1. 砂の器
《ネタバレ》 左派の先生が強い高校に通っていた関係もあり、学校で映画館を貸し切り、すでに名画の域に入っていたこの映画を30年ほど前に鑑賞。反抗期の男子高校生として最初は「たるい映画だな」という感じでしたが、中盤以降のめり込み、クライマックスには不覚にも涙が止まりませんでした。以来、松竹がネタに窮してリバイバル上映するたびに見に行き、もう10回近く映画館でみています。 確かに何人かの方のレビューにあるように、筋は粗く穴は多いです。映画館売店前の記念写真とか、新聞コラムの紙片とか。しかし、松本清張の小説にはそういうのが多く、初期の短編などは数行で事件があれよあれよと解決するものもあり、仕方がないでしょう。 やはり、最後の1時間の捜査会議、放浪回想、コンサートの同時進行の演出の巧みさ。丹波先生の思い入れたっぷりの演説、主題曲の放浪シーンにぴったりあった旋律、加藤剛の思いつめた表情、本当に患者としか思えない加藤嘉の演技など、何度見返しても飽きません。昔は丹波演説を暗記までしていました。同じくこの映画のフアンの竹中直人さんが昔よくやっていた丹波・加藤嘉の掛け合いものまねも好きで、それをさらに真似していました。昔は森田健作刑事の目線でみていましたが、自分自身も年をとり、当時の丹波刑事の心境に近いものになってきていて、あらゆる世代が楽しめると思います。(しかし、丹波・森田コンビってその後のお2人の生き様をみるとすごい組み合わせですね) [映画館(邦画)] 10点(2018-06-02 22:59:15)(良:2票) |
2. 金融腐蝕列島[呪縛]
封切り時に映画館でみました。こういう企業や銀行が舞台の映画は邦画ではあまりなかったので、食い入るようにみました。役所広司、仲代達矢、佐藤慶など重厚な布陣で、当時は金融と関わる仕事をしていて日比谷公園界隈はうろうろしていたのですが、中身もあまり違和感はありませんでした。この監督のその後の作品の自己陶酔的な表現も薄く、楽しめました。ただ、映画館ではあえてセリフがささやくような小ささで聞こえづらかったのが難か(おそらく自然な演出を狙ったのだろうが、DVDで再見したときは通常の音声レベルでした)。また、ラストはやや拍子抜けなのですが、これは原作もそんな感じなので仕方ないでしょう。 [映画館(邦画)] 9点(2018-06-02 22:10:15) |
3. 影武者
《ネタバレ》 制作の過程をめぐっていろいろと議論はあるが、やはり名作のひとつに挙げられるだろう。 われわれ日本人は、特に長谷川等伯筆のダルマのような信玄の肖像画が教科書段階から脳に刷り込まれているため、仲代の信玄像はどうもしっくりこないのは確か。 だが、そういった先入観を抜きに、自分を欧米人と思って観ると(笑)、物語、映像美、ダイナミズム、どれをとってもやはり重厚な逸品だ。ただ、、、やはり仲代には信玄公は演じられても、泥棒の影武者は違和感があった。彼が演じると、豪放な泥棒というより、知能犯、詐欺犯に思えてしまうんだよな。ここは、勝新、あるいは本来は三船だろう。 それと、この映画で一番好きだった場面。影武者が隊列を前に激を入れて、調子に乗って落馬してしまうシーンが、実は仲代ではなく本当にエキストラが演じていたことを土屋嘉男さんのエッセイであとから知ってショックだった。仲代がこんな演技ができるのかと関心していたからだ。とはいえ、そこまで監督のトータルな演出だったとすると9点。 [映画館(邦画)] 9点(2018-06-02 21:18:14) |
4. 江戸城大乱
個人的には大好きな映画。当時は小沢一郎氏が豪腕として世に知られたころで、松方さんの雅楽頭は、そうした影響を受けた角栄的な人物。また、若き日の放蕩綱吉に坂上忍、大人物っぽい光圀に丹波哲郎、紀州はケレン味たっぷりの金子信雄、尾張は官僚的な神山繁など個性的な面々が揃う。政治劇、集団時代劇としてみても面白い。史実にこだわるのは無粋というもの。ただ、ラストのだらだらとした情実ものはちょっとしらけたなあ。 [DVD(邦画)] 8点(2018-08-13 09:58:58) |
