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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1876
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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541.  海を飛ぶ夢 《ネタバレ》 
海水浴中の事故によって首から下が一切動かせなくなり、以来寝たきりの生活を余儀なくされたラモン。家族や支援者たちに支えられながら26年もの間、そんな辛く不自由な日々を過ごしてきた彼は、最近ある願いを抱くようになるのだった。それは、自らの尊厳ある死――。「誰にも迷惑を掛けず、静かに自分の人生の幕を閉じたい」。法律的な問題をクリアするため、ラモンはこの問題に詳しい女性弁護士フリアを雇う。何故自分が死を望んでいるのか、どうしてこのような障碍を負ってしまったのか、自らの率直な想いをやって来たフリアに語り始めるラモン。次第に彼は若き日の情熱的な恋の思い出や、長年書き綴ってきたという自作の詩まで披露するようになる。いつしかお互いに特別な感情を抱き始める二人。だがフリアもまた、自らの身体に秘密を抱えていて……。長年の寝たきり生活から自ら死を望むようになった、ある一人の男の秘めたる想いを淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。若き日のハビエル・バルデムがそんな尊厳死を選択せざるを得ない障碍者を演じ、幾つもの賞にノミネートされたという本作、今更ながら今回鑑賞してみました。監督は、ヒット作を連発しノリにのっていたころのアレハンドロ・アメナーバル。〝尊厳死〟と言う非常に重いテーマを扱いながらも、このラモンと言う男の純粋なラブストーリーとしてこの物語を捉えているのが良いですね。変に説教臭くなったりお涙頂戴物語になることなく、最後まで彼の一途な思いに寄り添うような気持ちで観ることが出来ました。特に彼が、想像の世界で空を飛び海を越えて愛しい女性の元へと向かい、そして自らの腕で抱きしめるというシーンは出色の名場面。監督のその演出力の高さには驚くほかありません。物語の後半、この彼女もまた脳に疾患を抱えていることが分かります。そう、フリアも近いうちに身体が動かなくなり、そればかりか記憶すらもなくしてゆくのです。そんな二人がベッドで寄り添いながら、ともに死を誓い合うシーンなどとても切ない。そして、彼らがそれぞれに辿ることになる運命。果たしてその結論が正解だったのか。もちろん人生に明確な答えなどあろうはずもなく、いろいろと考えさせられるその結末に僕は思わず涙してしまいました。生きることの辛さと切なさ、そして愛おしさがぎゅっと凝縮された密度の濃い秀作と言っていい。
[DVD(字幕)] 8点(2022-03-10 09:46:23)
542.  フェアウェル 《ネタバレ》 
アメリカで鬱屈した日々を送る中国系移民の学生ビリー。ある日、彼女の元に本国の親戚から哀しい知らせが届く。子供のころから優しくしてくれたお祖母ちゃんが、癌で余命幾ばくもないというのだ。両親とともにすぐさま中国へ帰ろうとするビリーだったが、何故か両親はお前は残れと言ってきかない。何故なら、中国では末期の癌と診断された者は告知せずに逝かせてあげようという伝統があり、すぐに感情を表に出してしまう彼女が来たらすぐお祖母ちゃんに悟られてしまうと親戚たちに判断されたらしい。到底納得いかないビリーは、両親とは別の便で密かに中国へと向かうのだった――。そうして帰って来た実家では、お祖母ちゃんに悟られないよう孫息子の結婚式という名目で親戚一同が会していた。戸惑いながらも彼女を迎え入れてくれる親戚とビリーの両親。そして、久しぶりに会ったお祖母ちゃんも心の底からの笑顔でビリーを出迎えてくれるのだった。孫息子の結婚式という建前で、形だけは和気藹々と進む一家団欒。そんな親戚一同の優しい〝嘘〟の行方は?末期癌を患う祖母とその家族の悲喜こもごもを終始淡々と綴ったファミリー・ドラマ。確かに、この大してドラマティックでもない平凡なお話を最後まで見せ切った監督の演出力の高さは素直に認めます。美しい映像に気品あふれる音楽、最後まで流れるように続くセンスのいい編集の仕方、そしてお祖母ちゃんをはじめとする役者陣のナチュラルな演技……、完成度の高さとしてはかなりの水準に達していると言って間違いはないでしょう。ただ、自分としては全く嵌まれませんでした、これ。正直、さして仲良くない知り合いの結婚式のビデオを延々見させられたような感じで、後半からは退屈で退屈で仕方なかったです。末期癌を患うお祖母ちゃんのために内緒で家族が集まるという肝心の設定も、物語として活かされていたかというと特にそんなこともなく、最後までひたすら普通。おじさんおばさんがただ飲んで喋って笑って泣くだけです。そして、最後に明かされる衝撃のオチ。いやいや、ここまで引っ張っといてそれかい!!と、僕は不謹慎を承知の上で突っ込んじゃいました。こういう『100日後に〇ぬワニ』みたいな手法は勘弁してもらいたい。というわけで、自分には全く合わない作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2022-03-07 21:42:16)
543.  万引き家族 《ネタバレ》 
