はこの善悪の逆転劇を見せたかったのですね。とは言え、100%納得できたかというと全くそんなことはありませんでしたけど。納得度で言えば正直、25%くらいですかね。残りの75%は「んなアホなぁ」でした(笑)。と、オチがちょっと(かなり?)残念な作品でしたけれど、正統派ゴシック・ホラーとしてはぼちぼち楽しめると思います。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-12-10 08:10:49)(良:1票)
403.  炎の裁き 《ネタバレ》 
1991年、12月23日。テキサス州、コルシカナにおいて一軒家を焼く火事が発生する。子供部屋で出火した炎は瞬く間に家全体へと拡がり、手の施しようのないまま全焼してしまう。当時家に居たのは失業中の父親トッドと、産まれたばかりの赤ん坊を含む3人の幼い子供たち。母親のステイシーは夜勤に出ていてまだ帰宅していなかった。消防車が来るまで懸命に子供を助けようとしたトッドだったが、炎の廻りは予想以上に早く、不幸にも3人の子供たちは帰らぬ人になってしまうのだった――。当初は被害者として扱われていたトッドだったが、その後事件は予想外の展開を見せる。なんとトッドが、自らの子供3人を焼き殺した放火犯として逮捕されたのだ。そうして始まった裁判では、トッドの過去の犯罪歴や妻に暴力を振るう粗暴な言動、そして彼と揉め事を抱えていた隣人たちの証言によって追い詰められ、最終的に彼は死刑判決を受けてしまうのだった……。果たしてあの日、いったい何があったのか?彼は本当に娘を殺したのか?そして彼はこのまま死刑となってしまうのか?実話を元に、そんな痛ましい火事の真相を巡って翻弄される人々の葛藤を描いた法廷劇。という、冤罪の疑いのある死刑囚の再審請求を巡るお話なのですが、普通ならここで彼の事件の再調査を担うことになるのは理想に燃える若手弁護士と相場は決まっているもの。だけど今回、この事件の再調査を行うのは何処にでもいるような平凡なおばちゃんというのが本作のミソ。もちろん頑張って裁判記録や当時の証言者に当たってみるのだけど、死刑反対派ってだけの何の権限もない単なるおばちゃんなので、そりゃもちろん調査は難航するわけですよ。しかも彼女だって自分の子供たちまで巻き込んでるわけですから、そりゃ世間の白い眼を浴びて当然。それでも地道な調査の結果、彼の冤罪の可能性が濃厚となり、決定的な証拠も掴めそうになるクライマックスは非常にサスペンスフルで見応え充分でした。死刑執行が明日に迫る中、ぎりぎりのタイミングまで尽力する主人公。きっと最後には執行延期の連絡が届くはず……。でも、ここで大きくネタばれすると、物語は非常に重い結末を迎えてしまいます。果たして何が正しかったのか?自分は死刑存置論者ですが、それでもこの結末は深く考えさせられました。監督は、社会性の強いエンタメを得意とするエドワード・ズウィック。彼の演出力は相変わらず高く、特に死刑囚独房で幻想の娘と一人会話を交わすトッドには胸打たれるものがあります。当初はこのトッドに冷たく当たっていた看守が次第に彼に同情を寄せていく描写も巧い。ただ最後、テキサスの共和党知事の実際の映像を流すシーンは非常に政治的主張が強いので、恐らく賛否が分かれるところ。自分はちょっとやり過ぎに感じてしまいました。とは言え、いろいろと考えさせられる密度の濃いヒューマン・ドラマの逸品と言っていいでしょう。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-11-22 08:35:52)
404.  勝手にふるえてろ 《ネタバレ》 
彼女の名は、江藤ヨシカ。地味で大人しい何処にでもいるような平凡なOLだ。毎日同じ時間に出社してはひたすら数字と向き合う事務の仕事をこなし、営業の空気読めない同僚やウザい上司の説教攻撃にひたすら耐えるようなしんどい毎日。家に帰ってからも絶滅した古代の動物をネットで検索したり、タモリ倶楽部の空耳アワーを見てにやにや笑うのが自分へのご褒美。一番の心のオアシスは、高校の頃に一方的に好きだったクラスメートの男の子、「イチ」との思い出を脳内再生して妄想にふけることという、いわゆる典型的な〝拗らせ女子〟だ。そんな彼女に最近、大事件が発生!なんと、彼女のことが大好きだという彼が出現したのだ。だが、ヨシカの中で「ニ」と名付けられた彼はやることなすこと空回りばかりで正直、引いてしまうことだらけ。思い出の中にしか居ない理想の彼か、イケてないけれど安定感は抜群の現実の彼か――。思い悩む彼女は、人生最大の賭けに挑むのだったが……。芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を原作に、オタク系拗らせ女子の生態をコミカルに描いたキュート&ポップなラブ・ストーリー。ちなみに僕は原作者である綿矢りさの昔からの大ファンで、本作は芥川賞受賞以降、長らく低迷していた彼女が見事な復活を遂げた名作。結論を言うと原作に負けず劣らずの素晴らしい出来でしたね、これ。綿矢りさって若い女子のリアルな生態を描きながら、文章がしっかりしているのでおっさんでもキュンキュンしながら読むことが出来る――というか、彼女の主な読者はほとんどおっさんなんじゃないかってくらい(笑)――幅広い読者から共感を得るその普遍性がウリなんですけど、それが見事に再現されてました。「イチ」に名前も覚えられていないと知った主人公が急にミュージカルになって、「私なんて絶滅すべきでしょうか」と切なく歌い上げられた日にゃ、もはや薄汚れたおじさんである僕も思わず泣きそうになっちゃいましたわ!!