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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1891
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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141.  ゼロの未来 《ネタバレ》 
ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは現在93.789%です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。次の解析済みデータを1時間後にアップロードしてください。不可能ならば超過時間を分単位で入力してください。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%で――。コンピューターが異常な発達を遂げた近未来。仕事一筋で生きてきた真面目な男、コーエン・レスは人生の意味を教えてもらうための電話を待ち続けて孤独に生きてきた。より思索に耽りたいと願うあまり、彼は会社に在宅勤務を要請する。当初は難色を示していた上司だったが、マネージメントと呼ばれる経営トップの判断により、彼はとある極秘プロジェクトを任されるのだった。そのプロジェクトとは、「ゼロの定理の証明」。家に閉じこもり、来る日も来る日もデータ解析に打ち込んでいた彼だったが、作業は遅々として進まない。会社からは次々と催促の連絡が入るものの、肝心の電話は一向に掛かってこず、次第に追い詰められていくコーエン。そんな彼の元に、怪しげな売春婦ベインズリーやマネージメントの息子ボブを名乗る青年がやってきて……。唯一無二の独創的な映像や超現実的なストーリー等々、もはや生ける伝説と言っても過言ではないカルト映画界の巨匠テリー・ギリアムの最新作は、いかにも彼らしいそんな超シュールな作品でございました。いやー、やっぱりいいですね、このギリアムにしか描き出せない摩訶不思議な世界観。『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』『フィッシャー・キング』といった彼の往年の名作を髣髴とさせる唯一無二の独創的な映像に僕は久し振りに痺れてしまいました。そこに今回はベインズリーというそれまでのギリアム作品にはなかった(?)エロティシズム要素も加わって、いやはやどうして一筋縄ではいかない作品に仕上がっていて嬉しい限り。相変わらず訳の分からないストーリーなのですが、きっとそこには〝愛〟がテーマとして埋め込まれていたような気がする?!頭髪や眉毛まで剃り落としたクリストフ・ヴァルツの怪演振りもバッチリ嵌まっていてナイス!胸元ざっくりのセクシー・コスチュームで惜しげもなく色気を振りまいていたベインズリーちゃんも超キュートで大変よかったです!うん、相変わらず観る人を選ぶかなりぶっ飛んだ作品でしたけれど、僕は充分楽しめました!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-05 10:26:24)
142.  毛皮のヴィーナス(2013) 《ネタバレ》 
「毛皮のヴィーナス」。それはマゾヒズムの語源ともなった、19世紀オーストリアの作家マゾッホの代表作だ。そんな愛と被虐と陶酔の物語を舞台化しようと試みる野心的な演出家トマのオーディションに、とある無名の女優が大幅に遅れてやってくる。すっかり日も暮れ、劇場に残っていたのは準備に余念がない演出家である彼のみ。恋人とのディナーの約束を控え、当初は断ろうとしたトマだったが、あの手この手で迫る彼女の迫力に仕方なくオーディションをすることに。とはいえ、相手役の男優はおろか、スタッフは皆帰ってしまい、劇場には自分とその女優しか居ない。トマは自ら相手の男役を務め、毛皮のヴィーナスを演じてゆくのだが、何もかもを見透かしたような彼女の言動に次第に立場が逆転し始めるのだった……。いまだ挑戦的な作品を撮り続ける名匠ロマン・ポランスキー監督の最新作は、そんな男と女の愛と駆け引き、支配・被支配、サディズムとマゾヒズムが軽妙に交錯するスリリングな心理劇でした。確かに、小品ながら円熟味を増したポランスキーの才が冴え渡っている作品であることは僕も認めるところなのですが、さすがに90分はちょっと長すぎるかなぁというのが率直な感想です。全編に漂う上質なユーモアや気品に満ちたエロティシズムなど、いかにも彼らしいモダンな雰囲気は凄く良かったのですが、ずっと同じような画と遣り取りばかりが繰り返されるので中盤から少々退屈に感じてしまう。これで、肝心の主演女優さんが目が覚めるほどの絶世の美女とかだったらまだ良かったのですが、いかんせんこの女優さんが少々お歳を召しているうえにちょっぴり微妙……(解説によると、この人監督の実の奥さんみたいですね。ごめんちゃい笑)。うーん、もう少し突き抜けた何かが僕はほしかった。5点。
[DVD(字幕)] 5点(2023-07-03 12:54:57)
143.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
「凄い!!ぶっ飛んでる!!でも、サイコーに面白い!!」この一言に尽きるんじゃないでしょうか。もうね、映画としては反則と言ってもいいくらい直球勝負の超バカ映画なんですけど、余分なものを一切排除してストーリーを徹底的にシンプルにしたおかげか、なんだか人間本来の生存本能をまざまざと見せ付けられたようなそんな凄みさえ感じさせる作品に仕上がってるんですよ、これ。そう、人間なんて所詮は動物!性欲、食欲、この二つこそが男の生きるエネルギー源!!それがあってこそ社会は繫栄する!そんな男社会の源泉とも呼ぶべき本能に徹底的に抗う女たち……。なんて、深い――、のか(笑)。でも、人間の歴史ってこんなことの繰り返しだったのかもしれないですね。とにかく凄い映画でありました。「女は子供を産む機械」とでも思っている男どもに徹底的に反抗するシャーリーズ・セロン、かっこ良すぎ!!
