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1.  スカイ・ハイ(1975) 《ネタバレ》 
この映画は当時よりも数年後に見返したほうが感慨深い。 まず、冒頭のエアーズ・ロックの麻薬の売人と地元刑事の追跡&格闘シーン。売人は若きサモ・ハン・キンポーだ。「マッドマックス1」のラスボス・トゥーカッター役のヒュー・キースバーンが豪州地元刑事。香港とオーストラリア合作の妙がたまらない。そして組織のボスが、007シリーズ最高傑作(当時)の呼び声高い「女王陛下の007」1本のみのボンド役、ジョージ・レーゼンビー。そしてあのイントロが…。 私自身、この映画でこの曲を知っていたので、マスカラス登場のたびに、ほとんどの人はこの映画知らないんだろうなあ、なんて思ってました。この「スカイ・ハイ」は一般的にはフェイドアウトして終わるのですが、作品内では、通常バージョンと違って1分長いロングバージョン。トランペットによる間奏部分が実にかっこいい。ジミー・ウォングが警察学校で複数の隊員たちをピックアップして、カンフーでバッタバッタと薙ぎ払うというカンフー指導シーン。 ブルース・リーによって世界的大ヒットとなったカンフー映画に乗り遅れたジミーの意地を感じます。 映画を見て以来どうしても気になるロングバージョン。ネットで探し出して何とかゲットしたときは、感涙ものでした。 冒頭からOP曲で10点!あとは3点。トータルで6点ぐらいかな。 ヒュー・キースバーンは、怒りのデスロードでも激しいメイクだったので、この作品は素顔が見れる貴重な一本ともいえます、ハイ。
[地上波(吹替)] 6点(2024-04-08 07:36:29)
2.  48時間
当時の刑事物の中でも抜群の切れ味。今では当たり前のデコボココンビですが、人種・体格・性格・そして立場のまったく違う二人のキャラはついコメディのみになりがちですが、中盤からどんどんシリアスになってくる絶妙なバランス。サタデーナイトライブで人気爆発の若手コメディアンのエディ・マーフィーのシャープでスタイリッシュなキャラを、斧かナタの如く無骨で男くさいニック・ノルティが引き上げていきます。しかし、それだけでなく、最後はしっかりその斧が本気になったときの非情さで締めくくります。48時間制限の緊迫感が足らないとの意見もありますが、それは後の映画の後出しじゃんけん的要素かと。でも今見返すと、48時間たてば誰かが死ぬような追い詰められての捜査ではないところがミソ。ふたりの心意気が犯人を捕まえたいという前向きな姿勢に昇華しているからこそラストの心地よさに繋がっています。また、全編を通してジェームス・ホーナーの音楽がすばらしい。クライマックスはもちろん、ポルシェ追跡でのスチール・ドラムを取り入れた音楽はさらなる緊張感を生んでいきます。 主演二人以外の俳優人もその後の活躍を考えると、まさにインパクトを残した作品といえます。悪役のジェームス・レマーも当時としては相当ワルの部類に入る役をしっかり演じています(奥様は日本人!息子さんは日本でモデル活動)。そのほかにももう一人の悪役、ビリー役のソニー・ランダムはその後プレデターに上半身裸で頑張るし、ニック・ノルティの目前で殺される同僚刑事のジョナサン・バンクスは今やがっしりとした体躯で名悪役に成長。ノルティの彼女はスーパーマンⅢでクラーク・ケントの初恋のラナ役のアネット・オトゥール。さらにまだ脇役の一人だったノルティの相棒刑事キーホーにはブライオン・ジェームス。確実にキャリアを積み重ねブレードランナーをはじめインパクトある悪役に。その目覚ましい活躍のあまり、8年後に作られる本作の続編では、最初から「何かある」フラグが立ちっぱなしでした。 公開後何度となくテレビ放送された本作。吹き替え版もいくつも制作されました。エディのはまり役は山寺さんですが、本作はコメディ色なし。チンピラでありながら切れ味あるキャラはやはり下条アトムさん、不器用とかわいらしさのニック・ノルティに石田太郎さんはやはりダントツです。ポルシェ追跡で「900ドルのスーツを着てもお前なんかもちっとも品なんかねえだろ」と毒づくノルティにエディの一言「でもかっこいいだろ」がしびれます。 やたらスケールばかりが大きくなった最近の作品に比べれば小粒な印象を受けるかの知れませんが、このテンポやバランスのよさは後世の作品に相当影響を与えている点で名作といえるのではないでしょうか。
[地上波(吹替)] 10点(2023-03-26 11:55:48)(良:1票)
3.  グレイテスト・ゲーム 《ネタバレ》 
