1061. トリコロール/青の愛
《ネタバレ》 うーん、わからんぞ。ビノシュ演じる主人公の心理が。 家族を突然失ったのだから、家も楽譜も思い出も何もかも手放すのも、自棄気味に知人の男と寝てしまうのも、そこはまあ分からんでもない。しかしねえ、降って湧いた夫の愛人が妊娠しているときた日にはこりゃ大波乱の予感ですよ普通。ワタシなんか女性週刊誌ばりの愛憎劇を期待したわけですが。なんとビノシュは彼女に亡き夫と住んだ邸宅を譲っちまうという神の如き心の広さだ。ウソだろ。「妻は良い人だ。寛大だ。」などという夫の言葉を愛人の口から聞かされてキレない女がいるだろうか。 この頃のビノシュはまだ細くて繊細な容姿だし、映像もキレイぽいのだけども、どうにもこの手の話は人物に共感できないと心が動きようが無いわけで。なんかたぶん素敵なおはなしなんだろうなー、と茫洋とした感想ですみません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-02-12 23:13:03) |
1062. クルーレス
セレブでおばかさんな女子学生がはっちゃきになって他人にお節介をやく、このパターンは後の”キューティ・ブロンド”で完成形を成し遂げたわけですが、ワタシは先にキューティの方を観ちゃったのでうーん、アリシアの容姿だけかな軍配が上がる所があるとすれば。 ”友だち”と言ってはいても、本心は上から目線で物申しているわけで、そこんとこの自覚の無さもリース・ウィザースプーン版よりも潔くないし、コメディとしてのはっちゃけぶりも物足りない。周りをかためる男の子たちも没個性ばかりでつまんなかった。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-02-09 00:25:54) |
1063. 冬の嵐
《ネタバレ》 舞台は立派なお屋敷、外は猛吹雪、二人の怪しい初老の男、とサスペンスの舞台装置としてはなかなか良い線いってると思います。電話線が切られていたり、身分証が勝手に処分されてたりと彼女を追い詰める仕掛けも王道。秘書役のおっさんが、温厚・粘着質・主人愛型というまれに見るタイプの得体の知れなさを醸していて怪演、この人が一番良かった。 ところがですね、ゴシック・ホラーにもう少しでなれそうでなれてないんですな これが。 画そのものに暗い質感が少ないせいか、肝心の車椅子のじいさんがそんなに怖くない。サイコパスというより意地悪じいさんに見える。 SOSを受けた夫が、もっと慌てるべきです。いや急いだんだろうけど、あのタイミングでギプスをはずすシーンを挟むと、この緊急時に呑気なことやってるんじゃないよ、と誰もが思うだろうよ。 義弟の存在もギプスも、そもそもいらなくないすか?健康体の夫が一人で動く脚本の方がなめらかになりませんか? [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-02-07 14:32:11) |
1064. ミッシング ID
《ネタバレ》 いやー、これ完全にティーン向けでした。いい年して観るものではなかったです。 行方不明サイトに幼い自分がUPされている、という切り口こそ小道具が現代的ではあるけれど、謎の組織に追われFBIからも逃走し、女医の発した人物を探すというその展開がぴりっと締まらない。友人は二度も監視の目をかいくぐって助けに現われるし(監視の目すらないみたいな描写だったな)、主人公のスーパー高校生は脚で列車の窓を粉砕してしまうとか、ちょっと付き合いきれなくなった。 ところでハリウッドってメリル・ストリープ以外は年配の女優に良い仕事が回ってこないもんなのか?シガニー・ウィーバー最近こういう端役とも呼べないような仕事が多い気がする。観ててつらい。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-02-05 23:59:57) |
1065. レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
西洋童話の纏う、ほの暗い残酷さが美しい映像で立ち上がる。なんて正しいVFXの使い方でしょう。画の美しさに加えて、子供らの雰囲気のある佇まいも好き。ジム・キャリーの怪物ぶりは言うに及ばず。 ”子供に読んであげるお話”なのに、むこうの話は良い人たちが悪者に殺されたり、子供がなかなかにむごい目にあったりするんですよね。しかし子供もさるもの、知恵と勇気で難所を切り抜ける。この行動力、利発さ。西洋文化が育んできたサバイバルに長けたキッズたちの活躍が楽しい「不幸せな」お話でした。 余白でM・ストリープとD・ホフマンの大御所が楽しそうに出演。つられてこっちも楽しい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-05 17:29:21) |
