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Сакурай Тосиоさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 250
性別 男性
自己紹介 サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。
評価はもちろん主観です。
評価基準 各2点ずつで計10点
1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか?
2.視覚的に何かを象徴できているか?
3.プロットの構成は適切か?
4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか?
5.作品のテーマに普遍性はあるか?

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161.  キラー・インサイド・ミー
この映画のケイシー・アフレックはしゃがれた声の感じがなんとなくマーロン・ブランドっぽいですね。胡散臭い雰囲気はいいんですが、原作のルー・フォードのぱっと見では誰からも好かれる男という点が表現されてないので女性から好意を持たれる説得力がないです。暴力シーンは忠実に再現してますが、映画独自の解釈のようなものもありません。そもそもジム・トンプスンの作品って話自体は行き当たりばったりで破綻していますから、原作小説なんてゲラゲラ笑いながら読むもんでこんなに真面目に映画化しても面白い話じゃないと思います。幼少期のトラウマが原因の狂気の世界なんて今の時代には陳腐化しちゃってるのがありありとわかっちゃいます。中途半端なモノローグの使用は映像の力に対抗仕切れていません。濃厚な一人称の語りを三人称として語られる映画に移し替えるのはやっぱり難しいです。
[DVD(字幕)] 4点(2023-05-29 23:32:36)
162.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
セルジオ・レオーネ作品の中では一番ドラマ性が薄い作品です。娯楽映画ならテンポよく進めればいいのに何の意味もなくワンシーンがしつこく引き伸ばされる上、本筋と関係のないエピソードまで挿入されるので正直ダレます。夕陽のガンマンを見た後だとところどころで前作夕陽のガンマンのロケ地と被ってるので安っぽく見え、リー・ヴァン・クリーフが単純な悪役を演じている姿にもがっかりします。冒頭の殺されるメキシコ人一家が生き残りもいるのにその後全く話に絡まないのは普通に構成上の失敗ではないでしょうか、例えばトゥーコの家族として設定するだけでもラストの決闘にドラマ的深みが出たと思います。トゥーコの兄の神父や無意味な橋の奪い合い等ドラマチックなエピソードもあるにはあるのですが所詮サブエピソードでしかなく、この辺でブロンディとトゥーコの友情を描いておきながらラストの展開がああなるのも違和感があります。全体として個々のエピソードの繋がりが弱くつぎはぎのような構成は平凡なテレビドラマに近いとすら言えます。カルロ・シーミの衣装は砂漠のシーンでのトゥーコのピンクの日傘などいいものもあるのですが、今回は戦争ものということで時代考証を優先したのか地味でいまいちですね。結局この映画の価値はエンニオ・モリコーネの音楽のための壮大なミュージックビデオという点に尽きるのではないでしょうか。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-05-28 22:42:20)
163.  スリ(1959)
罪と罰の映画化であるということは知ってたのですが、本当にそのまんまなシーンが出てくるので笑っちゃいますね。そもそもロベール・ブレッソンがフョードル・ドストエフスキーの作品に惹かれる理由がよくわかりません。饒舌で大袈裟な台詞が特徴の小説家と抑制された台詞と動きが特徴の映画監督は明らかに真逆の存在です。もちろん才能のある作家は影響を受けたからと言ってそのままコピーしたような作品を作ることはしないでしょう。しかしそもそも原作のテーマをロベール・ブレッソンはどのように理解してたのでしょうか。多様な解釈ができる作品ですが私は次のように解釈しています、人が一人でいるのは良くない、そして人が本当に一人になることは決してない。この映画で単独犯ではなく集団犯罪が描かれるのには違和感を覚えます、社会から孤立してしまった人間というテーマから外れてしまうからです。完成された美学の世界として楽しむにはこの映画は現実に近すぎ、逆に現実を見出すには人工的すぎます。感情表現を抑えた演出というのは普通は制約としてしか機能しません。それが活きるジャンルはコメディです。フョードル・ドストエフスキーの小説も喜劇的作品として理解されることが多いです。しかしロベール・ブレッソンの作品はクスリとも笑わせる気がありません。ピンボールで反射神経を鍛えるとかギャグシーンとしか思えないのですが、至って真面目なシーンのように出てくるのでズッコケるしかないです。
