801. ビール・ストリートの恋人たち
《ネタバレ》 前作「ムーンライト」でもそうだったような、ちょっと突き放したような感じの冷めた描写。冤罪逮捕勾留という一大事も、割と淡々とした視点で進んでいく。わざとらしく盛り上げないところは一応好感が持てますし、時系列操作なども工夫が窺えます。ただそれが、突き抜けたところまで成功しているかといえば、そうでもないのですが。●ところで裁判は結局どうなったの?肝心の証人が行方不明という台詞がありましたが、それだけで公判は飛んでしまうんじゃない?何で長期間拘束されてるっぽいのか、そこからしてよく分かりませんでした。●主演のキキ・レインは、これが映画初出演のようなのですが、いい感じの目力と存在感で、今後に期待です。 [DVD(字幕)] 6点(2021-04-02 00:58:09) |
802. 地獄への逆襲
《ネタバレ》 やっぱり前作は、ジェシー&フランクの2枚看板のバランスで成り立っていたんだな。こっちの方は、とりあえずフランクが復讐するんだろうというのは一応理解できても、話がちっとも前に進まない。その上で、子分とか女性記者とかが足を引っ張ってくる。裁判以降の部分はさらにグダグダでした。物語としては一応前作で完結していたわけで、その後にもう一作作るというのに無理がありました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-03-31 01:37:45) |
803. 男はつらいよ お帰り 寅さん
《ネタバレ》 21世紀に入ってからは大駄作を頻発するようになってしまった山田監督だけに、見るのが結構怖かったのですが、まあ無難な内容にまとまっていました。とはいえ、結局は、自分たちで作り上げた製作対象に、自分たちがおんぶにだっこになっているというだけなのですが。実際、インパクトが発生するのって、回想シーンばかりだしね。●すでに指摘されていますが、ここまでやっておいて、泉の父の役者変更はないでしょ。御前様の方は「先代が・・・」の一言で何とか乗り切ってましたが、こっちはどうしようもありませんでした。ある時期から寺尾さんは映画に出てないようなのですが、もしどうしても無理なのなら、このシーン自体を入れるべきではありませんでした。●最後の歴代マドンナ総出演シーン、結局はこれがやりたくてそこから逆算したんでしょ、とは思いつつ、やはり見入ってしまう。しかし、(1)何でわざわざ逆順にしたの?(2)しかもそれでも数箇所、順番が前後してない?誰もチェックしなかった?(3)複数回出演したマドンナは、やはりそれぞれの回で出すべきでした。異なる役の場合はなおさら(女優が共通するだけで、寅さんとの関わりという意味では別人物なのですから)。(4)これでいくと、岸本加世子とか檀ふみとか大竹しのぶも、マドンナ扱いということになるんですかね(あ、田中絹代も・・・)。●で、最後にこうするんだったら、そもそもこの作品はさくら視点で作ってほしかった、ということに後で気づきました。●それから、この作品のMVPは、何といっても源ちゃんこと佐藤蛾次郎さんです。とらやファミリーの生き残りとして、よくぞここまで出ていただきました。第1作からここまで出続けているのは、博とさくらを除けば源ちゃんだけです(一作だけ事故で欠席ですが)。本当におつかれさまでした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-03-30 01:02:13)(良:1票) |
804. グリーンブック
《ネタバレ》 よくまとまった作品だとは思いますが、逆にいうと優等生作品の枠に収まった作品でしかない。一つ一つのシーンから、「ほ~らこんなところにも自分たちは目配りができてるでしょ~」「一方に偏らないバランスとった描写してるでしょ~」という制作側の自慢(と計算)が随所で見えているのです。一方で、例えば「北部ではチヤホヤされて金も稼げるドクが、なぜわざわざ苦労が目に見える南部を目指すのか?」という最も重要な点は、同行者からの台詞でしか語られない。いや、説明はそれだけでいいんだけど、それがドクの行動に具現化されていないので、それぞれがばらばらに完結しているだけ。●トニー役には、やっぱりイタリア系俳優を当てるべきだったと思いますけど。作中でその点が再三言及されていることからすればなおさらです。アリは、気品と高貴性ある主人公を頑張って表現しようとはしていますが、まだ頑張りが見えるレベルであって、内面からそれがにじみ出てくるところまでは至っていない。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-03-28 23:54:58) |
