1. さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち
《ネタバレ》 当時の実感としては『まだまだ子供向けでしかなかったまんが映画、という先入観の中で意外にも大人でも楽しめそうな娯楽映画のヒット作』だったという印象 公開当時は幼い子供だったが、小学校の男性教諭がこの映画を見に行って「感動した」とクラスに紹介したのが見に行くきっかけにもなった よく特攻の賛美だと槍玉にあげられがちな本作ではあるが、鑑賞時、その歪さを冷静に分析できるような雰囲気ではなかった ハラハラドキドキとか感動で涙してる時にはそういう不都合なファクトは自然と何処かに追いやって楽しめるものである 本当に楽しんでる時にはそういうことが可能だし、なにか雑音を感じてる時はそこまで楽しめてないっていう事なんだろう 自分は幼少で観たので、感情よりも理を優先する大人になってから観ないで幸せだったし、針の穴を通すような事例でもあるだろう しかし同世代で以前は本作を絶賛していた人たちも、特攻に疑問を感じたり、より刺激的な作品を鑑賞してぬるく思ったりして後年批判的な感想を洩らすことが多い 後から考証が捗って符に落ちて傑作化するような作品でない限り、二度目以降はそりゃ前ほど楽しめないのも当たり前とは思うのだが なんにせよ受け止め方は自由である。特攻賛美だからと叩く人には「そうだよね~」と同意してあげたいね だからといって自分の評価はまったくブレることはなく、満点をつけてても裏切り者とか思わないでもらいたいね 絵がいい。音楽がいい。倒しても倒しても隠し玉が現れる絶望感。英霊が像になって現れ、みんなで一緒に体当たり~ 面白かった。そして同じやり方は二度と自分に感銘を与えない。一生に一度しか楽しめない流れを、この映画で体験した 死んだ沖田艦長が幻となって語りだすのはスターウォーズのジェダイが参考元かな。語るその内容は問題視されてるけど ありゃ、本当の沖田じゃないからね。ジェダイのそれとは違う。古代が作った沖田像だよ 死んでしまって何になる。古代は沖田の像を借りた自分自身に促されるようにそれに向き合うしかなかった 登場人物の動き方としてはそれで整理できる。作品全体としての事実として結局特攻だろといわれたら、まあそうだね、としか [映画館(邦画)] 10点(2020-08-29 12:27:35)(良:1票) |
2. 椿三十郎(1962)
《ネタバレ》 黒澤明が亡くなった直後、即日的に編成された追悼番組として本作をテレビで鑑賞した 自分にとって初めての黒澤映画であり、至高の作品となった。他にも何本か傑作の黒澤映画を観たが、 本作は娯楽性において黒澤映画の頂点であり、娯楽作品を最も好む私の趣味にマッチするものである。 おぼろげではあったが、伝説的なラストシーンのネタバレは鑑賞前に頂戴していたのは間違いがない。 ただし、本タイトル中のシーンとは記憶が繋がっていなかったため、既視感はあるが劇中に新鮮な驚きをもって体験できたのである。 そこに至るまでのあらゆる出来事がどれもみな、面白かった。素晴らしい映画だ。 [ブルーレイ(邦画)] 8点(2019-12-07 23:46:35) |
3. トータル・リコール(1990)
《ネタバレ》 なんだこりゃ。・・・めちゃくちゃ笑えるんですケド。バーホーベンは天才か!そりゃそうだろ 若い頃は、自分が観たい映画はこういう奇怪なSFじゃなくて、もっとマジメで王道な、大衆受けする大作を望んでいた だから当時ビデオレンタルで観た本作の評価はハズレだった、ヘンな映画だった、観るんじゃなかった、と散々だった ロボコップも好きになれなくて、バーホーベン監督と聞くと、少し遠慮したい気持ちになっていたものだ ところが、しょぼくれた年齢になってから観ると、全く評価が変わった。勿論、全ての映画がこんなバーホーベン風味になったら、そりゃあ嫌でげすよ。 でもね、この人の映画、突き抜けとるんですな。頭おかしいんです。メチャクチャやってくれて、スカっとするんですよ。 シュワルツェネッガーを主役にしたの、はい正解!あの、大根かと思うような嬉しそうな笑顔の数々、わかり易っ!なんだその顔はっ。ウケるっ! 離婚成立だな!とか、離婚したって言ったろ?とか、パーティーで会おう!とか、捨て台詞くそ笑ったわ!畜生! 画作りとか、レトロフューチャーなデザインとか、奇想天外なギミックとか、観てて飽きない!ヘンなものいっぱいで眺めてるだけで面白かった~ 今では、ロボコップも大好きだ。クセのある作風が最初は苦手だったが、トータルリコールはそれに並ぶくらい、面白い [ブルーレイ(吹替)] 8点(2019-10-06 02:32:04) |
