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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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141.  脱脱脱脱17 《ネタバレ》 
現在は女子大生監督になっている松本花奈という人が17歳の時に撮った映画とのことである。 ジャンルに「音楽」が入っているのは、映画と音楽のコラボレーションによる映画祭「MOOSIC LAB」に出品されたからで、コラボの相手であるガールズバンド「the peggies」の北澤ゆうほ(ボーカル+ギター)という人が実質主演もやっている。MOOSIC LABでの上映時には78分だったそうだが、アマゾンPrime Videoで見られるのは108分バージョンである。ちなみに「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016」で受賞もしている。  内容としては17歳の高校生女子と、17年間高校に在籍していた男の2人がそれぞれ「脱」をやりとげる話と思われる。女子高生がストリップ劇場の舞台に立つという刺激的な場面もあるが4回脱ぐわけではない。 2人のうち女子に関しては、話が複雑でどうも簡単にまとめられない。自分が自分でいるためには自分をしっかり持つ必要がある、しかし他人との交流を遮断してしまっては得られないものもあり、それも一方通行ではなく互いに本当の姿を受け入れ合うこと、また心から自分を思ってくれる相手や、心から相手を思うことも大事だ、というような感じのことが連なっている印象がある。それで自分として何か刺さるものがあったかというとないわけだが(主に年代の関係で)、しかし一定の内容をそれなりのインパクトをもってぶつけて来ようとしているとは感じられる。母子関係がどうなったのかよくわからなかったが、要は自立した個人として向き合う準備ができたということか。 一方で男については、見た目からしてこんな奴に肩入れしてやる義理はないと突き放したくなるところだが、しかし自分としても男子であるから、夜の海岸で主人公女子にかけた言葉は素直に心に響いた。否定的に言われる場面もあったが、単なるバカということでもなく基本は誠実な男だったらしい(キスは許せない)。 ほかちょっとした場面だが、夜空に星が2つ飛んで来たところは若干泣かせるものがあった。マリアという人がその後どうしたのか不明瞭なのは残念だ。  なお実質主演の人は、歌は本業なので当然できるとして、外見的にも童顔ながら大人っぽいカワイさがあって目が離せない。チャップリンからのやりとりなどは自然にうまい感じに聞こえる。また教育実習生の人物造形も結構好きだ(かなり可笑しい)。ちなみに監督本人もセーラー服姿で一瞬出ていたようだった。 [追記]見てから少し時間が経つと何だか愛しい映画に思えてきた。年齢的には対象外だろうが。
[インターネット(邦画)] 7点(2019-04-27 10:23:56)
142.  夜明け告げるルーのうた 《ネタバレ》 
似ていると言われているジブリアニメは昔TVで1回見ただけなので内容を忘れているが、全体の印象としては確かに似ている。別に似ているからどうとも思わないが、ほかにトトロ(大)の件などもあり、ここはあえてオリジナリティにこだわってもらいたかったという気は確かにする。 この映画を見て好きだと思うのはやはり映像面での面白さで、色彩感とかユーモラスな生物とか羊羹状の塊とか変なパースの取り方など楽しめるものが多い。キャラクターに関しても、友人男女が気のいい連中で安心できるほか、人魚の屈託なさと顔つきにはかなり和まされた。  物語としては正直に“好き”と言えるかどうかが問題だったようだが、そういうのは主要人物の年齢からすると中学生向けメッセージか。 それより自分としては、最後に様変わりした町の風景で「陽の当たる町になった」ことが表現され、内湾と外洋の区別もなくなって閉塞感が取り払われていたのが印象的だった。人の心が解放されればかえって人口流出が加速するかも知れないが、それは主人公のように自分の意思で帰って来る者がいればいい。また古来伝承されてきた人魚だけでなく、これまでの古い習慣や住民意識や行動様式や生活感覚といった文化的要素も次第に失われていくのだろうが、新しい時代に何を創っていくかが大事ということと思われる。 ただ爺婆は最後にいわゆる“お迎えが来た”ような感じで、確かにある程度の年齢になるともう変化を受け入れられなくなることはあるわけだが(人にもよるだろうが)、まるでこれからの世界にいらない者を厄介払いしたようなのは喜んでいいのかどうか微妙だった。まあ本人らは幸せだったろうからそれでいいということか。もう死なないとすれば極楽浄土に行ったようなものということで。  そのほか個別事項としては、爺さんが気配を感じて動きを止めると世界の時間が止まったかのように見えたのは面白かった。また「活き〆ワークショップ」のエピソードは何ともいえず微妙に可笑しい。この映画の主な対象層は知っているかわからないが、活き締めというのは魚の鮮度を保つために漁師がやることで、その方法の普及のために講習会をやっていたのだろうが、習いに来た漁師は結局覚えられずに終わっていた。ここは吸血鬼が噛んだ相手も吸血鬼同様の不死者になるという意味と思われる。
[インターネット(邦画)] 7点(2019-04-20 14:58:38)
143.  アイズ(2015) 《ネタバレ》 
