1621. バス停留所
《ネタバレ》 女優マリリン・モンローが大きな転機を迎えた作品。本作以降、つまりアクターズスタジオ以降とそれ以前と彼女の魅力、演技力などにおいては評価が分かれる所だと思いますが僕は断然以前のマリリン、例えば「百万長者」や「紳士は金髪がお好き」などで見せる天真爛漫な天然コメディエンヌのマリリンが好きなのです。その多くの人に愛された役どころに本人の苦悩があったというのは何とも言えない皮肉を感じるのですが。作品の方はドン・マレイ演じるマリリンを追いかけ続ける田舎者のカウボーイという典型的な田舎青年をどう感じるかで楽しめるかどうかが分かれる映画だと思いますが、どうもこの男を鬱陶しく感じてしまった時点で本作を楽しむところまでいかなかったようです。ただ、一緒にバスに乗り込む絵に描いたハッピーエンドでマリリンが見せる笑顔にはほっとさせられたのでした。 [DVD(字幕)] 5点(2010-05-05 17:05:12)(良:2票) |
1622. 川の流れに草は青々
80年代のホウ・シャオシェンの映画には瑞々しい魅力があふれている。本作もそれを冒頭から感じる事が出来る。今の日本から見ても懐かしさを感じさせる田舎町の風景、優しさを感じさせる音楽と自然光の温かみと柔らかさ。何気ない冒頭の風景描写から画面に釘付けにさせられるのです。 「童年往時」や「恋恋風塵」といった80年代の傑作群でも感じる事ですが、音楽と台詞の無いシーンの使い方が実に上手い。映画ではなく本当に台湾のどこかの田舎町の風景を切り取ったかのような何気ない日常に、俳優ではなくそこで遊んでいる子ども達やそこで暮らす人々を捉えたような表情には演技を感じさせない、いい生活感がある。 例えば頻繁に登場する川や教室でのシーン。河原で戯れる子ども達や教室の隅に座っている台詞の無い子ども達に至るまで表情が実に生き生きとしている。全ての子ども達に語りかけるように演技指導をしているホウ・シャオシェンの姿が目に浮かぶようです。そんな中彼が描くのは子供の頃、若い頃といった人生の大切な一時期の日常とその等身大の姿。それは彼のその頃の思い出の風景なのか。ゆったりとした気分で楽しむことが出来る映画です。 [DVD(字幕)] 7点(2010-05-03 13:22:31) |
1623. ダージリン急行
トホホな3兄弟のインドでのスピリチュアル?な旅。長男の助手に作らせた日程表に基いた旅であるはずなんですが、行き当たりばったり感が漂う旅。しかしそれがいい。ロードムービーってやつには観光ツアーのように分単位で予定が決まった旅は似合わない。大笑いする所も涙があふれる所も無いですが、クスッと笑わされる3兄弟の微笑ましい描写に心が和み、サイドストーリーも上手く挿入されている。後々3兄弟と旅の途中で再会してどうスト―リーに絡むのかな?と思っていたのですがビル・マーレイはホント、冒頭だけだったんですね。でも楽しくてインパクトがある冒頭の掴みでした。インドの風景を捉える黄色がかった乾いた映像や時にはポップで時にはインド風の音楽の使い方にもセンスの良さを感じさせるロードムービーです。 [DVD(字幕)] 6点(2010-05-03 13:07:22) |
1624. ファミリービジネス
《ネタバレ》 全然親子に見えないけどまずは祖父と父がいい。このジェシーとヴィトーの二人の人物像とショーン・コネリー、ダスティン・ホフマンの二人の名優の風貌や持ち味が実によく合っています。確かな演技力を持つこの二人の掛け合いは見応え十分です。親子3代それぞれが演じる役の人物設定がよくできており、それぞれに共感できる部分がある。特に家族を愛するという点では共通するが息子、孫の価値観の形成、生き方に多大な影響を与えてきた祖父ジェシーの魅力ある人物設定と演じたショーン・コネリーの演技が素晴らしいです。これまでの人生で一番楽しかったのが息子も孫も盗みであるという結論が残念ではありますが。そしてジェシーという人間がよく表れているラストの葬儀が良かった。この街で生涯をすごしたジェシーとのお別れに訪れた入り切れないほどの人々に混じり、恐らくはジェシーが大変お世話になったのであろう、大勢の制服の警察官がいたのが良かった。彼らもまた、手を焼かせられたけどジェシーの事が憎めなかったのでしょう。そんな参列者が皆で歌う“danny boy”がいい。ジェシーを見送る歌として見事な選曲でした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-29 18:26:51)(良:1票) |