1066. それでも夜は明ける
《ネタバレ》 アメリカ史の暗黒サイドである奴隷制度のありさまを真正面から見据えてのこの一本、正面も正面、目をそらさずに描ききるその筆致ときたら当然のごとく処刑だの鞭打ちだの、非人道的な行為描写に割く時間が長くて、「早く南北戦争始まってくれー」と願いながら観るはめになった。 黒人がこんなに酷い仕打ちを受けました、で終わっていないところがこの物語のリアルなところで、白人らも実に色々な人がいたのだなあ、と個人的にはそこが一番の発見でした。人道的に許されないことをしている、という罪の意識が多かれ少なかれ存在し、まだら模様のような社会。本当は奴隷制度なんか嫌だ、でも広大な農園を維持しなければ、との経済システムの中で生きるB・カンバーバッチ演じる農園主はぎりぎりのところまで苦しんでいるし、次の主人である酷薄な農園主夫婦らも残虐な行為が正当化される社会の中で理性の針が振り切れてしまっていた。愛情を抱いた女は黒人奴隷で、屈折した思いは嫁とのはざまで彼女への虐待へと向かう。あいつ狂ってたなあ。怖い。 家の女主に納まった元奴隷の女性もいたりもする。そうなると、手に入れた特権に安住してしまうものなのね。白い人も黒い人も色々で、モザイクのように社会を構成していたその描き方が奴隷映画としては新しく感じて見ごたえがありました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-31 23:57:28) |
1067. バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所
なんつうか、”けったいな”という表現しか思いつかない作品。よくこんな題材思いつくよなあ。 ホラーな音響を作ってるうちに擬似殺人を犯している気分になり、メンタルをやられる技師トビー・ジョーンズがそもそも”何かを抱えている”風貌なので、はまり役である。はまり過ぎだ。彼以外の役者だったら単なるノイローゼ患者の人物描写になっただろう。事務仕事がずさんなイタリア人気質までが彼を苛むのだった。(笑) ”何かが起こってすとんと落ちる”話では一切無い。ぽかーんとしているうちに終わっちゃうのだけど、まあー奇妙奇天烈、じわあーと不快な気分にさせられる強烈な印象は残します。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-01-30 23:42:59) |
1068. サプライズ(2011)
《ネタバレ》 これは、けっこうしっかり誠実に(?)作っているな、と思います。登場人物が一人また一人訳も分からず殺されてゆくというすでに百出のプロットをどう見せて客をのせるか。10人もいる人物のキャラクターをしっかり紹介できているのがエライです。初期のゾンビものの傑作もそうでしたが、「この人はどういう性格か」をちゃんと描いて、単なるモブシーンの一部にせずこちらに思い入れを持たせることに成功しています。ここでは兄弟仲がよろしくない、とか兄嫁の意地が悪い、といった押さえるべき点が要領よく披露されます。長男はエラソーに振舞っていましたが、実は一番人間的だったりしました。 印象が薄いor足手まといな者から次々消えてゆくのもセオリー通り。そして展開が早いのも飽きさせない要因でしょう。身内の企み、というネタばらしのタイミングも丁度良いと思います。そこからお話は一転し、事情を知らないのは女主人公一人であると客は知らされ、見守る立場になる。がんばれ、とますます力が入ります。 エンドレスリピートの隣家の音楽や、不気味なアニマルマスクという小道具も効いてます。暇つぶし的に殺された隣家の二人は気の毒でしたが、社会的モラルに照らしてあまり感心できない人たち、という保険もかけてありました。誠実だ。 [DVD(字幕)] 7点(2016-01-25 18:34:28)(良:1票) |
1069. フィンランド式残酷ショッピング・ツアー