[DVD(字幕)] 5点(2023-05-28 00:01:46)
164.  ルルドの泉で
観光化された巡礼に対する皮肉なのでしょうが、この映画自体が半分ぐらいはただの観光映画な感じで笑えないです。ロングショットであまりカットは割らず大きな起伏もなく淡々とした展開、このスタイルは却って心地よさと安心感を与える方向に機能しています。宗教的テーマを扱うなら現代の社会問題とぶつけて格闘させるぐらいでないと真剣に鑑賞する価値がある物語にはならないと思います。20世紀の偉大な映画作家はそういうことをやっていたというのに、神のきまぐれさのような19世紀でも可能なテーマだけで一本の映画を成立させるのは怠惰の極みです。現代なら本当に観光目当てでしかない非キリスト信徒のアジア人を主役にするぐらいのことはやってもおかしくはないでしょう。必要なのはアヴェ・マリアではなくいっそ軽薄な商業音楽を流す覚悟です。この映画は観客に解釈を委ねる以前の問題として作家側の態度が優柔不断過ぎます。
[DVD(字幕)] 4点(2023-05-26 22:50:03)
165.  夕陽のガンマン
何よりこの映画はファッションがいいですよね、脇役に至るまでとても野蛮な連中とは思えないほど(笑)見事な着こなしと小物へのこだわりだと思います。さすがイタリア人の映画といったところでしょうか。殺伐とした金の奪い合いでありながらオルゴールの音色が示すように物語の底には哀しみが流れています。大切な人がいなくなってしまった世界で自分はどう生きればいいのか、それがこの作品以降のセルジオ・レオーネ作品に通底するテーマです。モーティマー大佐(リー・ヴァン・クリーフ)もインディオ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)も本当は金のことなんてどうでもいいのです、彼らは己の欲望に突き動かされて行動しているわけではありません。金よりもずっと大事な人が死んでしまった後では賞金稼ぎも強盗稼業もすべては暇つぶしの戯れでしかなく、だからどこか大人が子どもじみた悪ふざけをやっているような感覚が付きまといます。そうした諦観があるからこそ、この映画は大人の寓話であり続けていると思います。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-25 23:41:45)(良:2票)
166.  二十四の瞳(1954)
単にノスタルジックな名作を期待していると結構えぐい描写があって驚く映画ですね。冒頭から子どもたちが前任の女の先生を泣かしたことを語り合う、自転車に乗り洋服を着ているというだけで奇異の目で見られてしまう、子どものしたこととはいえ落とし穴でアキレス腱を断裂させてしまうのは微笑ましいいたずらでは済まないちょっとシャレにならない展開です。確かに小豆島の風景は美しく撮影されているのですが、島民はよそものに対して冷たい人間として描かれており小豆島はこの映画を島の広報に使ってイメージ的に大丈夫なのかとすら思ってしまいますね(笑)。現代の視点から見直すとテーマとしては単純に貧困というよりも女性が働くこと・学ぶことの困難が描かれているという点に注目するのが重要ではないでしょうか。そういう観点で見ると物語が戦時中に突入すると高峰秀子は働く女性ではなく家庭の母親としての立場が強調されすぎており、反戦メッセージは大事なことではあるのですが枠にはまったつまらない描写になってしまっていると言えなくもないです。原作小説を確認してみると印象的なシーンや台詞はほぼ原作にもあるものばかりで木下恵介は脚本ではなく脚色とクレジットされているのは納得です。そのため原作者壺井栄の功績が大きな割合を占めるのは間違いないですが、木下恵介は間違いなく最高の映画化に成功しています。全編に渡って既成楽曲とそのアレンジが使用されているのは現代映画では珍しいことでもないのですが、当時においては世界的にもあまり見られない例ではないでしょうか。確かに流される童謡や軍歌はあくまで時代を象徴する古臭いものですが、この映画の音楽の使い方は時代を先取りした演出だと思います。1954年の日本映画としてはゴジラや七人の侍の陰に隠れてしまっているのはオリジナル脚本ではないという点もあるのでしょうが、意外と現代的なテーマも含まれていますので忘却されてしまうのは惜しい作品です。
[インターネット(吹替)] 8点(2023-05-24 23:49:23)
167.  君の名前で僕を呼んで
