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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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81.  モンスター(2003)
もし神なるものがあるとするならば、自ら死に向かおうとする“彼女”を留め、哀し過ぎる狂気へと突き進む“愛”へと導いた理由は何だったのだろう?言葉にならない苦しみを一人の女性の運命に詰め込み、それを歩ませた意味は何だったのだろう?果たして、彼女の真の罪は何だと言うのか?渦巻く人間の業についての疑問が永遠につきまといそうで、とても苦しい。でも、結局、その答えは、“たった一つの愛”なのだと思う。苦しみと屈辱の中で生きてきた女に訪れた、とても小さな愛。その結末さえ、あまりに悲劇的な愛。その一瞬の安らぎと許しのために、彼女の生はあったのだろう。とても不条理すぎて理解さえ及ばないが、それでもそこに一寸の救いがあったことを僕は信じたい。彼女のモノローグのように、そんなものさえ罵声ともに一蹴されるのかもしれない。でも振り返った彼女の最後の瞳は、そうは言っていなかったと思う。 “最高女優”の称号を得たセロンの演技は、何の余地も無く圧倒的だ。そして、“アイリーン唯一の愛”を演じたクリスティーナ・リッチも素晴らしい。この映画はこの二人の女優の存在が無ければ成立しなかっただろう。
[映画館(字幕)] 9点(2013-01-13 20:47:25)(良:1票)
82.  インスタント沼
辛いことばかりのような世界だけれど、ふと気付くだけで、世界はこんなにも楽しいことに溢れているんだよ。 ということを、相変わらずの三木聡節で笑わしながら教えてくれる傑作だと思う。  しょうもない人間の滑稽さを並べ立てて、クスクス笑う映画だけれど、その中心にはしっかりと「芯」が通っている。 それは、滑稽だからこそ見えてくる人間の本質的な「価値」だと思う。  悩むことも、喜ぶことも、怒ることも、笑うことも、泣くことも、すべてひっくるめて人間というもので、そのすべてに対して「価値」があるということ。 そういうことを信じられるかどうかで、人生なんてものはいかようにも転じると思う。  何と言っても、麻生久美子が良い。 「時効警察」ですでに実証済みの三木聡監督の世界観の中でのコメディエンヌぶりは、麻生久美子という女優の幅を大いに広げている。 笑い、泣き、怒り、踊り……コロコロと変わっていく彼女の表情こそが、この映画が描く人間の本質だと思う。  「河童がいる」ということを基本的には信じていなくていいけど、「ちょっと今日は信じてみようかな」という日があった方が、きっと楽しい。
[DVD(邦画)] 8点(2013-01-12 23:19:31)(良:4票)
83.  アイランド(2005) 《ネタバレ》 
この映画は、“超大作”というオブラートに包まれたとても“特異”な映画だ。 まさに問答無用の“エキサイティング”という言葉の怒涛のような映画であり、文句なしの超大作という肩書きに異論は無い。ただ、それと同時に、ものすごく“おぞましい”映画でもあると思う。“クローン人間の養殖”を公然と行う営利施設とその職員の存在自体に始まり、その過程での培養と洗脳、“アイランドへの招待”と称したクローンの処理……と美しい映像世界にくっきりと描き出されるあまりに強烈な“闇”。それはまさに人間自体の“闇”ではないか。逃げ出したクローン人間は、ついには、生き延びるために自分自身のオリジナルをも淘汰する。主人公のクローンらの必死の行為は“正義”として描かれるように見えて、実は違う。彼らの行為は“善”でも“悪”でもない。ただひたすらに存在しようとする“生命としての本能”だ。 そういう、人間という一生物としての、ある意味当然とも言える、美しさと表裏一体の“本性”を感じたとき、この映画の“おぞましさ”はピークに達する。 ラストの、奴隷解放になぞられたクローンたちの“解放”は、その壮大な解放感と共に、人間という生物の闇の深淵を感じさせる。  
[映画館(字幕)] 8点(2013-01-12 23:18:40)