都会の片隅で誰にも気にされず、ひっそりと暮らすある五人の家族。収入源のほとんどない彼らの生活の糧は、万引きだった――。幼い息子を使い、今日もスーパーで生きるための必需品を手に入れた父親は、その帰り道、団地のベランダに一人佇む幼い女の子と出会う。明らかに腹をすかし、しかも全身傷だらけ、もはや泣くことも笑うことも忘れたような彼女をほっておけなくなった父は、思わずその子を家へと連れ帰って来るのだった。僅かな年金で暮らす祖母、クリーニング店で働く母親、怪しげな風俗まがいの店でバイトする長女。彼らは何の躊躇いもなく少女を迎え入れ、次の日にはすっかり家族として暮らし始める。何故ならこの家族には、とある〝秘密〟があったから――。社会の発展から取り残され、今にも零れ落ちそうになっている社会的弱者を終始淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。監督は、過去に観た『誰も知らない』という作品で、どうにも僕とは相性が悪いと感じた是枝佑和。カンヌでパルムドールを取ったということで今回鑑賞してみたのですが、やはり僕の好みとはどうにも合わない作品でしたね。とにかくもう最後まで辛気臭すぎ!!社会の片隅で声にならない声をあげている社会的弱者の思いに耳をすまそうというこの監督のスタンスは分かるのですけど、もう少しドラマティックな見せ方を心掛けてもいいのでは。ハリウッドの商業ベースの第一線で活躍する脚本家なら、例えばこの長男の大人になった後の回想形式で物語を見せるとか、例えばこの家族の秘密を探る人物を登場させてサスペンスを盛り上げるとかするんでしょうけど、この監督はそういうのははなから目指してないんでしょうね。印象的なシーンもたくさんあったし、もはや本物の家族以上に家族だった役者陣のナチュラルな演技も大変良かったとは思うのですけど、こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたい。以下、本当にどうでもいい余談。リリー・フランキー演じるお父さんと、良い感じで熟したお母さん役の女優とのラブシーンは妙に生々しくて大変グッドでした。
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-07 11:14:31)
544.  未来を花束にして 《ネタバレ》 
20世紀初頭、まだ女性には参政権すら与えられず、男に従って素直に言うことをきいていればいいという価値観がまかり通っていた時代。女性の権利拡大を叫んで、過激な行動に打って出た女性活動家たちの姿を実話を基に描いた社会派ドラマ。時には暴力も辞さない姿勢で男たちに立ち向かった女性たちを演じたのは、キャリー・マリガンやヘレナ・ボナム・カーター、そしてベテランのメリル・ストリープ。そんな新旧人気女優の共演はさすがに華があって大変良かったし、こんな不幸なことがあったのだという歴史的事実を知れたという点でも観て良かったとは思うのですが、いかんせん物語としていまいち面白くないように感じてしまいました。まず、主人公がこの活動にのめり込んでいく過程にそこまでの説得力が感じられないんですよね。仕事や家庭を失い、子供に会うことも出来なくなって、自らも投獄される危険を犯してまで、それでもこの活動を続けようという主人公に僕はどうしても感情移入できませんでした。何故、彼女は自分の人生を懸けてまで、女性たちの権利を主張し続けたのか。その極限の境地に至るまでのドラマをもっと見せるべきだったのではないでしょうか。あと、物語の細かいところに「?」な部分が多かったのもけっこう気になりました。事実を基にしたとは言え、もう少し脚本を練ってほしかった。あと、カメラが最後まで微妙にゆらゆら揺れていたのもちょっと見辛かったです。
[DVD(字幕)] 5点(2022-03-07 11:08:42)
545.  荒野にて 《ネタバレ》 
女癖の悪い父親とともに暮らす15歳の少年、チャーリー。何かとトラブルの絶えない父に愛想を尽かせた母親は、彼が赤ん坊の時に家を出たまま消息不明だった。学校にも通えないほど貧しい生活だったが、それでもチャーリーはそんな父との生活に満足していた。そんなある日、彼は地方競馬の競走馬を専門にする調教師デルと出会う。少しでも生活の足しにしようと、彼の元で働き始めたチャーリーは、デルの今の稼ぎ頭である若い馬ピートの世話を担当することに。そんな折、チャーリーの父親の浮気がばれ、激高した愛人の夫になんと父親が殺されてしまうのだった。天涯孤独となってしまったチャーリーは、馬のピートに深い愛情を注ぐようになる。だが、ピートは長いスランプから次第にレースで思うような結果を残せなくなってしまう。するとデルは、ピートをメキシコへと売り飛ばすと言い出すのだった。「ピートは僕の友達だ、それだけは絶対ダメだ!」――。そんな彼の意見などデルは到底聞こうとしない。どうしようもなくなったチャーリーは、ピートを連れ密かに荒野へと旅立つのだった……。家族をなくし孤独の中に生きていた少年とピークを過ぎた一頭の馬との逃避行を雄大な荒野の景色の中に描き出すロード・ムービー。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これが丁寧な演出の力が光る佳品に仕上がっておりました。少年と馬との友情物語という、これをディズニー辺りが撮れば心温まる安定のファミリー・ドラマになりそうなものだけど、本作は全く違います。ここで描かれるのは、圧倒的な貧困の現実。主人公がどれだけ不幸な境遇にいようが、誰も助けてくれたりなんかしません。せいぜい働き口を紹介する程度で、時には主人公のなけなしの金を毟り取る輩さえ出てくる始末。それは馬も同じで、「競争馬はペットじゃない。勝てなくなった馬は処分する」という厳しさが徹底しているのです。だから、主人公は行く先々で窃盗や無銭飲食を繰り返すしかありません。それでも希望を捨てず、一人と一頭とで荒野をゆく彼らの姿がとても切ない。風呂にも入れずどんどんと汚れてゆく主人公と対照的に雄大な大自然の映像はますます美しさを増してゆく。この監督の無常観に満ちた、その詩的センスの良さには唸らされます。ただ、惜しいのはピートが途中で呆気なく物語から退場してしまうこと。たとえどんな最期を迎えるにしても、ピートにはこの少年の旅路を終わりまで見届けて欲しかった。とはいえ、この少年がどん底に堕ちるぎりぎりのところでほんの少しの希望へと辿り着くラストには思わず涙してしまいました。いつまでも余韻に浸っていたいと思わせる青春ドラマの良品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2022-03-07 10:58:07)