鈴木光司の短編集「アイズ」のうち「しるし」を映画化したものである。ちなみに映画化されていないエピソードのうち6つはTVドラマ「鈴木光司・リアルホラー」として、2015年3月にBSフジで放送されている。 原作を読んで比較すると、もとの構成要素を使いながらかなり膨らませて深みも出しており、最終的には原作のイメージとかなり違ったものになっている(貞子も出る)。また同じ短編集の「夜光虫」というエピソードを思わせるところもあった。  内容としては、まずは原題のもとになった「マーキング」が気味悪い。最初のF(とM)は本物だったかも知れないが、あとは何だったのか正直わからない(幻視もあったか)。意味についてさまざまな解釈が出る一方、実際に関係ありそうな出来事も起きていたようだが決定的なものはなく、単に登場人物の心理を反映して後付けしていただけのようでもある。 主人公は母親似とのことなので、劇中の情報サイトの記事に出ていた症状名がオチなのかと思ったが、これで幻覚とか被害妄想まで説明がつくのかわからない。基本的に全てが主人公の目から見た主観的な映像とすれば事実関係が不明瞭なのは仕方ないが、少なくとも同級生の男と精神科医の判断は外部の客観的な視点からのものである。また今回、主人公が記憶の底から引っ張り出した情景もいわば原資料として信用するとすれば(一部に混乱があったが)一応の全体像は見えなくもない。  それにしても困るのが父親で、娘に長々と語っていた内容は、順を追った説明のようでいてどうも納得できないことが多い。例えば株で大当たりした理由を同級生の男は一応推測していたが、父親の話では超自然的なお告げのせいにしていたのと、また胎児が誰の子だったかも結局わからないで終わってしまった。ほか主人公が思い出したところによれば、どうもかなり重大な隠し事をしていたらしいのが信頼感を損ねる。 最後に帰宅した父親を、主人公がどう迎えようとするのか自分としてはわからなかったが、題名にこじつけて考えれば、これまでのように都合のいい妄想を自分の目に映そうとするのか、あるいは真相を自分の目で直視するのかが問われているということか。わかりにくいところは多いが真面目に見なければと思わされる映画で、予算に関わらないところでかなりの力作に思われる。  個別事項としては、死んだ友人宅を訪ねた場面でのいたたまれなさが心に残った。またFAT男の性格の歪み具合がいかにもな感じで、もう一人の男が人格者なのがかえって際立っている。終盤で、弟が姉を呼び続けて姉が泣き続ける場面は何ともいえず圧巻風の印象だった。 なお主演はアイドルとのことだが(伊藤万理華/まりっか、当時は乃木坂46)、この映画で見る限り悪くない(鼻水も垂れていた)。また自分が見たところでは精神科医が無駄にかわいく見えたが、無駄なようでいて無駄でない意味が何か隠されていると考えるべきか。ちなみに演者が秋山依里(もと秋山奈々)という人だということまでは調べた。
[DVD(邦画)] 7点(2019-04-06 09:59:37)(良:1票)
144.  VIKING バイキング 誇り高き戦士たち 《ネタバレ》 
邦題が信用できないのは当然として、原題(Viking)までが諸国民の誤解を招きそうな名前になっている。 実際の内容は、現在のロシア国家(及びウクライナ)の起源とされるキエフ大公国(「ルーシ」)のウラジーミル1世の伝記のようなもので、予告編に出るような戦闘場面もあるが基本的には歴史物である。「2016年ロシア映画興行収入第1位」とのことで、実際かなりの力作に見える。 題名のバイキングは、そもそも上記「ルーシ」を建国したのが北欧のバイキング(スラブ人のいうヴァリャーグ)だったこと、及び主人公が最初の戦いに先立って北欧に赴き、新たにバイキングを戦力に加えたことに由来すると思われる。映像で目に見えるところでは、長距離の移動には川で船を使っていたのが明らかにバイキング風である。また序盤でロシア語の字幕が出ていたのは、主人公の軍勢に加わったばかりのバイキングがゲルマン系の言語を話していた場面と思われる。ちなみにベルセルクというのがただの狂人ではないことを見せている場面もあった。  粗筋を全部書いてしまうと、まずキエフ大公だった長兄ヤロポルクが不仲の次兄オレーグを殺し、次に弟のウラジーミル(主人公)がバイキングの軍勢を率いてキエフに侵攻、ヤロポルクを殺してキエフ大公の地位を継承した(980年とされる)。その後は遊牧民のペチェネグ人の攻撃を防ぐため東ローマ帝国(ビザンツ帝国)と提携し、そのビザンツからの要請に従って現在のクリミアにあった港湾都市ケルソン(もとは古代ギリシャの植民都市ケルソネソス)を攻略した。首尾よく降伏させてからは、それまでの悪行を悔いてキリスト教(正教)に帰依し(988年)、キエフにもキリスト教を広めたという話である。大まかに史実に沿った形と思われる。 その間、兄殺しのほかにも、ポロツク公国の公女を無理やり嫁にした件など結構非道なことをやっており、見る側として素直に共感できる主人公でもない。しかしそういう悪行があってこそ最後の改宗につながったという筋立てができており、主人公が次第にキリスト教を必要としていく過程も表現されている。宗教がストーリーの根幹になっているのは宗教嫌いの日本人なら気に入らないかも知れないが、このウラジーミルの時代に正教を受容したことが後にロシアの国家アイデンティティの重要な部分につながるので、ロシア側としてこの点は外せないと思われる。  そのほか視覚的にはあか抜けた印象で美しく動的な映像を見せている。町の作りなどはこれが正しいのか不明だが(あまりに粗末)、ポロツクやキエフの木造の城郭はそれらしく見えており、またケルソンがものすごい大都会という雰囲気も出していた。景観面でも主人公の立場の変化に応じて、ポロツクの森と雪、キエフの温暖な草原、黒海に面したケルソンの陽光といった差を見せていた。 登場人物としては主人公の妻(若手)と兄の妻(年増)が注目される。主人公の妻はツンデレで可愛いタイプだったが、途中で退場させられてしまったのは可哀想だった。
[インターネット(字幕)] 7点(2019-03-16 09:59:27)
145.  ヤクザガール 二代目は10歳 《ネタバレ》 
