461. ビリーブ 未来への大逆転
《ネタバレ》 いわゆる‶有名人の伝記”的な作りで、映画作品としての面白みに欠けると感じました。事実を盛れとは言いませんが、ルース・ギンズバーグという人となりをもう少し丹念に描くことはできなかったもんでしょうか。頑張り屋で性差別に憤り、超優秀な弁護士。それはwikiでも読めば皆分かっているのです。 例えば夫が病に倒れた時、真っ暗な絶望からどう心を立て直したのか。猛烈に仕事にまい進する日々の中で、一度でもちゃんと子どもを見れてやれていない、家庭という生活を回せていない、と落ち込むことはなかったのか。長女の反抗などは唯一「おっ」と思わせる場面でしたが、さらっと過ぎてしまいました。 夫にしてもあんなパーフェクトな聖人のような描き方では逆に嘘くさいですよ。一つ二つ彼のボヤキが入ってもよかった。 フェリシティ・ジョーンズの情感乏しい演技も相まって、キキの人柄に響くところを感じなかったのは物足りないし、残念です。RBGを語る上であまり成功していない作品と思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-11-16 23:53:08)(良:1票) |
462. search サーチ
これは凄い。新しい。PC画面だけで展開するパターンの作品は‶アンフレンデッド”を観たことがありますが、かの作品が「画面上だけという制約」から抜けられなかったのと反対に、画に奥行きもありますし、時系を(過去のLINE画面という形で)戻ったりしながら徐々に緊張を高めてゆく脚本力の高さはかなりのものです。 俳優の演技に頼れない分を、ゆっくり考えながら打ち込むあるいは勢いに乗せて一気に、といった書き込みのスピードで表現したり、やっぱり消去したりといった行為で逡巡が伝わってくるのは巧いなあ。 現在はコンピュータの中に個人の嗜好、考え、行動履歴が詰まってますから、PC一台のデータから映画も一本作れてしまうのですね。事件化した途端現れる自称親友や、上から目線の意見屋、心無い書き込み等、ネット社会の闇も織り込んでいてリアルです。 ‶見せ方”ばかりが斬新かというと、そうではなくストーリーも大いに起伏ありで、こちらの読みをあちこちに振られた末に驚きの展開を見せました。ネタバレしないように頑張って書いております。‶気づき”の鮮やかさ、search力、まさに一気呵成。お見事でした。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-11-14 23:33:07)(良:1票) |
463. ファースター 怒りの銃弾
《ネタバレ》 D・ジョンソンが銃をぶっ放して復讐に邁進するドンパチものとイメージしていたら、意外や意外これがどちらかというとハードボイルドテイストでした。 登場人物は主に三人。それぞれが影を背負って渋くてイイ感じなのです。ええ、ロック様もきっちりと渋いです。 「怒っている」から復讐へ向かうのですけど、D・ジョンソンの元からの‶ちょっと困ったような顔”が今作の役柄になにやら奥行きをもたらす効果アリなのでした。今や聖職者になっているターゲットとの向かい合わせのやりとりは緊迫感でいっぱいです。元来悪人ではないドウェイン、‶神のしもべ”に切々と「許し」の大切さを説かれて例の困惑顔を浮かべつつ、引き金を引くべきか否かあり余った筋肉がふるふる震えるのでした。やめろ、やめておけドウェイン、な? ビリー・ボブはもちろん言わずともベテラン演技巧者らしく正体不明などっちつかずさを見せます。子どもとの会話もシーンは短いけれど気持ちが伝わる描写で、こんなささいな場面にも気を使っているステキな脚本でした。 惜しいのはキラーの彼。彼のみ掘り下げ不足な感もあり、割を食ってますがまあ次回ガンバレ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-11-10 23:15:54)(良:1票) |
464. アバウト・タイム 愛おしい時間について