4. サイコ(1960)
《ネタバレ》 観た中でヒッチコックの最高傑作。映画史に残る作品と呼ぶにふさわしい。 魔が差して4万ドルを盗んでしまったマリオンに同僚たちが困惑する予想図を 彼女自身の心の裡から聞こえる音声で描写し、画はマリオンのアップだけを撮り続ける演出がある。 その予想図の中でマリオンを罵ってくる大金持ちのおっさんの、あまりのエロ親父っぷりに 勝手に想像していながらマリオンは思わず呆れ笑いの顔になっているのだ。もう、序盤から鷲掴みにされた。すばらしい。 ひとつ中盤に大事なことがある。4万ドルの、処分だ。 一旦部屋を出たノーマンが引き返したときに見つけた4万ドルを、新聞紙にくるまれていたためそれと気づかずに マリオンの死体を押し込んである車のトランクに放り入れて、そのまま沼に沈めてしまった件。 そうとは知らない妹ライラは、マリオンの失踪にその4万ドルが絡んでいると推理する。当然観客はその推理が見当違いであることを知っている。 なぜ最後まで観客にも伏せておかなかったのか。必然か、それは我々観客の頭から4万ドルを消すことになった。 4万ドルの行方を観客がいつまでも、頭の片隅にでも残していたら、きっと4万ドルはなんらかの役割を持って終盤のストーリーに組み込まれねば観客は納得できなくなる。 もしそれにミステリーの機能を持たせていたら、今のラストを越えることはできなかっただろうと思う。鑑賞後感。すこぶる大事。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2019-09-07 03:00:19) |
5. コラテラル
《ネタバレ》 良かった~。マイアミバイスは観たことないけれど、夜のロサンゼルスがマイアミに見えるよ マイケル・マンの描く夜の都会最高。美しい。ヒートも悪くないけど、マイケル・マン映画ではこれが一番好きな映画になった BGMというか唄が泣ける。信号待ちで遭遇しただけの特に意味のないコヨーテの場面に感動してしまう。 時は2004年、前世紀の残滓をみつけて感傷的になってる向きもあるのかもしれないけれど久しぶりに夢中になって観れた。 トム・クルーズの悪役とは珍しい。最初髭面に違和感があっただけで慣れるとかっこよく見えてきた。 なによりジェイミー・フォックスが良かった。マイケル・マンの渋いドラマには、ホッとさせられるジェイミーの存在がバランスとってくれて有難い。 それでいてラストではパーフェクトな殺し屋ビンセントにマックスは勝ってしまうのだから。実はものすごいやつだったんだよ彼は。 自分でもわかってなかったろうけれどね。こういう関係のバディものは最後必ずと言っていいほど物別れになってしまうけれど 殺し屋がイーストウッドだったりしたら、まず殺し屋のほうが勝ってしまうのでジェイミーに負けるトムという構図はなかなか素晴らしい。 ヴェラクルスと同じくらい最後の対決は気に入ったよ。・・・違いすぎるか。 正直ストーリーはありふれてるし、冒頭の資料の入ったケース受け取り、そのケースをぶちまけたマックスによる埋め合わせの展開と 承服しがたいものがあるのは事実だ。なぜデータを面と向かって受け取る必要がある? ビンセントの殺しのシーンもかなり省略されている。突然落下してくる死体が効いている一人目はいいが、二人目は描いても良かったんでは? めちゃくちゃな殺し屋がトムでは怖さが足りない。ヴィゴ・モーテンセンなルックスとジョー・ペシみたいなヤバさが欲しい役だが、イケメン必須なのかな・・・? [インターネット(吹替)] 8点(2019-09-03 02:41:20) |
6. ロボコップ(1987)
こんなにアイデア満載な映画だったのか・・・・・ 悪趣味、と一言で片付けてしまうわけにはいかない 天才的なシーンの数々に只々感心させられました 少なからず気持ちの悪さを感じながらも 何度も腹抱えて笑ってしまいましたが 悪趣味だけで終わらず、痛快な娯楽作品に仕上がっております 「気分悪」が減点対象にならないものだとすると(・・・というか加点すべき?) この映画を娯楽ポイントだけで上回るのは相当難しかろうと思います [ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-01-06 05:20:49) |
