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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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81.  ミニミニ大作戦(2003)
アクションなのに暴力シーンが少なくて、ストーリーとキャラクターだけで楽しませてくれるので洒落た印象。いい意味で軽い、良質のエンターテインメント。あと、ひたすらやな奴で情けないノートンが○です。
8点(2004-02-24 02:49:30)
82.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
なんたるおバカ! 想像を絶していた。どんでん返しはコメディだからこそ許される力業だけど、普通にびっくりできたし、いいんじゃないでしょうか。短い時間に尋常ではない労力をかけ、ほんとうに丁寧に作られている。  さまざまなネタを片っ端からぶち込み、下手すると空中分解しかねないところを、二人の警官のシンプルな友情物語を軸に据えることで回避している。またいちいち伏線を張って確実に回収していくやり方ときたらほとんど偏執的で、ここまで来ると器用なんだか不器用なんだかよくわからない。『ハートブルー』はもちろん、白鳥やクロスワードまでそう、最後に医者が復讐にやってくるのだって銃撃戦での台詞を受けているのだろう(「医者だろ、自分で治しな」→自分で治すことができたので、逃走することも可能)。  欲をいうなら終盤のエピソードはもう少しだけ削れたと思う。最高に面白かったけれど、さすがにくどい。しかしながら一見優しげな老人達ががんがん撃ってくる絵や、スーパーマーケット内のアイテムで襲ってくる絵は最高にクールだった。  しかしまさかこんなにエグいとは……まったく覚悟してなかったので驚いた。シリアスにしたくなくてブラックユーモアを選んだのだろうが、前半を観た限りでは家族で観られるような作品だと思いかけていたので、ちょっぴり残念ではあった。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-08 01:40:05)
83.  ぐるりのこと。 《ネタバレ》 
入念に作りこまれた映画だと思う。構成は徹底的に考え抜かれていて、情報量も多い。夫婦の生活と有名事件の裁判を交互に語る形式で、微視的・巨視的に90年代を切り取ってみせたのはちょっとあざとくも思えるけれども、確かに成功している。年代もきちんと提示されるが、女性のファッションを見るだけで時代がわかる描写の細やかさはさすが。風呂場で椅子から落ちてごつんと音がするところとか、リアリティうんぬんというかもう、生々しくて肌に伝わってくるようだ。  女は子どもを失った罪悪感から会社を辞め、男はなにごとにも辛抱強く、自分を納得させるための涙は絶対に流さない。英題を見ると「ぐるり」は二人を取り巻く周囲の状況を指しているようだが、逃げそうで逃げない、遠回りしているようで実は真摯に現実と向き合っている二人の生き方もまた「ぐるり」なのではないか、と感じる。というか安易な答えに飛びつかずに(あのうさんくさいベストセラー作家に抱きつく変人みたいに)、生きることに真摯でいようとするとするなら、回り道せざるをえないのかもしれない。  ただ、これほど見応えのある作品も珍しいが、正直いって内容を消化し切れなかった部分もある。割と爽やかに終われそうだったのに「継母ぁ!」を入れてきたのにはびっくりした。それに巧妙な構成が仇となって、ときどきものすごく冷静になったり、展開そっちのけで考え込んだりしてしまい、肝心な夫婦のドラマを遠巻きに眺めていた感がある。なのですごい作品とは思うけれど、感動の度合いを正直に書くと7.5点くらい。繰り返し観れば、いろんなことが腑に落ちるのだろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-09 22:38:00)
84.  殯の森 《ネタバレ》 