《ネタバレ》 うん、「時」について色々考えさせられました。映画は中盤までは恋愛パートでコミカル、やがて人生の節目を迎え子どもの誕生と父を送るその時を経て主人公は悟るのです。「今流れるこの時間の美しいことを思おう」と。キレイにまとめやがったなあ。 時間を戻せるということは、いくらでもやり直しが効くということ。難関の試験だってオーディションだって何度でもトライ可能だし、失敗知らずの人生を送ることができますね。エグいことを考えればこの主人公だって、夫婦関係がこじれれば婚姻関係すらリセットすることもできるのです。新しい彼女と人生をやり直すことが。失敗の痛みを知らないゴーマンな人格になりかねない危険な能力ではないですかね。もちろん、主人公が決してそうはならない凡庸な性格設定のもとに作られたお話であるのですが。 ちなみに自分だったらどの辺に戻ろうかな、と考えました。でもまあ、同じ自分であるし、その都度下す選択や決断は似たような結果であろうから、結局は今現在の立ち位置と大して変わりないのではなかろうか、と思った次第です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-11-09 23:14:10) |
465. 遥かなる大地へ
《ネタバレ》 文芸大作かと思って気張って観たら少女漫画でした。なあんだ気抜けちゃった。 出来事の上澄みだけをすくって物語にしていますので、少女マンガなんか阿呆らしいというリアリティ派には不向きです。そもそも細部までリアルを追求したらこの話成り立たないです。 ‶アメリカで土地をもらって馬で自由に駆けたい”と熱望する自称「モダンガール」のお嬢さんは土地取引の資金や家屋、維持費といった具体的な部分はノープラン。船でさっそく詐欺に遭って無一文になった時点で普通は詰みですし、あてがわれた寝所は娼婦が客を取る安宿で不衛生この上なく、あんなシラミがたかりそうな環境でニコール級の美貌をキープできるわけないのです。嘘ばっかです。 でもせっかくなので13才の気持ちに戻って鑑賞に及んだところ、若きトム・クルーズとニコール・キッドマンご両人の美しさ、初々しさはキラキラしく、‶素直になれない意地っ張りの二人”(おお、これも少女恋愛モノのド定番)の恋バナはなかなか微笑ましく感じられました。 「ランドラッシュ」については本作でその史実を知りました。「上澄み」の部分でトムとニコールが土地をゲットしてイチャついている一方で、映画では描かれない下部の澱み部分には約束を反故にされた先住民の問題が存在するのでした。気楽な娯楽作品と思っていたのですが、思わぬ形で勉強になったりするものですねえ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-11-07 00:15:29) |
466. チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛
《ネタバレ》 フェルメールの画から着想しました、と言われなくても気づくであろうほどにザ・フェルメールな光と影カットがてんこ盛り。17世紀オランダの世相や風俗の再現にも全精力を注入した見事さで、アリシア・ヴィキャンデルの纏う衣装の美しさと同時に、庶民の雑然とした暮らしぶりや公衆衛生観念から程遠い社会の姿も描かれています。お産で命を落とす女性が多かったのもうなずけます。この背景が物語の重要な起点にもなっていますし。 小顔のアリシアは17世紀コスプレもよく似合って、「画」にこだわる制作側の熱意に良く応えています。 美術は素晴らしい。けどヒロインの心変わりについての描きこみがほぼ無しなのが不可解です。チューリップ相場の暴落と合わせて主人公の熱も一緒に冷めたような描き方ですけど。いや、なんでよ?棺桶に入っていた数時間で一生モノの約束を反故にされては男の方もたまりません。 豪商C・ヴァルツはお手伝いの娘に屋敷を丸ごと譲って(そんなことあるかい)誰にとっても都合の良いことに外国へ去ってしまうし、ラストに来ての強引な話の畳み方が減点となりました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-11-01 23:25:59)(良:1票) |
467. ザ・シークレット・サービス
《ネタバレ》 VSサイコパスのジャンル作品として、脚本、演出、演技、カメラワーク全てがJUST平均点な王道娯楽映画です。ちょっとづつバディものの香りをさせたりロマンスも織り込んだりしていますが、こういうのを客は好むのだろうという制作側の読みはこの二点については残念ながら成功していません。 演技=平均とつけましたが、一人マルコヴィッチが気を吐きまして画面を締めています。顔つきがすでに怖いですし、銀行員殺害の無意味なことは「こいつヤバイ」と震撼せしむるに充分です。変装によって雰囲気をガラリと変えてしまう技は、まんま役者マルコヴィッチの本領発揮ともいえますね。彼が会場に現れたら、仮にワタシが警備バイトしていたとして、写真と首っ引きになっていたとしても、やはりスルーしてしまうでしょうな。別人だもん。 イーストウッドのロマンス沙汰に皆厳しいのには笑いました。日本人は老いてなおお盛んというよりは「枯れる美学」を好みますからねえ。だからじーさんイーストウッドものでも孤高の「グラン・トリノ」は好感されているのです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-28 23:30:16) |