日本のヤクザが出るロシア映画である。原題の ”Дочь якудзы” は単に「ヤクザの娘」だが、日本向けにはかなりインパクトのある邦題がついており、これは見ずにはいられないという気にさせられる。 内容としては、ヤクザの組長の孫娘(娘ではない)がなぜかロシア(ウクライナ?)で対立組織に追われて逃避行し、そこに懸賞金目当ての現地勢力も加わってドタバタコメディをやらかす話である。それほど大爆笑でもないが結構感動的なところもあり、特に劇中出ていたロシアの諺?は心に訴えるものがある。またこの映画が好きだと思わせるのは何といっても孫娘の存在で、素直で心優しい少女でありながら横柄なクソガキなどは相手にせず、また金はなくてもシノギの心得はあるというあたりはすでに一人で生きていく素養を備えている(なぜかロシア語もうまい)が、何かと見せる人懐こい笑顔は愛らしい。  ところで劇中の日本文化の取扱いに関して、監督は一応日本に理解のある人物らしいが、ヤクザ文化とサムライ文化は基本的に別系統のものではないかとか、サムライが空中浮遊できるなら忍者の存在意義がなくなるだろうと言いたくなるところはある(ちなみに某新興宗教の影響でロシアにも空中浮遊できる人物は多いはずだ)。物語のキーワードは「義理」だったが、この言葉は現代日本では理不尽に課せられるものというイメージが強いので、ここは厳密にいえば「恩義」だろうと思われる。 一つ感心したのは登場人物の「先生」が汚職官僚に切腹を迫ったという話で、これはロシアというより当の日本でも、不始末があれば腹を切る(物理的に腹を切るかまたは他の方法により自決する)覚悟のない者が公職に就くなどあってはならない、くらいのことは言ってやっていい。なおその「先生」は千島列島を返すようロシア政府を説得したとのことで、これは日本側からすれば良心的ロシア人ということになるだろうが、そういうのは精神異常者というのが向こうの公式見解かも知れない。  ほかキャストについて、孫娘役の荒川ちかという人は、以前にホラーマンガ原作映画「富江」シリーズの「富江VS富江」(2007)で“ちび富江”をやっていたのを見たことがあるが、この映画では少し年齢が上がって、撮影時点では邦題のとおり満10歳だったらしい。今はもう大学生になっているようで、これからどういう道に進むのかわからないがとりあえず頑張ってもらいたい。 [追記]この映画に日本側から出演した俳優が2019/2/1に逮捕されたが、この映画自体はいまさら封印されるとかいうほどのものでもないだろうとは思う。舞台挨拶(2011/10/22)の様子など見ていると人物像が窺われるところがある。
[DVD(字幕)] 7点(2019-02-16 08:29:41)
146.  TOKYO CITY GIRL-2016- 《ネタバレ》 
若い女性を主人公にして4人の監督が撮ったオムニバスである。前作「TOKYO CITY GIRL」(2015)は6話だったが、今回は話数が減って平均時間も長くなっている。  【LOCAL→TOKYO】 よくわからないが勝手に解釈すると、田舎には何もないと思って東京に出てもやはり何もないわけだが、田舎でもいいこと、やれることがたくさんあるとわかってから東京に出ればもっといいこと、もっとやれることがあるという意味か。 それにしても武田玲奈さんはいつでもどこでも可愛い人だ。友人(ともこ)役は見たことがあると思ったら芋生悠という人だったらしい。 【あなたの記憶(こえ)を、私はまだ知らない。】 心の欠落部分を埋めるために2人が過去の記憶を共有し、それが結果的に2人の心を結びつけたと思えばいいか。最後は特に言ってなかったが、主人公はあの店の常連になっていたと思われる。 主演は高見こころという人で、少し前に見た「ねこにみかん」(2013)から一転して地味系女子になっている。一方でケバめの後輩を演じていたのは意外にも入来茉里さんだったようで、役柄としては間違ったことを考えていても正しいアドバイスをする聡明な(適当な?)人物だった。 【幸せのつじつま】 かなり笑わされた(泣かされた)。当然ながらちゃんと辻褄を合わせるお話である。相手の男も真直ぐな感じでいい奴だ。 主演の飯田祐真という人はそれほど何度も見たことはないが、かなりの個性派女優かと思っていたら、今回は極端に可愛い方に振れている(それを期待して見たわけだが)。ちなみに他のエピソードでも特別出演として顔出ししているらしい。 【ひらり、いま。】 父親がイタい人物(相当上の世代に見える)かつ気色悪いオヤジなのでかなり引くが、娘と仲が悪いわけでもなかったらしい。引越先まで送って来た身内が去るときの心細い思いは遠い昔に経験している。 主演の増田有華という人はAKB48所属だったとのことで有名人らしい。この映画では少し素朴な可愛らしさを出している。  とにかく若い女性を元気にしようとする企画のようで、前作に比べてもハッピーエンドの印象が強くなっている。寓話的でリアリティに欠ける面もあるが問題にはならない。また男にとっては出演女優を見て和まされるという意義もある。物語的にも厳密な対象限定ではなく人間一般が共感できる内容で、東京のシティガールの話だからと田舎者が敬遠しなくていい映画だった。
[インターネット(邦画)] 7点(2019-01-27 08:28:09)
147.  TOKYO CITY GIRL 《ネタバレ》 
若い女性を主人公にして6人の監督が撮ったオムニバスである。東京のシティガールの映画など田舎者は遠慮すべきではないかと思ったりしたがあえて見た。  1「なんの意味もない」 なんの意味もないようでも、受け手の創造性が喚起されれば自ずと意味が生じる。これはある意味芸術かも知れない。 主演の青山美郷という人は別の悲惨な映画で悲惨な顔をしていたのを見たことがあるが(「人狼ゲーム ビーストサイド」(2014))、この映画では少しとぼけた感じながらも突破力のある女子高生をやっている。意外に感動作。 2「キッスで殺して」 大変申し訳ないが上司の言ったことが正しい(だいたい間違い)。主人公の本当の顔はラストでやっと明らかになる。 3「HOPE」 深刻な話だが、ここまで追い込まれて初めて達する境地に、20歳直前にして(幸いにも?)至ることができたということらしい。結末は不明だったが、そもそも人を不幸にして喜ぶタイプの企画でないことから自ずと知れる。それにしても比嘉梨乃さんは19歳にしては大人っぽい。 4「17歳、夏」 ひたすら下劣だが一応笑わせる。リスの交尾は珍しい。 5「EAST END」 題名はロンドンの東にあって、貧困層が多く居住することで知られている地域の名前(現在は再開発が進んでいるとのこと)。主人公は川の両岸に絶望的な断絶があると思い込んでいたようだが、別に「橋のない川」というわけでもなく(現に橋はかかっている)、要は自分で動けば事態は変えられるということだったらしい。ちなみに街の風景は主に京成立石駅周辺と思われる。 6「KOENJI 夢の寿命」 中央線の高円寺。新たな夢が見えたともいえないが、とりあえず生存可能限界を下回りそうになったところを間際で持ちこたえて、今度はアクティブな上昇局面に転じたということか。主人公は風俗嬢だが最後に見せ場のようなものがあり(街に憑いた不運の根源を打倒、さすが武田梨奈さん)、これがオムニバス全体の締めになっている。  エンディングの街頭インタビューを見ると、「夢」がテーマだったかのようでもあるが実際はそうでもなく、要は複数のエピソードに出る「愚痴聞き屋」というのがこの映画自体の立場だったのではないか。「夢」とまではいかなくても希望を語る内容ではあったかも知れない(4以外)。 ちなみにこの後「TOKYO CITY GIRL -2016-」というのも製作されているので併せて見るのが望ましい。
