401. 白い恐怖(1945)
《ネタバレ》 前半の筆跡を見て偽物と気づくあたり、やはりサスペンスとしては出色の出来。 ヒッチコック監督のカメラアングルも、今観てもやはり斬新。 後半のカミソリ越しに博士を見せるシーンなんて唸ってしまった。 そして白黒映画ならではの陰影の使い方が絶妙。 イングリッド・バーグマンの輝くばかりの美しさを引き出し、善人か悪人か判断のできないグレゴリー・ペックの表情に戦慄する。 タイトルだけ知ってて観たのは初めてだったけど、21世紀の今でも色褪せない映画。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-14 20:54:46)(良:1票) |
402. ヘアスプレー(2007)
《ネタバレ》 私がこの映画を観て、このレビューを書いているのは、トランプ氏とバイデン氏による大統領選が結末を迎えたその直後。 黒人と白人の融合は「時代の流れだ」と映画の中では幾度も叫ばれていたが、数十年経った今も、時代の流れに乗れない人がまだまだたくさんいるようだ。 ただしこの映画では、重いテーマを歌に乗せて軽く吹き飛ばして見せてくれる。 互いを認め合うには、話し合うよりも、一緒に歌って踊った方が話が早いのかもしれない。 そんなことを考えながらエンドロールを眺めていた。 最後までノリノリなんだけどね。 そして、この映画のMVPはクリストファー・ウォーケンに差し上げて欲しい。 得意そうじゃないダンスを披露したり、女子高生に扮装したり、老いてますます演技の幅を広げた彼。 いや、素晴らしい役者魂。そこにも加点したい。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-08 18:03:06) |
403. The Witch/魔女
やられた! ボーンシリーズ的な展開に、焼き直し?って思ってたら、そういうことか。 いや、見事。 やはり韓国映画は侮れない。 バイオレンスの容赦の無い徹底ぶりも、観ていて清々しささえ感じる。 そして主役の女の子も凄まじいまでの演技巧者。 それを観るだけでも一見の価値がある強力な映画。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-03 22:26:21)(良:1票) |
404. 風の中の牝雞
《ネタバレ》 畳に座って縫い物をしてみたり、小さなアイロンのコードが上からぶら下がっていたり、買い物カゴからリンゴを愛おしそうに出してみたり、生活の細部を切り取る演出は相変わらず素晴らしい。 こういう生活の中での何気ない所作が、日本人の立ち居振る舞いの美しさとつましい生活を再認識させてくれる。 そして小津監督には珍しい、ドラマのある筋立て。 金に困った女はどうやって生きていけばいいのかと、正面切って問いかけてくるのは、映画製作当時はかなりのインパクトがあったんじゃないかな。 田中絹代の演技はこの映画でも見事で、階段を転げ落ちた後に、苦痛と苦悩で動けなくなるカットには息を飲んだ。 それに比べれば、男なんて適当なこと言いやがって全く気楽な生き物だなと、同性ながら恥じ入るラスト。 [インターネット(邦画)] 8点(2020-11-03 22:17:32) |
405. ロンドンゾンビ紀行
《ネタバレ》 つまんなくってもいいやと思って観たら、これが意外に癖になる緩さ。 歩行器を使うじいちゃんとゾンビの競走につい手に汗握ってしまい、ロンドンバスの登場に思わず快哉を叫んでしまう。 こんなのご都合主義で作らないでどうやって成立させられるって言うんだ!という潔さに溢れた快作。 ただ、日本版タイトルのセンスはちと難あり。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-11-03 01:28:46) |
406. ゴーストシップ
