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強い者が弱い者を虐待・搾取し、虐待・搾取された者は自分より弱い者を虐待・搾取し…。延々と繰り返されるこの関係性が《権力》の構図だとするなら、その最底辺に「少年」がいる。
親に「当り屋」を強要され、逃げ出して故郷の祖母のところへ行こうにもお金がなくなり、見知らぬ町でひとりぼっちで泣く少年。自分が稼いだお金なのに、父親から「好きなものを食え」と言われても一番安いメニューをおずおずと選ぶ少年。いじめられている子に声をかけようとしたら、その子に、大切にしていたジャイアンツの野球帽を泥水に叩き付けられた少年。幼い弟に、「いつかアンドロメダ星人がやって来て、ぼくたちを地球から連れていってくれるんだ」と何度も何度も語りつづける少年。… 大島監督がこの作品に託した「国家」と「権力」という観念的なテーマ以上に、あまりにも理不尽な“受難”を受け続ける少年の心の痛みが、見る者の心にも突き刺さる。それは「いじめ」や親の虐待といった、今日なお切実な問題をぼくたちの前に突きつけてくるだろう。が、何よりもこの少年のつらさや悲しみの深さが(↓の方も書かれている通り、少年を演じる子役のあの眼差し…)、ストレートにぼくたちの心を撃つことで、単なる「問題提起」だけではない切実さを与えるのだ。 ぼくは見るたび、この映画の中の少年に涙する。しかし、それは決して同情や憐憫からじゃない。この映画を見ている間、ぼくは「少年」そのものになっている。そう、あの少年は「ぼく自身」だ。だから少年が泣く時、ぼくも泣く。少年がこの世界に押しつぶされそうになるのをひとりで耐えている時、彼の代わりにぼくが涙を流す。…『少年』は、ぼく自身の「物語」となるのだ。 それは、たぶん、間違いなく、あなたにとっても。 【やましんの巻】さん 10点(2004-07-21 20:27:23)(良:1票)
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