あの不自然極まりない街の人たちとの会話も全てこのシーンへの伏線になっていたなんて最高すぎる!!そう、世界のほとんど全ての人間は自分の名前なんて知らないんです。なのに自分が生きている意味とはなんなのか。若い女子の恋愛を描きながら、そんな実存主義的な深いテーマまで視野に入れている。見事というしかない。また、ヨシカを演じた松岡茉優も見事なまでに嵌まっていて素晴らしい仕事ぶり。空耳アワーの名作、レイジ・アゲインスト・マシーンの『ナゲット割って父ちゃん』を見て大笑いしている彼女なんてめちゃキュートで思わず抱きしめたくなりました(もちろん妄想で)。最後が唐突に終わっちゃったのがちょっと残念だったけど、それを上回るような魅力が随所に溢れた傑作でありました。以下余談。原作が雑誌『文學界』に最初に掲載されたとき、ヨシカがアカウントを乗っ取るSNSが思いっ切りミ〇シィって明記されてました。単行本発売時に変更されてましたけど、さすがにヤバいって編集部の間でなったんでしょうかね。
[インターネット(邦画)] 9点(2021-11-11 01:56:04)
405.  ハミングバード・プロジェクト/0.001秒の男たち 《ネタバレ》 
0.001秒――。それは生き馬の目を抜くようなNYの厳しい金融取引の世界で、ライバルを蹴落とすために必要な時間。光ファイバーやAIを駆使し、ライバル企業よりもコンマ1秒の差で優良株を買いそれを高値で売り抜けることで巨額の利益を上げるエリート・サラリーマンたち。そんな特殊な世界に身を置き、日々神経を擦り減らしていた落ちこぼれ金融マンであるヴィンセントは、ある日とっておきの方法を思いつく。それは、データセンターのあるカンザス州からNY証券取引所のサーバーまで、直線で1600キロにも及ぶ地下にトンネルを掘り、光ファイバーケーブルを通そうというものだった。そこに山があろうが川があろうが、まして人が住む民家があろうが買収し、ひたすらまっすぐ掘り進む。完成すれば、ライバル企業よりも0.001秒早く商取引を成立させることが出来るのだ。もはや無謀とも言えるそんな彼の計画だったが、幸運にもそのプロジェクトに出資したいという投資会社が現れる。自分の人生に一発逆転を図るため、彼は従弟である天才肌のコンピューター専門家を誘い、意を決して辞表を提出するのだった。もはや後戻りはできない。ハミングバードが一回羽ばたくような一瞬の時間に人生をかけた彼の計画は、果たして成功するのか?実話を基に、そんな無謀とも言えるプロジェクトに心血を注ぐ男たちの奮闘を描いた社会派ドラマ。野心に燃える主人公を演じるのは、まさに嵌まり役と言ってもいいジェシー・アイゼンバーグ(そう言えば、彼は過去にもフェイスブックの創始者マーク・ザッカーバーグの役をやってましたね)。監督は、独自の目線で社会問題を見つめるカナダの俊英、キム・グエン。最初こそ、「ここまでするか」と驚くほどの執念でもって長大なトンネルを掘ろうとする主人公たちの情熱に圧倒されながら観ていたのですが、彼らが相次ぐトラブルによりどんどんと追い詰められてゆくのを見ていると、なんだか呆れて笑えてきちゃいますね。だって、彼らが人生を懸けてやってることって他人より0.001秒早く株を売り抜けるってだけの話。それだけで巨額の利益を上げられるってのがそもそもおかしな話で、そんなことに人生を懸けて挑む彼らって一周廻ってこの人たちって実はバカなんじゃないかと思っちゃいますね。でも、それに世界の経済が振り回されているのかと思うともはや笑えない。相変わらずこの監督の目線は鋭い。途中に出てくるレモン農場の例えなんて見事に本質を突いている。物語の最後の顛末はまさに自業自得としか言いようがなく、そんな無駄なことに時間を使う彼らに比べたら、地道に働いてるレモン農場の農家の方が圧倒的に偉いって一庶民の自分なんかは思っちゃいますわ。行き過ぎた資本主義の矛盾をシニカルに見つめた、社会派ドラマの秀作と言っていいんじゃないでしょうか。お薦めです。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-25 09:01:24)
406.  ペット・セメタリー(2019) 《ネタバレ》 
そこは太古より、邪悪で禍々しい力が宿る場所――。都会の喧騒を逃れ、のどかな田舎町へと越してきたクリード家。可愛い盛りの二人の子供たち、愛する妻、そしてペットの猫と共に充実した日々を送っていた夫のルイスだったが、彼にはたった一つだけ気掛かりなことがあった。それは毎日家の前を猛スピードで通り過ぎる幾台ものトラック。不安を感じながらも新生活を始めた数日後、恐れていた事態が起こってしまう。娘のエリーが可愛がる猫がトラックに轢かれ、無残な死体となって発見されたのだ。エリーのことを思い途方に暮れる彼に、隣に暮らす老人が驚きの事実を教えてくれる。なんと森の奥深くにある神聖な〝ペットの共同墓地〟へとその死体を埋めると、次の日、何事もなかったように帰ってくるというのだ。半信半疑ながらも言われるまま、猫の死体を埋めたルイス。すると、ちゃんと次の日、猫は生きて帰ってきたのだった。だが、何処かおかしい。見た目は変わらないが、以前とは何かが違う。戸惑う彼を更なる悲劇が襲う。今度は愛する娘のエリーが、暴走トラックの犠牲となってしまったのだ。「どうして娘がこんな目に…」。嘆き悲しむ彼の脳裏に過ったのは、そのペット霊園の恐るべき力だった……。かつて何かのインタビューで、自分の書いたものの中でもっともおぞましい小説と言わしめたスティーブン・キングの初期の代表作を再映画化したという本作を今回鑑賞してみました。ちなみに僕は原作小説も映画の方も遥か昔に鑑賞済み。