《ネタバレ》 冒頭のワイヤーによる殺戮は、何度観てもホラー史上に残るシーンだと思う。 そして私はこの映画が嫌いではない。 むしろ好きだ。 華やかな宴を見せられた後だからこそ、寒々とした幽霊船のおぞましさが際立つ。 廃墟と、そこに現れる可憐な少女とのコントラストも美しい。 しかし、豪華客船一隻の人数の魂では満タンにならないなんて、ちょっとハードルが高すぎやしませんか。 そして魂の回収屋は、あれだけの数の回収に失敗しても次のチャンスが与えられるなんて、ちょっと緩すぎやしませんか。 なんてことぐらいが気になるが、しばらくするとまた観たくなる癖になる映画。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-02 00:15:01) |
407. ミミック
《ネタバレ》 ギレルモ監督は、どの映画でもその作り上げる世界観で観るものを作品の中に引き込んでくれる。 我々の暮らすこの世界も、一皮むけば異形の者が跋扈する居心地の悪い世界なのかもしれない。 現実の世界を描きながらも、どこかおとぎ話の世界を観ている感覚。 それがあるからこそ、ギレルモ監督の映画を安心して観ることができるのかもしれない。 今回も、異世界の象徴のような地下鉄が舞台。 異物が潜む暗闇と、発光灯や電源を繋げて光るライトとのコントラストが美しい。 残念なのは一点、後半は終始油まみれのミラ・ソルヴィーノしか観られないこと。 設定上仕方ないんだけど、そりゃないぜ、監督。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-11-01 09:49:51) |
408. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 空港で偶然アニーを見かけるサム。 道路に佇むアニーに声をかけるサム。 そして、エンパイアステートビルの屋上で交わす言葉。 そりゃ、恋に落ちるよ。メグ・ライアンだし。 アメリカの映画って、クレジットも無さそうな脇役がいい味出すんだけど、この映画も例に漏れず。 「ケーリー・グラントかい?」って営業の終わった屋上に上げてくれる警備のおじさん。いいなあ。 それを引き出すメグの仕草も最高にキュートだし、本当に何度も観たいシーン。 こう言う印象的なシーンがある映画は、何度も観たくなる。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-29 22:06:21) |
409. 彼岸花
《ネタバレ》 なんだろうね、この満足感。 小津監督の映画、まだ四本しか観てないけど、東京物語より好きかなあ。 娘の結婚を認めてやるべきだと外堀を埋められていく平山。 他人の娘なら許せても、自分の娘にはなかなかうんと言ってやれない哀しき父親。 うまい演出だなあ。 家族の時間が濃密で、それでいてくどくない。 これはひとえに、田中絹代の存在感ではないかと。 ピンポイントの久我美子さんの圧倒的な美しさにも惹かれるけど、この映画の田中絹代は本当に素晴らしい。 夫を立てながらも、言うべきことはきっちり言う。夫をたしなめる迫力は凄まじいばかりだった。 脇を固める京都の母娘も、いつもの同窓会のメンバーも、ゆったりしてて落ち着いて映画を楽しめた。 テレビがない時代の昭和を描いた映画、いいもんだなあ。 [インターネット(邦画)] 9点(2020-10-25 23:10:18) |
410. ゼイリブ
《ネタバレ》 大学生の頃に友人たちとレンタルビデオで借りて大いに盛り上がった名作。 今観ても、やはりその稀有な輝きを失っていないのは嬉しいばかり。 サングラスをかけると異星人を見分けられるって、なんてB級なんだ! そんな設定を映画にしてしまうなんて、やっぱりカーペンター監督は普通じゃない。 カントリー調のBGMは西部劇のテイストで、カーペンター監督の「最後の聖戦」を思い出した。 しのごの言わずにやっつけるぜ!なノリがたまらない。 風刺もピリッとな後世に残したい名作。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-25 22:35:49) |
411. ボーン・コレクター
