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エリア加算さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 67
性別 男性
自己紹介 琴線に触れる映画は人間としてのリアリティが描かれているかどうか。作品として大事なのは哀切さは容易に撮れるが、それが痛切であるかどうか。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 
やっと自分がイメージするレベルのコーエン兄弟のブラックコメディに出会えたという印象です。正直言って今まで見てきた彼らのコメディー系の作品は自分にとってはどれも不満足で、「赤ちゃん泥棒」を撮ったあなた達ならもっとできるはず、とずーっと思っていました(ていうか結構失礼な話。デビュー作から結果出してないと言っているようなもんだもん)。今作ではキレッキレのブラックさが炸裂でアメリカ社会の俗人たちをカリカチュアして笑い飛ばし、その加減が私にはちょうどいいくらいに下世話で大満足でした。リンダの男漁りと美容整形の異常な執着ぶりとか、不倫もし、大人の玩具を自作するハリーの過剰な性欲、チャドの筋肉バカぶり、なぜかロシア正教を棄教し資本主義に隷属しているテッド、夫を見限っているのにその相手がエロしか目がないハリーだというインテリのケイティ、ケイティが裏切っているのも気づかず職場でアル中認定を受けているのに自分は正常だと信じているオズボーンという具合にすべての登場人物を愚かしく嘲笑う脚本、最高ですね。特に私が一番しびれたシーンはリンダが出会い系で一晩ともにし金まで盗られ、振られたさえない中年男性が最後の方でハリーと仲良く歩いているところを羨まし気に見ているかと思いきや、ちゃっかりまた別の女性としけ込むという意地悪な視点。コーエンさん、えげつなくてイイですよ。そしてユダヤ教信者(?)故設けた神の視点をCIA上層部が担い、最後に厳かに(?)彼らがすべてを処理して終えるという完璧な構成。導入と最後が人工衛星を使い空から地上をズームインし、エンディングは対象をズームアウトして閉じる神の視点のメタファーを用いる芸の細かさ。大いに堪能させていただきました。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-12-23 22:23:19)
2.  パンチドランク・ラブ 《ネタバレ》 
初めに言っておくとこの映画はおとぎ話なんです。でも、「おとぎ話です」と銘打っている映画ほどはつまらないものはないですね。そこをわかっていてこの監督はあえてすれすれのラインを狙って撮っていて、普通のコメディ面をして実はそうではない。その具合が実に絶妙だなと。しょっぱなのピアノから主人公のスーツの色や他者との会話が少しずれている具合とか、彼のキレ方の半端ない感じとか、悪の組織の手の下し方とか非常に漫画チックっで時折挿入するサイケなインターミッションなど、ちゃんと夢の中のお話感を醸しだしているんだが、ヒロインがエミリーー・ワトソンというちょうどモテない君を好きになりそうな母性溢れるリアリティあるくらいの容貌で、夢物語じゃない、これ現実だよと観客をミスリードさせる仕掛けもちゃんとぬかりない。でも、この映画きっとリア充な男たちには何ひとつ心に響かない映画でしょう。この映画を評価するのはモテない男たちで、おとぎ話なんだけど、そうじゃないと思わせてくれるクオリティーを持った、感動的で確信犯的な映画なんです。個人的な感覚ではこれと似た感興を催した映画は「眠れぬ夜のために」かな。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-03-18 22:39:35)
3.  シリアスマン 《ネタバレ》 