[DVD(邦画)] 7点(2019-01-27 08:28:08)
148.  キスできる餃子 《ネタバレ》 
餃子といえば常識的には宇都宮と浜松だろうが、これは宇都宮の方の映画である。個人的には別にどちらを応援する義理もないが、これを見ると地元でも相当PRに力を入れているらしいとは思う。ただネット上では「浜松餃子まつり2018」といったイベントの記事も見られたので、両者なお競り合っているということらしい。  映画としては同じ監督の「クハナ!」(2016)に続くご当地映画の第2作とのことで、前作のような爆笑続きでもないが、題名で端的に表現されたようなラブコメ調の人生ストーリーと餃子PRを兼ねたものになっている。 物語としては、要は人間の活力の源泉をどこに求めるかという話だったらしい。主人公の父親の、技術よりもっと深いところまで刺さる鋭い指摘には感銘を受けた。ラブストーリーとしての結末は不明瞭なようでもあるが、要は活力の源泉としてのイケメンを実生活から分離した点が今回の革新の中核だったと解される。ほか餃子に関しては、まずは積年の課題だった「デートできる餃子」を達成した後に、主人公の本質をより強力に表現した「攻めの餃子」が登場し、さらにその先に題名の餃子があったと思えばいいのかも知れない(少し整理が難しい)。 また一方では、製作上の都合によるのだろうから絶対悪いとも言わないが、宣伝臭がかなり強い映画である。「特別協賛」の会社が前面に出て来て代表取締役社長も顔を出すほか(政治家よりマシだが)、餃子に限らず各種事物のPRをやたらに詰め込んだ印象があり、「ルルルンのとちおとめ」とは一体何だという感じだった(フェイスパックの商品名らしい)。映像上のPR以外にも協賛企業がタイアップ商品を出すとか、JRの誘客事業である2018栃木DCにからめたイベント列車「キスできる餃子号」を走らせるなど各方面での動きがあったようである。ちなみにホリプロの宣伝も兼ねた形になっていたらしい(地元出身の佐藤美希という人が本人役で出ていた)。  最後に個人的見解として、この映画の最大の価値は何といっても足立梨花さんである。少し前は女子高生役だったが今回はいきなり男に懲りたシングルマザーで、男をぶん殴って蹴りも入れる硬派なところと、円満で優しい笑顔を両極にした女優の魅力が全開状態だった。これまで見た範囲では「傷だらけの悪魔」(2017)とこれがあだっちぃー映画の双璧である(両方とも主演だから当然だが)。そのほか子役も笑顔に愛嬌があって和んだ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-12-10 19:57:59)
149.   《ネタバレ》 
以前に「Jホラーシアター」の名前で無料配信されたのを見て以来である。 この監督の映画は見慣れていないが全体的な印象は悪くない。「赤い服の女」は顔がかなり怖いが、変に実物感を出しているのが触れるゆうれいといった感じで、風に乗ってひらひら飛んでいく姿はけっこう気に入っている。また外科医の関連では飛び降りも印象深かったが、特に取調べの場面が、舞台の四方を目いっぱい使った一人芝居のようだったのが印象深い。  ストーリー的にはよくわからないところもあるが、自分としては特に刑事と女2人の三角関係が気になった。刑事の彼女が部屋にいたときに、何かを睨むような顔をしていたので意識(牽制?)はしていたらしく、旅行に行けと言ったのも危険を回避させるためだろうが、しかし刑事が「赤い服の女」を優先して本物の彼女を追い払うような態度だったのは、された方からすれば傷ついたのではないか。それでちゃんと決着つけたにしても、その後になってやっと真相を思い出すというのでは「目の前にいるはずの人が、全然私を見ていない」というのと同じに見える。 恋人とはいえ年齢がかなり違うのは職務上で知り合ったことを思わせるが、心根が優しく諦念が強いように見えるのも昔の境遇を想像させるものがある。刑事を恨んでいたわけではないようだが、ストーカー女よりも自己主張が弱い分、この人の心情を思うと見ている方も心が痛む映画だった(小西真奈美さんも嫌いでない)。  ところで劇中の地図によれば、問題の病院があったのは現在の江東区東雲2丁目の海際のようで、公開当時も今も東京ビッグサイトに至近の場所である。また映像に出ていた場所も、警察署の名前になっていた有明や、近頃耳にする機会の多い豊洲が中心だったように見える。当時としては、要は臨海副都心開発の頓挫で放置状態のようなイメージだったのかも知れないが、今になってみればまた2020年に向けて関心が集まっている地域のはずで、この映画の制作時とは早くも場所感覚が違ってきているのではないかと思われた。 ほか以前から思っていたのは、刑事とその彼女が身長は大して違わないのに顔の大きさが明らかに違うことである。これは男の方を何とかしろというよりは、小西真奈美さんが小顔なことを称賛すべきものかも知れない。
[DVD(邦画)] 7点(2018-12-07 18:52:19)(良:1票)
150.  ブギーポップは笑わない 《ネタバレ》 