[DVD(字幕)] 8点(2023-07-03 12:39:24)
144.  セッション 《ネタバレ》 
映像と音楽のセンスが抜群!!単純な話だけど、面白かった!!ただ、この2人とは絶対に関わりたくない(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-03 12:14:57)
145.  ニンフォマニアック Vol.2 《ネタバレ》 
「何も感じない…。私、何も感じなくなってしまったの。信じて…、いくらセックスしても、私、もう何も感じない」――。そんな衝撃の言葉を残して静かに幕を下ろしたVol.1から続く、生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”ジョーの性遍歴の物語もいよいよ後半戦。愛を信じず、セックスで得られる快感だけが生きる支えだった彼女に突如として降りかかる不感症という名の災厄(笑)。Vol.2では、冒頭からそんなセックスの快感を再び取り戻そうとするジョーの苦難に満ちた紆余曲折が描かれていきます。言葉の通じないアフリカ人に抱かれたらどうだろうと安ホテルの一室に身を投じてみたものの、やって来た2人の黒人は訳が分からない議論に明け暮れてことに及ばず(黒人男性2人の勃起したペニスに挟まれて佇むジョーの姿はなかなかシュール!笑)、最終的に辿り着いたのはアパートの一室にある秘密SMクラブでした。ちなみにこの間、ジョーは自分の処女を奪った男性と再会して一緒になってちゃっかり男の子を出産してます。でも、そんな最愛の息子が居るにも関わらず、ジョーは超ドSな男に鞭で調教されゆくうちに久し振りに性的快感を取り戻しいつの間にか濡れていた自分を発見するのでした。子供の世話なんかそっちのけでSMクラブ通いを止められなくなるジョー。ここらあたりから、それまでジョーを演じていた若い女優から一転、くたびれた身体のシャルロット・ゲンズブールというおばさん女優へとバトンタッチされるので、もはや目の保養すらなくなってただひたすらイタい展開となっていきます。このセックス大好きおばさんジョーという本作の主人公ほど反発も共感も感じさせない、見事なまでの性的ピエロを僕は初めて見たような気がします。もう完全に喋るダッチ・ワイフ(笑)。ところが、彼女の長い話をずっと聞き続けていた〝男〟が実はこれまで性経験が一切ない汚れなき童貞であることが判明します。そんな奔放な彼女と対極をなす〝汚れなき男〟が、最後に語りだす男と女のセクシュアリティの違い、そしてその違いから端を発する性差別の歴史…。最後に暗闇から聞こえてくる銃声は、結局この社会を形作る倫理観の壁は男どもにとって都合の良いように築き上げられたもので、そんな道徳的な顔をしながら裏側では「女は男の性欲を満足させるための穴でしかない(でも、子供を産み育ててくれる)」と無意識のうちに思い込んでいる男どもへの、女性たちの復讐なのでしょう。トリアー監督って、女性の心からの味方でありながら、それでも自らにもある女性たちへの醜いまでの性欲を自覚している、絶対に友達にはなりたくないタイプの超面倒臭いペシミストなんだろうね。でも、そんな彼が僕は大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2023-07-03 11:52:53)
146.  ニンフォマニアック Vol.1 《ネタバレ》 
「聞いてくれる?十代のころ、私は仲間たちとある会を作ったの」「どんな会だ?」「ファックと好色でいる権利の会よ。みんなで一緒にオナニーとかするの…。恋人は持たない。同じ男とは2度とヤらない。私たちは反抗的だった」「そうか…。で、そんな君たちは何に反抗してた?」「愛よ」「愛?」「そう、愛。愛なんてくだらないものに取り憑かれたこの世の中と闘っていたの」――。雪が舞い、冷風吹き荒ぶ寒い冬のとある夜。〝男〟は、道端に痣だらけになって捨てられたある〝女〟を発見するのだった。救急車も警察も要らない、ただ温かい紅茶が飲みたいと願う彼女を〝男〟は躊躇うことなく家へと連れて帰ってくる。〝女〟の名前はジョー。自らを生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”だと言う。雪が降り積もる音まで聞こえてきそうな静かな部屋の中で、ジョーは〝男〟にこれまでの性にまみれた自分の人生を赤裸々に語り始めるのだった…。人間の愚かさや社会の不条理をその冷徹なまでの視線で持って見つめ続けてきた鬱映画の巨匠ラース・フォン・トリアー監督の最新作は、そんな人間の性の醜さをシニカルに描いた意欲作でした。いやー、相変わらずこの人は人間、及び人間の生きる源泉であるはずのリビドー(性衝動、性欲)が嫌いなんでしょうね。なんだか中二病をこじらせた挙句にオナ禁している日本の若い男と精神構造的に似ているような気が…(笑)。でも、本作はそんな自分の言ってしまえばしょーもない悩みをまるで自己戯画化するような視線があって素直に面白かったです。きっと、そんなニンフォマニアであるジョーの話に、倫理観を一切持たずに耳を傾ける聞き手の男は、トリアー自身の投影なのでしょうね。観終わって、僕は遥か昔に読んだ18世紀フランスの自然主義文学の大家モーパッサンの代表作『女の一生』の中に出てくる神父のことを思い出してしまいました。その神父は、とても厳格で保守的でセックスこそが諸悪の根源であると妄信していて、道を歩いていた妊娠中の普通の雌犬を「この淫乱め!」と蹴り上げてしまうのです!馬鹿ですよね。セックスは人間が生きる上での重要な営みであるけれど、だからといって誰彼構わず何処ででもセックスするのは許されない。だから人は、その中間に倫理観という線を引くのだけど、この線引きの位置がいつの世も曖昧なものだから人間は何処までも愚かで社会から不幸な現実はなくならない…。そんな曖昧な線引き(もしかしてその位置を愛と呼ぶのか?笑)なんか完全に無視しちゃっているジョーのセックス遍歴の旅路は観ていて爽快ですらありました。そんなセックス大好きっ子だったジョーが最後に呟く衝撃の発言…(笑)。Vol.2も期待して観てみようと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2023-07-03 11:41:36)