805. 地獄への道
《ネタバレ》 導入部は、なかなか正統派的な復讐譚で、この後主人公が仲間を率いて各地で強盗に大活躍!かと思ったら、いきなり自首という超展開に唖然。その後兄が助けに来て持ち直すものの、そこから妙に停滞してしまう。再び前線に戻るのが、どうも妻子が別の男とうまくいきそうだからという小市民的動機なのにちょっと笑いつつ、そこでさらに大暴れかと思ったら、どうも終幕に向けては腰砕けに終わってしまいました。振り返ってみれば、ヒロインが全然機能していなくて、何か主人公を助けるわけでもなく、ひたすらうじうじ愚痴っているだけ。その割に出番は比較的多いものだから、そのたびに作品がエンストを起こしてしまうのです。こういう系統でヒロインが魅力的でないというのは、なかなか致命的。しかしフォンダの渋いサポートで一定の質は維持されているという、微妙なバランスの作品。 [DVD(字幕)] 6点(2021-03-23 00:40:40) |
806. ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択
《ネタバレ》 とりあえず3人の女性のストーリーがあって、それが3本柱になっているという予想はしたのですが、その3本柱がいろいろ絡み合ってまとまっていくのかと思ったら、まったく絡まない。最初の30分くらい、いきなりローラ・ダーンのパート、その後はミシェル・ウィリアムズのパート、と別々に進行していきます。これはもしかしてオムニバスなのか、と思ったら、よーく見るとちょっとだけ絡んでいました。しかしそれならこんな構成にする必要はなかったというか、もうちょっと何とかできただろ。●各パートでいえば、出来が一番いいのは最初のローラ・ダーンのパートです。ただこれも、ジャレッド・ハリスの怪演あってのことですね。 [DVD(字幕)] 4点(2021-03-22 01:16:19) |
807. 海賊とよばれた男
出てくる役者のことごとくが役作りも行っていなければ演技もつけられていないので、見ていて非常に辛い。しかし吉岡君、もう50近くになっているのに、まだ演技力にまったく進歩がないとは・・・。●しかし最大の戦犯は、シーンの意味など考えることもなくどこを切っても同じようなただのBGMを無思慮にかぶせまくっている音楽担当者だと思う。ここまで手抜きがはっきり分かってしまうものを堂々と提出できる神経に、まず驚く。というか、監督もちゃんとダメ出ししろよ。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2021-03-20 00:35:41) |
808. ビューティフル・ボーイ(2003)
《ネタバレ》 実在のムエタイ選手、パリンヤー・ジャルーンポンの半世紀です。家計を助けるためにムエタイのトレーニングや試合を積み重ねながら、同時にトランスジェンダーという自分の内面にも(そして外からの偏見にも)向き合わなければならなかったという、そこだけでもいろんなドラマが予想されますが、作品としては比較的淡々と素直に順を追っていっています。わざとらしい盛り上げとかはありません。むしろ、主人公が成功すればするほど、かえって孤独が浮かび上がってきています。クライマックスは東京ドームでの井上京子との異種格闘技戦が始まって、ええっ?と思ったのですが、これも実話通りなのですね。また、パリンヤー選手本人(選手引退後は女優)も、主人公に女性ホルモン剤を渡すエステティシャン役で出演しています。 [DVD(字幕)] 6点(2021-03-14 23:55:52) |
809. 禁断の惑星
《ネタバレ》 いや、何か、これは凄い。宇宙船にしても、博士宅にしても、最小限のセットをフルに使い回している感がありありで微笑ましいんだけど、その中で予想もしないような内容が展開されていく。何よりも、博士の人物造形と語り口がいいです。変にエキセントリックさを強調することもなく、探検隊に対しても、強気で警戒心まるだしでありながら、同時に紳士的で丁寧でもある。そしてその口から淀みなく出てくる怒濤の過去話。そう、変な再現映像とかがないが故に、言葉には説得力があるし、全員が真剣にならざるをえないのです。そしてだからこそ、ラストのあのオチが説得力を有してきます。一方で、すでに数多く指摘されているとおり、というか見た人は誰でもそう思うとおり、あのミニスカワンピお姉さんによる彩りが作品の価値を高めていることは、いうまでもありません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-03-11 00:19:28)(良:1票) |
