781. キリクと魔女
これには中々唸らされました。非常にシンプルなお伽話ではありますが、作品を構成する全ての面に於いて、誰が観ても満足できるハイレベルな品質です。教訓的で少しシュールな物語。ゴーギャンの絵の様な美術。頭の中でリフレインするアフリカ音楽。そして何より、完成された人物デッサンによるキャラクター・デザイン。動き的にはもう少し滑らかにすることも可能だったと思いますけど、このレベルで抑えて、「絵」であることを強調したのにもセンスを感じます。私は特に、一人だけ異様にテンションの低いキリクのお母さんがツボにハマりました。これはお薦めです、7点献上。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-06-27 00:36:55)(良:1票) |
782. うる星やつら いつだって・マイ・ダーリン
か…顔が違う…。本作の印象はこれに尽きる。劇場版「うる星やつら」の基本ストーリーは「ビューティフル・ドリーマー」を除いて、全作品「あたるかラムに実は幼少時の思い人がいて、そいつが地球に来て大騒ぎになる」というもの(だったと思う)。ま、今回は許婚じゃないにしても、毎回似た様な話じゃ流石に飽きる。特筆すべき部分も見当たらない。おまけに顔が違うし…。シリーズもののキャラクター・デザインは重要ですよ、4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2005-06-27 00:36:33) |
783. ペイネ愛の世界旅行
いやいや、やっぱ古臭いですよ、これ。それは技術的な部分ではなく、まるでLSDで垣間見た幻覚の様なイメージと、メッセージ自体がです。「環境保護」「反戦」「ラヴ&ピース」「自由」等と、個々に見ればそれぞれ真っ当な主張ですけど、それを包むヒッピー文化の成れの果てを知り、とっくに冷戦の終結した21世紀に生きる我々は、今更こんなものを見せられても白けるだけでしょう。あと、この不条理感には音楽共々、一瞬登場したフェリーニの影響を感じました(我らが久里洋二も思い出しました)。それにしてもイラストだけは有名なこの二人、フラワー・チルドレンだったとは知りませんでした。バレンチナの超ミニ・ワンピースが凄くエッチ…。絵柄に反して、決してプラトニックで終わらない所も世相を反映してましたね、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-06-27 00:36:10) |
784. パンダ・コパンダ 雨ふりサーカスの巻
相変わらず、心配になるほど前向き(能天気?)なミミ子ちゃんのキャラクターが良いです(【M・R・サイケデリコン】さん、彼女のはパンチラじゃなくて「丸出し」です)。が、こちらは前作に輪を掛けて低年齢向けになってるので、流石に大人にはきついですね。大人も楽しめる前作の良さは「現実世界の中で進むファンタジー・ストーリー」にあったと思うんですけど、こちらは世界全体がファンタジーになってしまいました。それに、トラちゃんは喋れるのに親の虎は普通の動物だったり、何か表現にも納得できません。従ってこちらは、小さなお子様のいるご家庭にのみお薦めします、5点献上。 [映画館(字幕)] 5点(2005-06-27 00:35:46) |
785. パンダ・コパンダ
確かこれを初めて観たのは、今は無き文芸地下の宮崎駿特集だったと思う。その後、何度か観ましたけど、いつ観ても面白いですね。とてもカンカン・ランラン来日記念便乗企画のやっつけ仕事とは思えない出来です。当時は全然気がつきませんでしたけど、良く見てみれば、本作の舞台は「となりのトトロ」の舞台にも程近い所沢市北秋津。この所沢への思い入れは何だ? そして、現実とファンタジーが近くに存在しつつも、きっちりと分かれていた「トトロ」とは異なり、本作のオチは現実に無理矢理ファンタジーを割り込ませる。この痛快感は「トトロ」では味わえませんよ、7点献上。 [映画館(字幕)] 7点(2005-06-27 00:35:22)(良:1票) |
786. ダニー・ザ・ドッグ