147.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 
『バードマン』――。それはかつて、スーパーヒーローものの走りとして世界的に大ヒットしたエンタメ・アクション映画だ。主役を演じたリーガン・トムソンは、世界的なハリウッドスターとなり人気を博したものの、それ以降はヒット作に恵まれず、いまや落ちぶれてくすぶり続ける日々を送っている。そんな彼が再起を賭け、主演・脚本・演出を担当した舞台劇をブロードウェイで公演しようと奔走するのだが、次から次へとトラブルが巻き起こり、現場は大混乱に。降板した共演者の代役に抜擢された若手俳優はその自由奔放な言動で現場を掻き回し、薬物中毒でリハビリ中の娘からは常に目が放せず、プロデューサーはいつも金のことで文句を言い、恋人からは妊娠を告げられる……。彼の神経はどんどんと追い詰められ、やがて彼が演じた〝バードマン〟が彼の頭の中で罵詈雑言を囁き始めるのだった……。そんな妄想と幻聴に苛まれる元人気俳優の狂乱の日々をシニカルかつパワフルに描いたブラック・コメディ。『ブラックスワン』の中年男性版とも呼ぶべき作品だが、いやはや、これが実に面白い。冒頭からまるでワンショットで撮ったかのようなカットの途切れない演出、主人公の躁状態を表すように絶え間なく鳴り響くドラム音、実生活を否応なく髣髴とさせるマイケル・キートンの鬼気迫るような熱演、そんな全ての物事が加速度的に盛り上がり、臨界点に達したところで急速に崩壊する彼の精神…。妄想と現実を巧みに使い分け、最後まで一切テンションを衰えさせずに突っ走っていくところなど、イニャリトウ監督の才が冴え渡っている。私生活を犠牲にしてでも優れた芸術を生み出したいという、矜持ある表現者なら誰しもが願う(?)思いと、そんな覚悟を嘲笑うかのように量産されるハリウッド的エンタメ映画との相克。芸術畑の批評家ですら、保守的な思想から公平な論評をしようとしない。いったい芸術とはなんなのか?最後、病室から飛び降りたと思しき主人公を大空に見つめる娘の笑顔は、たとえそれが表現者の生活を破壊し誰かの心を深く傷つけてまで生み出されたものであったとしても、それでも人は優れた芸術を求め続けるということを肯定的に表している。映画や舞台のみならず、全ての創作というものを深く考えさせられる、充実した2時間弱であった。
[DVD(字幕)] 8点(2023-07-03 11:26:48)
148.  異端の鳥 《ネタバレ》 
第二次大戦時、ナチスのホロコーストから逃れるために地方へと疎開したあるユダヤ人少年の苦難の旅路を全編モノクロ映像で描いた不条理劇。ほとんど音楽も使われずセリフも必要最低限、ただひたすら主人公の少年が頭のイカレタ登場人物たちに酷い目に遭わされ続けるというお話で、しかもそれが170分続くというもはや苦行と言ってもいい映画でした(笑)。楽しいだけのエンタメ映画とは真逆に位置するいわゆる芸術系の作品なんでしょうけど、こーゆー作品の評価のポイントとなるのは監督のセンスに自分の感性が合うかどうか。正直言って、自分は全く合わなかったです。疎開先の自分を虐めていた叔母さんが心臓発作で急死してから、ただひたすらこの少年を好奇の目で見たり暴力を振るったり性的搾取の対象にしたりとさまざまな頭のおかしい人々が出てきては自ら破滅してゆくという展開が延々と繰り返されてゆきます。リアリティはあまりなく、なんだか寓話に近いエピソードがひたすら羅列されてゆくというその内容に、自分は昔読んだ大岡昇平の『野火』を思い出しました。あの小説も何がいいのかさっぱり分からなかったけど、次々と繰り出される強烈なエピソードに頭がくらくらして良くも悪くも印象には残るなという感想を持ちましたが、本作も同じような鑑賞後感。確かに芸術性は高いのでしょう。突発的に描かれる暴力的でエロティックなのにどこか美しいシーン、妙に心に残る個性豊かな登場人物たち、人間的な魅力を一切感じさせないまるで世界を写す鏡のような主人公、そして最後に明かされるのは彼の名前……。3時間もあるのに、最後まで観客の興味を捉えて離さない深いテーマがきっとそこにはあるのだろう。でも、自分はもういいです(笑)。
[DVD(字幕)] 6点(2023-06-26 06:29:59)
149.  6才のボクが、大人になるまで。 《ネタバレ》 
『6才のボクが、大人になるまで。』を、同じ俳優が同じ役柄を演じ続け、12年もの長きにわたって撮り続けて完成させたファミリー・ドラマ。ぶっちゃけ、それ以上でもそれ以下でもありません。うーん、なんだろうなあ。巷では評判がいいみたいですけど、面白いですか、これ。確かに、相当な困難と労力を駆使して完成させた作品であることは僕も認めるところなのですが、肝心のドラマ部分がなんとも退屈。映画の良さって、このような何処にでも居るような平凡な人々の何処にでもあるような平凡な日常を如何に人々の興味を惹き、かつ面白く見せるかが一つのポイントになると思うのです。が、本作は大して面白くもないお話をただ時系列順にだらだらと垂れ流しているだけで、もうつまらないったらありゃしない。例えるなら、あんまりよく知らない家族のどうでもいいようなホームビデオを延々と見せられたようなもので(しかも2時間半!)、僕は途中から眠気と戦いながらの鑑賞となってしまいました。アル中夫のDVや実父の再婚など、「お」と思わせるようなエピソードもたくさん出てくるのですが、それらがその後どうなったのかはほったらかしのまま。いやいや、アル中男の元に残してきたあの義理の兄妹はどうなってん!せめて、あのロクデナシの父親から離れることが出来たかどうかくらいは知らせてくださいって。そういうエピソードの投げっ放しがたくさんあって、僕は最後までずっとモヤモヤしっぱなしでした。これはやはり脚本などはなからなく、年に数回俳優のスケジュールに合わせ行き当たりばったりで撮ったのであろう本作の弱みと言っていい。どうやら僕はこの監督の作風とは合わないみたいです。この作品を創るのに使われただろう労力に、4点。