810. セイヴ・ザ・タイガー
主人公が特に脈絡なくあっちこっちでいろいろ人と喋ったりどうしたりしているのを、順次継いでいっているだけの作品。ジャック・レモンがオスカー受賞!というのが、かえって売り出しの障害になったのではないだろうか。何も知らずにこれを見たら彼が誤解されるから、国内未公開なのは実は正解だったのかもしれない。 [DVD(字幕)] 3点(2021-03-10 01:29:33) |
811. 大地震(1974)
《ネタバレ》 地震で部屋とか街中が散らかるのはやむをえないのだが、映画そのものがとっ散らかってはいけないだろうに・・・。導入部から、特に個性のない人たちの特に何も際立ってないストーリーがばらまかれ、そのまま地震へと突入する。よってその後も、みんながワーワー騒いでいるだけにしかなってないのです。●それとあの決壊するダム、流水がそのまま下部の住宅街(?)を直撃しているんだけど、普段の放水はどうしていたんだろう? [DVD(字幕)] 3点(2021-03-09 01:26:55) |
812. 男はつらいよ 寅次郎紅の花
《ネタバレ》 この作品は、最後の最後にリリーの「もう一度のマドンナ」が間に合って完成し、それでシリーズがフィニッシュした、という意味において奇跡の作品。満男の所業についてディスカッションをする振りをしながら、かつて自分に踏み込んでくれなかった寅への怨み節をさらっと言葉に乗せる、これこそリリー。●そして、この物語の真の着地点は、寅とリリーがどうこうでもなく、ましてや満男君と泉云々でもなく、最後に二人っきりで残された博とさくらが(今回は工場のメンバーも訪問して来ない)、映画でも見に行こうかと語る場面ではないでしょうか。だって、このシリーズは、博とさくらの恋物語から始まったんですから。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-03-07 00:45:24)(良:1票) |
813. ウエストワールド
《ネタバレ》 何というか、どこまでもあふれ出て暴走する創作イメージを、辛うじてその時点での技術(と、もしかするとこの作品の予算)で可能な範囲で具現化しました、という印象を受けます。1つの作品としてまとまったこと自体が奇跡かもしれません。見ているときは何じゃこれ状態だったのですが、終わった後でじわじわしみ出してきます。全体のあからさまな人工物性がもたらす違和感的恐怖は、後に「トゥルーマン・ショー」あたりに受け継がれたような気がしています。●それにしても最後の囚われのお姫様(当然のように手錠がすぐ外れる)、やっぱりそういう設定ニーズもありなんかい!とちょっとウケてしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-03-03 01:06:13) |
814. 男はつらいよ 拝啓車寅次郎様
《ネタバレ》 90年代に入ったくらいから、寅さんはもちろんとらや(くるまや)ファミリーまで一気に老け込んできたんだけど、それより先にスタッフの方が力尽きたというか息が上がってしまったの?と思うくらい、内容に乏しい作品。●かたせ梨乃はマドンナとして機能していないし、逆に女優としての魅力も引き出されていない。牧瀬里穂は、最初の方の不機嫌なシーンが、本当に怒っているようにしか見えない。よって、その後に満男君相手に急にいい関係になっても、不自然にしか見えないのです。●この作品の最大の意義は、谷よしのさんの登場シーンです。次作には出演しなかった谷さんは、これがシリーズ登場最終作品になりました。その谷さん扮する宿屋のお婆ちゃんに対し、寅さんは「世話になったね。ありがとう」と挨拶し、心付けを渡します。脚本上はまったく必要のないシーンでです。これは絶対に、長年にわたりシリーズを飾り続けてきた谷さんに対する制作者の感謝の表れであると考えています。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2021-03-02 21:03:01)(良:1票) |
815. フェリーニのアマルコルド
冒頭、延々と続く火祭り(?)のシークエンスはなかなか期待させましたが、その後は、思いつきで設定しただけのようなシーンが継ぎ接ぎで最後まで続いていくだけでした。 [DVD(字幕)] 3点(2021-03-01 00:44:06) |
816. ブルジョワジーの秘かな愉しみ