実在の伝説アマチュアゴルフプレーヤー、フランシス・ウイメットが1913年の全米オープンゴルフで起こした奇跡を描く。この映画を観るまでウイメットの名を知らなかったが、奇跡までの険しい道のりを丹念に描き、さらに全米での戦いぶりは緊張感が伝わるなかなかの表現力。名バイプレーヤーのビル・パクストンがメガホンを取った事も驚きだが、十分に感動できる高レベルな作品になっていることがうれしくなってしまう。イーストウッド、レッドフォードクラスではないにしろ、ハロルド・ライミスなど俳優だけではなく監督でもいい作品が作れる才能、映画そのものを愛している映画人の層の厚さを痛感する。「コンスタンティン」「トランスフォーマー」のシア・ラブーフが主人公を熱演している。今でこそゴルフは一般的だが、当時は上流階級のスポーツ、イギリス勢が常に優勝、アマチュアは勝てない、などの常識を覆す活躍が気持ちいい。見所は、全米オープン初日、キャディを頼んだ親友が来られず、その弟エディ(わずか10歳!)が代役として活躍するところ。かわいくて、情熱があって、おまけに「バガーヴァンス~」クラスの最高の助言をくれるのだ。いくら実話とはいえ、実際の会話が映画の通りではないかも知れない。しかし弱冠20歳の青年が幼きキャディとともに天才プロゴルファーらに競り勝ったのは事実。その偉業を考えると、10歳のキャディが単なるクラブ運びではなく、タイムリーな助言や緊張感をほぐす何かがあったのは間違いない。数日間の競技を勝ち抜くのは運だけでも技術だけでも成り立たない。この作品はその事実を感じることができる、素敵な題材選びと的確な表現力、まじめにいい映画だ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-02-16 20:44:28)
4.  オーメン(1976)
今から20年以上前のテレビ放映。50半ばの父親が、私に付き合ってこの映画を見た。見終わって父親が「実はこの写真だが…」と私に一枚のスナップ写真を見せた。そこには笑顔の父親と、その首を横切る黒い影。大正生まれのオヤジがなんだかんだ言いながらこの映画の描写を怖がっていたことが懐かしい。それほどインパクトが強かったのだ。 もちろん公開当時も、カメラマンのクビチョンパ(これまた古い!)と、男女の怖いコーラスも後世の映画にどれほど影響を与えた事だろう。「ジョーズ」を見て海に入りたくなくなったと同様に、6月6日6時に特別な思いをもたらすほどこの映画のパワーは絶大だった。有名俳優に「ダミアン」という名前がいないのも、アメリカもなんだかんだこの作品に影響を与えられているのでは?などと勝手に想像してしまう。それほどまでにエンターテインメント性のある正統派ホラーとしてこの点数はつけたいと思う。それにしても、シリーズを通し一番怖いのはなぜかこの作品最初の乳母の首吊りシーン。どの描写よりもゾッとしてなんかしゃれになっていないような気がするほど衝撃的。今でも何度観ても心臓に悪い。
[試写会(字幕)] 9点(2023-02-16 20:31:21)
5.  キャスト・アウェイ 《ネタバレ》 
前半の決死のサバイバル、ケリーに会いたいの一心で耐え忍んだ努力をしっかり見せていたにもかかわらず、「覆水盆に返らず」だと悟って「次に進め」はいくら何でも骨折り損だ。もちろん世の中すべてうまくいくわけがないが、映画だけでも希望を見出したいよ、この手の作品は。 生還を知ったケリーに旦那だけでなく子供が映り込む瞬間に、常識人だった主人公の行動は決定された。 あっさり4年もワープした進展具合が、ここにきて意味が出る。1年であれば、実は彼の子供でしたというハッピーエンドが用意(しかも再会したときは、主人公はすでにほかの男性と結婚して子供もいる、という勘違い描写付き)で、お決まりのハッピーエンド。 しかし本作はそれを封じるためにも4年後の設定。こうなると、さて、この男は観客の予想を裏切ってどんな行動をとるのかに絞られるが、結局は常識人で終了。ってことは何を言いたいの?となる。 俳優人トム・ハンクスだけはやりがいはあっただろう。普通の映画ならサバイバルのみか生還の苦悩どちらかだけが、両方演じられるのだから。 さらに、生還後をそれなりに尺を使って旦那を登場させたり、ケリーと会話させたりすることで、妙な雑念もわいてくる。 ケリーはいつから歯科医と親密になったのか?恋人の担当歯科医がどのようにしてケリーと知り合い心の隙間を埋めるようになったのか?彼女は目標をいったん取りやめていたと語っているが、歯科医の妻として不満なく生活しているのは明らかだ。そう考えると、主人公をそこまで愛していなかったのでは?なんて邪推も生まれてくる。 飛行機墜落から生還した男が、だれからも必要とされなかった、という流れには感動という言葉は与えられない。 ただ、ショーシャンク~作品の系譜と似ていることを考えると、キリスト教の精神が垣間見える。それで納得するしかない。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2022-03-06 09:13:43)