468. デッドプール2
《ネタバレ》 前作より馬鹿度は2割増し、演出のキレは3割増しで1作目より面白かったです。ストーリーが太った男の子を救うってだけのシンプルさも観やすい。アメコミに詳しくないと矢継ぎ早に入れてくる小ネタに気付かないけど、それを差し引いてもかなりちょくちょく「ふふっ」と笑わせてもらいました。監督=「ジョン・ウィックで犬を殺した奴」のところで冒頭からいやいや(笑)となっちゃった。あとねラストらへんの、暗証NO必要→「7じゃない?」「まさかひとケタってことは」カチッ「ひでえ脚本だ」のくだりがツボでした。 ライアン・レイノルズが本気でこのおバカ映画に取り組んでいるのが伝わってきますよね。このひと「名探偵ピカチュウ」のオファーが入った時、お子さんを園に迎えに行く途中だったんですって。そして仕事熱心な彼は即役柄に入れ込むべく、「自分は今からピカチュウだ」→ピカチュウはうちの子を知らない→ので、迎えに行けない。という恐るべき強引阿呆思考でお迎えを放棄したそうで、それを記者に語るレイノルズと横で呆れ果てている妻ブレイク・ライブリー、というエピソードがしみじみ感慨深かったです。いやさすがだライアン・レイノルズ。デップーには貴方しかいないよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-26 23:08:59) |
469. ジョン・ウィック:チャプター2
《ネタバレ》 ワタクシ史上、これまで観てきたアクション映画での死者数を大幅に更新しました。死にすぎ。しかも今回も念入りに殺すなあ。二発目三発目と撃ち込んで。これはサバイバルゲームの世界観まんまですよね。近年は(仮想空間で)人がばたばたと斃れるシーンに皆脳が慣れてしまってるんですね。映画の脚本に影響が及ぶのもむべなるかな。 現実にはもちろんのこと、ゲームであってもまあキアヌのようにやってのけるのはほぼ無理。互いに撃ち合っても仕留めるのはキアヌの方。彼の銃だけ連射速度がずば抜けて速いとしか思えません。あと体力がハンパなさ過ぎ。なにせ撃ち合いながら500mは走った後に揉みあって階段を200段近く転げ落ちたのち、取っ組み合いなどできましょうか。プロアスリートだってこの状況なら猫パンチを繰り出すのが精一杯ではないですかね。 しかしそこは伝説の殺し屋キアヌは出血を抑えながら次々襲い掛かる刺客らの腕を折り、首を鉛筆貫通させ死体の山を築くのだった。ああ痛たたた。 1作目よりドラマ性はぐっと減り、より「スタイリッシュに人を殺す」画ヅラとなっております。良くも悪くもすごく今風。数十年後にはどういう評価をされるのかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-22 15:15:18) |
470. 友だちの恋人
《ネタバレ》 レアとブランシュ、性格全然似てないけど友だち関係が成立しちゃうことはあるよね。ハッキリしてて恋愛偏差値の高いレアと、容姿に自信が無くて不器用なブランシュ。 現彼に飽きたので「アナタの方が合いそう。付き合っちゃいなさいよ」と堂々譲渡宣言するレアに対し、「エーでもあなたの彼氏だし・・」と尻込み気味のブランシュ。で、結局ファビアンと良い仲になっても「やっぱりレアに悪いし」と気兼ねしてばかりなのですね。その一方でレアはのびのび他の男探し、で挙句ファビとヨリを戻しちゃったりでいやーなんかもう・・。 個人的にはブランシュのうじうじぶりは身につまされるものがありますわ。せっかく全仏オープンのチケットを譲ってもらっても、想う相手に近づくことはできずにそそくさと帰路についてしまう。すごくわかる。かたやレアは堂々として美人で傲慢なまでの自信家ぶりが、眩しくもあります。 リアルな等身大の女の子を描くロメールのタクトは本作でもキレが良くて、ずっとうんうんと頷きながらの鑑賞となりました。男性陣が皆受け身なのがちょっと笑えます。 昔の映画だけどファッションが今回も素敵なロメール映画。黄や青といった原色をさらっと着こなし、合わせるアクセサリーも大ぶりなイヤリングやベルトがとてもおしゃれ。さすがパリジェンヌ、と言いたいとこだけど彼女らはパリ郊外に住んでるんでした。 青とグリーンが交差してベストカップルに落ち着くラストシーンは、互いの勘違いがほどけてゆく爽快さと合わせて目にも鮮やか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-10-19 23:22:58) |