《ネタバレ》 各シーンの顛末とか次のシーンへの流れ方なんかは、ことごとく予想を外してくるんだけど、なぜか最後まであるようなないような一本の筋でつながっているという、何とも困った作品。終盤の○オチ連発も、何か技巧に走りすぎていて鼻白む気がしないでもないが、そんなことも制作者の想定内なのだろう。こんなアホな人物たちの現実なんてどうでもいい、というシニカルな視線すら感じられる。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-28 18:27:58) |
817. 候補者ビル・マッケイ
《ネタバレ》 若き弁護士ロバート・レッドフォードが選挙戦に出馬して現職に挑む!という出だしでいろいろ想像するのですが、予想に反して、敵が何か汚い手段を使うとか、それに対抗してこっちもとか、そういうのはまったくありません。裏切り者やスパイが登場してどうとかもありません。ひたすら地道な(といっても時には派手な)選挙戦の姿を追っていくだけ。その中で例えば、山火事が起こってここでアピール!と駆けつけたら敵の腕の方が一枚上手だったとか、集会場にお客さんが全然いないとか、ここぞというときにマイクのトラブルとか、静かに集中したいときに用件やら何やらでイライラさせられたりとか、そういう「日常感」の描写のバランスが絶妙です。●振り返ってみれば、主人公も決して中身空っぽの操り人形というわけではなく、それなりのことは考えていました。しかしそれをじわじわと満潮のように浸食してきていつしか濁流となっていく、それが選挙戦なのです。この作品はその全体構造のとり方が優れていますし、そうであるからこそ、あのラストが着地点としてしっかり決まっています。 [DVD(字幕)] 7点(2021-02-25 00:48:06) |
818. 映画に愛をこめて/アメリカの夜
映画製作の裏側をこれでもかというくらい見せて(再現して)くれるのは、それはそれで興味深いのですが、そのまんま何のひねりもなく最後まで行ってしまわれると・・・。鑑賞の対象が「この映画はどうなるのか」ではなく「作中の映画はどうなるのか」になってしまいます。ジャクリーン・ビセットの美しさを保存した功績に+1点。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-24 00:59:33) |
819. 博士の愛した数式
《ネタバレ》 肝心の「80分しか記憶が保たない」という設定が、物語の中で何一つ生かされていない。つまり、浅丘ルリ子が最初に台詞でそう言っている、というだけ。●寺尾聰はただのいい人に見えてしまい、数学という特定の世界にそこまで没入しているようには見えない。十分周りとコミュニケートとれてるじゃん。最初の浅丘の「トラブルをこちらに持ち込まないように」云々という台詞からして、意味がなくなっています。●深津絵里は、家事の所作1つを見ても、10年キャリアの家政婦にはとても見えない。●台詞は全役者が棒読みレベルですが、これはその程度の場しか与えられない脚本と演出の責任。●一番の問題は、この話の中核要素であるはずの数学が、エピソードの紹介レベルにしか扱われていないこと。その奥深さにまったく踏み込んでいない、というかむしろそこから制作側が逃げてしまっているということ。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2021-02-23 01:39:44) |
820. 男はつらいよ 寅次郎の縁談
《ネタバレ》 結局何だったのかよく分からないゴクミシリーズも一応完結して、今回は元々あった基本フォーマット(?)に。見ていて思ったのは、やはり寅さんは、「縁側のある家」が似合うということ。この光景の中にいるだけで、すでに別世界が形成されている。●年齢を考えても、今さら寅さんが我を忘れてあれこれにはなりにくいと思うんだけど、それでもつかの間の高松デートを見せてくれたのは、やっぱりファンサービスだったのかな。よく考えると、寅さんがマドンナとサシでデートというのも、実は久しぶりでは?そして最後には、マドンナのとらや(くるまや)訪問というかつての定番締めです。●今回は導入部が象徴するように、満男の社会への入門というのが1つのテーマなのですが、島での満男の労働体験を割と丁寧に追っているのが成功しています。そこからすると、博にはもうちょっと何か見せ場が欲しいところでしたが。一方で、今回は珍しくさくらが「何でも先回りしてしまう鬱陶しいママ」になってしまっていて、こういうさくらはあまり見たくありませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-02-22 00:45:02) |