541. ある過去の行方
《ネタバレ》 見ているうちにイラン映画の傑作『別離』とどこかテイストが似ていると感じていたが、同じファルハディ監督だった。道理で似ているわけだ。気持ちのすれ違いや繊細で微妙な心情を描くのがとても巧い。誰もが悪くないようで、誰もが悪いようなリアルな人間像が迫る。見る人によって登場人物への印象が分かれそう。個人的にはマリーが一番嫌い。男に安らぎを与えられない女。ヒステリックで自己主張が強くてイラッとくる。アーマドが家を出たのも、きっとそういうところも原因の一つになったのではないだろうか。 サミールの妻が自殺を図った原因を巡って、リュシーやナイマの隠し事が明らかになっていく過程は一級のミステリーのよう。マリーとサミールが再婚を前にしながらお互い前パートナーに未練が残っている心情の露見もサスペンスに彩りを加えていた。 結局、真相は完全には明らかにされず、うやむやな部分は残る。ラストも植物状態の妻の手が動いたのかどうかハッキリとは描かない。例の「観客のご想像にお任せします」というやつか。こういうところはズルいと感じて好きになれない。『別離』も観客に委ねるラストだったが、答えは自分の中でハッキリ浮かんだのでスッキリした。でも、本作はスッキリとはせず、ちょっと拍子抜け。 ただ、この監督はただものではなく、次回作が楽しみになった。人間をこれだけ描ける監督はなかなかいない。二度三度と観るたびに味が出る。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-09 00:52:36) |
542. ロボコップ(2014)
オリジナルはチープなB級感が漂っていたが、リメイク版は最新CGを駆使して随分スタイリッシュになった。だからといって面白くなったとは言いきれないのが映画の面白いところ。ドラマ的に整理され補強された要素もあるけど、独特の味はなくなった。どっちが忘れずに記憶に残るかといえば、シンプルで勢いのあったオリジナルの方のような。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2015-06-07 23:30:11)(良:1票) |
543. キャリー(2013)
《ネタバレ》 キャリー役にクロエ・グレース・モレッツは明らかなミスキャスト。普通にかわいくて、怖さや不気味さがまったく感じられない。シシー・スペイセクにはイジメられる雰囲気があったけど、クロエにはそれがない。たぶん普通の女の子というのを意図的に強調したかったのだと思うが、もうぶち壊し。 また、一人で念動力を試してみるシーンも余計で、演出面でもオリジナルよりつまらなくなっている。イジメ方も現代版ぽくネットに動画を上げる方法にアレンジしているが、いくらバカでも先生から怒られた後だと撮影者がすぐ特定されるくらいわかりそうなもの。キャリーの念動も、オリジナルは目だけで迫真の演技をしていたが、リメイクは手のフリを使ってマンガチックになってしまった。良くしてくれた先生を殺さなかったことも、キャリーの狂気を半減させた。変わった部分がことごとく改悪に見えて、残念ながらデ・パルマ監督との力量の違いが残酷なほど歴然と感じられる。 B級テイストもあったオリジナルより、CGなど映像技術は格段に進歩しているはずだけど、だからといって面白くなるものでもない。『ロボコップ』のリメイクでも感じたが、最新技術を駆使したリメイク版よりも、B級感の残るオリジナルのほうが印象に残る。監督ほかスタッフ次第で、制作条件が劣っていても面白いものが作れるということだろう。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2015-06-07 23:28:02) |
544. アウトロー -哀しき復讐-