《ネタバレ》 まさかロシア国内では旧西側の映画作品が観られないってことはもはや無いと思うのだが、それにしてもこの”こなれてなさ”はかなりのレベル。なんか手持ちカメラで撮るのが新しいらしいよ?とばかり、全編にわたって張り切ったPOV映像がぶれっぶれ。観づらいよう~。あちらこちらで展開がもたつく脚本も素人ぽい。初めからえんえんと続く母子げんかには見てて相当ストレスが溜まる。あっさり繋がった彼女への救援電話も、肝心な命の危機についてトークが及ばない。こんなところで焦らされても観てる方はハラハラするよりイライラする。殺人者からなんとか身を隠した一室、一般的にはここでけっこう粘るなり、ピンチが次々襲うなり尺を取ると思うんだが、かなりあっさり脱出しましたな。 ただ、この素人くさい画がちょっと動画ぽくて映画離れしているとも言えるので、日常にふいっとイカレた連中がわいて出てきたような妙にリアルな恐怖の質感はある。 ぷいっと放り出したような終わり方には呆気にとられたが、ロシア・フィンランド合作というのにも驚いた。ロシア人の隣国コンプレックスも感じるし、フィンランドの人の懐の深さにも感じ入るなあ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-01-25 00:04:16) |
1070. 暁の7人
《ネタバレ》 ドラマ的なけれんみを極力排除して、生真面目に対ナチス抗戦を描いています。堅いドキュメンタリー風でもあり、そういった点ではちょっと退屈かもしれないのですが、現場に身を置いたつもりで観ると、裏切り者あり、予定外の報復あり、恋情の発生ありでかなりの波乱万丈ではあるのです。ここぞという時の銃の故障には叫びたくなりました。 ナチの暴力性は克明に描かれ、教会に籠城したメンバーが殲滅させられるラストは非情が過ぎて恐ろしいとしか言えない。ダメ押しでエンドロールに実在した人物の写真とその後の顛末が流れる場面は戦慄必至。つらいです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-01-22 23:22:28) |
1071. ホワット・ライズ・ビニース
《ネタバレ》 雰囲気一流、脚本二流 といったところ。大物をキャスティングし、トップクラスの監督を擁したわりに出来は超平凡。むだに尺ばっか長い。 心霊をメインにしたオカルトにしたいのか、妻のはっきりしない過去記憶に迫るサスペンスにしたいのかどっちつかず。隣人の存在意義がわからない。 ハリソン・フォードはこういう腹に一物キャラは不得手らしい。”取り憑かれた”M・ファイファーの二役熱演はメイクの効果もあって、まあ観られる。 ハリソンの犬は駄犬だったなあ。女主人は見殺しだし。家の前の池を怖れてボールを取りに来ないのはなぜ。死体は別の場所にあったのに?まさかネックレスの怨念が怖いからとかって、いやちょっと。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-01-22 22:44:46) |
1072. マジック・マイク
これでいいのか俺の人生、と苦悩する男性ストリッパーの物語をソダーバーグらしく真正面から投げ込んできました。びっくりするくらいひねり無しのストレート。 堅実派の彼女に惹かれつつ、それなりに成功を収めた夜のプライドもあったりで、揺れる男心がひしひしと伝わります。ウルサい演出が無い分、すっきりした構成ではありますが、すっきりしすぎで少し物足りないかも。個人的には主人公より彼女の弟アダムの方がタイプでしたので、彼の行く末の方が心配だ。その辺も話に盛っておいてほしかったなあ。 ステージパフォーマンスは吹き替えのダンサーさんたちも沢山いるのでしょう、見ごたえがあるしケバい内容に反して美麗に撮られています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-01-09 00:25:59) |
1073. 硫黄島からの手紙
《ネタバレ》 ”星条旗”では兵士を消費するだけという戦争のグロテスクを描いたイーストウッド。”硫黄島”では、あたら若い兵士が死んでゆく。「御国のため」「武士の本懐を遂げるため」。理不尽で非人道的だ。「何故?」と疑問を抱く唯一の若い兵士がパン職人だった二宮。ニノの演技は初めのうちやけに現代的でちょっと浮いているようにも感じた。が、それで丁度良いのかも、という気持ちにだんだんとなった。感性がそもそもあの時代では異分子の彼である。ニノが現代風に「やってらんねえよ」とぼやくたび、そのやり切れなさが今の我々に直に届く。一緒に投降しようとした同志が遺体となって見つかった時、敬意を抱く栗林中将が逝った時、その二度限りの二宮の涙が人として本物のものに感じられるのだ。 激戦地だったかの島での凄惨な描写は全く容赦無くて観ているのは辛かった。でも知っておくべきことだ。米国人イーストウッドの公平な描写は称賛に値する。 [DVD(字幕)] 7点(2016-01-08 00:22:08) |
