801. ファンタズム(2014)<OV>
《ネタバレ》 自主映画ということだろうが、各地の映画祭に出して評判がよかったらしい。同名の洋画(1979年製作、以降シリーズ化)との関係があるかどうかはわからない。 これを単なるホラー映画として見た場合、通常の和風ホラーの特徴を備えたあまり独創性のない映画に見える(大して怖くもない)。家の中に何か出るとか、最後に現場へ突撃するといった展開は基本的に既存パターンに乗っかった感じがある。また子どもの絵で区切りを入れるのは悪くないが「呪怨」の章立て方法を真似たようでもあり、ビデオ映像の顔が歪むのもありきたりである。ただ危機が迫った場面でドラのような音が鳴り渡るといったところは独特な表現だったかも知れない。 また娘役の末永みゆという人は「日テレジェニック2013グランプリ」とのことで、それなりにアイドルホラーとしての性質も備えていたりする。その面からすれば「あみちゃん」の章が見どころだろうが、これもありがちな怖がらせに終わっていたようで、この部分が最も普通の低予算C級ホラーのように見えた。 一方この映画で特徴的だったのは、怖さというより家族の心の問題を根幹に据えたように感じられることである。個別の場面としては息子の死去後の、平穏に見えながらも爆発寸前のような夕食場面には緊張感を覚えた。そのあと最初の怖い場面でも、心霊現象の予兆というより精神面の危機が強調されており、こういうところにこの映画としての方向性が示されていたように思われる。 また特に印象的だったのは、妻(母)が降霊術を必要とした理由がわかったと降霊術師が告げて以降「理解できなくてもやれることはあります」までの場面である。ここは単純に夫(父)の知的能力の限界を示したようでもあるが(幅が狭く硬直的)、より一般化して考えると、理性的判断と心の問題は互いに排他的なものでなく別系統で併存すべきものであって、深刻な齟齬が生じた場合は理性の方が心の問題に寄り添う必要がある、というように受け取れた。 劇中では、最初は気丈そうに見えた妻(母)が表面では理性的な態度を崩さないながらも、内心とのギャップに耐えかねて日常世界から外れていくのが痛々しく見えた。ラストは「予言」(2004)のようでもあるが、自分としては全体的に「仄暗い水の底から」(2001)を想起する。似ているところがあるから悪いというわけではなく、同種の感慨を覚えるいい映画だった。 [DVD(邦画)] 6点(2016-07-09 09:30:28)(良:1票) |
802. -×- (マイナス・カケル・マイナス)
《ネタバレ》 とりあえず密度の高いものをじっくり見せられた気はするが、娯楽気分で見るのは厳しい。 人の神経を逆撫でする要素を各所に多数入れてあり、また人物の会話も素直につながらず、何かと棘が刺さるようで苛立ちが募る。終盤に至ってもまだ緊張を強いられる気がする一方、登場人物が社会通念を無視した感情表現をするのが気に障って安心して見ていられない(公共交通機関内で大声で歌うなど)。個人的感覚としては劇中に和む場面が全くなかったが、そのように延々と精神的負荷をかけられた後で、最後に中学生がにっこり笑った(+金魚を入れた、襟を洗った、チョコレートが落ちた、アパート前にタクシーを止めた)くらいでは心の収支がプラスに転じない。登場人物に心底共感できる観客なら別かも知れないが、自分としては見るのがつらい感じの映画だった。 またこの映画で、相互に関係しない物語をあえて一緒にしてみせたことにはあまり積極的な意義が感じられない。自分としては最後にどうつながるのかを期待していたわけだが、その期待が満足させられなかったのも全体としてマイナス方向に作用している。自分の感覚でいえば、人はそれぞれ事情を抱えているので世界情勢とか他人の動向など視野に入らなくても仕方ないだろうと思うわけだが、まあできれば世界の広がりに関する想像力くらいはみな持っていた方がいいという気はしなくもない。 ところで女子中学生役の寿美菜子という人は、現時点では声優として有名のようだが(自分の知る範囲では「けいおん!」の琴吹紬役)、この映画を撮影したのは2007年とのことで、その時点ではまだ15~16歳だったようである。劇中ずっと不穏な表情だったこの人が終盤では普通に可愛らしく見えたのは悪くなかった。またその友人役の大島正華という人も、年齢(14歳くらい?)の割に面構えに迫力がある。そのほか、近年は怖い役ばかりやっている感じの長宗我部陽子さんが、この映画では普通に(というか非常に)色気と可愛気のある女性役なのは結構なことだった。それでも少し怖い感じだが。 [DVD(邦画)] 5点(2016-07-09 09:30:25) |
803. 賃走談 2号車<OV>