以前真夏のある日に、神社の脇の林に囲まれた広場に入ったことがある。木の枝が広場全体を天蓋のように覆う、嘘のように涼しい場所だった。一陣の風が通り過ぎて草木がいっせいにざわめいた瞬間、なぜか鳥肌が立った。スピリチュアルなんとかの類は苦手なのだが、あのときばかりは深遠な雰囲気というか、何か得体の知れない存在に対する畏怖のようなものを感じずにはいられなかった。  この映画にはそんな気持ちを呼び起こす森林の風景が捉えられている。それも単に映像を撮っているというだけでなく、澄み切った空気の味や、植物や土の匂いまで伝わってくるような、生々しい臨場感がある。現実に疲弊した女性が認知症の男性を案内役に森を彷徨い、やがて言葉を超えた境地に辿り着く。わかりやすくオカルト的な要素は登場しないが、アニミズムやシャーマニズムを体現している稀有な映像作品だ。原初的な宗教体験、悟りの瞬間を説得力をもって描き出している。自然のなかの神様を感じさせる作品といえば宮崎駿監督の『となりのトトロ』ぐらいしか思いつかないが、あれとも全然違う。類のない作品じゃないだろうか。  ただ、海外でこういった作品が評価されるのは素晴らしいこととは思うけれども、欧米の方は日本文化について極端な評価をしがちなのも確かだと思う。日本人からすると深みが足りない、安っぽいと感じる部分があっても、あちらでは異文化万歳といった感じで簡単に見逃されてしまう。ありがたいことではあるけれども、ときには「その漢字Tシャツ変ですよ」と言ってあげたくなることもある。たとえば本作でいえば前半の日常描写がぎこちないし、服を脱いで肌を寄せ合う場面などにはあざとさを感じてしまう。リアリティを出そうという意図がみえみえで、リアルを超えて無骨な感じがする。  実は鑑賞直後は4、5点にしようと思っていたのだが、観て損をした感はなかったので点を上げた。普通の意味では退屈だが見入ってしまう、なんとも不思議な作品。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-26 19:02:49)
85.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生 《ネタバレ》 
「数奇な人生」とは逆説的な題名のつけ方で、実際にはとてもありふれた人生の悲喜を描いているように思う。より正確にいえば、特殊な人生だからこそ普遍的な人生の意味合いが象徴的に浮き上がって見える、といったところだろうか。  体が幼くなるとともに認知症が進行し、人の世話を受けなければ生きられなくなるのは、なにも赤ん坊の姿にならなくともありふれたことだ。老いるに従って身も心も子どもに近づいていくベンジャミンが「なにも思い出せない」と嘆くのを、デイジーは「それでいいのよ」と抱きしめる。人は死ぬと生まれた場所に帰っていく――と言葉にしてしまうと陳腐だけれども、“老い”というものを描くのにこんな手法があったのかと非常に感心させられた。  デイジーが事故に遭う直前の状況の推移を丁寧に追っていたのも良い。「あそこでああしていれば今頃は」という誰でも抱いたことがある後悔の念を、丹念に、繊細に拾い上げていく。ささいなことの積み重ねで人生は決定的に変わる。ときには知らないうちに選択がされていて、あとから取り返そうとしてもどうにもならない、大きな流れがある。もっとも映画全体を通して感じられるのは一瞬一瞬をいとおしむ穏やかな慈愛の気持ちであって、けっして負のトーンが強すぎるということはない。  ラストに登場人物をさらりと振り返って、なにか教訓めいたことをいうのかと思いきやそのままエンドロールに突入する、あの控えめさがまたいい。終始美しい映像だが、わざとらしい作り込みもなく、押し付けがましいドラマもない。いわゆる“泣ける映画”ではない分、切なさがいつまでも後を引く。
[DVD(字幕)] 7点(2009-07-22 14:14:11)(良:2票)
86.  ハプニング 《ネタバレ》 