546.  美しい絵の崩壊 《ネタバレ》 
そこは奇麗な碧い海が何処までも拡がる、風光明媚なオーストラリアのとある観光地。小さなころから共にこの地で育ったリルとロズは、お互いのことなら何でも知っている大の親友同士。結婚も出産も子育ても一緒に乗り越えてきた二人は、もはや夫以上に深く結びついている。そして、お互いの一人息子、イアンとトムも今やすっかり一人前の逞しい青年へと成長していた。そんなある日、彼女たちの関係に微妙な亀裂が入るのだった。なんとお互いの一人息子とほぼ同時期に肉体関係を持ってしまったのだ。「こんなこと、人としての倫理に背いている」――。許されざる事態に深く思い悩むリルとロズだったが、何度も身体を重ねるうちに彼女たちはいつしか深い愛情を芽生えさせてゆくのだった。それぞれの関係を認め合い、ずるずると深みに嵌まってゆく母親とその息子たち。微妙な均衡のうえに成り立っていた四人の関係は、二年後、新たな若い女性の登場で徐々に崩壊してゆく……。子供のころから知っている親友の一人息子との禁断の愛に溺れる二人の母親をじっとりと描いた愛憎劇。そんな許されざる愛に苦悩する母親役をそれぞれ演じるのは、実力派のベテラン女優ナオミ・ワッツとロビン・ライト。ノーベル文学賞を受賞した作家の小説を基にしたという本作、これがまぁなんともイヤーーーなお話でしたね。お互い親友同士の母親がこれまた親友同士のそれぞれの息子と一線を越えてしまうというだけでもイヤなのに、それがバレてしまうと今度はお互い公認で愛欲の海に溺れてゆくというのがまたなんとも不愉快……。母親と息子たちが、それぞれレズ&ゲイっぽいとこも不快指数を上げてきます。谷崎潤一郎の『卍』も真っ青な、なんというドロドロな四角関係(笑)。当然そんな関係がうまくゆくわけもなく、お互いの息子がそれぞれ若い娘に惹かれてゆくとこからは、今度は老いに怯える中年女性の嫉妬という新たな不快要素もぶち込んできます。さすがに後半は「もう分かったから勘弁してくれ!」って感じで観てました(笑)。まあここまで不愉快なお話を、美しい自然の風景と年を取ってもまだまだキレイな主演女優二人の魅力とで最後まで魅せきったところは素直に良かったと思うんですけどね。作品としてはそこまで悪くないんだろうけど、僕はもういいかな。ははは……。
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-02 11:02:52)
547.  ゴールデン・リバー 《ネタバレ》 
1851年、ゴールドラッシュに沸く西部開拓時代のオレゴン。各地を旅しながら刹那的に生きるシスターズ兄弟は、その類稀なる銃の腕で人々から恐れられた殺し屋コンビだ。冷静沈着で常に先を見据えた行動を取る兄イーライと自分の直感だけを頼りに時に暴走も辞さない弟チャーリーは、雇い主である地域の大物「提督」の命を受け、南へと旅を続けていた。目的は、ボスを裏切った男を見つけだし殺すこと――。先に出発し男を捜して旅を続ける偵察係モリスと合流するため、彼らは馬を走らせていた。だが、彼らがどんなに馬を急がせてもモリスに追いつくことは出来なかった。何故ならモリスはボスを裏切り、追っていた男とともに金脈を見つけ一山当てようともくろんだからだ。相次ぐトラブルに見舞われながらも、執念の追跡でモリスを見つけ出したシスターズ兄弟だったが……。西部開拓時代のアメリカ南部を舞台に、金脈に目がくらんだ男どものひりひりするような駆け引きを濃密に描いたクライム・サスペンス。冷酷無比な殺し屋兄弟を演じるのは、今ノリにのっている実力派のホアキン・フェニックスとジョン・C・ライリー。彼らに追われる裏切り者役には、こちらも人気者のジェイク・ギレンホール。何の予備知識もないまま、そんな豪華な共演陣に惹かれ今回鑑賞してみたのですが、これがなかなかよく出来た犯罪ドラマの良品で、西部劇がもともと得意ではない僕でも充分楽しんで観ることが出来ました。とにかくこの三人の主要キャラクターの人物像がよく描けている。酒と女に目がなく何度もそれで失敗しながらも懲りない弟、対照的に女には奥手で唯一思い出?のスカーフにフェティッシュな愛情を注ぐ無骨な兄貴、自分の人生に疑問を抱き理想のために逃亡を続ける密偵、それぞれの思いを抱えた彼らの追跡劇は丁寧な演出の力もあり最後まで惹き込まれます。物語の中盤、ひょんなことから手を組んだ彼らが文字通り〝黄金の河〟を求めて荒野を分け入ってゆくところから、物語はより一層悲愴感を増していく。ここら辺の各々の心理描写も鋭く、完成度は高い。苦難の旅の末、とうとう目的地に辿り着いた彼らは、欲に目がくらんだ弟の愚かな行動により破滅への道を辿ることに。人間の愚かさを冷徹に見つめたそのアイロニカルな視点は鋭い。金に翻弄された男どもの狂気に満ちた犯罪劇、なかなか見応えのある秀作でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2022-03-02 10:48:30)
548.  ある少年の告白 《ネタバレ》 