いつの間にかフランス一のB級映画人になっていたリュック・ベッソンと、アメリカ一のB級アクション・スターを目指す(?)ジェット・リーのコラボレーション第二段。従って、本作は必然的にB級映画となってます(だからA級俳優のモーガン・フリーマンは本作に全く似合いません)。マンガみたいな設定のストーリー展開は非常にチンケ。その代わり、ワイヤー等を最小限に抑えた格闘シーンは、中々迫力あるものに仕上がってました。前半のハイライトは多勢に無勢の狂犬ファイト。クライマックスは謎の刺客との一騎打ち。特にトイレの個室の中での戦いは、ユエン・ウーピンが見事な殺陣をつけて、「T3」のトイレ・ファイトを軽々と超えてます。それにしてもこの内容だと、ちょっと前なら絶対ヴァン・ダムが主演だったよなぁ…、6点献上。 [試写会(字幕)] 6点(2005-06-20 00:40:16) |
787. リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
多くの人が経験する社会生活上のジレンマ。普通の人はそれと折り合いを付けて暮らしてる訳ですが、この男にはそれが出来なかった…。彼の犯行は一応「計画的なテロ行為」になるんでしょうけど、映画を観る限り、実態は「通り魔殺人」と何ら変わることはない。本作はタイトルから想像されるサスペンス映画ではなく(原題はそのまま「リチャード・ニクソン暗殺」なので、「企てた男」を加えた邦題は良いセンスをしてると思う)、我々では中々動機を理解できない通り魔の心の中で、一概に「狂気」の一言では片付けられない「憎悪」が熟成されていく様子をじっくりと描いていく。社会的弱者を描く秀作という見方も出来ますが、個人的に主人公には共感し難く、演技以外の見所も無いので、私も余り楽しめませんでした、5点献上。 [映画館(字幕)] 5点(2005-06-20 00:39:52) |
788. ショー・ミー・ラヴ
映像のインディ臭さを音楽の使い方で中和した、「エヴァとステファンとすてきな家族」よりは楽しめる青春映画。この頃の女の子って、セクシャルな意味じゃなく同性愛的傾向があると思う。だから彼女達が真性のレズビアンかどうかは判りませんが、この友情譚は「下妻物語」にも通じますね。私が一番リアリティを感じたのは、アグネスと車椅子の子のやり取り。この二人は共に嫌われ者だから一緒にいる訳で、決してお互いを好きじゃない。嫌われ者も嫌われ者は嫌いなんです。ところで私には、アグネスはアンナ・パキン(「アミスタッド」のスペイン女王の頃)、エリンはスカーレット・ヨハンソン(「モンタナの風に抱かれて」の自閉症児の頃)、エリンの姉はエリカ・クリステンセン(現役でもいけるか?)に見えましたよ、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-06-20 00:39:25) |
789. クロッシング・ガード
《ネタバレ》 最初「クロッシング・ガード」という意味が解らなかったんですけど、日本で言えば交通指導員、通称「みどりのおばさん」のこと。つまりこのタイトルは、本作のジャック・ニコルソンを心の安全地帯へと導いたデヴィッド・モースのことを指してたんですね。ところで、最初から全く普通の人に見えないニコルソンは、本作では明らかなミス・キャスト。この役は「イン・ザ・ベッドルーム」のトム・ウィルキンソンみたいな人でないと、普通の人が背負わされた悲劇に見えない。そんなこともあって、中々興味深いテーマではありましたけど、今一つ感動には至りませんでした、6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-06-20 00:38:56) |
790. インディアン・ランナー
とにかく凄いのが、映画から滲み出てくる、とても90年代の作品とは思えない古臭さ。これは60年代末を舞台にした物語の所為ではなく、明らかに70年代臭さを狙って作ってある。正にアメリカン・ニュー・シネマの匂い。しかし私に言わせれば、それも今となってはアメリカン・オールド・シネマ。一貫してアメリカに於ける社会的弱者に視線を注ぐショーン・ペンの姿勢は素晴らしいと思いますけど、そのテーマをニュー・シネマ的に演出するという手法は、私には古臭く映ってしまう。現在の浮ついた演出に前面賛同はしませんが、映画には同時代的な視点も求めたいです、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-06-20 00:38:23) |