この作品は日本人ましてやユダヤ教の知識がないと面白さは半減するのでは?っていうかなり見る人を選ぶ映画。それどころかこの映画ってある意味ユダヤ教のマジな宣教映画になってるようにも思えるのだけど。まぁ、コーエン兄弟が真摯に布教映画を作るはずはないが、それにしても敬虔な教徒を嘲笑するつもりで撮ったのだとしても、描くタッチとナラティブ上教義を知らないまっさら状態の日本人が見たら、教義のすべては「然り」とせよでもあるので、コメディ色弱めの宗教映画に見えてしまうのでは。終わり方は結構不評だけど、私はなかなかイカしていると思う。禍福あざなえる縄のごとしで、ダニーがようやく悪友にマリファナの代金を返せると思ったら、ラリーの胸に異常が見つかるという今後の不幸を象徴させるよう竜巻の接近でぶった切るという、上映時間を勘案したのと、あそこからエピソードを重ねても冗長になるだけという合理的な理由もあったのではと勝手に推測しているが、一つだけ言えるのはコーエン兄弟にとってユダヤ教は本当に彼らに根深く影響を与えているのだなということ。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-01-03 21:41:43)
4.  息もできない 《ネタバレ》 
多部未華子にそっくりなキム・コッピのキャスティングがばっちりはまっている。多部よりも線が太く勝ち気で意志が強く母性も強いヨニの役をしっかりと演じている。暴力シーンがこれでもかというぐらい溢れているが不思議と過剰だとは感じられない。オールドボーイとかの方がむしろ狙った感が透けて見える。設定としてはよくある優等生女子と不良男子の恋愛ものカテゴリーにもみえるが、この映画の独自性は暴力性ではなくむしろ「家族」という人間関係にこだわっている点だと思う。父の虐待により家族が解体し、母も亡くし彼を憎悪し、家族というものを忌避するようになったサンフン。しかし腹違いの姉の息子ヒョンインを不器用な表現でかわいがり、やはり家族を希求しているサンフン。一方ヨニの家族も母は既に亡く、父親は呆けており、兄もグレて金の無心しかしない状態で完全に崩壊している。彼女も孤独であり、家族のぬくもりを求めている。物語が進むうちにサンフン、ヨニ、ヒョンインの3人の疑似家族が醸成されていく。そしてサンフンが変化するのは父親を殺そうとしたのにすでに自殺を試みていた彼を見つけ、必死で救おうと病院に担ぎ込み輸血までする。自分の中にあれだけ遠ざけようとしていた拭い難い家族への愛情をはっきりと確信したのだろう。そして夜河原でサンフンがヨニに膝枕をお願いするシーンは互いの心境の変化と心情の接近が非常に過不足なく甘ったるくもなく抒情的に描かれたいいシーンだと思う。サンフン亡き後のマンシクも含めたヨニ、姉、ヒョンインの疑似家族的な温かい交流シーンが描かれるが、そのあとすぐにそれをを打ち消すかのようなシビアなラストシーンはヨニにとっては救いがない残酷なシーンでこれも監督の甘ったるくしないぞという意思が感じられなかなか良いと思った。そういう意味ではこの作品は人間の残酷さと愛情深さという両極の要素のバランス配合が非常に優れた良い作品だと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-09-19 00:09:23)
5.  バーバー 《ネタバレ》 
コーエン兄弟の40年代ハリウッド作品にありそうな映画のパロディーというかオマージュ的な作品に思えた。話の流れは無理なく結構よくできていると思う。エドのかみさんに対する淡白な態度など非常に身につまされ、リアリティはある。最後の方に円盤のモチーフやUFOのシーンなどこのままだとただの普通の映画で終わってしまうからコーエン印を刻印しておかねばと思ったのかもしれないが、なんか違和感があった。でも、コーエン兄弟を知らない人が見てもそれほど気にならない程度にとどめており、マニアが見ればこんないろいろ穿ったコメントも出てくるが、何の知識もない人が見ても、よくできた男の転落劇で、2時間損した気にはならない、ごくまともな娯楽作品です、ハイ。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-09-04 18:03:40)
6.  冬の小鳥 《ネタバレ》 
