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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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441.  刑事コロンボ/殺人処方箋<TVM> 《ネタバレ》 
「刑事コロンボ」の第一話で、ほかの作品と違ってサブタイトルと同名の舞台劇をドラマ化したもの。いちばん最初とあってまだコロンボのキャラクターはそこまで確立されておらず、風貌も演じるピーター・フォークが若いせいもあってか、少しイケメンなおじさんという感じで、髪形もきっちりとしていて、なによりいつも着ているコートのほかに普通に背広姿でいるシーンがけっこう多かったのには驚いた。(初登場シーンも背広姿だし。)でも、初作である本作からコロンボのしつこさはよく出ていて、細かいところに気がついて犯人を追及し、翻弄していくキャラクターは本作で既に確立されており、対する今回の犯人である精神分析医や事実上の共犯者であるその愛人のキャラクターもしっかりと描かれている。とくに犯人の愛人で、患者でもある女優は冒頭からいかにも気弱で不安そうに描かれていて、見ている自分にも気弱な部分があるからか、コロンボのような刑事にこれだけ追及されたら自分だったら自殺してしまうだろうと思いながら見ていたものだから、ラストのコロンボの仕掛けには見事にこちらもハマってしまった。シリーズこの後の作品と違ってやや真面目になりすぎていて、このままシリーズ化していたらそこまで長くもたなかったかもしれない(この次の「死者の身代金」ではこのあたりがだいぶ改善されている。)が、こんなコロンボもいいなあと思える作品だった。オープニング映像がカッコいいのも印象に残る。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2014-04-15 18:03:06)
442.  刑事コロンボ/死者の身代金<TVM> 《ネタバレ》 
本格的なシリーズ化を前に単発ドラマとして作られた第2話である今回はシリーズ初の女性犯人となるが、上のあらすじにもあるように自分の成功のためだけに結婚した夫を殺害し、その後誘拐を偽装して身代金まで用意するなどかなり周到でいやらしい犯人像が描かれている。でも、こういういやらしい犯人だとコロンボとの対決は盛り上がるので面白い。わずかな証拠から疑いをかけ、犯人を追いつめるコロンボだが、その追及を余裕でかわしていく犯人との対決は見ごたえじゅうぶんで、解決シーンにもさほど強引さはなく、犯人がその性格があだとなって逮捕されるというオチも皮肉めいていて印象的。それに既にこのシリーズらしいユーモアがよく出ていて、中でもコロンボの高所恐怖症。犯人と一緒にヘリに乗っていて操縦桿を握らされてあたふたするコロンボには思わず爆笑させられたし、ラストの空港の喫茶店で札束を前にして支払いのために財布を探すシーンも笑えた。しかし、今回はやや間延びした部分があり、この後の作品に比べて本格的にコロンボと犯人が絡みだすのが遅く、そこが残念といえば残念。とはいえ、このシリーズの魅力はこれ一本でじゅうぶん伝わってくる、本格的なシリーズ化を前提とした単発作品としてはかなり上出来な作品だと思う。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2014-04-15 10:27:17)
443.  刑事コロンボ/ホリスター将軍のコレクション<TVM> 《ネタバレ》 
今回の犯人は朝鮮戦争で活躍した軍人 ホリスター将軍。殺しを第三者の女性に目撃されてしまうという展開がこのシリーズでは珍しく、当然この女性は今回のキーになるわけだが、今回の犯人は自分の年齢も考えずこの女性を食事に誘ったり、ましてや家にまでのこのこやってきて今夜のニュースを見てくれと言ったりと行動が理解不能な部分が多く、目撃者の女性もそんな年齢の離れた将軍に惹かれていく理由がよく分からないし、将軍の凶器である拳銃の隠し場所が肝なのかと思って見ていると、自分のコレクションの展示会に堂々と展示してあるというギャグのようなお粗末さに呆れる。はっきり言って今回は脚本がおかしいとしか言いようのない出来で面白くないし、犯人にも魅力が感じられず、コロンボと犯人の対決らしい対決もなくラストが非常にあっさりとしているのもつまらない。ただこの作品はやはり犯行を目撃した第三者の人物が話に絡むという点は印象に残る。犯人の目撃者に対する接し方をもっとなんとかしていればひょっとしたら面白くなったかもしれない。