その施設の名は、「愛の導き」。アメリカ南部の自然豊かな郊外にあるその建物には幾つもの厳しいルールが決められていた。入所した本人しか施設内には入れず、外部との接触は一切禁止、当然のように携帯も没収される。さらには中のデータも逐一チェックされ、毎日登録された電話番号の中から無作為に電話されやましい関係はないかまで確認されるのだった。喫煙・飲酒・ドラッグも一切禁止、休憩時間も指定された場所に居ることを強要され、そればかりかトイレもスタッフの監視下でしか使用できない。ポルノの閲覧も禁止、自慰行為などもってのほか。入所者たちは誰であれ軽い握手以外、互いの身体に一切触れてはならない。何故ならここは、神によって禁じられた同性愛を矯正する目的で創られた施設だから――。本作は、そんな施設へと入所することになったある少年の葛藤の日々を、実話を基に描いた作品。敬虔な牧師としての立場からやむなく息子を施設へと送り込む父親役には人気俳優ラッセル・クロウ、息子を愛していながらも世間体を気にしてそんな施設への入所を容認する母親役に同じく人気者のニコール・キッドマン、同性愛を絶対悪とみなす横柄な施設長役には本作の監督でもある才人ジョエル・エドガートン。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、この施設のなんとも非人間的な内情には、見れば見るほど反吐が出そうになりますね。このような前近代的な施設が実際に存在し、しかもいまだ全米に何か所も存続しているというのだから驚くほかありません。入所者たちを前に、神が与えたもうた男らしさ・女らしさを滔々と説く施設長のそのいびつな論調にはもはや戦慄させられてしまいます。このような非人間的で差別的な施設の実態を世間に告発するという点では、作品として成功していると言えるでしょう。ただ、物語の面白さという部分では正直物足りない。事実を基にしたから仕方ない面もあるのでしょうけど、もう少しドラマティックな見せ方も考えて欲しかった。同性愛者の息子と、同性愛を糾弾する立場の敬虔な牧師である父親との関係性も終始淡々としていてもう少し掘り下げてくれても良かったのでは。自分の信念と積み重ねてきた家族の日々、そして持って生まれた個性とのぶつかり合いの果てに辿りついたであろうこの親子の結論を、僕はもっと見たかった。
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-02 10:33:35)
549.  アス 《ネタバレ》 
その日、アデレードは憂鬱な気分で車に揺られていた。夫と二人の子供たちとともに久々に家族水入らずで過ごすバカンスなのに、彼女の気分は一向に晴れることはなかった。何故なら訪れたリゾート地が、サンタクルーズだったから――。彼女は子供のころに、この地でとても恐ろしい経験をしたことを未だに覚えていたからだ。人気のないお化け屋敷の中で、なんと彼女は、自分と瓜二つの姿をした少女に出会ってしまったのだ。しばらく言葉も発せられなくなるほど、そのことがトラウマとなったアデレード。今すぐにでも家に帰りたかったが、夫も子供たちも楽しんでおり、とても言い出せるような雰囲気ではなかった。そして迎えた最初の夜、アデレードの予感は的中することに。いつの間にか立っていた、別荘の外の四人の人影。夫婦とその二人の子供と思しき家族たち。夫の警告も空しく、無言で近づいてくるその影。家の明かりの中で彼らの姿を見たアデレードは再び恐怖のどん底に突き落とされる。なんとそこに居たのは、自分たち家族とそっくり同じ姿をした者どもだったのだ。果たしてこいつらは何者なのか?恐怖と謎に満ちた壮絶な一夜が今、幕をあける……。前作『ゲットアウト』でアカデミー賞の栄誉に輝いたジョーダン・ピール監督の最新作は、そんなミステリアスな雰囲気が濃厚に漂うモダンホラーでした。前作同様、不穏な音楽と充分に間を取った禍々しいホラー描写とで、なんともいや~~~な感じのホラーに仕上がってましたね、これ。もう人の神経を逆撫でするような嫌なエピソードのてんこ盛り。この家族のいわゆるドッペルゲンガーたちが手を繋いでただ突っ立っているという登場シーンから、もう嫌なことしか起こらないことは目に見えていますし。ただ、全編に渡ってここまでたっぷり間を取っちゃうと、必然的にお話の方が単純になっちゃうのは至極当然。前作ではそのシンプルさが巧くいっていてなかなか完成度の高い秀作となっていたのだけど、本作ではどうなんでしょうね。途中まではこの謎が謎を呼ぶミステリアスなお話にぐいぐい引き込まれて観ていたんですけど、ことの真相が明らかにされた辺りでさすがに僕は冷めちゃいましたわ。いや、この真相はさすがに無理があり過ぎるっしょ(笑)。ダメ押しするようなあの大オチに至っては、あまりに無理やりすぎて思わず苦笑しちゃいました。この全編を覆う禍々しい世界観は嫌いじゃなかっただけに、残念!
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-02 10:08:42)
550.  マザーレス・ブルックリン 《ネタバレ》 
1950年代、ニューヨーク。生まれつき自分の意志に反して突然大きな声をあげたり痙攣的な発作を起こしてしまうという障碍――いわゆるチック症を患う私立探偵ライオネルは、幼いころ両親に捨てられ孤児院で育った天涯孤独の身。現在彼は、そんな自分を引き取ってくれた育ての親でもある探偵事務所のボス、フランクの下で働いている。障碍を抱えながらも類稀なる記憶力を持つライオネルは、今やフランクの右腕と言ってもいい立場に立っていた。そんなある日、謎の女を巡る胡散臭い事案に首を突っ込んでいたフランクが、無残な死体となって発見されるのだった。突然のことに、深い哀しみに沈むライオネル。フランクの無念を晴らすため、彼が最後に追っていたという謎の女を求めてライオネルは捜査を開始する。浮かび上がってきたのは、ブルックリンの都市開発利権を巡る権力者たちの深い闇だった。果たしてフランクを殺したのは誰なのか?そして彼は生前何をしようとしていたのか?人並外れた記憶力のみを頼りに、ライオネルは事件の真相へと迫ってゆくのだが……。