471. 12人の優しい日本人
《ネタバレ》 名作「十二人の怒れる男」を日本人バージョンでやったらどうなるか。全般のトーンをコメディ調にアレンジして、陪審員一人一人を‶いかにも”日本人として描写。この辺がね、上手いですよねやっぱり。米国人と違ってディベート慣れしていない日本人ですから、初対面同士で議論しろと言われてももじもじして意見の出ない人の方が多い。本作でも自らはっきり自分の意見を語る人って3人しかいなかった。でも冒頭の飲み物オーダーをまとめるくだりに見るように、「作業」ならば自発的にせっせと取りまとめる人って、どんな会合でも必ずいるんですよね日本人。うーん上手い。 オリジナルでは「早く帰りたがる人」は野球の試合を見に行きたいと主張していたのですが、本作では「仕事に戻りたいから」となっています。ここもね、公的な責務の場で「巨人戦を見たいから」と言っちゃう日本人は考えづらいもんね。(「阪神戦を見たいから」はいるかもしれない) 中盤までだんまりを決め込んでいた豊川が場を仕切り出してからは、がぜんテンポが良くなりました。 事件状況の推理や証言のあやふやさを見出してゆく展開はオリジナルに沿っていますが、米国版に比べて一件一件の精度が低いのは残念でした。ピザの件しかり、料理の美味い居酒屋だから酔っていないのでは、という理屈もしかり。やっぱり「ジンジャーエール」→「死んじゃえ」は無理だと思うな。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-18 23:24:09) |
472. シンプル・フェイバー
《ネタバレ》 ちょっとライトめの「ゴーン・ガール」といった感じで、アナ・ケンドリックが主婦探偵よろしく真相に迫るまでは面白かったんですがねえ。これまでたいてい‶健康的な優等生美人”を演ってきたブレイク・ライブリーのやさぐれ具合も目新しかったですし。 双子で保険金絡みとネタバレした後の雑な処理はちょっと呆気にとられちゃう。ヤマ場はなんと三者立ち話。事件と直接関係ないステファニーがなぜだかキレて銃を持ち出し、狂言芝居でエレンの自白を引き出そうとするも失敗→旦那ショーンはエレンに撃たれ、(ところでこの男はどっちの味方なんだ)生配信を知ったエレン外に飛び出す→ジャストタイミングで駆け付けたママ(パパ)友の車にはねられ、都合よく到着したパトカーにより逮捕。・・と書いててもぐだぐだ感が否めません。なんだかなあ。初めのうちこそ子どもの存在を大きく扱い、母親キャラを堅持してたのが、どんどんキャラブレしていって後半は子の存在がすっかり消えてんのも頂けない。 野暮ったい母さんファッションだったアナが、強気になるにつれ服装が垢ぬけていくのも見どころのひとつにしてるんでしょうが、そもそもアナ・ケンドリックは身長低く腕や脚も長くないため服を着こなせるタイプでないのです。よってあまり映えません。 前半の引きの良さに比べ、後半の安い展開で大きく評価が下がってしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-10-17 22:51:19) |
473. バツイチは恋のはじまり
《ネタバレ》 うーん、ユーモアの許容度が人によって試されるといいますか、ヒロインの行動が笑えるか笑えないか評価が二分しているラブコメですね。わたしはビミョーかな。そんなあー、と苦笑する感じ。イザベルは残酷だしジャン=イヴはお人好し過ぎるし、演者が違っていたら目も当てられない不快作になったかもしれません。 そう、ちょっとやり過ぎな話をも「これはコメディなんですよ」と発信し続けられているのはダイアン・クルーガーとダニー・ブーンが好感されているから。クルーガーは綺麗なので見てるだけで眼福ですし、今作は必死に目標を完遂しようとするおバカぶりが悪意の無いものに感じられるので、観てる側はギリギリイザベルを嫌いにならずにいられるのだと思います。 ダニー・ブーンも散々な目に遭いながら、話を重たくせずにする芝居をしています。傷ついてもそうは見えないように振る舞う彼の懐の深さにはこちらが救われる思い。ほんと、男性陣には現恋人のフィリップ含め、酷い脚本だものなあ。イザベルがジャンに心惹かれる説明描写も少ないですし。ラブコメだけど、誰もが楽しいハートウォーミング系ではないです全然。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-10-13 23:21:27) |