《ネタバレ》 プロファイリングではなく、あくまで犯行現場での鑑識で勝負ってところは、やはり「羊たちの沈黙」との差別化を狙ったのかな。 それはそれで面白かったし、まだ初々しいアンジェリーナ・ジョリーも美しい。 ただ、ラストに明かされる犯人と、「ボーン・コレクター」という小説の模倣のつながりが弱くて、今ひとつ作品に深みが無くなってしまったのは残念。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-10-20 21:49:57) |
412. ロシアン・スナイパー
《ネタバレ》 ソ連の女性狙撃手ってことで、鉄の女をイメージしていたのだが、そうではなかった。 ギリギリの戦場で一緒にいると自然とそうなってしまうのか、むしろ恋愛体質。 そんなゆるい感じの軍規で大丈夫なのかと心配になるほどだが、そこもちゃんと押さえてあるから、レオニードを失った直後に、プロパガンダ用の写真撮影で笑顔を無理やり作らされるリュドミラが可哀想で仕方なかった。 そして、あの頃の体制に批判的な映画を作れる時代になったんだということもちょっと驚き。 [インターネット(字幕)] 7点(2020-10-15 21:10:53) |
413. 馬鹿が戦車(タンク)でやって来る
《ネタバレ》 世間知らずのお嬢様は、悪気もなくひどいことをし、世間知らずの荒くれ者は、それを真に受けてひどい目に遭う。 観ていて切なかったのは、サブが必死に生きていること。 耳の悪い母を支え、知的障害のある弟の面倒を見る。 そんなサブが、お嬢さんから快気祝いに来てねと言われて、少しぐらい舞い上がったっていいじゃないか。 でも、そんな無神経な善意を社会は許してはくれない。 それでも、タンクで暴れ回りながら最後まで砲撃しなかったのは、弾が無かったからではなく、サブの優しさだと信じたい。 そして岩下志麻。 この映画の志麻様は、あまり良くない役回りだけど、彼女が兵六の気持ちを代弁してくれたことで、彼の死もサブの生き方も見事なまでの抒情詩に昇華している。 こんなちっぽけな畑や村に縛られないで、あの鳥のように大きな空に飛び立ちたい。 サブにも兵六にも、そんな思いがあったんじゃないだろうか。 そして映画を観ながら、国木田独歩の「春の鳥」を思い出した。 原作者か山田監督は、きっとこの小説を読んで心を動かされたに違いない。 悲しくて美しい、いい映画だった。 [インターネット(邦画)] 9点(2020-10-12 19:27:37) |
414. オール・ユー・ニード・イズ・キル
《ネタバレ》 キャスティングの勝利。 トム・クルーズはさておき、エミリー・ブラントがハマり役。 でっかいナタ的な刀を振るう姿にしびれた。 ヴェルダンの女神って、言葉も音もカッコいいんだよね。 引っ張って引っ張って、最後の最後で交わすキスも美しい。 オメガとかアルファとかちょっと複雑で、最後もなんであの場面に戻るのかも理解ができてないが、そんなの関係なく楽しめる映画。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-11 21:44:56) |
415. いいかげん馬鹿
《ネタバレ》 いやー笑った。 リアルタイムで映画館で観た人たちも、きっと声出してみんなで笑ったんだろうなあ。 出稼ぎや集団就職で上京してきた若者は、岩下志麻が口ずさむ犀星の歌で、急に切なくなったりしたんだろうか。 観終わって、そんなことが頭に浮かんだ。 映画って、庶民の大事な娯楽だもんね。大いに笑って、ちょっと涙して。 実る恋じゃないけど、弓子からもらった絹のハンカチを、ずーっと首に巻いてるやっさんがいじらしい。 岩下志麻はマドンナとしては最高にキュートだし、宿の主人や巡査など、脇を固めるドタバタな人たちも、人間味があって素晴らしい。 シリーズ化して三部作あるってことだから、他のも必見かな。 この時代の映画って、こんなに面白いんだって新たな発見。 いや、佳作。 [インターネット(邦画)] 8点(2020-10-06 00:20:18) |