6.  男はつらいよ お帰り 寅さん 《ネタバレ》 
CMが秀逸。寅さんの面白おかしいセリフの数々、少し寂しそうな現在の登場人物の表情。寅さんの迷言、名言が今を生きる人々や観客に突き刺さる構図を予想させる。過去作の「男はつらいよ」で描かれていることを知っているから当然だ。 しかし鑑賞してみると、その予想はかなりの肩透かし。なぜか湘南ボーイの桑田佳祐の「ひとり紅白」が唐突に始まる。おそらく数多くのひとがラストの渥美さんの歌唱でほっとするのを考えれば、彼の起用は失敗だったとおもう。渥美さんなき作品の宣伝フックのためとはいえ、この発想は間違いだ。寅さんファンである桑田さんとしてみれば、OPの歌を断るわけも無い。彼が悪いわけではない。ただ、この話を彼に持ちかけた松竹側の自信の無さが残念だ。でもこの中身に不安を覚えたのは仕方ないと、見続けると痛感する。 光男は「三丁目の夕日キャラ」とダブるのは致し方ないとしても、別に何かに行き詰っているわけではない脱サラ小説家。娘もストーリーや妻の死別に絡んでこない都合のいい存在。妻の3回忌に再婚を勧める周囲を描くのであれば、妻との思い出が必須なのにそれもなし。そうなるとただただ後藤久美子との再会に誘導されるだけだ。これはまさに「ニューシネマパラダイス完全版」を見た気分。見なくてもいいものを見せられていく感覚。特にがっかりしたのが、空港最後で妻の死別を告白するという行為。これは私だけでなく寅さんもがっかりしたに違いない。男は最後までかっこつけるもんだ。寅さんの「顔で笑って心で泣いて」を続けているからこそ「男はつらいよ」なのだ。光男ではなくさくら目線で作った方がよかったのではないかとすら思える。 テーマがぶれているというか、見えないままという意味で本作品は直感で3点。寅さんと過去のマドンナの登場シーンも「ニューシネマパラダイス」を彷彿とするというレビューを散見するが、入れ方が唐突過ぎて登場シーンの段積みという表現以外はまったく違う。「ニューシネマ~」はアルフレッドがつないだフィルムの試写という現実シーンの体裁だが、本作の過去シーンは、光男も生まれていないころのマドンナも登場するいわゆる回想シーンだからだ。渥美さん亡き作品は過去を振り返るしかないし、見る側も当然それを望む。それならば、あの回想シーンを生かすストーリー展開になぜしなかったのか?光男の生まれていないころのマドンナまでも思いをはせるストーリーに出来なかったのはあまりに残念だ。そういった意味でも、内容面のちぐはぐさを隠し、期待を持たせてくれたCMがやはり秀逸といえる。もし内容が素晴らしければあのようなフェイクCMにはしなかっただろうけど。 ただ、そのことを差し引いても寅さんと当時のマドンナの輝きには圧倒される。そこだけでプラス3点。それほどまでに寅さんの表情が素敵だ。
[映画館(邦画)] 6点(2020-12-30 06:08:49)(良:4票)
7.  チリ33人 希望の軌跡 《ネタバレ》 
この出来事が数十年前のものであれば、それこそ事実に目をつむって脚色し、最大の盛り上がりを作り上げたり、救助の足を引っ張る自然の要素や人的被害などもふんだんに入れたことだろう。しかしこれはつい最近の出来事。日本でも頻繁に報じられた事件ゆえ、制作サイドは事実に根差したものにするか、エンタテインメント化するか、企画の段階で悩んだことだろう。そして前者を選んだ。そこを理解せずに映画としては…とかは面白くなれれば高得点にならない、では切ない。 おそらく、閉じ込められた人々が現状を理解し、自分さえ助かればいいという映画上のステレオタイプな人間がいなかったからこそ助かったのだ。助かりたいならみんなでじっとしていようという、知り尽くした採掘マンだからこそ同じ結論にたどり着いたのではないか。最も難しいこと貫いた彼らの精神力と、何とか助け出したいという地上の人々の気持ちがなしえた奇跡を、盛り上がらない中で感じる作品ではないだろうか。 ここまで俳優が豪華なのは、これは世界的にヒットするという皮算用の結果なのか、だれもが知る奇跡の事件に賛同した俳優が多かったのかはわからない。 ただ、やたらヒーロー化した人物がいないのが映画全体の好感につながっているように感じた。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-21 22:10:04)
8.  シンデレラ(2015) 《ネタバレ》 
