41. ミッドウェイ(2019)
《ネタバレ》 ミッドウェイ海戦をほぼ史実をなぞる形で米国側から描いた作品だが、 一言でいうと、米軍艦爆乗りが日本の空母に爆弾命中させてうおおおおおーって叫ぶという シーンに象徴されるように、いかにもなアメリカ(の勝利を描いた)映画と感じた。 その後の両国の未来に大きな影響を与えたこの戦闘のキーになる部分として、 当初劣勢であった米軍側の知力、精神力が大きかったことを強調し、 決定的場面での微妙な時間的偶然性が果たした役割は触れられている程度。 テンポはいいので飽きさせられることはなかったが,CGによる戦闘シーンが 時間をかけてしつこい程で、迫力はあるがやや画面が過密で五月蠅い印象であった。 米軍機のごつい重量感、零戦のヒラヒラ感はよく出ていたと思う。 人間描写はやや平板な印象であったが、特に豊川悦司ら有名邦人俳優以外の日本側キャストが日系3世、4世のようで、 当時の日本人の話し方や所作としては違和感を感じた。また日本側の雰囲気が終始妙に暗く、当該海戦前はまだ連戦連勝の頃で、むしろ驕慢な感じであったとの雰囲気も感じられなかった。 [映画館(字幕)] 4点(2020-09-15 10:32:39) |
42. 南の島に雪が降る(1961)
《ネタバレ》 主演の加藤大介氏が体験した戦時の実話を、当時の日本喜劇の名優の方々が総出で熱演しています。今となっては背景とか細かい事情とかも説明なしではわからない人も多いと思いますが、そうであっても俳優陣の演技のすばらしさ、戦場で皆ある意味黙々と死んでいったのだという感慨、それに少しでも希望と慰謝をという当時の演劇人達の思いが伝わってくる秀作だと思います。 映画中に使用される脚本の作者名で菊池寛とか長谷川伸とか出てきますが、かつてこの国の人々の心の中のスタンダードはこういうメンタリティであったのだなあと。そしてそれは江戸時代から続いてきたものであったけれども、敗戦や時の流れで今は失われつつあるものだなあとしみじみとしてしまいました。 [DVD(邦画)] 7点(2020-08-19 23:50:22) |
43. バルトの楽園
豪華俳優陣で非常に丁寧に作られていてますが、テーマを少し詰め込み過ぎていて消化しきれていない感じでした。とはいえ実話に基づいたストーリーであり、侍の時代から維新を経てきた若々しい近代日本の息吹を感じられる良作だと思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2020-07-04 13:06:01) |
44. フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)
《ネタバレ》 日独潜水艦交流や広島の原爆等史実を踏まえた導入のストーリーはよい。またフランケンシュタインが途中10m位であまり東宝怪獣映画では見られないサイズで新鮮であった。フランケンシュタインの目が途中だけ緑になって幼少時や巨大化してからは普通など一貫性がなかったり、輸出向け風味のいかにも取ってつけたような日本的風体の水野久美とニックアダムスとの場面、「キングコング退ゴジラ」からの流れからのバラゴンとの対決、唐突でご都合主義な結末等引っかかる点も見られたが、総じて東宝特撮物の中ではちょっと毛色の変わった匂いの感じらる作品。警官の桐野洋雄が岡山署と広島弁でやり取りする描写は面白かった。 [DVD(邦画)] 6点(2020-06-06 16:26:34) |
45. 海底軍艦
《ネタバレ》 大画面で観た伊福部音楽にのっての海底軍艦試運転シーンには感激しました。アナクロな雰囲気、特撮も美術もよいのですが、海底軍艦の活躍が少なくて残念。本来は非常に重いはずの個人と国家、戦争というテーマに触れながらも、短い時間に押し込めてしまったためか、二十年以上雌伏していたはずの神宮寺大佐があっさり世界のために翻意しての「古い鎧を脱いで清々した」発言など、人物描写が今一つ散漫でストーリーがご都合主義。また好みの問題だろうが、佐原健二がヒーロー役立った方がよかったのでは。 [映画館(邦画)] 7点(2020-05-30 14:44:28) |
46. オデッサ・ファイル