791. やかまし村の春・夏・秋・冬
子供達の夏休みの様子を追っただけの前作に対し、こちらは夏休み終了直後の初秋から、翌年の初夏にかけての物語。物語と言っても前作同様、今作にもストーリーらしいストーリーはありませんが、描かれる期間が長くなり、季節にも変化があり(厳しくも美しい自然が素晴らしい)、舞台に町や学校も加わるので、エピソードのボリュームは前作と比べて相当増えてる印象です。なので私にとっては、こっちの方が断然楽しめました。特に、前作と全く同じタイトル・バックから前作のラスト・シーンへ繋がるオープニングは、私の様な続編好きには堪らない演出なんです、6点献上。 [地上波(字幕)] 6点(2005-06-20 00:37:54) |
792. やかまし村の子どもたち
本作にストーリーらしいストーリーは皆無。村の子供達が夏休みの間中、遊び回ってるのをただ写してるだけ(いったい原作はどんな風になってるんだろう?)。「ラスムスくんの幸せをさがして」同様、緑の眩しい田園風景は非常に美しく、鑑賞中は村の素朴さ、子供達の純朴さ、遊びの楽しさに癒された様な気はするものの、「面白いか?」と問われれば、私にはとても「面白い」とは言えない代物。従って、申し訳ありませんが4点献上。 [地上波(字幕)] 4点(2005-06-20 00:37:29) |
793. マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ
ま、何とも味のある話ではありますが、事ある毎に星空をバックに語られるモノローグが鬱陶しくもあり、私もこの映画の良さが解らなかった者の一人です。そもそも、この出来の悪い少年自身が母親の病気を悪化させたんじゃないの? それに、犬と比べて自分を慰めるほど不幸か? イングマル君は私と比べたって幸せに見えるぞ。自身が子供の頃から子供が主役の映画が好きじゃない所為もあって、どうしても主人公の目線ではなく、大人の目線で見てしまう。各エピソードはそれなりに楽しいものばかりでしたけど、私は最後まで少年の視点に立てませんでした、5点献上。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-06-20 00:37:03) |
794. オズ
本作当時から数えて40年以上も前に作られた「オズの魔法使い」の「正当な」続編ですけど、本家よりも「ダーククリスタル」か「ネバーエンディング・ストーリー」の続編っぽい仕上がり。ファミリー向けに作られてた前作は、それにも拘らず世代や時代を超えた永久不変の名作ですけど、現代風にダークな世界観を持つ本作が、逆に子供騙しに見えてしまうのは何故か。また、「オズの~」の撮影技術や特撮は今見ても新鮮なのに、本作のはまんま20年前の技術にしか見えないのは何故か。ということで、9歳にして現在と全く変わらない顔立ちのフェアルーザ・バークに、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-06-20 00:36:37) |
795. ラスムスくんの幸せをさがして
フィルムがきちんとレストアされてただけあって、映し出されるスウェーデンの田園風景が非常に美しく、それだけで童話の雰囲気が充分再現されてます。私はアストリッド・リンドグレーンの児童文学を一つも読んだことがありませんが、この物語は私が「映画で」知っている他の著作とは違って、昔の児童文学ではある意味オーソドックスな孤児の主人公が、ささやかな冒険の果てに幸せに巡り合うというオーソドックスなものでした。それにしても、決してホームレスではないこの風来坊という「職業」には、ラスムスくんならずとも憧れるなぁ。彼は正しい選択をしましたネ、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-06-20 00:36:04) |
796. ザ・リング2