1625. 招かれざる客(1967)
《ネタバレ》 スタンリー・クレイマー監督は本作以前にも人種問題をテーマにした作品を撮っており、もっとシリアスな映画だと思っていました。しかし人種問題という重く難しいテーマを扱いながらも全体的にユーモアや優しさがあり、人間の温かみを随所に感じさせてくれる映画でした。名女優キャサリン・ヘプバーンは本作と同じく主演女優賞に輝いた後年の「黄昏」でも感じたことですが、人間的な大らかさや優しさを感じさせる妻であり母であり女性を見事に演じています。主演女優賞に輝いたキャサリンだけでなく俳優陣全ての細やかな演技が素晴らしかった。黒人と白人、父親と母親、夫と妻、息子と娘、それぞれの立場からこの家族が直面した問題が会話を中心に描かれますが、少しずつ本音を出し合いながら語り合うことで問題を解決していく家族の姿を通して、アメリカも両者の間でもっと語り合おうという作品に込められた思いが感じられるようでした。 [DVD(字幕)] 9点(2010-04-26 23:25:55) |
1626. フラガール
「シムソンズ」や「スウィングガールズ」等の田舎町の女子の青春ドラマ(結構好きなんです)と同じような作品かと思って見たのですが、町の事情、時代背景など彼女達の背後にある非常に重い社会問題を含んだドラマでした。松雪泰子演じる先生の借金に関する事など詰め込み過ぎに感じられる部分もありましたが、なかなか変われない町の人々と閉塞感に包まれた町の中で懸命に前を向いて生きていこうとするフラガール達の姿がとても美しかった。そしてこの種の映画のお約束、ラストの集大成のシーンは本当に素晴らしかったしステージでフラガール達の流した涙もとても美しかったです。 [DVD(邦画)] 7点(2010-04-26 23:07:30) |
1627. イタリア的、恋愛マニュアル
1つのエピソードが終わる度にその場に偶然居合わせたカップルの新たな話につながっていく。最初のお話は若いカップルが出会って結婚するまでのとてもハッピーなお話。その後は映画の進行と共に人生が進行していくかのように次第に年齢と人生を重ねた男と女の物語が3話つながっていく。長い人生色々あるけれどイタリアらしい明るさが常にあってとても気分良く見ることができます。最後の話のラストであり、この恋愛マニュアルを締めくくる優しさのある海辺のラストに心が温まる映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-04-25 00:38:15) |
1628. 女囚さそり けもの部屋
前2作もツッコミ所だらけでしたが、このシリーズ3作目も冒頭の刑事の腕を引きちぎる所から凄すぎます。下水道の中を住処にし潜伏するさそり。そんなさそりをあぶり出す(焼き殺す?)ために下水道にガソリンを流し込み火の海にする。警察がそこまでやりますか!? それでもやはりさそりは不死身ですが、さすがに3作目になるとちょっと飽きてきました。 [DVD(邦画)] 4点(2010-04-25 00:35:07) |
1629. トッツィー
《ネタバレ》 有名な作品なので見る人はストーリーまで知らなくともダスティン・ホフマンが女装する映画だという予備知識がある人が多いと思います。そうなると初めて観る者のダスティンの女装(見た目も演技も)に対するハードルが高くなるわけですが、その高いハードルを軽々と飛び越えていくダスティンの演技も見た目も見事な女装ぶりでした。そんな女装ダスティンを中心に繰り広げられるドタバタコメディだと思っていました。ですが仕事のため、カネのために割り切って女装したはずの男が仕事のパートナーの女と女として接するうちに女性の気持ちというものを理解し、その女は女装した男から女としての影響を受けるというこの二人を中心に取り囲む者それぞれの人間模様、相関図もシンプルでいてよく練られており、かつ誰とでも気軽に楽しめる優しさのある人間ドラマです。なかなかシブい顔ぶれが揃った男優陣がいい味を出しています。そしてやっぱり素晴らしい、主題歌をはじめデイヴ・グルーシンのポップで優しさを感じさせる音楽がこのコメディタッチの軽妙な語り口の人間ドラマと見事に調和しています。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-22 21:15:14)(良:1票) |