どちらも感想としては、愛する者の甦りという設定こそ秀逸だったものの、お話としてはどちらも普通という印象でした。なんか原作は、スティーブン・キングの悪い面が若干強めに出ちゃった感が強く、良くも悪くもサービス精神過剰なんですよね。この邪悪な力を使ってでも愛する者を甦らせたいというテーマ一本に絞れば良いものを、主人公が救えなかった患者の幽霊が何故か何度も出てきたり、妻の死んだ姉のエピソードが何度も繰り返されたりと明らかに詰め込み過ぎでした。本作も基本的にはそんな変わらず、やはり一本の映画としては散漫で引っ張りすぎな印象が否めません。中盤まで、「もうええからはよ死体を埋めに行けよー!」って何度も思っちゃったし。んでも後半、死んだ娘が生き返ってからはホラー映画のセオリーはちゃんと押さえられていたので僕はぼちぼち楽しめたかな。今回、死ぬのは長男から長女にしたのはナイスな変更だったんじゃないですかね。この子がなかなか頑張っていて、顔を歪ませながら包丁を持って襲ってくるとこはけっこう怖かった。あのたどたどしい喋り方もなんともヤな感じで大変グッド。という訳で、僕はまぁぼちぼち楽しめましたです、はい。
[DVD(字幕)] 6点(2021-10-11 23:57:42)
407.  ウルフ・アワー 《ネタバレ》 
1977年、記録的な猛暑によりうだるような熱気に包まれたニューヨーク。新進気鋭の女流作家ジューン・リーは、処女作がいきなりベストセラーとなったものの、自らの家族をモデルとしたとされるそのスキャンダラスな内容により賛否両論を巻き起こし、以来プレッシャーから二作目を書けずにいた。そればかりか世間の目を恐れるあまり、ブロンクスの狭いアパートの一室に引きこもり、一歩も外に出られなくなってしまう。買い物も近所のスーパーの店員に届けてもらい、ゴミも窓から捨てるような徹底ぶり。しかも外の世界では女性ばかりを狙った連続殺人鬼が暗躍し、不満を訴える市民が今にも暴動を起こしそうになっている。部屋の掃除すらままならず、貯金もあとわずかで底を尽きそうに。追い打ちをかけるように、謎の人物が何度も部屋のインターフォンを鳴らしてくるのだった。そんな内外の不安要素に心が押しつぶされそうになりながらも、新作執筆のためにタイプライターへと向かう彼女だったが…。引きこもりの女性作家のそんな極限状況を乾いたタッチで見せる密室劇。制作・主演を務めるのは演技派として名高いベテラン女優、ナオミ・ワッツ。ほぼ彼女の一人芝居となる本作、舞台もほとんどこの薄汚れたアパートの一室のみなので、お話としては非常に単調になってしまいがちなのは自明の理。なので作品としてのカギとなるのは、監督の演出力だと思うのです。ところがこれがどうにもショボい。ずっと思わせぶりなだけで大して深みもないエピソードが延々続き、正直僕はあくびが止まりませんでした。こういうのってあくまでリアルに徹して脚本の力で見せきるか、それかもっとシュルレアリスム風の不条理劇に振り切るかだと思うんですけど、それもどっちつかずで何とも中途半端としか言いようがない。最後のオチなんていかにも取ってつけたようでもう呆れてしまいましたわ。相変わらずのカメレオン女優ぶりを発揮した、ナオミ・ワッツの熱演に+1点!
[DVD(字幕)] 4点(2021-10-10 00:51:58)
408.  幸せへのまわり道(2019) 《ネタバレ》 
彼の名は、フレッド・ロジャース。アメリカで30年以上にわたり人気を博してきた子供向け長寿番組で、ずっとMCを務めてきた名司会者だ。優しい語り口と明るい歌声、そして何よりあくまで子供の視点に立ったスタンスで幅広い世代から親しまれてきた。そんな彼はある日、とある社会派ジャーナリストから取材を受けることに。ロイド・ボーゲルと名乗る彼は、早速フレッドの仕事場であるテレビのスタジオへとやってくる。だが、彼は明らかに顔面を殴られた痣があり、何とも不機嫌な様子で早く取材を終わらしたがっていた。いたく興味を惹かれたフレッドは、逆に彼に質問を浴びせかける。聞き出してみると、なんと彼は姉の結婚式で久しぶりに会った実の父親と激しい口論となり、殴り合いにまで発展してしまったのだという。取材はそのまま終わったものの、彼のことが気になったフレッドは後日、取材の延長ということで彼と再び会うことに。子供のように純粋な好奇心から話を聞くフレッドに、ロイドは淡々と語り始める。父が過去、幼かった自分と病弱な母を残し、他の女の元へと逃げ出してしまったことを――。実話を元に、アメリカでもっとも有名な人気司会者と家族との確執を抱えた中年ジャーナリストとの交流を暖かな目線で見つめたヒューマン・ドラマ。アメリカでは知らない人はいないとも言われるそんな人気司会者を演じるのはベテラン俳優トム・ハンクスで、なんと20年ぶりにアカデミー賞にノミネートされたということで今回鑑賞してみました。というか、そんなに久しぶりのノミネートなんですね。なんか毎年受賞してるくらいのイメージだったんですけど、それは僕の思い込みでした。確かに長年のキャリアに裏打ちされたであろう彼の演技は抜群の安定感で、このフレッド・ロジャースという人物を知らない僕でも「ああ、確かにこの人は長年多くの人に親しまれたんだろうなぁ、こんなに大らかで見ているだけで癒される人は滅多にいないだろう」と思わせるほどの説得力がありますね。そんな彼が、ある日偶然出会った短気で偏屈な中年男の心を徐々に開いてゆくというのはベタですけど、なかなか面白かったです。特に、この大らかな人物の周りの人が「あれで昔は短気だったのよ」と語らせるとこもさりげなくて巧い。全体的に子供向け番組のような演出を差し挟んでくるのもそこまで違和感なく、逆にこの地味なお話を魅力溢れる物語へと昇華させることに成功している。うん、観終わるころにはほっこりしている自分がいましたわ。まぁお話としてはあまりにもストレートで若干パンチに欠ける気がしなくもないですが、なかなか良かったんじゃないでしょうか。監督は、前作でもそんなうまくいかない人生に疲れた人たちを終始暖かな目線で見つめたマニエル・ヘラー。この人の作風は僕の好みと合うようなので、これからも追いかけていこうと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-02 02:08:39)