《ネタバレ》 外国人二人が互いに殺したのは相手のほうだと主張して、それで証拠不十分になるというのが腑に落ちない。殺したのはこの二人のどちらかしかいない状況で犯行現場で押さえられているのに、こうしたことはありえるのか? ところが、これは実際に韓国で起きた事件を参考にしているようだ。 梨泰院(イテウォン)ハンバーガー店殺人事件が似たような経緯で、容疑者の外国人が放免になっている。 韓国映画のシリアルキラーやサイコパスは、実に不気味で唾棄するほどに憎々しい。そうした奴らを叩きのめして復讐を果たすことは、カタルシスを感じさせる。けれど、それが元刑事というのが釈然としない。広場での爆弾テロのようなマネや、元同僚の婦人警察官に射殺を強いるなど、元刑事にしてはやり方が酷すぎる。 牛乳配達員が殺されたのも余計な演出。妻が殺されたのかと思わせて観客を驚かせるつもりだろうけど、こんな演出はあざとすぎてシラケるだけ。その妻も、凶悪グループに監禁レイプされて、挙句の果ては通り魔的に子供もろとも惨殺されるとは、不運が重なるにも程がある。冒頭の凶悪グループがお礼参りに惨殺したのなら関連性があってまだわかるのだけど、まったく別の事件となると確率的にもあまりに嘘っぽい。扇情的に描くあまり、荒唐無稽になってしまった印象。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-06-06 21:51:42) |
545. リトルファイター 少女たちの光と影
《ネタバレ》 年端のいかない少女が、賭博の対象となるムエタイのリングに上がって戦う。まるで闘犬を見せられる思いだけど、これが土佐犬ではなく、マルチーズのようなので始末が悪い。よくこんなことを見世物や賭け事にする気が起こるものだと、その悪趣味にちょっと引いてしまう。少女たちはあくまでも健気であどけなく、それが逆に異常さを浮き彫りにする。 親の生活を少しでも助けたいと、一家を背負って懸命に殴りあう。22キロ級という信じられないような軽い階級で、骨折や怪我もザラにあるという。娘の稼ぎで生活し、家も建てる親に対して嫌悪感。日本でも娘をジュニアアイドルとして際どい水着を着せる親がいるが、その姿とも重なる。 インタビューに対し、「結局は娘のしたいようにさせる」と語る親にまた腹が立つ。けっして強要しているわけではないことをアピールしているが、こんな小さな子供が自分の意思で殴り合いを好んでするはずがない。子供は強要されているとは思っていない。親の思いを知っているから、なんとかそれに応えよう、生活を助けようとしているだけ。そうせざるをえないように親が仕向けているとも言えるわけで、巧妙に強要しているのと変わりはない。 クラムとペットの二人の少女に焦点が当てられるが、ペットのほうは心臓病を抱えて二年前には手術もしている。格闘技のような激しい運動はご法度のはずだが、ムエタイで強く健康になって心臓病を克服するという都合のいい論理を語る親にも呆れる。 クラムとペットのチャンピオン戦は、明暗くっきりで残酷なほど。チャンピオンになったクラムは、そのお金で家が完成。一方、負けたペットは、ドサ回りのような酒場のショームエタイのリングにも上がるように。体調不良で臨んだその試合後に、泣きじゃくるペットが印象的。殴られて泣いたのでも負けて泣いたのでもない。親に「置いて帰るよ」と言われて堰を切ったように泣きじゃくったのだ。親は冗談なのにと笑ってごまかしていたが、見捨てられまいと必死の子供に対して、大人のあまりの無神経さに怒りが込み上げる。 ただ、決して豊かではないタイの実情を考えた場合、日本と同列で語るのもどうなのか。児童買春が横行し、多くの日本人がタイの少女を買い行った、そんなニュースが頭をよぎる。まだ売春をさせないだけ、親としてマシなのかもしれない。 タイを舞台に描かれた『闇の子供たち』をたまたまその数日後に観たが、貧困層の親に売られた子供の末路を見てもそう思う。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-06-06 00:26:40) |
546. オール・ユー・ニード・イズ・キル