やっと見ることができた。個人的に孤児院の話は好きで、場自体が悲哀を孕み、濃密な人間ドラマを生みやすい環境でもある。映画ではないが井上ひさし「41番の少年」や吉本直志郎「青葉学園物語」シリーズなど胸を締め付けられる哀切さがある。さて念願のこの映画。皆が言うようにキム・セロンの演技が素晴らしい。彼女の表情がこの映画の主旋律であろう。自分が捨てられたという事実がどうしても受け入れられないジニ。そこに友人としてスッキとの交流が徐々に芽生え、少しだけ彼女の心に落ち着きが生まれる。スッキのような野心的な子も現実にはいるだろう。また先輩イェシンのように悲しいエピソードも彼女の中で思い通りにいかない人生への苛立ちを醸成させる一助にはなっていたことだろう。イェシンが去った後の寮母がやりきれない怒りの表情で布団をたたくシーンなど、この施設での悲哀が十分少女の胸に伝播したことだろう。結局ジニが遠い異国のフランスに行く決意をしたのも友人スッキの影響があったからだと思う。彼女が去った後再び現実を受け止められなくなり、自分で自分を埋葬しようとするもできない。現実を見るしかない。どうせ養子となるなら、いっそ父親を思い出さないよう国内ではなく、海外へと吹っ切ろうとする心の動きも理解できる。最後の父親との自転車二人乗りの回想シーンから空港で里親に出会う流れは本当に静かな感動を生む。自伝的な映画なのでリアリティに満ちているのは当然だが、一つ気づいたのはこの施設女児専用なんだなと。これが男女両方の施設だともっと猥雑なお話になる可能性もあったと思う。実際の彼女がどうだったかはわからないがただ、女児専用の施設という設定でストーリーに一定の清潔さが担保されていると思う。少年との恋愛なども描くと盛りだくさんになるし、主題がぼやける可能性もあるから、これはこの設定(実際どおり?)でよかったと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-08-14 23:00:15)
7.  リトル・チルドレン 《ネタバレ》 
登場人物の設定、話の展開などすべてがリアリティかつ緻密にできていて完璧。唯一の傷は最後ブラッドが駆け落ちの待ち合わせ場所に急ぐのにスケボーををやるくだりくらい。でも、本当あれなんで?現代人の闇、苦悩、葛藤、自己中で未成熟な幼児性など今のドラマではよく取り上げられるいわばありふれた素材だが2時間の映画作品でこれだけ群像劇的に描いて嘘臭くなく飽きさせずに描いたのはちょっとないんじゃないかな。監督が神の視点で一人一人を冷ややかに見る皮肉な感じも痺れて非常に好み。題名からも嫌味でリトル・チルドレンって言って集約させているくらいだし。設定のうまさは限りなく挙げられるけど、ラリーがロニーを攻撃するのも少年の誤射からPTSDで警察を退職せざるを得なくなり、仕事に誇りを持っていたゆえにその発露の場を求めてのこととか。そのロニーの母親がお前は人のことを言えるのかと逆にラリーに切り返すブーメランとか。ロニーのデート相手の女性の設定もいかにもそんな人じゃないと広告見て応募しないよなという感じだし。細かいところでいえば、ブラッドがサラの自分に対する恋慕に気づく瞬間やキャシーが二人の関係に気づく会話等々数を挙げればきりがないくらい実に芸が細かい。磨き上げれた碧玉のような作品だ。ケイト・ウィンスレットつながりでもないがレボリューショナリー・ロードも似たテイストだが、あちらの方がもっと生真面目で熱量があり、ある意味映画的でもあるが、こちらのほうは文学的でかつ話に広がりもあり、より完成度が高く感じられた(原作があった)。このサイトでは非常にunderestimateだけど。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-08-10 23:57:28)
8.  ワールド・オブ・ライズ 《ネタバレ》 