[DVD(字幕)] 4点(2023-06-22 13:44:21)
150.  リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン 《ネタバレ》 
1983年、世界中から様々な人々が集う人種の坩堝ニューヨーク。独自の習慣と閉鎖性に支配された中国人たちの街チャイナタウンには、今日も本国から色んな人々が夢を求めてやって来る。幼いころに中国から越してきた不法移民の子サニーとスティーブンは、ずっと兄弟同然で過ごしてきた幼馴染みだ。だが、ふとしたきっかけで、彼らはその地で警察よりも強大な権力を有する凶悪なギャング組織〝青龍(グリーン・ドラゴン)〟の一員となるのだった。麻薬密売、レイプ、拷問、殺人…。何でもありの無法者集団の中で過ごしてゆくうちに、2人は一人前のギャングへと成長してゆく……。生々しい暴力が渦巻く80年代のチャイナタウンを舞台に、生きるために犯罪者とならざるを得なかったそんな青年たちの青春をエネルギッシュに描いたクライム・ドラマ。大御所マーティン・スコセッシが製作を務めたくらいの情報のみで今回鑑賞してみました。さすがスコセッシ御大が絡んでるだけあって、なかなか見応えのある骨太のギャング映画に――幾分か問題があるとは言え――仕上がっていたと思います。実話を基にしていることもあり、いつ殺されてもおかしくないような狂った世界に生きるギャングたちの、まるでこちらまで汗の匂いが漂ってきそうなほどの生々しい迫力には素直に圧倒されました。中華料理の脂っこい臭いや麻雀牌が掻き回される雑多な音が充満する街の中で、餓えた野犬のように生きる男たちの生き様は観ているだけで火傷しそうなほど。全編に漲るこの熱量はなかなかのものでした。ただ、実話を基にしたからなのか、お話がけっこうごちゃごちゃしてて、いまいち分かり難かったのが本作の欠点。具体的に言うと、登場人物がやたらと多いうえに彼らが組織内でどのような立場で誰とどういう関係にあるのかいまいち理解しづらい。なのに、お話自体はどんどんと進んでいってしまう。途中、僕は何度か置いてけぼりを喰らってしまいました。映画として、これは大きなマイナス・ポイントと言わざるを得ないでしょう。もう少し丁寧な演出を心掛けてほしかった。ほとばしるような生命力を感じさせるエッジの利いた演出は凄く冴えていただけに残念です。
[DVD(字幕)] 5点(2023-06-22 13:19:22)
151.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
「ドイツ軍がこれから行う奇襲攻撃や爆弾投下、神出鬼没のUボート攻撃、全ての指令が今この空中を飛び交っている。これらの無線信号は受信機さえあれば子供でも傍受出来る。だが、その内容は高度に暗号化されている。その組合せは、159×10の18剰通り……。10人が1分間で一つの組合せを試し、1日24時間、週7日休みなく続けても、全てを調べ終わるのに2000万年もかかるのだ。しかも、それは1日のはじめに全て設定しなおされてしまう…。それが、ナチスドイツが開発した世界最高峰の暗号化システム、エニグマだ」――。本作は第二次大戦中、英国諜報部の極秘指令を受け、そんな難解な暗号化システムの解読に成功したものの長らく極秘扱いにされ、歴史の闇に埋もれていた天才数学者アラン・チューリングの生涯を描いた伝記映画だ。なるほど、数々の賞を受賞しただけあって、堅実に創られた歴史ドラマとしてなかなかよく出来ている。アラン・チューリングという天才的な頭脳を有するものの、人間としては社交性ゼロ、偏屈な変わり者が如何にして仲間たちと協力し合いエニグマという世界最高峰の暗号を解読することが出来たのか?また、第二次大戦の終結を2年は早め、多くの人命を救ったばかりか現代のコンピューターの原型と呼ぶべきシステムを開発したのに、何故それが何十年も極秘扱いされてきたのか?そんな興味深い内容であるもののいかんせん地味になりがちなテーマを極めて分かりやすく、かつ魅力あるドラマとして描き出すことに成功している。主人公の人格形成に大きく影響を与えた少年時代、仲間とともにエニグマ解読に全精力を捧げた第二次大戦下、そして、その抱えた秘密によって不遇の晩年を余儀なくされた終戦後…。ともすれば空中分解しそうなそんな三つのエピソードを、極めてバランスよく配置したその物語構築の手腕は高く評価されるべきものだろう。観客の好感を得られにくい偏屈な数学者という難しい役柄を、一人の人間として見事なまでに演じきったB・カンバーバッチの仕事ぶりも大したものだった。ただ一つ難点を挙げるとすれば、それはK・ナイトレイが演じたアランの婚約者、ジョーンの存在だろうか。同性愛者であった主人公がどうしてそこまで彼女に執着し、あまつさえ婚約者となって引き止めたのか。そこにいまいち説得力が感じられない。ここらへんをもう少し丁寧に描いてほしかった。とはいえ、歴史の荒波に翻弄され、不遇の人生を歩まざるをえなかった一人の偉人の生涯を現代に甦らせた本作の業績は称賛に値する。なかなかの佳品と言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2023-06-22 13:07:32)