84.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生
人生は、いつ終わるか誰にも分からず、故に果てしないからこそ、希望に溢れ、素晴らしいのだと思う。 老いた状態で生まれ落ち、次第に若返っていくという男の数奇な人生は、同時に明確な“終わり”を常に意識し、感じ続けなければならない過酷過ぎる人生だったと思う。  その過酷さが、イコール悲劇では決してないのだけれど、彼が携えるどこまでいっても拭いきれない「悲哀」に胸が詰まり、その彼を愛した女の人生に涙腺が緩んだ。  とても長い映画ではあるが、その尺の長さは、主人公の人生を生い立ちから描く上で必要なもので、終盤になるほど序盤の一つ一つの描写がとても効果的に効いてくる。 ついには、映画の終わりと共に、主人公の人生が潰えてしまうという必然すらも、悲しくなってくる。  皺だらけの老人から、どんどん若返り美しくなっていくブラッド・ピットの様は、ファンの女性にはたまらなかっただろうし、演技の質もとても高かった。 ただ個人的にもっとインパクトが大きかったのは、ケイト・ブランシェットの女優としての美しさと巧さ。 可憐な10代の少女を演じたかと思えば、死を間近にする老婆に転じる。圧倒的なその“女優力”は、もはや「現役最高女優」と言って過言でないだろう。  この映画は、決して短絡的に、面白かった、悲しかった、楽しかったとは言えない。 様々な感情が常に混ざり合って展開し、誰にも平等に存在する「死」へと向かっていく映画だ。 それは、決して悲劇的な意味ではなくて、その揺るがない部分こそ人生の面白さであり、素晴らしさであろう。 そういうことを、とても奇妙な一生を送った男と、その男を愛した女の「人生」の中で、ユニークに、しっかりと描いた作品だと思う。 
[映画館(字幕)] 8点(2013-01-12 23:15:22)(良:2票)
85.  容疑者Xの献身
この映画は、「容疑者Xの献身」というベストセラー小説の映画化に対し、「どうすれば面白い映画になるか」、そして「どすれば売れる映画になるか」ということを、真剣に考えた製作サイドの完璧な“企画勝ち”だと思う。  原作でそうであるように、この物語の主人公は、「容疑者X」こと石神哲哉である。 しかし、「X」というワードが示す通り、この主人公は終始「謎」を秘めなければならない。 その文体であるからこそ表現できている微妙な立ち位置の主人公を、映像化する上でもそのまま表現できるかというと、それはとても困難なことだ。出来ないことはないだろうが、高い確率で、文体で表現する以上にナイーブで地味な作品になってしまったと思う。  そこでまず必要だったのが、原作でももちろん登場する“探偵ガリレオ”こと湯川学が、映画作品では、魅力的な主人公であるという「前提」だったのだと思う。  その「前提」を作るために、ドラマシリーズ「ガリレオ」を展開させ、福山雅治演じる湯川学、そして柴咲コウ演じる内海薫の主演コンビのキャラクター性に対する強い印象を観客に植え付けておいたわけだ。 そして、その主演コンビを言わば「狂言回し」として存在させ、「真実=X」を追い求める役割を与えることで、真の主役である「容疑者X」の立ち位置を確立させている。 つまりは、いわゆる「月9」で大ヒットしたドラマシリーズ自体が、この映画のための豪華な「伏線」であったのだと思う。  「容疑者X」という陰の主人公に、陽の主演コンビが花を添えるというなんとも奇妙ではあるが、絶妙な配役のバランスが、この作品を殊更に「面白く」していると思う。  売れた小説や、漫画の映像化は、もはや「常識」となりつつある。 そのこと自体に異論は無いが、大切なことは、「映像化する意味」を確実に持たせることだと思う。 今作の場合、堤真一が容疑者Xを演じることにより、よりリアルな形でその人間性を感じることができ、ある部分においては文体以上に「感動」を与えることが出来ていると思う。 そして、ガリレオ役の福山雅治と対峙することにより、ビジュアルの異質さと、白熱する頭脳性が絶妙に混じり合い、映画世界ならではの塩梅を得られていたと思う。  「実に面白い!」……思わずそう言いたくなった。
[映画館(邦画)] 8点(2013-01-12 23:14:29)(良:2票)
86.  座頭市(2003)