まず、ケネス・ブラナーに拍手。ディズニー映画にケネス・ブラナー?若いころは「自分」を前面に出した作品も多く、やや自己顕示旺盛な印象だったか、この作品は自身の出演はおろか、職人監督的な手腕が随所に出て素晴しい。ディズニーの誰でも知っている作品をここまで見事に映像化したのは正直驚いた。フェアリー・ゴッドマザーにかつての同棲相手だったヘレナ・ボナム=カーターを選ぶあたりは実に興味深い。彼女自身の女優「力」を信じ、彼女もそれに見合った演技で、わずかな出演にもかかわらず、この物語の最大のキーワードである「魔法」に説得力を持たせている。常に曲者を演じ続けてきたインパクトはここでも十二分に発揮されている。リリー・ジェームスも当初は継母の娘たちの一人としてオーディションを受けていたのが面白い。グレース・ケリーのような骨格と気品が実に主人公にぴったりだ。王子役も超二枚目というよりは、誠実さあふれる王様の一人息子の雰囲気が出ていて新鮮だ。ケイト・ブランシェットは、おそらくベテラン女優としては一番演じたい継母役を楽しく演じている。彼女の目つきや顔の角度、照明など、継母描写にここまで気を遣うのはケネス・ブラナーがこの大女優に敬意をはらっている証拠だ。作品のなかでも力を入れて撮っているのがわかる。新人と大女優、かつて恋愛関係もあった性格俳優と、実にバランスのいい印象だ。この作品のなかでも一番のシーンはドレスへの魔法。コレには思わず感嘆の声が出てしまった。 他のレビューにもあったが、なぜガラスの靴だけ魔法が解けなかったのか?シンデレラ最大の謎(?)かもしれないが、この映画ではその理由が少しわかった。 シンデレラの母が常に語っていたフェアリー・ゴッドマザーの存在。つまりあの魔法使いは、昔から人々の暮らし、特に善良な人々を見守ってきた存在。今回はたまたま親切にされて登場したわけではなく、彼女に幸せをもたらすために現れたのだ。つまり舞踏会に行くためだけの魔法はなく、王子の誠実さもすべてお見通しだからこそ二人を結びつけ幸せにするために魔法を使ったのだ。 シンデレラという物語はあくまでエラ本人目線で描かれてきたが、もしかすると王子の前にもフェアリー・ゴッドマザーが別な形で登場していたのかもしれない。たとえば、主人公二人は結婚のあと、あの舞踏会のことを語り合うかもしれない。そのときシンデレラは「ガラスの靴だけなぜ魔法が解けなかったのかしら?」と気づくだろう。それを脇で聞いている王子は、こっそり微笑むかもしれない。そして窓の外を観るとあのフェアリーゴッドマザーが口に人差し指を当てて「内緒にね」と王子にだけ微笑む… ヘレナ・ボナム=カーターが演じたからこそそんなことまで想像してしまう。 なかなかの名作だ。
[映画館(字幕)] 9点(2020-04-24 22:42:46)
9.  Oh! ベルーシ絶対絶命 《ネタバレ》 
いつもハチャメチャなキャラで人気を博したサタデーナイトライブ出身の怪優ジョン・ベルーシ。人気が出れば必ずやってくる、まともなキャラのドラマ。彼の場合はロマンティック・コメディの本作でした。 おそらく、ファンの受けは決して良くなかったのでしょう、当時、公開されたことも気づかずビデオ屋で偶然見つけたのが鑑賞のきっかけです。内容は当時によく見られた、別な世界に暮らす彼女とともに生活するうちに…というお互いにいがみ合いながら最後はひかれあうストーリーです。こちらのレビュワーさんたちからは決して評価は得られない作品かもしれません。 でも、彼の死がなければ、もしかするとトム・ハンクスやビル・マーレイのような名優へのステップアップを果たしていた可能性を感じさせる貴重な一本です。 この作品がきっかけなのか彼の仕事への志向が変わったのかわかりませんが、彼の出演作が一気に減ったので、映画会社側が何らかの形で見限った可能性がないわけではありませんが。 面白い、面白くないとは別に、一人の俳優の通過点としてみておいてもいい作品だと思います。
[ビデオ(字幕)] 7点(2020-04-24 22:32:03)
10.  さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅
エンディングが…。「SAYONARA」&過去の映像フラッシュ…やられました。今聞くとメアリー・マクレガーの声がケルティック・ウーマンとダブるのは私だけでしょうか。そして、ブームに乗ったゴダイゴとはまったく趣の違う展開。分かりやすい英語の歌詞とその翻訳テロップが絶妙です。そのテロップが決して口語ではなく、往年の名曲のような懐かしい表現。「心にとどめて~」「ひごとにたくましくなるあなたに」など、もし日本語でそのまま歌ってしまえばしらけてしまう表現も、文字にしてみると違和感がないどころか、かえって心にしみこみます。とくに「HOW CAN I FIND WORDS TO SAY I'LL MISS YOU」を「語る言葉もなく つのるわが想い」とは凄い!エンディング後半にある間奏部分のフラッシュバックも、懐かしさいっぱいのシーン。鉄郎とメーテルがお互いに手を伸ばしあうシーンは何度みても鳥肌ものです。いやはや名曲と名シーンそして字幕マジック!お見事です!