《ネタバレ》 ずいぶん昔にTVで観、今回再観。スリリングであるが結構ご都合主義的で、主人公が間抜けで窮地に陥っても都合よく切り抜けて目的を果たす。70年代独の風景が色々見られ、電気フェアにいかにも日本企業な着物娘等も見ることができ、それらが今となっては興味深い。「ジャッカルの日」より大分緩いが楽しむことはできた。 [DVD(字幕)] 5点(2020-05-24 15:39:36) |
47. キングコング対ゴジラ
古い作品だが作品テンポもよく、安定感ある特撮も安心して観られる。有島一郎のコミカルな演技は流石に面白い。南方原住民描写はこの時代ならではだが、これはもはや当時の東宝特撮の様式美のひとつ。 [映画館(邦画)] 6点(2020-05-24 10:48:06) |
48. ゼロ・ファイター 大空戦
《ネタバレ》 岡本喜八作品のような俳優陣だが、作風は陽気という訳ではなくよりまじめな「漢の映画」でおもな登場人物の造形も無駄がなく、素直に観ることができた。前半はよくあるエースもののようであったが、後半藤田進と中丸忠雄が出て来るあたりから俄然話に深みが出てきて、加山雄三も単純に自分の哲学のみで飛行中隊長をやっているだけでは済まなくなり、時代の流れの中での組織、その中の人間の在り方を考えさせられる。白黒映像であるが円谷特撮も冴え、多数の複雑な航空機の動きをリアルに魅せてくれている。知名度は高くない作品のようであるがよくまとまった佳作。 [DVD(邦画)] 7点(2020-05-24 10:15:24) |
49. ひみつの花園
《ネタバレ》 主人公の行動力に周りも巻き込まれて行き、最後は目的を達します。テンポよく十分面白い映画です。人形が川を流れていくチープな画は笑えましたが、堤防上で測距儀を覗く姿等印象的な美しい画もありました。 [映画館(邦画)] 7点(2020-05-23 18:35:36) |
50. 軍用列車
《ネタバレ》 列車を舞台にしたミステリーアクション?前半はややもっさりした流れであまり盛り上がらない。後半銃撃戦等多少派手な展開にはなるが、その前に唐突にブロンソンが自身の正体をばらしてしまっているのでお約束な展開。砦を占拠していた悪党たち、先住民たちの扱いもステレオタイプ。悪党たちはあれだけの騎兵隊をどうやって捕虜にしていたのか? [DVD(吹替)] 4点(2020-05-23 17:41:05) |
51. フューリー(2014)
《ネタバレ》 期待して観たが底の浅いストーリーや歴史的背景を無視したような描写が余りにもお粗末に感じた。時代的にはもう戦争の帰趨も決まり、ドイツ軍はソ連ではなく米英軍に降伏したがっていて、米英軍も無駄な損害を出したくない状況であったはずなのに、主人公達は野原の交差点を死守するし戦車戦は超至近距離だしドイツ兵は昔の西部劇のインディアンみたいに戦車に群がってみんな死ぬばかりだし、リアリティがなさ過ぎてガッカリした。スターを出して製作費をかけるならもう少し何とかならなかったのか。実車ティーガーだけが見所。 [映画館(字幕)] 3点(2020-05-23 17:29:00) |
52. 狼たちの午後
《ネタバレ》 もう少し短くまとめて欲しかった。リアリティはあるが結構セリフが多く、いらないエピソード等もあるように感じた。 現場の野次馬がうるさいのに警官にあまり規制されないのはアメリカだからなのか。 航空機での逃走が上手く行きそうな所から、一瞬での解決~最後のアルパチーノの表情までは観ている方の感情もシンクロでき、印象的だった。 [ブルーレイ(吹替)] 4点(2020-05-23 15:10:31)(良:1票) |
53. 男はつらいよ 寅次郎恋歌
《ネタバレ》 シリーズで最も好きな作品。池内淳子が独り身と知って「なんだか俺、腹空いてきちゃったよー」とか、茶碗叩いて歌って大盛り上がりの寅の能天気っぷりと、りんどうの花の話から自らを悟り身を引いていく哀愁漂う姿との対比が絶品。後期の加齢に伴う哀愁ではなく、流れ者と地に足の着いた生活者の住む世界の違い、お互いの憧れが際立っている。森川信、志村喬といったベテラン勢も見事。 [DVD(邦画)] 9点(2020-05-22 13:11:55) |
54. ウィンター・ウォー/厳寒の攻防戦