アメリカ人(フランスとの二重国籍)が主演し、アメリカ人が脚本を書き、タイ人が撮影し、イタリア人が監督した映画。この中だとイタリア人の仕事にいまいち褒めるところが見つかりません。現地の人間ですからロケーションに貢献したぐらいでしょうか。いくら二人の世界が中心になりがちなジャンルとはいえ主役二人以外に印象に残る人物があまりいません。終盤の父親の語りのシーンはいいと思いますが、それも普遍的な人生訓というよりはあくまで二人の儚い世界を彩るためのものでしかないと感じてしまいます。深いテーマを求めるような映画ではないんでしょうけど、ストーリーも映像も綺麗以上の感想は出てこないです。とはいえ全体的に健康的な雰囲気なのは好きです、人間の醜さも全く描かれず地上の楽園にいるような気分に浸れます。こういう同性愛を描きながらも安易に劇的な展開にしない映画も作られる意義はあるんでしょうね。単純にティモシー・シャラメの美貌を堪能しようとしてもアップだと意外と髭が目立つショットがあるのでちょっとがっかりしちゃいますね(笑)、お相手のアーミー・ハマーがおじさんというのもなんだかなあ。斬新な映画というより少年愛も含めてヨーロッパの美の伝統を尊重している部分が評価されてそうです。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-05-23 22:33:36)
168.  夜を走る
潤いなく乾いている空気感、それは登場人物の心理から映像・音響においてまで徹底しています。終盤になって現代日本版のタクシードライバーをやりたかったんだろうなと気づきました。展開は筋道立った構成というより行き当たりばったりと感じます。死体やスマホ、拳銃といった要素が物語にほとんど影響していません。ラジオの天気予報、アメリカの銃乱射事件や地震の話題、何か致命的な出来事が起きそうな、しかし結局何も起きないような徒労感を表現したかったのでしょうからこれはこれで正解なのかもしれませんが、ほとんど伏線回収を放棄したような構成は実は駄作ギリギリかもしれません。もう少しテンポが良くてはっきりとしたテーマがあれば広く評価されたと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2023-05-22 22:54:07)
169.  こちらあみ子
物語自体は暗いものでもシュールでコミカルと感じさせるバランス感覚が絶妙ですね。序盤から何となく相米慎二監督のお引越しを思い出しながら見ていたんですが、ラストの水場のシーンを見る限りこれは明確にオマージュしているのではないでしょうか。カメラワークもロングショットの長回しが目立ちますが技巧そのものが突出しているわけではなく好感を持てる一方、もうちょっと凝った演出も見たかったと物足りなさを感じなくもないです。大沢一菜の演技は田畑智子を超えてるかもしれませんね。お引越しのラストは少女の成長を象徴したシーンという見解が有力なようですが、この映画はそれとは真逆のどんな経験を経てもそれを糧とすることができず成長することができない性質として生まれた人間の至る悲劇と言えます。そしてそれを正当化するわけでも悪いものと糾弾するわけでもなく、自分は自分なのだからただそういうものとして受け入れて生きていくしかないのです。
[DVD(邦画)] 7点(2023-05-21 23:14:51)(良:1票)
170.  ノースマン 導かれし復讐者
ロバート・エガース監督の前作ライトハウスは大した内容もないのに無意味に難解ぶったつまんないアート系映画としか思えずこの映画も全然期待していなかったのですが、今回は下手に捻ったところのない王道の復讐劇で普通にエンターテイメントとしても楽しめる作品に仕上がってますね。アイアムユアファーザーならぬアイアムユアソン、クライマックスの決闘はシスの復讐ばり。ハムレットっぽい展開だと思っていたらハムレットの元となった伝説の映像化なんですね。個人の意思ではなく運命によって駆動する物語、下手に現代的なテーマや視点は持ち込まずに神話の世界を忠実に再現しています。寒々しいモノクロに近い世界に炎の暖色が映えて美しい映像です。妙に芝居がかった台詞に単純な心理描写は冷静に考えるとなんてバカバカしいんだろうとも思えてきますが(笑)、こういう古典劇のような現代人の感覚から距離が取られた作品でしか味わえない感動もあります。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-20 21:48:53)
171.  ケイコ 目を澄ませて
