1. ゼロ・グラビティ
《ネタバレ》 こういう単純だけど力強い映画もいいなあ。結末も読めるし、人物像や会話にひねりもないし、ドラマチックな展開もどんでん返しもないけど、画面から受けるパワーに理屈なんかなくひたすら気持ちを揺さぶられてしまいました。特に、ラスト近くの、大きな地球をバックにカプセルや破片が燃えながらまっすぐ落ちていくシーンにしびれました。 [地上波(吹替)] 10点(2016-06-12 02:33:05) |
2. ハリーとトント
《ネタバレ》 しみる映画ですね。直接的なメッセージはほとんど全く描かれていないのに、観ながらいろんな感情がわいてくる絶妙な演出です。旅の途中で出会う人とのエピソードが抑え目なのがうれしいです。トントが画面の中にさりげなくしか登場しないのも、かえって作品の深みになってると思います。高齢化社会の問題を描いているという声もありますが、単純に長い人生経験を経た一人の男の人間くさい物語と思っても充分じゃないでしょうか。ベンチで話してた友人の遺体を確認に行って、ハリーがちょっとだけ泣くシーンが好きです。何度も観てますが、エンドロールのキャストの最後に「トント」って書いてあるのに気づいたときはすごくうれしくて泣けたなあ。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2009-02-08 03:06:24)(良:1票) |
3. ミュージックボックス
《ネタバレ》 よくある裁判ものと違って、事件そのものが、登場人物の「語り」だけで描かれるので、異様な緊張感を生んでると思います。ガブラス監督の得意の語り口ですね。人々はみんな表情を抑えた演技に徹してるのに、薄暗い画面を通して、強烈に感情の変化を伝えてきます。そして、なんといっても、あのクライマックスでしょう!!怖いとか、驚いたとか、単純な言葉ではとても表せないような衝撃が襲ってきて、泣いてしまいました。政治的な問題でメディアで取り上げにくいのでしょうが、傑作です。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2007-11-30 21:37:30) |
4. スティング
《ネタバレ》 ストーリーのアイデアももちろんなんですが、細かい演出に、何度観てもワクワクさせられます。鼻の横をこする合図、カードをサバく手元からニューマンの顔まで1カットで見せるところ、高架線のホームでのスナイダーとの追跡シーンで、緊迫した音楽から、一転してコミカルな音楽に変わるところ、ペンキ塗りのフリをするシーンで、わざわざ家族の写真を取り替えるところ、JJがペンキ塗りを途中でやめて、テキパキと片付けて出て行くところ、ポーカーシーンでニューマンがロネガンにゲップで答えるところ、何度観ても良いですねえ。ファンとしては、この作品は「いかにだまされるか」に注目するよりも、そういう職人的な演出を楽しむつもりで観てほしいですね。 [ビデオ(字幕)] 10点(2007-06-30 15:47:34)(良:1票) |
5. 普通の人々
学生のころ観て、いろんなことを考えさせられ、また、勉強させられた(と自分では思う)、深ーい映画です。人間というものは、自分の気持ちをなかなか自分でも理解できないものだけど、すなおになって現実を見つめれば、理解できないものではないのだな、ということを教わったように思います。母親のキャラがムカつく人が多いだろうと思いますが、彼女のムカつくいろんな態度は、他の人の言動に連動したものであって、彼女自体が悪人なのではないのだと理解すれば、ムカつかなくすることが可能なのだと思います。息子のコンラッドや父親のカルビンも映画の最後にそのことに気が付いたので、自分から母親への態度を変化させることができたのでしょう。ただ、自分の気持ちは理解できても、その先で人間関係まで良くできるとは限らないというところが、ちょっと悲しい現実なのでしょうけど。 [地上波(吹替)] 10点(2007-06-03 01:25:34) |
6. アメリ
この映画の感想を言葉で表現するのは難しいです。DVDを借りてきて、連続して3回観てしまいました。こんなことは初めてです。「こんな女いるもんかーっ」って思いながら、全く不快感がないんですよね。最初から最後まで、憎めない映画です。(この「憎めない」感がこの映画のツボなのかもしれない) [DVD(字幕)] 10点(2007-05-18 23:59:15) |
7. ミッドナイト・ラン
《ネタバレ》 ストーリー自体はどこかで見たようなものなのに、細かい気の利いた演出の連続で、こんなにもおもしろい映画になるんですね。微妙な表情・しぐさの使い方や、しつこくない伏線の張り方が見事で、映画的な楽しさが満載されています。FBIのバッチを盗んだあとのおふざけポーズとか、ハンドルにサングラスを置いて「アロンゾとおれだけに分かるジョーク」と言う場面、ああいうシーンをここまでサラっと自然に見せるのはほんとに難しいと思います。そして、一番好きなのは、ラストの別れのシーンで、デニーロが振り返ると、さっきまでいたデュークがいなくなっていて、それを見て微妙な表情を浮かべるデニーロ、あの一連のカットの、余韻のあるエンディングは、短いようで長かったドタバタ劇が終わりを迎えたことの、一種独特なさみしさがほんとに良く描かれていて、何度見ても、悲しくもないのに泣けてしまいます。過去最高のエンディングかもしれません。笑い・泣き・ドッキリを露骨にねらった娯楽映画の多い中で、「大人の」娯楽映画だと思います。 [ビデオ(字幕)] 10点(2007-05-18 23:47:44) |