元来エンターテイナーである北野武が初めて挑んだ娯楽映画は、やはり圧倒的なエンターテイメント性に溢れた作品であった。オリジナルの「座頭市」は今だ観たことがないので、勝新太郎との比較はできないが、北野武が言うように、今作は座頭市という名を借りたまったく新しい時代活劇であるように感じた。独創的なユーモアと挑戦に満ちたその娯楽性はインパクトと芸術性を兼ね備えた傑作に昇華されている。浅野忠信の格好良さは印象的だが、それ以上にやはり北野武の存在感が衝撃的な眼光と共に光る。
[映画館(邦画)] 8点(2013-01-12 23:04:36)
87.  竜馬の妻とその夫と愛人
三谷幸喜ならではの坂本竜馬と彼をめぐる男女の人間模様が愉快に感動的に描かれる。竜馬の妻を演じた鈴木京香、その愛人を演じた江口洋介、妻を慕う義兄を演じた中井貴一とそれぞれユーモラスで人情的な好演を見せるが、何といっても竜馬の妻の夫を演じた木梨憲武の喜劇俳優ぶりが素晴らしかった。最高に可笑しく、感動的なノリさんのパフォーマンスに涙する。ケッサクの名に相応しい映画だった。
[映画館(邦画)] 8点(2013-01-12 23:02:59)
88.  メメント
まさに確信的なストーリー展開には見事なまでのサスペンスフルで、その難解さに引き込まれっぱなしだった。過剰なまでに狙ったストーリーだけに再度観る面白さはないが、初見でのインパクトが絶大であることは間違いない。ストーリーに見合った映像感覚も秀逸で映画としての完成度は極めて高い。
[映画館(字幕)] 8点(2013-01-12 23:01:38)
89.  ロード・オブ・ザ・リング - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の前日譚となる「ホビット 思いがけない冒険」を鑑賞したばかりだったので、この第一作目の“スペシャル・エクステンデッド・エディション”を久しぶりに鑑賞。 オリジナル版でも178分もあるのに、このバージョンに至っては劇場未公開の重要シーンが追加され上映時間は208分。長いことは確かだが、その時間を注ぐに相応しいエンターテイメントとしてのボリュームは備わっている。 劇場公開時の初見では、この映画世界のファンタジー感に今ひとつのめり込めなかったが、第二作目の「二つの塔」を観賞後にこのバージョンを観た時には、ストーリーのドラマ性が増し「やはり凄い映画だったんだ」と改めたことを思い出す。  そして、最新作の「思いがけない冒険」を観賞後に今作を再度観直してみると、更にこの物語の深みと面白味を堪能出来た。 ガンダルフやビルボの台詞を中心に、かつての冒険譚を踏まえた描写は数多く、そういったシーンが登場する度に「あのことか!」とアガる。 それは、前三部作も含めてこの稀代のファンタジー映画シリーズが、世界観の構築から人物描写に至るまで、骨太な物語の上に成り立っているということの証明だと思う。  「思いがけない冒険」については、初見では正直盛り上がりきれなかった部分もあったが、今作を鑑賞し直してみて、すべてのシリーズ作が一本の道で通じているということを感じることが出来たので、次作「スマウグの荒らし場」の期待は一転高まった。 一年後の公開までには、「ロード・オブ・ザ・リング」の残り二作の“スペシャル・エクステンデッド・エディション”も観ておきたい。
[DVD(字幕)] 9点(2013-01-07 23:59:12)
90.  007/慰めの報酬
ダニエル・クレイグが“ジェームズ・ボンド”に扮する新007シリーズの第二作目。 前作「カジノ・ロワイヤル」の完成度がとても高かったので、必然的に続編への期待は高まっていた。 そしてもって、今作「慰めの報酬」も極めて完成度の高いエンターテイメントだった。「賞賛」に値する。  やはり、ダニエル・クレイグが良い。 ショーン・コネリーやロジャー・ムーアが演じた往年の「007シリーズ」に愛着がある世代にとっては、無骨でスマートさがないクレイブのボンド像は、お気に召さないという評価も聞く。 が、敢えて「未完成」のジェームズ・ボンドを描き直し、そこにダニエル・クレイグというワイルドさと危うさを秘めた俳優を配したことは、一つの趣向として圧倒的に正しい。  そして、そこにはこれまでのシリーズにはなかったシリアスさとリアリティがある。  「殺しのライセンス」というものが実際にあったとして、それを与えられる者に絶対的に必要なことは、「自らの感情をひたすらに抑えつける」ということだろう。 ただし、そんなことが端から出来る人間などいるわけがない。たとえいたとしても、そんな人間は“ヒーロー”として決して魅力的でないと思う。  “ライセンス”を与えられ、そこに求められる“絶対性”を極限の状態で徐々に越えていくプロセスこそ、クレイブが演じるこの“007”シリーズの醍醐味であり、これまでのシリーズにはない魅力だと思う。