多少の顰蹙は承知で、自分勝手な解釈を書きます。  おそらく毒素を出す植物が反応していたのは「人間の集団」ではなく、人間の集団に発生しやすい「憎悪」の方だったのです。  老婆が死んだとき、彼女は集団で行動こそしていないものの、直前までエリオットを罵っていました。また草原を2班に別れて移動していたときに兵士が錯乱したのは、先頭を歩いていた男性陣が激しい喧嘩を始めた直後。集団行動していれば否応なく軋轢は生じますから、エリオットが初めに立てた仮説は身を守るのにある程度は有効でした。だからてっきり正解だと思い込んだ。  毒素が「憎悪」への反応だとすると、直接的な原因は植物ですが、引き金を引いたのは人間自身。つまり集団自殺現象は、そのメカニズムにおいても文字通りの自殺行為、お互いへの憎悪で己の首を絞める、人類という種の自殺だったのです。  このように考えると、テーマとしてもしっくりきます。主人公のエリオットは情緒不安定な妻と行動を共にし、友達の娘も励ます優しい人物です。草原の移動中に高まりかけたパニックの気配を抑えて理性的に振る舞うし、妻のちょっとした裏切りにも寛大に接します。常に冷静で、人間関係の和を保とうとする性格なのです。  孤独な生活を送っていた老婆は生き延びていましたが、狂気の淵にあり、人と接した途端にあっさり破綻してしまいます。エリオットが最後に取った行動は老婆とは正反対。孤立した状況でも人と繋がり続けようとし、誰といても安全ではないことを知っていてなお、一人で死ぬくらいなら妻とともにあることを選ぶのです。  最後にエリオットが嵌める指輪が示した色は「愛情」でしょう。「憎悪」によって自滅しかけた人間の危機に、彼が生き残るのは必然でした。エピローグでの懐妊は予定調和にも見えますが、つまりは彼らこそが新しい世代を育み、人類を担っていくのだという象徴でしょう。  実のところ欠点がない作品とは言えませんが、批判は山ほどあるようなので自分は控えておきます。グロテスクなだけの場面もありましたが、集団の飛び降り、銃を手渡しての連鎖自殺などは、映像的にも鮮烈。首吊りの画なんかは残酷な宗教画のようで(不謹慎ですが)荘厳ですらありました。いかにもシャマランらしい、信仰心が滲んだ作品だと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-21 20:38:14)(良:2票)
87.  ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
開始十五分で七十人が生きたまま喰われたのにはちょっとびびったが、面白かった。キレイ目のクラウザーさんみたいな魔界の王子に率いられた怪物たちはいずれもユニークで、いかにもこの監督らしいデザインの「歯の妖精」や、『もののけ姫』の影響がもろに出ている森の精霊などは楽しかった。それに対して主人公は怪力で銃を振り回しているだけ、外見以外これといった特徴がなく、むしろさまざまなキャラクターを見せるための狂言まわし(引き立て役?)に回っているのがヘルボーイの面白いところだ。『忍たま乱太郎』の乱太郎みたいな。単純に楽しめる作品だが、出来の悪い第一作を観ていないとわかりにくいのがもったいない。  しかし怪物たちの造形や独特の美的センスはすごいけれど、物語は普通だ。異形のヒーローたちが差別とアイデンティティに悩まされるのもアメコミとしてはいたって凡庸。ヘルボーイもエイブも親しみやすく憎めないキャラクターではあるものの、感動を与えてくれるほど厚みある存在ではなかった。普通なら泣ける場面も、平板なメロドラマになってしまっている。デル・トロ監督は精緻な世界観を構築するのが第一で、作品を通してこれだけは伝えたいテーマみたいなものはないのかもしれない。それは必ずしも悪いことではないけれど、ちょっぴり物足りないのも事実だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-01 11:32:16)(良:2票)
88.  隠された記憶 《ネタバレ》 
ラストシーンは正直、気がつきませんでした。観直そうとも思わない。多少ハードルが高くてもその難解さに意味があるのならちょっとは努力しようと思えるけれど、これは別に……。理解できてもさしたる感動はなさそうで、どうでもいいというのが率直な感想です。  監督はインタビューで「真相は重要ではない」と語ってましたが、人間の関心っていうのはどうしても隠された部分に向かうもので、本当に重要じゃないならこういう描き方はどうかと思います。人が罪とどう向き合うか、という大切な主題は、むしろブレてしまったのでは。  ただこの作品のすごいところは、物語としてはほとんど緩急がないのにも関わらず、張り詰めた緊張感がまったくといっていいほど緩まないこと。長回しを多用しつつもだれがない。つまらない映像でも音楽があれば誤魔化しが効くそうだけれども、あえて完全に排されている。  