7. 刑事コロンボ/秒読みの殺人<TVM>
《ネタバレ》 シリーズの中でも傑作といえる作品です。まず、被害者について。手切れ金代わりのスポーツカーですが、キーをカクテルに潜ませるあたり、非常に独りよがりな印象です。自分流にかっこつけながらスパっと切り捨てようというわけです。少なりとケイが愛情を抱いていたのだとしたら、この人、殺されても仕方ないと思います。ケイの出世欲も並ではありませんが、彼の愛情が注がれ続けていたら、きっとあのような罪は起こさなかったでしょう。アリバイについては「意識の下の映像」「忘れられたスター」と、シリーズファンには馴染みのある場所で工作されていますので、続けて観ている方には新鮮味がないかもしれません。ですがカウントダウンのお陰もあって先の二作に比べて犯行シーンはさらに面白かったです。銃の回収シーンが最高ですね。女優さんの真剣さとコミカルさと合わさったようなあの演技が忘れられません。コロンボがいつ飛び出すかわからないので、銃を捨てるまでこっちが心臓バックバクでした。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-07-20 04:10:59) |
8. ミッドサマー
《ネタバレ》 自然は本能的に調和を保つ方法を知っている 全ては機械的に役割を果たす ダニーがトリップしながら木を見上げるシーンでペレにより語られたこの理念 祭りのイベント一つとっても自然と体力のある優秀なものを選別してより良いポジションに据え、大事に残そうとする 日の当たる部分ではそうだ。これらを見ると牧歌的だが理にかなっている、めったなことにはなりますまいという安心感を覚えるのだろう 「ホルガ村ヘルシングランド」という"なんでもみんな一緒にやる"テーマパークが一見大事にしているこの理念に来訪者は油断してしまった 村のチープさにはかなりやられた。なるほどこの即席感なら旅行前にペレの言ったようにみんなが演劇してるとしか思えない 祭りはイベントのごっこ遊びと大差ない、などと訪問客は油断してしまうだろう。ところが…、なんですけれども しかしロケ地に村を一個作ってそこを舞台にするこの感じ、七人の侍か!なんて思ったりして。ペレが菊千代(=侍ではない)でコニーとサイモンも合わせたら丁度七人になるし… ここで起こることの一部は絶句するくらいショッキングであり、ほとんどすべてが笑わずにいられない 全て冗談みたいなものだ。深く考えずにジャンルものとして楽しむのが一番良い気がした コミューン 法治国家 しきたり 掟 相互理解 残虐行為 没個性 多様性 従順 全体主義 冷戦時など、かつて幾度も批判をこめてこれらがキーとなるフォーマットの映画は描かれてきたと思うが、 より映画を面白くするための普遍的テーマであって、イデオロギーの対立を見せたくてこれらが今さら用いられているわけではないのだろう こちら側とあちら側どちらの側に属していても人間のヤバさはつきつめれば同じだという描き方をしている 同調圧力が一つの例になる 同調圧力ほどおそろしいものはない。曲がったことも押し通す。協同で物事をなしうる生き物である人間の弱点のひとつだろう なにかおかしいとわかっているのに他者の見解と比較・検証して落としどころを探してしまう。そうしているうちに時間が経過し、次第に何事もなかったかのような錯覚に陥っていく 正しく反発したサイモンはいずれ殺される運命であったにせよ、支援を得られなかった 目の前で恐ろしい惨劇が起こっているにもかかわらず、価値観が違うのだからとか郷に入れば…などと無理やり理解を示そうとまでする 別の場面では、ダニー独りが薬物に及び腰な動きを見せる。その際の仲間の白けたムードはまさしく同調圧力以外の何物でもない ここでやや間があってから渋々理解を示すそぶりをするクリスが結構な問題児。明らかに面倒くさがっている彼氏。ヒーローに成れない男 忘れていた恋人の誕生日パフォーマンスもあまりにもお粗末。こりゃ面倒くさがっている。そしてあろうことか彼女がろうそくの火を吹き消す瞬間すらよそを向いて見ていない 論文トラブルは仲間割れから殺人に発展する一つの例だがまさかこの映画で見ようとは。クリスくんの外道っぷりがいかんなく発揮されていて笑う その論文を全うするにはマヤの誘いに乗るしかない。しかもダニーにばれないように一夜限りのというなんとも都合の良い・・ 聖人君子とは程遠いクリスが例の同調圧力も相まってスルスルと罠に嵌っていく様はかなりカッコワルイ 個人的には結構満足いく映画だった [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-16 14:56:12) |