8. フレンチ・コネクション
ウィリアム・フリードキン独特の、ニュース映像のようなリアルな画面が、単なるドンパチでない迫力を生んでいると思います。主人公の刑事のキャラクタが、ちょっと暴力的なところが不愉快な部分もありますが、刑事ものなのに、謎解きやアクションの派手さでなく、絵的なおもしろさで充分楽しめます。地下鉄の駅のホームでの尾行シーンなども、騒々しいホームの空気を見事に捉えていて、まるでその場にいるような気分になります。最近の刑事ものはキャラクタ依存の「物語」が多くて、映画的に楽しめるものが少ないので、本作の価値は非常に高いと思います。フリードキンがその後あんまりパッとしないのが残念。 [ビデオ(字幕)] 10点(2007-02-20 07:12:14) |
9. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 色々文句を言いたくなる点もあるのですが、それでも、何度も観て、その度に「おもしろかった」と思ってしまうのです。好きな絵画を飽かずに見ている感覚に近いでしょうか?HAL9000がプールを襲わせる直前のスペースポッドが、静かにゆっくりと両手(?)を広げながら画面一杯にせまってくるシーンは、今まで観た映画の中で、最も怖いシーンの1つです。 [映画館(字幕)] 10点(2007-02-03 21:35:09) |
10. 許されざる者(1992)
展開全体は、西部劇の王道なんですが、各キャラの立場や感情を、単純な善悪でない、一見すると矛盾するような複雑な描き方をしているところが出色だと思いました。特にハックマンの保安官が魅力的。自分の町を守るという正義漢の面、暴力的な面、一人ぐらしの自分の家を建てちゃうような静かな面が、ころころと入れ替わって、人間ドラマを盛り上げてくれます。打ち合いのシーンも、単に悪人がバッタバッタと倒されるようなシーンにせず、殺す側殺される側の感情がグイグイ伝わってくるような上手な間があって、すごい緊張感の連続でした。 [映画館(字幕)] 10点(2007-01-05 18:48:35) |
11. シッコ
内容のことはともかく、語り口のリズムが絶妙で、あっという間の2時間でした。都合のいいところだけつぎはぎしてるような印象も強いので、この映画だけで分かったような気になるのは危険だと思いますが、娯楽作としての完成度は高いです。下手な社会派ドラマなんか観るより、よっぽど楽しめました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-04-17 19:58:54) |
12. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
子供向けの作品なので、ありきたりなメッセージ性が無い分、すっきりした物語になっていて、気持ちよく感動できました。姫や「お又のおじさん」の立ち振る舞いも、丁寧に演出されていて、下手な時代劇よりよっぽどリアルな人物像になってると思います。ラストがまたいいのです。中途半端に説明っぽいエピソードもなく、ほろ苦い後味がうれしい。小手先のメッセージより、シンプルな物語の力強さが、結局映画のおもしろさの原点なのだなあと改めて感じました。野武士のエピソードがちょっとだけ余計な感じなので、減点しましたが…。 [地上波(邦画)] 9点(2009-09-19 17:43:46) |
13. ビッグ
《ネタバレ》 シナリオがとっても上手いなあと思います。ジョッシュと他の大人の微妙にかみ合わない会話は、爆笑しないけど、ほんわか笑わせてくれるネタが満載です。それでいて、ドラマとしてもしっかり作られていて、泣かせてくれます。この手のストーリーにありがちな、大人になってからのドタバタをしつこく盛り込まなかったところが良かったのでしょう。会社からお母さんに電話したときに「あの子の髪の毛一本でも触ったら許さない!」と怒鳴られたときの、ハンクスのちょっとうれしそうな表情が印象的。ラスト、「一緒に子供にならないか?」と誘われたときのスーザンの「私はもう経験したから一回で充分」というセリフも、なんかグッときますね。 [ビデオ(字幕)] 9点(2009-07-26 16:12:38) |
14. ザ・マジックアワー
いやー、笑った笑った!佐藤浩市のコメディアンぶりがお見事の一言に尽きますね。前半は、とにかくドタバタに集中して、爆笑、後半は、ちょっと人間ドラマっぽく展開して(でも不自然な人情話にならずに)、うまくまとまってました。こんなに素直に笑えるシナリオを作るのは、さすが三谷さん、才能です。「有頂天ホテル」では、登場人物が半端にマジメなキャラばかりだったので、ちょっと笑いにくい面がありましたが、今作はキャラがギリギリまで単純化されていたので、細かいこと気にせずに笑えます。セットへのこだわりとか、タイトルの意味付けなんかも、聞いていたほどしつこくないので、そこに注目せずに観れば、全く気になりません。 [映画館(邦画)] 9点(2008-07-19 22:52:36) |