《ネタバレ》 「賃走談 1号車」の続きであり、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「2」である。「1」と同じく古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。 【帰ってきた女】 視聴環境によるかも知れないが画面が暗すぎる(女優の顔がよく見えないではないか)。また男の口調が気に入らない(3人とも)。話の基本構造としては単純だが、しかし登場人物の立場によって出来事の性質が変わるのは面白い。[4] 【チイちゃん】 雨の日の不吉感がある。人物を暗く見せたり明るく見せたりして混乱させるのが面白い。印象が二転三転する。[4] 【くりかえす最後の記憶】 題名だけでどういう話かわかってしまい、また男の行動で何が起こったのか容易に想像できる。そもそも男の動機が不明なのは困ったことだが、最大の問題点はタクシーがほとんど関係ないことである。なお管理人のジョークはオヤジじみているが、年長者が若年者に気配りしている感じが出ており、彼我の年齢差を超えてかろうじて同調してもらえそうなあたりを狙っているのがいい。[4] 【怪談タクシー】 悪くない題名である。冷静な運転手と感情豊かな客の対比は面白い。愛すべき女性像に好感が持たれるが、最後は可哀想で切なくなる。2006年でさえなく2014年だったことの衝撃が印象的だった。ただ最後の駄目押しは聞かなくてもよかった。別の締め方がなかったものか。[7] 前作と同じくスターダストプロモーションの所属タレントが多く出演しているが、今回は女優の方に少し重心が移った感じで、タクシー運転手が主人公とも限らなくなっている。基本的に若手女優はスターダストの所属だが、「チイちゃん」だけは女優といっても子役(2005年生まれ)である。 前作と同じ企画の一部であるから水準としては変わりなく、怖いものではないが映像作品としての印象は悪くない。最底辺の安物ホラー群の中にも、結構見られるものがあるのだなとこれで少し見直した。特に「怪談タクシー」は個人的に好きな女優が出ていることもあって印象深いエピソードである。 [DVD(邦画)] 5点(2016-07-03 18:52:49) |
804. 賃走談 1号車<OV>
《ネタバレ》 「タクシー怪談に焦点を絞った」ホラーとのことで、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「1」である。この世界では名の知られた?古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。 【手形】 夜勤明けの風景が爽やかだが音楽が沈痛。カーテンの色に溶け込んでいた脚は誰だったのか。心霊現象が中心ではなく「ほんとに怖いのは人間」的な話だったのは残念だが、逃げ出そうとした女性客と死にそうな女性客はなかなか真に迫っていた。[4] 【犬】 平凡な話かと思ったら最後に意表をつかれた。それを含めてありきたりな展開と評されるかも知れないが、あえて先読みしようとせずにボーッと見ている限りは少し驚かされる。[4] 【歪み】 運転手は学習能力がないのかと思ったが、どうやっても同じ結果になるということだったらしい。ラストはよくわからなかったが、抜本的解決を図ろうとしたらこうなったということか。女性客(演・相葉香凛)はほんわか系だが、最後の一言に裏があるのではと勘繰ってしまう。[4] 【11号車】 第1話の「手形」を別の監督が引き継いで後日談を作った形になっている。「手形」の方は「ほんとに怖いのは人間」的性格が強かったが、それは発端がそうだったというだけで、ここに至って本格的な心霊現象に移行したらしい。そうすると逆にこれが怪談の本体であって「手形」が前日談とも捉えられる。窓に映る顔の怖さが少し目を引いたが、終盤の視覚効果がいかにも安い感じで、またグロいのも不要に思われる。 なお見栄晴も年を取ったものだと思うが、同じように自分も年を取ったわけである。[3] 企画・製作が株式会社SDPであり、同社が関わった他のオムニバスホラーと同様、スターダストプロモーションの所属タレントを多く出演させている。他のものは女優の魅力で見せるものが多い気がするが、今回のこれは全てタクシー運転手が主人公になっており、男に重点が置かれた印象が強い。 題名は“珍走団”から来ていると思われるのでふざけた感じだが、映像作品としての印象は悪くなく、話としても少し気の利いた作りになっている。どうせ最底辺の安物ホラーだろうと思っていたら意外に悪くなかったというのが実感だった。 [DVD(邦画)] 4点(2016-07-03 18:52:47) |
805. 怖譚 コワタン<OV>