[地上波(邦画)] 8点(2020-02-01 10:51:45)
11.  遥かなる山の呼び声 《ネタバレ》 
脇役が素晴らしい。近所の農場仲間のおばちゃん(杉山とく子)は倍賞の本当の苦労を知りつつ日頃から彼女の生きざまを見つめている。また一見、山田組の賑やかしとして登場する武田鉄矢も、実は従姉の不幸を刹那に涙するシーンで締めくくる。さらに弟の犯した罪により学校教師を辞した兄(鈴木瑞穂)も素晴らしい。弟の好きなコーヒー豆を買って会いに来る。健さんは兄の近況を聞き悔恨と憤りを感じるが兄は静かにほほ笑むだけだ。さすがの健さんもこの兄には頭が上がらないのだ。劇中で主人公二人の過去や現在の不幸を知るのはこの3人だけだ。彼らが適材適所なおかげで、農場で出会った主人公二人の幸せな生活が実は薄氷の上にあることが自覚されるのだ。倍賞演じる女性も同監督の代表作「家族」「故郷」と同名の心憎い設定だ。そして何より泣けるのは、みなさん同様ハナ肇。好きな女に詰め寄る醜態から変化し、自分が惚れ込む男と女のために、邪魔をせず分をわきまえる男になる描写は鳥肌ものだ。ある意味、この作品中で最も立派な男である。特にラストはなんてすがすがしい男だろう。最後のシーンは知らぬ振りして小芝居を、という意見も散見するが、当然そんなことも考えて、あえてあれを選んだように思う。おそらく耕作はこれ以上迷惑かけたくないと面会を断り続けていたはずだ。それでも二人は何とか民子の近況と気持ちを知らせたい、それにはどうすればいいのか?教えてくれぬ護送の列車をひたすら待って、やっと出会えたあの瞬間。一世一代の小芝居を演じる民子には、知らぬ振りして演じられるわけがないのだ。虻田も民子も一般人なのだから。それは刑事たちにも伝わっている。おそらく、護送を終えた後、刑事たちは耕作にこう声をかけるだろう。「あの人のためにもまじめに務めろよ」。それを直立して一礼する耕作を暖かく見守る目線がきっとあるはずだ。
[地上波(邦画)] 10点(2020-01-17 13:24:22)(良:2票)
12.  スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 《ネタバレ》 
1作目のEPIⅣはとにかく光り輝いていた。冒頭のいきなり「EPISOPDE Ⅳ」にとてもわくわくした記憶がある。当時最新のSFXを導入しスペースオペラとはこういうものか、と満喫した。そして28年目にしての本作。EPIⅠとⅡの「そもそも話」からいよいよEPIⅣへの橋渡しという最も重要な作品だ。否が応でも期待してしまう。そして…鑑賞。「これはひどい…」が最初に出た言葉だった。キャラが破綻しEPIⅣとつながらないのだ。あれほど神格化されていたジェダイは、人の心を見通せない(ゆがみ始めたアナキンを放置)超能力集団であり、アミダラを守りたいアナキンはまさに本末転倒!彼女に暴力を振るい、そしてまんまとダークサイドへ。カセのつけ方が不十分なおかげでダメダメ集団のつまらない抗争を見させられた印象だ。EPI6のレイアがルークに告げる「母の悲しい横顔」というエピソードは収集つかず状態。そもそもこのセリフで、アミダラと娘の切ないシーンを想像した自分がいけなかったのか(実際は産み落としてすぐ死別。しかも出産時に唐突に命名)。 CGアクションに活路を見出そうとしているが、動きは激しいがどうせ結末が分かっているのでまったくどきどきしない。キャラに魅力が無いため「こいつだけは助かってほしい」という感情もおきてこない。1977年当時新しいと思っていたシリーズ構成が完全に失敗だったことを思うと胸が詰まる。欠けていたピースがすべて埋まったことに喜びを感じるとの意見も十分理解できるが、それ以上にEPIⅣに新しい時代の幕開けを感じ評価した私にとっては失望の作品だった。ただしこれだけはすごいとしか言いようが無いのはクリスト・ファー・リー!「ロード・オブ・ザ・リング」とこちらも超大作という両作品にボスキャラとして登場。1922年生まれであの存在感は映画ファンとして最大の賛辞を贈りたい!