カメラワークを勉強した訳ではないので詳しい理屈はわからないけれども、映像の文法を知り尽くした人によって、完璧に制御された映画であることは明らか。物語としては平坦でも、視点の運動によってリズムが生み出されている。だから無理に集中しなくても自然と引き込まれるし、話の割には飽きが来ない。これって何気にすごい。  ショッキングな自殺の場面も、観る側の呼吸の間隙を突いた、いやらしいまでに絶妙のタイミングで差し込まれる。間の計り方、微妙な匙加減が憎いほどに上手い。かといっていかにも不自然に芸術ぶった構図があるわけでもなし、本当に、卓越した技巧だと思います。手放しに絶賛はできないものの、非常に見応えのある作品であったことは確かです。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-08 20:32:45)(良:1票)
89.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 《ネタバレ》 
年代的にも共感できる要素が少なく、テレビ番組で前もって見所を知っていたのもあって、かなり冷静に鑑賞。なのに、不覚にも泣いてしまった。なんというか、ギャグとシリアスの緩急が上手いのですね。クレしんだけにくだらない部分は思いっきりくだらなくできるわけで、その点は卑怯というか、巧妙だなーと思いました。  衝撃的だったのは、計画が潰えた後に悪役の二人が自殺を図るエピソード。推理ものならともかく、低年齢向けでこんなのは珍しい。おまけにこの悪役がどうしてこんな事件を目論むに至ったのか、バックグラウンドがまったく描かれていない。尺の関係もあったのかもしれないが、大胆に余白を残したのは正解(ジャンプ系のやたらと回想を織り交ぜて語りまくる漫画には見習ってほしい)。  声優の貢献もあり、ケンとチャコは名キャラクターとなっている。敵役に存在感を持たせたことが作品を成功させた要因の一つでしょう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-05-07 12:23:26)(良:1票)
90.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
結局、なにが言いたいのか。血縁、石油、キリストの血といったさまざまな意味合いを含ませた〝blood〟。家族愛、宗教、経済的発展といったいかにもアメリカ的な価値を追及した果てにすべてを失う男の姿に、米国の現状を重ね合わせてみたんだろうか。題名は聖書の神罰を表す一節の引用だそうで、いかにも暗示を散りばめてみましたといった感じ。終始意味ありげな深刻ぶった雰囲気が流れているが、実は案外浅いんじゃないかと思う。  ダニエル・デイ=ルイスが無理やり懺悔させられる際の葛藤は名演技中の名演技だし、ボーリング場の下りも素晴らしかったとは思う。しかしそれはデイ=ルイスの役に対する解釈の深さに多くを負うもので、全編を通してみれば非常にありきたりで捻りのない脚本だ。一流の役者、洗練された映像と音楽を揃えて、肝心の芯がやせ細っている。キューブリックはある映画監督を指して「スタイルは百点で内容は零点」と評したそうだが、その尺度でいえばこの作品は「スタイル九十点、内容六十点」といったところじゃないだろうか。  もっとも、そう思うのは筆者の観方が悪いのかもしれない、とも思った。主軸が判然としない一方で多面的な観方ができるのも確かで、考えようによってはそれがこの映画の強みなのかもしれない。少なくともルイスを観るだけの価値はあるし、ポール・ダノも結構良い(見えない悪魔をぶん投げるとことか)。  最後の台詞、「終わった(I'm finished)」は狙い過ぎとも感じたけれど、ちょっぴり切なかった。「金持ちになったら誰にも会わずにひっそり暮らす」のが夢だった男の、待ち望んだ心の平安は刑務所の独房でようやく訪れるのだろう。  それにきっと、あの息子もいずれは面会に来てくれるはず。というか、そう願いたい。血は繋がっていないとしても、親子は親子。きっと孫だって生まれる。〝There will be blood〟という題名にはそうしたいくばくかの希望を暗示する意味もあるのだと、(かなり強引に)解釈しておきたい。そう考えなければ救いがなさ過ぎるので。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-07 11:42:24)