祝・中田秀夫監督ハリウッド進出…と、いきたい所ですけど、邦画リメイクに反感がなく、続編好きでもある私が観ても、本作に好意的感想は持ちかねます。そもそも「ハリウッド・オリジナル・ストーリー」ってのが、てんでダメ。折角前作でばっさりと削った日本版の悪い部分を、わざわざ続編で持ち出してくることないじゃない。また、サマラの呪いの源をアメリカ流に単純化・矮小化した上、こんな無茶苦茶なオチで解決なんて、納得しろと言う方が無理。大体、前作と辻褄が合ってないんじゃないの? これじゃ貞子も浮かばれないよ。ストーリーがこんなだから中田演出も相まって、まるで日本版「リング2」のリメイクを観てる雰囲気。しかも、馬の次に鹿を持ってくるセンス。それって自分達が馬鹿ってことを言いたいのか? 3点献上。 [試写会(字幕)] 3点(2005-06-12 00:10:54)(笑:1票) |
797. きみに読む物語
《ネタバレ》 何故「きみに読む物語」を現在の二人に似てない役者が演じたのか。それは妻が自分達の「物語」を忘れてるからです。妻が思い出した後、二人の若い頃の写真を「わざわざ」提示して、「物語」を「歴史」に変換したのは巧い演出でした。そして、「物語」を書いたのが妻の方だという点が本作最大の感動ポイント。しかしこれ、ストーリーのバランスが少し悪いと思う。主題はあくまでも現在の二人にある筈なのに、過去の話の方がメインになっちゃってます。それに、二人一緒に旅立ってしまうのも、余りにもクサい展開だったので、私は逆に泣けませんでした、6点献上。 [映画館(字幕)] 6点(2005-06-12 00:10:29) |
798. スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー
インディ映画ながら60億円以上の予算があった(?)訳だから、一概には比べられませんが、奇しくも同年度に同じ手法で映画を作った宇多田…もとい、紀里谷和明よりは遥かにヴィジュアル・センスもストーリー・テリングの才能も感じました。しかし、確かに「空想科学冒険活劇」と呼ぶに相応しいイメージとストーリーではあったものの、「レイダース/失われた聖櫃」を初めて観た時の様な新鮮な感動はありません。ヴィジュアル・イメージ自体にも斬新さが皆無なので、それが楽しめるのも前半まで。後半へ行くに従い画作りのチープさよりも、お話のチープさが鼻を突いてくる様になりました。あと、アンジー出番少な過ぎ。予告じゃグウィネス・パルトロウ以上のインパクトなのに、これじゃ助演どころかカメオ出演レベルです、5点献上。 [DVD(字幕)] 5点(2005-06-12 00:10:01) |
799. シルヴィア
一見、誰も彼も代わり映えのしない人生を送ってる我々「普通の人々」も、一人一人を良く観察してみれば、それぞれが個性的な生涯かもしれない。逆に本作みたいな映画に触れると、特別な生涯を送ったと思われがちの芸術家達も、彼らなりの似た様な人生に見えてしまう。芸術家も一人一人を良く観察すれば、それぞれが個性的生涯なのかもしれませんが、センシティヴでエキセントリック故に作品を残し、それ故に発狂するか自殺して人生の幕を閉じるというパターンは一緒。私は実際のシルヴィア・プラスを知りませんが、少なくともそんな印象を持ってしまうこの映画は、ワンパターンの凡庸な出来だと思います。グウィネス・パルトロウもこんな所でヌード見せてないで、「大いなる遺産」で脱ぎゃあ良かったのに…、4点献上。 [映画館(字幕)] 4点(2005-06-12 00:09:39) |
800. タイムライン
勢いだけで過去に向かう導入部で、既に観客は現代に置いてきぼりを食らってしまう。着いた途端に名も無き脇役は退場。「こっちには650年分の知識がある」等と大見得を切っておきながら、それが使われる様なシーンは皆無で、ただ逃げ回って捕まってを繰り返すだけ…って、お前ら、650年遅れてるんじゃないか? その後も馬鹿な行動しかとらない登場人物達。一人を助ける為に、一体何人死んだんだ?(ま、それはいつものハリウッド映画と同じですけど…) これはタイム・パラドックスも一切無視した上、話の面白さがまるで感じられない酷い脚本です(原作未読)、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2005-06-12 00:09:10) |