[映画館(字幕)] 9点(2012-12-07 16:13:53)
91.  ルパン三世VS名探偵コナン<TVM>
そもそも褒められる作品ではないだろうことは分かりきっていたので、ハードルを充分に下げて観ることが出来たことは、そこそこ“見れた”要因に繋がり結果オーライだったと思う。 馬鹿馬鹿しい粗に対してわざわざ怒ることの方が、よっぽど馬鹿らしいので、良かった点を挙げたい。  “VS”となっているが、やはりどちらかというとコナン寄りのストーリー展開は、作品としてバランスが良かったと言える。 越えてきた修羅場の質と量を考えれば、圧倒的にルパンが勝るわけで、ルパンメインの土俵が展開されては、一介の名探偵であるコナンが活躍する余地などなかっただろう。 あくまでコナンの活躍がメインの土俵で、ビッグゲスト的にルパン一味が絡んでくるキャラ立て方は、そもそも無理矢理な舞台設定の中で互いの特性を上手く引き出せていたとは思う。  あと、いつもは気恥ずかしいくらいに童貞感丸出しの「名探偵コナン」の世界観の中に、「ルパン三世」のアダルティなニュアンスが僅かながら加味されていて良かった。 それに伴う、コナン側のキャラクターの精一杯のエロさ加減が、このコラボレーションによる最大の成果だったのではないかと思う。  とは言っても、やはり「楽しめる」という表現を使うにははばかれる出来であることも事実。 それぞれの作品に対して、ギリギリ「冒涜ではない」と言えるレベルであることは否めない
[地上波(邦画)] 3点(2012-11-29 23:04:40)
92.  木更津キャッツアイ 日本シリーズ
正直、木更津のノリで2時間は長い!ドラマの段階からストーリーなんてあってないようなものなのだから、映画として120分ぶっ続けってのはキツいものがあるのは否めない。ただそれでも最後まで見せてしまう。それこそこの「木更津キャッツアイ」という奇異なエンターテイメントの奇跡なのかもしれない。もはや惰性的なノリだけで押し通す映画、そんなものがあってもいいのかなあ……。
[DVD(邦画)] 3点(2012-10-10 23:07:55)
93.  時をかける少女(2006)
原田知世が主演したノスタルジックかつ破天荒な“アイドル映画”から二十年余り、新たに生まれたこのアニメ映画はその“リメイク”というよりも、「時代」を越え、それを踏まえた“続編”である。  「タイムリーブ」を会得した主人公の少女は、当惑や困惑をする間を持たず、ひたすらに走り続ける。その姿と言動が実に現代的で、瑞々しい。 まさにタイトル通りに、時間の波間を“駆け”続ける少女の姿は、「時間を退行する」という行為にも関わらず常に“前向き”である。 そのどこまでも“前を見続ける”少女のスタイルこそ、この映画が物語る「確実に過ぎ去っていく時間を大切に生きる」ということだと思う。  クライマックス、明確な「意志」を持って最後のタイムリーブに踏み切っていく少女の“一歩一歩”には、言葉にならない感情の揺れを覚えた。  ただしかし、少しストーリーに説得力というか完璧に引き付ける“力”が足りないようにも思う。 各所のタイムパラドックス的な描写にもう一つ工夫がなかったり、終盤の核心部分がどこか曖昧だったりということを感じてしまった。 ストーリーの根底的な部分に、あと少しオリジナリティーを持った“軽妙さ”があればもっと良かったと思う。  もちろん悪い映画ではなく、良い映画である。完成度も高いと言える。 が、映画としてのインパクトだけをとれば、23年前のアイドル映画の方が力強い。
[映画館(邦画)] 7点(2012-10-09 23:00:21)(良:2票)
94.  好きだ、