9. 麻雀放浪記
《ネタバレ》 少年のころ、初めてこの映画を見た。麻雀をほんの少し知ってて、単語としての「リュウハ」やチューレンの形など知らなくともかなり面白い映画だった。 令和になって折しも麻雀ブームが到来し、今また鑑賞してみて、評価はさらに上がった。 いきなり冒頭のクレジットで驚いた。特撮:成田亨!ウルトラマンの美術監督としてのイメージ一色な成田亨氏が関わっていたのか。 敗戦後の焼野原の東京をカメラが新撮。ミニチュアセットの出来はもちろんいいのだが、カラーだったらもっとチャチに見えてしまったかもしれない。 ノスタルジー効果だけでなく予算にも優しいナイスなモノクロの選択に思える。 有名な勝鬨橋をバックに坊や哲とオックスクラブのママが歩きながら会話するシーンは勝鬨橋のミニチュア映像にクロマキー合成するために、その場歩きをしながらの演技だったらしい。 いわれて見れば若干ぎこちないが、そういう工夫は好きだし、面白いポイントになってくる。演者さんは大変だったろうけど、良き思い出になってることだろう。 やりすぎなぐらい敗戦直後のGHQ統治下における風景が見られるが、間違いなくブラックジョークだろうと思う。 誰もギブミーチョコレートとDDT散布のシーンをひとくくりにまとめて捌いてしまうなどというふざけたシーンを冗談じゃなくやりたがるはずがない。 むしろ滑稽なシーンに仕立てているよう見せて実のところそのまんま滑稽で哀れな歴史だったという皮肉がこめられているのかもしれない。 出目徳が死の間際にツモ和了った九蓮宝燈は非常に和了りが難しい、和了ったら死ぬとまで言われている幻の役満。 麻雀好きならそれを知らぬ者はなく、「だからか!」と思わず声を出してしまうシーンだ。 出目徳の遺体の、一度見たら忘れられないシーン。二回目以降の鑑賞では、決戦の朝(?)出発時に妻が水たまりに砂を入れているところを見ると、「これが明朝・・・」とわかっているのでジワジワくる。 結局水たまり埋まってねーじゃん!とも思うのだが。 [ブルーレイ(邦画)] 7点(2023-03-26 13:15:01) |
10. 宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち<TVM>
《ネタバレ》 「テレフィーチャー」という、一般には耳慣れないが所謂テレビ映画として制作された「宇宙戦艦ヤマト・テレビシリーズ」の続編 夏休みの真っ只中、正に映画を放送するような時間帯で長編テレビアニメ特番としてヤマトの新作はお目見えした(後に、劇場公開もされた)。 ヤマト大好きっ子である自分は、テレビスポットCMで新作の放映を知り、最高に待ち遠しい夏休みを迎えた まずは、「新たなる旅立ち」というタイトルに思った事。後に制作される映画「ヤマトよ永遠に」とのセットで考えれば前日譚として理解できるネーミングではあるが そんなことは露知らずの小学生にはどう映ったか。 (以下「ヤマトよ永遠に」のネタバレにまで踏み込みますのでそちらをまだご覧になってない方はご注意ください) 実質として新たなる旅立ちというタイトルは、メタの意味合いのほうが強い 一度自ら区切りをつけたはずのヤマトという知的財産に再び命を与えて(本作にとどまらず、この先も連作して)商業展開というと、なんだか聞こえがよくないが それを歓迎したのも私のような続きを見たがるファンである。もう一度、強いヤマトが観たかった。ただそれだけで十分だった ヤマトを語る際まず筆頭にあがるのは、やっぱり音楽が最高ということ。新たなる~でも勿論それは健在。印象的な楽曲が作品のグレードを幾段も底上げしている 暗黒星団帝国のテーマとでもいうのだろうか。何度も何度もかかって、もう一生忘れられない。それと、艦載機コスモタイガーの楽曲は以後、定番化する名曲 続いて意匠。まるで未知との遭遇からゲスト参加したようなシャンデリアっぽいけどキラキラかっこよくて黒い敵巨大旗艦プレアデスは 重厚なのでキービジュアルのようにほぼ一枚絵で済まし、それが作画の安定に貢献している(さらば以降のヤマトでは巨大物の描写でわりとスタンダード)(一部背景動画的に描写されたりもしてはいる) のちに浮遊要塞と改名されるキラキラネオンの自動惑星ゴルバも、セルでは止めをスライドさせるか、動いても消灯させて作画の負担を軽減している 敵キャラクターは暗黒星団帝国人(また、帝国なんだね)。