[CS・衛星(吹替)] 5点(2014-04-11 01:57:32)
444.  衝動殺人 息子よ 《ネタバレ》 
木下恵介監督が「香華」以来15年ぶりに松竹に凱旋して手がけた社会派映画。一人息子を通り魔に殺されたことをきっかけに犯罪被害者遺族に対する補償制度の実現に向けて動き出す父親を実話をもとに描いたストーリーで、見る前はちょっと硬すぎないかと思っていたが、いざ見てみるとすごく見ごたえのある骨太な力作映画になっていて最後まで見入ってしまった。今でこそ被害者遺族に対する補償制度は存在するのだが、この映画が製作された当時は無かったわけだから、木下監督はそこに疑問を持って本作を手がけたことが分かるし、実際に本作公開の二年後に補償制度が運用開始しているのは本作の影響もあるのではないかと思える。誰でもよかったという理不尽な殺人事件で家族を奪われた登場人物たちの悲しみがリアルにこちらに伝わってくるような心理描写はいかにも木下監督らしいし、きっと実際にこういう事件で家族や友人を亡くした人たちも同じ思いなのだろうと思わずにはいられなくなる。しかし、ドラマとしてはやや物足りない部分もあり、とくに主人公が自分と同じような境遇の人たちに会うために全国を渡り歩く部分が思ったよりもあっさりしていて、ここをもう少しじっくりと描いていればもっとストーリーに厚みが出たはずでそこが残念。本作で映画賞を総なめしたという主演の若山富三郎は東映ヤクザ映画での印象が強くなりかけていたが、本作ではそれをあまり感じさせることはなく、評判どおりの素晴らしい演技を見せていて間違いなく本作は「悪魔の手毬唄」と並ぶ若山富三郎の演技派としての代表作だと思う。そしてもう一人、そんな若山富三郎演じる夫を支える妻役の高峰秀子はこの頃はもう女優業は散発的になっていて、本作が最後の出演作とのことだが、衰えというものをまったく感じさせておらず、その存在感と演技はやはり別格だ。全国各地にいる被害者遺族を演じる出演者も豪華なのだが、大阪のシーンで登場する夫を殺された中年の女性を中村玉緒が演じているのは、同じシーンに若山富三郎がいるだけに「殺された夫=勝新」というリアルな想像をついしてしまい、この中村玉緒の登場シーンだけなんだか妙な気分になってしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2014-04-10 18:25:42)
445.  眠狂四郎 殺法帖 《ネタバレ》 
雷蔵の代名詞的シリーズである「眠狂四郎」シリーズ第一作。シリーズものは一作目が最高傑作と言われることも多いのだが、本作はそれほどでもなく、このシリーズはそれほど見ていないのだが、本作の狂四郎はニヒルさやクールさが足らず饒舌でソフトなキャラに描かれている気がする。これはこれで悪くはないのだが、やはり狂四郎がキャラとして弱く感じてしまう。敵役となる若山富三郎演じる陳孫のキャラクターも中途半端な印象しかなく、クライマックスの円月殺法対少林寺拳法という対決もイマイチ盛り上がりに欠ける。(とはいえ一作目の今回早くも円月殺法が陳孫に真剣白刃取りされるのが印象的。一作目のクライマックスなのに。)そんな中でヒロイン役の中村玉緒は好演しており、悪女を演じた後年の「炎情剣」ほどではなかったが、それでも印象に残る演技を見せている。全体的に見てまだ試行錯誤という感じの一作目だったが、シリーズとして本格的な路線が出来上がるのは二作目である「勝負」以降なのだなと感じたし、もしかしたらシリーズ化されずにこれ一本で終わった可能性もあったかもしれないだろうから、そうならなくて本当によかったと思えた。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2014-04-10 00:08:17)
446.  座頭市牢破り 《ネタバレ》 