409.  レ・ミゼラブル(2019) 《ネタバレ》 
モンフェルメイユ――。それはフランスの文豪ビクトル・ユゴーが著した、仏文学史に燦然と輝く名作「レ・ミゼラブル」の舞台となった街。この苦難と悲哀に満ちた小説の世界は今も変わらず、21世紀を迎えた現代も犯罪が多発する危険な街となっている。本作は、そんな貧困と暴力に満ちた街を舞台に、汚職にまみれた悪徳刑事と彼に指導を受けることになった新人刑事とのとある一日を描いたクライム・ドラマだ。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのだが、これがなかなか見応えのある濃厚な犯罪劇の逸品に仕上がっていた。一言で表すといわばフランス版『トレーニング・デイ』といった趣きの作品なのだが、こちらはどこまでもリアルで生々しく貧困の現実を冷徹に見つめている。物語は、正義感に満ちた若い新人刑事がこの地区へと配属され、初出勤した日の朝から始まる。二人組のベテラン刑事の案内で新しく担当となる街を見て回る新人刑事。だが、そこで目にしたのは予想を遥かに上回る悲惨な現実だった。落書きやゴミにまみれた狭い公共団地で暮らす人々、絶えず勢力争いを繰り広げている犯罪組織や宗教団体、麻薬や暴力と隣り合わせでの生活を余儀なくされている子供たち……。対する警察もまた、自らの保身や利益のためにしか行動せず、社会正義の実現などこれっぽっちも考えていない。その不条理なしわ寄せは、いつの世も最後は社会的弱者へと向けられてゆく。まさに「あぁ無情…」としか言えなくなるような絶望的な現実が繰り広げられる。見ていて痛感させられるのは、この世界はユゴーが生きた200年前と大して変わらないのではないかということだ。そんな中でも最後まで正義を貫こうとする主人公に救われる。また、この監督のストーリーテリングの巧みさや深みのある人物造形などによって最後までぐいぐい引き込む手腕も注目に値する。最後に爆発する、子供たちの暴力の暴走は、そんな貧困の連鎖への圧倒的な怒りの発露なのだろう。この社会は何も変わらないのかもしれないが、それでも行動せざるを得ない子供たちには心動かされるものがあった。監督は、幼いころからこの地で生活していたとのことで、これは彼の実体験に基づく強烈なメッセージなのだろう。新たな才能の出現を素直に喜びたいと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2021-09-16 05:49:50)
410.  燃ゆる女の肖像 《ネタバレ》 
18世紀、フランス。とある地方都市に住む裕福な貴族の元に招かれた、女性画家マリアンヌ。目的は、当家の結婚を控えた娘の肖像画を描くためだった。だが、長らく修道院生活を続けていたという娘のエロイーズは、親の決めた結婚に反発し、肖像画など描いてほしくないらしい。仕方なくマリアンヌは画家という身分を隠し、世話係と嘘をついて彼女を観察し、夜な夜な密かに絵筆をとることに。絵を描くために娘を見つめる画家と、真実を知らず見つめられることを意識してしまう娘――。嘘から始まった二人の危うい関係はやがて一線を越えてしまうのだった……。まだ同性愛者に根強い偏見が残る時代を背景に、女性同士という枠を越えて惹かれ合う貴族の娘と女性画家との秘めた愛を美しい映像で綴ったラブ・ストーリー。カンヌ映画祭で脚本賞を受賞したということで今回鑑賞してみました。確かに映像はとても詩的で繊細で大変良かったとは思うんですよ。紺碧の海に囲まれた雄大な大自然、中世の絵画を髣髴とさせる陰影に富んだ屋内の風景、その中で抗えない運命に翻弄される美しい二人の女性…。全体を通じて印象に残るシーンも多く、美術館で絵画鑑賞しているような気持ちで観ることが出来ました。ただ肝心のお話の方は正直微妙。禁断の愛に燃えるこの二人の女性が、確かに見た目は大変美しいんですけど、内面的な心理描写がかなり浅いので何とも感情移入しづらい。二人が一線を越えて思わずキスしてしまうという物語の肝となるシーンなんてあまりに唐突で、観客としてはちょっと置いてけぼり感が半端ないです。二人の次第に縮まってゆくこの距離感をもっと丁寧に描いてもらわないと。あと、お話の語り方というか編集の仕方が荒すぎませんか。場面が変わったら急に村人の祭りになっていて、自分は「いったいこれは何なんだ」と戸惑うしかありませんでした。物語の重要な鍵となる、オルフェの本の朗読もあまりに唐突に差し挟んでくるものだから非常に不自然で、伏線としても巧く効いていない。これで脚本賞など、カンヌも落ちたものだと思っちゃいましたわ。ただ前述したとおり、映像自体は非常に美しく気品に満ちたもので、長年抑圧されてきた性的マイノリティの悲痛な思いを汲み取ることには成功している。特に最後の振り返らずただ涙をこらえているエロイーズの表情には心動かされるものがありました。その点に於いては評価しましょう。6点。
[DVD(字幕)] 6点(2021-09-16 05:39:55)
411.  グッド・ボーイズ(2019) 《ネタバレ》 
