1. 資金源強奪
刑務所に収監されるまでの一気呵成の展開は苦手な深作監督テイストで冷めた目で眺めていました。そこから結末まで一瞬たりとも目が離せず、大藪晴彦作品を思わせる女に溺れない清元武司(北大路欣也の肉体美とギラギラ発散するオーラに惚れ惚れ)と黒川博行作品を思わせる軽妙洒脱な能代文明(梅宮辰夫の味わい深い演技に北大路欣也以上に惚れ惚れ)を軸にキャスト全員が躍動していました。ギョッとした空港シーンでの結末もお見事。大傑作。 [DVD(邦画)] 10点(2019-05-15 19:37:35) |
2. カッコーの巣の上で
初見は中学生。正義面して人の心まで意のままに操ろうとする婦長は長年に亘り憎悪の対象でした。何十年振りかの鑑賞でもその点は変わりませんでした。規則破りや無軌道はカッコいい事ではありません。しかし、規則やシステムが人間性が置き去りにされたものであり、管理者が被管理者を見下している世界、小は家族から大は国家まで、は正常ではないと思います。ラストで元の日常に帰った者達と走り去っていくチーフ。行動する事の凄さと難しさを痛感させられます。本作でのめり込んだジャック・ニコルソン。今観ても最高のニコルソンです。 2022.9.27追記 ラチェッド婦長の メディケーション タ~イム 今も耳に残っています。鉄仮面が崩れたシーン 今も目に焼き付いています。 お疲れ様でした。 合掌 [DVD(字幕)] 10点(2007-03-25 02:05:40)(良:2票) |
3. 暗殺の森
《ネタバレ》 初めて観る作品で三日続けて三回観ました。普通に生きたい、皆と一緒でありたいと願うマルチェロですが、体制に、権力の中に身を置き、傍観者として自分の意志を持たず、日々流されていくのが普通なんでしょうか。保身のために、友、恩人、愛する人を裏切り見殺しにする生き方を大なり小なり誰もがしていると監督は言いたいのでしょうか。生気の失せた妻の姿、トラウマの源が生きていた事に驚愕するマルチェロの姿は、こんな生き方は普通ではないが、この生き方しかできないというどうしようもないやりきれなさを感じました。そして、この作品のワンシーンの何処をとっても絵画として観賞できるハッとする美しさ、全編に漂う妖艶さ、役にピタリとはまるトランティニャン。一回目より二回目、二回目より三回目と観れば観るほど惹きこまれました。映画は芸術でもある事を実感させてもらいました。 10点(2004-08-21 00:02:37)(良:1票) |
4. 鬼畜
ラストの親子のシーンは、自分が見た日本映画の中で最も印象に残るものである。高校生の時以来何度見ても泣けて、泣けて、泣けて・・・映画を見て涙した唯一の作品。 10点(2003-12-23 20:35:45)(良:1票) |
5. ラビッド・ドッグズ
現金輸送車襲撃強奪から若い女性を人質にとっての逃走、途中乗り換えた車には病気の子供を病院に連れて行く父親が。 そこから延々続く逃避行車中劇。博士、ナイフ、32、共に特筆ものの胸糞犯人、人質女性の恥辱に塗れた悲惨さ、唯一まともな父親の冷静さ、子供は息絶えないのか。道中出会う人々に局面打開を願う手に汗握る展開でした。 残り3分余りの怒濤の結末に心底仰天でありました。「そういうことかぁ、そういえば・・・・ヘンだったよなぁ・・・」 警察が途中からフェードアウトしてしまったのが惜しかったかな(-0.1点) 鑑賞後に知った諸般の事情で製作から25年経って日の目を見た作品だそうで。 これぞ掘出物傑作。 こういう出会いがあるから映画鑑賞は止められません。 [インターネット(字幕)] 9点(2024-02-06 02:13:44) |
6. オルカ
《ネタバレ》 題名とシャチの映画以外の知識無し。 オープニングタイトルロール、ディノ・デ・ラウレンティスを初めとする撮影、脚本、監督、音楽の名匠が居並び、リチャード・ハリス、シャーロット・ランプリング、ウィル・サンプソンという意外な組み合わせに「ええんちゃうん、これ!」座り直しての鑑賞。 妻子を目の前で殺されたオルカの復讐劇。涙を流して絶叫する姿にグッときますが、村人の生活を脅かして巻き込み、クルーを一人また一人と食いちぎり、対決せざるを得ないようにノーランを追い詰める人間並み若しくはそれ以上のやりくちに同じく妻子を失ってオルカの心情を理解するノーランに肩入れしてしまう。対決を終え涙を流し氷で閉ざされた海を妻子の元へ行くのであろうオルカに、過日のイルカ同様泣かされてしまいました。 素晴らしい脚本、これぞハマり役絶品のリチャード・ハリス、切なさをかきたてられる御大モリコーネ節。 シャーロット・ランプリングがイマイチ微妙で8点か9点迷いに迷って骨太傑作に9点。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-03-24 14:18:06)(良:1票) |