点数が低いですねぇ。日本人ってこういう職制間の葛藤があんまりドラマとして見られないのでは?和を以って尊しとなすで組織が進む国民性ゆえか。脚本もよく練られていると思いますけどね。ハ二を出すことで、現場を知らない上司と現場であくせくする部下の単純なケンカのお話に堕さずにハ二を裏切りながらも職務を進めるフェリスの苦悩。人間的にはハニの方を尊敬しているのに。男の三角関係を作り出すことで話に深みを与えています。個人的にはマーク・ストロングははまってましたね。レバノンの諜報王国の王様感がバリバリ出ていました。いやぁ、ほんとカッコイイ。ラッセル・クロウも嫌な上司役を遺憾なく演じていましたが、キャラクター付のためだと思いますが、わざと下から上目遣いに見る演技が私にはちょっとクサく感じまたねぇー、ハイ。現地人の看護師とのロマンスは取ってつけた感がありますが、ハリウッドの作法ではまぁ、しようがないかな。映画は娯楽商品ですから、プロデューサーが入れろと言えば。最後アメリカの独善・強引に進める中東での諜報破壊活動が結局は現地の優秀な諜報機関に鼻を明かされるという結末は良かったですね。ハ二の紳士ぶりが却って凄みを感じさせて、マーク・ストロングの役作りは大成功。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-07-04 21:03:20)
9.  渇き(2009) 《ネタバレ》 
不思議な映画。不倫モノをありきたりにしないために吸血鬼と人妻が恋に落ちるという、またその吸血鬼が神父という凝った設定。他の方が言っているように映像は美しいし、つまらなくはないが、なんかしっくりこない感じ。そしてこの消化不良感が何かやっと気づいたのだが、神父の倫理観がちと分かりにくいところ。ラストの心中というのが自分なりのけじめの付け方なんだろうが、そこに至る描き方がちょっと弱いような。肉欲に溺れるというのも別にわからなくはないが、韓国映画お得意のもうちょっと罪との葛藤を深く描いたなら、さらに恋愛とアクションとホラーのハイブリット感が強まった傑作になったと思う。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-04-17 22:47:41)
10.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
テンポの良く質の良いサスペンスコメデイー。でも、ちょっとテイストが微妙に違うなと思ったら、やはり監督がスプラッターオタクだったのね。都会と田舎の職場のカルチャーギャップの描き方も丁寧にやっているし、個人的には英国の田舎の雰囲気がわかってよかった。後半の真の敵との対決の際に同僚を説得してすんなり納得するのがちょっとご都合主義だけど、街中での悪の結社(?)たちとのドンパチもあり得ないといえばそれまでだが、あれはエンタメとして確信犯的にやっているのが明らかにわかるので、問題なし。むしろ馬鹿馬鹿しくて良い。前半はカルチャーギャップサスペンスコメディー、後半はスプラッターサスペンスコメディーという、ハイブリッドで、なんか見終わった後ほっこりさせる不思議な娯楽作品。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-03-28 22:53:28)
11.  インフォーマント! 《ネタバレ》 
面白かった。リアリティあるブラックコメディだなぁと思えば、なんと実話。マークという人間に周りが振り回される、しかもFBIまでってすごい話。事実は小説よりも奇なりの王道パターン。こんなのが実話だったら脚本家は本当参るね。マット・デイモンの力演も素晴らしかったし、ソダーバーグもBGMを有効に使って抑えめに正攻法で撮っていてよかった。オーシャンズシリーズからソダーバーグって尖った演出が取れて丸くなったような気がする。安定感と才気あるいい監督っていう感じで年を重ねていいキャリアを築いている感じ。ただ、若くして世に出ているから何となくだけど、あと10年もしないうちにやり切って撮らなくなるような気がする。直感だけど。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-02-20 22:08:41)
12.  サブウェイ123 激突 《ネタバレ》 