独立プロダクションを設立した勝新がその第一作として取り組んだ座頭市シリーズの一篇。これだけで勝新のこのシリーズに対する意気込みが伝わって来るし、監督を社会派の山本薩夫監督にしたのもこれまでのシリーズとは違う作品にしたいという勝新の意図があったのだろう。結果、いかにも社会派監督らしい映画に仕上がっていて「座頭市」シリーズとしては確かに異色作なのだが、考えさせられる内容で映画としてはなかなか見ごたえのある作品だったと思う。理屈で分からない者は斬るしかないという市に対してこの作品ではそれとは正反対の思考を持つ刀を持たぬ侍・大原(鈴木瑞穂)が登場する。この相反する二人であるが、市はこの大原という侍に惹かれていく。この二人の友情にも似た関係がうまく描かれているのがまずいいし、下の方も書かれておられるようにいつもと違い、単なる勧善懲悪ではないあたりや観客に判断を委ねるようなラストに深さがあるのも良かった。ただ、このシリーズらしいユーモラスなシーンもあるものの、やはりシリーズとしては話が重くなりすぎ、そこらへんが評価の分かれるところだとも思う。三國連太郎演じる朝五郎が前半と後半では全くキャラが違い、演じる三國連太郎の演技力の凄さを感じさせているが、この朝五郎の人物描写が不足気味で、もうちょっと前半に後半への伏線を敷いておいたほうが良かったような気がして、そこがちょっと惜しい。とはいえ、この作品、決して嫌いではない。
[DVD(邦画)] 7点(2014-04-05 14:43:20)
447.  あした来る人
川島雄三監督の映画、かなり久しぶりに見る気がする。あまり期待はしていなかったのだが、三橋達也、月丘夢路、新珠三千代、山村聡のドロドロとした複雑な人間関係がリアルに描かれていてなかなか見ごたえがあって面白かった。こういうドロドロとした話だと暗く重い雰囲気になりがちなのだが、「洲崎パラダイス 赤信号」がそうであったように見ていてそこまで暗い映画だなという印象がないのはやはり川島監督らしいし、「洲崎パラダイス 赤信号」の主演コンビである新珠三千代と三橋達也が本作でも共演してるのは嬉しい。三橋達也は本作でもダメ男役なのだが、やはりこの俳優は誠実な役柄よりもこういう煮え切らないだらしないダメ男のほうが圧倒的にはまっていると思うし、そういう男に妻(月丘夢路)がいることを分かっていながら不倫に走ってしまう女を演じる新珠三千代もまたはまり役で、やっぱり川島監督の映画でのこのコンビは最高だと思う。しかしやはり川島監督の映画としては「洲崎パラダイス 赤信号」のほうが出来としては上のように感じる。冒頭の回想シーンから現在に戻るときのつなぎ方が面白い。三國連太郎扮するカジカの研究に没頭する男はどちらかといえば傍観者的立場に描かれているが、彼がいることによってこのドロドロとした物語を比較的冷静に見られるという側面もあると思う。
[DVD(邦画)] 7点(2014-03-29 01:52:07)
448.  刑事コロンボ/溶ける糸<TVM> 《ネタバレ》 
今回の犯人はレナード・ニモイ扮する野心家で冷静沈着な心臓外科医で、犯行は意見が対立した心臓治療の新技術を共同研究している自らの患者でもある博士の手術中に細工を施し、それだけでなくそれに気づいた看護婦までも殺してしまうという残忍なもの。それで涼しい顔をしているのだから相当にいけ好かない犯人である。もちろん頭も切れ、コロンボになかなか証拠を掴まさせない。この犯人とコロンボの対決も見どころなのだが、今回は犯人と被害者である博士や看護婦のドラマがしっかりと描かれ、物語的にも面白いエピソードになっていたのが良かったし、この犯人が最後の最後までコロンボの追及をうまくかわしていく(コロンボが犯人に対して怒るのも珍しいが、敗北宣言をするのはもっと珍しい。)ので本当にこの事件は解決するのかというドキドキ感がエンド直前まであるのも○。しかし、このシリーズには邦題でネタバレしているものがいくつかあり、この「溶ける糸」もそれに当てはまっているのがちょっと残念。それにしても今回の犯人は劇中で合計三人も手にかけており、このシリーズの犯人の中ではやはり残忍さが際立っている。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2014-03-25 14:08:39)
449.  刑事コロンボ/二つの顔<TVM> 《ネタバレ》 