91.  キサラギ 《ネタバレ》 
普通に面白かったです。でもここでの平均点の高さにはちょっとびっくり。褒めている方は大勢いらっしゃるので、以下、あえて引っ掛かった点を挙げます。  何より気になったのが俳優の拙さ。香川さん以外の若い出演者の演技はみんなどこか不自然で、そもそもミスキャストではないかというくらいバラエティ番組での印象が固まった人もいる。ユースケ・サンタマリアは好きだけど、個人的には『ぷっすま』のイメージなので映画では観たくなかった。  脚本もテンポの良さは素晴らしかったけれども、一方で舞台劇特有のまくし立てるようなしゃべり方は耳障りだった。ラストが蛇足なのは言うまでもなく、とりわけプラネタリウムの場面のチープさはどうにかならないものかと思った。あと、映像的に面白みがなさすぎる。全体的に工夫が足りないのは素人目にも明らかで、鮮烈に脳裏に焼きつくような見せ場もない。大画面で観たいという欲求が全然そそられないのは、映画として少し寂しい。  いくら話が面白くとも、それ以外の要素がテレビドラマに毛の生えたレベルというのはもったいない。“映画は脚本”であることに異論はないけれど、それはあくまでも屋台骨として重要なのであって、すべてではないでしょう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-01-28 16:52:32)(良:1票)
92.  アフタースクール 《ネタバレ》 
どんでん返しがキモの作品はたくさんあるが、この作品の趣向はよくできた「騙し絵」のようだ。一見して理解したつもりでいた光景が、少し角度をずらしただけでまったく異なる意味合いを持って見えてくる。観終わってすぐに再び初めから見直したくなる、精妙巧緻な仕掛けだ。ネタそのものがすごいというよりも、その観せ方が憎らしいほど上手い。真相の意外さよりも、実はその真相が(ある意味では)初めからずっと目前にあった、という衝撃が新鮮だった。『SAW』などの力技で騙す作品も悪くはないが、伏線をきれいに回収していくこの手並みの鮮やかさは素晴らしい。  ただし構成の精緻なミステリーの宿命で、敷かれたレールがしっかりしているのに反比例して登場人物が人間味を失ってしまう、物語のためのコマでしかなくなってしまうという短所からは逃れられていない。しかも本作の場合、一つの場面から二重の解釈ができるような微妙な雰囲気が強いられるため、普通以上に抑えた演技が多く、ますます感情移入が難しくなるというハンディを抱えている。個人的には気持ちよく騙してくれたからそれでOKなのだが、だめな人はだめだろうと思う。  ちなみに大泉ファンであればコメンタリーは必聴。期待に違わぬ、清々しい下らなさだった。監督と妙に仲がいい(笑)
[DVD(邦画)] 7点(2008-12-15 18:12:56)(良:2票)
93.  インランド・エンパイア 《ネタバレ》 
熱にうなされているときの、長く不快な夢のような時間だった。とにかく意味不明。秩序だった物語なしに、断片的なイメージの集積だけで一人の女性を表現しようとしたのではないかと思う――たぶん。なんとなく『リング』に出てくる呪いのビデオを思い出した。  デヴィッド・リンチの暗い精神世界に際限なく沈み込んでいくようで、不安を掻き立てられる一方で不思議と惹きつけられるものもあった。気持ちの悪い、しかしある種の美しさも備えている、洗練された悪夢。リンチはこと人の神経を苛む技術にかけては天才的だ。  正直集中力を保つのに苦労することもあったが、ひとつひとつの映像のクオリティが高いのでなんとか観ていられた。割と眠かったのに、観終えると妙な満足感がある。強烈な個性を持った作品で、はっきり言って楽しめる人の方が少ないだろう。こんな実験作を作って許されるのは大学の映画サークルの一年生か、巨匠だけだ。気安くおすすめはできないけれど、個人的にはそこそこ面白かった。
[DVD(字幕)] 7点(2008-12-10 09:13:12)(良:1票)