ずいぶん点数が低い・・。みんな「スピード」みたいなアクション映画じゃないと納得しないのかしら・・。「スパイ・ゲーム」がイーサン・ハント張りのアクションがないからといって点数が低いように。このレビューで納得いかないトニー・スコット低評価作品がまた一つ増えた。これ結構レベルの高い脚本だと思う。証券マンがあそこまでハイジャックできるかというのとデンゼルが最後車を奪ってカーチェイスをするのはちょっとご都合主義だけど、それ以外は非常に丁寧に作られた交渉劇ものだと思う。冒頭の指令室のガーバーと周囲の会話で彼が胆力のあるひとかどの人物であることがちゃんと読み取れた。そのあとライダーとの会話で彼がたたき上げの優秀な人物であることをちゃんと回収し、のちに地下鉄を運転させる伏線も張っている。交渉担当刑事が彼にコーチをして速成の交渉人に仕立て上げるのも彼の人物設定がちゃんと効いているので、違和感はない。ガーバーとライダーの関係性も非常にユニークかつリアリティをもって物語の主軸を作っている。あと感心したのは市長の人物造形。本当にああいう市長はいそう。また、ヘリコプターに乗る前にカミさんに今生の別れになるかもしれない電話をあえて感動的にせず、牛乳を買ってくるのよと言うああいいう終わらせ方もガーバーの人物設定を生かしつつ、非常にリアリティがあって見過ごしがちなちょっとした場面だけど感動した。ライダーの妙にカソリック的な敬虔さと、拝金主義の証券マンという2面性も実に人間的で、すべてにおいてこの映画の登場人物ってリアリティかつ魅力的に描かれていて、地味で派手なアクションはないけど満足度の高い素晴らしい娯楽作品です。
[地上波(字幕)] 8点(2021-01-23 22:04:14)
13.  クロッシング(2009) 《ネタバレ》 
前のレビューアーさんが言ってたようにタイトルがよくない。本当おせっかいだと思う。ただ脚本は素晴らしい。3人の警官の群像劇の描き方のバランスもちょうどよく、それぞれの人生の悲哀もリアルに描かれている。イーサン・ホークは同僚警官を絡ませることでより生活苦のもがきを描写しているし、ドン・チードルも麻薬組織のボスとの友情と上昇志向のFBI女上司との確執も交え、彼の苦悩と仁義がしっかり響いてくる。リチャード・ギアだけ、前の二人に比べるとエピソードが薄いという意見もあるが、これはあえて大過なく定年まで過ごす老年警官を置くことで、くどくならないよう全体のバランスをとっているのだと思う。ちゃんとエンディングも彼のパートで終わらせている配分の良さ。すべてにおいてバランスが良い。最後に事なかれ主義で警官人生を送ってきたのに退職と同時に正義感を出すというストーリー展開も抵抗なく受け取れた。ひいきにしている娼婦に定年後一緒に暮らさないかといって、体よくフラれるのも初老の孤独な男の人生の苦み炸裂で素晴らしい。アメリカの警察のリアルを背景に(もしそうだとすれば結構すごい)3者3様の人生模様を描いた救いのないドラマ。踊る何とかの製作陣はこの映画を見たとき恥ずかしさを感じなければいけないと思う。個人的にはドン・チードルの演技が一番良かった。
[地上波(吹替)] 8点(2021-01-16 22:13:17)(良:1票)
14.  オアシス 《ネタバレ》 
この映画が素晴らしいのは主演二人が美男美女ではなく、華のない(見た目の話ね)二人で撮っていること。邦画でもハリウッドでもこういうキャスティングはしない。その結果入り口でがっちり監督の世界観に没入することができる。互いに阻害された者同士の愛の話と抽象することはできるが、脚本が濃厚かつ精緻だからから、そんな一言で終わらせられないほど、言葉を費やせずにはいられない作品だ。ジョンドゥがコンジュを犯そうとしたのにそこから恋愛に発展させるのも彼が花束を贈ったことから自分を性のはけ口としてみたのではなく、一人の女性と見たのでは?と思うことができたからこそのリアリティが担保され、彼がその後はしっかりと体を求めず異性として自分とデートをしたことで、二人の関係性の進展に何の違和感もなく見ることができた。また、彼が発達障害であろうという設定もよく効いている。そして、なぜジョンドゥの家族が彼を切らないのかという疑問も後半にちゃんと種明かしもし、ここでもしっかりとリアリティを担保している。ある意味ハンディキャップを負った男女二人の純愛という安直になりそうな話をこうまで腹に深く響かせられるのは、それぞれの登場人物の自己中をうまく共鳴させることで、その結果としてドラマが生まれ、悲恋となるという作品世界を作り出せるイ・チャンドンの人間理解が優れているからだ。