現在、思春期真っ只中の12歳の男の子、マックス。近所の仲の良い友達二人と「ビーンバッグ」というグループを組み、ひたすらカードゲームとエロ話に明け暮れる冴えない毎日。ネットでエロ画像を検索してその生々しい内容にショックを受けたり、近所の高校生カップルを覗き見してるのを見つかって追いかけまわされたり…。そんな悶々とした日々を送っていたマックスはある日、ビッグ・ニュースを耳にする。なんと前から気になっていた女の子が明日の夜、クラスメイトたちとのパーティーでキス・ゲームに参加するというのだ。「大変だ!!憧れのあの子が、誰か他のヤツとキスしてしまうかもしれない!!」――。それを聞いて頭と何処かが爆発しそうになったマックスは、とにかく彼女の唇を守るためにビーンバッグのメンバーとともにパーティーへの参加を決意するのだった。でも、キスなんてどうやってしたらいいか分からない。勉強のために、お父さんの仕事用のドローンを使い、近所のヤリ〇ンで有名な女子高生の家を観察することを思いついたマックスは、さっそくビーンバッグのメンバーを集め、作戦を実行に移すのだった。だが、呆気なく反撃に遭った彼らは逆に彼女たちに弱みを握られてしまい……。思春期を迎えたばかりの男の子が、憧れの女の子とキスするために繰り広げる大冒険を下品なギャグ満載で描いた青春コメディ。天才子役として人気を集めるジェイコブ・トレンブレイ君が、そんな悶々少年を演じているということで今回鑑賞してみました。まあ全く期待していなかったのですが、意外や意外、なかなか面白いじゃないですか、これ!!子供にこんなことさせていいのかってくらい、お下品なネタがてんこ盛り。でも、それがいちいち笑えるのがナイスですね~~。少年たちが大人のおもちゃを手にあーだこーだ言うとこなんて思わず笑っちゃいましたわ。好きな子に渡すネックレスを忘れちゃったので、代わりにアナルビーズをプレゼントするシーンなんてサイコーでした。一番笑ったのが、キス・ゲームで隣のカップルがディープキスし終わった後によだれが糸引いてるのを見て、ドン引きしている黒人の男の子!こいつ、かなりいい味出してましたわ。と、お下品100%の内容かと思ったら、最後はまさかの切ないエピソードを放り込んできていい意味で裏切られました。少年から少しずつ大人の世界へと足を踏み入れた彼らは、それぞれ自分の居場所を見つけてゆく…。永遠だと思っていた自分たちの友情が、ちょっとずつすれ違っていくというラストはなんとも切ない。キレのいいギャグで大笑いさせて、最後はほろりとさせてくれる、いわばエロ版『スタンド・バイ・ミー』とも言うべき作品。なかなか楽しませていただきました。お薦めです。
[DVD(字幕)] 8点(2021-09-06 20:27:17)(良:1票)
412.  ビバリウム 《ネタバレ》 
そこは一度迷い込むと二度と出てこれない新興住宅地――。トマとジェムは、結婚を間近に控えた若いカップル。まだ収入も安定していないし子供も居ないが、それでもこれから幸せいっぱいの生活が待っているはずだった。将来を見越し、新居を購入しようと彼らは街の不動産屋へと足を運ぶことに。対応してくれた何処か風変わりな営業マンの案内で彼らは郊外の新興住宅地「ヨンダー」へとやってくる。そこは、同じような緑の家が何処までも立ち並ぶ生活感の一切感じられない謎めいた町だった。無事に内見を終え、すぐに帰ろうとするトマとジェムだったが、いつの間にか営業マンの姿が消えていた。不審に思いながらも自らの車で帰途に就いた二人。だが、いつまで経っても元の街並みへと抜け出すことが出来ず、気付いたら紹介された9番地の家へと舞い戻っていた。戸惑いながらもその9番地の家で夜を明かした二人に、更なる異常事態が襲う。なんと家の前に置かれた段ボールに、誰の子か分からない男の赤ん坊がいれられていたのだ。しかもそこには「無事にこの子を育て上げたら開放する」との謎のメッセージが。果たしてここは何処なのか?突然の不条理な事態に二人の精神は次第に崩壊してゆく……。カッコウが他の鳥の巣に自らの卵を産み育てさせるといういわゆる托卵という習性をモチーフに、突然異常な状況へと陥った若いカップルを描いたシュルレアリスム劇。そんな期待せずに今回鑑賞してみたのですが、いやいや、これがなかなかエッジの効いた演出の力が光る不条理劇の逸品に仕上がっておりました。とにかく映像のセンスが抜群に良い!どこまでも続く生活感を微塵も感じさせない緑色の住宅、マグリッドの絵を髣髴とさせる作り物感が半端ない雲、まったく美味しそうに見えない食事…。どれもが不気味で生理的嫌悪感がいい意味で凄いです。特に、二人が育てることになる男の子。言っちゃ悪いですけど、よくここまで可愛くない子供を見つけてきたもんですね。この子がずっと自分たちの物まねをしたり、思い通りにいかないことがあると金切り声をあげたり、意味の分からないテレビの映像に延々と見入っていたりともはや殺意を覚えるくらい可愛くない(笑)。極めつけは、途中でカエルやある種の鳥のように喉を膨らませて雄叫びをあげるシーン。こんなに気持ち悪い映像、久しぶりに見ましたわ。肝心の内容は典型的ないわゆる不条理劇なんですけど、そこに何処か乾いたユーモアがあるところはカフカよりも安部公房に近いのかな。後半、物語はまさにこの訳の分からなさをどんどんと加速させ、徐々に崩壊してゆきます。文字通りぐちゃぐちゃに空間が捻じれてしまった家の中での主人公と子供の追いかけっこなんてセンス抜群!いやー、面白かったですね、これ。まあ悪趣味全開ですけど(笑)。今から将来が楽しみな新たな才能に出会えたような気がします。
[DVD(字幕)] 8点(2021-09-06 20:14:42)