《ネタバレ》 197分完全版を視聴。前半1/3は戦場に赴くまでの被服の受け取りやら行進、その後は雪中でのソ連軍の砲爆撃、戦車と突撃との戦闘描写が延々と続く。それも非常に長く続くが、美術から何から丁寧に作られている印象で緩む感じはない。CGも不自然にドラマチックな演出もほとんどなく、英雄談も過剰な反戦メッセージがあるわけでもない。大国の侵略に敢然と立ち向かって国土を守ったフィンランドであり、誇るべき逸話もあろうがそういった話はなく、身近な戦友たちは次々と倒れて行き、唐突な停戦で終わる。一見単調な展開だがこれこそ当事者たちの感じる戦場の実相かもしれない。メガネの曹長さんがいい味を出していた。 [DVD(字幕)] 6点(2020-05-21 21:59:49) |
55. 愛の勝利を ムッソリーニを愛した女
《ネタバレ》 ムッソリーニがだんだん上り詰めていく時代の流れの中で、執拗に彼にすがりつくストーカーチックな女性を描いています。ドキュメンタリーの挿入の仕方などはよかったが、バチカンとイタリアとの和解等当時のイタリアの歴史について造詣がないとわかりにくい内容もあった。後半は精神病院内でひたすら過ごす展開であったが、主演女優はなかなかオーラがあり存在感があった。 [DVD(字幕)] 5点(2020-05-21 18:11:46) |
56. 地球防衛軍
《ネタバレ》 古い映画でややゆっくりした展開ながら楽しめた。光学合成は流石に発展途上な雰囲気があるがミニチュアワークは十分素晴らしい。電子砲などが突然開発される他は防衛隊(自衛隊)の装備等は1950年代当時のものを反映している。モゲラはいまいち消化不良で、最初の個体は防衛隊による橋梁爆破であえなく谷に落ち込みお陀仏。 「戦争したがるのはそちらの政府や軍隊で、我々は平和主義。少しの土地をくれればいい」という侵略者の言い草はいつの時代も同じである。 [DVD(邦画)] 6点(2020-05-20 21:28:04) |
57. 北国の帝王
《ネタバレ》 無賃乗車をする放浪労働者のホーボー達とそれを阻止せんとする機関車乗員の男の意地の張り合い。リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナインがいいので飽きずに観られ結構美術なんかにも金がかかっていそうだが、それぞれの人物造形が少し薄いかな。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2020-05-17 18:51:47) |
58. センチュリアン
《ネタバレ》 地味で渋い作品であるが、当時のロス警察はこんな感じだったんだろうなと思わせるリアリティを感じさせられる。倫理や道徳などすでにない社会の中で、誇りを抱きつつ勤務に励むも報われない警官たちの哀愁が身に染みる。独自の哲学と矜持を持ちつつも定年後は生きがいをなくし自殺するスコット、家庭崩壊の果てにようやく救いを見つけたところで唐突に殉職してしまうキーチ、救いのないストーリーもこの時代ならでは。 [DVD(字幕)] 6点(2020-05-17 18:36:07) |
59. 青島要塞爆撃命令
《ネタバレ》 「独立愚連隊」の舞台設定を第一次世界大戦の航空戦黎明期に変えた感じの作品だが、本作では佐藤允が一番慎重派。戦争映画ではあるが愉快な娯楽映画。舞台設定も珍しいが、作品の雰囲気も60年代の邦画全盛期ならではの明るさに満ちている。 [DVD(邦画)] 5点(2020-05-17 18:16:13) |
60. ガス人間第一号
《ネタバレ》 メロドラマにしたことで東宝特撮の変身人間もの3作では一番できがいいと思います。特殊能力を持った人間がその能力を社会のためではなく個人的欲望に使ったらどうなるかを、落ちぶれた舞踊家元への恋慕とからめたドラマ部が絶品です。昭和特撮になくてはならない土屋嘉男氏の代表作でしょう。彼の警察などへの不敵な態度と家元への献身的振る舞いの対比、若い八千草さんの美貌と悲しげな風情も、夜の場面の多い画の中で非常に印象的です。二人で社会を相手に戦う勢いのガス人間に対し家元はもはや生きる気力もなく、ガス人間には明かさずに心中を選びます。滅びの美学に満ちています。 [DVD(邦画)] 8点(2020-05-17 15:42:28)(良:1票) |