名優エドワード・ノートンが監督・脚本・主演を務めたという本作、ブルース・ウィリスやウィレム・デフォー、アレック・ボールドウィンといった渋めどころの豪華俳優陣にも惹かれて、この度鑑賞してみました。夜の街の匂いを濃厚に漂わせるこのノワールな雰囲気やジャジーで退廃的な音楽などは見応え充分。特に、チック症を患う私立探偵という難しい役どころを見事に演じ切ったエドワード・ノートンの圧倒的な演技力はさすがの貫禄でした。ただ、肝心のお話の方は正直どうなんでしょう。様々な要素を詰め込み過ぎていて、いまいち整理しきれていないような印象を僕は持ってしまいました。登場人物も多く、しかも相関関係がかなり複雑なので、最後までなんとも分かりにくいのです。原作は有名な賞に輝いたベストセラーらしいですけど、その取捨選択がいまいち巧く出来ていないような感じです。E・ノートンのこういう難役に挑んでみたいという思いが先行するあまり、脚本がおろそかになっちゃったパターンじゃないですかね。これなら脚本や監督は別のプロに頼んだ方が良かったのでは。エドワード・ノートン、昔から好きな俳優さんなだけになんとも勿体ない。
[DVD(字幕)] 5点(2022-03-02 09:57:15)
551.  若い女 《ネタバレ》 
今年で31歳になるポーラは、無職、宿無し、無一文という典型的な負け組アラサー女子。10年も付き合った彼氏に呆気なくフラれた彼女は、腹いせに彼が飼っていた猫を手にすると何の当てもなく街へと飛び出すのだった。友達の家を泊まり歩きながら何とか食いつなぐポーラ。ベビーシッターや下着ショップの店員などの職に就くものの、持って生まれたトラブルメイカーっぷりが災いして彼女は常に崖っぷちへと追い込まれる。そんな折、自分が妊娠していることが発覚して……。果たしてポーラの人生に明日の光は差すのか――。何もかもがうまくいかないそんなアラサー女子の生態をスピード感あふれる展開で魅せるコメディタッチのヒューマン・ドラマ。まあやりたいことは分かるし、幾つもの賞を受賞したというそのポップでキレのいい演出は大変良かったとは思うのですが、個人的にそこまで嵌まらなかったですね、これ。同じく僕が苦手とするノア・バームバックの出世作『フランシス・ハ』のフランス・パリ版みたいな印象です。一つ一つのエピソードはトホホ感満載で、そんな彼女を平然と見つめる猫のセレブ感なんて皮肉が効いててサイコーだったんですけどね。要はこのアラサー女子あるあるに、僕が男だからかいまいちのれなかったのが要因かな。結論としては、ま、ボチボチってとこでした。
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-02 09:49:12)
552.  ウィッチサマー 《ネタバレ》 
老木の根っこから生まれ、目についた家族の母親に成りすましては子供をさらって喰らうという恐ろしい魔女の恐怖を描いたオカルト・ホラー。何の予備知識もないまま、全米ナンバー1大ヒットという宣伝文句に惹かれ、今回鑑賞してみました。なのですが、これがもう看板倒れもいいところの恐ろしくつまらない作品でした。とにかく脚本が穴だらけ。こんな単純なお話なのに、見せ方が下手なのか最後までいまいちお話が掴みにくい!主人公が最初から骨折している理由もよく分かりませんし、途中から変な青春学園ドラマみたいになるのも違和感ありまくり。極めつけは、驚愕のどんでん返しという感じで明かされる最後のオチ。思いっ切りネタバレすると、主人公はすでに魔女に記憶を消されてて、実は本人も忘れてしまっていた弟がいたらしいんです(たぶん)。でも、伏線もへったくれもあったもんじゃないし、余りにも強引過ぎて「んなアホなー!!」と思わず突っ込んじゃいましたわ。肝心の魔女のホラー描写も画面が終始暗くて見辛いから全く怖くないし……。こんなレベルの低いB級映画がなぜに全米ナンバー1大ヒット?!と、思わずネットで調べてみたら、ちょうどこの映画が公開されたときはコロナ禍真っ最中で軒並み大作映画の公開が延期されて、唯一ドライブインシアターで細々と上映していた本作がうっかり全米ナンバー1になっちゃったというのが真相らしいですね。なんてラッキーな映画なんだ……(笑)。
[DVD(字幕)] 4点(2022-03-01 01:29:10)
553.  ぼくを探しに 《ネタバレ》 
2歳のころに両親を目の前で亡くし、以来口が利けなくなってしまったピアニスト、ポール。彼が、隣人の怪しげなマダムの作る薬物入りのハーブティーによって、記憶の中に眠る母親の思い出へと徐々にのめり込んでゆく姿を、時にハートウォーミングに時に毒気たっぷりに描いたファンタジック・ファミリーストーリー。舞台がフランスということもあり、全体的な雰囲気は僕のこよなく愛するジャン・ピエール・ジュネの名作『アメリ』っぽくて、この独創的な世界観はけっこう嫌いじゃなかったです。主人公がトリップする記憶世界もポップ&キュートで大変グッド。主人公が記憶の中の迷宮へと入り込む手段がマドレーヌとお紅茶というとこもプルーストの『失われた時を求めて』を絶妙に茶化しててなかなか楽しい。ただ、その魅力的な世界観に対してお話の方は正直微妙。ストーリーが単純すぎる上に、ところどころ説明不足な部分もあっていまいち面白くないんですよね、これ。最後過去のトラウマに打ち勝ってピアノ・コンクールに優勝できたのに、その直後には指を怪我して断念。その後は何故かウクレレ奏者になって、紆余曲折の末に中国人女性と結婚し子供も生まれる……。なんかストーリーが行き当たりばったりすぎて、後半どうでもよくなっちゃいました。あと、主人公がトリップするサイケデリック描写が若干少なめなのもちょっと物足りなかったです。とはいえエスプリの効いた、この独特の世界観は個性的でそこらへんは充分楽しめました。特にカエルの着ぐるみ楽団のキモ可愛いとこなんて、めっちゃツボ!それだけに内容の方をもうちょっと頑張ってほしかったな~。うーん、6点!
