901. アクシデンタル・スパイ
厳しい評価も多いようですが、ふだんジャッキー・チェンの作品をあまり見ない私としては十分に楽しめました。中年ど真ん中でありながら、あれだけ派手に跳んだり走ったり戦ったりするだけでも立派。とにかくアクションで楽しませようという意欲がひしひしと伝わってきます。 ただし、アクションも早いが会話のテンポもストーリー展開も早すぎる。ついでに雑。このあたりはご愛嬌ということで。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-06-21 03:06:20) |
902. ソナチネ(1993)
前半は不穏な空気が漂っていていい感じ。しかし後半、舞台が沖縄に移ってから空気が緩みはじめ、そのまま元に戻りませんでした。 だいたい、人があまりにも簡単に死にすぎます。それも何ら感情のブレもなく、まるで昆虫が駆除されるように。それが北野作品の特徴だと言われればそれまでなんですが、どうも違和感を拭えません。 おそらくこれは、北野監督の「夢(将来の、という意味ではなく、睡眠中に見るやつ)」の世界の話なんだろうなと。こういう夢の話って、本人はおもしろがっていろいろ話すのですが、聞かされる側には荒唐無稽でつまらないんですよね、一般的には。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2016-06-19 17:18:03) |
903. オデッサ・ファイル
世の中の闇の部分を覗き込むような迫力がありました。主人公の意外すぎる屈強ぶりなど、いささか出来過ぎな部分もありましたが、適度な緊張感が持続していました。 この話は事実に基づいているとのことですが、「ドイツ帝国」の再興を夢見ている一群が実在するとすれば不気味ですね。まだ懲りてないのかと。どのあたりに魅力を感じているのでしょうか。もっとも、今日の日本にも極左や極右な方々が若干いるようなので、あまり人のことは言えませんが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-06-18 14:42:43) |
904. マッチポイント
ストーリーとしては、有史以来、星の数ほど繰り返されてきたド定番でしかありません。ド定番なりにハラハラし、ド定番なりに「タダでは済まないだろう」と思わせる展開。しかし〝マッチポイント〟の演出には唸らされました。この一点だけでも、「見てよかった」と思えます。 そして何より、S・ヨハンソンが魅力的。あんな非の打ちどころのない超絶美人さんに「寂しい」だの「会いたい」だの「できちゃった」だのと言われれば、ふつうの男ならすっかり骨抜きになって地位も収入も安定も投げ出しそう。その意味で、主人公氏の選択には驚き。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-06-12 11:19:42) |
905. リンカーン
リンカーンに特に思い入れはないものの、スピルバーグだからそれなりにエンタテイメントな作品に仕上げているんじゃないかと期待したのですが、こんな〝政治密室劇〟だとは思いませんでした。 おそらくこの作品は、リンカーンについてある程度の知識やイメージや敬意を持っている観客(つまり主に米国人)をターゲットにして作られているのでしょう。その姿をリアルに再現することで、ある種の安心感やカタルシスのようなものを提供しているのかなと。日本人が大河ドラマで信長や秀吉を見て安心する感覚に近いかもしれません。 というわけで、あまり楽しめず。奴隷解放や南北戦争の結末は万人が知っているし。 ただし、大統領家のメイドさん役のグロリア・ルーベンがいい。「ER」以来、久しぶりに見ました。やっぱりこの方は、グッと耐え忍ぶ役がよく似合います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-06-02 03:34:48) |
906. 動乱