フィルム撮影で若いかわいそうな女性が主人公、この映画の情報を見た時おじさんウケ全振りみたいな映画だなあと思いましたし実際に見てもその印象はむしろ強まるばかりでした。黒背景白文字の字幕は聴覚障害者だからサイレント映画オマージュってわけですか、安直な発想ですね。聴覚障害者やコロナ禍を題材にしてるだけでやってることは明確なストーリーやメッセージがあるわけでもなく閉じた人間関係の中で淡々と丁寧な日常描写を重ねるってよくあるパターンです。聴覚障害へ無理解な人間を登場させたところで明らかに今いる場所に居心地よく安住している人間が作っている作品です。一番劇的な展開が障害者本人に関わることではなく所属してるコミュニティの危機というのもおかしいですよ。しかもそこが戦前から続く日本で一番古いジムというのがいかにも権威主義的です。父親的存在に最後まで依存し続け変化することをネガティブに描き、内は味方で外が敵という発想しかない。こんな保守的なだけの映画が過剰に評価されていると日本映画はますますダメになると思うのではっきり批判しておきます。
[インターネット(邦画)] 3点(2023-05-19 22:37:22)
172.  エルミタージュ幻想
普通の劇映画やドキュメンタリーならば美術館を通してそこに集まる人間や社会を描くのでしょうが、この映画は実際に美術館を巡っている時の感覚を再現することが一つの目標であるように見えます。この映画自体が一つの美術館のようです。歴史上の人物が登場するのもロシアの歴史を描くことが主目的というよりは、ロシアの歴史と共に歩んできた建物を巡っていると自然と歴史の風景が頭の中に浮かんでくるような感覚を映像化したのだと思います。歴史の負の側面にはあまり触れられず美的な側面ばかりが描かれるのも19世紀以前の文化の傾向を反映しているのではないでしょうか。単なる劇映画とは違う仕掛けの作品として成立させるために1カットで撮ったことにはある程度意味があるのでしょうが、それでも全シーンワンカットというのはあまり面白い技法やスタイルの選択ではないと思います。やはり複数カットによる多角的な視点があるからこそ映画は面白いのではないでしょうか。この映画も客観的な視点を提供してくれる案内役のフランス人がいなければずいぶん退屈なものになったはずです。最近は編集で疑似的にそう見せかけたものも含めて全編ワンカット映画の大安売り状態というありさまで、歴史的意義はあってもその価値は年々減少していると言わざるを得ないでしょう。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-05-18 23:27:04)
173.  アスファルト(2015)
古くはジャック・タチ、最近だとアキ・カウリスマキあたりのよくあるオフビートコメディ、もちろん先人のようにガチガチに凝った画面構成ができているわけでもなく、なんかこういうのはクスリと笑えるだけで二番煎じというのもあってあまり楽しめないです。そもそもこういうオフビート演出って劇的なシーンを何でもないように撮るから面白味が生まれるのであって本当に何でもないようなシーンを何でもないかのように撮っても何にもならないのではないでしょうか。エレベーターの故障にしろNASAの宇宙飛行士にしろ思いついたエピソードを放り込んだだけという感じでそれらが絡み合って盛り上げる展開にしないのはダメでしょう。こういうオムニバス形式の映画ってたいてい佳作どまりで傑作は生まれないと思います、構成しようとすることを放棄していますから。劇中に他の映画のワンシーンやポスターが挿入されるあたり、映画好きの監督が題材への興味よりも好きな映画の演出を真似てみたいというモチベーションで作っているように見えます。なんか悪い意味で日本映画っぽいです。もちろん大半の日本映画よりは上手いし様にはなっているんですけど、まあどこの国でもこういうタイプの人間はいるんだと勉強にはなります。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-05-17 22:58:13)
174.  宇宙戦争(1953)
二度の大戦の白黒フィルムを映した後に色彩豊かなオープニングクレジットが始まる、ここが一番盛り上がりますね。しかしいざ本編が始まるとやっぱり時代は感じさせられる作りで、SF映画の地位も低かった時代ですからあんまり予算もかけてなさそうです。序盤から当時の平和な日常の描写を見せられるわけですが、これが今ではあまり共感できるものではなく面白くもない。戦闘が始まると面白くなるかというとこれまた人間側は基本平和主義者で敵は非情、油断していると痛い目に会うぞというメッセージなんでしょうがかえって緊張感と現実味に欠ける描写です。終盤核攻撃が通用しなかった後の避難する群衆の描写は屋外での撮影を交えているので映像にリアリティがあり悪くないです、さすがにこの辺りになると絶望感も感じられます。全体的に誰が主人公で何がテーマなのかよくわからない構成です、科学や軍事ものかと思いきやなぜか創造主賛歌に帰着します。後のSF映画への影響はわかります、アメリカ以上に日本の東宝特撮映画への影響が甚大かもしれませんね。写真が映されるだけですが東京タワーの前にエッフェル塔がへし折られていたとは思わぬ発見でした(笑)。円盤と火星人のデザインは素晴らしいです、機械と生物が一体となったような姿はとてもこの時代のセンスとは思えません。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-05-16 22:24:29)