全員坊さんのように頭髪がなく、衣装も非常にさっぱりしていて、捉え方によっては貧弱デザイン極まる 小さい頃にはそれらは一切気にならなかったが、今考えるとドル箱ヤマトにしては製作期間(=予算)の都合を感じないでもない。(でも、プレアデスもゴルバもめちゃくちゃ好き) メルダースという司令官がクールな立ち回りで、好きだった。でも、死んでくれとも思った 「さらば~」の敵・彗星帝国(ガトランティス)が遊牧騎馬民族・元寇の置き換えだとするなら、暗黒星団帝国はなんだろう。 一説によれば松本零士作品世界における連携で、銀河鉄道999の機械化母星を敵の下敷きにしたらしい。頭が人で体が機械のサイボーグ。なるほどね (次作「ヤマトよ永遠に」にてそれらは露見するが、「新たなる~」の時点では全くの謎だった。「~永遠に」がとんでもないシナリオだったので、設定に齟齬が生じている気がしなくもない) 一部内容が尺の都合でカットされていて、セリフの辻褄が合わない。ビデオ等媒体化してもそれが復活することはなかった。コンテでアフレコはしたが作画されていない可能性あり ラスト付近に流れる島倉千代子さんの挿入歌は、いささか全体の雰囲気と合わず、私はあまり好みではなかったかな これら物語途中にかかる歌謡は次作「永遠に」などにも継承されるが、元々プロデューサーのもつ音楽業界とのコネクションを半ば強引にねじ込んだと私は受け止める シナリオは正直物足りない。デスラーが恋慕で目が眩み、付き従ってきた部下をあたら死なすなど、かなり難点がある。自爆という決着もいただけない それでも娯楽の少ない、弱っちい小学生の夏休みの夜を最高に盛り上げてくれて、私にとっては映画「さらば宇宙戦艦ヤマト~愛の戦士たち~」の次に好きな長編ヤマト作品。 [地上波(邦画)] 7点(2021-09-09 02:37:17) |
11. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 作り手がオデッセイと名付けるのなら何も問題は無いのであるが、これでは生還するのが初めからわかってしまうね 史実じゃないんだし、一応ハラハラさせとこうよそこは。まんまタイトル通りの展開だとは 本来「火星の人」と無関係な意味を持つ邦題には疑問。作り手が敢えてそう名付けなかったのは、それがふさわしくないからなんじゃないかなあ 不完全にあらすじを入れて面白そうだと思って観た。オデッセイという面白そうにないタイトルとマット・デイモンだけだったら間違いなく観ないリスト入りだった しかし思っていたような話ではなかった。火星の住み心地が良くなってしまって火星の人となってただひとり一生をポジティブに火星で終えた人のお話だと思っていたので そういう意味では期待外れだった。火星に取り残された人が救出されるまでの物語としては、面白い映画だと思う。そういうムードに飽き飽きしてるので残念だが 監督は宇宙では悲鳴は誰にも聞こえない映画で有名なリドリー・スコットだった。エンドクレジットで気が付く自分の鈍さよ… スターマンとかノリノリでかかって、複雑な感情になる。発表された時代設定の映画ではない。時の記憶がぐちゃぐちゃになる。昔のヒット曲が時代を無視してかかる映画は苦手だ 本当にヤな人は出てこなかった。悪いキャラ、フィクションなら好きだけど、NASAにはそんな人はいて欲しくはないからオッケーにしておこう 一部重要人物がほんのちょっとしか出てこなくて、でもエンディングにはしっかり出てきて。出すならもっと出せだね。テレビ局によってはカットされてしまうだろう NASA外部の知恵や援助も求めてみんなで支えたプロジェクトというアピールだろうけど、世界中でワッショイワッショイ救出劇を応援するのはリアルな世間過ぎて見たくない おそらく監督はなにか含むところがあってやってるんじゃないかな [インターネット(吹替)] 7点(2020-05-31 22:07:32) |
12. フォードvsフェラーリ
