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ラストガンマン---言ってしまえば夢の無い映画だ。目にも留まらぬ早撃ちで悪役を次々と撃ち倒す、そのようなヒーロー像はこの映画によって殺されたと言っていい。善玉が悪玉を懲らしめる、西部劇の醍醐味であった「勧善懲悪」はもはや時代が許さないのだ。世の中はそんなに単純じゃない。人を殺せば罪悪感に襲われる。どんな奴だろうと死とは死である。西部劇の中でなら人殺しが許される、などということは決してないのだ。 ウィリアム(イーストウッド)は何故復讐に向ったのか。正義ではない。悪でもない。仲間の敵討ちだ。私的な理由だ。保安官だって自らの「正義感」に従ったまでだ。じゃぁ何が正義なのか。我々は何を憎めばいいのか。世の中は混沌としている。暴力と死を繰り返す人間たち、それこそが「許されざる者」である。 このような映画が製作され、しかもアカデミー賞まで受賞してしまってはかつてのような西部劇は二度と現れないだろう。この作品こそは「ラストガンマン」である。
【紅蓮天国】さん 8点(2004-01-12 15:38:41)(良:4票)
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