5. 疑惑(1982)
作品のすばらしさは他のレビュー通りですが、個人的には20数年前に当時住んでた近くで、この映画がテレビ放映されたちょっと後、同じように港からの乗用車転落事故があった。仕事上で関係があったので、引き上げを見にいったら、クレーンでつり上げられた車の窓が破損しておらず「やっぱり、中から空けないと割れないんだ」と思ったことを覚えている。実は、その車の持ち主は重要事件の容疑者と目された人で、その後、行方不明になったという小説や映画のような展開になった。 [DVD(邦画)] 8点(2018-08-13 09:52:04) |
6. 2001年宇宙の旅
はいはいSF映画の金字塔ね。コンピュータの叛乱ってやつ? んでもってキューブリックね、ほいほい。俺「時計じかけ」も「フルメタル」も好きじゃなんだよね。 と、長い間ずーーと観なかったのを後悔しました。終盤の描写は賛否や解釈の差はあるでしょうが、とにかく映像が素晴らしい。宇宙空間の凛とした静けさがひしひしと伝わり、CGではない本物っぽさを感じます。俳優がほとんど無名の人たちだったのも、リアリティがありました。 [映画館(字幕)] 8点(2018-04-02 20:25:13) |
7. ドラゴンへの道/最後のブルース・リー
ブルース・リーの中では数少ないコメディタッチの作品で、リーの笑顔や照れた表情が印象的。ノラ・ミャオの美貌とプロポーションは完璧で20歳そこそことは思えない。自分は英語版で見たため、リーが言葉がわからない様子や異文化ギャップなどは楽しめなかった。やはり原語版で見るべきだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2023-08-19 22:35:15) |
8. 茜色に焼かれる
はっきりいって尾野真千子ってあまり好きな女優じゃなかったが、この映画は前半と後半、終盤とキャラクターが大きく変わり、表情、セリフ、仕草がすごくうまい。息子役の俳優も非常にうまい。ちょっと突飛なエピソードもあるが、この物語の世界観にずっと浸っていたい感じ。 [映画館(邦画)] 7点(2023-01-21 23:55:48) |
9. 蜜蜂と遠雷
《ネタバレ》 原作未読。たぶん好き嫌いがはっきり分かれる作品かと思います。もっと審査員側の裏話があっても良かったかな。それと日系人以外の最終選考の登場人物も1人くらい触れた方が奥行きが出た。監督はポーランドで活躍してた人なのでポーランドの若手俳優も起用できたと思うが。主演の松岡芙優は大丈夫かなぁと思ったが逆にその不安定さがうまく役にあっていた。個人的には好きな女優ではない。この映画で特筆すべきはやはり新人の鈴鹿くん。何者かほとんど不明な人物なのに、一瞬で神童オーラが出るのは凄い。それと映像がとても美しく、この監督の別の作品も見てみたいと思いました。 [DVD(邦画)] 7点(2021-07-04 17:42:32) |
10. ミスター・ルーキー
仕事で煮詰まっていたときに、抜け出して映画館でみました。まったく期待していなかったけど、面白かった。長島一茂はアウェイにもかかわらず健闘。ガタイの良さと身のこなしが演技力ゼロをカバーしていた(と思う)。鶴田さんもシリアスな映画だと浮いてしまいがちだが、コメディだとその美貌と鼻にかかった甘え声が引き立つ。橋爪さんや國村さん、それにタイガース落ちの面々も盛り上げた。選手役の人たちもノンプロ選手が主なので迫力があった。私は関西出身というだけで阪神ファンはCランクなので、Aランクの人たちから観たら粗が目立つかもしれないが、スタッフの純粋な野球愛を感じることができました。 [映画館(邦画)] 7点(2018-08-01 21:45:11) |
11. 紳士同盟(1986)