474. ラースと、その彼女
《ネタバレ》 ラースが意気揚々とビアンカを兄夫婦に紹介した時はこれはヤバい、とわたしも夫妻同様大いに焦ったのですが、ストーリーはほとんどファンタジーのような優しさと親切で展開しました。 街の人たちがほぼ皆ビアンカを「そういうこと」として受け入れ、助けてくれる。まあ、ラースが迫害される(こっちの方が現実的)のを見るよりはこちらも心が安らぐのでやや現実離れした話でもアリかな。 甘々な話ではあるけれど、兄夫婦のショックや戸惑いといった感情描写なんかはとてもリアル。特に優しい義姉が唯一爆発したシーンは心に残ります。「皆気を使っているのに。だってビアンカは大人なんだから」ここ、よく「人形」と言わずにこらえましたねえ。お義姉さん、エライ。 ちょっと注文をつけるとするなら、ラースが人々にこうも受け入れられるほどの‶善良なやつ”として好かれているという描写が前段のうちにもっと欲しかったです。ぱっと見陰気なコミュ障、で切り捨てられかねないキャラクターですから。あと、人形を搬送するのに難を示さない救急車てのもなんかびっくりするなあ。そこそこ大きめな街だったように思ったのですが。もっと小さい村単位の話なら、隅々までビアンカの話が行き渡っていても無理はないかなと思いますけども。いや、些末なコトですね・・。 ライアン・ゴズリングには驚きました。これまで彼の役は「イケてる自信家」的な仕事しか観ていなかったので。彼の器用なことには目からウロコです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-12 22:56:03) |
475. パラサイト
《ネタバレ》 今頃になって初めて観たのだけど、色々発見があって面白かった。ジョシュ・ハートネットのブレイク作だけあって、なるほどかなり魅力的。‶パール・ハーバー”なんかよりずっと良い。おお、ターミネーター氏がちゃんと人間の先生をやっている!途中から人間じゃなくなっちゃうけど。どうしても指輪を壊しに行くイメージのイライジャ・ウッドが普通の高校生をしていたり、「今さら」な驚きが楽しい。 気色悪さに特化したエイリアンの姿にもいろんな工夫が見られます。イヤだったのは赤細い触手がしゅっと出てくるトコ。あれはグロテスクだなー。CG作業してて吐きたくならなかっただろうか。 よくある乗っ取られ話ながら、一人また一人と「混じっている」ことが判明する流れにびっくりさせられ、大ボスにはさらに驚かされ(全然わかんなかった)。 皆元に戻ってめでたしめでたし、と思いたかったところだけど、あのけちんぼ校長も元通りになったんだよね?じゃあまたエアコン禁止の職員室と、パソコン予算も下りないのね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-11 23:19:50) |
476. ジョン・ウィック
《ネタバレ》 ストーリーは勧善(でもないか)懲悪、主人公がばったばったと敵をやっつける姿がみどころ、というほぼ時代劇コンセプトな殺し屋モノ。殺陣の美学をとことん追求している本作はキアヌの身のかわし方や銃さばきの華麗さに作品の成功がかかっているわけで、中年キアヌ頑張りましたねえ。 裏切るかと思われた親友W・デフォーの男気溢れる生き様はちょっとしたアクセントになってますが、基本 話はびっくりするほどシンプル。もっとも話が複雑になって深度を増すとキアヌの棒演技が目立ちますので、彼のための映画はこんなもんでいいのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-10-10 23:04:14) |
477. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 タイ映画と聞いて抱いた先入観を吹っ飛ばすほど垢ぬけていて、大変面白いので失礼ながらびっくりしました。 実話ベースとはいっても、そこから広げたカンニングのアイデアが秀逸で、目が真ん丸になるばかり。企みがバレそうになる、ギリギリの際のドキドキ感を煽る演出も巧い。STIC本番で独り荷を背負うことになったリンの汗だく&手の震え場面は観てるこっちも冷や汗をかきますし、本国で待機する鉛筆待ちのバイク集団の時間との闘いなんかは大仰なのだけど、観てる間は「そんな馬鹿な」という気持ちを忘れます。 単純に「カンニング大作戦!」的なコメディにするのではなく、格差社会の青春を生きる若者らのドラマに仕立てたのも味わいを深くしました。清廉だったクリーニング屋の息子が金銭欲に呑まれてしまうラストは苦く、リンの抱いたほのかな恋情の終わりでもあるので切なくもありました。 スピーディな展開、暴走する子へのストッパーとなるリンの父の存在といったキャラクター配置の巧みなこと等、一流の脚本であります。近年のアジア映画は凄い。日本はうすぼんやりしたアイドル主演の青春映画を作っている場合ではありません。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-10-09 23:13:37)(良:2票) |