《ネタバレ》 タイトルはやや誇大広告気味で、フェラーリ側の視点はほとんどないんですね。なるほどヨーロッパ圏ではルマン’66というタイトルで公開されたらしいとか 商売としてお上手といいますか、ルマン’66でお客は呼び込み辛いでしょうからね 本作のクライマックスで出される無茶な命令もこういう営業上の理由あってのことですから、内容を如実に表したメタいタイトルともいえましょうか ルマン’66といっても単純にレースを楽しむ映画ではないんです。 販売競争では最初からフォードの圧勝で話にならないのでそこは描かれないかと思いきや、実はそれがいかにレースに影響を与えているかを描いている映画です 一つは、身内のねじ込みによる妨害です。もう一つは、モータースポーツのリザルトにまで影響を及ぼす資本力です どうしても勝ちたいフォード側は、レギュレーションのグレーな部分を用いてでも勝ちにいきます しかも、主役である二人が率先してこれを実行したのです これは、フェラーリ側の指摘でオフィシャルに処分されそうでしたが、一応シェルビーの反論で事なきを得たように見えますが 実際はフォードの資金力を前にオフィシャルが強く物言えずに引っ込めたんだろうと考えられます 名門のフェラーリの指摘ですから、普通のチームならあっさりと失格になっていたでしょう 契約社会では資本力を背景にロビー活動をおこない、自分たちの有利になるようにレギュレーションを変更させて勝利するのを正しいこととしています 途中フォードの社長はヘリで食事に行ってしまい、フェラーリとの資金力の違いを誇示しています シェルビーは、金では勝利は買えないと言っていました。純粋なのか欺瞞であるのか 確かに実際にトップチェッカーが必要ですが、はたして全く金の影響がないわけではなかったようです ところどころ皮肉っぽくてやや滑稽な描かれ方をする契約社会の駆け引きがかなりのウェイトを占め、それにまつわる悲喜こもごもでドラマを形作っています 前半はかなり面白かったです。エンツォ・フェラーリの策に乗せられて怒りからルマンでの復讐を誓うあたりは燃える展開です 中盤社長をGTに乗せてショックを与え、条件を取り付けるシーンではかなり前のめりになりました 面白いと、思います [ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-05-17 18:51:03) |
13. 柳生一族の陰謀
《ネタバレ》 萬屋錦之介の代表作といえば、宮本武蔵とコレ。錦之介ほど重要なパーソンはいない。主役だから当然だが、他のキャストが全く想像できない テレビの子連れ狼などで顔はよく知っていたが、活躍されていた頃はただ怖い人というイメージしかなかった しかし、自分も齢を重ねて、映像の錦之介よりも年上になった。さすがにもう、怖気づいてはいられない 歌舞伎のようなセリフ回しを、実録っぽさに一家言ある監督が面食らったそうですが、私はなにも、違和感を感じなかった むしろこのくらいのぶっ飛んだシナリオでは、演技の誇張なくして鑑賞に堪え得るかどうか、疑問である 烏丸少将文麿と、三条大納言実条など、彼らの奇怪な立ち位置は誇張なくして成立しないではないか 主役の錦之介がもし抑えた演技であったなら、監督は彼らにも抑制を強いることになった危惧がある。あくまで素人の勝手な推測に過ぎない戯言であるが とにかく面白かった。根来衆が隠密の集まりの様に見えたのに、証拠隠滅として討伐されたのは些か早計な、と感じないでもない。隠れるの得意だろ? [DVD(邦画)] 7点(2020-01-18 23:31:38) |
14. 暴走特急
《ネタバレ》 沈黙の戦艦の続編ではありますが、予備知識は要らず単体で問題なく楽しめる作品です 走行中の列車内での事件/トラブルはよく目にするシチュエーションですが、これは判り易くて結構おもしろいです。 セガール演じるライバックがやっぱり強すぎるんですが、銃さばきは平凡ながらも体術アクションがかっこよくて無敵のコマンドらしさが出てます 登場人物各々のバックストーリーをあまり深く掘り下げないところが良かったと思いました。スパッと終わってくれます 人質同士であまり騒いだり、無謀な足手まといが出ないところがテンポの良さに貢献して、ストレスにならないのです。実にありがたいです。 墓地でのクレーンショットに曲が流れるラストが好きですね 潜入者がライバックと知って敵の恐れおののく姿が最高なシーンです [インターネット(字幕)] 7点(2019-12-31 03:22:52) |
15. フォックスキャッチャー