《ネタバレ》 「最恐の女子校生ホラー」とのことで、全5話のオムニバスである。[ ]は点数。 【集金人】 冒頭のナレーションで回想譚とわかり、本人は無事だったと確認されるので安心してしまう。“あとで聞いたらこうだった”というオチまでついているのは、実話というより古風な読者投稿の雰囲気を出しているともいえる。暗闇の顔が不気味。[3] 【異界からの招待状】 怖いことは怖いが心霊写真の怖さである。主人公の行動が不自然で、ベランダに出た時点で右側が気にならないはずがない。[3] 【理想のトモダチ】 時間が最長。子役時代からキャリアの長い役者を出してエピソードとしての充実を図ったのかも知れないが、出来事自体に新味がなく、ただの女子高生?が超自然的能力を発揮して無理矢理な流血沙汰に至る話を素直に受け入れるわけにはいかない。主人公が錯乱した場面で、近くの仮設ゲートが風で揺れていたのは巧妙な表現かと思ったが、これは実際に風の強い日に撮影したようでどれだけ意図したものか不明。童顔の殺人者に+1点。[3] 【ユウタイリダツ】 時間が最短。美少女がパンツを下ろして便器に腰かけているのは大胆。怖いというよりほのぼの系。[4] 【覗き魔】 個人的好みとしてはこれの主役の人(青山奈桜)が一番かわいく見える。見た目は可愛いが近所のオバサンと比べると明らかに長身で(165.5cm)、最近の日本人は体格がよくなったものだという感慨がある。この人に+1点。[4] 【ベッドの下に…】 大変よろしくない特徴を備えた最低ホラーである。題名だけでわかる古いネタを使っているが、原話を改変した結果として何の捻りもないただの殺人になってしまっている。これで警察の追及を受けなくて済むと思っているのかどうか。意外性を優先して現実味を簡単に犠牲にしたように見えるが、超常現象に頼らないつもりならもう少しありそうな話にしてもらいたい。ただし「みんな言ってるよ」が2回出たのは少しよかった。[1] SDPが製作し、スターダストプロモーションの所属タレントが多く出演するオムニバスホラーで、今回は若手女優に重点を置いたらしい。 女子高生から取材した実話をもとにしたとのことだが、どこまで実話なのか怪しい話ばかりである。オーソドックスな怖さを重視した面もあるが、外と思ったら中にいた、とか、どこかと思ったらここだった、といったありがちなパターンで済ませたところもあり、全体的に納得できる水準ではない。 [DVD(邦画)] 3点(2016-07-03 18:52:44) |
806. 天使の欲望(2013)<OV>
《ネタバレ》 宣伝写真の印象が強烈だったので見たが、ホラーではなく真面目な映画である。映画美学校フィクション・コース第13期高等科助成金作品とのことで、商業映画ではないだろうがDVD化はされており、ネット上では評価すべき点を挙げたレビューもあって納得させられる。1979年の同名の邦画との関係は不明だが、全く無関係ということでもないらしい。 全体として昭和のスケ番映画を意識して作られているとのことだったが、そのように聞くと題名の字体や最初にクレジットを出す構成、また現代にしては違和感のある台詞や棒読みのような口調までがそういう意図だったように思われて来る。棒読みは明らかに不自然だが、そのうち耳に馴染んで来て、「甘ったれるんじゃないよ」のあたりまで来ると心地よく聞こえるようになる。この場面は発声がいいからかも知れない。 物語の内容に関しては、まず女性の心情に関わることは自分にはわからない…ということは、この映画のほとんどの部分がわからない(監督の説明は理解できる)。ほか男に関していうと幼馴染の性格付けが非常に変で、制作側の意図に合わせて都合のいい行動をするキャラクターを作っただけに見える。だいたいこういう奴が純な心で思いを寄せたくなるような外見を主人公はしていない。また最初に主人公が帰って来た動機がどうも不明瞭に感じられ、これと実際に行われたこととの関係も明確でなく、そのため納得のいく全体構成ができていなかったように思われる。 結果として、この映画が好きになれる要素がなかったのは残念だが、監督の名前は憶えた(いそがい、という読み方をするのは別人の例で知っていた)ので次に期待したい。 [DVD(邦画)] 3点(2016-06-28 22:14:02) |
807. 不良少女 魔子
《ネタバレ》 世代限定の映画のような気もするが、とりあえず思ったことを書かせていただく。 まず題名の「少女」が意味不明である。主人公をはじめとしてみな外見的にはオトナに見えるわけだが、あえて「少女」なのは精神的に未成熟だということか。主人公に関していえば、自由に生きたいのに邪魔ばかり多い、と当人は思っていたかも知れないが、現実にはどこまでも優しい兄の庇護があってこそのやりたい放題だったわけである。誰かに守られていながら反抗するという甘えの構造は、劇中では兄だが親に置き換えても同じだろう。これではただの駄々っ子である。 またこの映画では、主人公が盾突く相手が国家権力などではなく市井の暴力組織であり、国家が諸悪の根源だといった責任転嫁ができない設定になっている。劇中では社会の表も裏も関係なく、どんな世界にもその場その場の仁義がある、という極めて当たり前のことを若年者に突きつけていたように見えたが、それを主人公は全く認識できていなかったようで、そういう点でも人になり切れない少女ということだろう。 もしかすると当時の感覚としては、単純に若者の反抗や女性の暴力を小気味いいものとして捉えるとか、あるいは劇中人物の閉塞感と苛立ちを自分のこととして共感するような見方が普通だったのかも知れないが、世代も年代も違う自分としてはそれをそのまま肯定することはできない。