冒頭に犯行シーンが描かれ、コロンボが容疑者と睨んだ男(マーティン・ランドー)に追及を始める。ここまではいつも通りの展開なのだが、このエピソードでは容疑者の双子の兄が登場することによってどちらが犯人なのか分からなくなるというミスリードがあり、倒叙ものでありながら視聴者もコロンボと一緒に犯人を推理していくという構成になっているのが面白い。しかし、結局はその双子の共犯というやや反則ぎみの結末だったのはせっかく犯人は双子のうちどちらかというミスリードで最後まで引っ張っていただけに非常に勿体ない気がした。仲の悪い双子という設定だったのでこのエピソードに影響を受けたであろう「古畑任三郎」の「ラストダンス」のような展開でも良かったような気がする。とはいえ今回は笑えるシーンが多く、飛び入りで料理番組に出演するコロンボのあたふたする姿もコミカルだが、やはり本作のいちばんの笑いどころはコロンボと家政婦のやり取り。コロンボがことあるごとに家政婦に怒られるシーンが最高に面白く、双子とのやり取りよりも印象に残り、ひょっとしたら今回のコロンボは双子の犯人よりもこの家政婦のほうが手強かったのではないかと思えるほどだ。既に書かれている方もおられるが、中でもようやく機嫌を直した家政婦の前でテレビを修理しようとして失敗し、それが原因でまた怒られるシーンはコントのようで楽しい。家政婦の吹き替えを演じる文野朋子(神山繁の奥さん)の声もヒステリーな家政婦のキャラにピッタリとはまっていた。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2014-03-22 13:03:36)
450.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
「独立愚連隊西へ」に続き、岡本喜八監督が再び佐藤允と加山雄三を主役に起用した戦争映画で、タイトルからは分からないが「独立愚連隊」シリーズの3作目にあたる作品になる。今回は前2作に比べてやや複雑なきらいがあるのだが、それでも雰囲気的には完全に前2作を踏襲しているのが嬉しいし、喜八監督の演出もこの人らしいテンポのいい見せ方で見ていて飽きさせないし、やっぱり痛快さがあるのがなによりいい。ストーリーは敵の捕虜になった関大尉(夏木陽介)を佐藤允扮する百虎に集められた特務隊が救出に向かうというものなのだが、このメンバーが一癖もふたくせもあるような個性的な連中なのも面白く、中でも忍術を研究しているという砂塚秀夫演じる佐々木二等兵が脱出のためにパントマイムを使うシーンなどは傑作で思わず笑ってしまった。(この人は同じ喜八監督の「戦国野郎」でもコミカルな演技が印象に残っている。)喜八監督らしさは戦争そのものについてもよく出ていて、関大尉が自分の命令で銃殺になった捕虜の幻影に苦しめられるところはリアルだし、自らが捕虜になった後に主治医としてやってきた軍医がその銃殺された捕虜にうり二つというのも皮肉が利いていて印象に残る。それに日本軍についてもちくりと批判をやってみせるのも喜八監督らしいところである。関大尉や正宗大尉(藤田進)が独立愚連隊となった特務隊に加わり、日本軍に反旗を翻すラストシーンが爽快で好きなのだが、このシーンの正宗大尉のセリフが黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」での藤田進の「裏切り御免」を意識したものになっているのが笑えるし、特務隊が結婚式に紛れてという展開も「隠し砦の三悪人」を思わせている。思えば、喜八監督が本作の翌年に手がけた時代劇「戦国野郎」も「隠し砦の三悪人」に似た雰囲気の映画になっていたので、やはり喜八監督は「隠し砦の三悪人」が好きなんだろうなあと思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2014-03-20 17:32:39)
451.  暗黒街の弾痕(1961)