7. リトル・ロマンス
今作でオスカー受賞したジョルジュ・ドルリュー以外の知識無く鑑賞。素敵ではありましたが受賞は微妙に思えました。 トップクレジットのローレンス・オリヴィエに、当たりかもの期待以上の大当たり作品でした。 少年少女の甘酸っぱいロマンスの胸キュンもの以上に、二人の一途さに感化触発されたようなローレンス・オリヴィエ&アーサー・ヒルの佇まいが絶品でありました。 [DVD(字幕)] 9点(2023-02-11 20:16:37) |
8. テス
《ネタバレ》 観たいと思ってから40年。 この世にこんな美しい人居てるのか!ランキング第5位ナスターシャ・キンスキーは絶頂の美しさであり、ロマン・ポランスキーのS性が浮かび上がる数々の演出を受けて立つティーンエイジャーとは思えない堂々とした演技にも喝采。ポランスキー印の重厚幽玄な映像美にもウットリ。エンジェルのステレオタイプなちっちゃい男ぶりは当時の宗教観を映し出しているような。彼の苦悩が示されていないのでノコノコ帰ってきて何を今更と白けた点が残念。テスの起承転結に於いて泥にまみれて遮二無二働いている時が一番幸せに見えたのが何とも切なくラストショットにやるせなさが募ります。 貧乏暇無しで4回に分けての鑑賞となりましたが、続きを観るのが待ち遠しかった、シャロン・テートもあの世で満足しているであろう傑作。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-11-25 15:42:46)(良:1票) |
9. 女渡世人 おたの申します
《ネタバレ》 数ある切った張ったの作品の中で傑作と呼べる出来映え。渡世人としての筋を通す生き辛さ、手を差し伸べてあげた堅気のオバサン達に刺すような視線で毛嫌いされ、業火の中命懸けで救い出した赤ん坊をひったくるように取り上げられすすり泣く姿がやるせない。そんな彼女に「姐さん、やくざは日蔭の花だ。日向に咲こうなんて考えたら、てめえが惨めになるだけですよ。どんなに日蔭に咲こうが、おめえさんの花の美しさは、私にはわかっています」静かに語りかける菅原文太に鼻の奥がツーンと。渡世人としての意地を貫き通した姿は彼の言葉通りに息を呑む美しさでありました。 美しいと言えば、私的「この世にこんな美しい人が居てるのか!」ランキングはアヌーク・エーメ、ジェーン・シーモア、キャロル・ブーケ、ナスターシャ・キンスキー、ブルック・シールズでありますが、藤純子がアヌーク・エーメの次にランクインしました。 練り上げられた脚本、キャスト全員の名演、道行きシーンが無いのを始めとする大胆でキレの良い演出、お見事。拍手。 [DVD(邦画)] 9点(2022-04-10 01:04:53)(良:1票) |
10. ファンタスティック・プラネット
「時の支配者」はどうにかこうにかの完走でしたが、本作は片時も目の離せないあっという間の72分間でした。私が家に現われた虫を何も考えずに殺処分するようなドラーグ族が示すストーリー性はチェコスロバキア作品として言いたいことが曖昧なもどかしさがあります。ただ、唯一無二と言って良いビジュアルが唯々凄い! それを後押しする音楽も聴き入ってしまう素晴らしさ。全編に亘る無機質さに喜怒哀楽があってこそのこの世と思わされるものがありました。4年の月日をかけたという甲斐がある忘れないであろう傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2021-09-20 16:15:46)(良:1票) |
11. カサンドラ・クロス
《ネタバレ》 作品名は聞いた事ありエヴァ・ガードナー目当てでの初見。無情観漂う音楽でのオープニングクレジットに期待が高まり、冒頭からテロリストが列車に乗り込むまでの一気呵成の展開に、世界中の歳時記・日常を滅茶苦茶にしたコロナ禍にある現在にあって恐ろしさに息を呑みました。自国の細菌兵器戦略の過ちを列車もろとも葬り去ろうとする米国の姿並びに酷く無情な結末はカルロ・ポンティ率いる欧州作品ならではでしょう。エヴァ・ガードナー54歳のお姿は「顔パンパン、ケバッ、怖っ」(ごめんなさい)なド迫力にドン引き。彼女の若いツバメ役マーティン・シーンは坂上忍を思わせる姿。リチャード・ハリス&ソフィア・ローレンはステレオタイプなカップル役。車掌役が観たことあると思ったら5日前に観たライオネル・スタンダー。再見でやっと見つけたけれど彼女とは分からなかったアリダ・ヴァリ。刑事役が意味深なO・J・シンプソン。そして演技上、脚本上で特筆もののMIPと言える御大リー・ストラスバーグ。彼等をまとめて相手するバート・ランカスター。手に汗握る対決でした。鉄道・医化学・政治上でのツッコミどころは数限りなく。どれだけ指摘出来るか数えるのも、そこに目をつぶるのも、人それぞれの価値観考え方でしょう。私は後者で且つ大いに楽しめた傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2021-05-06 00:05:05) |