175.  私の殺した男
フランソワ・オゾン監督のリメイク版があったので見てみましたが、リメイク版ですら現代の映画としては素朴すぎる内容と感じたものですからやっぱりオリジナル版を見ても印象は変わりませんね。冒頭はいいですね、戦争が既に忘れ去られつつある社会の描写、しかしそれ以降は戯曲が原作なためかほとんど舞台劇のように登場人物も少なくなり演出も演技も大袈裟に感じられるばかりです。ドイツ人だからベートーベンにビールって…この時代には説得力があったのかもしれませんが今だとコメディのようにも見えてしまう描写です。物語としては主人公が勝手に自己完結していて他人にちゃんと向き合っているように見えません。せっかく許しを与えてくれた神父に逆ギレする一方、ドイツ人の家族へは許しを求めるなんて自分勝手すぎではないですか。周りはみんな許してくれるのに自分が自分を許せないだけなんてずいぶん贅沢な悩みですね。この主人公で説得力のあるストーリーを構築するならもっと社会の厳しい目を描く必要があると思います。フランス人とドイツ人の対立というテーマは第二次大戦以降ではほぼどうでもいいものになってしまいました。対等な者同士が殺し合えたある意味幸せな時代の産物です。本当の戦争の悪とは不平等にこそあるのでしょうから、この作品はどうしてもおとぎ話のように感じてしまいます。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-05-15 22:59:29)
176.  シティ・オブ・ゴッド
撮影と編集は世界レベル、映像に全く安っぽさはなくポップでテンポよく面白いです。ブラジルという多人種国家の国柄もあるのでしょうが、2002年の時点で多様な人種を安易に対立構造にはめることなく、何ら特別なものとしても描かず自然に登場させているのも大したものです。しかし技術的に優れており現実をありのままに映すことはできても、この現実の前に監督がどう思っているのかがいまいち伝わってこないのです。フェルナンド・メイレレス監督は優秀な職人監督ではあっても、一貫したテーマや作家性を反映した作品を作っているようには見えません。先に述べたように人種的多様性や国際性への志向はあるようですが、それが画面の細部には反映されても物語の本筋にはあまり関わってこないのです。良いも悪いも原作や題材次第、それがこの監督がこの作品以降いまいちパッとしない映画ばかり撮っている原因だと思います。意外とアメコミ映画あたりを撮らせたらいい仕事をしたかもしれませんね、もうそんな機会もなさそうですが。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-05-14 23:20:12)
177.  メメント
この映画が高く評価されるのは単に構成が練られたミステリーというだけでなく、現実というものに対して人間が持つ認識の再現に成功している点にあると思います。私たちは劇中の主人公のような症状がなくとも日々の生活の中で自分の記憶を信じられずにメモを取ることは珍しいことではありません。一瞬一瞬の現実はそれぞれバラバラの断片でしかなく後からそれをストーリーとして再構築しているわけです。そうした感覚は時代の経過によって古びるどころかインターネット時代になってより高まってすらいるのではないでしょうか。クリストファー・ノーラン監督の作品に関してはむしろ近年の方がフィルムやCGを使わないというこだわりも含めて古臭くどこか時代からずれてきている印象を受けてしまいます。最近の作品がどこか違和感を感じさせるものになっているのはCGを使わないことによる映像の真実性への追求と、記憶や時間軸の不確かさへのこだわりといった作家性が矛盾していることが原因ではないでしょうか。せっかく過去を舞台にしたダンケルクでも記憶と記録の不確かさをテーマに据えずに安直に時間軸操作を加えただけの作りになっていたのにはがっかりでした。ダークナイトが成功して下手に大作志向になってしまったのはこの監督にとって不幸なことだったのかもしれませんね。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-14 21:36:04)
178.  ソウ