どこまでも内気で繊細な二人の男女が、17年の歳月を経て各々の想いを紡ぎだしていく。  下手を打てば、なんともまどろっこしくて、「うだうだやってんじゃねーよ」と言いたくなるかもしれない物語である。が、独特の空気感を持った長回しと、登場人物のキャラクターそのままに映像の中に息づく役者たちの表現力で、ただただすっぽりと包み込まれる。  劇的に何かがどうなるという映画ではない。言葉で説明してしまえば、至極単純なものになるだろう。 でも、映像から伝わってくる“想い”には、奥ゆかしさがある。  どんなときも、「想い」を想いのまま伝えることができれば、それにこしたことはない。でも、人間なかなかそういうわけにもいかない。そして、そういうことを経るからこそ、深まる「想い」もある。  一音一音を確かめるようなギターの音色に乗せて、そういう人間の、ある部分において愚かで、ある部分において幸福な微妙な感情を、冷たく吹き抜ける風のように繊細に描く映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2012-10-09 22:53:26)(良:1票)
95.  虹の女神 Rainbow Song
淡い光の中で、様々な人間たちがそれぞれの思いをありのままに繰り広げる。 こういう映画は、僕自身が映画を見始め、映画を志した頃に好んでよく見たタイプの映画で、好きだし、弱い。 加えて主人公たちも、映画を撮り、フィルムを遺すのだから、もう個人的には“オテアゲ”状態である。  だが、とても良い映画だったと思う。  とても近くにいた人の大切な想いを、その人が遠く離れてしまってからようやく気付く。いや、ほんとうはとっくに気付いていたのかもしれない。でも、近いからこそ、無意識に気付かないふりをしてしまっていた。 プロットとすればよくあるタイプではある。でも、やわらかい光に溢れた映像美の中に、時にシニカルに、時におかしさを含めながら、切なく描き出す。そういうキレイ事だけで留まらない映画の表現的な巧さが光っている。  ヒロインの上野樹里や、その盲目の妹を演じる蒼井優が、当然の如く巧くて、本来もっと主人公として際立つべき市原隼人が(若い二人の女優に)食われすぎている感はあるが、不器用で切ない人間模様を瑞々しさと安定感をもって表現されていたと思う。  この映画は、美しい光に溢れ、“虹の女神”なんていかにもキレイなタイトルがついてはいるが、主人公たちも含め登場する人間たちは、決して“完璧”なんかではない。 優柔不断だし、屈折しているし、虚栄的だったり、臆病者だったりする。 でも、そういうことが人間として当然だし、だからこそ垣間見えてくる“輝き”とその“美しさ”というものをこの映画は認め、映し出す。 失わずに済むものなら、それにこしたことはない。しかし、必ずしもそういうわけにはいかないのが、人間というもの。 そういった人間の根本的な部分での、「儚さ」と「美しさ」を描く作品だった。 
[映画館(邦画)] 8点(2012-10-09 22:53:12)
96.  ウォッチメン 《ネタバレ》 
アメリカン・コミック映画は好きである。 スーパーヒーローや悪役たちの独特の「大味」さや、良い意味での設定の大雑把さは、“クオリティー”という円周を一周して、物凄く完成された“文化”だと思う。  ただ、日本の「漫画」がそうであるように、「アメコミ」も踏み込めば踏み込むほど、“マニア趣向”になっていき、価値観は多岐に広がり、必ずしも万人受けする類いのものではなくなってくると思う。  そう、スーパーヒーローたちの「陰」を徹底的に描いた今作、その異質さは素晴らしいと言えるが、必ずしも面白くはない。  一言で言うと、あまりに「スマートでない」ということを感じた。  さらに平たく表現するならば、“スーパーヒーロー”という宿命を持った者たちの、心の闇と葛藤をベースに、ウジウジウジウジと悩み、崩れ落ちていく様を描いた映画だ。  詰まるところ、爽快感とは程遠く、3時間近い長尺が進むにつれ、観ている方もどんどん滅入ってくる。  先に言ったように、アメコミ映画の本流に反するその異質さは良いと思う。 「正義」と「平和」を体現するスーパーヒーローたちが、その本質に疑問符を持ち、迷い、堕ちる様など、崇高な哲学性をも備えるテーマ性だと思う。  ただし、その描き方があまりにクドい。 主体となるキャラクターがあやふやなので、それぞれの俳優たちに華もないので、今ひとつ感情移入ができない。 そして、ウジウジ、クドクドと引っ張った挙げ句、それほど大した結論は得られない   この無情さ、邪道さが好きな人もいると思うし、ほんの少し映画の作り方が違っていれば、大好きな映画になっていたかもしれない。 ただ現実としては、オープニングだけでジューブンな映画だった。
