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アイルランドの自然に囲まれた風景が、あまりにも美しいせいで、そこでドンパチと銃撃戦が行われている様子が、不謹慎にも、美しいと感じました。印象に残ったのは、アイルランド共和国議会の民事裁判で、金持ちの地主が裁かれるシーンです。あれは裁判というよりも、裁判ごっこでした。そのシーンが、アイルランドと英国との力の違いを、兵力の違い以上に、表現していたように感じます。私の浅はかなアイルランドの知識といえば、アイルランド=IRA=テロリスト、という偏見があったことですが、この映画は、テロ集団「IRA」の前身となるアイルランド義勇軍の話のようです。ところで、テロリスト、と一方的に我々は言いますが、アイルランド人にとっては、テロをしているつもりはなく、英国と戦争をしていると思っている。しかし両者の力の差があまりにもかけ離れているために、英国では戦争とは受取っていない。アイルランド人に無差別殺人をされていると思い込んでいる。本作では、英国側の兵士が非常に残酷に描かれているために、客観性が損なわれていますが、本当は英国兵士も政府に命令されて、国に家族を置いて、このアイルランドにやって来ただけなのです。そして異国の地で、アイルランド人のテロ行為に、気が狂うほど怯えていたのだと思う。アイルランドからの撤退を心から喜んだのは、英国兵も同じなはずです。この撤退で英国にいる兵士たちの家族も泣いて喜んだでしょう。それが本作からはあまり伝わってこなかった。もう少し英国側の苦悩も描いてくれれば、深みが増したかと思いますし、そういう意味では少し一方的な見方をした映画だと思います。この映画はイラク情勢を、連合国側の視点ではなくて、イラクの武装勢力側の視点で見たようなものと似ている。戦争は、どちら側の視点で見るかによって、真実が変わってくることがよく実感できました。
【花守湖】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-25 18:55:26)(良:1票)
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