[DVD(字幕)] 6点(2022-02-28 10:18:30)
554.  プライベート・ウォー 《ネタバレ》 
2012年、内戦が激化していた当時のシリアに潜入し、戦場のリアルな実態を報道し続けた記者メリー・コルヴィンが亡くなった。近くで爆発した砲弾に巻き込まれ、彼女はその決して長くはない人生を終えることになった。若き日に報道記者となり、スリランカの内戦取材中には銃撃を受け片目を失うという悲劇に見舞われながらも何故、彼女は戦場に行くことを止めなかったのか――。本作は、そんな彼女の波乱に満ちた生涯を冷徹に見つめた伝記映画だ。戦場の生々しい実態に心を蝕まれ、後にアルコール依存症とまでなった彼女を演じるのは、『ゴーン・ガール』での悪女役が記憶に新しいロザムンド・パイク。このメリー・コルヴィンという人をほとんど知らないまま今回鑑賞してみたのだが、これがなかなか丁寧な演出の力が光る秀作に仕上がっていた。世界の紛争地へと突撃取材を続ける彼女とその合間に都会へと帰ってきて束の間の休息をとる彼女の姿を交互に描くという本作の構成、これが巧く効いている。戦場で明日の命もままならないような生活を余儀なくされている子供たちと向き合っていた自分が、自宅へ帰ってくると裕福な友達に囲まれ何不自由ないセレブ生活を送る。いったいこの不条理の原因とは何なのか。そして自分はそんな子供たちを金儲けの道具にしているだけなのではないのか。そんな残酷な問いを突き付けられた彼女が、徐々にアルコールへと溺れてゆくのも当然だろう。彼女の人生を迫真の演技で再現したロザムンド・パイクもいい仕事をしている。この人、こういった何処か偏屈な人間を演じるのが相当巧い。最後、彼女は自らの身を顧みずに戦場へと残り、そしてその短い生涯を閉じる。何故なら、この現実から決して目を背けてはならないという確固とした信念があったから。観終わって、僕は同じくシリアで命を落とした日本人ジャーナリスト、山本美香さんのドキュメンタリーを見て非常に感銘を受けたことを思い出してしまった。時に批判されることもあるだろうが、それでも彼女たちのような職業も社会にとって絶対に必要なのだ。何故ならその地に行かなければ決して分からない真実がそこにあるのだから。メリー・コルヴィンという人の生涯を再現することに注力するあまり、若干テーマに対する踏み込みが甘くなったような気もするが、それでも充分見応えのある伝記ドラマの秀作であった。
[DVD(字幕)] 7点(2022-02-28 10:16:54)
555.  誰もがそれを知っている 《ネタバレ》 
美しい田園風景が何処までも拡がる風光明媚なスペインの田舎町。親戚の結婚式に出席するため、二人の子供たちとともに久しぶりに故郷であるこの地へと帰ってきたラウラ。アルゼンチンで事業をしている夫は急用のため出席することは出来なくなったものの、ラウラは久しぶりに会う家族たちとの再会を楽しんでいた。中には、若いころに情熱的な恋に落ちたかつての恋人パコの姿もあった。そうして始まった結婚式当日。式はつつがなく終わり、皆はそのまま二次会へと雪崩れ込んでいた。だいぶ酒が廻って、盛大に盛り上がる宴席。ところがその夜、ラウラは予期せぬ事態に見舞われることになる――。15歳になったばかりの長女イレーネが何者かに誘拐され、莫大な身代金を要求するメールが携帯に届けられたのだ。突然のことにパニックへと陥るラウラ。元恋人パコの力を借りて、彼女は娘の行方を決死の思いで捜しはじめる。だが、閉鎖的な田舎町では様々な噂や憶測が飛び交い、事態はどんどんと混迷を深めてゆくのだった。果たして娘を誘拐したのは誰なのか?そんな折、ラウラが今までひた隠しにしてきた過去の秘密が明らかになり……。ある誘拐事件をきっかけに炙りだされる、とある家族の秘密を濃厚に描いたミステリー。監督は、前作でアカデミー賞の栄誉に輝くイランの俊英アスガー・ファルハディ。主演を務めるのは実生活でも夫婦である人気俳優ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム。僕とはどうも相性のよくない監督の最新作だったのですが、この二人の共演に惹かれて今回鑑賞してみました。確かに、考え抜かれた緻密な脚本や謎が謎を呼ぶミステリアスな雰囲気、役者陣の熱のこもった演技等によって非常に完成度の高い作品に仕上がっていたことは僕も認めます。最後まで観客をぐいぐい惹き込むこの演出力の高さは相当なもの。でも、やっぱりこの監督の作風は個人的に苦手でした。この人って、とにかく登場人物同士をひたすら罵り合わせるのが好きなんですよね~。どんどんと深まる疑心暗鬼から、もう全編に渡って激しい痛罵の応酬。どんなけ喧嘩したら気が済むねん、この家族(笑)。そう言ったわけで僕は今回もやっぱり嵌まれませんでした。こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-02-28 09:34:31)
556.  モーガン夫人の秘密 《ネタバレ》 
1945年、まだ戦争の傷跡が色濃く残るドイツ、ハンブルク。戦後処理のためにこの地へとやって来たイギリス人将校モーガン大佐の妻レイチェルは、現地で接収した民間人の館で暮らすことに。館の持ち主は、戦前ナチスに協力した疑いが持たれている建築家のルパート。かつてナチスの空爆により、幼い息子を亡くしてしまった過去を持つレイチェルは、当然、ルパートを追い出すよう夫に頼むのだった。だが、彼もまた妻を連合軍の空爆で亡くし、しかも幼い娘も抱えているということで、モーガン大佐は彼らと一緒に住むことを決断する。広い屋敷の中でお互いの居住区を決め、極力互いに干渉しあわない生活を心掛けるレイチェルとルパート。子供を亡くした女と妻を亡くした男――。最初は反発しあっていた二人だったが、互いに大切な人を亡くしたことを知った時、彼らはいつしか惹かれ合い、そして越えてはならない一線を越えてしまう……。終戦直後の混乱したドイツを舞台に、許されざる恋に身を焦がす男女を描いた大人のラブ・ストーリー。