普通に見る限り、どこまでも好き勝手に生きようとして周囲を巻き込んで破滅してしまい、結果的に“魔”の字にふさわしい役回りになった少女の悲しい愚かさを描いた映画に思われる。 主人公にしても、一途に妹を思う兄の苦しい立場がわからなかったはずはないのであって、劇中で自分が唯一共感できるのはこの兄だった。 なお主演の夏純子さんは当時日活の専属で、これ以前からスケ番映画の主役をこなしてきていたが、この映画の後に日活がロマンポルノ路線に転換したため松竹に移籍したとのことである。その後もしばらく各種映画に出演していたが(脇役か端役)、個人的にはこの映画の直後の特撮TV番組「シルバー仮面」(1971)でのレギュラー出演が印象深い。日活でスケ番をやっていた頃は野性的と見られていたようだが、自分としては唇を引き締めてきりっとした顔に見える方が好きだ(惚れている)。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-28 22:13:59) |
808. TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ
《ネタバレ》 公開初日の夜に見たが、特に待ちかねていたというわけでもなく、どうせそのうち見るなら余裕がある時に見ておくという程度のことである。 見た結果としては、やっていること自体は否定しないが全面的には乗れないという微妙な状態だった。展開が早いため咀嚼している暇がなく、直前に何があったかも忘れてしまう。ギャグ連発のため笑える観客は笑えるだろうが、自分として笑ったのは3箇所だけだった(チョーキング、フレームアウト、寒いので○○○と叫ぶ)。他の観客が声を出して笑ったのは犬の発情場面だったようで、ほかにも下劣なネタが多かったが、最近見た映画との比較では「みんな!エスパーだよ!」よりは穏健である。 ウラシマ効果のようなものが短時間で拡大していくのは本来切ない展開のはずだが、主人公がバカのため話が全く重くならない。ストーリー全体として何かを語るというよりも、個々の場面でちょっとした人生訓を軽く織り交ぜながら進める形になっている。正直少し長いと思ったが、終盤のキス(鳥と老婆)のしみじみ感からエンディングのライブに続く盛り上げなどはそれなりの感じだった。 登場人物としては、主人公はバカだがヒロインの人物像は好印象である。森川葵段階ではまだ人間性を量りかねる状態だったが、宮沢りえ段階に至ってこういう人だったのかと落ち着くところがある。赤鬼娘も強面ながらかわいいところがあって結構だった。 また出演者が豪華にもかかわらず誰がどこに出ているかわからないのは、神木隆之介も出ていた「妖怪大戦争」のようでもある。個人的にはほとんど誰にも気づかないで終わったが、「大木家のたのしい旅行」で地獄の執事だった荒川良々が天国にいたのは微妙なジョークにも見えた。 なおこの映画で改めて気づかされたのは、畜生道に落ちると次の生存期間が極めて短く終わる恐れがあるということだった(劇中ではほとんど瞬殺)。とりあえず人生を大事にしましょうということになるはずだが、地獄の方が居心地がいいというのでは教訓にも何もなっていない。 [映画館(邦画)] 5点(2016-06-26 13:40:38)(良:1票) |
809. カルト
《ネタバレ》 この監督のフェイクドキュメンタリー路線の一作かも知れないが、今回は本人役の芸能人を主要人物として出したことで、初めから作り物と割り切って見られるものになっている。途中からフィクションの印象がさらに強くなり、後半になって登場する霊能者は明らかに役者が演じていた感じだが、今度は逆に最初からいた芸能人が現実との接点を残す形になってフェイクドキュメンタリー風味が持続する。序盤では見知った芸能人のユーモラスな会話が面白いが、後半はあからさまにマンガっぽい人格を役者が白々しく演じるのが可笑しいなど、笑いの種類でも前後半に違いがあったように見える。 またストーリーとしては、最初から最後まで一応筋が通っているようでいて、途中で微妙な齟齬が生じていた気がしなくもない。最後が唐突に打ち切りになるだけでなく、途中段階で基本設定を変えながら延長していく(話も次第に大きくなっていく)といった点でも他ジャンルのパロディになっていたかも知れない。 他の同種映画と比較すると、例えば「オカルト」が純正フェイクドキュメンタリーホラー、「シロメ」がフェイクドキュメンタリーホラー風アイドル映画だったとすれば、これはフェイクドキュメンタリー風のホラーコメディ(マンガの実写化風)というところか。複合的でなかなか整理が難しいが、さまざまなエンタメ趣向を盛り込んだサービス満載の映画と思えばいいかも知れない。 ただし最後はちょっと何とかしてくれという感じで、ここまでに一応ホラー映画の体裁ができているのだから、これはさすがに少しおふざけが過ぎる印象があった。そういうものにどこまで乗れるかという問題もあって、個人的充足感としては「シロメ」に負けているという結果だった。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-23 19:44:59) |