152.  コングレス未来学会議 《ネタバレ》 
かつて類まれなる美貌でもって栄華を誇ったもののいまや落ちぶれ、障害のある息子と共に質素に暮らす中年女優、ロビン・ライト。ある日、そんな彼女に大手映画会社から特異なオファーが舞い込んでくる。「君には映画会社が自由に操れるCG女優となってもらいたい。君は映画の中で永遠の若さを得ることが出来るのだ。その代わり、現実の君は今後一切、公の場に出てきてはならない」――。当初は断ろうとしたロビンだったが、息子のために仕方なく契約書にサインすることに。永遠に年を取らない女優となって見る見るうちに人気を得ていく〝ロビン〟。だが、20年後、事態は意外な方向へと転がり込んでゆく……。実写とアニメを融合させた独創的な映像で知られるイスラエルの映像作家アリ・フォルマンの新作は、そんないかにも彼らしい前衛的な作品だった。前半、コンピューターでスキャンされCGとなった主人公を軸にハリウッドの内幕をシニカルに見つめたドラマになるのかと思いきや、後半から物語は予期せぬ展開を見せ始める。初老の域に達した主人公が「未来学会議」という謎の会合に出席するため全てアニメで構築されたアブラハマシティへと迷い込んでからは、この監督の面目躍如といった独自の世界観が開陳されていくのだ。現実世界は全て原色系のカラフルな世界へと変貌を遂げ、人々はユーモラスでありながら何処かグロテスクなアニメキャラとなって主人公を迎え入れる。やがて、この世界は革命を起こし何不自由ないユートピアとなるのだが、当然、そこには不都合な真実が隠されている…。離れ離れになった息子を求めて、何不自由ないアニメ世界から現実へと戻った主人公が目にする真実には大いに戦慄させられた。この監督の前作『戦場でワルツを』を髣髴させるこの反転構造はやはりこの監督独自のものだろう。素晴らしい。だが、本作には決定的な弱点が一つ。それはストーリーの要所要所に腑に落ちない部分が幾つも散見されるところだ。何故、CGとなったはずの主人公が迷い込むのはアニメ世界のみなのか?何故、主人公は新たなユートピアのシンボルへと祭り上げられたのか?そして何故、主人公は〝ロビン・ライト〟という実在の女優でなければならなかったのか?そこに明確な理由付けが感じられない。そこが本作のレベルを一段低いものにしてしまっている。この独創的な世界観は文句なしに素晴らしかっただけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2023-06-22 12:33:40)
153.  ラスト・リベンジ 《ネタバレ》 
バニールはまだ生きている!テロリストの元幹部である奴は数々の殺人や誘拐に関わり、観光バス爆破事件では多くの子供たちまで犠牲にしたんだ。なのに、病気だからと言ってほっとくんですか?野放しにしておくことはCIAや政府の方針に反するはずだ――。かつて対テロ工作員として国際的に活躍していたものの、いまや認知症を患いCIAのお荷物となってしまったエヴァン・レイク。もはや引退を余儀なくされそうになっている彼に、ある情報が舞い込んでくる。22年前、彼が逮捕寸前まで追い詰めたものの直前で取り逃がししてしまった大物テロリスト、バニールが深刻な病を患いケニアに潜伏しているというのだ。すぐさま上司に報告したレイクだったが、彼の訴えは「もうすぐ病気で死ぬ男に関わっている時間はない」と無下に却下されるのだった。どうしても過去と決着をつけたかったレイクは、独自に捜査を開始する。自分を慕ってくる若手スパイと共に、情報を求めてルーマニアへと向かった彼だったが、認知症の進行により徐々に意識が朦朧としてくるのだった……。病を抱えながらも因縁の相手を追って世界を駆け巡る孤独な老スパイを描いたポリティカル・アクション。いまやB級映画の代名詞とも言えるニコラス・ケイジ主演ということで相当ハードルを下げて観始めたのですが、案の定、その下がりに下がった僕のハードルのさらに下を行く完成度の低さでしたね、これ。何が駄目かって、とにかくストーリーの根幹をなす大事な部分にいちいち突っ込みどころ満載な点。たとえば、①何故、主人公はそのバニールというテロリストにそれほどまでに執着するのか?恋人や同僚を殺されたという明確な理由があればこそサスペンスが盛り上がるというのに、昔取り逃がしちゃったからという理由だけではさすがに乗り切れない②主人公を慕う若手工作員がどうして職を賭けてまで彼に同行するのか?先輩として尊敬してるからだけではさすがにちょっと、ねえ…(笑)③主人公が認知症で何度も意識が混濁するという設定が一切活かされていない。本作において、これは致命的な欠点と言っていいでしょう。他にも、ケニアに入国するのに初対面の医師に成りすましたり(付け髭とグラサンだけでOKってそんなアホな…笑)、ようやく念願のバニールと対面できたのに何故か殺しも捕まえもせずにその場を立ち去ったり(後日、彼の部下に襲撃されてやっぱり殺しに行くって、じゃあ最初に殺しとけよー!笑)、そういう細かい部分にも荒さが目立ち、とてもじゃないけど楽しめなかったです。まあ、よくも悪くもニコケイブランドの作品ってことで。
[DVD(字幕)] 4点(2023-06-16 08:40:38)
154.  はじまりのうた 《ネタバレ》 
