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Сакурай Тосиоさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 250
性別 男性
自己紹介 サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。
評価はもちろん主観です。
評価基準 各2点ずつで計10点
1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか?
2.視覚的に何かを象徴できているか?
3.プロットの構成は適切か?
4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか?
5.作品のテーマに普遍性はあるか?

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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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61.  夜を走る
潤いなく乾いている空気感、それは登場人物の心理から映像・音響においてまで徹底しています。終盤になって現代日本版のタクシードライバーをやりたかったんだろうなと気づきました。展開は筋道立った構成というより行き当たりばったりと感じます。死体やスマホ、拳銃といった要素が物語にほとんど影響していません。ラジオの天気予報、アメリカの銃乱射事件や地震の話題、何か致命的な出来事が起きそうな、しかし結局何も起きないような徒労感を表現したかったのでしょうからこれはこれで正解なのかもしれませんが、ほとんど伏線回収を放棄したような構成は実は駄作ギリギリかもしれません。もう少しテンポが良くてはっきりとしたテーマがあれば広く評価されたと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2023-05-22 22:54:07)
62.  こちらあみ子
物語自体は暗いものでもシュールでコミカルと感じさせるバランス感覚が絶妙ですね。序盤から何となく相米慎二監督のお引越しを思い出しながら見ていたんですが、ラストの水場のシーンを見る限りこれは明確にオマージュしているのではないでしょうか。カメラワークもロングショットの長回しが目立ちますが技巧そのものが突出しているわけではなく好感を持てる一方、もうちょっと凝った演出も見たかったと物足りなさを感じなくもないです。大沢一菜の演技は田畑智子を超えてるかもしれませんね。お引越しのラストは少女の成長を象徴したシーンという見解が有力なようですが、この映画はそれとは真逆のどんな経験を経てもそれを糧とすることができず成長することができない性質として生まれた人間の至る悲劇と言えます。そしてそれを正当化するわけでも悪いものと糾弾するわけでもなく、自分は自分なのだからただそういうものとして受け入れて生きていくしかないのです。
[DVD(邦画)] 7点(2023-05-21 23:14:51)(良:1票)
63.  ノースマン 導かれし復讐者
ロバート・エガース監督の前作ライトハウスは大した内容もないのに無意味に難解ぶったつまんないアート系映画としか思えずこの映画も全然期待していなかったのですが、今回は下手に捻ったところのない王道の復讐劇で普通にエンターテイメントとしても楽しめる作品に仕上がってますね。アイアムユアファーザーならぬアイアムユアソン、クライマックスの決闘はシスの復讐ばり。ハムレットっぽい展開だと思っていたらハムレットの元となった伝説の映像化なんですね。個人の意思ではなく運命によって駆動する物語、下手に現代的なテーマや視点は持ち込まずに神話の世界を忠実に再現しています。寒々しいモノクロに近い世界に炎の暖色が映えて美しい映像です。妙に芝居がかった台詞に単純な心理描写は冷静に考えるとなんてバカバカしいんだろうとも思えてきますが(笑)、こういう古典劇のような現代人の感覚から距離が取られた作品でしか味わえない感動もあります。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-20 21:48:04)