懐かしいですねー昔はこんなの流行ってましたねー、でも残念ながら時代を越えて評価される名作になれる作品ではないですね。シンプルに内容はセブンやキューブの二番煎じでしかないですからね。後の作品群を見てもジェームズ・ワン監督は手堅くまとめる秀才であってもオリジナルな作品を生み出す天才とは言い難いですし。リアルタイムで流行っただけでも十分なんでしょうけど、今だとこういうジャンルでも設定や伏線に凝ったり露悪的に人間のグロテスクな側面を見せるだけでなく社会性のあるテーマや丁寧にドラマを構築することを求められるはずです(今はそうであるというより昔から名作というのはそういうものだったという方がより正確かもしれませんね)。昔は私も多くの人間は生に感謝しないなんて台詞に人生の真理を見出したりもしましたが、それを実感するためにこんなサディストのゲームに付き合う必要なんてありませんよ、馬鹿馬鹿しいの極みです。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-05-12 22:50:01)
179.  ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
一言で言うと説明不足の映画です。なぜ土管が異世界に繋がっているのか?あのブロックは何なのか?キノコを食べるとなぜ強くなるのか?なぜキノコやゴリラの王国があるのか?なぜ亀が世界を支配しようとしているのか?ゲームの時点でそういうものだからこれでいいのだ、いちいち考えるものではない、第一説明していたらテンポが悪くなるじゃないか。マリオを知らない人間はいないと言っても過言ではないのですからこのアプローチも十分通用します。しかしこうした細部の設定を考証することで作品に奥行きが生まれると思います。それに考えてみてください、私たちはそもそもいったいマリオたちの何を知っているというのでしょうか?ただゲームをプレイしているだけでは多くのキャラクターたちの内面や世界の成り立ちまで理解することは難しいはずです。ゲームをプレイするのではなく、物語を鑑賞するという体験の強みは個々のキャラクターの理解をより深めることができるという点にあるのではないでしょうか。今までゲームでは描かれてこなかったマリオたちがブルックリンで暮らしている描写をわざわざ入れたのもそのためでしょう。マリオの嫌いな食べ物や家族構成をいったいこの映画を見るまで誰が知っていたのでしょうか?クッパはなぜ弾き語りをするのか、コング族はなぜカートを製造しているのか、残念ながらこれらの要素は脈絡もなく唐突に出てくるのでキャラクターたちの理解を深めるというよりはむしろ違和感を感じさせるものです。ただキノコ王国でピーチ姫がプリンセスとなったきっかけが語られるエピソードはとても良いと思いました。オリジナルのゲームで感じていた違和感を解消させるものです。やりすぎると1993年の実写映画版のような作品になるとはいえ、あのキャラクターやゲーム中の要素は実はこうだったというような設定の深掘りがもうちょっと欲しかったです。あっそういう意味では青甲羅の彼は最高でしたね。
[映画館(吹替)] 5点(2023-05-11 23:47:18)
180.  聖闘士星矢 The Beginning
聖闘士星矢については全く知識がない状態で見ましたが、設定というか作品のテーマがよくわからないまま映画が終わりました。初見の人間におススメできる作品ではないという点では良くない映画化だと思います。原作をハリウッド映画の鋳型に流し込んだだけの作品という感じです。冒頭の赤と緑の照明の地下闘技場とか具体的な作品名は思い出せないのに何十回も似たようなものを見せられた気がします。適度に会話にユーモアは入れときましょう、ここら辺で登場人物に共感できるシーンを入れときましょう。まあさすがにハリウッドが長年培ってきた王道作劇です、大して惹きつけられるものがなくとも飽きずに見られます。しかし別に面白いわけでもないです。マッケンユーの戦い方はダンスと揶揄され、男かと思ったと皮肉を言われるのはアジア人へのステレオタイプな認識という感じです。壮大な親子ゲンカはよく見るのですが夫婦ゲンカは珍しいパターンかもしれません。マッケンユーは顔にいくら打撃を受けても傷一つなく綺麗なままです。そこに唯一スタッフのこだわりのようなものは感じられましたが、ただレイティングの問題なだけな気もします。
[映画館(字幕)] 5点(2023-05-10 23:01:19)
041.60%
172.80%
2114.40%
32811.20%
43614.40%
56224.80%
64819.20%
72710.80%
8197.60%
952.00%
1031.20%

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