ライトノベル原作の青春SFファンタジーで、普通に安っぽいところもあるので映画として素晴らしいともいえないが、自分としては嫌いでない。 序盤は意味不明の点が非常に多く、もしかして全部がこんな感じかと思っていると次第に話がつながって来るので安心する。手の込んだ作りだが連係ポイントは目に見えており、全体構造がしっかり組まれていることは容易に想像できる。終盤で夜空をのぼっていく光(またはその尾)は、ばらばらな登場人物を結ぶ共通体験であるとともに、それぞれの体験が本当に日常を超えた世界につながっていたことの視覚的な証明になっている。 青春ドラマとしても、登場人物それぞれの不安感や不全感、やるせなさやもどかしさが感じられ、満たされた心や満たされなかった心、満たしてやれた安堵や満たしてやれなかった悔いが表現されていて切ない。事件に関わった人物が結果的に同じところへ収束していくわけでもなく、それぞれの関わり方に応じて「いろんな思い(を)抱えて生きていく」という終幕も、多くの人々に向けた青春ドラマとしてふさわしい。残った人々がこれから何をすべきかという問いかけもあり、また一時的または部分的にでも心を満たしてくれた相手への「ありがとう」が2回、絆創膏が1回あったのが和ませる。 基本的には原作がよかったのだろうが、原作がよかったことを想像させる映画にはなっている。ちなみに来年またTVアニメで放送されるそうで、いまだに人気のあるシリーズらしい。  また美少女が多数出ているのはこの映画としての長所である。個人的には、それほど美少女風でもないが真面目で純粋な委員長(演・広橋佳以、現在は引退とのこと)が最後まで無事でいることをひたすら願いながら見ていた。また内気な眼鏡っ子役は清水真実という人で、個人的には「がんばっていきまっしょい」(1998)の“ヒメ”役を見て以来の目立つ役だったが、この人が最後ににっこりした場面は嬉しくなった。 ほか主演女優はこの当時よく知らなかったが、普通に女子高生をやっているところなどは脱力するほど可愛らしい。低身長で童顔なのに妙な扮装をして超人的な力を発揮するのはかなり変だが嫌いでない。終盤で名乗りを決めた場面は格好よかった。
[DVD(邦画)] 7点(2018-11-13 22:29:04)
151.  魔女と呼ばれた少女 《ネタバレ》 
コンゴ民主共和国(旧ザイール)の恐らく東部で、武装勢力が跋扈して悲惨な状況になった地域の話である。前半で出る「コルタン」というのは現地に産出する鉱石で、現代ではスマートフォンなどに多用されるため、劇中の武装勢力のようなのが資金源にしているらしい。ここは「ブラッド・ダイヤモンド」(2006)と似たような図式だが、この映画ではあまり突っ込まず問題を示唆するだけにとどめている。また直接関係ない話だが、東アフリカのアルビノに関して少し調べたら気分が悪くなった。先進国や国際資本だけが人類の悪ではないと思い知らされる。  まず序盤で12歳の主人公が武装勢力に拉致されてからのパートでは、その状況自体が非日常で非人道的な上に亡霊がうようよ出たりして、これが本当にわれわれと同じ人間の物語なのかと疑われる。しかし武装勢力から逃れて13歳で結婚(一応は恋愛)してからは人情味も出て笑いもあり、やっと人間の物語らしくなる。その後にまた拉致されて14歳で妊娠させられたりと波乱があるが、最後はまたまともな人間の世界に戻っていく見通しが示されていたらしい。 よくわからなかったのは黒人の黒に対して白が強調されたように見えることの意味である。不気味な亡霊は白塗りで、夫になった少年もアルビノだったが、これは忌まわしいながらも忘れがたいこの時期の、どこか幻想のような記憶を象徴するものとでも思えばいいか。白い雄鶏はありえないと思ったらあったもの、ということだろうが、いなくなった夫が現実の存在だったことの証明にもなっていたかと思われる。 主人公が故郷に戻り、幻想の入り混じった苦い記憶を清算した場面はもしかすると思春期の終わりであって、以後はもう幻想も何もない現実世界が続いていくということなのかも知れない。まだ若いのにとは思うが、そもそもお国柄として早熟にならざるを得ない面はあるのだろうし、今後とも自然体でしたたかに生きていくだろうと思うしかない。最終的には、こんな場所でもわれわれと同じ人間が生きているのだと思わせる映画になっていた。  なお主演女優は現地でスカウトされた素人だったとのことで、当時14~15歳と思うがかなり壮絶な役柄をこなしている。「毒ある花」などというものをローティーンにやらせていいのかと思ったが、映画祭でにっこりしている写真など見るとほっとする。 そのほか各種の歌が印象に残る映画だった。
[DVD(字幕)] 7点(2018-11-01 19:56:18)
152.  検事の死命<TVM> 《ネタバレ》 
柚月裕子という作家の同名小説をもとにしたドラマである。地方検察庁が舞台になっており、原作では東北のようだが(作家の現住所が山形市)、このドラマでは周囲の山が群馬県のように見えた(少なくとも高崎市での撮影はあったらしい)。 前半では主人公の検事が刑事部に所属して捜査に当たり、後半では公判部に異動した上で裁判劇になるという構成である。当初は伏せられていた背景事情を、終盤になってからまとめて説明した場面は盛り込み過ぎのようでもあったが、まあそういう意外な展開もあって退屈しない話になっている。主人公が喫煙場所を常に探しているとか、居酒屋の場面など和ませるところもある。  問題の性犯罪(痴漢行為)は映像的にはソフトイメージだが、何度も出る「たかが(迷惑防止)条例違反」という発言によって、逆にもみ消しなど絶対に許されないという方向性が明示されている。一方で、その程度の「たかが条例違反」で犯人の家庭を壊すことまですべきなのか、という問題意識も見えており、これはその点だけみれば確かにそのようにも思われる。しかし逆に、それなら最初からそういうことをしなければいいだけのことで、犯人の償うべき道義的な罪はその分だけ重いということである。 また、犯人が県レベルの地域ボス(名家)の縁者だったことから、地元代議士を動かして地検のトップに圧力をかけるという展開になっている。「たかが条例違反」くらいで上層部に逆らってまで意思を通す動機など主人公にあるのかという気もするが、しかし「たかが条例違反」なのに話を大きくしたのは名家の側の勝手な都合であり、それとは関係なく「たかが条例違反」なりの償い(懲役6か月、ただし実刑)をさせるのが検事の役目ということらしい。 「たかが条例違反」でも、罪は罪として裁かせるという点で一貫しているのはかなり共感できる。被害者が主人公に伝えた最後の一言を聞けば、たとえ少しだけでもそのように思える社会を作ることが本来の目的だろうと思わされる。  なおキャストとしては、志田未来という人は本当に可愛い人だと改めて思い知らされた(先日電撃結婚してしまったが)。また被害者役の竹富聖花さん(当時)が、本来の持ち味を生かしたいい役だったのは他人事ながら嬉しい(感動的だった)。同級生(演・荒井萌)も含めて真の悪人でなかったのは安心した。