[映画館(字幕)] 2点(2012-10-08 22:53:54)
97.  クローズZERO
原作「クローズ」を高校生の頃から愛読してきた者としては、「映画化」という話を聞いた時、「ああ、また人気漫画の安直な映画化」かとしか思えなかったし、生身の人間が演じてあの「クローズ」の良い意味で漫画的で、“タフ”な世界観を描き出すことは不可能だと思った。  そうして、特に劇場公開時も興味を示さず、イケメン俳優目当てに長蛇の列をなしている女性客を横目で見ながら、尚更興ざめしてしまった記憶がある。  そのせいか、三池崇史がメガフォンを執っているという情報を得ても、「相変わらずこの監督は作品選びに節操がないなあ」という印象が先行してしまっていた。  しかし、実際に今作を見始めると、その冒頭で、「ああ、クローズを映画化するなら、実際問題、三池崇史しかいないな」と即座に思い直してしまった。  有り得ないような極限の不良世界を、現実のビジュアルで描き出そうとする試みには、生半可なクリエイターでは、「容量」が追いつかない。 ほんの少しでも「常識」という言葉の介入を許してしまえば、中途半端で酷い映画に仕上がっていたと思う。  そこには、ヤクザ映画だろうが、アクション映画だろうが、SF映画だろうが、ギャグ映画だろうが、ロマンス映画だろうが、アイドル映画だろうが、問答無用に撮り切ってしまう圧倒的なクリエイターとしての“パワー”が必要だったのだと思う。  そうなれば、日本の映画界に三池崇史ほどふさわしい人材はいない。  詰まるところ、自分の浅はかな想像を遥かに越えて、相当に面白い映画だったと言える。  原作漫画では描かれていない「鈴蘭」を描き出すことで、原作ファンのしがらみを巧みにかわすとともに、ファンをも納得させる新しい「鈴蘭」を描き出したと思う。  それと同時に、原作のキャラクターたちが共通して持つ「男気」や「野心」、様々な「葛藤」を、映画のキャラクターたちにもしっかりと持たせ、原作にはないエピソードでありながら、まさにこれは「クローズ」だと納得させるストーリー構成も見事だったと思う。  人気漫画を安易に映像化するのではなく、その根幹を汲み取り、映像を漫画的に仕上げた快作だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2012-10-08 22:43:24)
98.  フィクサー(2007)
派手さのない渋い演技に賞賛を送りつつも、「ジョージ・クルーニーも随分老けてきたな~」という印象を受けた。(まあ元々遅咲きの俳優ではあるのだけれど……)  アカデミー賞の脚本賞にノミーネートされたこともあり、ストーリー展開には期待したが、淡々とした台詞回しには惹き付けられるものの、展開自体にはそれほど驚きがなかったのは、いささか拍子抜けだった。  しかし、この映画の魅力は、ストーリー展開の面白さというよりは、登場人物たちの一つ一つの表情や、それをクールに切り取った映像美にあると思う。 そういう部分が、物語性以上に見応えのある映画に昇華させているのだと思う。  もっと仰々しく演出しても良いラストの顛末も、主人公の心情を映し出すかのようにあくまで淡々と描き出し、作品としての一貫性があり良かった。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-30 23:17:24)
99.  モンスターVSエイリアン