1630. 男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎
《ネタバレ》 この第27作は寅さんらしさがとてもよく出ているシリーズ中期のお気に入りの一作です。この前の第26作「かもめ歌」では伊藤蘭演じるマドンナに対し恋する、と言うよりは妹か娘のような関係でしたが、やっぱり寅さんはこうでなくっちゃ!という到底手が届くはずもない高嶺の花に恋する寅さんの復活が嬉しい作品です。けれども訪れた大チャンスに尻尾をまいて逃げ出すところも寅さんらしい。ついでに「おふみちゃん、いけねえよ。こいつで勘定してくんな」と財布を渡すもののロクな持ち合わせがないところもやっぱり寅さんらしい。マドンナ(松坂慶子)のお美しさに関してはシリーズ屈指の作品でもあります。旅暮らしの歌手のリリーに本作以外にも第17作でも登場しましたが芸者さん、こんなマドンナ像と寅さんはやはりとてもいい絵になりますね。そしておふみさんのお姉さま方に新世界の宿屋の人間模様もいつもの寅さんとは一味違う可笑しさがありました。特に芦屋雁之助と寅さんの二人がそれぞれの男の道を語り合う別れ際はいいシーンでした。 [DVD(邦画)] 8点(2010-04-20 20:45:00)(良:2票) |
1631. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
高層ビル火災の物語と並ぶ35年以上前に作られたパニック映画の傑作です。この船に乗り合わせた人間味あふれる牧師、アクの強い刑事と元娼婦のその妻。そして子供たちや老夫婦や名も無き人々の見事な人間ドラマです。ビルからあっという間に転落していくのと違って死に行く人たちの最後の表情と言葉、行動が胸を打ちます。そして迫り来る水から必死に逃れようと脱出を試みる人々を過剰な演出や音楽や特撮だけでなく、生命の危機に立たされた極限状態の「人間」というものを登場人物を絞って見事に描ききった脚本が素晴らしい。特に終盤、牧師が神に向かって思いをぶつける台詞と彼のとった行動には感動しました。主役のジーン・ハックマン演じる神父やアーネスト・ボーグナイン演じる刑事は勿論の事、この二人と比較すると大人しく地味ながらもレッド・バトンズ演じる男の終始冷静な精神的な強さも印象に残りました。互いを思いやり助け合う精神や、生き残る人も死に行く人も人間の強さや勇敢さを一貫して描いた素晴らしい人間ドラマです。 [DVD(字幕)] 9点(2010-04-19 21:15:41) |
1632. フラッシュダンス
懐かしいですねえ・・・。 大ヒットしたアイリーン・キャラの“what a feeling”にマイケル・センベロの“maniac”とか、ベストヒットUSAなんかでかなりヘビーローテーションで流れていたし、この頃からかな。この手のジャンルの映画の主題歌や挿入曲のPVに映画のワンシーンを挿入するという手法も多く見られましたね。自分の住む街に映画館が無い田舎住まいでまだ映画館に行くにはちょっと早かった頃なのでその後レンタルビデオか何かで見たのだと思いますが、80‘sテイストたっぷりの音楽やダンスは今観直すと感動的なまでに懐かしさを感じる映画です。 [DVD(字幕)] 5点(2010-04-17 21:33:24)(良:1票) |
1633. ナチュラル
《ネタバレ》 本作のレッドフォード、年を取り過ぎて見えるというのも一理あると思います。しかし、夢半ばで銃弾に倒れた男が事件の後遺症が残る体で30半ば、引退を考えてもいい歳になって苦難を乗り越え夢の舞台にカムバックする。僕にはそんなロイ・ハブス・ストーリーと本作のレッドフォードはとても良く合っているように思えました。 ロイ・ハブス自身の人生も、鮮烈なデビュー、スランプ、体の不調、八百長、そして最後の試合と短い現役生活も山あり谷あり。しかし苦難を乗り越え夢を追いかける男の生き様が爽やかで感動的な野球映画でした。 