[映画館(字幕)] 3点(2018-12-30 01:05:36)(良:1票)
13.  オー!ゴッド 《ネタバレ》 
キリスト教でも様々な宗派が存在するアメリカでよくこんな達観した映画ができたのかと感心する。無宗教、多神教の日本人でもなぜか納得できる内容は見事だ。ジョン・デンバーの素朴さも適役だが、ジョージ・バーンズの神様も素敵だ。軽妙かつ明るくそしてやさしい映画は数少ない。テリー・ガーもポール・ソルヴィノも巧い。悪役だろうがこの映画を理解して出演していることがうれしい。憎々しい宗教家を演じるからこそ、公判の結末で、より一層の爽快感が増すことを理解しているのだ。そして最後の神様のねぎらいと励ましの言葉に心を打つ。この映画自体がモーゼのメッセージに匹敵するのではと思える逸品だ。
[地上波(吹替)] 8点(2018-05-18 15:16:24)
14.  シェルブールの雨傘
当時のハリウッドの絢爛豪華なセットと、急にオーケストラが鳴り出して歌いだすミュージカル映画に反発して、あえて全編セリフすらも歌にしてしまう試みは衝撃的だ。この監督のコンセプトを知らずして「セリフまで歌の必要性があるか」のレビューはあまりにも切ない。 衣装もパステルや原色のはっきりした色を配置し、あくまで非現実感を演出。徹底的にハリウッドのそれらに喧嘩を売っている。しかしそれだけでは企画倒れになりそうなところだが、当時二十歳のカトリーヌ・ドヌーヴの神々しいまでの美しさと明るさと切なさを織り成すミシェル・ルグランの楽曲、そして誰しもが経験する「戻すことのできない時の流れと、かつて愛した人との別れ」という王道テーマによって最後まで描ききったのは見事だ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-02-26 02:17:55)(良:2票)
15.  フィールド・オブ・ドリームス 《ネタバレ》 
映画はいかに最初に「大嘘」をつくかが勝負だ。手短なモノローグによる自己紹介、そしてすぐに天の声、主人公を取り巻く環境を極力省き、ついにはスタジアムの幻想まで、と畳み込むような展開のおかげであっという間にこの映画の世界に引き込まれていく。トウモロコシ畑をいきなり野球場に変える男を下手に説明しなかった作り手側の勝利だ。そのおかげで次から次へと浮かび上がる疑問とその答えへの導き方に「んな、訳ないだろう」なんて事は考える暇もなくストーリーが展開していく。こうなると、強引な展開ではなく最終的な答えを見つける旅に観客も付き合うようなある種の「目的」が生まれていくのだ。年老いたドクター・グラハムを見つける1970年代の町並みも、途中で拾うヒッチハイカーもすべては「目的」のためのファクターなのだ。目的を目指すいわば観客代表であるケビン・コスナーはまさに適役。投げ方で本当の野球少年だった事がわかる。また妻役のエイミー・マディガンも素晴らしい。「娘を紹介したら?」という素敵な助け舟を出し、そっと球場のライトをつける彼女は最高だ。バート・ランカスターも晩年としてこの映画にあれほど素敵な役で出てくれたこと自体がうれしい。そしてこの作品のすごいところは俳優に負けず劣らず演出がさえまくっていること。たとえば全編通してぐっと来るのはシューレス・ジョーの声だ。彼の声はどんなに離れていてもささやく程度だ。普通なら絶対聞こえない距離も彼は小さく語る。その言葉は主人公にしっかり届いているのだ。まさにファンタジー!そしてすばらしいのは、球場に現われる彼らはすべて自分が何者かを自覚していること。それが老ドクターに姿を変えたムーンライト・グラハムへの暖かい言葉へつながり、最後に残ったあの人との会話に結びつくのだ。それにしてもラストのキャッチャーミットを脱ぎ、こちらに気づき振り返るあたりから目頭が熱くなる。映画史上でも屈指の名シーンだ。彼はフルネームを名乗り、主人公は躊躇してファーストネームしか名乗らない。それでもなお感極まって最後に一言「DAD」というと、あの人はためらうことなく振り向くのだ。今年で7回忌になる父とのキャッチボールの思い出がこの映画を見るたびによみがえる。
[映画館(字幕)] 10点(2018-02-25 23:14:52)(良:4票)