岡本喜八監督の暗黒街シリーズ3作目。ヤクザ映画という印象が強かった前2作と違い、自動車業界を舞台に産業スパイを描いていて、主演も鶴田浩二や三船敏郎に代わって「独立愚連隊西へ」や「戦国野郎」などで息の合ったところを見せていた加山雄三と佐藤允のコンビが担当し、前2作とは毛色の違う作品になっている。同じく自動車業界の産業スパイものといえば増村保造監督の「黒の試走車」が思い浮かぶが、本作はサスペンスよりもアクション映画としての色合いが濃く、同じ題材でありながら受ける印象はまったく違う。しかしあくまで娯楽アクション映画に徹したことと主演ふたりの対照的なキャラクターが喜八監督の作風に見事にマッチし、喜八監督の持ち味がじゅうぶんに発揮されていて、演出も前2作と比べると明らかにイキイキとしているのが嬉しい。結果、喜八監督が手がけた暗黒街シリーズの中ではいちばんこの監督らしさが出ていて面白かった。それに加山雄三と佐藤允のコンビがやはり本作でも息の合ったところを見せていて、このコンビの良さもしっかりと出ている。喜八監督の暗黒街シリーズとしては最後の作品になるのかもしれないが、その中ではぼくも本作がいちばん好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-03-13 18:26:49)(良:1票)
452.  刑事コロンボ/毒のある花<TVM> 《ネタバレ》 
今回は新製品のしわ取りクリームをめぐる化粧品会社女社長による殺人事件が描かれているが、被害者(マーチン・シーン)と言い争っているうちに衝動的に撲殺するという展開はちょっといただけず、せめてもう少し犯行に計画性が欲しかったところだし、この犯人の行動も胆略的なところがあり、化粧品会社の女社長という立場の人間にしてはさして美人というわけでもなく、あまり設定に説得力が感じられない。吹き替えの声もはっきり言って微妙で違和感を感じるし、このシリーズの犯人としてもあまり魅力を感じることができず、コロンボと犯人の対決もたいして盛り上がらないまま終わってしまった感じ。冒頭のシーンがいかにも意味ありげに描かれていたが、そこは今回のストーリーにはほとんど関係がなく、そこに登場する博士(ビンセント・プライス)もあまり絡んではいないのでなんでこんな思わせぶりなオープニングにしたのかがよく分からない。全体的に構成が雑で旧作シリーズの中ではイマイチのエピソードだと思うのだが、事件のきっかけとなった新製品のクリームが事件の証拠だと思い込んだ犯人がそれを海に投げ捨てた直後に別の証拠によってコロンボに逮捕されるラストシーンだけは皮肉が利いていて印象に残る。
[CS・衛星(吹替)] 4点(2014-03-11 17:20:49)(良:1票)
453.  暗黒街の対決 《ネタバレ》 
西部劇のような街並みや鶴田浩二が営むバーの雰囲気は思いっきり岡本喜八監督の趣味性が出ているし、殺し屋たちが店でうたうシーンのユーモアや、ミッキー・カーチスのキャラの面白さなど「暗黒街の顔役」と比べれば喜八監督らしさがよく出た映画になっていて本作のほうが楽しかった。ストーリー的にはやや物足りない部分もあるのだが、三船演じる主人公の刑事の設定が翌年の黒澤明監督の「用心棒」を思わせる部分があるのが興味深いし、稲垣浩監督の「宮本武蔵」三部作で共演していた三船と鶴田浩二の現代劇での共演も見どころ。ただ、「暗黒街の顔役」でも思ったことなのだが、元ヤクザの男を演じる鶴田浩二の演技はやはり東映の任侠映画に出ているときとかぶって見え、多少気になる部分があるし、「宮本武蔵」と同じように三船と鶴田浩二の現代劇での「対決」を少し期待したが、そこはやや肩透かし気味でちょっと残念。敵対する二つのヤクザの親分役を、喜八監督が助監督をやっていたマキノ雅弘監督の「次郎長三国志」シリーズでお馴染みの田崎潤と河津清三郎が演じているのはなんだか嬉しいし、面白い。この二つのヤクザの描き分けがすごく分かりやすくて明快だった。喜八監督の映画の中では傑作とは言い難い映画だが、最初に書いたように「暗黒街の顔役」より楽しめたので、少し甘いかもしれないが7点。
[DVD(邦画)] 7点(2014-03-06 13:19:06)
454.  暗黒街の顔役(1959)