64.  ケイコ 目を澄ませて
フィルム撮影で若いかわいそうな女性が主人公、この映画の情報を見た時おじさんウケ全振りみたいな映画だなあと思いましたし実際に見てもその印象はむしろ強まるばかりでした。黒背景白文字の字幕は聴覚障害者だからサイレント映画オマージュってわけですか、安直な発想ですね。聴覚障害者やコロナ禍を題材にしてるだけでやってることは明確なストーリーやメッセージがあるわけでもなく閉じた人間関係の中で淡々と丁寧な日常描写を重ねるってよくあるパターンです。聴覚障害へ無理解な人間を登場させたところで明らかに今いる場所に居心地よく安住している人間が作っている作品です。一番劇的な展開が障害者本人に関わることではなく所属してるコミュニティの危機というのもおかしいですよ。しかもそこが戦前から続く日本で一番古いジムというのがいかにも権威主義的です。父親的存在に最後まで依存し続け変化することをネガティブに描き、内は味方で外が敵という発想しかない。こんな保守的なだけの映画が過剰に評価されていると日本映画はますますダメになると思うのではっきり批判しておきます。
[インターネット(邦画)] 3点(2023-05-19 22:36:35)
65.  ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
一言で言うと説明不足の映画です。なぜ土管が異世界に繋がっているのか?あのブロックは何なのか?キノコを食べるとなぜ強くなるのか?なぜキノコやゴリラの王国があるのか?なぜ亀が世界を支配しようとしているのか?ゲームの時点でそういうものだからこれでいいのだ、いちいち考えるものではない、第一説明していたらテンポが悪くなるじゃないか。マリオを知らない人間はいないと言っても過言ではないのですからこのアプローチも十分通用します。しかしこうした細部の設定を考証することで作品に奥行きが生まれると思います。それに考えてみてください、私たちはそもそもいったいマリオたちの何を知っているというのでしょうか?ただゲームをプレイしているだけでは多くのキャラクターたちの内面や世界の成り立ちまで理解することは難しいはずです。ゲームをプレイするのではなく、物語を鑑賞するという体験の強みは個々のキャラクターの理解をより深めることができるという点にあるのではないでしょうか。今までゲームでは描かれてこなかったマリオたちがブルックリンで暮らしている描写をわざわざ入れたのもそのためでしょう。マリオの嫌いな食べ物や家族構成をいったいこの映画を見るまで誰が知っていたのでしょうか?クッパはなぜ弾き語りをするのか、コング族はなぜカートを製造しているのか、残念ながらこれらの要素は脈絡もなく唐突に出てくるのでキャラクターたちの理解を深めるというよりはむしろ違和感を感じさせるものです。ただキノコ王国でピーチ姫がプリンセスとなったきっかけが語られるエピソードはとても良いと思いました。オリジナルのゲームで感じていた違和感を解消させるものです。やりすぎると1993年の実写映画版のような作品になるとはいえ、あのキャラクターやゲーム中の要素は実はこうだったというような設定の深掘りがもうちょっと欲しかったです。あっそういう意味では青甲羅の彼は最高でしたね。
[映画館(吹替)] 5点(2023-05-11 23:38:55)
66.  聖闘士星矢 The Beginning
聖闘士星矢については全く知識がない状態で見ましたが、設定というか作品のテーマがよくわからないまま映画が終わりました。初見の人間におススメできる作品ではないという点では良くない映画化だと思います。原作をハリウッド映画の鋳型に流し込んだだけの作品という感じです。冒頭の赤と緑の照明の地下闘技場とか具体的な作品名は思い出せないのに何十回も似たようなものを見せられた気がします。適度に会話にユーモアは入れときましょう、ここら辺で登場人物に共感できるシーンを入れときましょう。まあさすがにハリウッドが長年培ってきた王道作劇です、大して惹きつけられるものがなくとも飽きずに見られます。しかし別に面白いわけでもないです。マッケンユーの戦い方はダンスと揶揄され、男かと思ったと皮肉を言われるのはアジア人へのステレオタイプな認識という感じです。壮大な親子ゲンカはよく見るのですが夫婦ゲンカは珍しいパターンかもしれません。マッケンユーは顔にいくら打撃を受けても傷一つなく綺麗なままです。そこに唯一スタッフのこだわりのようなものは感じられましたが、ただレイティングの問題なだけな気もします。