《ネタバレ》 トム・クルーズ主演らしい作品で、それなりに楽しめるんだけど特にハッとするようなこともなく。タイムループして、死ぬたびにやり直し。敵側のギタイ、アルファ(中ボス)、オメガ(ラスボス)の役割やループの設定にちょっと馴染めず混乱。ラストのループも腑に落ちない。 ------------ 再鑑賞。 ゲームのようなストーリー。殺されたらリセットされ、何度でも挑戦できる。そのループの中で経験値を上げることで、ステージをクリアしていく感覚。 前回よりは面白く感じた。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2015-06-06 00:14:01) |
547. ワールド・トレード・センター
《ネタバレ》 圧倒的な重さを持つ真実の物語が、映画にしたために少し安っぽく軽くなった感がある。主人公が救助で活躍するのではなく、ガレキから助け出されるのを待つだけというのもちょっと拍子抜け。9.11のような生々しく重大な事件は、作り物の映画やドラマではどうやってもドキュメンタリーに勝てないように思える。 [CS・衛星(吹替)] 3点(2015-06-06 00:12:32) |
548. ヴィレッジ(2004)
《ネタバレ》 シックスセンスのシャラマン監督なので期待したが、ガッカリ拍子抜け。森の中に化け物が棲むという村の伝説。その真相が、あまりにも強引すぎる無理筋。思わせぶりな雰囲気だけは持っているけど、ストーリーは穴が目立つ。突っ込みどころ満載のリアリティのなさで、それならいっそのこともっとハッキリとオカルトかファンタジーにしたほうが良かったくらい。 [CS・衛星(吹替)] 3点(2015-06-04 22:57:48) |
549. ミッシング・ポイント
《ネタバレ》 9.11以降のイスラム系への差別。全裸にして尻の穴まで調べるという屈辱的な扱い。愛する人にも裏切られた思いが、反米テロのイスラム原理主義集団へ手を貸すことになったのかどうか。 CIAスパイとパキスタン人のヒリヒリするような対峙で、サスペンスとして最後まで引っ張ってくれる。宗教が絡む対立は、過激な排他主義に陥りやすく根が深くて難しい。たとえ友人同士であっても、恐怖と疑心暗鬼が人を攻撃的にさせる。 主人公は立派だったが、その判断に至る葛藤は描かれておらず、終盤で簡単にキレイにまとめすぎた感があり、そこに物足りなさが残った。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2015-06-03 00:11:06) |
550. ブリット
《ネタバレ》 本格的なカーチェイスが評判となった作品だが、今のカーチェイスに慣れてしまった目で見ると平凡に感じる。カーチェイス目当てに見たら失望するかも。ただ、当時これを見たらビックリしただろう。S・マックィーンとジャクリーン・ビセットの2ショットは絵になる。ロバート・ヴォーン演じる上院議員にもっと何か裏があるのかと思ったが、何にもなくて拍子抜け。 [CS・衛星(吹替)] 3点(2015-06-01 00:02:24) |
551. 帰郷(2004)
《ネタバレ》 愛し合った翌日に姿を消した女。八年ぶりに再会して、愛し合った翌日にまた姿を消す。何だろう何だろうと思わせて、結局大したことは起こらないという映画。昔の女に振り回される格好の西島秀俊は、愚直なピエロ役を好演している。監督が最初から西島をイメージして作ったというだけあって、ピッタリとハマっている。片岡礼子が主人公の心を振り回すバツ1子持ち女。女はワザと子供の父親だと勘違いさせるようなことを言ったのか。どうみたって思わせぶりな言葉だし、そんなつもりがなかったでは通らない。 失踪した女の気まぐれな行動が何だかよくわからず、スッキリしない。でも、主人公は結構スッキリしているようだから、それならそれでいいけれど。冒頭とラストは電車に揺られる主人公だが、表情が全然違っている。 男が思いをぶつけた留守番電話を聞いて、女の気持ちが変わっていくのかどうか。これからの展開に何かあるかもしれないし、ないかもしれない、いろいろ想像させる余韻が残る。ただ、これだけだと一本の映画にするには内容的に物足りないような、一時間ドラマでも足りる印象。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-06-01 00:01:03) |