《ネタバレ》 歴史的事件をベースにしていながら、その首謀者として架空の人物を設定することに一抹の違和感。だからいざ襲撃の場面でも、「鈴木貫太郎」とか「高橋是清」という実名を出せなかったんですね。「歴史への冒涜」とまでは言いませんが、いい加減に作ってるんだろうなあという印象です。 そのせいか、2大スターをはじめ豪華キャストを揃えていますが、誰も彼も魅力がない。2大スター以外、存在感はずっと薄いままです。結果、ムダに長いという感じ。 ただ唯一、ラストに驚愕のシーンが待っていました。脳天を撃ち抜かれてなお、意識をはっきりさせている高倉健。彼の前頭葉はどこに付いているのでしょうか。これは「ゴルゴへの冒涜」です。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2016-05-21 19:35:19) |
907. アウトブレイク
《ネタバレ》 よくあるパンデミックものかと思いきや、後半はバラエティ豊かで楽しめました。全米3億人の命運がたった1人の軍医とその元奥さんと2人の協力者に委ねられるって、どこまで人材不足なのかと心配になります。そこまで責任を背負わされたら、ヘリから輸送船へダイブもするし、たった1頭のサルも特定するし、爆撃機の進路妨害もするでしょう。 それにしても、なかなかスケールの大きなマイケル・サンデル的命題が提示されました。しかし共産主義国やアサドのシリアでもない限り、さすがに自国民を大量爆殺するという選択はしないでしょう。あるいはトランプ大統領ならやりかねないか。 ラストの奥さんのセリフは、さながら落語のオチのよう。しかし、そこで終わっちゃダメでしょう。この作品は、その後の重要な部分が描かれていません。果たしてホフマンは、今回と1967年(?)の一件で軍を告発するのかということです。ホフマン的正義に則れば、容赦なく告発するでしょう。しかしそれは、M・フリーマンのみならず、米軍ひいては米合衆国政府の権威も失墜させることになります。大げさに言えば世界の秩序を脅かし、世界平和を乱すことにもなります。かといって黙っていれば、共犯者として負の十字架を背負うことになる。これもサンデル的命題で、興味が尽きません。もっとも、トランプ大統領なら悩む前に消されるか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-05-19 02:24:30)(笑:1票) |
908. 鷲は舞いおりた
《ネタバレ》 ドイツ兵をアメリカ人役者が英語で演じるということに、米英独やその他欧州の観客は違和感を覚えないのでしょうか。ドイツを貶めるための脇役としての登場ならアリでしょうが、主役に据えているからなお不思議です。日本人の感覚で言えば、日本兵を中韓の役者が中国語・韓国語で演じ、なおかつ悲劇のヒーローに仕立てるようなもの。絶対にあり得ないでしょう。 それはともかく、タイトルのかっこよさとR・デュバルに惹かれて見たわけですが、けっこう楽しめました。作戦決行後の顛末もさることながら、やはりR・デュバルの悲哀がいい。ラストのあの悟りきったような表情は、さすが名優です。 上司のアホな企画に真面目に付き合わされ、当然のごとく失敗し、責任をすべて押し付けられ、文句ひとつ言わず受け入れる…。「戦争の悲劇を繰り返してはならない」とはよく言われますが、こういう〝悲劇〟は戦時・平時にかかわらず、今後も際限なく繰り返されることでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-05-14 22:12:40) |
909. ヤクザと憲法
今どきのヤクザがどうやって稼いでいるのか。それだけを知りたくてドキュメンタリーの本作を見に行ったわけですが、そういう部分はあまり描かれず。怪しげなシーンはチラホラありましたが。 それよりも、やはりヤクザに対する社会や警察からのアコギとも思える締め付けが強烈です。たしかに社会一般から見れば異質な集団ではありますが、本当に排除していいのか、それが社会の安寧に繋がるのか、考えさせられます。 途中、組事務所内の唯一の若者である、どこにでもいそうな青年が「立場や意見が違う人がいても、互いに認めて仲良く暮らしていける世の中になってほしい」みたいなことを朴訥と語るシーンがあります。あくまでも想像ですが、幼年期・少年期にいろいろひどい目に遭って、ヤクザの世界に生きる〝よすが〟を求めてきたのかなと。受け入れる組事務所も、なかなか懐が深いじゃないですか。 [映画館(邦画)] 8点(2016-05-12 00:33:51) |
910. スター・トレック(2009)