岡本喜八監督の第3作目で初のカラー映画となるヤクザ映画。喜八監督らしいテンポの良さはあり、面白くないことはないのだが、喜八監督の映画としてはカラッとした部分があまりなく、ちょっと湿っぽすぎるし、初期作だからか作風もまだそこまで確立していないような印象がある。主演が鶴田浩二で、親分が河津清三郎というのは東宝というよりものちの東映の任侠映画を思わせるキャスティングで、実際に二人とも東映任侠映画に出るときと同じような印象であり、東映任侠映画を見慣れてしまった今となっては少し違和感を感じる。そんな中、喜八監督とは助監督時代からの付き合いという三船が脇役だが、自動車修理工場のしょぼくれた経営者の役で出演しており、これがけっこうハマっている。クライマックスでの自分の工場で好き勝手するヤクザに対してついに怒りを爆発させるシーンが三船の最大の見せ場で、ここだけで主演の鶴田浩二を食うほどの存在感を見せているのはすごい。ほかにも脇役ではこの後に喜八監督の映画の常連となる俳優二人が既に出演している。本作のあとすぐに喜八監督の「独立愚連隊」で主人公を演じる佐藤允が鶴田浩二を狙う殺し屋を演じていて、これがまた異様に存在感があり、かっこよくて印象に残る。そして、出番はわずかだが天本英世も一言のセリフもない冷徹な殺し屋を不気味に演じていて印象的だ。ほかにも本作には喜八監督の映画の常連となる俳優が何人か出ているが、とくにこの佐藤允と天本英世の二人はこの後の喜八監督の映画を支えていく存在になるのだなあと、そう思った。
[DVD(邦画)] 6点(2014-02-27 15:10:15)
455.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
1939年というとあと2年ほどで太平洋戦争に突入しようかという暗く混沌とした時代にもかかわらず、マキノ正博監督のこの「オペレッタ時代劇」と言われる映画はそんなことを微塵も感じさせない非常に能天気で明るい喜劇であることにまず驚いたし、それを今見てもこんな楽しい映画はほかにあるだろうかというほど楽しく、見終わって思わず「ああ楽しかった!」と声に出して言ってしまった。登場人物たちに悪人がひとりもおらず、なおかつ、どの人物に対しても愛らしさを感じることができ、だから見ていて(DVDパッケージの謳い文句どおり)とてもハッピーな気持ちになれるのがいい。タイトル・クレジット部分に流れる主題歌からもうひきこまれるし、いざ、映画が始まっても登場人物たちが歌う、唄う、うたう。中でも生活を顧みずに怪しげな骨董品の収集に没頭するおやじを演じる志村喬は後年の「生きる」での悲しげな歌声とは対照的に明るく楽しそうな歌声を披露しているのは印象的で、演技も戦後の東宝映画などで見せる重厚で渋いものではなく、コミカルな役を軽妙にイキイキと演じていて、その上歌も歌うのだから新鮮というほかはなく、はっきり言ってこんな志村喬は初めて見るような気がする。彼と娘・お春(市川春代)のかけあい、やりとりが面白いのもこの映画の魅力だろう。(本作の主演は千恵蔵だが、志村喬のほうが目立っているような気もする。)市川春代といえば「ウルトラセブン」の中の「北へ還れ!」というエピソードでフルハシ隊員の母親役で出演しているのを見ただけなのだが、本作ではなんとも可愛らしく、とくに「ちぇっ!」と舌打ちをする仕草がなんとも言えないのだ。そんなお春を父の借金のかたに妾にしようとする殿様(ディック・ミネ)も本来は憎まれ役のはずだが、コミカルなどこか憎めないキャラクターで好きだ。クライマックスはお春の父が持っていた小汚い壺が実はかなりの値打ちがあるという展開で、山中貞雄監督の「丹下左膳余話 百万両の壺」を思わせているが、ひょっとしたらこれは意図的なものかも知れない。その壺をお春が壊すことによって何もかも丸くおさまるラストも心地よく、また湿っぽくなりそうな展開があってもけっして湿っぽくならないところも良かった。撮影の宮川一夫によるエピローグのクレーンショットも素晴らしいの一言。「ほーれほれほれ、この茶碗♪」、「ぼーくはわーかい殿様あ♪家来ども喜べー♪」 登場する歌の歌詞もいつまでも耳に残る。日本ではミュージカル映画というのは少ないが、本作はそんな中でも間違いなく最高の映画と言ってもいいほどの素晴らしい映画で、まさに見終わった後に何回でも見たくなるような名作だと思う。迷わず10点だ。
[DVD(邦画)] 10点(2014-02-20 23:49:06)(良:5票)
456.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