《ネタバレ》 大金持ちが統合失調症とは、恐ろしい。 序盤から金持ち特有の傲慢さが非常に鼻につくデュポンに、こんな失礼な豪族とは友達になんてなれっこないと思っていたらやっぱり。 人を招くときは、下から出るもんですよ。主従の契約をして初めて、業務に必要な上下関係を表面上演じるんです。この段階で友達ごっこなどは、逆に要らんのです。 金で買えないものの筆頭とは、(無償の)愛と(無償の)友情でしょうが、無いものが欲しくなるのはお金持ちとしては、微妙です。 多分与えられた御曹司には、それがわからないんでしょうね。自分で築けば、判るものが。 単にいけ好かない大金持ちと思っていたら、病気でした。結果から逆算して罹患していたということになるのだなぁ。いやあ奇妙なものです。 全編暗いムードに覆われていて、怖くて怖くてしょうがない。三人の演技がいいと云われるのも納得の面白さでした。 [インターネット(字幕)] 7点(2019-12-29 13:24:29)(良:1票) |
16. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ/完全版
《ネタバレ》 3つの時代を行ったり来たりする構成に困惑するかと思いきや、自分はそこは全く気にならなかった いまや何回も見てるのでジャンプするタイミングはすっかり把握できている 別に難解だから繰り返し観ているわけではない、観たくなってしまうのだ。面白いし、味わい深い映画なのだ ワンス・アポン・ア・タイムと銘打っているわけだから、時代がジャンプするのはむしろ普通のことか、と思うよね いくつかある謎は相も変わらず謎のままだし、観続けていればそれらを解明できるとも思っていない。 受け止め方によってどうとでもなる映画は、真相を一つに絞ることなどできないし、また絞る必要もないと考える 解釈次第でどうとでもなる映画を、自分の推す答えを見つけて、そこになんとしても落ち着かせてやる、みたいな無粋なこともしたくない だから、正直深く考えない。ごみ収集車にマックスが飛び込んだ??無理がある。画がないじゃん。叫び声もないし。マックスの肉片も見えない ネットでそれについて考察してるのを目にしたことがあるけれど、自分それはもういいや。 あの手前、ヌードルスがマックスと別れたところで基本物語は終わってるんだ。でもそこまで気になっちゃうほど作品を愛している人もいるんだね ヌードルスという男、未来よりも過去を大切にする性格のようで、どうでもいいことは忘れるっぽいけれど、過去とおぼしき手合から招待状が来ようものなら いてもたってもいられなくなってしまうらしい。なかなか主役にしては後ろ向きでそこだけは好感が持てる。どうしようもない犯罪者だけどね アヘン窟で笑って終わるのは、少年時代の楽しかった夢でも見てるんだろうなぁ位で、謎と呼ぶ程引っかからな過ぎるかな 登場する男が、下品で酷いやつばかりだ。というか監督がそういう人なんだろうなぁ。 それなのに、雰囲気は懐かしさに満ち溢れてて良いんだから。セルジオ・レオーネさすがやね 終始流れているゆったりとした音楽にホ~ッとなっている [ブルーレイ(吹替)] 7点(2019-10-07 02:37:55) |
17. 宇宙戦争(1953)
《ネタバレ》 凄い映画だ。特撮でテクニカラーは今回が初めて。合成とか考えたらミニチュア撮影は固定も多いから重いテクニのカメラには都合がいいところ。 タコみたいな火星人の襲来という今では冗談としか思えないようなファンタジーも後々それ自体がカルチャー化することを考えると単なる失笑ポイントではなくなる。これは、発明だ そういった原作・プロットを含めてこの映画は後世に大いなるフォロワーを生んだ。シリーズ化したゴジラはかなり本作の流れを踏襲しているし 未知なるものの襲来といったら、はじめはこの映画の模倣から入ってあとは流れでお願いします、といったような定石が出来あがっている 電子的なSEは味があり、パターンのような音色の懐かしさに感動する。スターウォーズのレーザーの視覚と独創的な効果音も本作のフォロワーと言ってしまって差し支えないだろう 最初の被害者三人がやられるシーンのあのビジュアル、なかなか面白い。ダイナミックな演出だ。 70年代に昔の映画としてテレビで見た際にはあまりに映像の出来が良いので、子供ながらに洋画のもつ無限とも思える可能性に、外国を羨ましく思った たしかに、若い世代が観たら映像もお話もショボイと思うだろう。黎明期特撮のままならない制限を思えばこそ、生まれるアイデアと努力の結晶に感動できるといわれればそのとおりだ 同時に、CGで世界観を細部に至るまで作りこまねばならない現在の特撮の苦労にも目を向けていくべきだ 提供されるビジュアルよりも語られる事件が大きいと思われる場合、人はバランスが悪いと感じる。