この映画で一番心を抉られたシーンは最後警察署で調書を取る前に刑事が言った「あんな子を(犯すとは)人間として理解できないね」ということでコンジュの尊厳を踏みにじり、周囲の人間のエゴに搾取されまくり、自分が差別により健常者と同じように愛する男と性愛すらできないこの現実世界に苛立ち、車いすを自ら暴走させ自傷しようとする場面だ。コンジュのみがこの映画の登場人物のなかで唯一自己中に生きられない一番の被害者であるからより胸に響いた。エンディングで一筋の希望を見せるのもイ・チャンドンのスタイルだし、彼の弱者に対するまなざしだろう。それにしてもこの女優の演技は本当にすごい。初めの方から観ていて目のいき方なんかを見ていたらひょっとして本物?と思ったほどだ。レインマンのダスティン・ホフマンよりもうまいと思う。あと、インド人と象のシーンだけはどうしても安っぽく、そこだけは唯一興ざめしてしまいました。ごめんなさい。
[インターネット(吹替)] 9点(2020-10-24 23:37:38)(良:1票)
15.  母なる証明 《ネタバレ》 
成人の息子の母親が主人公というのも珍しい。その母親が謎を解いていくという今乗りに乗っているポン・ジュノの前の作品。やっぱり彼独自のナラティブは引き込まれるし、謎解きも物語の推進力として機能し、最後までダレずに見ることができる安定の実力。彼の作品ってなんか登場人物に得も言われぬおかしみがあるんですよね。ダウンタウンの松本が言うように悲惨さの中にある笑い(彼が具体例で挙げた父親がブリーフに「お父さんの」と書いて銭湯で笑われるというエピソードが非常にわかりやすい)。個人的に微笑ましく感じたのは自分を容疑者にしようとした母親を何事もなかったかのよう助けてあげるジンテとか。やっぱり独特の世界観がある人の作品は強い。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-09-22 22:37:05)
16.  ロード・オブ・ウォー 《ネタバレ》 
面白かったです。一切ダレずに見ることができました。噂には聞いていた武器商人の世界を垣間見ることができましたし、どの世界でも成りあがる人には才能があるということですね。ソビエト崩壊後の武器の大量供給とアフリカ諸国の紛争との関係性などもなんか考えさせられますし、アフリカの独裁者たちをのさばらせたのも国連常任理事国たちなのだと改めて認識できました。そういう告発映画をエンターティメントにするハリウッドの人間の懐深さも日本人(あくまでエンタメ業界)と比べると大人ですね。個人的に良かったのはリベリアの大統領親子。本当にあんな感じなんだろうなと思わせてくれて、この映画の説得力を高めています。エンディングでユーリーがバレンタインに「お前の努力は徒労に終わるよ」と予言するドンデン返しもなかなかスマートでよかった。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-09-21 13:15:39)
17.  レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで 《ネタバレ》 
いい映画です。こういう地味な人間関係のドラマで2時間見せるのって監督の地力が問われるので、サム・メンデスはやっぱいい監督です。前作のアメリカン・ビューティーもロリコンの部分がちょっと話題になりましたが、中身は結構地味な親子関係のドラマでした。ちょっとハリウッド1作目なんで少し派手目な演出もしていましたが、この作品に関してはチャカつきは一切なしで非常に素晴らしかったです。デカプリオってトム・クルーズと一緒でどんなに力演しても「デカプリオがやっている***」に私は見えちゃうのですが、この作品に関してはきれいにデカプリオが消えていましたね。ケイト・ウィンスレットといい演技合戦をしていました。この年彼女「愛を読む人」にも出ていたんですよね?まさに絶頂期ですね。見ていてこんだけ夫婦喧嘩していて子供が出てこないのっておかしくない?と意地悪な感想を持ったらすぐ次の場面で子供を預かってもらっているというセリフで回収している隙のなさ。サム・メンデスってこういう緻密さがあるなと前作の感想をふと一緒になって思い出しました。エンディングのキャシー・ベイツの旦那のズームアップもセンスあるなと感心です。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-08-16 22:57:02)