黒澤明監督が自らのプロダクションを(東宝の意向もあって)立ち上げて手がけた第一作。汚職事件に絡む復讐劇を描いたサスペンス映画で、黒澤監督らしい見ごたえのある娯楽作に仕上がっていて最後まで面白く見ることができた。三船演じる主人公・西が復讐のためならどんなことでも厭わない男で、やや共感しづらい面もある(実際、主人公よりも藤原釜足演じる和田にずっと感情移入していた。)ものの、ちゃんと人間的な部分も描いているので、主人公にまったく感情移入ができないというようなことはない。この後の「用心棒」や「椿三十郎」と違ってやるせないバッドエンドですっきりしない結末であるが、ここにこの映画で黒澤監督の言いたいことが集約されているのだろう。ただ、人間ドラマとして少し物足りないところもあり、もう少し登場人物たちを掘り下げて描いても良かったのではという気はするし、やはり女性の描き方に不満が残る。でも、西と板倉(加藤武)が隠れている軍需工場跡にやってきた西の妻(香川京子)と西のラブシーンはいつもの黒澤映画では見られないようなシーンでとても印象に残った。出演者の中ではやはり岩淵副総裁役の森雅之。家庭で見せるよき父としての顔と汚職に手を染めている悪の顔をきっちりと演じ分けていてさすがに上手いし、ぱっと誰だか分からないような老けメイクのせいもあってか強烈に印象に残る。この岩淵の息子役が三橋達也で、香川京子演じるその妹である西の妻が障害者という設定なので見ていてつい川島雄三監督の「風船」を思い浮かべてしまったが、もし、川島監督なら香川京子の役柄の存在をもっと大きくしていただろう。そうそう、この映画は小津安二郎監督の映画の顔である笠智衆が初めて黒澤監督の映画に出演した作品でもあるんだなあ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-18 15:37:33)
457.  刑事コロンボ/愛情の計算<TVM> 《ネタバレ》 
今回の犯人は息子を思うあまりに殺人を犯してしまうロボット工学の権威。でもそれにしては犯行がかなりお粗末で、ロボットを自らの共犯者のようにアリバイ作りに使うとか本当に頭のキレる犯人だったらまずやらないだろう。ひょっとしたらこの犯人は研究に関しての知識は豊富だが、それ以外はからっきしだめなのかと思えるほどだった。ラストはコロンボが犯人の息子への愛情を利用して芝居を打つというこのシリーズでよくあるパターンの解決方法だが、これがいつにもまして強引で、真犯人をあげるために無実の人間をしかもそれと分かって逮捕してしまうのはいくらなんでもやりすぎで不当逮捕もいいところ。もう呆れるしかない。今回は科学研究所が舞台でどこか近未来的なSF風味があるのが斬新だが、それもこのシリーズには少し不釣り合いな感じがする。とはいえ、犯人がアリバイに使ったロボットやそれを開発した天才少年とコロンボのやりとりは見ていて微笑ましかった。その天才少年の名前がスティーブン・スペルバーグ。もちろん「構想の死角」を手がけたスピルバーグをもじった名前であるが、当時の彼はまだ無名。偶然だろうけど、今回の内容が内容だけに、彼が将来、SF映画で成功することを予見しているかのようだった。
[CS・衛星(吹替)] 4点(2014-02-16 14:10:31)
458.  ジャズ大名 《ネタバレ》 
江戸時代の日本に外国人が漂流というと「おろしや国酔夢譚」の逆パターンのような話になってしまいそうなところを、それがきっかけである潘の殿様(古谷一行)と家来たちがジャズにはまっていく姿を勢いよく描いていて、岡本喜八監督らしい実に軽快な映画に仕上がっていて面白かった。とにかくひたすら陽気でテンションが高くエネルギーに満ち溢れていて、1986年制作と喜八監督の映画としてはけっこう後年の作品にもかかわらず、衰えというものをまったく感じさせないようなパワーがあるのはすごい。そして何よりもこの映画を喜八監督本人が楽しんで演出しているのがよく分かるし、見ている人に対しても肩の凝らない映画をという思いもよく伝わってきて本当に何も考えずに気楽に見ていられる映画だ。ラスト20分の狂乱のジャズセッションのシーンはなんとも強烈で印象に残る。その狂乱の中でいつの間にか明治になっても「俺たちにはそんなこと関係ないぜ」とばかりに狂乱のセッションを続けるエンディングに喜八監督らしい反骨精神のようなものを感じることができた。