そんな二人の男性の間で揺れ動く人妻を演じるのは、人気女優キーラ・ナイトレイ。まあ一言で言ってしまうと、いわゆる不倫映画なのですが、正直イマイチな出来でしたね、これ。こういう不倫映画にとってもっとも重要な要素って、「ここでもし私が一線を越えてしまうと後々大変なことになる。でも私、自分の気持ちに正直でいたい……」という、多くの男女が思わず感情移入してしまうであろう背徳感にあると僕は思うのです。対して本作、肝心のこの人妻と男やもめのドイツ人が一線を越えてしまう描写が圧倒的に弱い!だってこれじゃ、夫に寸止めされたこの妻が火照った身体の疼きをどうにも我慢できなくなって思わずしちゃいましたくらいしか理由になってませんもの。せっかくお互い大切な人を亡くした男女というお膳立てが揃っていて、しかも映画の半分近くを費やしていながらのこの体たらく。この監督って実は恋愛経験に乏しい人なんじゃないかしら?そして最後はご都合主義全開、結局誰も傷つかないような甘っちょろいラストに僕は思わず苦笑しちゃいましたわ。うーん、なんとも残念な不倫映画でございました。
[DVD(字幕)] 4点(2022-02-28 09:24:24)
557.  オフィシャル・シークレット 《ネタバレ》 
2003年、イラク戦争開戦前夜のイギリス。政府の諜報機関で北京語の専門家として働くキャサリン・ガンは、そんなきな臭い空気に違和感を覚えながらも黙々と働いていた。そんなある日、彼女はアメリカの同じく諜報機関からあるメールを受ける。それは、イラク攻撃の正当な根拠となる国連決議をえるために、小国の代表団を盗聴せよというものだった。しかも場合によっては脅してでも票を獲得せよとも読める内容に、キャサリンは激しく動揺する。「政府は国民を騙してでも戦争をしたがっている」――。深い憤りを感じた彼女は、密かにメールを持ち出し、それをマスコミへと流出させるのだった。だが、それが記事となって世に出ると、キャサリンの想像を超えるような政府による圧力が重くのしかかることに。連日の厳しい聞き込み調査に同僚の解雇をもちらつかせる嫌がらせ……。我慢できなくなった彼女は思わず自分が犯人だと名乗り出るのだったが、国家権力の横暴は予想を遥かに超えるものだった。イラク戦争の裏に隠された不当な国家機密を巡り、人生を翻弄される平凡な女性の運命を描いたポリティカル・サスペンス。人気女優キーラ・ナイトレイがそんな国家権力と戦う女性を熱演しているということで今回鑑賞してみました。監督は、大国の思惑によって振り回される第三世界の真実を常に弱者の視点から見つめるギャビン・フッド。この監督の前作でも見せた、綿密な取材に基づくであろうリアルな演出は今回も健在。こういう権謀術数渦巻く政治劇って、普通は政権中枢の政治家たちを大きくクローズアップするもの。でも、本作では政府機関で働いているもののあくまで何処にでもいる平凡な女性であるこの主人公の目線からのみ描いている。おかげで、ちょっとした正義感から起こした行動のはずなのに、それが原因で人生を破滅させかねない事態に陥る恐怖がひしひしと感じられました。己が利益のためには、無力な一市民など簡単に踏み潰してしまう国家権力の横暴に改めて空恐ろしさを覚えます。また、リークされた情報をすっぱ抜いた新聞社内のドラマも良く描けている。特にメールを勝手に校正して窮地に陥ってしまう女性事務員のエピソードは何とも切ないですね。そして、最後の裁判の結果。こんな不毛な戦争で命を落とした多くのイラク国民やアメリカ兵たちのことを思うと、決して手放しでは喜べない。国家権力がいかに自らの都合のいいように情報を操作しているかがよく分かる、良質の政治サスペンスでした。
[DVD(字幕)] 7点(2022-02-24 07:50:43)
558.  ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏 《ネタバレ》 
ここは、帝国の端っこに位置する小さな辺境の町。心優しい民政官の元、人々は貧しいながらもずっと平和に暮らしてきた。ここからそう遠くない場所にある未開の地には昔から遊牧民が住み、たまに住民との小競り合いも起きるが、それでもこの静かな生活はずっと続くと信じていた。そんなある日、帝国の中央政府からジョル大佐という名の警察官僚が派遣されてくる。大佐は唐突に、「蛮族が帝国の領土を狙って攻めてくるという噂がある」と民政官に告げるのだった――。その日から、誇り高き遊牧民たちを蛮族と決めつけるジョル大佐の厳しい弾圧の日々が始まる。次々と捕らえられては激しい拷問と容赦ない尋問を受ける遊牧民たち。それまで平和だった辺境の町は、瞬く間に血生臭い空気に支配されることに。単なる一公務員に過ぎない民政官は、帝国の強大な権力を後ろ盾にする大佐に逆らうことも出来ず、なすすべもなく見守ることしか出来なかった。そんな折、彼は捕らえられた遊牧民の中に両親を殺された挙句自らも両足首を折られ、さらには両目を潰された少女を見つける。あまりの不憫さに彼女を引き取ることを決意した民政官だったが……。ノーベル賞作家の著した小説を基に、そんな辺境の小さな町で繰り広げられる憎しみと暴力の連鎖を寓話的に描いたヒューマン・ドラマ。最近スランプ気味のジョニー・デップが冷酷無比な軍幹部を演じ新境地を拓いたということで今回鑑賞してみました。まあ彼の演技がいいかどうかはさておき、これがウィリー・ウォンカやキャプテン・ジャック・スパロウと同一人物とは到底思えないほど、全く違うイメージを作り出しているのは事実。ここはさすがカメレオン俳優と言った感じですね。変なサングラスをずっと掛けてるとこは相変わらずでしたけど(笑)。お話の方は、極端なまでに無駄を削ぎ落した寓話的ないわゆる不条理劇。それまで何も問題なかった平和な町の中で、権力がいかに敵を作り不毛な争いを生み出すかがよく分かる。結局国家が権力を維持するためには、共通の敵を作り出して国民の不満を外へと向けさせるのが一番手っ取り早いということですね。それが絵本のような分かりやすい物語の中に結実しておりました。また、主人公となる民政官も絶対的な正義というわけではなく、彼も人間的な弱さを抱えている小市民というのもなかなか深い。きっとこのようなことは今も世界中で繰り返されているのでしょう。ただ、後半から幾分か腰砕けちゃったのか、物語の結論がかなり尻切れトンボに終わってしまったのが残念でした。もっとこのテーマを深く掘り下げてほしかったところ。殺伐とした世界観や脚本は悪くなかっただけに、何とも惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-02-24 07:45:45)