[映画館(字幕)] 5点(2023-05-10 23:01:19)
67.  ある男
撮影・演出・演技は素晴らしいです。ある程度緊迫感を保ちながらどこかユーモラスで親しみやすく見やすい作品です、小籔千豊がいい味出してますね。登場人物はみな現代の日本にはこういう人いるよね、と思わせるリアリティがあります。ただ柄本明はちょっと漫画っぽいかなあとは思いました、レクター博士っぽいとも言えます。音響はいいのに音楽がいまいちなんですよね。ほのぼのしたシーンではほのぼのした音楽、緊迫したシーンには緊迫した音楽、しんみりするシーンにはしんみりした音楽と極めて単純です。音響へのこだわりに比べると随分無頓着だなと思いました。社会問題もあくまで触れるだけで出たきりのまま放置されています。最終的に個人のアイデンティティーの問題に帰着するのは日本文化の良いところとも悪いところとも言えますが、今は欠点とみなした方がいいでしょう。全体として誰が主人公かわかりにくくかといって群像劇とも言いがたい構成ですが、今の社会で生きづらさを抱えた人たちみなが主人公だと理解するのが正しいのかもしれませんね。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-05-08 23:42:44)
68.  モリコーネ 映画が恋した音楽家
ジョン・ケージなんて正直何の価値があるのかいまいちわからなかったのですが、我々大衆に理解できなくともプロの世界には多大な影響を与えていたことがよくわかります。この映画で再発見したのはエンニオ・モリコーネは音楽家である以上に最高の映画演出家であったということですね。ウエスタンの冒頭シーンは音楽に頼らないセルジオ・レオーネの純粋な演出の力で見せているシーンだと思い込んでいたのですが、あれこそまさに現代音楽の発想を活かした演出だったのだと気付かされました。おそらく後世においては音楽を担当した作品のどの監督よりもエンニオ・モリコーネこそが重要な人物として名前を残すことになるのではないでしょうか(それと同じことがこの作品にも出演しているジョン・ウィリアムズにも言えるかもしれませんね)。そういう意味ではスタンリー・キューブリックは音楽を依頼するチャンスを逃してむしろ運が良かったのかもしれません(笑)。ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品は感傷的で大袈裟なメロドラマというイメージであまり好きではないのですが、この映画では観客へのサービスを意図した名曲集のような構成ではなくエンニオ・モリコーネのキャリアと思想を語るのに必要な映像と音楽を優先する姿勢で好印象です。ドキュメンタリーとしては基本的にインタビューと過去の映像を編集しただけの何の変哲もない作りではあるのですが、久々にこの映画が終わってほしくないという気持ちにさせてくれました。
[映画館(字幕)] 8点(2023-05-03 21:47:39)(良:1票)
69.  竜とそばかすの姫
高知だから鰹のタタキってすごく安直じゃないですか?この映画のコンセプトはインターネットの世界で美女と野獣をやることらしいのですが、そもそも何のためにこのコンセプトを採用したのかが意味不明です。身も蓋もないことを言えば売れるためなんでしょうけど。細田守監督って実は昔インターネットを好きだった思い出に執着しているだけで今のインターネットのことは嫌いなんじゃないでしょうか?この作品を見ていてもインターネットの悪さばかり伝わってきます。新海誠監督の方がインターネットの良さを自身の作家のテーマとしても的確に表現できています、遠く離れた誰かとも繋がれることだと。自分は世界で唯一インターネットを肯定してきた作家であると自負しているようですがそれすらも怪しいです。文句ばかり出てくる映画ですが、細田守監督の作品では最も深刻で真剣な物語になっているのはいいと思いますね。あともう一歩踏み込んだテーマを扱えれば本当の傑作をものにできるかもしれません、逆に底が割れる可能性もありますが。美術やキャラクターデザインが日本アニメの枠を超えたものを志向しているのも好印象です、まあパクリと言えなくもないですけど(笑)。