810. シロメ
《ネタバレ》 別にこのグループのファンではないが率直な感想として、今から6年前ともなるとさすがに皆さん若くて可愛らしいのが新鮮である。自分としては昔から連続的に見てきたわけではないので、今の目で見ると可愛すぎて一瞬誰だかわからない人もいる。佐々木彩夏がほっそりしているのは感動的だった。 映画としても、評判は悪いようだが自分的には結構面白く見られるものになっており、制作側のわざとらしい怖がらせも、ももクロ側の大げさな反応もかなり笑える。本気で怖がって泣いていた人には申し訳ないが、当時これを見ていたら一発でももクロちゃんが大好きになっていただろうと思われるので、そういう観点からすれば、フェイクドキュメンタリー監督としての手腕が発揮されたアイドル映画、というのが妥当な理解ではないかという気がした。 悪魔に魂を売ってまで願ったにもかかわらず、残念ながらこの年の紅白出場は叶わなかったことになるが(歴史的事実として)、その後に実力でのし上がったわけなので全く問題ない。今後のさらなる活躍を祈りたい。 なおネタばらしは学校の廊下で行われていたが、直前に「おなか減った」「やり切った感があるから…」という言葉が聞かれたので、二階で歌って踊って願いごとをしてからの帰り道だったかと思われる。その後の反応を見ていると、早見あかりが仕掛け人側だったほかに百田夏菜子も加担していた疑いがあり、その後にいた有安杏果は本気で怒っていたようである。怒った顔が超かわいいというと怒られるだろうが。また高城れにが浄霊師の先生に抱きついて頭ポンポンされていたのは笑った。この場面では玉井詩織も大泣きだったようで微笑ましい。 [DVD(邦画)] 6点(2016-06-23 19:44:56) |
811. オカルト
《ネタバレ》 この監督のフェイクドキュメンタリー路線の一作だろうが、今回すでにこの道を極めたようにも見える。同系統の「ノロイ」(2005)にあった微妙なおふざけ感は目立たなくなった印象があり(笑ったのは近藤という人物が公園で取材中止になった場面のみ)、また見ている人間のところにまでヤバいものがはみ出して来そうな感覚も特にない。そういったことを犠牲にしてこの形式としての純度を高めたようにも見えるので、一般的な娯楽映画としては「ノロイ」の方が勝っていると思われる。 そういうものでも当方としては一応付き合う気があって見ていたわけだが、それでも特に前半で、何が起きるか起きないかわからない状態で延々と派遣労働者の日常を見ているのは結構つらいものがあった。これが本物のドキュメンタリーだったとしても、ここまでどうでもいい映像は使わないだろうと思わせるものがあり、それでこの人物に愛着がわくならいいだろうが、自分としてはそこまで心に愛がない。またラストに関しては、21年間もビデオカメラを預かっておいてあれしか撮れなかったのかと呆れるわけだが、しかし21年間あれがずっと続いていたために、長く撮っても短くしても同じだったとすればまさに地獄である。 なお今回は、フェイクのエンドクレジットで劇中人物の名前を出した後に、本物のエンドクレジットで本物の出演者の名前を出していたのが正直な態度だった。劇中の白石晃士というディレクターはこの映画の監督本人だが、栗林忍というADもこの映画の助監督本人だったようで、本物のエンドクレジットでは出演者でなく助監督として名前が出ている。この人は一時期「いちごちゃん」と呼ばれて、その世界では親しまれていた人物らしいが詳細不明である。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-23 19:44:54) |
812. NINJA THE MONSTER
《ネタバレ》 どうせ主演俳優(よく知らない)のPVのようなものだろうと思っていたら意外に悪くない映画だった。 もともと海外向けに製作されたとのことで、国内向け時代劇として見ればかなり荒唐無稽である。天明三年の浅間山噴火とその後の大飢饉を背景にしていることはわかったが、冒頭からして関ケ原から183年後にやっと戦国時代が終わったかのような説明が出ていたのは呆れる。また劇中の「もののけ」は、今年春以降の国内状況からすると単純に「クマ」に置き換えればいいのではないかと思っていたら、どうも最後は星の世界に還ったらしく、時代劇にしては奔放な想像力の所産のようである。 そういうのはまあいいとしても、この映画の最大の問題点は恐らく派手な部分がないことである。アクションは一般的な時代劇の域を出るものではなく、ホラーっぽいところもあるが少し怖がらせただけで終わりになる。ストーリー的にも、延々と山中を歩くうちに人の心が見えて来た、といった感じのもので、終盤だけ少し盛り上がるが結局は何が何だかわからないまま危機が去り、それで最後にみんなが幸せになるわけでもない。 そのようなことで主演俳優のファン以外だと不全感が残るかも知れないが、しかし個人的な印象としては地味なのもそれほど気にはならず、かえって一定の感慨を残す映画になっていたというのが実感だった。 