これは新曲だからまだ荒い部分もあるけれど…。都会で独りぼっちだと感じているあなたへ――。妻と離婚し、都会の片隅で酒浸りの毎日を過ごす音楽プロデューサー、ダン。かつてヒットメーカーとして、数々のアーティストを発掘し育て上げた彼もいまや会社のお荷物扱い。元妻からも邪険な扱いを受け、娘との関係もうまくいかず、ますます酒の量も増えていた。そんなある日、追討ちをかけるように会社からクビを宣告されるのだった。自暴自棄となり様々なバーをハシゴし酔い潰れてしまった彼は、とある酒場でたまたま一人の若い女性が歌う曲を聞き、まるで雷に打たれたような衝撃を受ける――。曲を披露した女性の名は、グレタ。彼女も長年連れ添ったアーティストの彼に浮気されフラれたばかりだった。友人の家に居候しながら、元彼との思い出がたくさん詰まった写真や動画を見ては溜息ばかり吐くようなどうしようもない日々。大都会ニューヨークで、そんな人生の袋小路に迷い込んでいた2人は、音楽で自分の人生や業界を変えようと意気投合するのだった。次の日、2人は画期的なアイデアを思いつく。それは全ての曲を路上でゲリラ録音すると言う奇抜なものだった。バンドのメンバーを集め、NYの様々な街並みで歌い始めた彼女たちは、少しずつ世界を変えていく……。冒頭、何の説明もなされないままそんな2人が音楽を通じて出逢うシーンを描き、そこから時系列をバラバラにしてお互いの息詰まった生活を交互に描いていくトコロまでは、抜群の編集センスや音楽的な趣味の良さもあって素直に面白く見ることが出来ました。NYという大都会で孤独を抱えている男女が出逢い、音楽を武器に自らの人生を変えていくなんて、まあベタだけどこれはこれでアリかもね、なんて。だけど……、彼らがそこから路上ライブをするために奔走し始めたあたりから僕のテンションはどんどん下がってゆくのでした。いやいやいや、なんなんですか、この薄っぺらい展開は!!落ちぶれていたはずの登場人物たちがいつの間にか立ち直ってゆき、大した苦労もないままお洒落なニューヨーカーとなって成功していくってなんですのん!!正直、自分はうんざりしちゃいました。たとえ性格が捻じ曲がってると言われようが、たとえひがみ根性が半端ないと言われようが、僕はこういう「本当の悪人は誰も出てこず、みんながみんな音楽を通じてハッピーになって、誰もが気分爽快に観終えることが出来るようなリア充礼讃映画」は嫌いです。以上。これはもう完全に好みの問題なのでいかんともしがたい。
[DVD(字幕)] 4点(2023-06-12 10:52:35)(良:1票)
155.  ザ・トライブ 《ネタバレ》 
この映画の言語は手話である。字幕や吹き替えは存在しない――。ウクライナ郊外にある聾唖学校の寄宿舎に、ある日、一人の青年が転校してくる。もちろん青年も迎え入れる生徒も先生たちも皆、他人とのコミュニケーション手段は〝手話〟だ。この学校に、音というものは存在しない。青年は、そこでこの学校を牛耳る不良グループと知り合い、仲間となるのだった。売春、強盗、窃盗……。様々な悪事に手を染めてゆく中、青年はある一人の美しい女性と恋に落ちる。だが、青年は知っていた。彼女はそんな不良グループのボスである危険な男の女だったのだ。それでも青年は自らの情熱を止められなかった。人目を忍んで何度も身体を重ね、情欲の海に溺れてゆく2人。やがて、静かな学校内に愛と憎しみが少しずつ交錯してゆき、それはいつしか危険な発火点を迎えてしまう……。字幕や吹き替えはおろか、全編にわたって音楽すら使われていない本作は、一見、あまりにも静かな映画だ。だが、画面の中で繰り広げられる物語は、そんな静けさとは対照的にとてもパワフルかつ情熱的であり、しかも暴力的な血の匂いに満ちている。そのギャップこそが、この映画の全編に通奏する不穏さであり、また唯一無二の魅力となっている。今までにないタイプの映画だ。この静謐さと不穏さを詩情溢れる映像でもって同居させたこの監督の感性は特筆に値する。世界中で数々の賞を受賞しただけのことはある。ただ、この挑戦的な手法が大きな武器となっている反面、逆に本作に幾ばくかの制約を課してしまっているのも否定できない事実だろう。セリフや説明が一切ないため、ストーリーに分かり難い部分が幾つもあり、そこを汲み取れなければ物語としてうまく受け取めることが出来なくなってしまうのだ。映画を鑑賞中、僕は何度か深い霧の中に迷い込んでしまったような感覚を味わってしまった。観終わって、後で思い返してみれば「なるほど、あれはそういうことだったのか…」と納得できるものではあるのだが、映画としてこれは大きなマイナスポイントと言わざるを得ない。もう少し何とか工夫出来なかったものか。今までにない独創的な世界を見事なまでに構築した作品だっただけに、惜しい。
[DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2023-06-12 10:21:37)
156.  Dearダニー 君へのうた 《ネタバレ》 
かつてヒット曲を連発し栄華を誇っていた往年のロックスター、ダニー・コリンズ。だが、いまや老境の域に差し掛かった彼は、酒とドラックに溺れる寂しい日々を送っていた。もう何十年も新曲を書かず、かつてのヒット曲だけを頼りにツアーを廻っていたダニーに、ある日、マネージャーが誕生日プレゼントとして一通の手紙を持ってくる。なんとそれは、ジョン・レノンが生前彼に宛てて書いたものの約40年もの間配達されずに保管されていた手紙だった――。「親愛なるダニー、音楽を堕落させるかどうかは君自身。音楽と自分自身に常に忠実であれ。ジョンより」。深いショックを受けた彼はツアーを中止し、浮気中の妻には別れを告げ、とある地方都市のホテルにやってくる。新曲を書くため、そして今までずっと目を背けてきた自らの過去と真剣に向き合うために……。実話を元に、落ちぶれた往年のロックスターが約40年ぶりに発見されたジョン・レノンからの手紙をきっかけにして再起を図る姿を軽妙に描くヒューマン・ドラマ。アル・パチーノ主演、ジョン・レノンの名曲が幾つも使われているということで今回鑑賞してみました。うん、いいですね、このいい意味で力の抜けたノスタルジックな雰囲気。