[DVD(邦画)] 6点(2023-04-30 21:49:38)
70.  世界の終わりから
紀里谷和明監督は真面目に現代社会に向き合おうとしていると思います。しかしその割りに内容は薄く感じてしまいます。主観的で情緒的すぎて客観的な構成力が欠けているのがきついです。若者向けに作ったのだとしても、もう少し知性に訴えかける部分が欲しいです。ラスト・ナイツ以降CGゴテゴテ画面を捨ててしまったのはまともに評価されたいからなんでしょうけど、CASSHERNやGOEMONにはあった派手なアクションシーンのような娯楽要素が減ってしまいひたすら画面が地味です。その上で純粋な演出と脚本のドラマで勝負できるほどの実力はこの監督にはないと思います。まあそれでも日本国外でも構いませんので腐らず映画を撮り続けてほしいと思います、社会に対して何か言いたいことがあるのは作家にとって最も重要な素質ですから。伊東蒼はハマり役です、いかにも幸が薄そうな顔が最大限に生きています。映画の出来がもうちょっとまともなら彼女の代表作にもなったと思います。
[映画館(邦画)] 4点(2023-04-29 22:26:11)
71.  ベイビーわるきゅーれ
うーん台詞が聞き取りにくいのがちょっとなあ、実は黒澤明オマージュだったり?まあ全然関係ないんでしょうけど(笑)。ゆるい雰囲気のダラダラ展開するあるあるネタコメディ、一本の芯が通ってなくて散漫な感じです。社会風刺喜劇ぐらいにまで煮詰めることができていればもうちょっと広く評価されたかもしれません。税金やら嫌な上司や客のような社会の世知辛さは現時点でも描けてますしね。今は第二の北村龍平程度で終わらないことを祈るまでです。
[インターネット(邦画)] 5点(2023-04-28 23:12:29)
72.  ザ・ホエール
なんか最近のアメリカ映画ではゲロを吐かせるのが流行ってるんでしょうか?ダーレン・アロノフスキーってシンプルに演出がイマイチなんですよね。冒頭主人公がゲイであることを示すためにゲイビデオを見ているところから始まります。娘はいかにも今時の若者、大麻にスマホにSNS。なんだか当事者以外が頭の中だけで考えて作った人物って感じで現実の人間はもうちょっと複雑でしょと思ってしまいます。レスラーに続きまたかよとしか思えない父と娘の再会と死別の物語、今回は主人公が動けないので娘がわざわざ父親に会いに来る動機が必要なのですが説得力がある心理演出ができているとも思えません。娘はレズビアンであることが示唆されていますが、これが性的マイノリティ同士なら共鳴するものがあるという意図なら安直すぎです。ノアやらマザー!やらガチガチのキリスト教映画作っておいて今更の宗教批判もなんだかなあという感じです。全体的にマザー!がボロクソに叩かれた反動で日和ったかのようにウケる要素を詰め込んできた、細田守監督の竜とそばかすの姫みたいな作品です。あっそういえばゲロも被ってますね(笑)。
[映画館(字幕)] 4点(2023-04-26 23:12:20)
73.  生きる LIVING
この映画は朝の通勤風景から始まります。何せ役所勤めの男が主人公の映画ですから通勤風景を描くのは普通の発想です。そういえば1953年のオリジナル版には不思議と通勤風景が描かれていません、代わりに山積みの書類を背に志村喬が仕事をしている場面から始まっていました。これがまさに2本の映画の違いを象徴していると思います。このリメイク版はきわめて普通の感性で丁寧に作られています。しかし黒澤明版は感動の名作というよりはどこか歪な映画なのです。志村喬はビル・ナイとは違い清潔な紳士などではありませんでした、脂ぎって不潔ですらあります。ビル・ナイは若い娘との交流の時にも志村喬のような危うさを感じさせません、だから安心して見られ不快・不安な気持ちにはなりません。1953年という過去を舞台に設定しているために社会風刺的な側面も現実の我々と直接関係ないものとして距離を取って見ることができてしまいます。リメイク版は撮影も演技も卒がなく、今の観客には受け入れにくいであろう部分を原作から削り取っていかにも名作然として作られています。でもそれは毒も刺激もなくとてもつまらない保守的なアプローチだと思います。整然とした通勤風景などより、あの山積みの書類のようにいつ崩れ落ちるかわからないような異様な迫力がゆえにオリジナル版は現代人の心にも訴えかける作品になっていると思うのです。