ところで舞台挨拶で、主演俳優が続編の可能性をやたらにアピールしていたのはかなり違和感が大きかった。自分にとってのこの映画は、気丈で健気な姫様の儚く切ない恋物語であって、劇中の忍者の行末などは正直どうでもいいわけである。仮に続編を作っても同じ姫様の物語として成り立たないのは明らかで、従って自分的には今回限りで終わりである。 劇中では変に難しげな台詞が多かったが、その中でも「覚悟とは…暗闇の中に、光を見出すこと」というのは結構いい感じで、また最後に犬笛が残ったのも物語的なポイントを押さえている。姫様役の女優に関しては、今回出演のこの人でなければならない理由は特にない気はするが、実際見れば可憐で愛すべき姫様の人物像がちゃんとできている。「江戸に着かなければいいのに」とボソっと言うところなどはこの人ならではの感じを出していた。 [DVD(邦画)] 6点(2016-06-15 23:38:45) |
813. ヒトコワ3 -ほんとに怖いのは人間- <OV>
《ネタバレ》 全5話のオムニバスである。 【落としもの】 埼玉県越谷市という地名が出るが実際に同市内で撮影したらしい。自分としては主演の森川葵という人に期待していたわけだが、非常にいいというほどでもなく普通だった。ただしこの時点ですでに演技派たることを求められていたように見えなくもない(序盤のコント部分)。ちなみにお話としては呆れるほど面白くない。 【見られてはいけない】 途中から登場人物の人格が一変したように見えるのは、よくあることだが反則である。ちなみに不気味なオバサン役は、舞台中心に活動している蒻崎今日子という女優だと思うが、この人は『「風の谷のナウシカ」全編一人芝居』を特技としているのだそうで興味深い。 【ずっと一緒に】 途中まではいいがラストが何でそうなるかと呆れる。それはそれとして、この回では主役の人(早瀬英里奈)の表情(顔)が見どころのようで、こういうのはこのシリーズのいいところかも知れない。 【赤い服を着た女の子】 なぜか静岡県御殿場市。古典的な都市伝説に便乗した話のため意外感が全くない。主役の人(しづか、以前は宮沢静香、現在は坂野志津佳?)が艶めかしいのでこの人だけ見ていた。 【ダイエット】 理屈で納得させるものがない。申し訳ないが主役(菊池友里恵)よりその友人役(星名美津紀、「映画 みんな!エスパーだよ!」の東三河新聞の人)の方に目を引かれてしまった。 「ヒトコワ」シリーズの3つ目である。本来見る予定はなかったが、森川葵という人が出ているので見ないわけにはいかなくなった。宣伝写真を見るとこの人が看板女優である。 基本的にはスターダストプロモーション所属タレントのPV集のようなもので、各話の主演女優と主要人物の一部がスターダストの所属である(なぜか第4話だけ違うらしい)。ホラーとしてはほとんど最低レベルであり、ストーリー的な面白さがほとんどないため褒める気にはならないが、見どころが全くないわけでもないので全否定もできない。 [DVD(邦画)] 2点(2016-06-15 23:38:42) |
814. 39 刑法第三十九条
《ネタバレ》 日頃アイドル映画のようなものばかり見ている立場としてはかなりまともな映画を見た気がした。全体として重厚な印象で、映像の作り方や役者の演技など、わざとらしいところ、不快なところを含めていかにも映画的に見えて感心する。ただストーリーとしては不可解・不自然な点や作り過ぎ・やりすぎの面が目立ち、激賞する気には全くならなかった。 テーマとしては題名の示すとおりだろうが、こういう問題提起はかなり以前からなされており(個人的には昭和の特撮番組「怪奇大作戦」の欠番エピソードのあたりから)、これ自体はそれほど目新しい気もしない。しかしこの映画では犬山の遺体映像や、加害者側の弁護士が業界の常識を遺族に説明してみせたあたりで、改めてこの問題の存在を強く印象づけていたようである。 ただ自分が見た限り、この映画が本当に39条の存在自体を問題視していたのか、それとも39条を悪用することの方が問題と考えていたのかよくわからなかった。わざわざ精神鑑定を持ち出した意味としては、誤審の恐れがあるので死刑は廃止という主張と同様に、精神鑑定はいい加減なので39条を廃止せよということのようにも思えるが、その割に主人公のやっていたことは、条文の正しい運用を促すために悪用を阻止してみせただけのように取れる。しかし仮に悪用の方が問題なのだとすれば、まずは犬山の事件が悪用の事例でなければならないだろうがそのようにも見えず、かえって少年法との関係で焦点がぼやけている。 さらに主人公のいう「人権」が父親の事例から導かれるとも思われず、むしろ40条(現在はすでに廃止)との関係を示唆しているかのようで混乱する。特定の結論なしに問題提起だけというつもりならこれでいいかも知れないが、単にまとまりがつかないまま拡散して終わった印象の方が強かった。 ちなみに主人公と母親のエピソードが本筋とどう関わっていたのかもよくわからない。かなり面倒くさい感じの母子関係のため、これが最後に破綻して終わりになるのではないかと危惧していたが、途中で主人公がそれらしい解決を図ったようで安心した。この主人公には愛がある。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-15 23:38:40) |