413.  バクラウ 地図から消された村 《ネタバレ》 
近代化や開発の波に取り残され、加速化する人口減少なども相まって、世界から今にも忘れ去られようとしている村、バクラウ。インターネット上の地図からもその存在を消され、警察や行政からも見捨てられたこの村にある日、正体不明の部外者が訪れる。通りすがりの旅行者を名乗る彼らだったが、その日から原因不明の危機が村を襲うようになるのだった。給水タンクに撃ち込まれる銃弾、村を監視するかのように空を飛ぶドローン、そしていつの間にか惨殺される村人たち……。いったいこの村に何が起こっているのか?だが、村の住民たちも黙ってはいない。何故なら彼らは誇り高き革命戦士の末裔だったからだ。隠し持っていた銃を手に取り、自らの村を守るため立ち上がる住民たち。彼らの命を懸けた戦いの幕がいま、切って落とされる――。南米の荒れ地に囲まれた小さな村を舞台に、武装した村民と謎の襲撃者たちの血で血を洗う抗争を濃密に描くバイオレンス・ドラマ。カンヌで審査員賞なるものを受賞したということで今回鑑賞してみたのですが、正直僕はさっぱり楽しめませんでした。これってストーリーの面白さで見せるというより、多くの謎をまず最初に提示してその真相が何なのかを延々引っ張るというスタイルだと思うんです。謎の因習に満ちた村、怪しげな雰囲気漂う住民たち、そして彼らを執拗に狙う謎の襲撃者集団……。まあ確かに、全編に横溢するこのミステリアスな雰囲気に最後まで引っ張られて見てたんですけど、残念ながら最後に明かされる真相があまりにも弱く、肩透かし感が半端ない。こちらの想像したオチを全く超えてこず、「結局それだけのことやったんかい!!」と僕は思わずずっこけそうになっちゃいましたわ。さすがにここまで引っ張っといて、肝心のオチがこれではねぇ。もっと観客の度肝を抜くような一捻りが欲しかった。作品全体に漂うこのひりひりとした空気に+1点。
[DVD(字幕)] 4点(2021-09-06 20:04:19)
414.  博士と狂人 《ネタバレ》 
制作に約70年もの月日を費やして完成された世界最高峰とも呼ばれる辞書「オックスフォード英語辞典」。その完成の裏には、博士号を持たない異端の言語学者と精神を病んでしまい妄想から人を殺めてしまったアメリカの元軍医という二人の存在があった。実話を基に、世界最大の辞書を編纂したそんな二人の天才の友情と交流を描いた歴史ドラマ。ベテラン俳優ショーン・ペンとメル・ギブソンがそんな博士と狂人を演じたということで今回鑑賞してみました。率直に言って、題材は凄く良かったとは思うんですよ、これ。世界でも有名な辞書完成の裏に隠された秘話、しかもそこには統合失調症を患った精神病患者の尽力があったなんてとても興味が惹かれるテーマじゃないですか。なのに、最後まで付き纏うこの微妙な空気感。きっと話を詰め込み過ぎたんじゃないですかね。いろんなエピソードが展開されるんですけど、どれもこれも踏み込みが非常に甘い。特に、狂人博士の方に殺された男の奥さん。この人が最初は当然、この夫を殺しながら病のせいで罪に問われず精神病院への処置入院で済んだ男へと物凄い憎悪を募らせるんです。でも、お金を貰って何度か優しくされると簡単に許しちゃう。いやいやそんな訳ないでしょ。もし事実がそうだとしても、そこに至る過程にもっと鋭く切り込んでもらわないと。これでは深みに欠けると言わざるを得ません。また、同じようにこの狂人とはぐれ者の言語学者との交流も一面的でなんとも浅い。題材は良かっただけに、もう少し脚本を練って欲しかった。イカれた孤高の天才を熱演したショーン・ペンの迫力に+1点!
[DVD(字幕)] 5点(2021-08-16 23:47:38)
415.  ザ・ビースト(2019) 《ネタバレ》 
彼の名は、フランク。世界を股にかけて希少動物や人気動物を捕えては動物園などに売り飛ばす猛獣ハンターだ。今回ブラジルの熱帯雨林へと赴いた彼は、思いがけない大物を捕えることに成功する。それは全身キレイな白い毛で覆われたホワイトジャガー。アメリカ本国へと持ち帰ってその筋のルートへと売り飛ばせば莫大な金が手に入るのは明らかだった。頑強な檻に閉じ込めたジャガーとともに意気揚々と巨大タンカーへと乗り込んだフランクだったが、そこで予想だにしない事態に見舞われるのだった――。精神に異常をきたした元米軍特殊部隊員で冷酷な殺人鬼であるラフラーをアメリカへと護送するために、連邦捜査官たちが乗り込んできたのだ。嫌な予感を感じながらもタンカーで大海原へと乗り出すフランク。彼のそんな懸念は見事的中し、ラフラーは見張りの隙を突いて易々と船内へと逃げ出すのだった。恐ろしいことにラフラーは、船内の檻に閉じ込められていた獰猛な猛獣たちまで開放してしまう。当然そこには狂暴なホワイトジャガーも含まれていた……。果たして彼らの運命は?巨大タンカーの密閉された船内で、逃げ出した凶悪犯のみならず猛獣たちにまで追い詰められる船員や捜査官、そして荒くれ者の猛獣ハンターたちのサバイバルを描いたパニック・アクション。毎度おなじみニコラス・ケイジ主演で送る、いかにもB級なそんな本作、あまり期待せずに今回鑑賞してみました。まあいつものニコラス・ケイジ印の低予算・低クオリティの内容でしたね、これ。とにかく演出のキレが悪い!逃げ出したレクター博士もどきのサイコな殺人犯とホワイトジャガーをはじめとする猛獣たちにダブルで襲われるというのが本作の売りなんでしょうけど、どちらもまあショボい。出っ歯の殺人犯なんてとても元凄腕の特殊部隊員に見えず小者感が半端ないし、ホワイトジャガーのCGも今どきびっくりするくらいの低クオリティ。こいつらが同時に襲って来たってスリルが倍増するどころか逆に相乗効果でよりショボくなっちゃってます。なので、最後まで全く盛り上がらないままダラダラと終わっちゃいました。ま、いつものニコケイブランドの映画って感じです。