552. あいときぼうのまち(2013)
《ネタバレ》 原子力をキーワードに、時間軸を行き来している。原子爆弾の原料になるウラン採掘していた1945年。福島に原子力発電所ができる昭和40年代。3.11の直前と、原子力事故後の現在。 登場人物が多世代に渡って、繋がりはあるのだけれどわかりにくい。せめて1945年のエピソードは省いて、それ以降の話に絞ったほうがいいような。 テーマがはっきりしているようで、ピントがボケている感があるのはなぜだろう。ど真ん中の直球勝負かと思えば、フニャっと曲がって大きく外れたような。いろんなエピソードがうまく機能していない気もする。ストーリーに乗っていけないので、感情移入もできず。 実力派の役者を揃えるのが難しかったのか、キャストの中に素人臭い棒読みの演技が目に付く。重要な役を演じる千葉美紅は『戦争と一人の女』での殺され方は迫真の演技だったが、今回の女子高生役は違和感アリアリ。公式HPによると某プロデューサーから大竹しのぶの再来と絶賛されたとあるが、大竹しのぶも苦笑いだろう。 大スポンサーでもある東電を正面から批判するようなドラマや映画がない中でのチャレンジ。東電に怒りを覚える一人として、制作陣には拍手を送りたい。原発関連となると役者でさえも出演に及び腰で、キャスティングにも苦労したとのこと。それだけに、ちょっと期待外れな出来に終わったのが残念。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-05-30 21:12:48) |
553. 永遠のこどもたち
《ネタバレ》 雰囲気が不気味な上に、ときどき音でびっくりさせられるので心臓に悪い。最後にはちょっとメルヘンチックな部分もあり、家族愛もしっかり描かれていて、ただのホラーにはなっていない。 伏線は一応収束させているが、ストーリーで腑に落ちないところもチラホラ。ラウラとシモンの結びつきが、実の息子でもないのに自ら死を選ぶほど強くなったのはなぜか? どうしてわざわざエイズにかかっている子を選んで養子にしたのか? ラストはラウラが同じ孤児院にいた友達5人とシモンに囲まれて生きていくということで、取りようによってはハッピーエンドにも見えるが、その中にトマスも含まれている。トマスは5人のいたずらで殺されたようなものなのに、それにはちょっと違和感が。 [DVD(字幕)] 5点(2015-05-30 02:26:32)(良:1票) |
554. ポゼッション(1981)
《ネタバレ》 ポゼッションといえばサッカーの支配率くらいしか思い浮かばなかったが、なかなか意味深なタイトル。 サム・ライミ監督が後にリメイクしているが、オリジナルのこちらはズラウスキー監督。この監督は後に結婚したソフィー・マルソーと『狂気の愛』を撮っているが、つまらなくて訳のわからない酷い映画だった。それに比べればまだマシだったけど、この監督にはとてもついていけず、嫌悪感を覚える。狂気たっぷりのイザベル・アジャーニは怪演だったけど。頭のイカレたエキセントリックな妻と、ヒステリックで暗くてしつこい夫との不快なやりとり。アンナがいつもダークな服で、アンナとうり二つの保母ヘレンが明るい白。悪と善の象徴のつもりか。 サイコスリラーかと思えば、いきなりのオカルト的展開に目を白黒。化け物とアンナが交わっている現場を目の当たりにして、アンナが密かにクリーチャーを育成していたことを知る夫。挙句の果ては自分そっくりになったクリーチャーに殺されて、カオスでもう何だかしっちゃかめっちゃか。 説明過多もうざいが、こうして自己完結的に投げっぱなしにされるのも嫌い。怖いというより、嫌悪感や気持ち悪さが先行するホラー。おなかいっぱい。 [DVD(字幕)] 2点(2015-05-30 02:23:18) |