[インターネット(邦画)] 7点(2018-10-20 09:46:02)
153.  クハナ! 《ネタバレ》 
三重県桑名市(合併前の旧多度町)の小学生が急造のジャズバンドで大会に出る話である。当然ながら「スウィングガールズ」(2004)を思い出すが、あっちと明らかに違うのはメンバーにまだしも可愛げがあることである。 「文部科学省選定」(平成28年8月)とのことでご立派な映画のようだが、Cカップとか孫を作れとかスナックでのやり取りなど聞いているととても子ども向けには思えない。…と思ったら社会教育用/教養/青年向き・成人向きとのことでお子様専用でもないらしい。それにしても最初から最後まで笑わせにかかるふざけた映画のため、どこが「社会教育」「教養」なのかわからない。  現地の事情は知らないが、これを見て意外だったのは登場人物の言葉がほぼ関西弁のように聞こえたことだった(「半分の月がのぼる空」(2009)ではもう少し微妙だった気がする)。言葉だけでなく登場人物のやり取りが終始漫才のようで、かなり深刻な場面にもコントを入れてみたり、新生ジャズバンドの名前(映画の題名そのもの)に口々に突っ込みを入れて貶める場面があったりもする。また顧問の自宅に子どもらがなだれ込んだ場面や保護者を集めた場面など、視点を固定して群像を見せるのが舞台演劇のようでもあり、大阪の演芸場で喜劇を見ているような気もした。 しかし言葉が関西の割にコンテストは東海ブロックだったり、また多度山の展望台(多分)からの眺望では名古屋のものらしい高層ビルが見えたりして、基本的には中京圏に属するという微妙さが地域性の表現なのかも知れない。ちなみにハマグリは言葉でしか出なかった。  物語としては何がいいたいのか不明だが、学校が廃止されるとか外国人労働者が大挙流入して地元民が失職するなど真面目に深刻な話も全部笑い飛ばして楽しもうというなら結構なことで、全く関係ないところの住民である自分も楽しめた(笑わされた)のでよかったということにする。終盤の展開だけはさすがにないわーと思ったが、これぞ即興性の極致??ということで納得しておく。 なお個別の台詞で心に残った(笑った)のは「あっ、松永さんが横切った」という、まるで黒ネコが道を横切ったかのような物言いだった。その松永さんは非常に愛らしく映っており、現地採用の子役の中では一番得な役回りのようだった。
[DVD(邦画)] 7点(2018-09-29 18:57:56)
154.  EVIL IDOL SONG 《ネタバレ》 
主演の藤田恵名という人が劇中人物どおりの「シンガーソングラドル」だそうで全く洒落にならない。これが実体験に基づく映画だという話は別に出ていないが、仮にそうだと言われれば本当にそうだろうという気になる。「みんなやってるし」とか言われてしまうとそうなんですかと思うしかない。 しかしそういう世界で惨めに踏みにじられたような状態が最後まで続くわけでもなく、途中で悪魔化してぶち切れたのはいいとして、その後は社長も含めて人格が一変してしまい、さらにマスコミの群れを振り切って飛び立つという流れは唐突感がありすぎる。クライマックスに至っても、マンガのような警察が気分の高揚を邪魔しているようで、ドラマ的には自然に乗れる展開になっていなかった気がする。  一方で、その間もマネージャーだけは正常な精神状態を保っていたのかも知れないが、しかし最後にはもう悪魔でも何でも主人公に共感して応援したいという、いわばファンとしての感情で行動するに至ったらしい。自分としてはそれより先、ライブを目前にした段階ですでに期待感が高まっていたので、この男よりは早いうちにファンに近い立場に立てていたはずである。 本番が始まって、熱海市の廃校?でも東京でも大阪でもワシントンDCでも、人々がみな幸せそうな顔で死んでいったのは正直感動した。最後は、天使なら昇天して終わりのところ悪魔だったので堕ちてハッピーエンドである。いろいろあったが最終的にはみんなをしあわせにするアイドル映画だったということで評価が確定した。点数は、主演の人を応援する意味で+1にしておく。  なお注意事項として、この映画の紹介で主人公が世界または人類の滅亡を目的としていたように書いてあるものがあるが、最後にみんなを幸せにすることができたのならそれが目的だったということになるのではないか。死んだ連中は基本的に自由意思で歌を聴いたのであって無差別テロともいえず、幸せになりたい人々が自ら幸せになろうとして、結果的に人類が滅亡したなら仕方ないことである…しかしどんな場面でも幸せを掴めない人間は必ずいるわけなので、どうせ滅亡などはしないだろうが。
[インターネット(邦画)] 7点(2018-09-16 08:55:01)(良:1票)
155.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
大評判なのは知っていたがやっと見られた。 大変いい映画だとは思うが、申し訳ないが最初のワンカット部分は正直見るのが苦痛だった。初めからこういうクオリティで撮っているという設定でもあり、不自然な箇所については後で説明もあるわけだが、これを延々と見せられている間に体調のせいもあってか頭が痛くなってきた。 後半をあわせて見ればよくできたお話で、最後はみんな笑顔で和む映画になっている。真相を明らかにした中で個人的に面白かったのは監督の台詞にアドリブが入っていたというところだった。最終的に一番いい役は監督の娘だったようで、ちゃんと両親のいい所だか悪い所だかを受け継いだ人物になっている。 前半で忍耐を強いられたせいで絶賛というわけにもいかないが、それなりの点数にしておかなければと思わせる映画ではあった。
[映画館(邦画)] 7点(2018-09-15 08:56:06)
156.  空人 《ネタバレ》 