[DVD(字幕)] 4点(2021-08-10 00:58:46)
416.  CURED キュアード 《ネタバレ》 
人間を狂暴化させる新型ウィルスが爆発的に蔓延し、大混乱へと陥ってしまったヨーロッパ。感染した者たちは見境なく人々を襲い、そしてその肉を喰らうという常軌を逸した行動へと走るようになるのだった。自らの親や子供、友人たちを容赦なく襲う感染者たち。世の中がそんな地獄絵図へと化す中、ここ、アイルランドも例外ではなく、社会は壊滅的な打撃を受けてしまう――。だが、人々はその後、治療法を開発し、感染者の七割以上が無事に回復するまでになっていた。残りの回復しない感染者をどうするのかという問題に直面するなか、回復した元感染者たちの社会復帰が開始される。ここでもう一つの問題が浮き彫りとなる。回復した元感染者たちは皆、狂暴化していたときの記憶を何一つ失ってはいなかったのだ。無事に日常生活へと戻ってきた元感染者であるセナンもまた、狂暴化していた時期の自らの記憶により、心に深い傷を負っていて……。パンデミック後の混乱した社会に生きる人々の苦悩を、とある一人の男の姿を通して描いたサバイバル・スリラー。という内容を聞いて、もっとエンタメ寄りの作品だと思って今回鑑賞してみたのですが、意外にもこれって社会派寄りのシリアスなドラマだったのですね。だとしたら、いまいち深みが足らないように僕は感じてしまいました。貧富の格差や移民問題、それによって拡がる社会の分断のメタファーとしてゾンビを扱うというアイデア自体は悪くないんです。異物を排除しようとする社会的多数派と暴力によって自らの主張を認めさせようとする社会的マイノリティ、そしていつまで経っても反社会性を失わない者どもを密かに抹殺しようという権力の暴走……。911から続くそんな深刻な社会状況をゾンビという分かりやすい要素で捉えようというのは非常に興味深い試みだったとは思うんですよ。更生したテロリストたちの社会復帰という問題もメタファーとしてよく効いている。ただ残念ながら彼らの思想的対立がいつまで経っても深まっていかず、ただ淡々と物語が進んでゆくので僕は正直中盤から退屈に感じてしまいました。エンタメ映画として観るには圧倒的に娯楽性に欠けるし、社会派映画として観るにはいかんせん深みに欠けるという、なんとも中途半端な作品でございました。
[DVD(字幕)] 5点(2021-07-29 05:24:05)
417.  散歩する侵略者 《ネタバレ》 
それはある日突然、日常生活へと紛れ込んできた――。これから地球へと侵略を開始しようという宇宙人が現地を調査するために行動を開始したのだ。地球を支配する人類がいったい何を考えどのような生活を送っているのか、その概念を知るために日本へと遣わされた三人の宇宙人は、それぞれ選んだ人間の意識を乗っ取ることに成功する。どこにでも居るような平凡なサラリーマン、高校生の男女、彼らの身体を使い、宇宙人は人類が使う言葉とその概念を奪うために街へと繰り出す。恐ろしいことにその概念を奪われた人々は、それらの言葉や概念を理解できなくなってしまうのだった。「家族」「所有」「仕事」……。様々な言葉とその概念を奪われ、次々とおかしくなる人たち。社会が少しずつ混乱へと陥ってゆく中、宇宙人にガイドとして指名されたイラストレーターの妻や社会派ジャーナリストはそれぞれに行動を開始するが……。静かに行動を起こした宇宙人によって徐々に侵略されゆく人類をユーモラスに描いたSFドラマ。数々の賞に輝く監督の代表作と言うことで今回鑑賞してみたのですが、正直自分には何がいいのかさっぱり分かりませんでした。なんかそもそもの設定に無理があるような気がするんですけど、これ。だって言葉とその概念を知るために調査を開始したのなら、普通に考えて最初は会話も出来ないんじゃないでしょうか。例えば映画の最初の方で、宇宙人の一人である松田龍平が妻に「敬語は止めて」と言われるシーン。普通に「分かった。敬語は止める」って答えてましたけど、え、敬語の概念は知ってたってこと?それなのに家族や自分という言葉の概念は知らない。この違いの基準は何なのでしょう。それにSFなのに画が大変地味なのもいただけない。概念を奪うときの画も、指を頭にかざすだけってショボすぎじゃないですか。せめてここはCGでも使って、指が伸びて脳の中に入り込むような刺激的な映像が欲しかったところ。映画としてようやく盛り上がってきたクライマックスもなんかいまいちセンスを感じませんでした。あのジャーナリストが戦闘機に空爆されるシーンなんて、ほぼコントで正直寒かったですし。挙句最後の、「人類の愛の偉大さに気づいた宇宙人」というオチにいたっては思わず失笑しちゃいましたわ。この監督の映画は初めて観ましたが、という訳で自分には全く合いませんでした。
[DVD(字幕)] 4点(2021-07-27 02:09:03)
418.  ソング・トゥ・ソング 《ネタバレ》 