555. 続・青い体験
《ネタバレ》 前作に続きラウラ・アントネッリとアレッサンドラ・モモが主演だが、設定やストーリーは続編ではなく別物。 美しい兄嫁に惹かれる少年の一途な思いに、次第に兄嫁の心が傾いていく。エロはチラリズム程度に抑えてコメディ要素が強くなり、嫁を弟に寝取られる兄貴がとんだピエロ役で、マヌケな夫っぷりがおかしい。 年上の女性に憧れる童貞少年期に見るべき映画。昔はラウラしか記憶に残らなかったが、見直すと同級生のロージー(モニカ・グェリトーレ)がすごい美人なのに気づく。ラウラの発散する年上セクシーフェロモンには勝てなかったということか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-05-28 23:54:55) |
556. ファニーゲーム
《ネタバレ》 アメリカの某サイトが選出した「一度見たら二度と見る気になれない不穏なホラー映画」17本のうちの一つ。 まとわりつく不快感がすごい。卵をもらいにきた男が、人をイラつかせる天才。普通に見えて実はイカレたサイコ野郎ってのが、ヤクザなんかより怖い。お金目当てとか抗争とか、犯罪に理由があるなら、相手が理解できるのでこれほど怖さは感じない。なんだかわからないから不気味で、防ぎようもない。 リモコンで逆再生したところで、これってSFだったっけ?と唖然。これはアンチテーゼなのだろうか? 主人公に都合よく展開する映画が多い中で、本作は徹底的に主人公に都合悪く展開している。奇跡は主人公に起こるものなのに、ここでは悪役に起こる。ゲームでうまくいかなかった場合、「あ、今のやり直し」と一つ前の場面に戻るのはよくあること。それと同じように、2人組の一人が撃たれて、ゲーム的なやり直しが行われた。 この逆再生は、過激すぎる内容へのエクスキューズとも取れる。少年を狂気で殺するというタブーも、リアルさをあえて損なうことによって「これは作り物ですよ。マジに怒らないでね」と。個人的にはこの唐突なファンタジー演出は余計だったと思う。 監督はこの映画を見ている者が不快になるように作ったというが、それは見事に成功している。 [インターネット(字幕)] 5点(2015-05-28 23:53:05) |
557. 闇の子供たち
《ネタバレ》 微笑みの国タイの闇で巣食う児童買春と臓器売買。売春でエイズをうつされ衰弱した子供は、ゴミと一緒に捨てられる。臓器を移植するために脳死でもない生きた子供を使う。人間としてではなく物としての扱いに、子供たちは抗う術もない。闇の組織、新聞記者、NPOボランティア、臓器移植を切望する親、それぞれの事情と思惑が絡まって、どんどんストーリーに引き込まれていく。 ところが、終盤に思わぬ大迷走。犯罪者グループが何の勝算もない銃撃戦をやるなんて、まったく理解不能。ああいう犯罪者は、もっと計算高くて冷徹なものなのに。あれじゃまるで考え足らずのサイコ野郎。 ラストの小児性愛者のオチも、狙いすぎていてガッカリ。衝撃的にすればいいってもんでもない。だいたい買春するような小児性愛者が、発覚もしていない段階で罪の意識に苛まれて自殺なんて聞いたことがない。性癖なんだから、捕まっても再犯率のとても高い、根深くて図太いものなのに。小児性愛者の被害にあった児童が、自分を汚されたものだと思い込み、自殺に至るというならありえる話だけれど。 せっかくの社会派の作品を、取ってつけたようなサスペンス的ネタバラシで台無しにしている。そこまでも、おかしなところはあった。まだ生きている子供をゴミ袋に入れて捨てたり、冷静に考えるとありえないような杜撰な点も、よくある「話を盛る」表現として好意的に解釈し目を瞑ってきたが、もうダメ。この唐突で的外れな終盤のおかげで、ドキュメンタリーにもできそうな題材が、完全に嘘っぱちになってしまった。いくらフィクションでも、社会問題的なテーマを扱うなら、もっと本当らしく見せてくれないと。 [DVD(邦画)] 4点(2015-05-26 22:41:31) |