478. グラン・プリ(1966)
《ネタバレ》 66年制作作品の超一級の映像技術には目を瞠ります。疾走するマシンの速さ、揺れ、特撮ゼロのリアルな臨場感は逆に今では不可能なのではと思います。直に搭載されたカメラが捉えるドライバー目線の圧巻の映像。びゅんびゅん後ろに吹っ飛んでゆく観客や家並、あっという間に眼前に迫るカーブ。時には上空から俯瞰するショットは、公道をなめらかに流れてゆくマシンがヨーロッパの街の緑と合わさってとても美しいです。 現在とはだいぶ具合の違うマシンの造りや、ピットインの様子などはF1の歴史を映像保存している意味で価値ありですし、当時の現役レーサーの出演などはF1好きにとっては嬉しいことでしょう。 監督のF1愛は充分伝わるのですが、張り切り過ぎて各レーサーの人間ドラマを盛り込んだのがちょっと余計でした。話を掘り下げる尺も無く、各人のどのエピソードも全部中途半端です。この(いらん)痴話沙汰に時間を取られ、なんと3時間もの長尺に。結果たるみを生むだけになりましたし、脚本としては褒められたものではないでしょう。 なにしろ夜中にかかるタイミングで観始めたものですから、終盤はぬおお~んというマシン音に眠気を何度も誘われ、気づけばイブ・モンタンのマシン炎上のとこまで巻き戻す、ということを三度も繰り返すことになってしまいました。 あ、あと三船敏郎のキレイな顔には同胞として喜びを感じた次第です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-03 22:55:16) |
479. キングダム/見えざる敵
《ネタバレ》 ‶(イスラム)テロと戦う米国”モノジャンルとしてオーソドックスな作りです。イスラム教徒としてひとくくりにすることを避け、テロリストと一般のサウジ国民(この場合はサウジ警察)を線分けして描くことに注力している姿勢はまだ品があると言えるでしょう。 何故アメリカがかくも憎悪の標的になるのかといった「そもそも論」には一切踏み込まず、現場のCIA職員と「敵」との対決及び銃撃戦が見どころであるという問題提起無しの娯楽作品ですね。 カメラがブレて見づらいなあ、というのが難点ですが「青いビー玉」が伏線として効いていたり、背広組の印象が強いC・クーパーが現場で穴を掘る姿もすごくハマるなあという発見があったりと、数多の類似作の中でも印象に残る作品ではありました。 それにしても゛互いが憎悪を抱き続ける”バッドエンドにしたのはどういう意図なのかしら。娯楽作テイストなのに急に社会派なメッセージが入ってきたようで唐突に感じました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-01 22:54:24) |
480. ワンダー 君は太陽
《ネタバレ》 この手の「いい話」を観ると実際当該の難病や障がいを抱える人が観たらどう思うんだろうと考えてしまいます。なにしろ徹底してキレイに仕上げた物語です。オギーの家族は愛に溢れ、両親はちょっと非現実的なほどに強くて優しく正しい。実際にハンデを負った子を育てるのは並大抵のことではないでしょう。ジュリアとオーウェン演じる両親はここに至るまでの傷跡が一切見られない演技で、つるんと明るく屈託が無さ過ぎに感じました。 と、鑑賞直後はかなりの低評価だったのですが、後に原作が児童文学だと知り見方が変わりました。なるほど子供向けであるなら、現実社会のキツさをリアルに描く必要はないですね。彼らの柔らかな感受性にすんなりと溶け込むような優しいタッチが必要になりますから、この映画は子どもが観るには適していると思います。 あと、複数の人物の視点から語りを入れるやり方。話が多角的に観られるかな、と期待したのですがあまり成功してないみたい。姉の‟ほっとかれた長女”エピソードも、ちと掘り下げ不足。ママが弟ばかり構って寂しいけど彼氏ができてハッピー、てだけ?友人ミランダのパートに至っては彼女の心理は100%理解不能ですし、必要なかったのでは。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-09-30 23:38:01) |