815. 事件
《ネタバレ》 原作も読んだが、人間ドラマというより裁判そのものに焦点を当てた小説だった。何だかよくわからない事件を題材にして、戦後の首都圏の社会変化や、裁判自体のあり方が変わりつつあることを背景に、当時の司法の実態をそのまま(多少劇的に?)描写したように感じられるのが非常に興味深かった。 しかしそれをそのまま映画化することはできなかったようで、原作の何だかよくわからない事件をよくわかるようにして一般向けの愛憎劇(濡れ場付き)に変えている。原作の内容もそれなりに再現していたようだが付加した部分が個人的には不快で、特に被害者の妹の表情がくどいのが苛立たしい。それは映画というよりこの役者が個人的に嫌いだということかも知れないが、それにしても「あれ」の意味をわざわざ質す場面などは見せ場づくり以外のものとは思えない。ラストに一応の和む場面を入れているのはまあよかったかも知れないが、それで映画全体の印象が好転するというほどでもなかった。ついでにいうと背景音楽の電子音も気に入らない(やかましい)。 唯一面白かったのは証人・篠崎かね(篠崎青果店)の態度だった。この役者は東京銀座の生まれのはずだが一体どこの言葉をしゃべっているのか。 [DVD(邦画)] 4点(2016-06-15 23:38:37) |
816. 世にも奇妙な物語 20周年スペシャル・秋 ~人気作家競演編~<TVM>
《ネタバレ》 全5話のオムニバスである。[ ]内は評点。 【厭な扉】「大歳の客」という民話類型をもとにした話のようだが、ストーリーとしてはありきたりで単純に面白くない。[2] 【はじめの一歩】書下ろしだからかあまり不足なくまとまった印象だが、軽めの話のためそれほど心に染みるものはない。ただ確かにこういう面倒くさい奴はいる。[4] 【栞の恋】なぜか神奈川県足柄上郡山北町の話で、昔の街並みの雰囲気は悪くない。戦争がらみの話だがメッセージ性が強いわけでもなく、普通の庶民感覚に寄り添った物語で少し感動的だった。年代と年齢からすると2人はほんのわずか同時代を生きていたらしい。必然性は不明だが、本物(岸部一徳氏)が出ていたのも微妙に面白い。/その後に原作を読むと、もとが短編のため原作がよく再現されており、場所が別のところなのと(山北町でない)、若干の脚色(いい方向で)を加えたところに違いが出ている。それにしても堀北真希の起用は反則だ(可愛すぎる)。[5] 【殺意取扱説明書】アイデア先行で物語としては面白くない。「不審者に注意」も笑えない。[2] 【燔祭】普通の幸せがあったはず、という切ないラストかも知れないが、これを見ている限りは早く犯人に死んでもらいたいという思いの方が勝る。兄は単純に愚かとしか見えず、女の内面もよくわからない。また兄妹の年齢が離れすぎである。/その後に原作を読むと、もとが文庫で98ページの中編だったのを30分弱に収めるのは難しかったかも知れないとは思うが、その割に原作にはない独自色(いい方向で)を付けようとしていたらしく、これは悪くなかったと思う。ただ原作では兄妹の年齢差が9歳であって、ドラマの25歳差(出演者の実年齢)はやはり離れすぎである。[5] この番組の近年の水準がどの程度かわからないが、20周年記念の「人気作家競演編」というだけあって、よくあるやりっ放し構造の粗製乱造オムニバスホラーなどよりはまともなお話ができている。ただしそれほどの充実感はなく、やはりこういう番組で扱うとそれなりの出来にしかならないということか。 全体の評点は個別の点数を時間で加重平均した数値(3.7)を四捨五入した。 [DVD(邦画)] 4点(2016-06-09 23:27:00) |
817. 怪談新耳袋 劇場版 幽霊マンション
《ネタバレ》 「新耳袋」第六夜80~99話が元ネタとのことだが、設定のごく一部と小エピソード1つを使っただけでほぼ完全に別の話になっている。原話の良さは全くなくなっているが、原話をそのまま映像化するわけにもいかないのはわかる(ヤバいことになる)。 時間からすれば長編映画の部類だろうが、基本的にはオムニバス用短編ホラーのようなラストのインパクトに頼った一発勝負形式で、そこに直接関係ない思い付きのようなエピソードを継ぎ合わせて長くしただけに見える。意外性優先のために登場人物の人格が一変したように見えるのは安手の短編ホラーに時々あることだが、この映画でもラストの衝撃的事実に先立つ全体としての流れができていない。ここでこのように伏線を張って最後に回収しました、などという形だけ整えれば済むというものではないだろう。そもそも昔の陰惨な事件によって建物が呪われたことまではいいとして、それが門限や境界線の設置につながる必然性が全く感じられない。 加えて普通はホラーというのは怖く作ろうとするものだろうが、実際問題として怖さは全く感じない。コメディまがいの演出が煩わしく、また途中でゾンビの群れのようなのが押し寄せるのはどういう効果を目指したのか不明である。ここで笑えということか。 だいたい以上のようなことで非常に不満足な映画だったので、点数は黒川芽以だけに入れておく。主題歌の「シアワセがふえるより哀しみをへらしたい」は、題名は好きだが映画本体の評価には影響しない。 なお少尉殿への復讐の件は本筋と完全に無関係な孤立的エピソードだが、これは公開日が8月15日だったことに対応した趣向と思うことにして突っ込まないでおく。 [DVD(邦画)] 3点(2016-06-09 23:26:58) |