16.  スラムドッグ$ミリオネア
この映画はなかなか考えられて作られている。警察の取調べという形をとってジャマールの過去が引き出され、過去へのシーンにつながる。それとクイズシーンの交互の展開は、クライマックスの結末にフラグを立たせているので、「ハラハラドキドキ、先が読めない展開」の物語とは一線を画す。それよりも、ジャマールがいかにつらい日常を過ごしてきたのかという最底辺の暮らしぶりを味わい、最後に一気に大逆転させ爽快感を堪能するという構図を持っている。都合よすぎという意見も目にするが、本当にあるかも?という視点で描かれている類ではないので、そう感じたらこの映画の感想はそこまでどまり。彼の過去の経験が解答させたとこのプレビューサイトのあらすじに書いてるが、過去の過酷な経験をしたからこそではなく、明らかに彼だけの経験があのときの出題に合致しているということを忘れてはならない。100ドル札の肖像を答えられても、インドの紙幣のガンジーは答えられないのがその証拠。過去の経験で頭がよかったのではなく、たまたま答えられる経験をつんだだけである。つまり、これは大金を手にする貧困の青年の物語ではなく、幼いときに出会ったレティカをどんなときでも忘れられない心優しき根っからの正直者の青年の話なのだ。徐々にうそをついていないと確信していく警察の表情がほほえましい。まさにファンタジー!各世代の配役も見事。フリーダ・ピントの美しさに目を奪われがちだが、主人公ジャマールは出会ったときからレティカのことが好きだったわけで、そのぶれない点も、主人公を応援してしまう重要なファクターだ。唯一のマイナスは、さすがに回答させたくないと思う司会者が警察に主人公を送り込ませる設定。「クイズショウ」同様、国民的スターの誕生を望まない司会者はいないのだから。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-02-21 17:09:40)
17.  シービスケット 《ネタバレ》 
まず、直感で8点。ストーリーの構成がマイナス1点。3人をすべて最初から説明する必要があるのだろうか?自動車で大成功を収めた大金持ちのハワーズがなぜ落ちぶれてさびしい暮らしを送っているのか?トムはなぜ殺されるはずの馬を助けようとしたのか?ジョニーはどうして片目が見えないのか?3人のうち1人だけでも後半まで引っ張ってもいいのではないだろうか。すべてを実直に均一で紹介をしたため、シービスケットと出会うまでに30分以上もかかってしまい、そこまでのモチベーションがなかなか持ちにくい印象を受けた。しかし、それぞれが名優。一度説明してしまえば後は何も描かずとも彼らが見事に行間を埋めてくれる、監督はそこに賭けていたのだろう。邦画の場合もこのケースが多いが、この映画のいいところは、そのマイナスを補っても余りある名シーン・名セリフが中盤から登場する。地味ながら一般市民の代表的な存在のDJはもちろんだが、ライバル騎手ウルフが特に素晴らしい。役を演じたゲイリー・スティーヴンスは殿堂入りも果たした本物中の本物のジョッキーであると後に知るのであるが、ヘンリー・フォンダの雰囲気漂う誠実さはとても素人とは思えない。間違いなくこの作品をさらに高めているのだ。ラストのレースシーンのスタート前や騎乗中の行動や言葉は何度見てもこみ上げるものがある。その他、ジョニーの欠陥を知って憤怒する調教師が、逆にハワーズの一言に納得するあたりは、絶妙なバランスの人間関係である。そして何よりレースシーンがすごい。ベンハーのレースシーンを髣髴とさせるカメラアングルは必見!対抗馬と並び、目が合った瞬間のシービスケットのダッシュは思わず「うおおー!」と唸るほどの興奮だ。そしてラストのジェフ・ブリッジスが勝利に狂喜乱舞するのではなく虚脱したようにへたり込む仕草が素晴らしい。心の底からレッドとシービスケットを心配し、そして見事再生する命の輝きを目の当たりにした人間の真の反応だ。プラス2点!1年に1回は見たくなる作品に久々に出会った。
[DVD(字幕)] 9点(2017-01-15 13:27:01)(良:2票)
18.  イントゥ・ザ・ウッズ 《ネタバレ》 