416. おくりびと
《ネタバレ》 どんな仕事でも、その道を極めた人の所作というものは美しい。 まして、人生の最期に携わる気の抜けない仕事。 納棺師という仕事があることをこの映画が公開された時に初めて知ったが、今回が初見。 大吾の動き一つひとつが死者と遺族への敬意に溢れていて、美しく気高い。 ただ、身近な人物の納棺を見ないと、この仕事への理解はなかなか難しいのかもしれない。 妻の嫌悪感は理解できるものの、少し言葉が過ぎた。 死人で食ってるくせにと遅刻を怒った男が、死化粧をした妻を見て、今までで一番綺麗だったと頭を下げるエピソードで充分伝わったのになあとその点が残念。 脇を固める山崎努と余貴美子のキャスティングが素晴らしく、物語に重厚さとユーモアを添えるのは流石。 亡くなった父親の所へ行ってやってくれと頭を下げる一連のシーンは、この映画最大の山場で、心を落ち着けた大吾が父親をおくるシーンは、愛と敬意と悔恨と信頼といろんなものが詰め込まれながらも、静謐。本当に美しいシーンだった。 人の人生に対する慈愛と敬意に満ちた佳作。 [インターネット(邦画)] 9点(2020-10-04 09:07:51) |
417. お早よう
《ネタバレ》 それにしても、よく「おはよう」なんてタイトルつけたもんだ。 でも、これが効いている。 子供たちのだんまり作戦の後の、プラットホームでの空を見上げての天気の話題。 互いに思いを寄せている者同士の、距離を測るようなもどかしいやり取りが、とても微笑ましい。 洗濯機やテレビがまだ普及していない時代の、近所付き合いや噂話を見ていると、現代の我々はなんだか殺伐としているなあと考えさせられる。 何気ない日常を切り取って見せてくれるのが、小津監督の流儀なんだろうな。 そして、この時代の女優の存在感。 久我美子が登場するだけで、画面が華やかになる。 女性らしい言葉遣いも、品があって美しくて、そして嫌味がない。 のんびりした時間を楽しめて、そしてクスッと笑える、懐かしくて温かい時間を過ごせる映画。 [インターネット(邦画)] 8点(2020-10-03 01:16:27) |
418. キャビン
《ネタバレ》 発想が掟破りで、これまでのホラー映画とは一線を画している。 モンスターのフルラインナップは強烈で、エレベーターホールでは数が多すぎて暴れっぷりを把握しきれないのがもどかしい。 モンスターボックスの中にジェイソンとかフレディがいたら、さらに面白さが増したんだろうけど、権利の関係とかでダメだったのかな。 その点は残念。 ホラー映画の型を踏襲しながらその裏側を描いて、観るものの予測を超えていく様が心地よく、スピード感も抜群。 いや、佳作。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-09-30 21:38:39) |
419. アジャストメント
サスペンスアクション大作!っていう紹介のみの、ほとんど予備知識なしで観たのが良かった。 少なくともアクション大作ではない。 ほぼロマンス。 いや、でもこれが良かった。 先が気になって気になってワクワクしながらヤキモキしながら観ることができて満足。 そして何よりエミリー・ブラントが魅力的。等身大で飾らない女性役が完璧にハマっていた。 顎割れてるし、絶世の美女って訳じゃないけど、素敵な女性。デートしたら楽しそうだなあ。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-09-29 00:02:58)(良:1票) |
420. 秋刀魚の味(1962)
娘を嫁に出した後の笠智衆さんの演技、良かったなあ。 この人うまいんだか下手なんだかよくわからないんだけど、いいんだよね。 嘘がなくて、誠実で、温かい。 自分も月を見ながら涙する時が来るのかもなあ。 そんな人生の現実を見せてくれる映画。 岩下志麻様が目当てで観たんだけど、小津監督と笠智衆さんの凄みに改めて気づかされる映画だった。 [インターネット(邦画)] 8点(2020-09-27 20:12:48) |