94.  アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎作品に特徴的なのは、そこかしこに散りばめられた独特のセンスによる遊び心と、ささやかなユーモアの一撃でもって暗い絶望を軽やかに飛び越えてしまう、不思議な力にあると思う。ひょうひょうとしてさり気ない、しかし妙に心強い救済の力。この映画はディティールには多少の差異があるとしても、そうした本質の部分を完璧にものにできている。  細かい脇役にまで気が配られているのがまたいい雰囲気。なぜか悪役がハローバイバイ(しかも妙にしっくり)だったり、本屋のばりばり訛ってる店員がめちゃくちゃ可愛かったり(エンドクレジットそのまんまで笑った)、父さんがチンカチンカのルービーの人だったり。こうした配置は絶妙で、得難いセンスが感じられた。  ていうかこの監督の次回作、長嶋有の『ジャージの二人』!? 面白いには面白いけど、映画原作としてあれを選ぶとは……。伊坂ワールドも楽しいが、中村義洋ワールドにも期待。原作と比べても甲乙付け難い出来だけど、個人的には映画のほうが好きですらあった。
[DVD(邦画)] 7点(2008-04-15 15:38:39)
95.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
面白かったけど、深遠さに欠けるというか、あくまでも娯楽作品としてよくできているという印象。伏線の利かせ方が非常にわかりやすく、脚本の計算が透けて見える。登場人物は敷かれたレールの上を忠実に辿る人形のよう――というのは言い過ぎだとしても、少なくとも厚みのある人間としては感じられない。みんなして明らかにストーリー上必要な失敗を犯していくのには笑ってしまった。たとえ子どもであっても、あそこで葡萄を食べるのはバカ過ぎるだろう。医者の台詞や、悲痛なラストにはさすがに涙を誘われたけれど、深く感動したかと訊かれたらNOだ。面白い。それは確かだが、それ以上のものはなかった。
[DVD(字幕)] 7点(2008-04-12 21:46:18)
96.  街のあかり 《ネタバレ》 
冴えない割には美形の主人公が、動物図鑑の草食動物の項目に載っていそうな女にたらしこまれていくのが納得行かなかったけど、その点を別にすればけっこう卒のない出来。『浮き雲』や『過去のない男』よりもっと前の作品に似て、暗くシンプルなストーリーだった。次に男にどんな不幸が訪れるのかが観ていて容易に予想できる。男自身もわかっていてあえて飛び込む。この男の強さは愚直さと同意義であるはずなんだけど、どういうわけか苛立ちは覚えなかった。全然自分の不幸に酔っている部分がないからだろうか? 鬱な展開しかないのに後味はすっきりしていて引きずらない。暗いけれどなんともいえず清々しい作品だった。
[DVD(字幕)] 7点(2007-12-23 00:49:21)
97.  ゆれる 《ネタバレ》 
隠喩とか象徴とか考えるのはあまり好きではないんだけど、いわばあの橋は兄弟の関係そのもので、間に一人の女が割り込んだがために激しく揺れ、その脆さを露呈したのだといっていいと思う。  猛の偽証はあんまりだという意見が多いけど、そうだろうか。殺人ではないにしても過失致死か傷害致死なのは間違いないわけで、結果を見る限り素直に同情できない。仮に助けようとしたとしても、危険なつり橋で人を突き飛ばすような男は刑務所に行って当然だろう。  最初、猛は兄が灰色であるのを承知でかばっていた。が、面会した兄は異様な言動を見せ、法廷では嘘をつき、偽善的なパフォーマンスまでやってのける。検事が「相手が落ちるのを予想して手を伸ばしたんだろう」と迫る下りは、なるほど証拠は無いがそれもありえなくはないな、と思わせた。あそこで傍聴席の猛がちらりと映されるが、あるいはあのときすでに、兄を疑い始めていたんじゃないだろうか。  無罪と思い込もうとしていたのが、終いには狡猾な男が芝居を打って罪を免れようとしているように見えてくる、そしてそいつを有罪にできるのは、自分だけ――だったら、あの行動もまんざら理解できなくない。  猛の証言に稔が微笑んだのは、たぶん、嬉しかったんだと思う。面会室で弟に唾を吐きかけたときから、きっと稔はどこかでああなることを望んでいた。初めて弟に本心を晒し、弟もまた本心でぶつかってきたことが、清々しかったのだろう。以前は表面的に仲の良い兄弟でしかなかったのが、おそらく生まれて初めて本気で兄弟喧嘩をしたのだ。  そしてラスト。個人的にはあの終わり方が一番よかったと思う。