ともすれば雰囲気だけの薄っぺらい作品になりそうなテーマなのですが、そこにアル・パチーノやアネット・ベニングといった熟練の役者陣がいいアクセントを効かせていて非常に好感の持てる作品に仕上がっていたと思います。特にアル・パチーノ、酒浸りで胡散臭いロックスターながら時おり深い優しさを垣間見せるという個性的キャラクターを見事に演じておりました。そんな彼が後半、癌を患う息子と和解しようともがくことになるのですが、そこも単純な和解劇とせず主人公の弱さをちゃんと目を逸らさず描くところも好印象。うん、人間なんてそんなすぐ真人間に変われるほど単純じゃないしね(経験者談!!笑)。ただ、本作のストーリーにはちょっと弱い部分があるのも事実。それは、ジョン・レノンの手紙を読んだ主人公が急に心変わりする理由にいまいち説得力が感じられないところ。レノンからの激励の言葉を受け取った主人公がずっと書いていなかった新曲製作に取り掛かるのは分かるのですが、長年疎遠にしていた息子との和解まで決意するというのはいささか強引すぎやしませんか。とはいえ、この牧歌的な雰囲気を壊すほどの瑕疵ではない。全編を彩るジョン・レノンの名曲群も良かったですし、なかなかの佳品だったと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2023-06-12 09:59:31)
157.  クーデター 《ネタバレ》 
外国人は皆殺しだ――。東南アジア某国。転職を機に、愛する妻とまだ幼い2人の娘と共にこの地に赴任してきたジャック。11時間にも及ぶフライトを終え、会社が用意した高級ホテルの一室にチェックインした彼らは、新たな地で人生の再スタートを切るはずだった。だが、翌日、ジャックは街の異変をすぐに感じ取る。中断されたままのテレビ、いつまで経っても接続されないネット、街を忙しなく行き交う軍部隊、不穏な住民たち…。やがて、〝彼ら〟がジャックの目の前に現れるのだった。鉈やピストル、軽機関銃で武装し、外国人抹殺を叫ぶ血走った目の暴徒たちが…。すぐさま家族と共に脱出を図るジャックだったが、街は一夜のうちに彼らに占拠されていた。はたしてジャックたち家族は無事に国外へと脱出できるのか?パッケージやキャスティングからいかにもB級感ぷんぷんのそんな本作なのですが、ピアーズ・ブロズナンが出ているということで今回鑑賞してみました。冒頭こそ、これぞアジアでございと言わんばかりののっぺりとしたカメラワーク、無意味なスローモーションの多用等々先が思いやられていたのですが、暴徒と警官隊が暴動を起こしてからはもう畳み掛けるように続くアクションシーンの連続にけっこう惹き込まれて観ている自分がいました。何をするか分からない残虐非道な暴徒たちが暴れまわる中、幼い2人の娘と共に決死の覚悟で逃げ惑う主人公に素直にハラハラドキドキ。救援に来たと思いきやいきなり銃を乱射してくるヘリコプターの襲撃に始まり、隣のビルに乗り移るために娘を無理やり放り投げたり、家族と一緒に死体に隠れて敵を遣り過ごしたり、変装して小さなバイクに乗り込んだ彼らが群集が暴れまくる夜の街に繰り出したり……。と、なかなかハードなアクションの連続で観客をぐいぐい惹き込む展開はなかなかのもの。「これは思わぬ掘り出し物かも!?」と思いながら観ていたのですが、後半息切れしたのか、アクションが幾分かスケールダウンしてしまったのが残念でした。特に僕は、P・ブロズナン演じるCIA職員ハモンドの薄っぺらさが気になりました。国際政治の裏舞台で常に死と隣り合わせで生きてきたスパイはもっと冷徹であってしかるべき。それが、「俺たちのせいだから君たち家族を全力で助けてやる」と命まで投げ打って主人公家族を救出するというのはさすがに甘すぎやしませんか。このハモンドの行動にもう少し説得力を持たせてほしかった。と、そこらへんが気になりましたが、それでも娯楽作としては充分水準に達していたと思います。第三世界を舞台にした、重厚な軍事アクションとして観て損はないでしょう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-06-12 09:43:27)
158.  パラレル 多次元世界 《ネタバレ》 
最近立ち上げたITベンチャー企業の経営に奮闘する4人の若者。ところがかつての従業員の裏切りに遭い、経営の危機に直面してしまう。1週間以内にソフトを完成させ取引先に納入しなければ倒産するのは明らか。そんな絶体絶命の状況を救ったのは、とある小さな鏡だった――。オフィスとして借りていた古い一軒家の屋根裏部屋にあったその鏡には、驚くべき力が宿っていたのだ。なんとその鏡の向こうには、こことは違う別の世界が拡がっていた。自分たちが住む現実とは微妙にずれた世界、しかも入るたびにその世界は刻々と変ってゆく。そこでは今とは違う職業に就いた自分がいたり、見ず知らずの他人と結婚していたり、さらには死んだ人間が生きていたりする……。そう、この鏡は幾つもの時空を越えた別世界へと繋がる、いわゆる多元宇宙への扉だったのだ。鏡の力を使い経営の危機を脱した彼ら。やがて彼らはそのパラレルワールドへと頻繁に出入りし、自分たちの世界にはない発明品や芸術品を持ち帰ると、あたかも自分たちが作り出したかのように世間に発表する。鏡の力で充実した日々を送る彼らだったが、次第に自らの欲望を止められなくなって……。さまざまなパラレルワールドへと繋がる鏡を偶然見つけた今どきの若者たちの驚愕の体験をノンストップで描いたSFスリラー。監督は、『ダークレイン』や『パラドクス』でスマッシュヒットを飛ばしたイサーク・エスバン。確かにこの監督らしい独自の世界観は構築出来ていたと思います。突っ込みどころは満載ながら、スピード感あふれる演出とぶっ飛んだユーモアセンスで最後まで突っ走るところはこの監督ならでは。