1074. アジャストメント
《ネタバレ》 M・デイモンとE・ブラントは好きな俳優さんだし、演技達者の二人は本当に仲良く幸せそうでしたので最後まで付き合うことはできましたが。(どこでもドアは観てて楽しいし) どうもストーリーが締まらんですなあ。自分の生活が何者かに操られているなんてオソロシイことですよ?でもマットに悲愴感は無いしあちら側の連中も人間ごときに裏をかかれるユルい仕上がり。帽子と水がキーポイントっていうのも妙にお手軽だ。 ルネサンスだの産業革命だの、人類の歴史に多大な影響を及ぼす力のある存在が一個人の恋愛沙汰に口を挟むのも変だよ。大統領候補の恋人がダンサーならなぜあかんの?口うるさい親父か。 それに一回目の出会いは彼らがセッティングしたらしいけど、あのシチュエーションは奇抜すぎて最後までいらん混乱を観てる者(=ワタシ)にもたらすな。他人の結婚式に無断で忍び込んで男性用トイレに潜んでいる女ってすごく変じゃないですか。エリースには絶対何かある、と思っちゃったもん。帽子天使らの人間感覚とのズレの成せるワザなのか? [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-01-05 23:09:11) |
1075. 暗殺の森
《ネタバレ》 ”人として当然持ち合わせるべき情操”の無い映画だ。それはつまり主人公のファシストの男の性質そのままである。この男のたどる半生をこちらは見守るわけだが、13才の時の決定的な事件により彼は情感を喪失したらしい。元娼婦の女に恋情を抱く部分はちょっと人間ぽいと思ったけれど、それすら驚愕の展開を迎えるわけで。なぜ彼女を見殺したのだろう。この男の冷たさは分かっていたつもりだったが、この暗黒場面には心底 冷えた。 感情は無いながら、映像は凄まじく雄弁で、ひとつひとつの場面の端麗さ、幽玄なこと。「青を意識した」とは監督の言葉。でも私個人的には強烈なのは「赤」だった。新婚旅行での列車の個室を照らす夕陽。森で絶命する女の、金髪・白いコートにそこだけ鮮血で真っ赤な顔。 私は芸術という分野には疎いけれど、この作品の織り成す映像美は”キレイな”他作品とは格が違うような気がする。青い森、白い精神病院、迷宮のような貴族の男の居城。 映像アート系の映画はえてして監督の独りよがりも多く、話がちんぷんかんぷんというのにも出会うけど今作品は男の半生と時代との整合性もきちんとあって物語として理解が難しくない。冷たさと色彩に圧倒される巨匠の傑作。 [ビデオ(字幕)] 9点(2016-01-05 00:29:03)(良:1票) |
1076. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
《ネタバレ》 1作目が大好きだったものだから、手を入れられるのは嫌だった思い出があります。part2,3とセットになっているお話なので、2単独での評価は難しい。マーティ一家の芳しくない未来の姿にはショックを受けたうえ、ジェニファーは置いてきぼりでばつん、と終わってしまう。観賞した封切当時は「!?」となり、楽しいばかりの一作目と比べるとあまり良い印象は無かったのでした。 描かれた未来のその2015年に、あらためて彼らの物語に触れてみると脚本の緻密さに驚きます。未来と現在と過去、今作では3点全てを行き来し、それぞれが絡まって影響を及ぼすので100分の間でゆっくり考えるひまも無いほど忙しい。忙しいけど楽しい。 本来、「次作へ続く!」形式で映画を一本作られるのは好きではないのだけれど、この文を書いている今は3を観終えてしまっている。次回作に引っ張られる形で評価が高くなるというのはどうなのかとも思うけど、やっぱりファンだからなあ。7点か8点かですごく長く迷ったけど。 [映画館(字幕)] 8点(2016-01-02 01:30:29) |
1077. イベント・ホライゾン