それぞれ有名なストーリーをきれいに交錯して見せた前半は実にスムーズで心地よい。うまくいったはずなのに事態は急変、の中盤は、先の読めない面白さで「さあ、どんな奇想天外なクライマックスに導いてくれるのか」とわくわくさせられる。しかし、後半はいただけない。ブロードウェイミュージカルという確固たる原作の映画化が裏目に出た。ミュージカルのいい意味でのあいまいさ、筋が通っていなくても、楽曲と演者が素晴らしいからよしとしよう、というストーリーの雑さが、かえって映画化で目立ってしまった。巨人の女は悪いことをしていない、といった矢先に退治しようとなったり、長男王子とパン屋の妻の不義、さらにその妻の強引な夫への愛の論理、いつのまにか死んでいるジャックの母、妻の死を引きづらないパン屋、舞台ではごまかせても、映画となれば「?」となる。メリル・Sも歌声は特筆すべきもののキャラがぶれる。魔法が出なかったと思えば、最後は使えたり。死んだ牛を蘇らせることができるので、当然先に述べた妻や母もそうすると思ったのも肩透かし。プロデューサーももっとがんばって舞台原作者を説得し、映画版ラストを変えるべきだった。残念。
[映画館(字幕)] 6点(2016-12-28 23:50:05)
19.  タワーリング・インフェルノ 《ネタバレ》 
やはり1974年当時に映画館で見た人とDVDやテレビ(短縮版、おまけに間にCM入り)で見た人とのギャップは相当あるようですね。当時ワーナーブラザースと20世紀フォックスという2大映画会社がP・ニューマンとS・マックイーンというこれまた2大スターを競演させた恐るべきパニック大作です。二人主役ゆえ、テロップの出し方が左下と右上という不思議な配置。というのも、格の優劣を避けるため左上隅から見て等距離という、珍しい表記で乗り切ったというエピソードを思い出します。内容的には、最近の映画に慣れてしまうとこのグランドホテル形式のストーリーはやや冗長気味に思われるかもしれませんが、地上138階、逃げ場のない地獄に閉じ込められた人々を、映画館という閉鎖的な空間で見ていると、自分もいつしかビルの中に閉じ込められてしまった気持ちになったものでした。そういう意味で、確かに中だるみ的なシーンもあるかもしれませんが、遅々として進まぬ救援活動、徐々に迫り来る炎など、見るものに確実にプレッシャーとなっていく展開は私にとっては必要不可欠のものであると思います。見終わり映画館から外に出たときに、助け出された客たち同様の気分だったことを思い出します。それにしても、P・ニューマンはもちろん、消防服からネクタイ姿になるS・マックイーン、政治家といえば悪の権化が一般的なっていた中でのR・ボーンの正義感ある政治家、救助に向かう二人の消防士など惚れ惚れするキャラクターたちが見事。R・ワグナーと秘書の人知れずの恋と想いやるゆえの電話の嘘、市長夫婦の子を想う会話、バーテンダーの子供へのパフェなどさりげなく極限状態に置かれながらもにじみ出る人間性は泣けてきます。「慕情」でカップルだったW・ホールデンとJ・ジョーンズの配役の妙、R・チェンバレンの当時としては珍しい悪役振りと見所満載。「ポセイドンアドベンチャー」と並ぶパニック映画の金字塔です。ススによってしわがくっきり刻み込まれるP・ニューマンとマックイーンのあきらめないブルーアイズの目力も実に印象的。それにしてもヘッドフォン型ラジオはそこそこの音量で聞かないといけないと痛感した映画でもありました。
[映画館(字幕)] 10点(2015-05-06 01:03:21)(良:2票)
20.  テルマエ・ロマエ
ヤマザキマリの奇抜な原作を、シャレで作っている感覚に好感が持てる。CGも、ローマにおける日本人俳優も「真剣に見る」作品ではない約束事としていいと思う。ただ、残念なのはオペラ楽曲のBGMだ。「喋喋夫人」や荒川静香で有名になった「トゥーランドット」など関係ない楽曲はリサーチ不足だ。この点を改善すれば、意外とよく考えられている映画になったのだが。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-03-08 14:39:49)
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