818. ケータイ刑事 THE MOVIE 2 石川五右衛門一族の陰謀~決闘!ゴルゴダの森
《ネタバレ》 銭形雷役の小出早織(当時)に関して、当方が期待していたものが何も得られない。TV版DVDのPR映像の方がさまざまな表情が見られてよほど楽しい。またこの人の歌うテーマ曲のPV(約3分)が、映画本体(102分)の価値よりはるかに優っているという呆れた状況だった。もう一人、夏帆に関しても標準ベースそのままのようでこの映画ならではの魅力が生じていない。これでは何のための劇場版かわからない。おれは怒った。最低の映画だ。 [DVD(邦画)] 1点(2016-06-09 23:26:55) |
819. ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密~銭形姉妹への挑戦状
《ネタバレ》 4人姉妹のうち長女は出ていないが、3人だけでも十分に超豪華キャストという感じである。3人並んでみると、この時点で夏帆が一番背が高いことがわかる。だから何だというわけでもないが、3人並んだことで初めて目に見える事実ということだ。 ○夏帆がひたすら可憐である。「レレレ?」の表情もいいが「Q.E.D.」の時の口つきなどは見事だった。銭形零はカメが好き、という設定があったのかどうかわからないが、「もっとおっきな空飛ぶカメが好き」という台詞があったのは、この映画の公開と同年の「小さき勇者たち/ガメラ」(2006)のPRだったものか。 ○堀北真希は何といっても「世界のダンス」が見どころである。難度としては後になるほど高いのだろうが、個人的印象では最初のアイリッシュダンスが非常に可愛らしい。これには参りました。 ○黒川芽以はそういう意味での見どころが少ないが、「謎は解けたよワトソン君」のところで可愛くアピールしているのはよかった。この頃は顔がふっくらして愛らしい。 およそ以上のような映画だった。これで5点つける。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-09 23:26:52) |
820. 宇宙人東京に現わる
《ネタバレ》 子どもの頃、東京のビル街に巨大な宇宙人が立っているスチル写真を見た記憶があるが、実際に映画を見るとそういうものでは全くなかったので騙されたと気づいた。他の写真を見てもあからさまな嘘が多いが、こういうのは突っ込まずに笑って済ませることが期待されていたらしい。 また宇宙人の着ぐるみは、アクションが不要だからか中の人に合わせる気がないようで、頭と手足が全て同じ大きさで揃えてあるので均整が取れている。しかし立っていると着ぐるみに皺ができ、いかにも布のような薄手の素材で作ったように見えるのはシーツを被ったオバケのようでもあるが、制作側としてはこれで特に問題があるとは思っていなかったらしい。 内容的には、前半は普通の娯楽映画のようで気楽に見られる。市井の人々の会話が楽しいが、学者一家がまるで身分の違う人のように扱われていたのは当時の社会通念を示したようで興味深い。また当時の東京郊外の風景や(杉並区?)、開発初期の小型ロケットが出ていたのも時代を感じさせる。しかし後半はあまりにも適当な展開になってしまうのが残念なことで、博士を誘拐した悪党連中は行方不明で終わり、また満を持したかのように宇宙人が介入したタイミングも合理的には説明できない。 テーマとの関係で見れば、人類を救うための使用を最後にして原水爆が地上から消えた、という感じのハッピーエンドにしたかったのかと想像される。しかしそれに心から共感するためには、実物が失われても知識や技術や保有の動機は失われていないはずだ、と考えないようにする必要があるので難しい。反核にしても観念論にとどまっており、とても「ゴジラ」(1954)のようなインパクトは感じられない。 また最後のミサイルは宇宙人が製造したわけだが、これは心正しい人々が正しい目的で核兵器を使うのは容認されるということなのか。一般に反核というのは核兵器の存在自体が悪なのであって、目的を問わず製造・使用などとんでもないというのが普通だろうが、この映画では保有国によっては批判の対象から除外するのと同様の印象があって理不尽に思われる。 ただ、他のレビュアーが書かれているように、ラストの妙なほのぼの感が非常に印象的な映画ではあった。 [DVD(邦画)] 4点(2016-06-04 09:23:56) |