本作にかぎった話ではありませんが、「スタートレック」の〝人事〟には米国人が考える世界平和または世界秩序が反映されている気がします。ロシア系(チェコフ)、アジア系(スールー)、欧州系(スコッティ)、黒人女性(ウフーラ)、それに絶対に判断を間違えないという意味での神(スポック)などをバランスよく配置し、その一段上に米国白人男性(カーク)が君臨する、という構図です。チーム内に中東系や南米系は見当たりませんが、それをクリンゴン人だったり、ロミュラン人だったりするのかなと。だとすれば、南北問題・格差問題も反映しているのかもしれません。だからどうという話ではありませんが。 本作については、いささか軽薄でドンパチが過ぎる気がします。TV版では、「WARS」と違ってもう少しいろいろ考えさせられるストーリーが売りだったのではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-05-08 21:28:33) |
911. インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実
当時の奈落の状況を思い出しました。投資銀行もさることながら、やっぱり格付け会社の罪は重いなと。怪しいCDOでもしっかりリスク評価していれば、年金基金等も飛びつかなかったはずです。 しかし疑問点もいくつか。最初にアイスランドの銀行民営化の話が思わせぶりに出てきましたが、これってどうなんでしょうねぇ。経営者がダメなだけで、民営化自体が悪いとは思えません。公務員だらけのギリシャの惨状を見ていれば、それは明らかでしょう。 それから政財学界を行き来した〝回転ドア〟な著名人がたくさん登場し、インタビューに答えていましたが、聞く側のスタンスにも疑問が残ります。とにかく私服を肥やすため、個人的に多額の報酬を得るために〝工作〟したかのような聞き方でしたが、これは問題の本質ではない気がします。 アメリカ経済にとって金融は今やITと並ぶ基幹産業でしょう。それをいかに成長させるか、つまり規制緩和で障害を取り除くかを考えるのは、政財学界にとって当然の責務だと思います。それが失敗したという話であり、彼ら自身が私利私欲に走った結果ではないんじゃないでしょうか(中には私利私欲が目的の人もいたかもしれませんが)。インタビューの途中で怒り出す人もいましたが、それは「痛いところを突かれた」というより、「痛くもない腹を探られた」からだと思います。 とはいえ、たいへん迫力のあるドキュメンタリーでした。「テレビがなくなったらオレたちの食い扶持がなくなるじゃないか」と大騒ぎをしている日本の超一流ジャーナリストの方々も、ぜひ見習っていただきたいものです。 [インターネット(字幕)] 7点(2016-05-07 15:59:16) |
912. 冬の華
まったく期待していなかったのですが、意外に良かった。全編をクロード・チアリとチャイコフスキーの2曲で埋め尽くす作戦ですね。おかげで寂寥感と高揚感が交互に訪れて、メリハリが効いていた気がします。 以下、本筋とは関係ありませんが雑感など。東西ヤクザの抗争という意味では、いよいよこれからという場面で「完」となるわけで、肩透かし感が否めません。しかし高倉健が去ったとたんに「仁義なき戦い」のテーマが流れるというのも妙なので、あれはあれで良かったのでしょう。 それにしても、東西ヤクザのギャラ格差が凄そうです。ドラマ上では関西系が押していたようですが、役者陣で比べればアクの強い有名どころを揃えた関東系の圧勝でしょう。その総額は巨人とDeNAどころか、巨人とJ2ぐらいの開きがありそうです。だからどうという話ではありませんが。 そしてもう1つ、ヒロインの池上季実子は美人さんだと思いますが、アップにしてはいけない。もうタレ目が気になって気になって。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2016-05-05 01:26:24) |
913. シャッター アイランド
予備知識ゼロで見始めて、最後まで真相に気づきませんでした。自身の鈍さに落胆しつつ、「こういう映画は素直に騙されてナンボだろう」と言い聞かせてみたり。 それはさておき、傑作です。全編にわたる鬱々とした雰囲気もいいし、何が起きるかわからないという緊張感もいい。たびたび挿入される回想シーンも、好奇心をそそります。〝ディカプリオの穴〟は、なかなか深淵にして悲惨。同情せずにはいられません。 ただ唯一、奥さんに何があったのか、もう少し深く知りたかったかな。 [インターネット(字幕)] 8点(2016-05-03 21:02:46) |