後半、グロに走るまでは重厚な美術に目を奪われて期待値はかなり高かったのですよ。漏れ出した冷却水が無重力でぷわぷわしていたり、”重力を入れた”ら浮遊していた死体が肉塊となって落下したりの描写は宇宙船内部の画としてはかなりのハイレベルであります。 それがなあ。”宇宙の果ての究極の悪夢”がたかだか拷問であるはずがない。肉体的苦痛を伴うグロテスクをわざわざ海王星近辺で行う意味が一体どこに? 映像が見事なものだから、「わーすごく遠い所まで来ちゃった、宇宙って怖いなあ」と心理的には充分ぞくぞくしていたのです。その「獏とした不安」が単なるスプラッタ現象になっちゃった時の落胆つうか脳が「え?」と混乱するというか。ラテン語まで持ち出して哲学的な雰囲気も醸していたのにねえ。なんだかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-12-29 00:22:12) |
1078. スター・ウォーズ/フォースの覚醒
《ネタバレ》 ワタシのようなロートルのファンを涙せしめるような懐かしい面子を勢ぞろいさせつつ、しかしこれは新世代の立派なスター・ウォーズの新作と思います。 見た事ある、と思ったらミレニアム・ファルコンだ、わああハン・ソロだチューバッカだっ、と血中糖度が上がるような興奮。畳み掛けるようにC-3POやレイア姫と時の流れを感じさせるような再会だ。相変わらず空気が読めないC-3PO、しわを隠さない立派なハン・ソロとレイアのご両人。お二方はどうやら子育てに失敗したらしく、一枚かんだルークは自棄になって(?)失踪中、R2-D2は失意の中でスリープモード、と山あり谷ありのその後の人生を皆さん送ってきたのだねえ。しんみりしてしまうけれども、こうはっきりと時の移りを突きつけられるとS・Wの世界も次の世代へ譲り渡そう、と古いファンも潔い気分になるものです。良くできた脚本です。 そして次世代のジェダイを担う若きヒロイン レイが若鹿のような清清しさと賢さ、好奇心を備えていて、デイジー・リドリーの抜擢はこの作品の成功に欠かせない。決定打です。さらに新ドロイドBB-8も大変愛くるしくR2-D2の不在を補うに充分すぎるほど。 華麗な空中戦、メカ群の洗練されたフォルム、奇妙な造型の生物等、スターウォーズならではの楽しさはそのままに、連れてゆかれる世界が砂の星から緑濃い惑星、雪山から大海原とさまざまな体験ができる。ほんとに楽しく面白い130分、素晴らしいです。 エピソード4が封切られた当時の興奮を知らない世代へ贈る、(それも胸を張って)これこそが娯楽大作。よくぞ作ってくれました。 [映画館(字幕)] 9点(2015-12-25 23:48:45)(良:2票) |
1079. 名探偵再登場
ニール・サイモン脚本だからという一点で観てみたけれど、まあさすがに台詞のウィットの効いている感は彼らしくて、くすっと笑えなくもなかった。でも、パロディ部分で面白い、と思えるとこはほとんど無いし(時間が経ってしまってそもそものネタも古いのです)、次々と人物を出しすぎでこちらが整理できないうちに強引に幕を下ろされてしまった。事件そのものが放ったらかしなのは見てて嫌だし、ピーター・フォークがモテる設定なのにはどーしても乗れなかったし、良かったのはおしゃれなオープニングだけかなあ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-12-18 23:49:52) |
1080. 父親たちの星条旗
《ネタバレ》 第二次大戦下の硫黄島を舞台に、戦う双方からのドラマを紡ぐとなると、米国人イーストウッドの歴史観とか見識が厳しい眼に晒されるであろうことは十分承知の上だっただろうと思う。しかし彼は二作品ともに共通して公平に厭戦の訴えをにじませ、立派な仕事をしている。 「星条旗」は”勝者”アメリカ側のドラマ。「勝った」けど、個人兵にとっては勝利の高揚感などない三者の苦悩がベース。戦場から命からがら帰国してみれば、銃後の連中の能天気なまでの盛り上がりとの精神的なギャップは大きい。あげく英雄の看板を背負わされて全国を国債売りの営業に出されるとは。茶番の演出は心に抱える痛みをさらに大きくする。 国家にいい様に振り回された彼らの人生をイーストウッドは冷静に客観的に描き、一言言い放つ。「兵士らは国のために戦いはしたが、友のために死んだ」 かの有名な旗の写真の裏側にこんなストーリーがあったのだ。「敵国」側の人間であった私には知る由も無かった話だ。日米どちらの帰還兵も、あまり戦場のことなど話したがらない人が多いと聞く。心を焼け野原にされたのは勝った側も負けた側もおんなじだ。国家は結局個人のことなど顧みないのだと、美化された写真から映画を一本作り上げたイーストウッドの感性に唸った。 [DVD(字幕)] 7点(2015-12-15 23:51:54) |