事件を契機に兄弟は初めて取り繕うのをやめて醜い悪意をぶつけ合い、それでも弟が再会を望んだから、兄は笑った。きっと彼らは関係の快復を望んだろう。でも確執が残っているのは当然で、元通りGSで働くのも難しいのだから、いきなりの和解なんて夢想でしかない。見通しは甘くないのを承知の上で、なおも希望を見つけようとする。  人は繋がりたがる生き物だから、どんなに頼りなくゆれる橋でも、向こう岸に渡りたいと望む。ラストが曖昧なのはごまかしではなく、そこに願いを込めようとしたからだと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2007-11-29 00:53:00)(良:1票)
98.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
マンホールの蓋を持った半裸のおっさんたちを見たときはどうかと思ったけど、あまりに現実離れした世界観のせいでどうでもよくなった。戦闘シーン以外でも雲間から差す陽光などが異様な金色をしており、神話的な雰囲気を醸し出している。けれどもザック・スナイダーのセンスというのは良くも悪くも現代的で、どんなに神々しさを強調しても重厚さに欠け、歴史ものよりは音楽のPVに向いた才能だと感じさせる。  脚本は半ば確信犯なんだろうけどやはり薄味で、人間ドラマ的な部分がまったく感動できないのはちょっと残念。加えてペルシア軍側の過剰な脚色(どうみてもサウロンの配下)には笑いを堪えられない。エンドロールに至っては神話性が完璧に消失し、まったきプロモーションビデオと化してしまう。『ドーン・オブ・ザ・デッド』でもそうだったけど、どこかしらロックンロールせずにはいられない監督なんだろう。  これを軽薄と受け取るか、あるいは個性的なセンスと捉えるかは人によるだろうが、自分はどちらかというと、後者。諸手をあげて絶賛はしないけど、鮮烈な世界を創り上げていることは確かだし、同監督の次回作はチェックしたい。こんなにメタリックなファンタジーは過去になかった。
[DVD(字幕)] 7点(2007-10-23 03:30:01)
99.  トランスポーター2
このハゲは限度というものを知らないのか? ジャッキー・チェンと007を足してアホで包みましたという感じで、あまりにアホなのでかえって爽快だった。
[地上波(吹替)] 7点(2007-09-30 23:08:11)
100.  ラブ・アクチュアリー 《ネタバレ》 
ユーモラスでロマンティックで、とてもキュートな作品でした。ほとんど現実味がなく物語も細切れなのに共感できるのは、情けなくて人間味あふれる言動を、上手に笑いにくるんで表現しているからだろうか。少年の片思いや作家のプロポーズの話はまったくリアリティがないけれど、素直に感動できる。少年の愛らしいキャラクターと、作家の「君がノーといっても驚かないよ」の台詞がそれを可能にしているんだろうと思う。この辺の絶妙なさじ加減はラブコメ職人である監督の面目躍如だ。  ただ、それに対して苦味のあるエピソードはあまり上手くない。親友の花嫁に恋する話以外の暗いエピソードは半端で、着地点すらみせてくれない。部下に浮気心を出す夫も、病気の兄弟を持つあの女性も、置いてけぼりにされたままTHE END。中高年の男が錆つきかけた夫婦愛にどうけじめをつけるのか知りたかったし、あの女性の抱えた事情も恋を完全にあきらめる理由としては説得力がなかった(というかたいした努力もしてないくせにあきらめるなよ、逃げる言い訳に家庭の事情を使っただけじゃないの? と思った)ので不完全燃焼。さまざまな愛の形を描くために悲恋も加えたんだろうけど、あんまり得意じゃなかったのかな?  とはいえ長い時間を全然だれずに楽しめたことは事実。何度もお腹を抱えて笑えたし、上記の欠点と、首相のエピソードが案外たいしたことないのを除けば面白かった。全編ラブソングのオンパレードという趣向もよかったけど、ひとつも思い入れのある曲が入っていなかったのがちょっぴり残念ではある。
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-21 02:00:14)
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