15. ジャッカルの日
サスペンス映画で、プロの殺し屋を観たければ、これだけ観れば充分です。超えられる映画が出てくるとは思えないなあ。他の映画の殺し屋は、みんな漫画みたいに感じられてしまいます。あのエンディングに向かって淡々と収束していく展開も、緊張感たっぷりで、無駄がありません。林の中で銃のテストをするシーンが特に素晴らしい。オープニングとエンディングがあっさりしてるのも、余計なドラマを感じさせずにサスペンスに集中できた分、効果的だったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-02-22 20:15:47) |
16. ジュリア
学生のころ以来、観たのは2度目です。その後数限りなく映画を観ましたが、この作品に似たものを思い出せません。映画の中ではほとんど何も説明していないのに、1本の映画として完成しているところがすごいと思います。人間関係も、時代背景も、お話の結末すら、明確に説明するシーンもセリフもないのに、何なんでしょう、この緊張感は。普通なら、ここまで説明不足なら「意味不明な映画」で片付けてしまいそうなものなのに、観終わってもそんな印象は全くありません。計算しつくされてるとしか思えない。カフェでの再会シーンのレッドグレーヴが、とても強い視線で、終始何かを語りかけているような表情を浮かべているところは、彼女の感情や状況を具体的に何も想像できないのに、揺さぶられるような感動を覚えます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-02-22 19:52:12) |
17. ロミオとジュリエット(1968)
これはストーリーや登場人物中心に観る映画ではないと思います。舞台演出の雰囲気を保ちつつ、かつ、舞台では表現できない映画ならではの奥行きのある動きを使って、今やベタとしか言いようのない単純な物語を、まさに映画的に表現することに成功していると思います。バルコニーのシーンの上下の移動や、毒を飲むシーンのアップの使い方なんかに監督の工夫が強く出ていて、それだけでも楽しめます。出会いの舞踏会のシーンで、カメラ中心にぐるぐる回るカットもおもしろいし、ずっと後になって、「タイタニック」のダンスシーンに使われていて、ちょっとうれしかったです。 [地上波(字幕)] 9点(2007-11-11 09:10:36) |
18. ダイ・ハード
高層ビルに犯人ごと閉じ込められるという設定を終始うまく生かしていて、途中ほとんどダレるところもなく、良く練られたシナリオだと思います。主人公がスーパーマンでないのもいいです。「スーパーマンでない主人公が活躍する映画」は大抵の場合、主人公のキャラクタがスーパーでないだけで、実際の行動は奇跡的な「スーパーアクション」になってしまうものですが、この映画では、そんなこともありません。映像的にも、屋上の爆発シーンやロケット砲の発射シーンを、あえて「引き」のカットで捉えているところがおもしろかったですね。 [映画館(字幕)] 9点(2007-06-30 15:33:28) |
19. ゴッドファーザー
ストーリーが暴力的で、登場人物の行動に全く共感できないのは、もちろんですが、映画としておもしろいかどうかは「共感できるかどうか」ではないのですね。こんなむちゃくちゃなお話なのに、映画としての完成度は非常に高く、何度観ても夢中にさせてくれます。個人的には、ブスっとしてるだけのパチーノには魅力がないのが残念ですが、これは全く好みの問題ですね。 [ビデオ(吹替)] 9点(2007-03-03 15:34:46) |
20. 明日に向って撃て!
二人のおじさん悪党が、自分ではもうどうにも解決できない状況に向かって、どんどん追い込まれていく様を、見事なドラマに仕上げていると思います。自転車のシーンのように、時折明るいシーンを入れることで、逆に、破滅に向かって有無をいわさずに進んでいく時間の流れが際立って感じられます。そして、その「破滅への流れ」を、ほとんどセリフだけで伝えているところが、シナリオのすばらしさだと思います。「銀行も変わったな」という冒頭のセリフ、自転車を「未来」と呼び、保安官に「お前らはもう死ぬしかないんだ」と言わせ、最後には「オーストラリア」という、ありえない夢を語らせ…。表のカッコいい映像と、裏の破滅のストーリーの重ね合わせが、しびれるほど効果的です。残念なのは、表の映像と出演陣があまりにカッコよいので、全体の印象がそちらに引きずられてしまうことでしょうか。一番のお気に入りは、荒野を追っ手から逃げる途中で何度も言う「あいつら何者だ?」という、象徴的なセリフです。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-02-15 22:19:44) |