18.  シークレット・サンシャイン 《ネタバレ》 
こういう映画って日本では少なく見積もっても平成以降絶対作られてないだろうと思う。創唱宗教が根付かないから、監督たちにこういう映画を撮る力もないし、そもそもモチベーションすらも湧かないだろうし。でも、別に制作サイドの問題じゃななくて受け手のレベルも低いから「○○劇場版」がしっかり産業になってしまう状況ゆえこういう映画を受け止める土壌がない。日本のエンタメレベルの低さの悲しさ。他のレビュアーさんが言っているように宗教による自縄自縛というか救いを求めたがゆえにそれ自身に傷つけられるという形而上の問いをテーマにしている。こんなテーマにしびれる日本人はまずいないとしても、導入部分はもっとテンポよくできたのではという他の方の意見に賛成。子供が殺されてからドライブがかかっていく感じだが、これも他の方が言っていたけどエンディングがちょっと肩透かしを食った感じ。このストーリー進行でどうやって最後終わらすかというのは確かに結構難しいと思う。ラストショットの象徴の提示の仕方ももう少し丁寧にした方がよかったような気がする。主人公の容姿の程度といい、都会からやってきて、無意識に地元の人を見下している描写などリアリティをしっかり追及していて非常に良かった。ベルイマンとかだとただひたすらテーマに関する問答を延々進めていく息苦しさにあふれるんだろうけど、この映画はソン・ガンホという狂言回し、ある意味主人公を見守るキリストの象徴を配置しているので、ひたすら哲学でなく、生活の中の宗教という形で描いていて疲れながら見続けるということはなかった。北欧とアジアの民族性の違いか?トータルで見ると技術的にちょっと残念なところもあるので、評価8.8点のところを繰り上げで9点にしました。
[インターネット(字幕)] 9点(2020-08-16 18:33:38)
19.  愛を読むひと 《ネタバレ》 
見終わって腑に落ちなかった点がヒロインが文盲を恥じる点ですが、他のレビュアーさんの原作を踏まえての評価を見て、なるほど納得はしました。演出やナラティブは非常にスムーズで静かな感動を覚える点など、さずが、スティーブン・ダルトリー才能あるなと感心しました。ただ、原作を読んでから見たほうがさらによりその描いているものの深さがわかったので、映画だけではこの点数とします。あと、不謹慎かもしれませんが、生き残った告発者がアメリカで成功し、ハンナは獄死するこのコントラストも監督は狙ったのかな?(原作を読んでないのでわかりませんが)
[インターネット(字幕)] 7点(2020-07-25 22:56:23)
20.  トレーニング デイ 《ネタバレ》 
レビューが意外とあまりよくないですね。1日に話を詰めすぎだというのは確かに。リアリティがないのも娯楽映画だからと割り切って許せる範囲かなと。減点1くらいで。この映画はやっぱりデンゼル・ワシントンにフォーカスして見るといいかも。個人的にはアロンゾのいろいろな逡巡を経た結果きっぱり腐りきったダークヒーロー誕生!みたいな姿があっぱれという感じ。結構魅力的な人物に描かれていると思うけど。イーサン・ホークの振り回され新人感もよかった。でも、これでデンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞受賞はちょっと、びっくり。クリムゾン・タイドの演技が振りとして効いていたのかな。もちろんすごい役者さんですけど。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-06-13 13:10:30)
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