特攻隊の生き残りの話である。主演の奥野匡氏は撮影当時おそらく87歳、昭和20年では17歳だったはずで、このあたりの世代(昭和一桁世代)に向けた映画とすれば対象はかなり限定的ということになる。戦後世代向けには全く見えないが、世代が違っていてもわかる限りはわかろうとしなければという気にはさせられる。 全体の中で特攻隊の部分は意外に短く、兵舎が中心で戦争映画としての派手さはないが、零戦が飛ぶ映像だけは作ってある。題名の意味は特攻隊に由来するのだろうが、残念ながら自然に納得する感じではなかった。  現代パートは、悔いを残して生きてきた主人公が人生の終わりを予感したことで、これまでのことを清算しようと思い立ってからの話になっている。もう近所に戦争の話をする相手がいなくなった、と劇中人物が語るのを聞いて思い出したのは、自分の身内でも、戦時中に航空隊に志願?したが軍医に耳をほじくられて中耳炎になって帰されたので今も生きている、というような話をする者がいたことである(故人)。自分が死ねばそんなことを知っている者もなくなるはずで、そういう形で人は死んで忘れられて記憶も失われていくのだと、変に達観するような気分にさせられた。 主人公も序盤から健康上の不安が見えており、“向こうに連れて行かれる”話まで出ていたので、この人物ももう終わりだということは強く印象づけられていたが、しかしその上での最後の場面は非常に意外だった。なるほど主人公も自分のことだけやれば済むわけでなく、生き延びたことで新たな責務を負ってしまった面がある。あの世に行くのも当分延期だな、という清々しさがあり、要は“死ぬまで終わりはしない”という物語だったのかと思った。息子の妻もかわいい感じの人で、年の離れた女性に好かれているのは羨ましい。  なおヒロインは対象世代に合わせてかなり古風な人物になっているが、演者の高橋かおりという女優は相変わらずの美形である。これとは別に思春期向けの青春映画など見ていると、あまりに主人公(男)にとって都合のいい展開になっていて呆れることがあるが、この映画も年代は違うが若干そういう雰囲気がなくもない。どうやら男は死ぬまで夢(妄想)をもって生きるということらしい。 ちなみに原作を読むと、この映画がいかに一般向けに抑制を効かせて手際よくまとめてあるかがよくわかる。点数の内訳は映画が8、原作が-1である。
[DVD(邦画)] 7点(2018-09-07 22:12:29)
157.  映画 「咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A」 《ネタバレ》 
マンガもアニメも見たことがなく麻雀も知らないままで本編劇場版に続いて見た。本編と同じくアニメ版あっての実写化ながら、もとからのファンに叩かれていないらしいのはうまく作ってあるのだろうと思われる。 今回は、主演の人さえ知らないからには他の誰も知らないだろうと思っていたらそうでもなく、奈良の部長でもっさりして一番可愛くない人物が「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。」(2015)の「美少女」の人だったのは意外だった。また福岡の先鋒は「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015)でシロニンジャーをやっていた矢野優花という人だが、今回はかなりくせのある人物役で同じ人には全く見えず、こういう人々は出ている場所で違う顔を見せるのだということを思い知らされた。当然だが。 そのほか恒松祐里さんは当然知っており、今回はずいぶん可愛い役をやっている。しかし西東京のエースは、顔は妹に似ているが全く可愛げのない人物のため存在意義が感じられない。本編の登場人物としてはその妹も一瞬出ていたようだが、個人的には鶴賀学園の大将とステルスモモが顔見せしていたのが嬉しい。清澄のおっぱいさんがわざと胸を目立たせる場面があったりもした。  内容としては原作またはアニメ準拠なのかも知れないが、今回は登場人物がわりと普通の女子高生に見えなくもなく、かえって長野県がいかに変人ばかりだったかと思わされる。しかしやはり個性的な人物が目立っており、特に北大阪はボーイッシュなのとかおばさんっぽいのとかいろいろで面白い。また特殊能力のある人々も多いようで、そんなオカルトありえませんというのが原則通用しない世界だったようだが、映像面でアクセントをつけるのには役立っている。ほか奈良は別として、福岡と大阪は方言にこだわりがあったらしいのが印象的だった。 準決勝では先鋒戦に力が入っており、やっていることはよくわからないながらもとにかく感動的だというのはわからせられる。また大将戦では膝枕エピソードが効いていて、どうせ最後は西東京が勝って長野と姉妹決戦だろうとは思うわけだが、北大阪や福岡にも負けさせたくない思いは募った(主に両校の先鋒の印象から)。 こういうサイドストーリーを発展させるタイプのコンテンツを見ると、実際の競技の世界でも、勝敗の別なくそれぞれのチームにそれぞれのドラマがあることを改めて知らされる気がして悪くないと思った。  [追記]見てから少し経った時点で一番心に残っているのは花田煌という人物だった。こいつはえらい。 [2018/10/7追記]主演の桜田ひよりという人は知らなかったが、美少女タレントでもアイドルでもなく子役時代から演技の実績のある人だったらしい。知らなくて失礼しました。  [2018/12/23追記]エンディング後の追加場面は、最後に改めて全ての発端の時点(5年前)まで遡ってみせたものらしい。TVドラマ版にもない場面なのでなかなか感慨深い。
[DVD(邦画)] 7点(2018-08-19 09:29:10)
158.  想影 《ネタバレ》 