「ああ爆弾」ほどではないがシュールなシーンも多く、中でもそろばんをスケボー代わりにして城の中を移動する姫には笑わされたし、ほかにも殿様をはじめとしておかしくて個性的な登場人物たちも面白い。喜八監督の映画を見るのはかなり久しぶりで、それもあってか見る前はちょっと不安な面もあったが、そんな不安は見ているうちに吹き飛び最後まで楽しく見ることができて良かったと思う。最後にもう一言、矢口史靖監督の「スウィング・ガールズ」はあんがいこの映画の影響を受けてる部分もあるのかもしれないと少し思った。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-13 18:29:13)
459.  日本一の男の中の男
古澤憲吾監督による植木等映画、かなり久しぶりに見たが、やっぱりものすごい勢いがあって面白い。昇進できると張り切っていた植木等演じる主人公 小野子等がストッキング会社の会長(東野英治郎)の一声で転勤することになり、最初は落ち込むが、すぐにポジティブな考えに転換するところはこのシリーズらしい展開でこれだけで見ていて前向きになれるし、このシリーズの植木等を見ていていつも思うが、人生何があっても明るく生きていこうというのが感じられ、見た後にとても元気になれるのがこのシリーズの魅力だとあらためて思う。既に青観さんが書かれているとおり、本作でも植木等演じる主人公は頭の回転が異様に早く、行動力があり、言いたいことは相手が目上の存在だろうがズバズバ言う。これが見ていて非常に気持ちよく、この主人公にある種、憧れのようなものも感じることができるし、本当に嫌なことなどきれいさっぱり忘れさせてくれる不思議な魅力がある。そして勢いのある古澤監督の独特の演出も面白さに拍車をかけていて飽きさせない。とくに軍艦マーチをバックに女子社員たちが屋上で行進するシーンはいかにもこの監督らしいシーンで印象に残る。これまでのシリーズで浜美枝が演じていたヒロインを本作では浅丘ルリ子が演じている(日活を辞める前後の頃だそう。)が、とくに違和感はなく、むしろどこかクールな感じで新鮮に感じられた。浅丘ルリ子といえばなんといってもリリーであるが、このシリーズには寅さんシリーズと違い、ペーソスとかそういうものは基本的になくひたすらお笑いに徹しているところが潔く、そこも魅力的で好きだ。(もちろん、寅さんシリーズも好きなんだけどね。) 本作を見終わってクレージー映画や、植木等主演の喜劇映画をまたもっと見たいと思ったし、また、今の日本映画にはもっとこういうあっけらかんとした前向きな映画が必要なのではないかとも感じた。 やっぱり植木等、好きだ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-06 18:40:17)(良:1票)
460.  カルメン純情す 《ネタバレ》 
「カルメン故郷に帰る」の続編。田舎が舞台であった前作とは違い、カルメンと朱美の都会での生活を描いているが、カラーだった前作と違って白黒(ここがいちばん驚いた。)で、前作同様にコメディーではあるものの、前作と比べるとやや内容は暗めでしんみりとしており、続編でありながら印象はだいぶ違うものになっている。個人的にはやはり前作のほうが好きだが、前作で日本初のカラー映画を手がけた木下恵介監督だけあって本作でもカメラを傾けた斜めの画面の多用などはかなり実験的で面白いし、選挙に立候補する軍国主義の女性政治家(三好栄子)と「原爆」が口癖の家政婦(東山千栄子)のキャラクターも滑稽で強烈。また木下監督らしい政治風刺が利いているのも面白く、当時の時代性がよく出ている。しかし、木下監督はそういった当時の風潮を笑い飛ばしているように見え、時代に敏感で、その時代を冷静にみつめることのできる監督なのだとあらためて気づかされた。ひょっとしたら本作は「カルメン故郷に帰る」の続編としてよりも、それとは別の社会風刺喜劇として見たほうが面白いかもしれない。ラストがやや中途半端な印象があり、エンドマークも「第二部 完」となっていて、三作目の構想があるような終わり方をしているが、実際のところはどうだったのだろうとつい考えてしまう。
[DVD(邦画)] 6点(2014-01-30 14:32:46)
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