何が書かれていたかは語られなかったものの観る者にその文面が伝わってくるような手紙、そして想像通り、いや、期待通りと言いたい見事なホームランとその後の演出、そしてちょっとだけしか見せてくれませんが、それで全てが伝わってくるようなキャッチボールのラストシーンとレッドフォードの表情が実に爽やかな余韻を残してくれます。 冒頭で汽車を追いかけてくる少年にボールボーイの少年、スタンドで目を輝かせ憧れのメジャーリーグを見つめる少年達。こうして少年達が野球に魅せられ、バットを置く者もいれば彼の姿を見てメジャーリーグに憧れ、そして次の世代に受け継がれていく。そんな少年達の表情も心に残る野球映画でした。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-16 22:17:48) |
1634. ノックは無用
マリリンの演じる役が痛々しくて観ていてちょっと辛かった・・・。やっぱりマリリンには明るい役が似合うしコメディが似合いますねえ。マリリン演じるネルのある事情に端を発する精神的な不安定さが話の軸となるサイコサスペンスですが、マリリンと少女、マリリンとウィドマークのドラマをもう少し時間をかけて描けばもっと怖い映画になったように思います。80分に満たない時間の中にウィドマークとバンクロフトの二人のもう一つのドラマを詰め込み過ぎたかもしれない。これがアン・バンクロフトのデビュー作だったんですね。バーで歌う彼女が魅力的でしたが、もしバーで歌う役がマリリンで(これも観たかった気もする・・・)マリリンの役をアンが演じていたらどんな映画になっていたでしょうか。 [DVD(字幕)] 5点(2010-04-13 21:48:19) |
1635. オズの魔法使
夢があって、ユーモアがあって、綺麗で、これが本当に70年前の映画ですか!?って言うほど今観ても本当に綺麗です。ドロシーが家のドアを開けた外には色鮮やかな世界が広がっている。この瞬間は今観ても感動的ですらあります。その瞬間から観ている子ども達はワクワクドキドキしながらドロシーと一緒に魔法の国を冒険する。そして大人達は童心に帰る。カカシさんにブリキ男に臆病ライオンといったドロシーと共に冒険する楽しい仲間達も、名曲“over the rainbow”にその他の楽しい音楽も歌も踊りも、作品のテンポの良さも驚くべきクオリティの高さです。そしてジュディ・ガーランドの魅力。彼女の存在抜きにこの映画を語る事は出来ません。セットも着ぐるみも古臭さを感じさせないし決してチープなんかじゃない。全てに感じさせる温もりのある手作り感がいいんです。「時の流れもこの物語の魔力は消せません。子供心を忘れていない人と子どもたちにこの映画を捧げます」という冒頭の語りがこの映画を見事に言い表しています。 [DVD(吹替)] 10点(2010-04-10 22:22:12)(良:2票) |
1636. 人生は、奇跡の詩
《ネタバレ》 まあ、ツッコミ所満載で無茶苦茶な映画なのかもしれないしロベルト・ベニーニ演じる男も無茶苦茶な男。前半のドタバタ・ラブコメも後半の戦争を背景に愛する人のために危険を顧みず奮闘する姿も、ベニーニと言えば誰もが思い浮かべる「ライフ・イズ・ビューティフル」と基本線は同じ。全編にわたりベニーニ芸が炸裂しまくりの映画で、それが苦手な方にはきつい映画かもしれませんが、映画で見せるこの無邪気さ、天真爛漫さがロベルト・ベニーニという人の魅力であり、本作の魅力でもあるのでしょう。オープニングから前半は本人自ら出演して歌うトム・ウェイツの歌が効いています。あの独特の歌声には人の心を和ませ癒してくれる温かさがありますね。そしてあのネックレスがそうなりますか!という優しいラストは好きです。そこに重なる作品を締めくくるトム・ウェイツの歌もやはり素晴らしいです。 [DVD(字幕)] 6点(2010-04-09 23:23:16) |
1637. 追憶(1973)