[映画館(字幕)] 4点(2023-04-13 23:50:58)
74.  ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
あまり期待してないのに観てみたら面白かった枠であって普通に期待して観た場合だと正直微妙な作品ですね。めちゃくちゃ金曜ロードショー向きの作品です。王道ともハリウッドのテンプレ展開しか出てこないとも言えます。映画のA級B級は予算の違いもありますが登場人物の心理描写が丁寧か単純かという観点でも判断できると思います。そういう意味ではやっぱりB級です。まあ私も好きなジャンルの映画がこの出来だったらベタ褒めしてるかもしれませんので、あんまり悪くは言えません。ソフィア・リリスは確かにかわいい、しかし活躍する場面では別の姿に変身してるのでなんかもったいない(笑)。自分自身の弱さと向き合うエピソードが用意されてる他の主要キャスト3人に比べるとエメラルド居留地のエピソードがあまりピックアップされないので物語上の存在感もないです、初登場シーンが一番わくわくしてそれっきりです。それと、泣かせ演出のために適当に登場人物を殺す作劇はやっちゃダメですよ。
[映画館(吹替)] 5点(2023-04-12 23:45:32)
75.  オール・ザット・ブリーズ
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の映画MEMORIA メモリアの中で科学と詩を両立させるのは難しいという旨の台詞があったと記憶してますが、この映画はそれを成立させた一つの成功例だと思います。映像はアンドレイ・タルコフスキーの作品を思わせ、ナレーションは解説というより詩的であることを志向しています。印象的なショットがたくさんあります。冒頭暗闇の中ネズミが蠢くゴミ捨て場をローアングルで捉えたショット、街の風景に波紋が重なりそれが水面に反射した像だと徐々にわかるショット、ムカデが水たまりの中から這いあげると上空の旅客機が飛ぶ姿が映し出されるショット。カメラは動物の目線から人間の社会を見つめるよう促し、これほど多くの生き物が同じ世界を生きていることに気づかせます。また動物への愛情や淡々としながらも見え隠れする死や暴力のイメージ・巨視的な文明観といった要素に私は志賀直哉の小説も連想しました。総じてこの映画は今描くべきことと今まで描かれなかった新しさを感じました。この映画はインドだから描けるテーマに留まらず、まさに全人類的な問題を扱えているからこそ傑作だと思います。
[インターネット(字幕)] 10点(2023-04-07 23:59:28)
76.  マイスモールランド
この映画は何ひとつ特別なことを描いているわけではありません。クルド難民という設定を抜きにすれば社会派映画というよりは日本映画では珍しいとも言えない思春期の女性の繊細な感情を丁寧に描いた青春映画です。親と子のすれ違い・愛情、他人に話せない悩み、日々の生活で味わう息苦しさ、そして恋。新しい物語を模索というよりは、既にあるフォーマットに沿って問題を処理しているとも言えます。それはこの映画の欠点であり長所でもあると思います。親しみやすい内容ですので、もし広く宣伝されていたならば今よりも多くの観客の共感を得られそこそこのヒットも狙えたのではないかと思います。そうなることがこの映画が作られた目的にも沿うと思います。もっと言うならば商業映画はこの程度のレベルが普通であってほしいのです。(コインランドリーと移民という要素がエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスと被っていますが、偶然なのかそれとも何か共通の要因があったりするのでしょうか?)
