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レビュー情報
1人じゃ走れないオンボロ車でも家族みんなで押してやれば、もう一度走り出すことができる。あの車の存在は「負け組み家族」のメタファーとして見ることもできる。典型的なミニシアターでありながら、コンテスト会場に車で突入するシーンは、低予算であるにもかかわらず、お金のかかった映画の爆破シーンに劣らないほどエキサイティングでした。また、ゲイの叔父が必死にコンテストの受付に向かって走り出したときに流れてくる音楽がじつに素晴らしい。「娘の晴れ舞台のために」という共通した目的のために、負け組家族が1つにまとまります。本作の見所は何と言っても家族の個性的なキャラクターにつきる。たとえば、ライ麦のホールデンのようにひねたアニキは、ニーチェに影響を受けて無言を貫く。勝ち組にこだわり続けるオヤジは、自己啓発本の出版に失敗し破産する。ゲイの恋人にふられた叔父は自殺未遂を起こす。みんな負け犬です。そして何よりも老人ホームから追い出されたエロじじいが最高でした。あのエロじじいの喋ることのすべてがデンジャラスでした。彼の存在そのものが、この映画がR指定された原因でしょう。しかも、そのエロじじいは、途中でドラッグ中毒で逝ってしまう。それにもかかわらず、助演男優賞をゲットしている。そして何人かの人が同じことを感じたかもしれませんが、じじいが死んだ直後から、彼が息を吹き返すのではないか?と思わせるシーンがいくつかあったと思います。私は何度となく彼が息を吹き返すのではないかと考えてドキドキしていました。だから死んでからも強い存在感を発揮していました。娘の舞台に家族が乱入するシーンは恥ずかしくて目を開けていられなかった。しかしあのシーンでも、「勝つこと」が全てではないというメッセージだけは確実に伝わりました。ナポレオン・ヒルやカーネーギーのように「成功の法則」に関する本ばかり読んでいる人々がこの映画を観ればパラダイム転換につながるのではないでしょうか。とても、あたたかくて、すごく好きな映画です。
【花守湖】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-06-05 20:35:22)(良:3票)
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