薬師丸ひろ子のアイドル女優末期の作品。せっかくの名優揃いなのに盛り上がりに欠け、設定もかなり無理がある。ラストはなんか肩透かしで「え?これで終わるの」という感じ。登場人物たちも納得できないだろう。唯一の収穫はクレジットタイトルの薬師丸の曲が「何が出るかな🎵」の元歌だと初めて知ったこと。 [インターネット(邦画)] 6点(2023-08-19 22:40:17) |
12. 遺産相続
《ネタバレ》 個人的には嫌いではない映画とは思うんだけど、そもそも遺産相続とはいっても非上場の同族企業の株式がその対象。どうみても中小企業で登場人物たちもそう言ってるのに、株価の価値が総額40〜50億円って、大企業じゃん。この設定に最後までついていけず、そもそも非上場なので現金化も難しく、たらればの大金で右往左往するなんて、この人たち大丈夫かと思いつつ見てました。佐久間良子は熱演だけどやっぱりオバさん臭が目につき、小川真由美はこれといった見せ場もなく、清水美砂の異様なキレっぷりが印象に残る。野々村さんは頑張ってたけどやっぱ痛々しい。今田、東野、西端が一生懸命盛り上げようとしてたのに、プロ俳優陣との間に冷たい壁があるようで不憫だった。 [インターネット(邦画)] 6点(2023-08-19 22:27:44) |
13. テラ戦士ΨBOY
《ネタバレ》 菊池桃子が主演じゃないと成り立たない映画。他のアイドルだと「なんでマネージャーこんな仕事とってくんだよ」感がどうしても滲み出るが、彼女は本当にボーイのことを助けたいようだ。だが、視覚効果やセットは割としっかりしてるうえに脇役もいい。桃子軍団もこの時代に良くいたチェッカーズ風ヤンキーが1人もいない。敵役に無名塾出身の益岡徹を据えたのもいい。舞台の芝居の経験のない役者だとこなせないだろう。竹中直人もこの頃から安定してる。政財界のボスが鈴木瑞穂、名古屋章という渋さ。なんとなくリアリティがある。とはいえ、結局ボーイが何しに地球に来たか良く分からないし、終始受け身で結局迷惑な存在でしかなかったのは当時も疑問だった。ETの方がまだ積極性とメッセージ性がある(当然だけど)。 [ビデオ(邦画)] 6点(2021-05-31 07:10:26)(良:1票) |
14. 化石
《ネタバレ》 たまたま劇場の環境でみる機会に恵まれたが、もともとはテレビドラマの再編集らしく、長い、長い、とにかく長い。主人公の佐分利信のペースがそう感じさせるのかもしれない。内容は渡航先の欧州(といっても昭和の重役旅行ですが)で死生観を見つめ直すのが主軸。死神役の岸恵子などベルイマン風で楽しめたが、これはいい意味で全編、佐分利信の加齢臭にどっぷりつかる映画です。しわがれ声や、おそらく熱をもってるであろう妙に厚ぼったい手のひら、そして髭剃り跡から匂ってきそうなきついオーデコロン。いえ、私は爺フェチの女性ではなく、単なる中年の男ですが、本郷のお屋敷風の主人公の家からも硯のような匂いが漂ってきそうだった。ただ、残念なのは、結末が夢オチ風で終わったこと。苦悶の最期と、主人公がみたであろう幻影を描写してほしかった。 [映画館(邦画)] 6点(2018-08-01 22:00:16) |
15. 北辰斜にさすところ
《ネタバレ》 古き良き旧制高校野球部と戦中秘話を、なにかを抱え込んでいる老人とその孫の関わりを通して描く。それなりに思い入れたっぷりのムードですが、神山監督作品によくある「一見実話ベースに見えて完全つくり話」というのがチラチラ見えてしまっていた。ラストは結局、野球の結末がどうなったのかわからないまま、フィールドオブドリームスのようになってモヤモヤ感も残った。 [DVD(邦画)] 6点(2018-08-01 21:50:06) |
16. 半落ち