559.  モンタナの目撃者 《ネタバレ》 
山岳地帯で発生した火事を担当するベテラン消防隊員、ハンナ。だが、彼女は最近発生した山火事の消火活動中、風の方向を見誤り、目の前で幼い少年たちを死なせてしまうのだった。過失はなかったとされたものの、それでもハンナは事件の生々しい記憶に苦しめられていた。忌まわしき出来事から逃れるかのように、森の監視塔で業務に没頭するハンナはある日、森の中を彷徨うある少年を発見する。全身が泥で覆われ服には血の跡が生々しく残り、何かから逃れるようにひたすら森の中へと向かう少年。明らかな異常事態にハンナは持ち場を離れ彼の後を追うのだった――。少年を無事保護したハンナは、とにかく彼から事情を聴いてみる。すると、彼の口から驚きの事実を聞かされるのだった。なんと、公認会計士だった彼の父親は、大物政治家や大企業が絡む大規模な不正を追及していたのがばれ、暗殺者に殺されてしまったというのだ。警察も誰も信用できない。父が託したという不正の事実を記したメモを手にテレビ局へと向かう少年をとてもほっておくことが出来ず、ハンナは独自に彼と行動を共にする。だが、そんな二人を執拗に追う暗殺者は彼らを追い詰めるため山へと火を放つのだった……。人気女優アンジェリーナ・ジョリーがそんなトラウマに苦しむ消防隊員を熱演しているということで今回鑑賞してみました。監督は、社会に潜む闇を背景にした硬派なサスペンスを幾つも手掛けてきたテイラー・シェリダン。孤立無援となった消防隊員と無力な少年、そんな彼らを追い詰める殺し屋たちの冷酷っぷりが凄まじく、ただ顔を見られただけの通行人を無慈悲にも殺すばかりか、なんと捜査の手を遅らせるためだけに山へと火を放つのです。なんという地球環境に優しくない奴ら(笑)。そんな彼らといかにも熱そうな山火事の炎にダブルで追い詰められる主人公たちの逃避行は、常にハラハラドキドキの連続で目が離せません。特に、燃え盛る炎がすぐそこまで迫ってくるシーンは、こちらも思わず汗ばんでしまいそうなほどリアルでした。ただ、惜しいのは脚本に突っ込みどころが多い点。特に目につくのは、主人公を追い詰める殺し屋たちがあまりにも無計画すぎるところでしょう。遠く離れた地に住む標的を順番に殺そうという冒頭のシーンからしてまず不自然。依頼主が予算をケチったからだと言い訳がましく言ってましたが、何とも腑に落ちない。極めつけは、監視塔の上にいる少年たちを確認させるために、人質だけで昇らせるシーン。自分らは地面で見てるだけって、そりゃ逃げられて当然ですわ。と、そこら辺をもう少し考えてほしかった。これまで完成度の高い脚本を幾つも手掛けてきた監督だけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-02-24 04:59:33)(良:1票)
560.  リトル・シングス 《ネタバレ》 
とある事件がきっかけで地方の保安官へと左遷された、かつての優秀な殺人課刑事ディーコン。正義感に燃えていたあのころの情熱などもはや涸れはて、今やその日を平穏にやり過ごすことだけを目的に生きていた。そんなある日、彼は上司からロサンゼルスまでの出張を頼まれる。すぐに終わる簡単な仕事のはずだった。だが、彼はそこで最近起こっている凶悪な連続殺人事件を捜査する若手刑事バクスターに声を掛けられる。懸命に捜査するものの犯人逮捕の糸口すら見出せないバクスターは、経験豊富な彼の意見を聞きたいというのだ。当初はしぶしぶ協力していたディーコンだったが、事件の概要を知るうちに過去に彼が追っていた未解決殺人事件との繋がりが明らかとなり……。若い女をさらっては拷問の末に殺害するという猟奇的な連続殺人事件の犯人を巡って、それぞれに追い詰められてゆく捜査員たちの苦悩を描いたサスペンススリラー。ベテラン俳優デンゼル・ワシントンと『ボヘミアン・ラプソディー』での熱演が記憶に新しいラミ・マレック、そして様々な作品で名バイプレイヤーとして活躍するジャレッド・レト。この三人のオスカー俳優が豪華共演ということで今回鑑賞してみました。しかも監督は、実話を基にしたお話で幾つもの佳品を手掛けてきたジョン・リー・ハンコック。これはもう観ないわけにはいきますまい。結果は……、ちょっと期待が高すぎたのか、正直イマイチな出来でしたね、これ。この監督らしからぬ、全体的な演出がちょっと雑な印象を受けてしまいました。まず、肝心の連続殺人事件の全体像が何とも掴みにくい。犯人が何処で誰を捕まえ、そしてどのように殺したのかが最後まで観てもよく分からない。なので犯人を懸命に追う主人公たちにいまいち感情移入できないんですよね。さらにはデンゼル・ワシントン演じる主人公の地方に左遷されるきっかけになった過去の出来事も最後までよく分からないまま終わっちゃいました。殺人事件の真相もすべて明らかにされず、心にモヤモヤしたものが残るという爽快感ゼロなラストも肩透かし感が半端ないですし。この重苦しいダークな世界観は凄く良かっただけに、この細部の演出の詰めの甘さが何とも残念。この監督ってやはり、実話を基にした映画じゃないとその実力を発揮できないんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 4点(2022-02-24 04:47:16)(良:1票)
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