12. 恐怖の報酬【オリジナル完全版】
《ネタバレ》 2018年11月24日劇場鑑賞 1953年版鑑賞済。2018年11月にデジタルリマスター化したオリジナル完全版(監督に無断でカットした短縮版上映から40年後の本邦初公開)上映という事で駆けつけました。冒頭からエンディングまで「映画を作る狂人」ウィリアム・フリードキンの一ミリの妥協も許さないかのような気迫に圧倒されます。非道の殺し屋、外道のテロリスト、邪道の投資家、極道のギャング、4人それぞれの本国では生きてゆけなくなり肥溜めのような地に流れ着く過程を丹念に描く事で、圧巻だった300万ドルつぎ込んだという吊り橋シーンに於ける、地べた這いずり回る毎日から何としても抜け出したいという思いが浮き彫りにされます。罪に対する罰が与えられた結末はやるせないものの、やらずに後悔するよりはやって後悔したほうがマシなのだと思わされます。40年かけて復活させたフリードキンに祝辞を贈りたい傑作。 [映画館(字幕)] 9点(2021-02-28 01:58:21) |
13. マンディンゴ
《ネタバレ》 黒人奴隷の描写では鑑賞史上最狂作品で、奴隷同士若しくはご主人様と奴隷を「交配」させて出来た子供を売物にする奴隷牧場の実態を初めて知る事に。ディノ・デ・ラウレンティス、リチャード・フライシャーならではの容赦ない語り口で、その意を受けたジェームズ・メイソンの一言一句に至る最狂ぶりが空恐ろしい。皆が尻込みしてしまうであろうこのようなキャラクターを演ずるジェームズ・メイソンの貫録を思い知らされる。唯一の救いに見えた息子ハモンド終盤の大狂乱に呆然とし、積年の恨みを爆発させたかのような使用人怒りの一撃にこれまた呆然と。そこで終わってしまう演出が物足りなかったものの、ここまで赤裸々に自国の黒歴史を見せつけられては反発酷評するのも理解できる強烈過ぎる一品。 南北戦争20年前を舞台にした本作をオバマ元大統領、トランプ現大統領はご覧になったのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2019-03-04 16:19:37)(良:1票) |
14. 名探偵ホームズ/黒馬車の影
「暗闇にベルが鳴る」のスタッフが、切り裂きジャック、王室スキャンダル、フリーメイソン、政府の工作というダークな物語の雰囲気を盛り上げています。 その用意された舞台で躍動するジェームズ・メイソン、クリストファー・プラマーのお宝映像満載。 「ローマ帝国の滅亡」(1964)での共演(直接の絡みは無し)に大感激した身にとって、本作は大大大…感激。冒頭からエンディングまでこれでもかっ!という程のツーショットに夢見心地。ホームズへのとどめの一撃を間一髪で阻止して自らが刺され「犯人を追え」というワトソン。何という事はないシーンだけど、もうね・・・、子供の様に「あ~、○×△□◇・・・」興奮・悶絶状態。存在感たっぷりの70歳ジェームズ・メイソンを従えた50歳クリストファー・プラマーの喜怒哀楽豊かな表情(涙のシーンにホロリ)とキレのあるアクション、スカーフェイスの超絶オトコマエでの首相との対決、見目麗しい姿での熱演ぶりはベスト・オブ・クリストファー・プラマーと呼べるもの。 我を忘れて酔いしれた逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-11-13 23:57:41) |
15. 大地震(1974)
《ネタバレ》 登場人物それぞれのドラマが交通整理された脚本による起承転結に無慈悲に襲い掛かる天災(アカデミー視覚効果賞受賞も納得の都市崩壊模様は息を呑む恐ろしさ)が入り混じるパニックものの傑作。気骨ある男達(社長、ルー、スチュアート)はロブソン監督作キャストに相応しい。濁流に落ちたエヴァ・ガードナーと上にいるジョヌヴィエーヴ・ビュジョルドとの間で数秒間逡巡するチャールトン・ヘストンの姿が堪らなく(この表情にプラス1点)予感通りの彼の選択と二人の結末は監督ならではのもので、見殺しにしてする後悔に耐えられなかったのだろうと思うと切なさがこみ上がってきます。 似てるなぁと思ったのが本人だったウォルター・マッソーの役柄について詳細を知りたいものです。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-04 16:03:35) |