どうせ別の世界だからと金を盗んだり嫌な奴をボコボコにしたり、さらには他人の絵画や発明品を盗んだりと主人公たちがやりたい放題するシーンはけっこう楽しい。ただ、そーゆーワンアイデアを勢いとノリだけで一本の映画に仕上げてしまったのはどーなんでしょうね。過去作では、そういう荒唐無稽な設定も「これは映画ですよ」という寓話的な枠組みがバッチリ嵌まっていたからこそ観ていられたと思うんです。本作のように、現実と地続きの世界でこれをやられるとさすがに違和感が凄い。この多元宇宙という設定をもう少し詰めるべきだったのでは。例えば、この鏡がどのようにして出来上がったのかとか、別の世界からものを持ち帰るとその元の世界ではどうなるのかとか、別世界でもう一人の自分と出会うとどうなるのか等々。ここら辺のルール設定をもう少ししっかり描いて欲しかった。これでは物語としてあまりにふわふわしすぎていて、後半のサスペンスがいまいち盛り上がらない。監督の過去2作はそこそこ気に入っていただけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 5点(2023-06-12 07:02:36)
159.  ヴィオレッタ 《ネタバレ》 
子供のころ、実の母親にヌード写真を撮られることを強要され、さらにはそれをアート写真集として世間一般に販売されてしまった少女、ヴィオレッタ。そんな彼女が大人となり、そのころの忌まわしき体験を基に自伝的物語として製作したのが本作である。主役を演じた少女が当時10歳でありながら相当な美少女であり、なおかつかなり大胆な衣装を着てかなり挑発的なポーズをとっているということでも話題を呼んだ作品でもある。正直そっち系の嗜好を自覚している自分としては、たまたまビデオ屋さんに並んでいた本作のその怪しい魅惑に満ちたパッケージを発見し、「こ、こんな作品があったとは……。不覚」とすぐさまレンタルし今回鑑賞してみた。結論から言うと、映画としての出来は大したものではない。むしろ、完全なる失敗作と呼んでいいほどの酷い内容だった。あまりにも拙い脚本、全く繋がりというものを考えていない場当たり的な編集、センスというものを一切感じさせない凡庸な映像、そして作品の肝と言ってもいいはずなのにとことんダサい主人公たちの衣装や撮影現場のセット…。映画としての基礎がまるでなっていない、完全なる駄作である。だが、しかし!この作品を毎年何十、何百と大量に創られてはあぶくのように消えていくあまたの駄作たちの海に沈めて忘れ去るには惜しい魅力がただ一つだけある。それは、主役を演じたアナマリア・ヴァルトロメイの類まれなる美少女性である。すっと通った鼻梁にふっくらとした唇、透き通るような美しい肌に大人になりかけた少女だけが持つまるで妖精のような未成熟な身体つき、そして何よりも男心を貫くように見つめてくるその純粋な瞳……。脳と何処かがスパークしそうなほどの魅力に満ちた完璧なる逸材であった。素晴らしいというほかない。これで、映画としての出来が良ければと考えると本当に惜しい作品であった。
[DVD(字幕)] 5点(2023-06-05 12:07:47)
160.  インサイド・ヘッド 《ネタバレ》 
父親の都合でそれまで暮らしてきたミネソタの田舎町から突然、大都会サンフランシスコへと引っ越すことになった11歳の少女ライリー。ところが夢見ていた新居は薄汚れた狭いアパート、おまけに引越し業者の手違いで荷物は一向に到着せず、優しかったお父さんもお母さんもずっとイライラしっぱなし。おまけに転校した先の学校では新しい友達にもうまく馴染めず、ライリーの心はどんどんと沈んでゆくのだった。そんなライリーの頭の中をこっそり覗いてみると――。そこには常に天真爛漫なヨロコビ、いつもめそめそしているカナシミ、いつだって不機嫌なムカムカ、絶えず不安なことを考えてしまうビビリ、今にも噴火しそうなイカリ、そんな個性豊かな〝感情〟たちがライリーを見守っていたのだった。ところがある日、カナシミとヨロコビが頭の中の司令室から飛び出してしまう……。いまや3Dアニメーションの代名詞とも言えるピクサーの新作は、そんな一人の少女の頭の中を想像力豊かに擬人化した冒険活劇でした。自分、こういう少女の頭の中をファンタジックに映像化した作品に弱いんですよね~。記憶の貯蔵庫や映画撮影所のような夢製作現場、見ているだけでワクワク感が止まらないイマジネーションランド等々、彼女の頭の中がとても魅力的な舞台として視覚化されていてすんごく良かったです!ライリーの頭の中だけが舞台なのかなと思いきや、途中、お父さんやお母さんの頭の中も見せてくれたり(しかも、お母さんの頭の中はカナシミ、お父さんの頭の中はイカリがそれぞれ主導権を握っているところなんか凄くリアル)、ガムのCMソングがどうしても忘れられないと思ったら作業員が毎回司令部に戻していたりと遊び心も満載で大変グッド。特に僕は、近道として抽象概念の部屋に入った主人公たちがどんどんと単純化された二次元アニメになって最後は色と物だけになるという、ポップとシュールが渾然一体となったマジカルなシーンにもう痺れちゃいましたわ。ただ一つ不満な点を挙げるとすれば、物語で重要な役割を果たすビンボンというキャラクターが正直微妙でいまいち魅力を感じなかったところですかね。もうちょっと可愛くすれば良かったのに…、と思ってしまったのは僕だけなのかな。とはいえ、思春期に差し掛かった少女が如何にしてままならない現実と折り合いをつけ大人になってゆくのかという、考えてみればとても深いテーマをこれだけのエンタメ作品に仕上げてしまうピクサーの手腕にもはや脱帽です。うん、8点!
[DVD(吹替)] 8点(2023-06-05 11:39:23)
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