558. 父の秘密
《ネタバレ》 クソガキどもの陰湿なイジメには怒りがこみ上げる。これが親の立場であればなおさらで、殺意が生じるのも無理はない。娘を親が守らなくて誰が守るのか。それが娘が死んだと思い込んでの復讐殺人という愚挙であったとしても、カタルシスを感じるほどに共感してしまう。 いい意味でも悪い意味でも作られたストーリーという感じがしない。淡々とした描写が、妙にリアルで生々しい。セリフがなくても伝わってくるものがある。その反面、尻切れトンボのような終わり方にはモヤモヤが残る。この後の男の人生を想像させる余韻はあるのだけれど、それをちゃんと見せてほしい気もする。 娘が生きていたことを知り、後悔しながら殺人罪で刑に服すのだろうか。娘は父に心配かけまいとして、あんなイジメに一人で耐えたのだろうに、黙っていることが裏目に出てしまった。娘は父の犯罪を知れば、どんな衝撃を受けるのだろう。父と娘の愛情とすれ違いが哀しい。 大海の中をボートで一人帰るラストでは、妻を亡くし、娘も殺されたと思っている男の荒涼とした心の様が伝わってくる。すべてを失い、自分の人生も投げて、自殺も覚悟しているのかも。イジメに加担した他のクソガキはどうなったのか、殺された男子よりタチの悪いのもいたんだからちゃんと何らかの報いを受けさせないと。日本でも似たようなイジメ事件は起こっているし、川崎の少年イジメ殺害事件にも通じるような胸糞悪さ。でも、父の姿にまだ救われる。父は救われないけれど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-25 23:20:17)(良:1票) |
559. セルビアン・フィルム
《ネタバレ》 パゾリーニ監督が撮ったような、タブー満載のエログロ&残虐性の高い映画。でも、こちらのほうがもっと悪趣味で救いがない。元ポルノ男優が築いた家庭の幸せを、これでもかというくらい完膚なきまでにグチャグチャに壊す。 米サイトの「一度見たら二度と見る気になれない不穏なホラー映画」17作のうちの一つ。この手のセレクトでは、最高に面白い映画、感動的な映画も当然見たいが、最低の面白くない映画、吐き気がする映画のような類も、どんなものかと見たくなる。ゲテモノ見たさというやつか。見てどうなるわけでなく、こんなものかと気が済んで、それで終わりになるのだけれど。 快楽殺人だけでなく、幼児や子供のレイプまで入っているので、嫌悪感、不快感を催すのも無理はない。ただ、リアルにこんなことがあれば戦慄するが、制作者のあざとい意図を感じて所詮は作り物感が先行するので、作品世界には入りこまずに俯瞰で眺めている感覚。なので、超刺激的な内容なのにインパクトはなかった。つまらないので、二度見る気にはなれない。 [インターネット(字幕)] 3点(2015-05-25 23:18:01) |
560. パッション(2012)
《ネタバレ》 デ・パルマ監督らしい怪しい雰囲気を持つ映画。手柄を横取りして部下を利用するだけの腹黒い女上司。そんな正体を知ったイザベルが、見切りをつけて反旗を翻したものの、酷い仕返しを受けてしまう。ミーティングで笑いものにされる屈辱に、イザベルの居たたまれなさや怒りが伝わってくる。こわばった顔のイザベルが、無理に高笑いするシーンが痛々しい。この女上司が本当に憎たらしく嫌な女なので、自然とイザベルに肩入れしてしまう。 映画館とクリスティーンの部屋のスプリット・スクリーンで、犯行時の様子を描く。ここで見せる部分と隠す部分を上手に計算しているので、犯人がわからずサスペンスフルに。その辺りまではおもしろかったのだけど、現実と夢の境目が怪しくなって、薬の副作用の芝居ともからまって混乱させられ、どんどん嫌な予感が。そして、見たくなかった夢オチ的ラストで、もうガッカリ。 イザベルの精神が壊れてしまっていたということだろうけど、どうもスッキリしない。結局、双子の姉という設定も、中途半端に終わった印象。 [CS・衛星(吹替)] 3点(2015-05-24 21:42:01) |