《ネタバレ》 原作未読ですが、いかにも横山秀夫テイストで楽しめた。直木賞選考過程でハードボイルド氏とルンルン女史から骨髄ドナー登録に関し「事実に反する前提で書かれている」とクレームがついたそうだけど、この2人ってそんなに事実関係に裏打ちされた小説って書いてたっけ? ともかく、内容は面白いが、映画としては「ロクヨン」などと比べ減点が多い。まず、鶴田真由演じる記者。鶴田さんはすごいきれいで大好きな女優さんなんだけど、その取材方法は変だ。そもそも、県警刑事部長の部屋ってあんなオープンじゃないし、地検検事正の懇談も個別の事案の話はしないはずだし、事務方が同席して、終了後全員追い払うはず。ネタ元や筋がバレバレなやり方するかな。それと、嶋田久作の本部長が本部長っぽくない。みんなが本部長室に集まって会議って、せいぜい警務部長室でしょ。毎度おなじみの県警警務部対刑事部の争いもちょっと物足りなかった。とはいえ、國村隼や豊原功輔なんかは巧くて芝居が引き締まった。 [DVD(邦画)] 6点(2018-08-01 21:37:55) |
17. 日本のいちばん長い日(2015)
《ネタバレ》 ファーストシーンの東条英機の登場には驚かされた。歴史の教科書やモノクロフィルムで見た東条そのものが動いて話しているからだ。われわれのイメージ通りに。演じた舞台出身の中嶋りゅうさんはその後すぐに亡くなられたそうで残念。ただ、映画そのものは1967年版に比べ緊迫感も皆無で、阿南がそこまでオールマイティな人物だったのか、と疑問。陸相官邸も「なんか京都のお寺みたいな情緒のとこだなあ」と思ったら、本当に京都の寺のロケだった。全体として8月の蒸し蒸しとしたけだるさ、焦りが感じられず、若手将校も大学のサークルみたいで、物語のテンポをそいでしまった。また、1967年版では阿南と伍した重要人物の米内海相(当時は山村聰!)が今回はあまりに役者が軽すぎる。渡辺謙かせめて三浦友和くらいでないと。鈴木総理役の山崎努は気を吐いていた。 [DVD(邦画)] 6点(2018-06-12 20:49:33) |
18. 白昼の死角
高木彬光の原作は金融ピカレスク小説としては出色の作品。文庫本だとかなり分厚いのですが、一気に読めました。手形のパクリ、株の信用売買などなど、現在にもつながるような内容で、実に巧妙に詳細に手口が表現され、夢中になった記憶があります。 封切り当時はまだ子供でダウンタウンブギウギバンドの主題歌は耳に残っているのですが未見で、中年になってやっとDVDで視聴。しかし、、、大筋は原作は追ってるものの、醍醐味である金融犯罪部分は薄っぺらく、Vシネマばりのアクションが続くのみ。せっかくの俳優陣を揃えたのにがっかりでした。例えるなら「白い巨塔」を手術の血しぶき部分のみ映画化したような感じ。村川監督は好きなのですが、この人はおそらく会社組織や金融の知識や興味がほとんどないのではと。「蘇る金狼」なども、アクションは面白くいい映画なのですが、会社組織の描き方があまりに荒唐無稽でした。 映画公開時にテレビシリーズでやった渡瀬恒彦、山本圭出演のドラマの方がよかったなあ。 [DVD(邦画)] 6点(2018-06-02 22:21:51) |
19. 動乱
《ネタバレ》 軍人美化とか時代考証無視とか野暮なことは言いません。ただただ映画としてつまらなかった。これが「八甲田山」「日本沈没」の緻密な演出の森谷司郎監督作品とは到底思えない。確かに健さんはカッコいい、小百合さんは綺麗だ。かと言ってあまりに臭すぎる展開、何の捻りもない勧善懲悪、そして妙に軽薄な音楽。しかし忠臣蔵ではあるまいし、周囲の人が皆健さんに惹かれてヨヨと泣くって、大丈夫なのか。肝心の226当日はあっさり終わっちゃうし。森谷監督はこの後、ちゃんと「小説吉田学校」のような秀作も出してるし、やっぱ東映が悪いのかな。 [DVD(邦画)] 5点(2022-09-24 23:41:36) |
20. 野ゆき山ゆき海べゆき
封切り時に鷲尾いさ子さん見たさに映画館へ。必然性があるとは思えないヌードシーンはショックでした。大人になってから、ロリコン伯爵として有名な大林監督の脱がせテクにかかったんだろうなあと分かりましたが。級友役の女の子も無駄にお尻出さされてたし。内容は戦時中に少年期を過ごした人以外は全く思い入れられない内容。いや、大林さん以外の同世代の人もあまり感情移入出来なかったかも知れない。 [映画館(邦画)] 5点(2022-09-19 16:33:42) |