16. 真説フランケンシュタイン/北極に消えた怪奇人間!<TVM>
《ネタバレ》 2部構成3時間。1部終了時点で泣く泣く就寝。続きが観たくて堪らず仕事帰りの自転車を漕ぐ足に力が入ってしまった。苦手なホラーものでありながらジェームズ・メイソンが引き合わせてくれた本作の素晴らしさに感嘆しきり。この歳になるまでフランケンシュタインがつぎはぎだらけの怪物と思っていましたが、怪物を作り上げた医者だったのにビックリ。生み出されるまで、生まれてからヒトとしての知性を授けられ成長してゆき、ジワジワと醜くなり両者の間に溝が出来て、悲惨な結末まで。実に丹念に描かれており、おどろおどろしさとドラマの塩梅良く、レナード・ホワイティング、マイケル・サラザン、デビット・マッカラム、ジェーン・シーモア(妖美に目が眩む)、アグネス・ムーアヘッド、ラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッドという超豪華俳優陣と凝ったセットと映像美はTV作品とは思えない出来栄え。いの一番に登場したジェームズ・メイソンは分別あり気で怪しげで実は権力欲の塊のポリドリ博士(実在人物に脚色を加えている)役で要所要所に顔を出し物語に深みを加えている。生首に縋り付いて泣く姿や、天罰を受けてのあまりと言えばあまりの最期は夢に出てきそうな強烈さ。購入した甲斐のある傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-25 15:41:27) |
17. 天国から来たチャンピオン
苦手なウォーレン・ベイティ故にスルーしてきた本作。ジェームズ・メイソン目当てに鑑賞。役柄としてのみならず、俳優としてもキャストの演技を見守っている感のあるジェームズ・メイソンの極々静かな佇まいの中にある圧倒的な存在感に只々見惚れるばかり。自然と皆も入魂の演技を見せるのか、爽快で(ウォーレン・ベイティ)、クスッとさせられ(ダイアン・キャノン&チャールズ・グローディン)、ほろ苦く(ジャック・ウォーデン)て切なく(ジュリー・クリスティ)もあるお伽噺が胸に沁み入る珠玉の逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-10 00:07:03) |
18. ソイレント・グリーン
《ネタバレ》 人口爆発による荒廃しきった2022年のニューヨークを舞台にした不気味な現実味を感じるSF作品。 「田園」と共に流れる曾ては確かに存在した地球の風景を見ながら安楽死するソル。 ソーン刑事はその美しさとソルとの別れに涙しました。 私はその撮影シーン数週間後に他界したというエドワード・G・ロビンソンのキャリア最後の姿に涙しました。 共生が置き去りにされた発展の末路を見せられた傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-04-22 01:10:08) |
19. 愛と喝采の日々
特筆すべきはアン・バンクロフトの美しさで一目惚れ分+1点。エマとディーディーのエミリアを巡る確執に、スターになった者となれなかった者、母親になった者となれなかった者が、それぞれ自分で選んで歩いてきた道を振り返り後悔と嫉妬で身悶える虚しさを見せられます。バレエのレッスンシーンや舞台シーンの格調高さと肉体美の極みに惚れ惚れしました。 [DVD(字幕)] 9点(2017-08-31 16:17:34)(良:1票) |
20. 離愁(1973)
《ネタバレ》 戦火から逃れる疎開列車の道中譚が物語の大部分を占める。死と隣り合わせの緊張感が絶えず続く中で生まれた束の間の恋が丹念に描かれている。妻子と同じ客車に乗れていたならアンナに惑う事もなかったのに。長男誕生を受けてジュリアンのもとを去ったアンナ。ああ、よかったと安堵したのも束の間のゲシュタポ?の取り調べシーン。瞬きするのも憚られるこれ以上ない緊迫感の中でのジュリアンの選択に、あぁ、何故部屋をあとにせずに振り返るのか、何故頬に触れるのか、妻と二人の幼子よりも自分の命よりもアンナを取るのか、悲しくて身悶えする。耐えに耐えていた思いが決壊したアンナも同じく思った筈。勝ち誇った取調官の台詞が雑音にしか聞こえなく、迸る思いを一言も発することなくぶつけ合うジャン・ルイ・トランティニャンとロミー・シュナイダーのラストショットに見惚れる。 [DVD(字幕)] 9点(2017-01-14 01:50:28) |