若い監督(加藤慶吾)の短編映画で、芸術志向で難解というわけでもなくどちらかというと素直でほのぼの系の映画である。 若い男女の中学(~高校)時代と、大人になってからの出来事を対比させながら進める形になっており、中学時代の方は純粋でいじらしい恋物語である。大人になると青春のキラキラ感もなくなって暗く寂しくなるが、ここでヒロインの鬱屈した思いをどうするのかと思っていると、最後の最後に一定の解決が図られて相応の感動がある(気恥ずかしいがけっこう泣かせる)。それで幸せになれるかというと何も保証はないわけだが、何かは変わるはずと思いたくなるものはある。  主要キャストは男女2人で2つの時代で4人だが、この登場人物/出演者も全体の好印象につながっている。ヒロインの相手の男は、中学時代の姿を見るとあからさまなイケメンのため自分としては拒否感の方が先に立つが、大人になってみると25歳にしては枯れた感じで嫌味なところがなく、相手の言葉をちゃんと受け止める率直さと悪気のなさがこの男のいいところなのかとは思った。 またキャスト中で唯一自分の知っていたのがヒロインの中学時代をやっていた松原菜野花という人である。撮影はこの人が大学に入った年の秋なので、かなり年代を遡った役をやっていたことになるが(それをいえば相手の男もだが)、実際見ればかなり美少女寄りで見事に愛らしい思春期の少女になっている。これまで自分としては外見的に微妙な役をやっているのしか見たことがなかったので、今回初めて普通に美少女役を見られたのは感動的だった。 このヒロインが大人になると変にもっさりした感じになってしまったのは残念だが、この役をやっていた三瓶美菜という人は、キャストインタビューを見ていると非常に愛嬌のある(よくしゃべる、頭の回転の早い)人だったらしい。大人役の2人は中学生役の映像を見てから撮影に臨んだとのことで、2人ともちゃんと連続性を感じる人物像ができていた。
[DVD(邦画)] 7点(2018-07-15 09:29:06)
159.  GODZILLA 怪獣惑星 《ネタバレ》 
最初に出たのが(よりによって)カマキラスで、次がドゴラだったのは大笑いかつ大感動だった。これはオールドファンを笑い泣きさせるための映画なのか。ちなみに熱核攻撃の場所がアメリカだったのは「シン・ゴジラ」(2016)の被虐嗜好と一線を画している。  内容的にはかなりSFっぽい話で個人的には結構好きだ。序盤は明らかに説明不足だが、恐らく細かい設定ができているのだろうと推定の上でまあいいかと自主的に納得した。それより主人公の提案した作戦が「論外だ」と言われた直後、何の説明もなく提案通りに動き始めていたあたりは迅速で小気味いい展開である。後半に入っても話が聞き取れずに理解度がいま一つだったが、とりあえずこんな感じのことをやっている、という程度の認識で見ても最終的に問題なかった。 映像面でも特に不満はなく、個人的には主人公の両親の乗った車列の動きといった細かいところに感心する。乗り物の噴射がみなピンクだったのは地味な色調の背景に映えていた。また音響面でも結構な迫力を出しており、序盤で発進途中の揚陸艇が攻撃された場面では、腹に響く大音響でビビってしまって見ていた側も絶望感に襲われたが、こういうのも絶望的に強大な破壊者としてのゴジラの表現につながっている。最後に現れた本家ゴジラの咆哮が、まぎれもなく本家のものだったのは慄然とした。 そのほか何より自分が感じ入ったのは、主人公が戦う動機が「人としての尊厳を取り戻すため」だったことである。これは長年続いた惨めな状況に加え、年長の人々が空しく死んでいった事件が強く影響していたと取れる。攻撃前の演説で「かつてこの星に栄えた先人たちのように」という言葉があったが、この主人公ほど誇り高い人類は現代日本などにいるはずもなく、ここは「買いかぶられたもんだな」という台詞を返してやりたくなった。 ちなみに演説で「挨拶は抜き」と言っていたのは、階級が上の人々を差し置いて自分が指揮するなどまことに僭越ではあるがご指名なので務めさせていただく、といった感じのことを省略したのだと思われる。  以上、評判が悪いようなので実は期待していなかったが、結果としてはかつて粗製濫造された怪獣特撮などとは比較にならない出来に思われた。次回にそれほど期待するわけでもないがとりあえず少しいい点を付けておく…すでに二作目が公開中なわけだが見られないのが情けない。 なお今後ともユウコさんの活躍には期待したい(終盤で、先輩!と言って抱きついたのかと思ったが見せなかった)。  [2019/6/29変更] 最初は8点だったが、第3部まで全部見た結果として少し減点する(三部作の平均を5点にする)。 なおこの第1部で主人公が「人間としての最低限の誇り」と言っていたのは、人間関係や病気など、何らかの理由でそれが失われた場合は自死を選ぶしかなくなるという、人間の生存にとって不可欠なものを指しており、その考え方を個人から種全体に拡大適用することで人類の存続を訴えたのだと理解した。プライドという言葉が嫌われる現代日本で、その存在をあえて指摘してみせたのは感動的だとこの時点では思っていた。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-06-24 12:56:26)
160.  便利屋エレジー 《ネタバレ》 
便利屋営業の3人が、シングルマザーと家族の間をつなぐ話である。大人同士の関係ではもう動きが取れなくなった状態で、あえて子どもを中心にすることで物語が前に進んでいき、ラストは子どもの笑顔が嬉しいハッピーエンドになっている。柄にもなく子役の表情にキュンとさせられるところがあり、また料理が父子の距離を縮めるというのもいい話だった(ただし作ったものはちゃんと食え)。 やりすぎ、できすぎという面はあるだろうが、そこは架空のお話ということで問題を感じない。社長には過去の体験から、困っていても言い出せないでいる人を助けたいという思いがあり、また年長の社員も父親が原因で心に傷を残していて、それぞれの事情が行動を促す形になっている。結末も絶対ありえないわけではなく、劇中タレントの既成イメージにうまく乗せられれば今後の持って行き方はありそうな気はする。マネージャーの変心だけは少々都合よすぎかと思ったが、これもその前の場面で家族のつながりを見せつけられたからだと解される。 ネット上で観察した限り、日本中でほとんど誰も見なかったかのような印象もある事実上の超マイナー映画だが(著名レビューサイトでも現時点で投稿が1~2件)、見れば意外に泣かされる話だったので少しいい点にしておく。 なお登場人物では、元AKB48の永尾まりやという人が夜の仕事で子育てしているシングルマザーになっている。女の子でもないがくたびれてもおらず、ほどよく華のある母親役だった。
[DVD(邦画)] 7点(2018-06-17 09:57:47)
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