往年の東宝特撮映画、もしくは往年のアメリカモンスター映画を沢山観てきた人たちにとっては、楽しい映画であることは間違いないだろう。 主人公自体のキャラクターや、味方となるモンスターたち、悪役エイリアン、そして司令基地のデザインに至るまで、過去の特撮映画のありとあらゆる要素が詰め込まれている。 特に、日本の怪獣映画ファンにとっては、クライマックスのあるシーンはいやがおうにも“アガる↑”ことだろう。  特撮映画マニアのスタッフが、子供と一部の特撮映画マニアの大人たちのために作った映画であり、その部分が楽しければ問題ない映画だとは思う。 ただし、正直“それだけ”の映画であることも間違いない。 過去作に対してのリスペクトを込めたオマージュ作品であることは明らかだが、悪く言えば既存のアイデアを組み合わせただけで、目新しい“工夫”の無い映画だとも言える。  個人的には特撮映画ファンではあるけれど、オマージュ的要素を生かした上でのストーリー的な“新しさ”が無かったことは、最後の最後まで今ひとつ乗り切れなかった要因となってしまった。  主人公も含め、あらゆる“モンスター”たちが、徒党を組んで地球防衛に献身するという構図は楽しいものだったけれど、それぞれのキャラクターの中身が乏しく、行動の理由があまりに軽薄だったと思う。 “アメリカ人”に一方的に捕らえられ、半永久的に閉じ込められているにも関わらず、何の疑問も示さず彼らの言いなりになっている姿は、とても安直に見えた。 主人公においては、結婚を目前にした普通の人間の女性である。そんな女性が、隕石がぶつかって突如巨大化したからといって、その瞬間に捕縛され、強制的に“生物兵器”扱いされるのは、あまりに非人道的だし、三週間やそこらでその現実を全て受け止めて「これからも地球を守ろう!」なんてことになるわけがない。  そういう基本的な人間描写においては、あまりにも“乙女心”が分かっていない製作スタッフの“オタク魂”が過剰に出過ぎてしまった結果だと思った。  まあ、そういったあからさまな“ほつれ具合”も開き直って「味」として認めれば、全然問題はないのかもしれないけれど。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-28 15:34:06)(良:1票)
100.  白夜行-白い闇の中を歩く-
韓国映画特有の“痛み”の表現の重さは、この物語に非常に合っていると思った。 身体的な痛みも、精神的な痛みも、この映画は濃厚に、説得力をもって描けている。 その部分は、とても良かった。  4年前に原作小説を読んだ。ふたりの男女が、長い長い年月に渡り、一筋のか細い光を必死に辿りながら果てしない闇の中を突き進む壮大な「悲劇」だった。 単なるミステリーの枠には収まり切らない“真相”とそれに伴う濃ゆい人間ドラマが見事だった。  今作では、原作の物語構成にかなり大幅なアレンジが加えられており、諸々のエピソードに相違はあった。 しかしそれは、原作ファンであっても、映画作品として、とても有意義だと思えるアレンジだった。 望まない性行為と、望まない殺人、この映画はいきなり主人公二人の“苦しみ”を如実に表す描写が折り重なって始まる。 主人公たちの人生が苦悩に満ち溢れたものだということを、ダイレクトに伝えてくる印象的なオープニングだった。 そういった映画的な表現の巧さは、さすが韓国映画だと思えた。  2年前に日本の映画版(堀北真希主演)を観た。映画化作品として良く頑張っていたとは思うが、あと一歩物語の本質的な部分での物足りなさを感じた。 今作は、前述の通り韓国映画ならばではの説得力で、日本版より優れている部分は多い。 しかし、残念ながら、日本版と同じような部分で物足りなさを禁じ得なかった。  それは即ち、物語の中心に存在するふたりの男女の「覚悟」の描写に対しての物足りなさだと思う。 あまりに悲痛な「過去」を共有し結びついたふたりが決めた「覚悟」。その深淵こそが、東野圭吾が紡ぎ出したこの物語の核心だと思う。 それは一般人には理解し難いほどに研ぎすまされた「愛」の形であり、映画化にあたってもそこに妥協や曖昧さがあってはならなかった。 “あの日”、「目的」を達成するまで「会わない」と決めた二人が、直接対面したり会話をする場面は極力描くべきではなかったと思う。せめて目も合わさずすれ違う程度、距離を置いて存在を感じる程度に留めるべきだった。  原作小説を読んでいなければ、手放しで満足できる作品だった。実際良い映画だとは思う。 そういう映画的なレベルの高さを備えた作品だからこそ、あと一歩の核心への踏み込みが足りなかったことは、非常に残念。 
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-23 08:58:29)
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