アメリカの音楽業界に生きる4人の男女のそれぞれの愛の形を美しい映像の中に描き出すヒューマン・ドラマ。監督は、唯一無二の作風でハリウッドでも独自の地位を築き上げた、テレンス・マリック師匠。正直、僕はこの人の芸術と退屈の狭間をゆく「分かる人にだけ分かってもらえればいいんだよ」とでも言わんばかりの唯我独尊的作風が大嫌いで、毎回観るたびに「もうこいつの映画は二度と観まい!」と決意するんですけど、悔しいことに出演俳優だけはむちゃくちゃ豪華なんですよね。本作も、マイケル・ファスベンダーやライアン・ゴズリング、ルーニー・マーラやナタリー・ポートマン、さらにはケイト・ブランシェットやヴァル・キルマー、果ては昔懐かしのイギー・ポップまで出てるんですから、もうそりゃ観ないわけにはいかないですわ、悔しいですけど。それにこんな新旧実力派が揃えば新たな化学反応でも起きて、もしかしたら面白くなってるかも知れないですし。んで、結果は……、うん、いつものテレンス・マリック節でした(笑)。随所に挿入される意味があるのかないのかさっぱり分からない観念的で独り善がりなモノローグ、ただキレイでお洒落ってだけで全く心に残らない映像、ストーリーなんてあってなきが如しひたすら雰囲気ごり押しで最後までダラダラ続く退屈極まりない脚本…、これらの合わせ技が波状攻撃となり、観客の睡眠中枢へと容赦なく襲い掛かってきます。いやー、これを最後まで眠くならずに観れる人って凄いです。「もうこいつの映画は二度と観まい!」と今度こそ誓う僕なのですが、これでまた豪華なキャストが揃ってたらまた観ちゃうんだろうな……。ホントもう勘弁してください(笑)。
[DVD(字幕)] 3点(2021-07-27 00:32:15)(良:1票)
419.  ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を 《ネタバレ》 
定年を迎えた初老の鉄道員がある日、電車の車体に引っ掛かっていたあるものを拾う。それはなんと、青いブラジャー。持ち主である素敵な女性はきっと今頃、困っているに違いない。なんとか返してやろうと思い立った彼は、小さな町の中で持ち主探しを開始する。欲求不満気味のマダムや茶目っ気たっぷりの素敵なお嬢さん、色んな人たちに聞いて回ってみるものの、いつまで経ってもその女性は見つからない。果たして彼はその青いブラジャーをちゃんと持ち主に返してあげることは出来るのか?小さな町の中で繰り広げられる、平凡なおじさんのそんなささやか冒険を全編セリフなしで描いたほのぼの系コメディ。まあやりたいことは分かるんですけど、僕はイマイチ嵌まらなかったですね、これ。90分あるこの映画で全編セリフなしにしちゃったのはやはり失敗だったんじゃないでしょうか。アニメとかなら観ていられるんでしょうけど、実写でましておっさんが主人公でこの手法はちょっとキツい。最初はこの『アメリ』っぽい独特の世界観に浸っていたんですけど、僕は途中から飽きてきて何度か寝落ちしそうになりましたわ。それに、こういうちょっぴりお下品な内容のコメディって、主人公が如何に気持ち悪くなるぎりぎり手前のラインで踏みとどまれるかがポイントとなると思うんですけど、本作の主人公はそのラインをぎりぎり越えちゃってるような。だって拾ったブラジャー片手に女性宅をひたすら廻るおじさんってやぱ気持ち悪いって(笑)。全体に漂うほのぼのした雰囲気とキレイな映像に+1点!
[DVD(字幕)] 5点(2021-07-13 04:32:26)
420.  カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 《ネタバレ》 
都会の喧騒を逃れ、アメリカ郊外の田舎町へと越してきたガードナー家。納屋で飼っているアルパカが生きがいの父ネイサンに、神経質な母親やオカルトに嵌まっている長女、そして二人の息子たち。彼らは皆、それなりに幸せな日々を過ごしていた。だが、そんな家族の平凡な日常はある夜を境に一変する。紫の光を放つ謎の隕石が、自宅の裏庭へと墜ちてきたのだ。強烈な悪臭を放ち、禍々しい光を発するその隕石は恐らく宇宙の彼方からやって来たに違いなかった。当初はテレビの取材を受けたり、町の噂の的になり浮かれていたガードナー家だったが、やがて不可解な出来事が周りで多発するようになる。突然変異した紫色のカマキリ、無意識のうちに自らの指を切り落としてしまう母親、突如狂暴になるアルパカたち……。果たしてその隕石の正体とは?クトゥルフ神話で有名なアメリカの恐怖小説の巨人、H・P・ラブクラフトの小説をニコラス・ケイジ主演で映画化したというSFモダン・ホラー。この映画、率直に言って全く中身がありません。ストーリーなんてあってなきが如し、ただひたすらグロテスクなホラー描写満載で、ある一家族が徐々におかしくなっていくのが延々と続くだけ。その潔いまでの中身のなさは、観ていて逆に清々しく感じるくらいでした(笑)。その分、グロ描写にはけっこう気合が入ってます。ニンジンをとんとんと切っていた包丁でそのまま指を切り落としちゃうママに始まり、徐々に腕の皮膚がただれてきちゃうお父さん、全身の皮がめくれちゃったアルパカなどどれも生理に直接訴えてくるような嫌なものばかり。特に後半、幼い息子と同化しちゃうママなんて夢に出てきそうなほどエグかったです。もはやお家芸とも言える、ニコラス・ケイジのとち狂った演技もナイスな仕事ぶり。モンスターと化した自分の妻とキスしたときに、ニコケイの唇に糸引いてたシーンはさすがの僕でも「ひえぇぇ」と声が出ちゃいましたわ。うん、そういうものだと割り切っちゃえば、このやり過ぎなぐらいのグロ描写はなかなか良いんじゃないでしょうか。それに古き良きSFを髣髴とさせる紫色のエフェクトも個人的にツボでした。という訳で、僕はぼちぼち楽しめましたです、はい。まぁ完全なるB級ですけどね。あと全体的に長いかな。前半のかったるい部分を削って、もう少し短くしても良かったかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2021-07-07 04:09:36)(良:1票)
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