914. S.W.A.T.
《ネタバレ》 結局は壮大な〝内輪揉め〟の話でした。中盤あたりまでのこってりした訓練シーンって、必要なんですかね。フィクションの中でフィクションをやられても、緊張感がまるでないんですが。 というわけで本番は後半から。「1億ドル供与」をテレビに向かって呼びかけて逃走を図るという設定は斬新でしたが、まさか応じるヤツがいるとは思いませんでした。ふつうに考えれば、誰も応じないでしょう。失敗すれば人生が終わるし、仮に成功しても第三国を転々としながら逃げ続けるような悲惨な人生が待っています。1億ドルの使い道もないし、精神的苦痛も並大抵ではないはず。フィクションとはいえ、あまりにリアリティを欠いている気がします。まあ適度に派手な映像が多いので、そこそこ楽しめましたが。 それはともかく、気になったのは劇中で何度もかかるテーマ曲。これって橋本真也の登場曲にそっくりじゃないですか? [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-05-02 03:54:49) |
915. ミラーズ・クロッシング
ビシッとダンディにキメている主人公。しかし何度となくボコボコにされ、無様な姿を晒すというギャップがたまりません。弱さもまた魅力ということで。 単純な構図の抗争劇で、本来はもっと殺伐としてもいいはずなのに、何かゲームを観戦しているような安心感があります。これぞ映画の醍醐味という感じ。 まったく余談ながら、レオと「オリエント急行」のポアロが同一人物であるということが、どうにも信じられません。芸域の広い役者っていいですね。 [DVD(字幕)] 8点(2016-04-29 02:46:03) |
916. 人生の特等席
《ネタバレ》 誰もが当初から予想する通り、あるいはそれ以上に、強引と思えるほどのハッピーエンドを迎えます。銃も戦争も凶悪犯も陰謀も、殴られて病院送りになる女性も出てきません。片田舎のベースボールが生み出す空気感は平和そのもの。日常の箸休めとして見るにはちょうどいい感じです。 とはいえ、さすがイーストウッド、いくら老いてもその辺の凡人とはわけが違います。原題はそれを端的に表現しているのに、邦題はクサいJポップの歌詞のよう。ここだけ残念。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-04-28 01:32:05) |
917. シベリア超特急
噂の本作をようやく拝見。噂に違わぬ怪作でした。見ている私は何も悪くないはずなのに、だんだん息苦しさを覚え、ひどく赤面し、終盤の「どんでん返し」に至ってはもう勘弁してくださいと哀願したくなりました。鑑賞に耐える作品をつくるというのはすごいことなんだなと、これまでボロクソに言ってきた映画を思い出しつつ反省することしきりです。とはいえ「シベ超2」も機会があれば見てみたいけど。 [インターネット(字幕)] 1点(2016-04-24 20:23:07) |
918. ペーパー・ムーン
概して子どもが活躍する映画というと、やたらと超人的だったり、マセガキだったり、そして最後は無理やり感動系に持ち込もうとするのがパターンです。しかし、さすがに〝老舗〟の本作は違いました。全編にわたって冷静で仏頂面、そしてカネにこだわっている(またはカネを言い訳にしている)のがリアルです。 それに何より、2人の危なっかしさがいい。特にラスト、どう考えても持続可能性が低く、さらに大きな落とし穴が待っていそうなのに、その道を選んでしまう2人の悲哀と滑稽さがたまりません。ハッピーエンドを装いながら、見る者に一抹の不安を与えて終わるという、なかなか奇特な作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-23 13:57:56) |
919. おとなのけんか
「コメディ」とのことですが、笑えるのはところどころ。議論の焦点がだんだんズレていくのは「さすが」という感じですが、もし日本人どうしならこんなに本音をぶつけ合わないだろうと思ったり。2大女優目当てで見ましたが、脚本がしっかりしている分、別にこの2人じゃなくてもいいような気もします。ただし「Walter!」がいい味を出していますね。 夫婦どうしのケンカといえば、単純な私は、志村けんが昔よくやっていたコント(隣どうし、最後にはお互いの家ごと破壊するやつ)のほうがずっと好きですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-03-29 23:39:10) |
920. アルゴ
サスペンス系娯楽映画として「さすが」の出来。〝素材〟の多い国はいいですね。 ただし根本的な疑問が。イラン側にとって、大使館から逃げた6人の行方を執拗に追う理由は何でしょうか。今のISとは違い、いくらなんでも当時のイランで「アメリカ人狩り」までは行われてはいなかったはずです。国王の返還を求めるために、ある程度の人質が残っていれば、それで十分だったのではないでしょうか。断裁された資料をつなぎ合わせてまで、職員全員を確保しようとする意図がよくわかりません。 むしろイラン当局としては、民衆が暴徒化して6人をリンチにして世界を敵に回すより、とっとと帰国してもらったほうが都合が良かった気がします。などと考え出すと身もフタもありませんが。 余談ながら、B.クランストンがいい味を出しています。ちょうどこの頃、「ブレイキング・バッド」では麻薬製造がいよいよ佳境に入っていたはず。役が変われば、人相まで変わるんですね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-03-27 03:22:49) |