[インターネット(邦画)] 7点(2023-04-02 21:23:06)(良:1票)
77.  トップガン マーヴェリック
なんて夢のない映画でしょう。この映画が娯楽映画の王道と持ち上げられてるのは理解不能です。戦闘機マニアやトム・クルーズのファンが面白いというのはわかります。しかしふだん軍隊と関係ない生活を送っている人間がこの映画のどこに感情移入できるのかさっぱりわかりません。こんなものは懐古主義だ、所詮米軍のプロパガンダだ、ステレオタイプな人物像しか描かれていない、こういう批判を口にする人間がいてもいいと思いますので私が言います、それで救われる人間もいるでしょうから。昔のようにジェリー・ブラッカイマーの映画なんぞ真面目に語る価値がないとバカにするぐらいの余裕こそ必要です。今の時代に続編を作るべきなのはトップガンではなく7月4日に生まれての方である、このぐらいの皮肉は言わなきゃいけないのです。
[インターネット(字幕)] 0点(2023-03-31 23:07:29)(笑:1票) (良:3票)
78.  シン・仮面ライダー
もちろん駄作なんですが、庵野秀明の作品の中では最もまともに鑑賞する価値のある作品かもしれません(実写アニメ両方含めて)。今までと異なりこの映画は何より役者の演技をちゃんと撮ろうとしています。何度も繰り返される仮面の着脱、無機物でしかない仮面にどう表情を宿らせるか、間違いなくこれは実写映画でしかできない試みです。フォトジェニック以上のものではないですが撮影も今までで一番良かったです。この映画の不幸は擁護する意見でさえ過去の作品へのオマージュの側面ばかり取り上げられるところです。自身がそのように読み解かれるよう自己演出を続けてきた庵野秀明の自業自得ではありますが、鷲巣詩郎の音楽やいつもの明朝体(シン・ゴジラで一番ゲンナリした要素です)が封印されているのは今までとは違うものを作ろうという精神の現れです。エヴァンゲリオンではメタフィクションに逃げ、シン・ゴジラは震災を描くように見せかけて帰ってきたウルトラマンのプロットを流用したに過ぎず、シン・ウルトラマンに至ってはノスタルジー以上の価値を見出せませんでした。今回庵野秀明はかつてないほど真剣に現代的なテーマを扱ったストーリーを語ろうとしているように見えます。最大多数の最大幸福ではなく最も絶望している者の救済、疫病による人口削減、人にも自然にも負担をかけない奴隷制度の復活、エネルギーの奪い合い、絶望を多幸感で上書きする洗脳。それでもショッカー側のキャラクターはワンパターンの快楽殺人鬼ばかりだったり、最終的には肉親の不幸に収束するスケールの狭さもあってまともにテーマを処理できてはいません。だから最終的には駄作と判断せざるを得ないのですが、この映画って言わばまともにストーリーが完結しているエヴァンゲリオンじゃないですか。そう考えるとシン・エヴァンゲリオンなどよりはるかに凄い達成だと思います。
[映画館(邦画)] 5点(2023-03-30 20:47:39)(良:2票)
79.  シャザム!~神々の怒り~
ラドンなのにゴジラみたいに青い炎を吐くとはこれいかに。それはともかく、安定して面白い娯楽作品としては上出来の作品です。既存のDC作品のパロディ要素を盛り込んでも本体が迷走気味なのがこのシリーズの不幸です。まあ他の作品を見なくても単体作品として十分楽しめるのがDCのいいところです。それでもやっぱりDCが生んだ最高のスターは姉さんですね〜。彼女が出るだけで映画が救われます。
[映画館(吹替)] 6点(2023-03-28 23:54:03)
80.  Winny
こういう実際の事件をベースにした社会性のある作品が作られるのはいいことですし、20代でこれを作れる松本優作監督には将来性を期待できると思います。内容は事件をよく知らない人間にもわかりやすく、社会に背を向けるのではなくポジティブなメッセージを訴えかけるものになっています。役者の演技もいいですし、台詞にユーモアもあり娯楽性もあります。しかし残念ながらいくつか不満点もあり素直に傑作とは言い難い作品です。解説のために無知な女性を配置する必要はなかったでしょう。観客の理解力をもっと信頼するべきですし、いくら2000年代が舞台とはいえこれでは2000年代から進歩していないステレオタイプな人物像しか描けていません。愛知県警のエピソードはWinnyが良い方向に使われる例として必要だったのでしょうが、金子勇側のエピソードとの関連性が弱く浮いた印象を受けてしまいます。論理的・客観的な構成で社会を描くより情緒的・主観的に個人を描く部分が目立つ日本映画の傾向はこの作品にもあてはまります。それゆえに一方を美化して肩入れし過ぎている印象を受けてしまいます。
[映画館(邦画)] 6点(2023-03-25 13:04:57)
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