《ネタバレ》 昨日の午後仕事でお客さんと一緒に入った喫茶店で“the way we were”がかかっていた。無性にこの映画が観たくてたまらなくなり借りてきて本当に久しぶりに観ました。 学生の頃深夜にTVで観た。あまり好きにはなれなかったのを覚えている。あのカッコいいレッドフォードがどうもカッコ良くない。バーブラ・ストライザンド演じるケイティも好きになれなかった。しかし、今観直すとそれも含めていいのだと思ったし十分感情移入して観る事が出来た。二人の人生を時には駆け足で見せる場面もありますが、雑になる事無く、いつの時代も実に丁寧に作られています。 互いに愛し合っていながら一緒に生きていく事が出来ない。そんな二人の思いを感じさせるラストシーンが素晴らしい。「奥さんを連れて遊びにいらっしゃい」「そうはいかん」そして身を寄せ合い、別れ行く。精一杯強がるケイティとそれを理解した上でのハベルの二人の姿があまりにも切なく、そこにあの主題歌が重なる。人生とは時には甘くもあるが時には何と切なくほろ苦いものか。確かに中盤のケイティの人物描写は観ていて疲れる部分もあるし政治的要素がもう少し控え目でも良かったかな、とも思いますが終盤からラストの見事な流れにそんな感想も忘れさせてくれます。そして「追憶」という邦題が見事だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-08 14:29:31)(良:2票) |
1638. ニノチカ
《ネタバレ》 資本主義と共産主義の対比を難しく考えさせることなく非常にシンプルに解り易くした事が本作にとっては余計な事を考えずに楽しめるという意味では良かったと思うし、所々でビシッと印象に残るいい台詞が挿入される脚本は顔触れを見ると流石と思わされます。ニノチカが3人組の前に初めて登場して暫くはまさにイメージ通りのグレタ・ガルボ。その伝説の大女優グレタ・ガルボの表情に変化が生じていく様子と、同時にバリバリに共産主義で固めたニノチカの心に変化が生じていく様子を同時進行で見せる。序盤からいい味を出していた3人組が中盤にその存在感が薄れてしまうのが残念ですが、帰国後のニノチカと再会した3人組の楽しそうな夕食と祖国にある息苦しさを感じさせる場面がいいですね。「思い出までは検閲できない」という台詞が特に心に残りました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-04-06 20:48:06) |
1639. NINE(2009)
《ネタバレ》 勿論本作はミュージカルですが、あまりミュージカルを観ているという気分にならなかったです。話の途中には主人公が挫折したり、色々苦労が描かれる事があってもミュージカルの登場人物には明るく元気であって欲しいしラストも大団円の大ハッピーエンドがミュージカルには似合うと思います。しかし本作は主人公のグイドをはじめ、登場人物が疲れて悩みを抱え過ぎていているように感じました。個々の歌とダンスのパートは迫力もあり素晴らしかったと思うのですが、それだけに歌、ダンスに回想シーンなど色んなシーンをはさみ過ぎていたように感じられたのが残念。やっぱり歌とダンスのシーンは余計なシーンをはさまず通して観たかったです。映画の舞台は60年代のイタリア、チネチッタ。ソフィア・ローレンの全盛期ですね。それから年月は流れましたが、久々にソフィアの健在ぶりを観る事が出来たのはとても嬉しかったです。 [映画館(字幕)] 5点(2010-04-02 19:20:53) |
1640. 世界の始まりへの旅
《ネタバレ》 イタリアの名優マストロヤンニの遺作。演じる役はポルトガルの老いた映画監督、マノエル。これはマノエル・デ・オリヴェイラ監督の分身というべき役。マノエルは3人の男女と車に乗り込み、記憶を辿り人が自らのルーツを辿っていく旅に出る。旅の先々で幼少の頃、若い頃を振り返っていくマストロヤンニの非常に静かな演技が味わい深い。訪れる思い出の場所は今では朽ち果てた廃墟となり走る車の前に広がってくる景色が映し出される事は無く、カメラはリアウィンドウから後方に遠ざかっていく景色を捉え続ける。遠くに過ぎ去った過去を振り返る旅であるとともにこの旅の目的地はマノエルの同行者のフランスで暮らす男が初めて訪れる彼の父の故郷。今の自分が存在する始まりの地。これはまさに自らの世界の始まりの地への旅。そしてオリヴェイラ監督の平和への祈りや、老いや死を意識させる台詞が随所に登場する。オリヴェイラ監督、この時89歳。しかしオリヴェイラ監督は2009年にも映画を撮っているようですし100歳を超えた今なお現役。まだまだ現役で映画を撮り続けて欲しい。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-01 19:16:25) |