画がないのにセリフで状況説明という手法を嫌うのはその為だが 世界中が攻撃されて次々と陥落していく状況は描写していたら時間がどんどん長くなってしまうから、断片的な場面の挿入でうまく処理できればというところ その挿入カットはやや、物足りなさがあった。アメリカ国内のことはよいが、世界中となるとやはり描写が足りなく感じた しかし、あのある意味あっけないとも思われるオチは、ちょい見せ的で人格を感じさせない火星人のビジュアルとSFというジャンルを考えると 丁度良い落としどころで、スカっと終われる、ゲームに求めるような余計な粘りのない、良い切れ味であったと感じる [インターネット(字幕)] 7点(2019-10-03 12:11:18)(良:2票) |
18. RONIN
《ネタバレ》 あ、ジョン・フランケンハイマーだ。既に最低限の面白さは担保されたようなものだ。実際、ニヤニヤしながら観た。 「ケースを手に入れろ。」「中身はなんだ?」「知らなくていい。」自虐的とでもいうような解り易いマクガフィン。 中身は最後まで不明のままだが、容れ物には役割を持たせてきた。外側のケースだけがキーになるのだ。 ロバート・デ・ニーロが突然こそこそとなにかをし始めるが、ことが起こるまで目論見が読めない。なるほどと思わせるような形となって後に回収される。 人物描写として周到で用心深いところを如実に表現しながら、観ていて楽しいシーケンスだった。 冷戦終了におけるスパイたちがさながら主家がお取り潰しにあった侍(=浪人)のごとくミッションに糾合されたという意味でこのタイトルなのだが ド頭で、ああこいつらは裏切りに次ぐ裏切りでケースを奪い合って次々と死んでって、最後にデ・ニーロが一人残って ケースはセーヌ川にでも落としてしまうんだろうなーなどという予見をしながら観るのが、おそらく普通の鑑賞姿勢だと思う。 そういう風に観ると、サックリ美味しいスナック菓子のような軽快なスパイアクション映画として楽しめるし、 幕が下りてもしつこい余韻を残さず、スッパリと忘れ去って何年後かにまた鑑賞できるけどいい感じだったという記憶だけ頭に残るだろう。 カーアクションがとても良い。カーアクションにCGを使う必要など一切ないということが証明されている。 罪のない人間が理由もわからずに巻き込まれて殺されてしまうドライなフランケンハイマーのタッチはフィクションとしては正しい。 年齢制限など恐れない、本来大人向けの映画なのだ。 [インターネット(吹替)] 7点(2019-09-21 12:27:56) |
19. 暗くなるまで待って
《ネタバレ》 とてもいい映画。あらすじだけきいて、いかにも面白そうだと思っていたがこの度実際に観てやはりそう思った だが不思議なことにテレビ放映で昭和の時代から自分は一度もこの作品を観たことが無かった たしかに生まれる前の映画だけど、テレビで放送するのに差し支えある内容じゃないしこの時期の他の映画ならいくらでもかかっていたはず 率直に、なんで観てなかったんだ俺?オードリー・ヘップバーンの映画だし、日本人が好きそうなお話なんだけどなー とくにケチをつける要素はなく、面白かった。教科書的な作品だよ。 今の時代なら、さながら森林・密林内のランボーみたいに闇の中なら皆殺しにできるといわんばかりに残虐に立ち回るコメディ映画になりそうだ まあ、ヘップバーンなんで同じコメディでもこれは全く上品な作品だったけど。刺激が足りない人もいるでしょうが。 ああ、そういえばランボーの上官のトラウトマン大佐が出ていたよ。鎖鎌のような謎の威嚇は最高にウケる。それ、弱いって。 [DVD(字幕)] 7点(2019-08-31 03:59:19) |
20. カポーティ
《ネタバレ》 面白いという言葉を使うのはふさわしくない種類の映画なので 同じ意味のつもりで別の言葉でいいかえよう。見応えのある映画だった 自分はこの映画を見る前にカポーティ原作映画作品「冷血」を2タイプ観ていたが、 それらよりも本作は、より見応えがあった フィリップ・シーモア・ホフマンってすごいし、ずるい カポーティが大事なところでことごとく嘘をつくのだが 最後の最後泣きながら嘘をつきとおす姿を見ていたらこちらも激しく心が揺さぶられた 嘘か本当かなんてどうでもよくなってしまった この感情は言語化できない [DVD(吹替)] 7点(2019-08-24 02:05:12) |